英語の基本を教えるための、授業の基本 : 初期英
語指導の基本
著者
小高 一夫
雑誌名
Shoin literary review
巻
40
ページ
29-81
発行年
2007-03-20
URL
http://doi.org/10.14946/00001678
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja英 語 の基 本 を教 えるための 、授 業 の基 本
初期 英語指導 の基 本
Practical Principles
ofBeginning . English Language Instruction
小 高 一・ 夫
〈記 載 項 目一 覧 〉 は じめ に *1.A. Richards:「 初 期 言 語 指 導 の 原 則 」 *英 語 の基 本 習 得 期 にお け る、「こ とば の 働 き」の指 示 性 と指 導 優 先 順 位 1.本 題 設 定 の 意 図 1.英 語 と 日本 語 の差 異 ① 言 語 的 距 離 ② 文 化 的 差 異 ③ 植 民 地 経 験 と 自覚 的動 機 ④ 周 波 数 領 域 ⑤ 脳 の 違 い ⑥ 他 言 語 習 得 と 日本 語 習 得 に要 す る時 間 の 差 異 ⑦ そ の 他 の 問 題 言 語 獲 得 の 臨 界 期(critical period)/ 敏 感 期 (sensitive period) 2.「 学校 英 語 」 の 限 界 と基 本 の 習 得 皿.基 本 習 得 期 の 目標 皿.基 本 習 得 期 に役 立 つ 「こ と ば の本 質 」1.The Triangle of Meaning「 意 味 の 三 角 形 」
2.ALadder of Abstraction「 抽 象 の梯 子 」
3.AReferring Function「 指 示 機 能 」 一 こ と ば の 本 質 か ら学 ぶ 授 業 の 基 本 IV.基 本 習 得 期 に お け る 導 入 の 基 本 1.実 物 提 示 、 実 際 の 場 の 演 示 、 絵 図 の 提 示 The Cone of Experience「 経 験 の 円 錐 」 2.日 本 語 の 排 除 ① 「訳 す 」 作 業 ② 日本 語 を 介 す る 授 業 のMerits and Demerits V.基 本 習 得 期 に お け る 授 業 の 仕 方 1.英 語 が 伝 達 の 道 具 で あ る こ と を 実 感 させ る 仕 方 2.Sentence Structureを 飽 き させ ず に 、 繰 り返 し練 習 さ せ る 仕 方 3.級 友 の 自発 的 発 言 を 正 し く聴 取 で き て い る か チ ェ ッ ク す る 仕 方 4.日 本 語 の 助 け を 不 要 に す る教 材 配 列 の 仕 方 V1.基 本 習 得 期 の 授 業 を 成 就 させ る 条 件 1.1ク ラ ス の 学 習 者 数 2.1週 の 授 業 回 数 3.授 業 準 備 時 間 の 確 保
W.基 本 習 得 期 の 教 材 に 相 応 し い 語 彙:BASIC English by C. K. Ogden 1.BASIC English誕 生 の 契 機 と 考 案 の 基 盤
2.BASIC English Word List
3.BASIC English、850語 選 定 の 具 体 的 基 準 BASIC Englishは 「基 本 英 語 」
4.Panoptic Eli血nator(贅 語 排 除 ・器)
5.「 動 詞 」 の 排 除 BASIC Englishに は 「動 詞 」 が な い 6.語 彙 の 拡 張
7.BASIC Englishか ら作 ら れ る メ タ フ ァ ー 8.H. E. PalmerのSimple EnglishとBASIC English 9.「 北 風 と太 陽 」in BASIC English
お わ り に
〈内 容 〉
は じめ に
英 語 の 指 導 で最 も大 切 な こ とは 、 初 期 の段 階 で基 本 を きち ん と習 得 させ る こ とで あ る。 こ とば の 基 本 は何 か?英 語 の基 本 は何 か?授 業 の基 本 は な に か? 学 校 は 、基 本 を教 え る こ と に尽 きる の で は な い か 。 充 実 した基 本 は 、 自 ら創 意 あ る応 用 に通 じる。 初 期 の英 語 学 習 と は、 正 に英 語 の 基 本 の 習 得 期 を 意 味 す る。 本 稿 は基 本 的 に 、I.A. Richards(1893∼1979)の 言 語 観 に 基 づ き、 日本 の学 校 で 初 め て英 語 を学 ぶ 者 の 指 導 の 仕 方 を考 え、 初 心 者 に適 した 英 語 を 推 奨 す る 。 塾 、\
Ivor Armstrong Richards,1972 Photograph by Gyorgy Kepes fromI.A. Richards(1974)Poetries Their Media and Ends, Mouton
*LA. Richards:「 初 期 言 語 指 導 の 原 則(に 関す る要旨)」
NOTES ON PRINCIPLES OF BEGINNING LANGUAGE INSTRUCTION
Prepared by I. A. Richards for a UNESCO conference in Paris on June 19,1947 From I. A. Richards(1968}Design for Escape, pp.125-127
1.私 た ち は 、 新 し い 文 ま た は 文 の 要 素 に つ い て 、 そ れ が 場 の 中 で ど の よ う に 適 用 さ れ て い る か を 、 見 る こ と に よ っ て 学 ぶ 。 2.教 え る 時 に は 、 文 と場 を 一 緒 に し て 、 見 え る か た ち で 提 示 す る 。 3.以 下 、 文[sENTENcE]が そ の 意 味 を 与 え る 場[slTuArIoN]と 結 び つ い た こ の 構 成 単 位 を 、SEN-SITと い う 略 語 で 表 す 。 一31一
4.言 語 の 効 果 的 指 導 は 、SEN-SITsを 工 夫 し て 作 り 出 し、 配 列 し、 提 示 し、 テ ス トす る こ と で 成 り立 つ 。 5。 各 言 語 と も、SEN-SITsの 配 列 に は 理 想 的 な 順 序 が あ る 。 6.こ の 理 想 的 な 配 列 の 順 序 で は 、
a}
b)
c)
d}
各SEN-SITの 曖 昧 さ は 、 配 列 順 序 の そ の 場 所 で 、 最 小 限 で あ る 。 各SEN--SITが 、 こ れ か ら学 ぶSEN-SITsの 準 備 に な る 。 各SEN-SITが 、 あ と に 続 くSEN-SITSに よ っ て確 か に な る 。 新 しいSEN-SITsに よ っ て 既 習 のSEN-SITsが 乱 さ れ る の は 、 最 小 限 で あ る 。 7.指 導 過 程 で の 一 つ ひ とつ の段 階 が 、 そ れ 以 外 の全 て の段 階 と相 互 に 支 え合 う有 機 的 な 順 序 だ て は、 段 階 づ け(GRADING)に よ っ て 達 成 さ れ る 。段 階 づ け とい うの は、 つ ま り、 そ の順 序 だ て の 中 で の 部 分 相 互 の 関係 とい う質 の 問 題 で あ っ て 、 毎 日の授 業 の 中 で教 え られ る単 語 の 数 な ど とい っ た量 の 問 題 で は な い。 8.文 の構 造 が 、 わ か り易 い場 の構 造 と対 応 して い れ ば 、 そ のSEN-SITは 明 瞭 で あ る とい え る。 9.良 い段 階 づ け は、 まず 、 で きる だ け少 な い 要 素 を持 ち 、 で き るだ け 明 瞭 なSEN-SITsを 使 っ て 始 ま る。 10.学 習 者 に は 、 文 の構 造 は、 そ の 要 素 が 場 の 要 素 に対 応 す る変 化 の仕 方 か ら分 か る よ う に 見 え る。 構 造 とい うの は、 た と え、 変 数[可 変要素] の 値[要 素 ・意味]が 変 わ っ て も、 決 して変 わ らな い形 の こ とで あ る。It is here. It is there. He is there. 11.変 数[可 変要素]を い ろ い ろ 変 え て 、 構 造 を 教 え る 時 に 選 ぶ 語 は 、 広 い 範 囲 で 役 に 立 つ 語 が よ い 。 12.役 に 立 つ 語: a)学 習 者 が 、自分 の 知 識 を で き る だ け 速 や か に 広 い 範 囲 で 使 う(use) こ とが で き る 語 。 b)次 の 指 導 の た め に 、 最 も よ い 準 備 に な る 語 。 c) そ の 語 の 助 け で 、 他 の 役 に 立 つ 語 が 説 明 で き る 語 。 一32
13.英 語 で 、 最 も役 に 立 つ(概 して 、 最 も使 用 頻 度 が 高 い)語: a) Basic English Word Listの 最 初 の欄 に あ る機 能 語 。
b)最 も実 証 で き る(絵 に 描 け る)、 身 近 で 一 般 的 な 物 事 を 表 す 語 と、 そ の 性 質 を 表 す 語 。 14.こ れ ら の 語 の 中 で 、 最 も 明 瞭 なSEN-SITsを 作 り 出 す 語 を 最 初 に 使 う の が よ い 。 15.肯 定 文 の 語 順 が 確 実 に 身 に つ く ま で は 、 疑 問 文 を教 え る の は 延 期 す る 方 が 賢 明 の よ う で あ る 。 16.学 習 者 は 、 こ の よ う な 一 連 のSEN-SITsを 通 し て 学 習 を 進 め て 行 く時 に 、 そ のSEN-SITsの 要 素 と構 造 を 練 習 し な け れ ば な ら な い 。 しか し、 そ の 練 習 は 、 単 純 な 繰 り返 し で は な く、 い ろ い ろ に 変 わ る 構 造 の 中 で 既 習 の 要 素 を 使 っ た り、 変 化 し た 要 素 で 同 じ構 造 を 使 い な が ら、 新 し いSEN-SITsを 実 際 に 体 験 す る練 習 で な け れ ば な ら な い 。 17.こ の よ う な 段 階 づ け で 、 母 語 の 助 け を 借 り る 必 要 は な く な る 。 母 語 に 頼 る と、 次 の よ う な こ とが 起 こ る の で 、 避 け る べ き で あ る 。 a) 母 語 の 構 文(Constructions)の 干 渉 が 起 こ る 。 こ れ が 非 文 法 的 言 語(broken language)を 使 わ せ る 最 も根 本 的 な 原 因 に な っ て い る 。 b) 母 語 の 音 素(Phonemes)の 干 渉 が 起 こ る 。 こ れ が 誤 っ た 発 音 を さ せ る根 源 に な っ て い る 。 c)SEN-SITSの 代 わ り、 即 ち 、 文 が そ の 対 応 す る 場[意 味]と 結 び つ く代 わ りに 、 母 語 が そ れ に 対 応 す る 新 し い 言 語 と結 び つ く。 そ の 結 果 は 必 然 的 に 、[母語で考 えることになるので、]「 新 し い 言 語 で 考 え る こ と」 は で き な い 。 し か し、[母語 に頼 らず、SEN-SITsに よる学習 をすれ ば、]「 新 しい 言 語 で 考 え る こ と」 は 、 最 初 か ら 可 能 で あ る 。 18.翻 訳 と い う作 業 は 、 言 語 学 習 の ず っ と後 の 段 階 で は 望 ま し い 練 習 で あ る が 、 初 心 者 に と っ て は 混 乱 と徒 労 の 原 因 に な る 。 段 階 づ け さ れ た 提 示 は 正 し く整 え ら れ た 配 列 順 序 のSEN-SITを 展 開 す る こ と で 「相 当 語 句 」 と 母 語 に よ る 説 明 を ま っ た く不 要 に す る こ と が で き る 。 *[]内 、 訳 者 注 釈 。(小 高 一 夫 訳) 一33一
