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健常人における舌前方の感覚機能 ―年代間の比較検討―

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(1)口 咽 科  2020; 33(2):89 ∼ 96. 原   著. 健常人における舌前方の感覚機能 年代間の比較検討―. ―. 任  智美 1)・梅本 匡則 1)・西井 智子 1) 前田 英美 2)・阪上 雅史 1) 1)兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 2)大阪みなと中央病院耳鼻咽喉科.  味覚の年齢変動の報告も多く存在するが,変化し始める年齢や味質,様相など見解は一様ではない.また舌 の一般体性感覚の検査法は未だ確立はされておらず,年齢変動の報告もほとんどない.今回,舌前の味覚,及 び一般体性感覚を測定し,年代間の閾値の差異について検討したので報告する.後向きに検査値が確認できた 1,200 人を対象とした.電気味覚検査は 1,200 例,濾紙ディスク法は 885 例,二点識別閾検査は 166 例,電気痛 覚検査は 107 例が施行されていた.味覚閾値は加齢に伴って上昇し,50 歳代から有意な差を認め,甘味は保た れる傾向にあった.女性の方が閾値は低い傾向にあった.舌の一般体性感覚閾値は小児期∼若年期においても 加齢に伴って直線的に上昇する傾向がみられた.  キーワード:味覚加齢性変化,舌の一般体性感覚,電気味覚検査,濾紙ディスク法.  また舌の一般体性感覚は,食物の食感に重要な役割を. はじめに. もつ.しかし味覚とは異なり,舌の一般体性感覚におい.  現在までに様々な手法を用いて味覚機能を年代別に検. ては検査法も基準値も確立されておらず,年齢変動の報. 討した報告は多く存在し,そのほとんどは,年齢が高く. 告は少ない.. 1-17. .し.  今回,舌前方の味覚閾値を年代別に調査し,年代間の. かし,閾値が上昇し始める年齢,しやすい味質,変化の. 閾値差,閾値が上昇し始める年代,変化しやすい味質,. 様相,影響する因子などの見解は一様ではない.加齢に. 男女差を検討した.また一般体性感覚閾値の年代別閾値. 伴う味覚閾値の上昇は,機能の脱失までにはならず,自. についても合わせて調査したので報告する.. なるにつれ味覚閾値は上昇すると結論づけている. 1. 覚されないことも多い robust 型と言われている .しか. 対象・方法. し,味覚の閾値変化は,時に嗜好の変化や塩分・糖分の 摂取過多,また食欲低下による低栄養状態を引き起こす.  2013 年 4 月から 2019 年 5 月までに当科で中耳手術前. ことがあり,加齢性変化がどのようにおこるかを知る必. に鼓索神経機能評価として味覚検査を施行し,閾値が確. 2. 要がある.Inui-Yamamoto ら は,老齢ラットでは味の. 認できた 1,200 人(男性 560 人,女性 640 人,6-88 歳(平. 嗜好が変化し,濃い濃度の苦味,塩味,うま味物質を好. 均 43.6 歳) )を対象とし,レトロスペクティブに健側の. んだと報告した.加齢により味覚感受性は低下し,味覚. 術前検査結果を正常側として調査した.味覚機能評価. の老年性変化は存在すると結論づけたものの,鼓索神経. には電気味覚検査(TR-06Ⓡ,RION),濾紙ディスク法. の応答は各年齢群で有意な違いはみられなかったと報告. (テーストディスクⓇ,三和化学研究所)を使用し4,ま. 3. した.また,Narukawa ら は行動分析において老齢化. た一般体性感覚の評価には二点識別閾検査(ディスク. マウスでは苦味と塩味の感受性は低くなり,加齢により. リミネーターⓇ )と電気痛覚検査(STG 4002Ⓡ,Multi. 味質の選択的感受性の低下があることを示したが,Inui-. Channel Systems,Germany)を使用した.レトロスペ. 2. Yamamoto ら の報告とは異なり,鼓索神経の応答は有. クティブにカルテを調べ,測定した閾値が確認できたの. 意に低下したと報告した.このように未だ動物実験にお. が電気味覚検査 1,200 人,濾紙ディスク法 885 人,二点. いても加齢性変化の見解は一致しない状況である.. 識別閾検査 166 人,電気痛覚検査 107 人であった.明ら 89.

