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統合の観点から発展的に考察する力を高める授業づくりの研究 ―5年「式と計算」を例にして―

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Ⅰ 研究の目的

 新しい学習指導要領(2018)の算数科の目標 は「数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動 を通して,数学的に考える資質・能力を次のとお り育成することを目指す.」とし,(1)知識及び 技能,(2)思考力,判断力,表現力等,(3)学 びに向かう力,人間性等の資質・能力の三つの柱 に基づいて目標を示している.  黑﨑(2019)は,数学的な見方・考え方を道具, 数学的活動を児童の学習活動,数学的に考えるこ とを資質・能力と捉え, 児童が数学的な見方・ 考え方を働かせ,数学 的な活動を行うことが 数学的な思考力で,そ の力を養うことが大切 であると述べる(図 1).  先に述べた目標の中で,特に筆者が注目するの は(2)思考力,判断力,表現力等である.そこ には「(前略)基礎的・基本的な数量や図形の性 質などを見出し統合的・発展的に考察する力,数 学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表 したり目的に応じて柔軟に表したりする力を養 う.」ことが求められている.  中島は「『統合的・発展的な考察』は『数学的 な考え』推進の上で極めて重要な役割を果たす」 (2015,p.125)と述べ,「統合的」と「発展的」 との関係について,「『統合的』と『発展的』とを 並列的に読みとらないで,『統合といった観点に よる発展的な考察』と読みとることが望ましい.」 (2015,p.125)と述べる.統合を発展の方向性 を示す観点と捉えて考察することを主張する.  既習事項を足場に,統合の観点から未習事項を 関連づけたり結びつけたりすることで,発展的に 考えを広げたり捉え直したりする活動は,体系的 図1 三者一体構造

統合の観点から発展的に考察する力を高める授業づくりの研究

―5年「式と計算」を例にして―

山野 定寿

真庭市立北房小学校  本研究の目的は,統合と発展を並列に捉えて行うこれまでの実践に対し,マッピング式授業過程モデルを 用い授業を構成することで,統合という観点で発展的に考察する力を高め,算数の深い学びを創ることである.  この目的の授業を5年生「式と計算」で構想し,サイクリックな授業実践研究を行った.はじめに,三角 形の1辺がおはじき4個・3個等と条件を変え,かける数とかけられる数を帰納的に考え,言葉の式が「(1 辺の個数-1)×3」で一般化する.次に,発展的にこの式の適用範囲を拡張するために,三角形の式化の 経験を活かして統合的・発展的に考えて四角形の式を見つける.さらに,三角形や四角形の式をもとに , 統 合の観点から発展的に五角形の場合を考察し,かける数が形の辺の数であることを言葉の式でまとめて一般 化した.  この実践を通して,統合の観点から発展的に考察し,算数の深い学びを創る授業づくりは,マッピング式 授業過程モデルにより,無理なく対象の水準が高まる授業展開を構想すれば,児童が一旦三角形の場合で構 成した式をもとにして,多角形の場合へ,統合の観点から発展的に関連づける深い学びをすることが分かった. キーワード/統合的・発展的考え方,数学的思考の質,深い学び,マッピング式授業過程モデル

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な数理を創造的につくるために必要である.  しかし,これまでの高学年の授業実践や調査で も統合することと発展させることを分離した展開 が多く,中島のいう統合を,発展の方向性を示す 観点と位置づけ統合的・発展的に考察し深い学び を創造する授業や調査はあまり見受けられない.  例えば,国立教育政策研究所 教育課程研究セン ターの「特定の課題に関する調査」(2006)では「発 展的・創造的に考えること」として「おはじき問 題」(注 1)が出されている.その調査は三角形に発 展するものの一般化し統合的に考察しない.  調査では,四角形の一辺をおはじき 100 個に した場合に必要な個数を求める式を問う問題が ある.正答率は 4 年 31.4%5 年 51.8%6 年 49.0% と低い.この問題の難しさは,単に数が大きく なったからだけではない.四角形を作るときのき まり(1 辺の個数- 1)× 4 を,四角形の一辺が 4 個の図や式「3 × 4」の一例から類推し,6 個 や 100 個の場合を考えなければならなく,異な る複数の事柄から共通点を見いだす統合の観点は なく「統合といった観点による発展的な考察」と いう視点はない.  そこで,本研究の目的を,統合の観点から発展 的に考察する児童の力を高め,深い学びを創る授 業の過程モデルを用いた方法を実証することとし た.