*英 語 の基 本 習得 期 にお ける、「ことばの働 き」の指 示性 と指 導優 先順 位
「初 期 言 語 指 導 の 原 則 」Nos.1∼4 「こ と ば の 働 き 」 に は 次 の3点 が 考 え ら れ る 。 1.そ の こ と ば の 意 味(指 示 物)は 何 か を 考 え る 。 思 考 ・指 示 的 言 語 使 用 。 (Reference} 2.物 事(情 報)や 、 考 え 偲 考)や 、 気 持 ち(感 情)を 伝 え る 。 目 的 ・伝 達 的 言 語 使 用 。(Communication) 3.共 感 、 好 意 、 社 交 的 な 雰 囲 気 を 伝 え る 。 一 社 交 ・交 感 的 言 語 使 用 。(Phati・ Communion) そ して 、 英 語 の 基 本 習 得 期 に、 少 な い 時 間 で で き る だ け効 率 よ く指 導 す る た め に は、 ① 「思 考 ・指 示 的 言 語 使 用 」 ② 「目的 ・伝 達 的 言 語 使 用J③ 「社 交 ・交 感 的 言 語 使 用 」 の 順 番 が よい 。 *思 考 ・指 示 的 言 語 使 用 、 即 ち、 我 々 は こ とば と、 自分 が 過 去 に 聞 い た り 読 ん だ り した 記 号 的 経 験 や 、 実 際 に見 た り体 験 した こ と な ど とを脳 内 で 照 合 す る。 そ して、 そ の記 号 的 経験 と過 去 の 体 験 の 指 示 に基 づ い て 自分 の 考 え を創 造 し、 こ とば と行 動 で 表 現 す る。 あ る い は何 も しな い で頭 の 中 に仕 舞 い 込 む。 こ の よ うな い ず れ の場 合 にお い て も、 こ とば の 果 た す 主 な役 割 は、 こ と ば と物 事 との 照 合 、 即 ち、 そ の 指 示 性(Refer血g)に あ る。 *目 的 ・伝 達 的 言 語 使 用 、 即 ち、 相 手 に物 事 や 考 え や 気 持 ち を伝 え る 道 具 と して の こ と ば に は、 そ れ が 何 で あ る の か、 指 示 物 を 明 らか に す る 必 要 が あ る。 こ こで の こ とば の 主 要 な働 き も指 示 性 に あ る とい え る 。 *た だ、 社 交 ・交 感 的 言 語 使 用 、 即 ち、「どち らへ?」 「ち ょっ とそ こ まで 。」 とい っ た 円滑 な人 間 関 係 の保 持 を 目的 とす る こ とば に は 明確 な 照 合 を必 要 と し な い。 従 っ て、 英 語 の 基 本 習 得 期 に は 、 い わ ゆ る挨 拶 英 語(社 交 ・交感的言語)の 暗 記 に先 立 っ て 、 英 語 が 指 示 す る物 事 を明確 に捉 え、 明 瞭 に伝 え る指 示 性 を重 視 した 指 導 が 行 わ れ るべ きで あ る。 なお 、 指 示 物 は基 本 的 に 実 物 ・実際 、 ま た は イ メ ー ジ(pictures in the mind)で あ り、 と き に 具 体 的 に指 し
示 す こ との で き な い虚 構 で あ る。
し か し、 虚 構 は 、 ① そ の 内 容 を 分 解 し て 抽 象 度 を 下 ろ した り、 ② 身 近 な 具 体 例 を 挙 げ る な どす れ ば 、 指 示 が 可 能 に な る 。 例 え ば 、 ①animarは 指 示 で き な い が 、 分 解 す れ ば 、`dog'や`cat'と な っ て 、 指 示 で き る 。 ②`love' の 場 合 は 、 テ レ ビ な ど で 騒 が れ て い るA,Bの 二 人 が い た ら 、 A andBarein Iove with one another/each other.と し て 、 具 体 例 の 形 で 示 す こ と が で き る 。 `love'は 外 在 的 に は 見 え な い が 、 脳 内 で 一 人 ひ と りが そ れ ぞ れ の イ メ ー ジ と し て 指 示 す る こ と が で き る 。
1.本
題 設 定 の 意 図
① 現 在 の 日本 で は 中 学 ・高校 まで ほ とん ど全 員 が 就 学 し、 そ の 多 くが 外 国 語 と して 英 語 を選 択 して い る。 さ らに 、 大 学 ま で進 学 し、 膨 大 な 時 間 とお 金 と労 力 を費 や しなが ら も、 ご くわず か の 者 しか 、 英 語 を普 通 に使 う こ とが で きな い。 消 費 した時 間 と経 済 と若 者 の エ ネ ル ギ ー を考 え る と、 個 人 一 人 ひ と りは言 う に及 ばず 、 日本 国 と して も大 変 な 無 駄 遣 い で あ り、 本 当 に、 も っ た い な い 。 ② もは や 国 境 は崩 れ つ つ あ る。 世 界 の様 々 な国 の 人 々が 日本 で働 くよ う に な るの を い つ まで も拒 否 す る こ と はで きな い 。 英 語 を、 か つ て の 侵 略 の 道 具 と考 え ず 、 地 球 人 のauxiliary languageと 考 え て 、 誰 で も、 自 分 の 能 力 に応 じて 、 そ れ な りに使 え る よ う に して お きた い。 ③ 世 界 の現 実 を見 れ ば 、 英 語 は 「イ ギ リス 語 」 や 「ア メ リカ語 」 か ら離 れ た 存 在 に な っ て い る。 英 語 の母 語 話 者 も、 い ま 自分 が 使 っ て い る英 語 は、 異 な る 文 化 の 人 た ち に理 解 して 貰 え て い る の か 省 み て 、 「世 界 通 用 語 と して の 英 語 」 を勉 強 して 貰 い た い。 以 上 の こ と を前 提 に して 、 この 不 毛 な現 状 を抜 け 出 す と きの ネ ック は 、 英 語 と 日本 語 の 差 異 の 大 き さで あ る。 そ れ は、 日本 語 → 英 語 に 限 らず 、 英 語 → 日本 語 の場 合 も同様 で あ る 。 差 異 につ い て の 詳 細 な 記 述 は省 略 し、 項 目の み を概 観 して も、 日本 語 の母 語 話 者 が 英 語 を学 ぶ 時 の しん ど さ、 大 変 さ を納 得 す る こ とが で き る。 一35一1.英 語 と 日 本 語 の 差 異 「言 語 的 距 離 を ど う や っ て 具 体 的 に 測 る か は 難 しい 問 題 で す が 、 た と えば 、 パ ラ メ ー タの 値 が 逆 に な っ て い る度 合 い が 高 け れ ば 、 類 似 度 は低 い とい え ま し ょ う。 こ れ 以 外 に も、 も ち ろ ん 、発 音(音 素)の 類 似 度 、 単 語 の 意 味 の 類 似 度 、 社 会 性 の 表 現(た と え ば、 敬 語)な ど、 類 似 度 を決 め る要 素 は い ろ い ろ あ り ます が 、 これ ら もろ も ろ を 考 慮 す る と、 日本 語 と英 語 との 距 離 は か な り大 き く、 む ろ ん 、 英 語 と ドイ ツ 語 の よ うな広 い意 味 で イ ン ド ・ヨー ロ ッパ 語 族 同 士 の 場 合 と は 比 べ も の にな り ませ ん 。 日本 人 は英 語 が 下 手 だ と よ くい わ れ 、 自分 で もそ う 信 じ込 むせ い か 、 ネ ッ ト経 済 に立 ち後 れ る とか 、 は て は 英 語 第 二 公 用 語 論 まで 飛 び 出 す 昨 今 で す が 、 距 離 の 大 き さ を考 え れ ば、 あ る 程 度 ま で は 当 然 な こ とで す 。 距 離 が 遠 け れ ば 、 二 言 語 は 共 存 しに くい の で 、 併 用 の場 合 は こ と に負 担 が 大 きい と考 え ね ば な りませ ん 。」 藤永保(2001)「 ことばは どこで育つか」大修館書店,p.194 ① 言 語 的 距 離(異 言語族) 英 語 と 日本 語 と は 異 系 列 の 語 族 と い う言 語 的 に 大 き な 隔 た りが あ る 。 英 語 と 同 属 の イ ン ド ・ヨ ー ロ ッパ 語 の 、 ゲ ル マ ン系(オ ランダ、ドイツ、スウ ェーデンなど)や ロ マ ン ス 系(フ ランス、スペインなど)の 言 語 と違 い 、 日本 語 と 英 語 と は 言 語 的 距 離 が 非 常 に 大 き い 。 ② 文 化 的 差 異(High C・ntext・L・w C・nt・xt) コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 際 し て は 、 伝 達 が こ と ば に 大 き く依 存 す るLow Contextの 欧 米 と は 対 照 的 に 、 日本 はHigh Contextの 文 化 、 即 ち 、 こ と ば を 使 う伝 達 よ り も周 辺 、 周 囲 、 前 後 の 状 況 ・場 面 の 判 断 に よ っ て 理 解 す る 、 い わ ゆ る 「察 す る 文 化 」 に 価 値 を 置 く。 ③ 被 植 民 地 経 験 と 自覚 的 動 機 シ ン ガ ポ ー ル や フ ィ リ ピ ン な ど と異 な り、 歴 史 的 に 日本 は 英 米 に よ る 被 植 民 地 経 験 が な い の で 英 語 と の 接 触 が 浅 い 。 「日本 で は学 校 の 『英 語 の 時 間 』 の外 部 の 環 境 に お い て 学 校 で も、 家 庭 で も、 社 会 で も、TVで も 子 供 の生 活 は英 語 を必 要 と しな い 。 一36一