(2) 口 咽 科  33 : 2. 任  智美,他 4 名. かな味覚嗅覚障害を訴える例,過去に味覚障害や嗅覚障. に伴う閾値上昇が顕著にみられた.統計学上は電気味覚. 害の治療歴がある例は除外した.. 検査,濾紙ディスク法(4 味平均)ともに有意な閾値上昇.  一般体性感覚の評価は味覚検査と同部位の舌尖部より. の傾向は 50 歳代からみられた(表 1a,b) .濾紙ディスク. 2cm 側方で測定した.レトロスペクティブに調査を行. 法において味質別に年代別平均値を示した結果を図 2 に. ったため,60 歳未満の症例のみの検討となった.電気. 示した.すべての味質において加齢に伴い閾値は上昇し. 痛覚検査では刺激呈示時間を 0.2ms に設定し,被験者に. た.味質別に年代間での比較をおこなったところ,甘味. 刺激の種類が ジリッとした , ひっかいたような もの. では 10 歳代と 50 歳代に有意差を認めたのみで,他の味. であることを刺激提示しながら説明した.0.1mA から. 質と比較して加齢性変化の影響は少ないと考えられた. 始め,0.1mA 間隔で上昇させ,2 回連続で認知できた点. (表 2).. を最初のターニングポイントと設定し,刺激を 0.1mA.  年代別一般体性感覚閾値を図 3 に示す.味覚と同様に. ずつ下降させた.再び,2 回連続で認知できなくなった. 年代の上昇とともに閾値も上昇する傾向がみられたが,. 時点を二番目のターニングポイントとした.1 番目から. 味覚では 50 歳以降でのみ有意に上昇したのに対して,. 5 番目までのターニングポイントの平均値を閾値と定め. 二点識別閾検査と電気痛覚検査では 7 歳から 29 歳まで. た.二点識別閾検査では 2 点の計測幅を最大幅 15mm. の,加齢による機能低下はないと想定される年代におい. から最小幅 2mm へと変化させて舌に垂直に軽く接触さ. ても高年齢群で有意な閾値上昇がみられた.. せ,最終的に 2 点を識別可能な最小幅(mm)を計測値.  図 4 に電気味覚検査と濾紙ディスク法における性別. とした18.. 平均閾値の結果を示す.電気味覚検査では「20 歳代」,.  統計ソフトには StatMate Ⅳ(ATMS 社)を用い,p. 「40 歳代」,「80 歳以上」以外で,濾紙ディスク法では. < 0.05 を統計学的有意とした.本検討は当院において倫. 「10 歳以下」と「80 歳以上」以外において女性のほうが. 理委員会の承認を受けている(承認番号:第 2587 号) .. 男性より閾値は低い傾向にあった.全年齢で比較すると 年齢は男性のほうが有意に若かったにも関わらず(男性. 結   果. 43.5 ± 21.1 歳,女性 48.0 ± 20.7 歳),女性のほうが有意.  鼓索神経領域における年齢別味覚平均閾値を図 1 に示. に味覚の閾値は低かった(電気味覚検査,濾紙ディスク. す.電気味覚検査,濾紙ディスク法ともに一見して加齢. 法ともに p < 0.01,U 検定).. 図 1 鼓索神経領域における年代別味覚平均閾値   電気味覚検査,濾紙ディスク法ともに加齢に伴い,閾値は上昇する傾向を示した.. 90.