Ⅱ 研究の方法と内容

1 研究の方法  研究の方法を明確にしておく.まず,先行研究 から「統合の観点から発展的に考察すること」を 定義する.次に統合の観点から発展的な考察をす る授業づくりには,数学的対象の水準と思考の質 の必要性を説き,「マッピング式授業過程モデル」 を用い「おはじき問題」の授業を構想する.そして, 構想した授業の実践のプロトコルやノートなどを もとにモデルにマッピングを行う.児童の考察の 様相を分析し,どのように児童が何を統合の観点 として発展的に考察を行い,深い学びに向かった かどうか,思考の過程ごとの人数を示す.最後に, どの程度の児童が「数学的関係の一般性の理解」 の水準まで高まったか人数を示しながら.統合の 観点から発展的な考察をする授業づくりにおける 「マッピング式授業過程モデル」の有用性と本実 践の指導上の留意点を考察する. 2 数学的な見方・考え方と数学的に考える (1) 数学的な考え方の先行研究 ①「構え」「態度」としての数学的考え方  赤攝也(1968,p.24)は,「数学的考え方」は, 「一つの態度」と述べ,片桐(1988,p.116)は 数学的な学びの構え(set)であることを示唆し ている.  例えば,児童がこれまでの学習を 1 つにまと めようと構え考察をはじめたとき,「統合的考え 方」を,適用範囲を広げようと構え考察をはじめ たとき,「発展的考え方」を用いはじめることに なる.  また数学的な考え方は,Lester(1985,p.61) のいう Guiding Forces,Schoenfeld(1985,p.138) らのいう Driving Forces で,児童が数学的に考え る構えと考える方向性を示すだけでなく,思考を 導いたり動かしたりする働きを持つと考えられて きた. ②統合的・発展的考え方  まず,統合的・発展的考え方について,中島は 先の引用どおり「『統合といった観点による発展 的な考察』と読みとることが望ましい.」と述べ る.理由は「『統合』ということは,数学の立場 で発展を考える際に,それを限定する方向,また は,価値観を表すものの,いわば代表として,用 いてあるからである.」 (2015,p.125)とし,統 合を発展の方向性を示す観点と捉え,「集合によ る統合」(2015,p.127)「拡張による統合」(2015, p.128)「補完による統合」(2015,p.129)を例 示している.  しかし,片桐(1988,p.124)は,統合的考 え方を「数学的な多くの事例を個々ばらばらにし