した が っ て そ れ を習 う 自覚 的動 機 は弱 い 。」 (加藤周一,朝 日新 聞 ・夕刊,2006年4月19日) ④ 周 波 数 領 域 世 界 の 各 言 語 は 、 そ れ ぞ れ 音 の 周 波 数 領 域 を 持 っ て い る 。 日本 語 が 低 周 波 言 語(125hertz∼1,500hertz)で あ る の に 対 し て 、 英 語 は 高 周 波 言 語 (2,000hertz∼12,000hertz)な の で 、 日本 語 母 語 話 者 に と っ て 英 語 は 聞 き 取 り に くい 。 周 波 数 が 大 き く異 な る 音 は 聞 き取 りに く く、 意 味 を 持 た な い 音 、 す な わ ち 、 雑 音 と な っ て 耳 に 入 る 。 フ ラ ン ス 人 に と っ て も、 日本 人 ほ ど で は な くて も、 英 語 を 苦 手 に す る 人 の 多 い こ とが 分 か る 。 英 語 で 話 しか け られ る と無 視 す る の は 、 こ こ に も理 由 が あ る の か も し れ な い 。 一 方 、 ロ シ ア 語 は 、125hertzか ら12,000hertzま で の 全 て の 音 域 を カ バ ー し て い る 言 語 な の で 、 ロ シ ア 人 に と っ て 英 語 は 聞 き取 り易 い 。 *米 語 周 波 数 領 域 1,000∼3,800hertz *フ ラ ン ス 語 周 波 数 領 域 125∼ 約400hertz;約1,000∼2,000hertz *ド イ ツ 語 周 波 数 領 域 125∼3,000hertz *イ タ リ ア 語 周 波 数 領 域 2,000∼4,000hertz *ス ペ イ ン 語 周 波 数 領 域 125∼ 500hertz:1,500∼ 約2,500hertz *ロ シ ア 語 周 波 数 領 域 125∼12,000hertz cf.乳 ・幼 児(0歳 ∼6歳)の 聴 取 可 能 周 波 数 領 域:16∼16,000hertz 村 瀬 邦 子(1996)「 トマ テ ィ ス流 最 強 の外 国語 学 習 法 」 日本 実 業 出 版 社,p.81 (Hz) 125 250 soo 10◎0 1500 20◎0 3000 4000 重20QO ● 藁 講 一(← 一 闘■一 一 ■■一 一 齢 ・ 引b-● 米:語 一(巨 一 一 幽 一 顧一 蜘 一 繭■嘲 闘ウ レー ■:フ ラ ン ス 語 一 一 一一 ● ド イ ツ 濯昌 ● イ タ リ ア 題 ● ス ペ イ ン 語 ●0シ ア 語 ● 臼 本 語
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(ト マヂィス・ジ ャパンカタOグ) こ こ で 、 幼 児 の 聴 取 可 能 周 波 数(16∼16,000herts)か ら推 察 す る と 、 こ の 時 期 の 聴 覚 主 導 の 外 国 語 教 育 に は 、自然 な 合 理 性 が あ る よ う に 思 わ れ る 。 一一一37一⑤ 脳 の 違 い 脳 研 究 で は 門 外 漢 の 私 が 注 目 し た い 箇 所 は 、 次 の 点 で あ る 。 *日 本 語 母 語 話 者 と非 日本 語 母 語 話 者 と の 脳 の 機 能 が 著 し く違 う。 角田忠信 ・田中靖政 ・大森荘蔵 ・沢田允茂(1986)「 言語 ・意識 ・生活」共立 出版 *英 語 が 、 日 本 語 母 語 話 者 の 左 右 の 脳 機 能 の バ ラ ンス を 崩 して 正 常 な 働 き を 阻 害 す る 。 角田忠信(1981)「 右脳 と左脳一その機能と文化の異質性」小学館 *第 二 言 語 の 学 習 能 力 と 一般 的 な 知 的 能 力 と は 、 そ れ ぞ れ 独 立 し た も の で あ る 。 つ ま り、 両 能 力 は 関 係 な い 。 N.ス ミス&1、M.ツ ィンプ リ(1999)「 言語学習 と心のモジュール性 あ る言語天才 の頭脳」(毛塚恵美子 ・小菅京子 ・若林茂則共訳),新 曜社 〈左 脳(言 語脳)〉 シ ンボ ル操 作 (理論的、解析的) *言 語 的 知 性 *論 理 数 学 的 知 性 〈 右 脳(音 楽脳)〉 イ メ ー ジ操 作 (直観的、構成的) *音 楽 的知 性 *絵 画 的知 性 *空 間 的知 性
自然 音 、言語音 、楽器 音 の認 知機 構の差(角 田法)
(日 本人)
(西 欧人)
左半球 右 半球 左半球 右半球
角 田忠 信(1985)「 脳 の 発 見 脳 の 中 の小 宇 宙 」 大 修 館 書 店,p.105 一38一前 頁 の 絵 図 で 、 日本 語 を 母 語 とす る 人 と 、 日本 語 以 外 の 言 語 を 母 語 とす る 人 の 脳 の 機 能 に 、 大 き な 相 違 が あ る の は 一 目 瞭 然 で あ る 。 日本 語 母 語 話 者 の 脳 で は 、 数 多 くの 機 能 が 左 脳 に 偏 っ て い る 。 つ ま り、 左 脳 が 理 性 と感 性 と 自然 と を 合 体 さ せ て 働 くの が わ か る 。 こ の 脳 に 英 語 が 入 る と 、 普 段 、 音 楽 脳(右 脳)優 位 に 処 理 さ れ て い る オ ー デ ィ オ メ ー タ ー の 純 音 や 西 洋 楽 器 の 音 と い っ た 非 言 語 音 ま で も、 言 語 脳 (左脳)に 移 っ て く る 。 す る と 、 左 脳 が 超 過 密 に な る 結 果 、 脳 の 生 理 機 構 が 崩 れ て 、 右 脳 の は た ら きが 抑 制 さ れ る た め に 、 右 脳 が 本 来 機 能 し て い る 直 観 や 創 造 力 が 働 か な く な っ て し ま う。 左 右 の 脳 が バ ラ ン ス よ く働 く こ と に よ っ て 初 め て 、 右 脳 が 働 き 、 発 言 の 根 源 に な る ア イ デ ィ ア も湧 い て 、 思 考 が 構 築 さ れ る の で あ る 。 例 え ば 、 英 語 を使 う会 議 で 、 母 語 の 日本 語 で は 能 弁 な 人 に 起 こ る ダ ン マ リ は 、 こ の 結 果 で あ る と推 測 さ れ る 。 こ の よ う に 日本 語 母 語 話 者 に と っ て 英 語 が 難 し い 原 因 の 一 つ は 、 両 言 語 の 相 違 が 著 し く違 う た め に 、 英 語 を 聴 く と脳 機 構 が バ ラ ン ス を 欠 き、 不 適 応 症 状 が 起 き る こ と。 そ の 結 果 、 右 脳 の 機 能 が 抑 制 さ れ て 、 直 観 が 働 か な くな り、ア イ デ ィ ア が 貧 困 に な る か ら、柔 軟 な 発 想 に よ る 発 言 が で き な い 。 角田忠信(1978)「 日本人の脳」大修館書店,p.84 角田忠信(ユ981)「 右脳 と左脳一その機能と文化の異質性」小学館,P.67 角田忠信(1985)「 脳の発見」大修館書店,pp.102∼113 角田忠信 ・田中靖政 ・大森荘蔵 ・沢田允茂(1986)「 言語 ・意識 ・生活」共立出版,p.25 ⑥ 英 語 母 語 話 者 が 、 他 言 語 習 得 と 日本 語 習 得 に 要 す る 時 間 の 差 異 大 谷 泰 照 氏 が 、 英 語 の 母 語 話 者 で 日本 語 な ど複 数 の 言 語 の 学 習 経 験 者 106人 を 対 象 に し た 調 査 に よ る と、 彼 ら に と っ て の 言 語 的 距 離 は 、 フ ラ ンス 語 習 得 に 要 す る 時 間 を1と す れ ば 、 ロ シ ア 語3∼4倍 、 中 国 語6∼ 7倍 、 日本 語10倍 と い う結 果 が 出 た 。 (大谷泰照,朝 日新聞 ・夕刊,2004年10月23日) ⑦ そ の 他 の 問 題 言諭 蔓得の臨界期(・ritical p・d・d)/敏感期(・en・itiv・p・・i・d) こ れ は 日 本 語 で は な く、 イ タ リ ア 語 、 タ イ 語 、 ス ペ イ ン 語 、 ス ウ ェ ー デ ン語 、 ドイ ツ 語 、 フ ラ ンス 語 、 ノ ル ウ ェ ー 語 、 ヘ ブ ラ イ 語 の 第 二 言 語 使 用 者 の 音 韻 体 系 と 言 語 習 得 の 臨 界 期 の 研 究 で あ る が 、 一 般 論 と し て 、 思 春 期 を 過 ぎ て 第 二 言 語 を 習 得 し た 人 の ほ と ん ど は 、 文 法 能 力 と語 彙 知 識 で は か な りの 程 度 ま で 習 得 で き る か も し れ な い が 、 少 な くて も発 音 に 39-一
お い て は 「な ま り 」 が 出 る 。 即 ち 、 思 春 期 を 過 ぎ て か ら 母 語 話 者 な み の 言 語 能 力 を 習 得 し た 人 の 例 は 少 し し か な い 。
LK.オ ブ ラ ー&Kジ ュ ァロ ー(2002)「 言 語 と 脳 一 神 経 言 語 学 入 門 」(岩 林 茂 則 ・割 田 杏 子 共 訳)新 曜 社,pp.99∼101,189∼216;L. K. Obler and K. Gjerlow(1999)Language and the Brain, Cambridge University Press