(3) 口 咽 科  33 : 2. 味覚機能の年代間における比較 表 1 各検査における年代間での閾値比較 a.電気味覚検査. 6∼9歳 10 ∼ 19 歳 20 ∼ 29 歳 30 ∼ 39 歳 40 ∼ 49 歳 50 ∼ 59 歳 60 ∼ 69 歳 70 ∼ 79 歳 80 歳∼. 6∼9歳. 10 ∼ 19 歳. 20 ∼ 29 歳. 30 ∼ 39 歳. 40 ∼ 49 歳. 50 ∼ 59 歳. 60 ∼ 69 歳. 70 ∼ 79 歳. 80 歳∼. NS NS NS NS NS NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001. NS NS NS NS NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001. NS NS NS NS NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001. NS NS NS NS NS NS P < 0.01 P < 0.001 P < 0.001. NS NS NS NS NS NS P < 0.01 P < 0.001 P < 0.001. NS P < 0.001 P < 0.001 NS NS NS NS P < 0.05 P < 0.01. P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.01 P < 0.01 NS NS P < 0.05 P < 0.01. P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.05 P < 0.05 NS P < 0.05. P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.01 P < 0.01 P < 0.05 NS. b.濾紙ディスク法(4 味質平均). 6∼9歳 10 ∼ 19 歳 20 ∼ 29 歳 30 ∼ 39 歳 40 ∼ 49 歳 50 ∼ 59 歳 60 ∼ 69 歳 70 ∼ 79 歳 80 歳∼. 6∼9歳. 10 ∼ 19 歳. 20 ∼ 29 歳. 30 ∼ 39 歳. 40 ∼ 49 歳. 50 ∼ 59 歳. 60 ∼ 69 歳. 70 ∼ 79 歳. 80 歳∼. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.01. NS NS NS NS NS P < 0.01 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.01. NS NS NS NS NS NS P < 0.05 P < 0.01 P < 0.05. NS NS NS NS NS NS NS P < 0.05 NS. NS P < 0.001 P < 0.01 NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.05 NS NS NS NS NS. NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.01 P < 0.05 NS NS NS NS. NS P < 0.01 P < 0.01 P < 0.05 NS NS NS NS NS. 電気味覚検査,濾紙ディスク法ともに 50 歳代から有意な閾値上昇を示した.. Kruskall Wallis 検定,Dunn 法による多重比較. 図 2 各基本 4 味における年代別閾値の変化   各 4 味質ともに年齢に伴い閾値は上昇傾向を示した.. 比較検討しているものが多いため5,何歳から有意に低. 考   察. 下し始めるのかを検討した論文は少ないといえる.電.  今回の検討では電気味覚検査,濾紙ディスク法ともに. 気味覚検査において鼓索神経領域の閾値は,中里ら(n. 従来の報告と同様,加齢による有意な閾値上昇を認め. 6 7 は 60 歳代から,Fons(n = 80) は 40 歳から, = 461). た.過去の報告では老年者群と若年者群の二群に分けて. 8 は 60-69 歳の群でそれより若年 Pavlidis ら(n = 156). 91.

(4) 口 咽 科  33 : 2. 任  智美,他 4 名 表 2 各基本 4 味における年代間の閾値比較(鼓索神経領域). a.甘味. 6∼9歳 10 ∼ 19 歳 20 ∼ 29 歳 30 ∼ 39 歳 40 ∼ 49 歳 50 ∼ 59 歳 60 ∼ 69 歳 70 ∼ 79 歳 80 歳∼. 6∼9歳. 10 ∼ 19 歳. 20 ∼ 29 歳. 30 ∼ 39 歳. 40 ∼ 49 歳. 50 ∼ 59 歳. 60 ∼ 69 歳. 70 ∼ 79 歳. 80 歳∼. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS P < 0.05 NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.05 NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. 