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ておかないで,より広い観点から,それらの本質 的な共通性を抽象し,これによって,同じものと してまとめる考えである.」(1988,p.148)と 規定し統合と発展を分ける.片桐は,「数学的考 え方」を「態度」と「数学的方法に関係した考え方」 「数学的内容に関係した考え方」との 3 つに分類 し,「統合的考え方」と「発展的考え方」は数学 的内容を支える「数学的方法に関係した考え」と して例示する.そして,統合のタイプとして,共 通性を見出しまとめる「高次への統合」「包括的 統合」,より広い範囲に広げる「拡張による統合」 の 3 つを例示する.前 2 つは中島の「集合によ る統合」で最後は「拡張による統合」とほぼ同義 で,「統合といった観点による発展的な考察」と いう視点は,2 人に共通する視点である.  片桐は,発展的考えを「統合したことをさら に広い範囲に用いていこうとしたり,1 つの結果 が得られてもさらにより広い方法を求めたり,こ れをもとにして,より一般的な,より新しいも のを発見していこうとする考えである.」(1988, p.159)と規定し,発展的な考え方を統合的考え 方と区別し,「条件変更による発展」と「観点変 更による発展」の 2 つに型分けする. 「条件変更 による発展」は,さらに①条件の一部を他のもの に置き換えてみる.または条件をゆるめる.②問 題の場面を変えてみる.に分けられ,どちらも 「広い意味での問題の条件を変えてみる」(1988, p.161)ことである.「観点変更による発展」は,「思 考の観点を変えてみる」(1988,p.163)という ことである. ③ワーキンググループの数学的な見方・考え方  教育課程部会算数・数学ワーキンググループの 「数学的な見方・考え方」(2016)には,「何に着 目して捉えるか」を見方,「どのように考えるか」 思考の方向性を考え方とし,小・中・高等学校の 見方・考え方の例示が領域ごとに示される.そし て見方として中学校の表(p.4)には,片桐の数 学的考え方の理想化,一般化などが例示される.  また表には考え方として「帰納的に考える」「類 推的に考える」「演繹的に考える」という推論が 考える方向づけとして位置づけられる.  このように,これまで述べたいろんな要素が混 在していた「数学的考え方」が,「見方」と「考 え方」「数学的に考える」ことに分類されたので ある.統合的・発展的に考察することは資質能力 で,方法知であり,「獲得すべきこと」として「数 学的に考える」ことに位置づけられたのである. (2) 統合の観点から発展的に考察すること  学習指導要領(2018,p.26)では,統合的な 考察は「異なる複数の事柄をある観点から捉え, それらに共通点を見出して一つのものとして捉え 直すこと」と定義される.また発展的に考察する ことは「物事を固定的なもの,確定的なものと考 えず,絶えず考察の範囲を広げていくことで新し い知識や理解を得ようとすること」と定義される.  先のワーキンググループの捉え方では,統合的 に考えることは「関連づける」「既習の事項と結 びつける」ことであるが(p.2),これは既に習得 し一旦まとめた既習事項や導入で学びまとめた事 項を観点として,新たに学びまとめる未習事項を 一つのものとして捉え直すことを目的として,関 係づけ,既習と未習の事項とを統合の観点から発 展的に考察し,両者を一つのものに体系化するこ とと捉えればよいと考える.発展的に考えること は「適用範囲を広げる」「条件を変える」「新たな 視点から捉え直す」が例示された.「適用範囲を 広げる」「条件を変える」を先の「条件変更によ る発展」,「新たな視点から捉え直す」を「観点変 更による発展」と捉えればよく,新たな知識や理 解を得ることを目的として,適用範囲を広げたり, 条件を変えたり,新たな視点から捉え直したりす る考察と捉えればよいと考える.  すなわち 統合といった観点による発展的な考 察とは,「新たな知識や理解を得ることを目的と して, 関連づけたり,既習事項と結びつけたりし, 一つのものとして捉え直したものを,さらに適用 範囲を広げたり,条件を変えたり,新たな視点か ら捉え直したりする考察」と定義する.先に述べ

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たとおり,これは体系的な数理をつくるために不 可欠な観点であり,物事を関連づけ多面的に考え る態度を養うと考える.  この定義に従い,授業に於ける児童の考察の 流れを考えると,4 つの流れが考えられる.例え ば「おはじき問題」のように三角形の場合の○の 数の求め方を対象にした考察から多角形の場合の 考察まで発展していくという 1 時間内で統合の 観点から発展的考察を繰り返すア 1 時間の考察 の流れ(表 1).「図形(三角形)の面積」のよう に直角三角形が長方形の半分であることから始ま り,どんな三角形も底辺×高さ÷ 2 で求められ ることを考察するような,1 時間で統合的に考察 したことを観点に,次の時間の課題を発展的に考 察するイ単元を通しての考察の流れ(表 1).他 にも,かけ算は 2 年生に始まり 6 年生まで数を 拡張しながら続く.このように学年をまたいだり, 同じ学年でも他の単元を挟んだりする考察の流 れ.またそれらの複合,例えばイの単元の中にア の繰り返しの考察が入ることなども考えられる.  先行の実践ではアの実践は例がほとんどなく, 筆者はアの流れの授業を構想することにする. 3 マッピング式授業過程モデル (1) 数学的に考える対象の水準と数学的思考の質  数学的に考える対象について,学習指導要領 は「事象を数量や図形及びそれらの関係などに着 目して捉え,論理的,統合的・発展的に考える」 (2018, p.23) ことと述べる.これは小山の言う 「考察する対象の理解の階層水準」を示すと考え られる.以下,対象の水準あるいは水準とする.  小山は「ア数学的理解はどのような水準によっ て深化するか.イある水準においてどのように数 学的思考が展開するか.」(2010,p.218)の研 究を通し,2 軸過程モデルを構築した.「数学的 な理解が『数学的対象―対象間の関係―関係の一 般性』(表 1)のひとまとまりを繰り返すことで 深化していく.」と述べ,理解の深化を数学的概 念や性質,原理・法則などの「数学的対象の理解」 それらの「数学的対象間の関係の理解」その「数 学的関係の一般性の理解」を「数学的理解の階層 水準」(2010,p.224)とし 2 軸過程モデルの縦 軸にした.  また,小山は,理解の広がりとして「直観的思 考」「反省的思考」「分析的思考」の 3 つを思考 の質とし,モデルの横軸に位置づけた(表 2).  すなわち,直観的思考は数学的対象を操作す る活動における思考,反省的思考は直観的な操 作活動に注意を向け,創造的・発展的に対象の水 表1 児童の統合といった観点による発展的考察の流れ 表2 3つの思考の質(小山2010,p.232)