藤 永 保 氏 に拠 れ ば、 レネバ ー グ の小 児 失 語 症 の研 究 か ら推 測 され る言 語 獲 得 臨界 期 は12,3歳 で あ るが 、研 究 の 前 提 が 正 常 児 の 言 語 獲 得 過 程 を正 面 か ら捉 えて い る の で は な い。 言 語 生 得 説 につ な が り易 い 臨界 期 とい っ た 単 純 な仮 説 で 言 語 獲 得 を理 解 し よ う とす る 無 理 が あ る。 藤永保(2001)「 ことばはどこで育つか」大修館書店,pp.196,198,228 ま た 、 は っ き り わ か っ た こ と と し て 、 第 二 言 語 の 学 習 能 力 は他 の 一 般 的 な 知 的 能 力 か ら は 独 立 した も の で あ る と い う事 例 も発 表 さ れ て い て 、 英 語 不 得 手 な 日本 人 に と っ て は ホ ッ .__.息つ け る 。 即 ち 、 指 導 の 仕 方 と学 習 環 境 の 整 備 を す れ ば 、 日本 語 を 母 語 と して 育 つ 学 習 者 に も 光 明 が 見 え て く る と い う こ と で あ る 。 L.K.オ ブラー&K.ジ ュァロー(2002)「 言語 と脳一神経言語 学入門」(岩林茂則 ・割 田杏 子共訳)新 曜社,pp.206∼207 2.「 学 校 英 語 」 の 限 界 と 基 本 の 習 得 先 ず 、 日本 語 を 母 語 とす る 者 が 英 語 学 習 に 際 し て 、 上 述 の よ う に 非 常 に 大 き な 負 荷 を背 負 っ て い る事 実 を 強 く認 識 し な け れ ば な ら な い 。 次 に 、 英 語 が 一 部 の エ リー トの た め だ け で は な く、 中 学 か ら 高 校 ま で の ほ と ん ど全 員 に 対 し て 指 導 さ れ て い る こ と。 そ し て 、1週5授 業 時 間 程 度 を 当 て 、 多 くの 場 合 、 日本 語 を仲 介 し た 知 識 重 視 の 授 業 が 行 わ れ て い る 現 実 が あ る 。 と こ ろ で 、 仮 に1週5授 業 時 間(50分 ×5回 一250分)と し て も、1週 間 に 英 語 に 接 す る 時 間 は 英 語 国 滞 在1日 の1/3(1日 の睡眠時間8時 間を引いて、 24-8-16時 間 一960分)に も 相 当 し な い 。1年 間 で も、10日(年 間35週 として、250 ×35-8,750分8,750÷960≒9日)に 満 た な い 。 そ の 他 に も 数 々 の 悪 条 件 の 下 に あ っ て 、 「学 校 英 語 」 で で き る こ と は 極 め て 限 ら れ て い る 。 そ れ は 、 唯 一・、 英 語 の 基 本 の 完 壁 な 習 得 を 目 指 す べ き で あ る 。 こ の 一 事 さ え 成 就 させ て お け ば 、 将 来 、 各 自 が 仕 事 で 接 す る 英 語 を 正 し く理 解 し 、 40
短 期 に習 熟 で き る。ま た、英 語 国 で 体 験 す る 実 際 の 英 語 習 得 も容 易 に な り、 進 歩 も速 ま る。 当 然 の こ とな が ら、 仕 事 に 直接 役 立 ち、 学 業 で は興 味 の発 見 に役 立 つ で あ ろ う。 従 って 、 基 本 習 得 期 に は こ と ば の本 質 的観 点 か ら、 どの よ うな 目標 を掲 げ 、 どの よ う な言 語 観 に則 り、 どの よ うに教 材 を扱 い、 どの よ うな 方 法 で 教 え た ら、 学 習 者 は 自分 の こ とば と しての 英 語 を習 得 で きる か 、 そ の授 業 を成 就 させ るた め の 条 件 は何 か 、 さ らに、 どの よ うな英 語 を学 習 した ら よ い か 、 等 々 「英 語 の基 本 を教 え る た め の 、 授 業 の基 本 」 は ど うあ るべ きか を考 察 す る意 図 を以 っ て こ の主 題 を設 定 した 。
H.基
本 習 得 期 の 目標
下記 の技 能 が身 につ いた とき、英語学 習 の基 本習 得期 は終 了 した とい え
る。
1.身 近 な事 柄 ・状 況 と、自分 の 知 識 ・体 験 を手 持 ち の 英 語 で 口述 で き る。 2.い ま 口述 した 事 を、基 本 を守 っ て 、間 違 え ず に手 持 ち の 英 語 で 書 け る。 3.自 分 の 語 彙 の 範 囲 で 話 さ れ た 英 語 な ら、日本 語 に直 さず に理 解 で き る。 4.自 分 の 語 彙 の 範 囲 で書 か れ た 文 章 な ら、日本 語 に訳 さず に理 解 で き る。 *手 持 ち の 英 語:意 味(referent)と 用 法(usage)が 、 日本 語 の 助 け を 借 りず に理 解 で き、 自分 の こ と ば と して 母 語 同 様 に使 え る英 語 。 一 一一41-一皿.基
本 習 得 期 に役 立 つ 「こ と ば の 本 質 」
1.`The Triangle of Meaning,「 意 味 の 三 角 形 」
*C.K. Ogden&1. A. Richards(1923)The Meaning・of Meaning・, Routledge&Kegan Paul Ltd., p.ll
「意 味 の 三 角 形 」 が 述 べ て い'る こ と は 、 概 ね 、"Symbo1"と"Thought or
Reference"、 お よ び"Thought or Reference"と"Referent"と は そ れ ぞ れ 直 接 の 関 係 を 持 っ て い る が 、"Symbol"と"Referent"の 関 係 は 間 接 的 で あ る こ
と を示 し て い る 。
即 ち 、 こ と ば は 一 旦 、 脳 に 入 り、 過 去 の 経 験 に よ っ て 得 て い る 脳 内 の イ メ ー ジ(pictures in the mind)や 考 え と照 合 さ れ て か ら、 意 味 が 決 ま る の で あ り、 最 初 か ら固 定 した 意 味 を も っ て い る の で は な い 。 普 段 、 我 々 はSymbol(記 号・ ことばや写真など)とReferent(指 示物・意味)と は 直 接 の 関 係 が あ る よ う に 思 い 易 い が 、 記 号 とそ の 指 示 物 と の 問 に は 必 然 的 な 関 係 は な い 。 しか し 、 記 号 と そ の 指 示 物 と の 混 同 は 個 人 ば か りで な く社 会 的 に も、 ま た 文 化 的 レベ ル で も頻 繁 に 行 わ れ て い る 。 戦 時 中 、 天 皇 陛 下 の 写 真 を 命 が け で 火 災 か ら守 っ た 校 長 先 生 の お 話 は 、 そ の 当 時 を 知 る 日本 人 な ら誰 で も知 っ て い る こ と で あ り、 ま た そ れ は 当 然 な こ と と し て 教 育 さ れ て い た 。 こ の 話 は 、 写 真 と い う記 号 と 天 皇 陛 下 と い う 人 間(生 き神様Dを 意 図 的 に利 用 して い た こ と で あ る が 、我 々 の 神 経 系 は 記 号 と そ の 指 示 物 、そ し て 、 指 示 物 に係 わ る 経 験 を 同 一 視 す る 傾 向 が あ る 。 映 画 の 中 の 俳 優 の 演 技(記 号)を 俳 優 そ の 人(指 示物)と 勘 違 い す る の は 日 常 茶 飯 事 に あ る こ と だ し、 一42一
Korzybskiの 例 に も、 バ ラ の花(記 号)が あ る と必 ず 花 粉 熱 に か か る(経 験)男 の 話 が あ る 。 あ る 日、 バ ラ の花 を一 束 、 突 然 そ の 男 の 目の前 に持 っ て い く と、 彼 は た ち ま ち猛 烈 な花 粉 熱 の 発 作 を起 こ した 。 と こ ろ で 、 そ の と きの バ ラ は 、 実 は 、 造 花 で あ っ た。 ま た 、 「意 味 の 三 角 形 」 は、 次 の こ と も示 し て い る 。① 同 じ こ とば で あ っ て も、人(脳)が 替 わ れ ば意 味 は変 わ る 。逆 に、② 伝 え た い と思 う意 味 も、 人 の 脳 で 判 断 され て か ら こ とば が 選 ば れ る か ら、 人(脳)が 替 わ れ ば こ とば も変 わ る。 これ を 図示 す る と、 下 の よ うに な る。 以 下 、 さ ら に 詳 細 に 検 討 す る 。
``Symbol"に は 、 Verbal SymbolとNon_verbal Symbolが あ る 。 Verbal Sym-bolは 言 語(こ と ば)の こ と で 、 Non-verbal Symbo1は 、 非 言 語 、 即 ち 、 絵 図(写 真)、 音 、 身 振 り 動 作 な ど 、 こ と ば 以 外 の 伝 達 手 段 を い う 。
"Thought or Reference"と は 、 Symbolの 刺 激 を 受 け て 脳 内 に 浮 か ぶ 過 去 の 経 験 か ら 作 ら れ る イ メ ー ジ(pictures in the mind)を 、 あ れ か 、 こ れ か と 照 合 し 、 反 応 す る こ と 、 即 ち 、 思 考 ・指 示(作 用)を い う 。
"Referent"と は 、 Thought or Referenceに よ っ て 決 ま っ た 実 際 の 物 事 、 イ メ ー ジ 、 と き に 、 指 し 示 す こ と の で き な い 虚 構 。 即 ち 、Symbolの 意 味 で あ る 。
こ の"Symbol"←(象 徴)→"Thought or Reference"←(指 示)→"Referent" の 流 れ は 確 実 で あ り 、 適 切 で あ る か ら 実 線 で 示 し て あ る 。 即 ち 、Symbo1 は 因 果 関 係 に お い て 確 実 にThought or Referenceを 表 し 、 同 様 にThought or Referenceも 他 の 因 果 関 係 か らReferentが 何 で あ る か を 適 切 に 指 示 す る 。 だ か ら 、 実 線 で 描 か れ て い る 。 一 方 、SymbolはReferentの 代 わ り を し て い る に 過 ぎ な い 。 双 方 は 互 い に 想 定 さ れ る 関 係 に あ る の で 、 点 線 で 描 か れ て い
る 。 例 え ば 、 こ と ば"CAr"は 、 人 の 脳 に 届 い た と き 、 正 確 に そ の 人 だ け の 過 去 の 経 験 を 呼 び 起 こ す 。 そ して そ の 人 は 脳 内 で 、 こ と ば"CAr"と 、 過 去 の 経 験 で 得 て い る イ メ..._ジと を 照 合 ・判 断 し、 適 切 な 実 物 の 猫 を指 示 し て 決 め る 。 従 っ て 、 実 物 の 猫 は 、 こ と ば"CAr"が__..人 ひ と りの 脳 で 思 考 ・指 示(作 用)を 経 て か ら決 ま る の で 、 厳 密 に は 、 一 人 ひ と り異 な る 。 最 初 か ら、 ど の 猫 と は 決 ま っ て い な い 。 逆 に 、実 物 の 猫 を 見 て も 人 に よ っ て 、猫 好 き で あ れ ば 、"gentle pet","good ratter"が 浮 か び 、 猫 嫌 い な 人 は"fierce fighter","bird-catcher","flea carrier"