6∼9歳. 10 ∼ 19 歳. 20 ∼ 29 歳. 30 ∼ 39 歳. 40 ∼ 49 歳. 50 ∼ 59 歳. 60 ∼ 69 歳. 70 ∼ 79 歳. 80 歳∼. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS P < 0.05 P < 0.05 P < 0.01 NS. NS NS NS NS NS NS NS P < 0.05 NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.05 NS NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.05 NS NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.01 P < 0.05 NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. 6∼9歳. 10 ∼ 19 歳. 20 ∼ 29 歳. 30 ∼ 39 歳. 40 ∼ 49 歳. 50 ∼ 59 歳. 60 ∼ 69 歳. 70 ∼ 79 歳. 80 歳∼. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.05. NS NS NS NS NS NS P < 0.01 P < 0.001 NS. NS NS NS NS NS NS P < 0.01 P < 0.001 NS. NS NS NS NS NS NS P < 0.05 P < 0.001 NS. NS P < 0.001 NS NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.001 P < 0.01 P < 0.01 P < 0.05 NS NS NS NS. NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 P < 0.001 NS NS NS NS. NS P < 0.05 NS NS NS NS NS NS NS. 6∼9歳. 10 ∼ 19 歳. 20 ∼ 29 歳. 30 ∼ 39 歳. 40 ∼ 49 歳. 50 ∼ 59 歳. 60 ∼ 69 歳. 70 ∼ 79 歳. 80 歳∼. NS NS NS NS NS NS NS NS NS. NS NS NS NS NS P < 0.05 P < 0.001 P < 0.01 P < 0.001. NS NS NS NS NS P < 0.05 P < 0.01 P < 0.01 P < 0.001. NS NS NS NS NS NS NS NS P < 0.01. NS NS NS NS NS NS NS NS P < 0.05. NS P < 0.05 P < 0.05 NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.001 P < 0.01 NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.01 P < 0.01 NS NS NS NS NS NS. NS P < 0.001 P < 0.001 P < 0.01 P < 0.05 NS NS NS NS. b.塩味. 6∼9歳 10 ∼ 19 歳 20 ∼ 29 歳 30 ∼ 39 歳 40 ∼ 49 歳 50 ∼ 59 歳 60 ∼ 69 歳 70 ∼ 79 歳 80 歳∼ c.酸味. 6∼9歳 10 ∼ 19 歳 20 ∼ 29 歳 30 ∼ 39 歳 40 ∼ 49 歳 50 ∼ 59 歳 60 ∼ 69 歳 70 ∼ 79 歳 80 歳∼ d.苦味. 6∼9歳 10 ∼ 19 歳 20 ∼ 29 歳 30 ∼ 39 歳 40 ∼ 49 歳 50 ∼ 59 歳 60 ∼ 69 歳 70 ∼ 79 歳 80 歳∼. 甘味は 10 歳代と 50 歳代に有意な差を認めるのみで加齢性変化は緩やかと考えられた.酸味と苦味は 50 歳代以上で有意な差がみら れやすい傾向にあった. Kruskall Wallis 検定,Dunn 法による多重比較. 92.

(5) 味覚機能の年代間における比較. 口 咽 科  33 : 2. 図 3 年代別一般体性感覚閾値 舌 2/3 前方の一般体性感覚は味覚と同様に年齢に伴い閾値は上昇する傾向を示した.その上昇のしかた は味覚より直線的であり,若年者において測定値と年齢の間で弱いものではあるが相関関係を認めた.. a.電気味覚検査における年代別,性別平均閾値. a.濾紙ディスク法における年代別,性別平均閾値. 図 4 年代別,性別平均閾値 電気味覚検査,濾紙ディスク法ともに女性における閾値が男性より有意 に低かった(両者とも p < 0.01, U 検定).. の各群と比較して有意な上昇を認めたと報告している.. 昇するものではなく,少なくともある年齢層までは閾値. 9 は直線的に味覚閾値の加齢性変化 Krarup ら(n = 140). の上昇がみられないタイプであるとまとめている.今. 6. はおこるとしているが,中里ら は,直線的に閾値は上. 回の検討では,両者の検査において 50 歳代から有意な 93.

