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Vol.7 , No.2(1959)031近藤 文剛「禪に於ける非人情の一考察」

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Academic year: 2021

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神 に 於 け る 非 人 情 の 一 考 察 ( 近 藤 ) 一 六 四

( 一 ) 世 間 的 語 義 と 繹 に 於 け る 意 義 。 世 間 的 に 、 ﹁ 非 ﹂ と は 否 定 面 を 多 分 に 含 ん で い る が 、 今 は こ れ を 佛 教 的 特 に 神 思 想 に 於 て 考 察 す る 。 暉 思 想 は 非 の 意 を 肯 定 、 否 定 の 意 を は る か に 超 越 し て 、 か え つ て 事 柄 そ の も の を 指 摘 す る 。 換 言 す れ ば 非 人 情 心 と は 、 一 般 世 間 の 人 情 を は る か に 越 え た 佛 の 大 慈 悲 心 の 表 現 で あ り 、 こ れ は 解 脱 の 境 涯 か ら の み 會 得 さ れ る も の で あ る 。 具 證 的 に 暉 宗 に お け る 所 依 の 経 典 と さ れ る 般 若 経 に よ れ ば 般 若 思 想 は 否 定 的 傾 向 の 文 字 が 多 く 一 般 に は 、 ﹁ 不 ﹂ ﹁非 ﹂ と の 字 に 、 ま ぎ ら わ さ れ が ち で あ る 。 こ の 判 明 は 悟 道 の 境 地 よ り す る 般 若 思 想 の 阿 褥 多 羅 三 貌 三 菩 提 の 會 得 に よ つ て の み 理 解 さ れ る も の で あ る 。 即 ち 般 若 輕 は 、 ﹁ 是 心 非 心 、 心 相 常 浄 故 ﹂ 、 ( 摩 詞 般 若 波 羅 蜜 経 三 渤 學 品 第 八 ) と 、 こ れ は 、 ﹁ A は A に あ ら ず 、 故 に A な り ﹂ と の 論 理 形 式 に 附 合 す る も の で あ り 、 更 に 換 言 す れ ば 、 即 ち ﹁ 非 ﹂ と 同 一 義 の 語 は 、 ﹁ 不 ﹂ ﹁ 無 ﹂ 等 の 語 が あ る 。 特 に 暉 門 の 悟 道 上 か ら 述 べ ら れ た 非 に つ い て は 、 無 門 關 に お け る 、 馬 組 の 言 に よ れ ば 、 第 三 三 則 に 、 ﹁ 馬 視 因 檜 門 如 何 是 佛 祀 日 、 非 心 非 佛 ﹂ と ﹁ 無 門 日 苦 向 二 者 裏 喝見 得 参 學 事 畢 ﹂ と 又 更 に 、 第 三 〇 則 に 、 ﹁ 馬 租 因 大 梅 問 如 何 是 佛 租 云 、 即 心 是 佛 ﹂ 無 門 日 苦 能 直 下 領 略 得 去 著 二 佛 依 蝋喫 二佛 飯 ﹁爲 佛 話 嚇行 二佛 行 唱即 是 也 云 々 ﹂ 。 と の 如 く 、 ﹁非 ﹂ は 樹 立 の 世 界 に 在 り 、 ﹁即 ﹂ は 、 自 己 同 一 の 世 界 に 在 る 。 こ れ は 暉 経 験 に の み よ つ て 解 決 さ れ る も の で あ る と す る 。 故 に 前 記 の ﹁ 非 心 非 佛 ﹂ の 公 案 は 、 馬 祀 道 一 暉 師 の 撫 提 の 語 句 で あ り 、 心 で も 佛 で も 無 い と い う こ と 、 で ﹁即 心 即 佛 ﹂ と 更 に ﹁ 是 心 是 佛 ﹂ に 捕 わ れ て 、 心 佛 に 執 す る 者 に 樹 し 、 此 の 執 著 を と る た め に 拮 起 し た 一 つ の 方 便 に 過 ぎ な い 。 故 に 非 心 非 佛 と い う も 、 即 心 即 佛 と い う も 、 是 心 是 佛 と い う も 、 何 寧 相 違 な く 、 要 は 文 字 で は な く し て 、 馬 組 の 言 句 よ り 跳 出 し た 、 馬 租 の 眞 意 ( 力 量 ) を 知 る と こ ろ に 、 非 心 非 佛 の 端 的 を 了 會 す る の で あ り こ こ に 見 性 徹 見 の 暉 経 験 を 得 て 始 め て 非 は そ の ま ま 即 と な る の で あ る 。 そ の 實 例 と し て 、 か の 有 名 な 圓 覺 寺 開 山 佛 光 國 郎 の 投 機 の 偶 に 一 槌 撃 破 精 難 窟 。 突 出 那 殖 鐵 面 皮 。 爾 耳 如 聾 口 似 唖 。 等 閑 鰯 着 火 星 飛 。 ( 大 正 、 八 十 、 二 三 八 、 B ) と 、 こ の ﹁精 難 窟 ﹂ と は 吾 等 が 、 普 遍 智 的 方 面 に 集 積 し た 。 有 と 無 、 即 と 非 と の 暗 窟 で あ る 。 肯 定 と 否 定 、 善 と 悪 、 是 と 非 と の 相 鞠 に の み 執 す る 妄 執 な の で あ る 。 而 し 一 度 、 大 宇 宙 の 眞 理 を 徹 見 す る と 、 か く の 如 き 妙 境 に 入 り 、 般 若 哲 學 で 云 う 説 不 説 、 聞 不 聞 の 實 境 の 展 開 と な り 、 否 定 即 肯 定 、 肯 定 即 否 定 の 、 ﹁即 非 の 倫 理 ﹂ と な り 、 一 般 吾 々 の 常 識 分 別 を は る か に 越 え た 超 論 理 、 超 思 惟 、 超 分 別 の 境 涯 と な り 、 更 に 一 般 の 人 智 を 超 え た 無 分 別 智 (佛 智 ) と な る の で あ る 。 こ の 境 涯 か ら し て 非 は そ の ま ま 即 と な り 非 人 情 は そ の ま ま 、 佛 の 大 慈 悲 行 と な り 、 暉 門 に お い て は 、 飾 家 の 悪 棘 極 ま り な い 手 段 と な つ て 、 學 人 を 韓 迷 開 悟 せ し め る 活 手 段 と な る の で あ る 。 次 に そ の 具 膿 的 例 を あ げ よ う 。 ( 二 ) 非 人 情 心 の 把 握 。 神 に お け る 暉 禮 験 は そ の 超 越 性 を 見 性 に よ る 力 用 と す る 黙 に お い て 視 飾 は 、 古 人 克 苦 光 明 必 盛 大 な り と の 不 惜 身 命 の 大 精 造 が な さ れ て い る 。 そ の 一 例 を か の 徳 川 中 期 臨 濟 申 興