な ど の こ と ば が 浮 か ぶ 。 同 じ こ と ば で も、Aさ ん とBさ ん のSymbolの 意 味 は 、 猫 好 き の 程 度 が 異 な れ ば 、 同 一 で は な い 。 つ ま り、Symbol≠Referent で あ る 。 ま た と こ ろ で 、 下 図 左 のSymbol「 影 絵 」 は 、 脳 内 で 「貴 婦 人 」 を 思 い 浮 か ば せ る が 、 脳 が 指 示 し た 「貴 婦 人 」 のReferentは 、 下 図 右 の 「ガ ラ ク タ の 積 み 上 げ 」 で あ っ た 。Symbolが 、 脳 内 の 潜 在 的 意 味 の 要 素 か ら は 指 示 で き な か っ たReferentの 出 現 で あ る 。 脳 自体 か ら見 て も 、 ま さ に 裏 切 り の 、Symbol≠Referentで あ っ た 。 し か し、 も し脳 が 意 図 的 に 操 作 を す れ ば 、 こ と ば(Symbo1)は 嘘 を つ く こ と が で き る 。 い ず れ に し て も、 Symbol=Ref-erentは 、 と き に は 大 き な 危 険 を は ら む 。 看 板 ア イ ドル 、 ペ コ ち ゃ ん の 「不 二 家 」 の ケ ー キ は 「(賞味)期 限 切 れ 」。 一44
*R.P. Forestの こ と ば を 参 考 に し た`The Triangle of Meaning'「 意 味 の 三 角 形 」 の ま と め:
①W6rds in themselves, have no meaning. Each person has his own meanings, which depend on what he refers to with his words.
Words are not the thing signified("referent"). A person's"referents"will de- pend on what he believes to be important.
R.P. Forest(1972)About Semantics, Channing L. Bete Co. Inc., p.5
① こ と ば 自体 に 意 味 は な い 。 人 は 皆 、 他 の 人 と は違 う 自分 だ け の 意 味 を持 っ て い る 。 そ して そ の 意 味 は 、 そ の 人 が こ と ば を 言 っ て 指 示 し た 物 事 で あ る 。
② こ と ば は 、 こ と ば が 指 示 す る物 事 億 味)で は な い 。 意 味 と い う の は 、[人 それぞれが脳 内にある、過去の経験 か ら得た考 えや イメー ジ(pictures in the mind)が 指示 す る]物 事 で あ る が 、 人 は そ れ ら の 物 事 を 、 手 堅 く照 合 ・確 認 す る こ と も な く、 無 意 識 に こ れ だ と感 じ て い る こ と で 決 め て い る 。
2.`ALadder of Abstraction,「 抽 象 の 梯 子 」
*S.1.HayakaWa(1941)Language in Thong・ht and Action , HarCOUrt, BraCe&CO.,InC., p.153 *Otto Neurath(1948)βo∫'c by Isoりape , Basic English Publishing Co., p.42
8. 7 6. 5. 4. 3."8essie"
密
8.The word"wealth"is at an extremely high Ievd'of ab-straction, omitting almost ail reference to the characteris-tics of Bessie.
7.When Bessie is referred to as an"asset,"still more of hey characteris#ics are{eft aut. 6.When Bessie is included among "farm assets
,"reference is made only to wFiafi she has in common with aEt ofiher saiabfe items on the farm.
5.When Bessie is re erred to as"live-stock,"only those characteristics she has in cvrnmon with pigs, chickens, goats, etc., are referred fio.
4.The word"cow"stands far the charac-teristics we have abstracted as common to cow1, cow2, cow3。_cows,. Character・ istics peculiar to specific cows are left out 3.The word'`Bessie"{cowll tS theη ∂1ηθwe give to the object of perception Qf level 2.了Lhe name is not the object;it merely stands for the object and omits reference to many of the characteristics of the object.
2.The cow we perceive is not the word, but the object of experience, that which our nervous system abstracts{selects]from the totality fihat constitutes the process-cow, Many of the char-acfierisfiics of the process-cow are left OUt. 1.The cow known to science ultimately consists of atoms, etec-trons, etc., according to present-day scientif'sc inference. Charac-teristics trepresented by circles are infinite at this ievel and ever-.changing。 丁his IS the prOcess!乙 レεZ
46
私 た ち は 一 つ の 物 事 を 複 数 の こ と ば で 言 い 表 す こ とが で き る 。 し か し、 そ れ らの こ と ば に は 、 抽 象 の レベ ル に 違 い が あ る 。 例 え ば 、 左 頁 の 図 「抽 象 の 梯 子 」で レベ ル2の 実 物 ・牝 牛 に 、 レベ ル3で"Bessie"と い う名 前(こ とば)を 付 け る 。Bessieを"cow"(牝 牛)と い う と、 他 の"cows"も 含 ま れ る 。 そ こ で 、Bessieを"cow1"と す れ ば 、他 の 牝 牛 は そ れ ぞ れ"cow2","cow3",,, "cow・"と な る 。 即 ち 、 Bessieの 特 性 は 全 て の 牝 牛 と 共 通 す る と こ ろ だ け が 残 り、 他 の 特 性 は 除 外 さ れ る 。 Bessieを"livestock"(家 畜)と い え ば 、 豚 、 鶏 、 山 羊 、 な ど と の 共 通 し た 特 性 だ け が 取 り上 げ ら れ 、Bessieの 他 の 特 性 は 落 と さ れ る 。 Bessieを"farm assets"儂 場 資産)に 含 め れ ば 、 農 場 で 金 銭 と み な す こ と の で き る 財 産 と 共 通 す る 特 性 だ け が 取 り上 げ ら れ る 。 Bessieを"asset"(資 産)と し て 考 え れ ば 、さ ら に 多 くの 特 性 が 除 外 さ れ る 。 そ し て 、Bessieを 極 め て 高 い レ ベ ル8の"wealth"(富)と い え ば 、 Bessie
の 特 性 は ほ と ん ど失 な わ れ て 、 姿 さ え 思 い 起 こす こ と は 難 しい 。 こ の よ う に 、抽 象 の レベ ル が 上 が る ほ ど に 、こ と ば の 指 示 物 は 増 え る が 、 レベ ル2の 実 物 の 特 性 は 失 わ れ て い く。 と こ ろ で 、 こ と ば の 指 示 物 で あ る レ ベ ル2の 実 物 ・牝 牛 そ の も の は 、 レ ベ ル1の 原 子(陽 子 ・中間子 ・中性子 ・電子な どの粒子)で 構 成 さ れ 、 肉 眼 で は 見 え な い 。 例 え ば 、 わ れ わ れ は 、 赤 か ら紫 ま で は 見 え る が 、 そ れ 以 外 は 見 え な い 。 つ ま り、 光 の 、 あ る 波 長 か ら あ る 波 長 ま で の 範 囲 の も の しか 見 え な い し、 ま た 、 あ る 周 波 数 の 範 囲 の 音 しか 聞 こ え な い 。 視 覚 、 聴 覚 に か ぎ ら ず 、 触 覚 、 嗅 覚 、 味 覚 の す べ て に つ い て 同 様 の こ とが い え る 。 即 ち 、 実 物 と い う形 の あ る も の は 、 わ れ わ れ の 神 経 機 能 の 及 ぶ 範 囲 で の 存 在 で あ り、 そ の も の の 真 の 形 は 見 え な い 。 し か し、 逆 に 、 見 え な い 真 そ の も の は 、 神 経 機 能 の 及 ぶ 範 囲 で 、 形 と し て 見 る こ と が で き る 。 ま さ に 色 即 是 空 、 空 即 是 色 の 世 界 を彷 彿 さ せ る 。 ま た 、 こ の1億 分 の1セ ン チ と い う 原 子 レ ベ ル で のBessieの 諸 特 性 は 不 定 で 、 瞬 時 も停 止 す る こ と な く、 無 限 に 変 化 し 続 け る 過 程(即 ち、常 に進行 ・変化 ・発展 を続けている)の レベ ル で あ る 。 固 定 し て い る よ う に 見 え る の は 、 急 速 に 回 っ て い る 色 盤 が 白 く見 え 、 速 く 回 っ て い る コ マ が じ っ と し て い る と い う意 味 で 固 定 し て い る に 過 ぎ な い 。 現 代 の 科 学 に と っ て 、 固 定 し た も 一一47-一
の は な い 。
従 っ て 、 真 に何 か が こ う で あ る と完 全 に 言 い 切 る こ と は で き な い 。Bes. sieは 静 止 し た 客 体 で は な く、 力 動 的 な 過 程 で あ る 。 厳 密 に 言 え ば 、 今 日 のBessieは 昨 日 のBessieで は な い 。 同 様 に 、 Bessieを 表 現 す る 数 々 の こ と ば