(6) 口 咽 科  33 : 2. 任  智美,他 4 名. 上昇を認め始めたものの,電気味覚検査は 40 代から濾. な差は認めなかったと報告している.今回の検討ではレ. 紙ディスクは 30 代から閾値が緩やかで一部直線的に上. トロスペクティブのため,高齢の群は検討できなかっ. 昇しているように捉えられた.この結果は被験者数が. たが,小児期から若年期でさえも年齢が低いほど閾値. 10, 11. 1,381 例の富山ら,冨田の報告に類似している. .. は低い結果となった.電気刺激が受容体を介さず free.  濾紙ディスク法での加齢性変化を検討した報告は少. nerve ending を刺激するのとは異なり,カプサイシン. なく,有意な閾値上昇がみられる年代は検討されてい. 溶液は舌表面に存在する TRPV1(Transient Receptor. 12. は加齢とともに閾値は上昇し,40 歳代ま. Potential Vanilloid 1)に受容されるために,純粋に比. では中央値はほとんど 3 を示し,60 歳代以上では平均 4. 較はできない.二点識別閾検査においては基本的に同様. 前後と明らかな上昇がみられるとしている.濾紙ディス. の手法,さらに Fukunaga ら16 は二点を 0.2mm 間隔で. ク法以外の定性検査を使用した報告では,山内ら13 は全. 施行しており,本検討より緻密である.例数が各群で. 口腔法において 60 歳代(女性),70 歳代(男性)から. 30 例と少なかったことで有意な差が出なかった可能性. 有意な閾値の上昇を認めたとしている.. も考えられる.. ない.池田.  低下しやすい味質別の検討では Pingel ら14 は酸味と.  今回の舌前方の電気味覚閾値は 20 歳代において最も. 15. 低かった.Pavlidis ら8,富山ら10,また冨田ら11 も同様. は甘味と塩味に変化が少なく,酸味と苦味は変化が大き. に鼓索神経領域において直線的な閾値上昇ではなく,あ. いとしている.苦味に関してこの二つの報告は結果が反. る一定の年代では前の年代より閾値は低くなる傾向にあ. 対となったが,Pingel ら14 は苦味に関しては舌後方で,. るとしている.一方,体性感覚における検討では,20. 甘味に閾値が上昇する傾向を示したとある.Nordin ら. 15. Nordin ら は舌前方,中央,後方の三領域で評価して. 歳代までの若年者においてすでに年齢と有意な相関関係. 15. いる.Nordin ら の図からは後方では若年者と老年者. を認めたことより,閾値は直線的に上昇する可能性が示. の違いはほとんどなく,前方では差が大きいことより,. 唆された.今回,電気痛覚検査において,7-9 歳の群で. 舌の部位によって苦味の加齢性変化は異なると解釈でき. 突出して低い閾値となった.年齢が低い例においては検. 15. る.本検討でも前方を評価したため,Nordin ら と同様. 査の正確性が問題になるところであるが,今回の検討で. に有意差が出やすかったと考えられた.本検討では甘味. は小児例すべてにおいて中耳手術 2 週間後から 1 ヵ月後. は 10 歳代と 50 歳代の間でしか有意差はみられず,顕著. に再度同検査を施行しており,再現性が得られたと判断. な加齢性変化はみられなかったことから比較的保たれる. している(成人例では 1 回目の検査値と 2 回目の検査値. と結論付けられた.過去の報告でも一様な結果はみられ. の差が平均 0.156mA であったが,小児ではそれ以上の. 5. てはいないが,甘味は保たれやすいとするものが多く ,. 差を認めた例はなかった).しかし 40 代の閾値が低かっ. 今回の所見と一致した.. た原因は不明である..  検査結果が一様にならない理由として,手法の違いや.  三浦19 は SW 知覚テスターを用いて 4-15 歳の小児に. 調査対象の条件などが挙げられる.今回は過去の報告の. 対して口腔内の知覚を部位別に評価した結果,下顎歯. 中で比較的被験者が多いが,喫煙者や内服している薬,. 肉,上顎歯肉,またキャリブレーションとして行った示. 疾患での選別や除外はしなかった.高齢者は薬や疾患も. 指では低年齢ほど閾値が低い傾向にあったとしている.. 多く,また義歯,生歯など口腔内の環境なども味覚閾値. 同報告では,舌の触圧覚評価も行われているが年齢にお. 1. への影響もあり ,純粋な加齢性変化を捉えるのは難し. ける有意差は認めなかったとしている.当科でも当初. 6. い.中里ら は鼓索神経領域においては喫煙の影響はみ. SW テストを用いて評価をしていたが,舌は敏感な部位. られなかったとしているが,今後,被験者数を増やす中. であることから,成人例のほとんどで最も細い径(1.65. で詳細な検討が必要と考える.. Fmg)や 2 番目に細い径(2.36Fmg)で検知できたた 8.  過去の報告では男女差に関して有意な差はみられない. め,舌の体性感覚の年齢変化を調査する検査としては不. との報告はあるものの,女性のほうが閾値が低いとする. 向きと判断した.. 6,13,14,16. .本検討でも女性のほうが味覚閾値は.  味覚の加齢性変化は末梢器官の変化のみではなく,中. 低い傾向にあった.40 歳代の電気味覚検査結果と 30 歳. 枢の機能変化も起こっており20,心身の機能に関するた. 代の濾紙ディスク法の結果を除外した 30 歳以上にその. め21,閾値上検査も含めて総合的にとらえていく必要が. 傾向は顕著にみられた.. あると考えられる.. 報告が多い. 16.  Fukunaga ら は二点識別閾検査とカプサイシン溶液. 結   論. を使用して舌前方の一般体性感覚の年齢変化を検討した.  1)舌前方の味覚閾値は年代が上がるとともに著明に. ところ,18-29 歳の群と 65-85 歳の群とでは閾値に有意 94.