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-559-の 偉 人 白 隠 灘 師 に つ い て 述 べ る と 、 揮 郎 は 異 常 な る 神 経 過 敏 性 で 、 世 の 無 常 を 感 じ そ の 不 安 の 根 底 を 打 破 し 得 る の は 暉 に お け る 見 性 以 外 に な い と つ い に 得 度 し 師 の 箪 嶺 和 尚 に 、 ﹁苦 不 レ 獲 二 肉 身 而 火 不 レ 能 レ 僥 。 水 不 レ 能 レ 漂 底 之 力 一。 設 死 不 レ 休 一﹂ ( 年 譜 第 一 巻 八 頁 ) と 力 強 く 誓 願 し た ほ ど で 、 後 年 、 暉 師 は 正 受 老 人 の 鉗 鎚 を う け た の で あ る 。 こ れ は ま さ に 師 家 の 學 人 接 化 の 活 手 段 の 最 た る も の で 、 老 人 は 輝 師 の 將 來 な す あ る を 見 て 、 實 に 人 情 を 絶 す る 辛 辣 な る 鉗 鎚 を 加 へ 以 て 白 隠 を し て 、 近 世 暉 門 の 中 興 の 租 た ら し め ん と 念 願 し て 止 ま ず っ い に 暉 風 の 眞 の 墨 揚 を 白 隠 に 托 し て 實 現 せ し め た 。 こ れ は 鎌 倉 時 代 日 本 の 暉 二 十 四 流 今 日 亡 び せ き ば く た る 際 尚 脈 々 と し て 唯 一 人 白 隠 會 下 の 二 流 の み 存 し た 所 以 を も つ て し て も う か が え る 。 次 に 唐 末 の 船 子 と 弟 子 爽 山 の 法 嗣 問 題 に つ き 暉 門 の 法 の 護 持 が 如 何 に 人 情 を 絶 す る か に つ い て 述 べ る と 船 子 が 自 分 の 護 持 す る 法 と 衣 鉢 を 爽 山 に つ た へ る た め 、 爽 山 を 川 へ 投 げ こ む こ と 三 度 。 然 し 爽 山 が 法 を 會 た 直 後 す ぐ に 舟 を 覆 し て 自 が 命 を 絶 つ た が 如 き 一 見 一 般 的 非 人 情 の 中 に こ そ 佛 の 大 慈 悲 行 の 獲 露 を 見 る こ と が 出 來 る 。 次 に 修 行 の 妙 用 と し て 向 下 門 的 の 一 切 衆 生 の 濟 度 の 方 便 を 、 臨 濟 暉 飾 の 上 堂 に お け る 場 合 に よ つ て 見 る と 、 ﹁府 主 王 常 侍 。 與 二 諸 官 二 請 レ 師 陞 座 。 節 上 常 云 。 山 檜 今 日 事 不 レ 獲 レ 己 。 曲 順 二 人 情 一方 登 二 此 座 一 云 々 。 ﹂ ( 大 正 四 七 四 九 六 B ) と い つ て 、 こ の ﹁曲 順 人 情 ﹂ と あ る の は 、 即 ち 一 般 的 人 情 で あ り 曲 げ て に よ つ て そ の 意 味 が 一 般 の 非 人 情 で な く 、 佛 の 大 慈 悲 行 菩 薩 行 と な つ て く る の で あ る 。 又 道 元 暉 舗 は 輝 堂 に お け る 修 に つ い て 、 辮 道 法 の 中 に 、 ﹁動 静 二 如 大 衆 蝋、 死 生 不 離 三 叢 林一、 技 レ 漿 無 レ 盆 、 違 レ 衆 未 レ 儀 レ ﹂ ( 大 正 ・ 八 二 、 三 一 九 、 A ) と 、 實 に 、 た ん た ん た る 心 境 を も つ て の 精 進 こ そ こ れ が 修 神 の 端 的 で あ る 、 と す る 暉 舗 の 心 境 に は 非 も な く 人 情 も な い 、 し か も そ の 中 に 、 に じ み 出 た 、 修 謹 不 二 の 佛 行 こ そ 、 否 定 肯 定 を 超 越 し た 、 佛 道 そ の ま ゝ の 姿 で あ る 。 