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準を図や言葉・式で表現する水準に引き上げる思 考,分析的思考は反省的に表現したものを統合の 観点から精緻化することを目的とする思考と定義 する.  これらの 3 つの直観・反省・分析的思考の相 互作用によって一旦統合した式などを観点とし, さらに 3 つの思考で統合した式などを関連づけ 発展的に考察することにより,数学的対象は広が り,水準は対象の理解,対象間の関係の理解,関 係の一般性の理解へと高まっていくものと考える のである.  したがって,統合を目的とする分析的思考(表 2)は統合の観点を作る上で大切な思考であり, 統合の観点から考察する発展的考察は,対象の水 準を向上させ,数学的対象の関係の一般性の理解 に向かう考察であると考えるのである(表 3). (2) マッピング式授業過程モデル  山野(2015)は,深い学びの構想には不可欠 と考える対象の水準と思考の質を縦軸に位置づ け,児童の考察の流れを横軸に位置づけた「マッ ピング式授業過程モデル」を構想した.  対象の水準や思考の質を位置づけたのは,統合 の観点による発展的考察を児童に促すとき,児童 の思考の質を直観的思考から徐々に統合を図るこ とを目的とする分析的思考に促し,その統合した 対象を観点として発展的に対象間の関係性を考察 させたり,関係の一般性を考察させたりしていく, 発展的考察の方向性を示すことであり,深い学び の構想に不可欠あると考えたからである.  その対象の水準と思考の質を縦軸に位置づけた のは,小山が「(3 つの思考の質の相互作用)によっ てある水準から次の水準へと上昇しうる」(2010, p.230)と述べるからで,3 つの水準それぞれに 3 つの思考の質を下から直観的・反省的・分析的 思考の順に位置づけ,縦軸で理解の深まりと思考 の広がりを表した.そして,その縦軸と授業の 経過に伴う児童の考察の流れを表した横軸との 2 軸をもとに,複数の児童の考察の流れに伴う対象 の水準や思考の質をマトリックス的にプロット し,それを数種の直線で結んだ.これにより児童 の考察に伴う対象の水準や思考の質の変容の様子 を折れ線で記述しようとしたのが「マッピング式 授業過程モデル」である.  Pirie&Kieren(1994)は「超越的再帰モデル」 に学生の理解の成長を折れ線でマッピングし記録 した.設定した水準に課題が指摘されるが,変容 が明確に捉えられ,記述性の高いモデルである.  しかし,「超越的再帰モデル」は長い成長過程 の理解の発達を記録したものである.また小山 の「2 軸過程モデル」の縦軸の水準は算数・数学 科の 1 単元,横軸の思考の質は 1 時間に対応し, どちらのモデルも 1 時間の思考変化は捉えにく い.  そこで筆者は数学的対象の水準と学習者の 1 時間の思考の変化を容易に視覚化できる「マッピ ング式授業過程モデル」で,先の表 1 アの 1 単 元 1 時間の授業を構想する.児童が 1 時間のど の過程でどんな思考の質を働かせ理解を深めるか をマッピングで記述し視覚化するのである.異な る複数の式から児童が統合的に考察し,何を共通 点として見出し,まとめたものを観点として,ど のような発展的な考察を行うか,モデルを用いて 授業を構想したり,記述して分析したりするので ある. (3) マッピング式授業過程モデルよる授業構想  マッピング式授業過程モデルで「おはじき問題」 の授業を構想したのが図 2 であるが,1 時間の授 業構想の理解の水準は以下の通りである. 第 1 段階:三角形の○の数の求め方の法則を対 象にした対象の理解水準  1 辺の○が 3 個,4 個…と条件を他の数に置き 換え,複数の場合から共通点であるかける数が 3, かけられる数が(1 辺の個数 -1)であることに帰 表 3 統合の観点からの発展的考察と対象の水準・質