(7) 口 咽 科  33 : 2. 味覚機能の年代間における比較. 上昇した.. 11)冨田 寛:電気味覚検査測定の基礎.味覚障害の全貌.東 京,診断と治療社;2011,p. 108-116..  2)30 歳代より直線的に上昇し,50 歳代から有意な上. 12)池田 稔:味覚定性定量検査(濾紙 Disc 法)と電気味覚. 昇を認めた.. 検査の相関性について.耳鼻臨床 1981;27:172-188..  3)甘味の閾値は保たれる傾向にあった.. 13)山内由紀,遠藤荘平:全口腔法味覚検査(第 2 報)―加齢.  4)一般体性感覚は小児期から若年期においても年齢. 変化と精査・喫煙による影響―.日耳鼻 1995;98:1125-. と閾値に有意な相関を示し,年齢による変化がみられた.. 1134. 14)Pingel J, Ostwald J, Pau HW, et al : Normative data for. 付   記. a solution-based taste test. Eur Arch Otorhinolaryngol 2010;267:1911-1917..  本論文について申告すべき利益相反を有しない .. 15)Nordin S, Bramerson A, Bringlov E, et al : Substance. 文   献. and tongue-region specific loss in basic taste-quality identification in elderly adults. Eur Arch Otorhinolaryngol. 1)Bartoshuk LM : Taste robust across the age span?. Ann. 2007;264:285-289.. NY Acad Sci 1989;561:65-75.. 16)Fukunaga A, Umematsu H, Sugimoto K : Influence of. 2)Inui-Yamamoto C, Yamamoto T, Ueda K, et al : Taste. aging on taste perception and oral somatic sensation.. preference changes throughout different life stages in. Journal of Gerontology 2005;60:109-113.. male rats. PLoS One 2017;12:e0181650.. 17)Landis BN, Welge-Luessen A, Bramerson A, et al :. 3)Narukawa M, Kurokawa A, Kohta R, et al : Participation. Taste Strips -a rapid, lateralized, gustatory bedside. of the peripheral taste system in aging-dependent. identification test based on impregnated filter papers. J. changes in taste sensitivity. Neuroscience 2017;358:. Neurol 2009;256:242-248.. 249-260.. 18)Sakaguchi A, Nin T, Katsura H, et al : Trigeminal and. 4)Tomita H, Ikeda M, Okuda Y : Basis and practice of. taste sensations of the tongue after middle ear surgery.. clinical taste examinations. Auris Nasus Larynx 1986;13. Otol Neurotol 2013;34:1688-1693.. (Suppl):S1‒S15.. 19)三浦誠子:小児の口腔,顎顔面領域における触圧覚閾値.. 5)Methven L, Allen VJ, Withers CA, et al : Aging and taste.. 口病誌 2004;71:71-79.. Proceedings of the Nutrition Society 2012;71:556-565.. 20)Iannilli E, Broy F, Kunz S, et al : Age-related changes. 6)中里真帆子,遠藤荘平,冨田 寛,他:電気味覚検査の加. of gustatory function depend on alteration of neuronal. 齢性変化について.日耳鼻 1995;98:1140-1153.. circuits. J Neuro Res 2017;95:1927-1936.. 7)Fons M : Psychophysical scaling of electric taste. Acta. 21)Muller C, Kallert S, Renner B, et al : Quantitative. Otolaryngol 1970;69:366-370.. assessment of gustatory function in a clinical context. 8)Pavlidis P, Gouveris H, Anogeianaki A, et al : Age-. using impregnated taste strips . Rhinology 2003;41:. related changes in Electrogustometry thresholds, tongue. 2-6.. tip vascularization, density, and form of the fungiform papillae in humans. Chem Senses 2013;38:35-43.. (令和 2 年 1 月 31 日 受理). 9)Krarup B : Electrogustometry : A method for clinical taste. 別刷請求先:. examinations. Acta Otolaryngol 1958;49:294-305..  〒 663-8501 西宮市武庫川町 1 番 1 号 8 号館 5 階. 10)富山紘彦,冨田 寛,奥田雪雄:電気味覚の正常値.日耳. 兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科医局. 鼻 1971;74:1580-1587.. 任 智美. 95.