も、 決 して 全 く同 じ意 味 を 持 つ こ と は な い 。 ギ リ シ ャ の 哲 学 者Herakleitos の こ と ば を借 りれ ば 、 「人 は 同 じ川 に 二 度 入 る こ と は で き な い 。」 3.`AReferring Function,「 指示機能」一 ことばの本質か ら学ぶ授業の基本・ *「 意 味 の 三 角 形 」 か ら、 同 じ こ と ば で も 一 人 ひ と り異 な るReferent(指 示 物 ・意味)を 持 つ こ と と 、 逆 に 、 一 つ のReferentか ら 浮 か ぶ こ と ば も、 一一 人 ひ と り異 な る こ と が わ か る 。 即 ち 、 脳 内 に 潜 在 す る 意 味 の 決 定 要 素 は 一 人 ひ と り異 な る の で 、 こ と ば は 唯 一 の 正 し い 意 味 を持 っ て い る の で は な い 。 こ の こ と か ら 、 辞 書 も意 味 の 領 域 の 画 定 は す る が 、 外 在 的 な 個 人 の 意 味(実 際)を 直 接 に 載 せ て い る の で は な く、 意 味 の 似 通 っ た 状 況 の 群 を 記 して い る に 過 ぎ な い こ と が わ か る 。 *「 抽 象 の 梯 子 」 か ら は 、 一 つ の 物 事 は レベ ル の 異 な る 複 数 の こ と ば を 持 ち 、 こ と ば の レ ベ ル が 上 が れ ば 上 が る 程 に そ の こ と ば のReferentは 多 く な る こ とが わ か る 。しか も 、Referentそ の も の す ら、常 に 変 化 し て い る 。 以 上 、 二 つ の こ とば の 本 質 か ら明 らか な よ うに 、 こ とば の 意 味 は極 め て 不 確 実 で あ る。 この 不 確 実 性 を補 い、 意 味 を正 し く伝 達 す る た め に最 も重 要 な こ と は、 こ とば のReferentを 明 らか に す る こ と で あ る。 従 っ て 、 授 業 に お い て は 、 指 導 す る英 語 の指 示 す る もの(Referent)が 、 学 習 者 の 目に見 え る よ うに 、 実 物 、 実 際 の 動 作 、 絵 図 な どで 明確 に提 示 さ れ る こ とが 大 切 で あ る。 Referentの 一 般 性 が 大 き く抽 象 度 が 高 くて 、 実 物 提 示 が で きな い と きは 、 類 似 した 実 例 を示 す とか 、 身 近 な こ とば で 説 明 して 、 誤 解 を最 小 限度 に抑 え な け れ ば な らな い 。 身 近 な こ と ば は、 人 々 に共 通 の 物 事 を想 起 させ る の で、Referentを 共 有 し易 い か らで あ る。 一48一
R.P. Forest(1972)About Semantics, Channing L. Bete Co., Inc., p.5 従 っ て 、 学 習 者 に とっ て は、 そ の英 語 が 何 を指 示 して い る か 、 指 示 す る 物 事 を イ メ ー ジ して 、 明確 に捉 え る習 慣 を身 につ け る こ とが 大 切 で あ る。 な お 、 この 習 慣 は、 母 語 で は ス キ ップ し易 い が 、 英 語 を学 ぶ 過 程 で 一 語 一 語 を実 際 と照 合 し、 確 認 しな が ら学 ぶ こ と に よ っ て、 初 め て 身 に つ け る こ とが で きる 。 英 語 学 習 のMeritで あ る。 た だ し、 英 語 を 日本 語 に置 き換 え る作 業 をす れ ば 、 日本 語 で 考 え る こ と に な り、 効 率 が 悪 い ばか りで な く、 従 来 と変 わ らぬ 日本 の 英 語 教 育 に戻 る こ と に な る。 49
IV.基 本 習 得 期 に お け る 導 入 の 基 本
1.実 物 提 示 、 実 際 の 場(Live Situation)の 演 示 、 絵 図 の 提 示
「初 期 言 語 指 導 の 原 則 」Nos.2,4,8,9,14
`The Cone of Experience'「 経 験 の 円錐 」
*E.Dale(1969)Audio-Visual Methods in Teaching, p.107
こ とば の 意 味 は実 際 の 経 験 と、 本 を読 み 、 人 の 話 を 聞 くな どの 記 号 的 経 験 に よっ て 決 ま る。 最 も確 か な意 味 は実 際 の経 験 に勝 る もの は な い 。 しか し、 現 実 的 に実 際 の 経 験 だ け で は 限 りが あ る。 わ れ わ れ は物 事 の 大 部 分 を 記 号 的 経 験 に よ って 知 り、 人 生 を い きて い る。 良 い文 学 を 読 ん だ 人 々 は、 読 め な い 人 々、 読 ま な い 人 々 よ り、 よ り多 くの 人 生 を生 きて い る と言 え よ う。 そ れ に して も、 実 際 の 経 験 と記 号 的 経 験 の 差 は大 きい 。 テ レ ビで 戦 闘 の 場 面 を見 て い て も怪 我 は しな い 。 小 説 の 主 人 公 が 美 味 しい お 寿 司 を食 べ て い て も、 読 者 の 味 覚 は満 足 しな い。 しか し、 戦 争 を経 験 した 人 、 美 味 な食 べ 物 を食 した 経 験 の あ る 人 は な い人 と、 な い 人 は あ る 人 と異 な る 意 味 を理 解 す る。 円錐 の 頂 点 に位 置 す る こ と ば の 意 味 は 、 基 本 的 に全 て底 辺 の 「直 接 的 ・目 的 的 経 験 」、 即 ち、 実 際 の 経 験 に よ っ て 裏 付 け られ て い る こ とが わか る。 「直 接 的 ・目的 的経 験 」 は現 実 の生 活 そ の もの 、 生 々 しい 体 験 で あ り、 手 で触 れ て確 か め られ る もの 、 歯 を立 て て確 認 で き る もの 、 で あ る。 子 供 の 頃 の 豊 か な想 い 出 は す 尽 て 直 接 経 験 に 関 係 して い る 。 そ れ は瑞 々 し く、 新 鮮 な感 覚 に満 ち て い る。 この 直 接 経 験 が 円錐 の 底 辺 に位 置 して い る こ と は、 これ が あ らゆ る効 果 的 学 習 の基 盤 に な っ て い る とい う こ とで あ る。 英 語 の授 業 で も指 導 に効 果 的 な実 際 、例 え ば 、実 物 の 提 示 、演 示 を経 て 、 テ レ ビ、 フ ィ ル ム 、 テ ー プ レ コー ダー 、 絵 な どの 利 用 を積 極 的 に心 掛 け 、 最 後 に、 目的 とす る 「言 語 的 象 徴 」(こ とば ・英語)に 導 け ば、 豊 か な経 験 を 基 盤 と した英 語 を与 え る こ とが で き る。 そ の 英 語 は き っ と、 学 習 者 の手 持 ち の英 語 に な る で あ ろ う。 2.日 本 語 の 排 除 「初期言語指導の原則」N・・.17,18 英 語 と多 くの 相 違 点 を持 つ 日本 語 を仲 介 させ る こ と は、 英 語 構 文 の習 得 を 阻 み 、 発 音 の 習 熟 を遅 らせ 、 直 読 直 解 をで きな くさせ る 原 因 に な っ て い る。 直 読 直 解 とい うの は 、 英 語 で 考 え る とい う こ とで あ り、 そ れ は英 語 の指 示 物 を直 接 、 脳 内 に イ メ ー ジ す る こ とで あ る。 英 語 とそ れ に対 応 す る 日本 語 を結 びつ け な い 。 51一
も し、英 語 と 日本 語 を結 び つ け れ ば、そ れ は 日本 語 で考 え る こ とに な り、 第1章 で述 べ た 日本 語 と英 語 との 大 きな差 異 、 即 ち、 ① 言 語 的 に距 離 が 大 き く離 れ て い る こ と、 ② コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て はHigh Contextが 身 上 の 日本 とLow Contextな 英 語 文 化 との 差 異 、 ③ 英 語 を使 わ な くて も生 活 に 困 らな い こ とに起 因 す る英 語 学 習 に対 す る 自覚 的 動 機 の 欠 如 、 ④ 高 周 波 の 英 語 と低 周 波 の 日本 語 の 差 異 、 ⑤ 右 脳 と左 脳 の生 理 的機 構 の不 均 衡 に よ る創 造 性 、 ア イ デ ィ アへ の 抑 制 、 ⑥ 英 語 母 語 話 者 に とっ て も難 解 な 日本 語 学 習 、 ⑦ 思 春 期 以 降 に始 め た学 習 者 に は難 しい英 語 の発 音 、 等 々数 多 くの 負 荷 を担 う こ と に な る。 さ らに 、 そ れ 以 外 に も、 「訳 す 」 とい う作 業 そ の もの に は本 質 的 に 時 間 と複 雑 さが 伴 う こ と を下 に記 す 。 ① 「訳 す 」 作 業 「訳 す 」作 業 は 、 原 本 の こ と ば が 脳 内 に 潜 在 す る 過 去 の 経 験 に 作 用 し て 、 自 分 のReferent(指 示物 ・意 味)を 決 定 し 、 次 は 、 そ のReferentが 指 示 す る 脳 内 の 別 の 経 験 を 表 出 す るSymbolを 見 つ け る 作 業 で あ る 。 同 一 人 が 、 抽 象 度 の 高 い 作 業 で あ る"Thought or Reference"を 二 度 に わ た っ て 稼 働 さ せ な け れ ば な ら な い 。 左 脳 と右 脳 の 生 理 的 機 構 の 不 調 和 が 再 び 引 き起 こ さ れ る こ と に な る 。 例 え ば 、 「般 若 心 経 」 の 翻 訳 、 柳 澤 桂 子 著 「生 き て 死 ぬ 智 慧 」(小 学 館) の 作 業 を 「意 味 の 三 角 形 」 に 当 て は め る と 下 記 の よ う に な る 。 英 文 和 訳 ま た は 和 文 英 訳 の 作 業 で は 、 抽 象 度 と複 雑 さ が 一・層 高 ま る こ と は 言 う ま で も な い 。
Thought or Reference Thought or Reference 柳澤桂 子 柳澤桂 子
「般 若心経」
色 即 是 空
空 即 是 色