と い ゝ う る 然 し て こ の 境 涯 は 一 朝 一 夕 に 會 得 し 得 る も の で な く 、 そ れ こ そ 前 述 の 如 き 血 涙 滴 に の 大 精 進 の あ る こ と を 見 逃 し て は な ら な い 。 で は 次 に 修 行 の 妙 用 を 古 人 の 言 に よ つ て 、 こ の 意 を 、 更 に 明 ら か に し て み よ う 暉 宗 第 二 十 二 租 と 傳 え ら れ る 摩 肇 繹 愈 者 の 偶 に 、 ﹁ 心 は 萬 境 に 随 つ て 韓 ず 。 韓 虚 實 に 能 く 幽 た り 。 流 に 随 う て 性 を 認 得 す れ ば 。 ﹁喜 も な く 亦 憂 も な し 。 ﹂ と あ る が ﹁ 心 ﹂ も ﹁ 性 ﹂ も 共 に 無 分 別 者 を 指 し 、 ﹁ 境 ﹂ と ﹁流 ﹂ は 分 別 界 で あ る 。 即 ち ﹁ 無 分 別 の 分 別 ﹂ の 動 き を ﹁ 韓 虚 ﹂ と 云 う の で あ り 、 又 眞 理 を 把 握 し そ の 妙 用 と も い え る 。 眞 理 を 悟 る こ と に よ り 、 ﹁ 喜 も な く 憂 も な し ﹂ と す べ て 相 勢 的 是 非 (妄 執 ) に も な い と い う こ と で あ る 。 後 に 謹 道 歌 ( 大 正 、 四 八 三 九 五 ) に よ つ て 見 る に 、 ﹁ 圓 頓 の 教 は 人 情 没 し⋮⋮﹂で あ り 、 第 二 義 諦 に た つ て 見 な ら 、 ﹁ 非 も 非 な ら ず 是 も 是 な ら ず 、 之 に 差 ふ こ と 毫 楚 も す れ ば 失 す る こ と 千 里 ﹂ 。 と い つ て 宇 宙 眞 理 の 把 握 、 謄 認 を そ 要 件 と し 、 又 悟 の 境 中 に 入 つ た な ら ば 、 ﹁ 悪 言 は 是 れ 功 徳 な り と 観 ず れ ば 此 れ 即 ち 吾 が 善 知 識 と 成 る 云 々 ﹂ で あ り 、 以 上 か ら し て 特 に 暉 僧 の 修 は 一 見 非 常 識 ( 人 情 ) と 思 は れ る 様 な 手 段 を 用 ひ 、 そ れ に 耐 え 得 る 人 物 を し て 輩 な る 精 神 修 養 に 止 ま ら ず そ の 解 腕 の 境 涯 の 力 量 ( 妙 用 ) と し て 衆 生 と 社 會 の 苦 不 安 、 罪 悪 一 切 を 除 か ん と す る 佛 陀 の 大 悲 具 視 の 大 願 ( 四 句 誓 願 ) の 實 蹉 を 最 も 重 大 な 急 務 と す る こ の 大 願 心 (佛 智 ) こ そ は 樗 伽 経 の 、﹁ 智 不 レ 得 二 有 無 一興 二 大 悲 心 ﹂ で あ り 、 こ の 佛 陀 の 慈 悲 心 の 具 視 こ そ は 、 暉 問 に 於 て は 、 ﹁非 人 情 ﹂ の 三 字 に よ つ て 向 上 門 向 下 門 と も に 表 現 す る こ と が 出 來 る と 思 う 。 灘 に 於 け る 非 人 情 の 一 考 察 ( 近 藤 ) 一 六 五

参照

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