(8) 口 咽 科  33 : 2. 任  智美,他 4 名. A comparative study of normative sensory functions in anterior tongue among the groups of age Tomomi Nin1), Masanori Umemoto1), Tomoko Nishii1) Emi Maeda2) and Masafumi Sakagami1) 1)Department of Otorhinolaryngology, Hyogo College of Medicine 2)Department of Otorhinolaryngology, Osaka Central Hospital.   Objective : There have been many reports on age-associated changes in taste, with most demonstrating taste thresholds to increase with age. However, the period when age-associated changes in taste and deterioration of taste quality begin, and influencing factors, remain unclear. The aim of this study was to investigate age-related changes in taste and lingual somatosensory function on the anterior tongue.   Subjects and Methods : The investigation involved 1200 subjects comprising 560 men and 640 women, with a mean age of 43.6 years and age range from 6 to 88 years. Electrogustometry(EGM, n = 1,200), filter paper disc test (FPD, n = 885), two-point discrimination(n = 166), and electrostimulation(n = 107)were performed on the healthy side before middle ear surgery. Taste and lingual somatosensory sensitivities were assessed on the anterior tongue region.   Results : The thresholds of all tests increased with age. Significant differences in the thresholds on EGM and FPD were found in subjects from their 50s. The threshold of sweet taste was not significantly different among the age groups, except between those in their 10s and 50s. Women had lower thresholds on both EGM and FPD than men. There was a significant correlation between the lingual somatosensory thresholds and age, even in children and young subjects.   Conclusions : Taste and lingual somatosensory functions deteriorated with age ; however, sensitivity to sweet taste was less affected by aging than the other tastes. The somatosensory threshold on the tongue increased linearly from the pediatric period. Key words : age-related change in taste function,lingual somatostatic sensation, electrogustometry, filter paper disc method. 96.

(9)

表 2 各基本 4 味における年代間の閾値比較(鼓索神経領域) a.甘味 6 〜 9 歳 10 〜 19 歳 20 〜 29 歳 30 〜 39 歳 40 〜 49 歳 50 〜 59 歳 60 〜 69 歳 70 〜 79 歳 80 歳〜 6 〜 9 歳 NS NS NS NS NS NS NS NS NS 10 〜 19 歳 NS NS NS NS NS P<0.05 NS NS NS 20 〜 29 歳 NS NS NS NS NS NS NS NS NS 30 〜 39 歳 NS NS NS NS

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