「生 きて死 ぬ智慧 」 お 聞 きなさい 形 の あ る もの いいか えれ ば物 質的存在 を 私 達 は現象 として とらえて い るの です が 現 象 とい う もの は 時 々刻 々変化 す る ものであ って 変化 しない実体 とい うもの はあ りませ ん 実体 が ないか らこそ 形 をつ くれ るのです 実体 が な くて 変化 す るか らこそ 物 質で あ るこ とがで きるの です 柳 澤 桂 子(2004)「 生 き て 死 ぬ 智 慧 」 小 学 館,p.7② 日本 語 を 介 す る 授 業 のMerits and Demerits
2005年6月 、 尼 崎 市 立 武 庫 東 中 学 校 へ 教 育 実 習 の 視 察 に 行 き 、 実 習 生 の 日本 語 を 使 う授 業 を 見 た と き に 思 っ た こ とで あ る 。 授 業 は よ く準 備 さ れ 、 順 調 に 進 ん で い た が 、 生 徒 が 習 得 し て い る 英 語 に 少 な か らぬ 危 惧 の 念 を 抱 い た 。 <Merits> *短 時 間 に 沢 山 の 知 識 が 与 え られ る 。on=「 ∼ の 上 に 」 で 終 わ る こ と が で き る 。 *生 徒 は 英 語 の 新 し い 知 識 を得 て 、 「勉 強 し た 」 実 感 が 持 て る 。 *先 生 が 話 す 冗 談 や こ と ば の あ や(figure of speech)な ど 、 表 現 上 の 技 巧 が 楽 し め る 。 *質 問 し易 く、 先 生 や 級 友 と の コ ミ ュ ケ ー シ ョ ン が 取 り易 い 。 *教 師 が 、 比 較 的 気 軽 に授 業 に 臨 む こ とが で き る 。 <Demerits *英 語 を 一 旦 、 日 本 語 に 訳 し て か ら 理 解 す る 。 直 読 直 解 が で き な い 。 *目 の 前 の 場 面 や 状 況 を 直 接 に 英 語 で 表 現 で き な い 。 時 間 が か か る 。 *Broken English、 即 ち 、 英 語 と して 誤 っ た 構 文 を作 る 原 因 に な る 。 *日 本 語 の 発 音(soun(i, rhythm, stress, pitch, intonation)に な り易 い 。 *英 語 的 発 想(無 生 物 主 語 な ど)が 思 い 付 き に くい 。
V.基
本 習 得期 にお け る授 業 の仕 方
1.英
語 が 伝 達 の道 具 で あ る こ とを実感 させ る仕 方:
「初期言語指導の原則」Nos.1-4 Situation(場)を 表 現 す るSentence(文)は 、 必 ず 実 際 と一 致 さ せ る 。 実 際 と違 う こ と 、 嘘 を 言 わ な い 。 例 え ば 、 教 師 が 教 卓 で 自分 の 手 を示 し て 、This is my hand.と 言 え ば 、 学 習 者 はThat is your hand.と 言 う。 ま た 、 教 師 がThat is your hand.と 言 え ば 、 学 習 者 は 自分 の 手 を 指 差 し てThis is my hand.と 言 う 。 こ と ば の 意 味 は 、 特 に 、 基 本 習 得 期 に お い て は 、 実 物 、 実 際 で あ る こ と を 体 験 さ せ る こ と が 大 切 で あ る 。 従 っ て 、「経 験 の 円 錐 」の 底 辺 、 直 接 的 ・ 目 的 的 経INに 近 い 導 入 と練 習 を心 が け な け れ ば な ら な い 。 英 語 ゴ ッ コ の よ う な フ ィ ク シ ョ ン は 、 学 習 者 が 自 ら の 脳 で 行 っ て い る 規 則 の 作 成 作 業 を 混 乱 させ る の で 、 避 け る こ とが 望 ま し い 。 つ ま り、 嘘 は つ か な い 。 2.Sentence Structureを 飽 き さ せ ず に 繰 り返 し練 習 さ せ る 仕 方: 「初 期 言 語 指 導 の 原 則 」Nos.10,16〈tookを 用 い たS+V+0+Prep. phrase構 文 の 授 業 〉 . 机 上 に 本 、 帽 子 、 鞄 、 グ ラ ス を 置 い たsituationを つ く り 、
T:This is a book. It is on the table.と 、 そ のsituationを 既 習 の 文 で 表 現 す る 。 そ れ を 聞 い て 学 習 者 は 次 の よ う に 言 う 。
Ls:That is a book. It is on the table. T: (無 言 で 、 帽 子 を 指 さ す 。)
Ls:That is a hat. It is on the table.
T:Good!と 言 っ て か ら 、 bad, glassに つ い て も 指 で 示 す だ け で 学 習 者 に 言 わ せ る 。
以 上 は 、 全 て 既 習 の 語 句 と 構 文 に よ る 新 構 文 導 入 の た め の 復 習 で あ る 。 次 か ら 新 構 文 の 導 入 に 入 る 。
T:本 を 取 る 。Itook the book off the table. tookし た こ と を ジ ェ ス チ ャ ー で 示 し な が ら 、や や ゆ っ く り と 、 し か し 、英 語 の 発 音(・hythm, stress, int・nazi・n,・t・.)は正 し く 、 も う 一 度 言 う 。
T: Itook the book off the table. 次 に、 帽 子 につ い て も同 様 に行 う。 T: Itook the hat off the table. こ の 間 、 学 習 者 は 、SituatiOnと 一・致 し たSentenceで 表 現 し て い る 教 師 の 演 示(dem・nstrati・n)を 観 察 し て い る 。 3回 目 に 当 た る 鞄 の 時 は 、 教 師 は 鞄 を 取 っ た 後 、 学 習 者(Ls)を 誘 い な が ら 一 緒 に 言 う 。
T&Ls:1/You took the bra off the table.
4回 目 の グ ラ ス の 時 は 、 教 師 は グ ラ ス を 取 っ た 後 、 学 習 者 全 員 に 向 か っ て 一 緒 に 言 う よ う に 顔 の 表 情 や 仕 草 を 使 っ て 指 示 す る 。
Ls: You took the lass off the table.
T:Good!と 言 っ て 、 個 人 を 数 名 指 名 し て か ら 、 も う 一 度 全 員 で 言 わ せ て 盛 り 上 げ る 。
以 上 、tookを 使 っ たS+V+0+Prep. phraseの 導 入 と練 習 は 、0(目 的 語) に 実 物(book, hat, bag, glass)を 次 々 と 代 替 さ せ た 作 業 で あ る が 、 学 習 者 は 実 物 に 注 意 を 向 け て い る た め 、 常 に 新 鮮 な 気 持 ち で 新 構 文 を何 度 も繰 り 返 し使 う こ と に な る 。 こ の 指 導 の 仕 方 を 図 示 す る と、 下 記 左 図 の よ う に な る 。 〈好 ま しい指導 の仕 方 〉 〈一般 的な指導 の仕 方 〉 吉澤美穂(1981)「 教科書 を使い こなす工夫」大修館書店,p.22 上 述 し た よ う に 、 ひ とつ の 新 構 文 に 対 し て 、 今 回 の 場 合 は 実 物 の ① 本 、 ② 帽 子 、 ③ 鞄 、 ④ グ ラ ス を 用 い て4つ のsituations(1)∼(4)を 作 っ た 。 situation(1)で は 、 教 師 は 実 物 ① を 使 っ て 、 演 示 す る 。 同 様 に 、 situation (2)で は 、 実 物 ② を 使 っ て 演 示 す る 。 こ こ ま で 学 習 者 は教 師 の 演 示 を 注 意 一55一
深 く観 察 し、 そ の 文 型 と意 味 を 自分 で発 見 す る 。situation(3)で は、 実 物 ③ を使 って 、 演 示 しなが ら、 学 習 者 を誘 っ て 一 緒 に言 う。situation(4)で は 、 教 師 は こ とば を使 わず に実 物 ④ を 指 し、 顔 の表 情 や 仕 草 を使 っ て 、 学 習 者 だ け で 一 緒 に言 わ せ る 。 次 に、 数 人 の個 人 に言 わ せ 、 最 後 に ま た全 員 で行 っ て 、 締 め く くる。 一 方 、 一 般 的 な教 科 書 の場 合 で は、 指 導 した い文 型 、 重 要 な機 能 語 を易 か ら難 へ と順 序 立 て 、 そ れ らが 使 わ れ る よ う な場 面 を設 定 して編 集 され て い る。従 っ て、 そ の よ うなsettingを 自然 な 内 容 と して 成 立 させ る た め に は 、 目的 とす る文 型 を何 度 も使 う わ け に は い か な い し、 指 導 した い 語 句 や 文 型 に 関係 の な い こ と も教 え る必 要 が 出 て くる。 い きお い 、 指 導 項 目が 多 くな り、 日本 語 の説 明 を余 儀 な くさ れ て 、 知 識 の記 憶 が 主 導 に な る。 そ の よ う な、 一 般 的 な教 科 書 を使 っ て効 果 的 に教 え る に は 、 そ の 時 間 内 に指 導 可 能 な、 よ り基 本 的 に 重 要 な文 型 や 少 数 の 語 句 を選 び 出 し、 そ れ ら を く好 ま しい 指 導 の 仕 方 〉 に 当 て は め て導 入 と練 習 を行 え ば よ い 。 3.級 友 の 自 発 的 発 言 を 正 し く聴 取 で き て い る か チ ェ ッ ク す る 仕 方: 復 習 や 練 習 の と き、 学 習 者 に は 積 極 的 に 自 由 に発 言 さ せ る が 、 級 友 の 発 言 の 内 容 が き ち ん と聴 き 取 れ て い る か ど う か 、 確 か め る 。 Teacher:You will say what he/she said.と い っ て 一 人 の 学 習 者 を 指 名 す る 。 学 習 者 は 次 の よ う に 言 っ て 、 今 聴 い た 級 友 の 発 言 の 内 容 を 自分 の こ と ば で 言 う。 ま た は 、 級 友 の 発 言 を 繰 り返 す 。 Learner:He/She said," :' 非 常 に 簡 単 だ が 、効 果 的 な 仕 方 で あ る 。関 係 代 名 詞whatに 抵 抗 が あ る な ら 、 Teacher:What did he/she say?