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納的に気づかせ,言葉の式で一般化する段階であ る.この式を発展的考察の観点にする. 第 2 段階:四角形の○の数の求め方を,三角形 と関連づけて考察する対象間の関係の理解水 準  既習の三角形と関係づけ,統合の観点から変わ るものと変わらないものに気づかせ,式にまとめ る.三角形の経験を働かせて,統合の観点から発 展的に四角形の式を考察する段階である. 第 3 段階:これまでの○の数の求め方から多角 形の一般式を導く関係の一般性の理解水準  五角形は,三角形,四角形の場合から式を統合 の観点から発展的,演繹的に考察する.三角形, 四角形,五角形などの式から共通点を見出し,多 角形の言葉を使った一般式を考察する段階である.  次に,思考の質を授業構想の視点から具体化す れば,直観的思考は,児童が描いた○を用いた三 角形や四角形の図に直観的に同じ数の固まりを見 出し,大きな丸で○を囲みならがら,考察する具 体的な思考活動である.  反省的思考は,直観的に丸で囲んだ固まりを, 例えば「○が 4 個の 3 つ分」「4 × 3」などと言 葉や式で表現したり,それぞれの数や式の意味を 考えたりする思考である.    分析的思考は,いくつかの式から共通点を見出 し,共通する部分を言葉や式でまとめようとする 思考である.本時の構想でいえば,三角形の(1 辺の個数- 1)× 3 と関係づけて,四角形の(1 辺の個数- 1)× 4 の言葉の式や多角形の一般式 などを見出す思考である.

Ⅲ 授業の実際

1 授業の指導内容の課題について  本授業は 5 年生の「おはじき問題」である.  先述の「特定の課題に関する調査」(2006)「お はじき問題」の調査は三角形に発展するが,「ど んな多角形でも」と発展していない.特に,調査 中の四角形の一辺をおはじき 100 個にした実際 に図が描けないような場合に必要なおはじきの個 数を求める式が問われた問題の正答率は低く,四 角形を作るときのきまりを少ない事例で見つけな ければならいことに問題があることを述べた.  また,教科書の「おはじき問題」(清水,p.65)は, 図2 マッピングによる統合の観点から発展的に考察する授業展開の構想

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「特定の式を読み取り,背景にある場面の条件が 変わったとき,どの数値が変わるかを考えること ができる」ことが目標である.これは片桐の述べ る「①条件の一部を他のものに置き換えてみる.」 場合で,発展的な考え方が主で統合的な考察はし ておらず「統合といった観点による発展的な考察」 は薄い.さらに,四角形だけを考え,三角形や他 の形には発展せず統合して一般化していない.  そこで,帰納的に見つけたきまりを観点とし, 統合の観点から発展的に考察し,おはじき問題に 隠れた図形の性質を数理として体系化していく深 い学びの授業に取り組もうとするのである(図 2). 2 授業の実際  以下,授業の実際を紹介する.この授業は 2019 年 7 月 17 日 H 小学校 5 年生 35 名と行っ た「式と計算」である.掲載するスライドは,ア ニメーション機能を用い式や丸囲みなどが出るよ うに設定しているが,便宜上全て提示した状態を 掲載する. (1) 三角形で生成する発展的考察の足場となる観点  導入は他の形への発展を考え,一番数の少ない 三角形で導入し,1 辺が 4 個の場合を考えた.図 3 ウから 3 × 3 = 9 を見つけたが,他にも 4 × 3 -3の式を教師から提示し,○の囲み方を考えた. T1 どっちが簡単 ?(Cn 3 × 3 です.) T2 じゃあ,今日はこっち何のいくつ分の考え を使って,どんどん違う場合を考えていこう.  めあてに統合と発展的考察の着目点を入れた.  イの 1 辺が 3 個の場合(図 3),必要な個数を 求めるために図を丸で囲ませ,式を尋ねていった.  その後,エ⇒オ⇒アの順で,丸の囲み方,必要 な個数を求める式(何のいくつ分),必要な全部 の個数を明らかにしていった(図 4).机間指導 では,1 辺の個数が 3 個や 5 個の段階で,すで にいくつ分(かける数)が 3(図 4)や何の(か けられる数)が(1 辺の個数- 1)であることに 気づく児童が 9 人いて,その児童を評価した. T3 この 5 つの式を見て何か気づいたかな ?  帰納的にきまりを見つけ,発展的考察の足場と なる観点の言葉の式(1 辺の個数- 1)× 3 の生 成を目指し,5 つの式を見せた(図 3 最下段の式). C1 どの式にも 3 があります.(T3 は何 ?) C2 賛成で,かける数はどれも 3 です. まず児童は式の同じ部分に目を付けた.そこで, T4 じゃあ,かけられる数,こっちの方は ? C3 1・2・3・4・・となっている. C4 1 辺の個数より 1 小さい. T5 えっ,どういうこと ? 児童に説明を要求し,全体に広げようとした. C5 1 辺の個数が 2 のとき 1 で,3 のとき 2,4 のとき 3,5 のとき 4,6 のとき 5 になって   います.(Cn 本当じゃ.) T6 じゃあ,かけられる数のこっちを言葉でい うとどうなる ? 児童の発見から,かけられる数の式化を図った. C6 1 辺の個数- 1 T7 この引く 1 は図でいうとどれ ? なぜ 1 を引くか図を用いた理由の説明を求めた. C7 (1 辺が 4 個を例にして)この角のやつで, これはこっちの 3 にいくから 4 から 1 ひいて, 図3 導入のスライド 図4 児童のノート めあて いろいろな場合の,何のいくつ 分かを考えよう.