Learner:He/She said," ."
4.日 本 語 の 助 け を 不 要 に す る 教 材 配 列(Grading)と 授 業 の 仕 方:
「初 期 言語指 導 の原則 」No.6
指 導 のstepsを 最 小 に す る 。 昨 日 学 ん だ こ と を 利 用 し て 、 今 日 学 ぶ こ と を 教 え る 。 今 日 学 ん だ こ と を 役 立 て て 、 明 日 学 ぶ こ と を 教 え る 。
1.A. Richards&C. Gibson(1975):English Through Pictures, Book I,洋 販, pp.4∼7
*ペ ージ 内 の 読 む順 序 は 、左 → 右 。下 へ 行 っ て 、左 → 右 。絵 が 文 字 の 意 味 で あ る。 4 5
Iam here.
She is here.
am [ε曙!m] helre [hi∂!hj∈ 》コi
6
t
hie is there.
She is there.
s[12]there[lea]
They are here.
}
It is there.
are[a:]
They are there.
の
You are there.
You are here.
暫
舜
◎
7
You are there.
we[wi:]
*既 習事項
It is there.
We are here.
ノ
"匂 蓉
They are there.
1,Ybu, He, She, It, They,*新 学 習 事 項 here, there;am, axe, i s;we
1.It is here/there. It→(黒 板 の 両 端 、 Itが 置 い て あ っ た 場 所 に 、 そ れ ぞ れ 女 性 と 男 性 の 二 人 を 後 ろ 向 き に 立 た せ て 、)She, Heに か え て い く。
2.She is there. He is there.→(教 師 はshe, Heに 背 を 向 け 、 全 員 の 方 を 向 い た ま ま 、 二 人 を 一 緒 に し て ・)They are there.→(She, Heを 除 く 全 員 で ・)We are here.→ (she, Heを 前 に 向 け 、 二 人 に 向 か っ て 、)Ybu(複 数)are there.→(she, Heは 二 人 で) We are here.→(she, Heの ひ と り に 向 か っ て 、)
3.You(単 数)are there.← →(教 師)Iam here. (she, Heそ れ ぞ れ に 、)You(単 数) ← →1を 同 時 、 交 互 に 行 う 。 上 記1∼3は 、 具 体 的 に 、 次 の よ う に 行 う 。 Itに 使 う 物 は 、 学 習 者 が そ の 名 前 を 知 ら な い 物 が 良 い 。 知 っ て い る と 、 学 習 者 は そ の 名 前 を 言 い た が る 。 例 え ば 、 「黒 板 消 し 」 な ど は わ か る ま い 。 「黒 板 消 し 」(erasers)を2つ 用 意 し て 、 黒 板 の 左 右 両 端 に1個 ず つ 置 く 。 T(教 師)は 黒 板 に 向 か っ て 、 左 側 の 「黒 板 消 し 」 の 左 に 立 ち 、 正 面 を 向 き 、 左 手 で 「黒 板 け し 」 を 指 し て 、 "lt is here:'(2度 言 う。)そ の 位 置 で 、 同 じ く左 手 で 黒 板 の 右 端 に 置 い て あ る 「黒 板 消 し 」 を 指 し て 、"lt is there:'(2度 言 う。) 次 は 、 黒 板 の 右 側 の 「黒 板 消 し」 の 右 に 立 ち 、 正 面 を 向 き 、 右 手 で 「黒 板 け し 」 を 指 し て 、
"lt is here:'(2度 言 う。)同 じ く右 手 で 左 側 の 「黒 板 消 し 」 を 指 し て"lt is there." (2度 言 う。) 一 応 、 こ れ でIt isとhere/thereの 演 示 は す ん だ が 、 学 習 者 が 理 解 で き た かcheckが 必 要 で あ る 。 先 ず 、 一 人 のL(学 習 者)を 最 初 のT(教 師)の 位 置 に 行 か せ て 、Tと 同 様 の こ と を や ら せ る 。 あ る い は 、Tが 、 黒 板 の 左 右 に あ る い ず れ か の 「黒 板 消 し 」1つ を 前 席 のLの と こ ろ へ 持 参 し て 、 そ のLに 、"lt is here:'と 言 わ せ 、 遠 く に 残 し て あ る 「黒 板 消 し 」 を 指 し て 、Lが"lt is there."と 言 う よ う に, 仕 草 に よ っ て 仕 向 け る 。Tが 手 伝 っ て も 良 い 。 次 は 全 員 に 対 す る 練 習 を さ せ る 。 全 員 に 対 し て の 練 習 で は 、 最 初 に 、 バ レ ー ・ボ ー ル ぐ ら い の 大 き さ で 軽 い 球 体 を 使 っ て 、 ひ と り のLに 投 げ る 。 受 け 取 っ たLが 、"lt is here."そ れ に 触 れ ら れ るLs(学 習 者 達)も"lt is here:'
触 れ ら れ な いLsは"lt is there."と 言 う 。 多 少 騒 が し く な る が 、 ま あ 、 い い で は な い で す か 。 ボ ー ル がTの と こ ろ へ 帰 っ て き て 、 最 後 は 、T:"lt is here." Ls:"lt is there:'
次 に 、 今 の 左 右 の 「黒 板 消 し」 の 位 置 に 男 性 と 女 性 のLsを 、 そ れ ぞ れ 正 面 か ら見 て 後 ろ 向 き に 立 た せ る 。Tは 左 右 ど ち ら か のLの 側 に 行 っ て 立 ち 、"He/She is here."(2度 言 う。)反 対 側 に い るLを 指 し て 、"She/He is there."と 言 う。 直 ぐ に 、 も う 一 人 別 のLをTの 側 へ 呼 び 、 Tは 仕 草 で い
まTが や っ た よ う に 、Lに も仕 草 と と も に 言 わ せ て 、 手 で 示 した こ と の 意 味 を 明 確 に 認 識 させ る 。
さ ら にTは 、 前 に 出 て い る後 ろ 向 き の 二 人 のLsの 一 人 を 指 し示 し て 、 Ls 全 員 に 向 か っ て 、 そ のsituationを 言 語 化 す る よ う に 仕 向 け る と 、"He l She is there:'と 言 う。 次 は 、 前 に 出 て い る 後 ろ 向 き の 二 人 を そ の ま ま 、 一 緒 に 寄 せ る 。Tは 全 員 の 方 を 向 い て 、T:"They are here."(2度 言 う・)Tは 二 人 か ら で き る だ け 離 れ た 場 所 へ 移 動 し て か ら 、"They are there"と 言 う 。 そ し て 全 員 に も 言 う よ う に 仕 草 す る 。Tも 大 き な 声 で 一 緒 に 、 T&Ls:"They are there." そ し て 直 ぐ 、 全 員 に 手 を 繋 が せ て 、 ま ず 上 に 上 げ さ せ 、 そ の ま ま の 状 態 で 、T:We, Weと2度 言 う 。LsもTに 真 似 て 、 We, Weと い う 。Tの 仕 草 と 音 頭 で3度 目 に 一 緒 に 、Weで 下 げ 、 areで 上 げ 、 hereで 下 げ る 。 も う 一 度 、 同 様 に 、 繋 い だ 手 を 上 げ さ せ 、 全 員 でWe, Weと 騒 ぐ 、 そ し て 声 が 揃 っ て き た ら 、 前 と 同 じ く 、 下 げ て 、 上 げ て 、 下 げ る 。"We are here."TはLs
全 員 に 向 か っ て 、Ybu(複 数)are there.前 に 出 て い る 二 人 を 全 員 の 方 に 向 か せ て 、 二 人 に も 手 を 繋 が せ て 、(恥 ず か し くて 手 が 繋 げ な い 時 は、Tが 真 ん 中 に入 っ て 手 を 繋 ぎ、 三 人 で 、)"We are here:'。 他 の 全 員 は 、"You are there."と 言 う 。(直 前 で 、They are, We areと 学 習 して い る の で 、 Lsか ら のYbu(複 数)areは 出 易 い 。)
次 に 、Tは 、 前 の 二 人 の 名 前 を 言 っ て 、
T:Aさ ん 、Bさ ん 、"You are there:'そ の 二 人 は 、LA・B:"We are here."と 言 う 。