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これはこっちの 3 になるからです.  図 3 ウを指しながら,1 辺が 4 個のとき 1 引 いて 3 個になり,3 × 3 になる理由を説明した. T8 じゃあ,言葉も入れて式でまとめると ? C8 (1 辺の個数- 1)× 3 です.  この活動は 1 辺の数を他の数に置き換える条 件変更による発展的考え方で,発展的考察の観点 となる C8 の式を目指した考察であった. (2) 統合の観点から四角形を考える発展的考察  ここからは,三角形から四角形に問題場面を変 えていく条件変更による発展的な考察である.  T9 三角形ができたので,終わっていいですか ? C9 四角形だったら(式は)どうなるんですか ? C10 四角形や五角形も調べたらいいと思う. T10 とってもいい考え方だよ.三角形だけで終 わるのでなく,他の場合,○○君達のように四 角形や五角形でも発展的に考えてみる.また何 か新しいことが分かるかも知れないね.  発展的に考えようとしている態度を評価した. T11 このように,○が 1 辺 4 個の四角形などの ○の数はどうやって求めるの(図 5)?   ま ず 時 間 を とって各自考え させたが,すぐ に 2 名 が 直 感 的に× 4 を見つ け挙手した.こ の活動で児童は 四角形にも何か きまりがないか 三角形の式と関 連づけて考えて いた.机間指導 では,いくつか 図を描いて確か め,式を考えた り,(1 辺 の 個 数- 1)× 4 のきまりを実際に見つけたりしてい て,態度を評価した.  そして四角形の場合どう丸で囲み式を作ったか 発表させた.  図 6 の児童は,まず 1 辺 4 個の四角形を描き 丸で囲み,三角形でまとめた式を参考にして,式 (4 - 1)× 4 を書いた.次に同様に 1 辺 6 個の 四角形を描き丸で囲み,式(6 - 1)× 4 を書き 確かめた.そして,かける数が 4 であることを 確信し「× 4」を書き赤丸をした.最後にかけら れる数は変わらないので,(1 辺の数- 1)× 4 の式を書き,また赤ペンで周りを囲んだのである.  図 6 の児童と同様に,多くの児童に図を 1 ~ 3 個描いて,かけられる数(1 辺の個数- 1), かける数が 4 であることを確かめ,(1 辺の個数 - 1)× 4 の式を書く作業が見られた.  しかし,数名の児童は三角形の式と関係づけら れず,○を丸で囲むことに終始したり,四角形も 帰納的な考え方で新たにきまりを見つけようとし たりする児童も見られた(図 7). (3) 五角形・六角形に発展する統合の観点による 発展的考察  児童に三角形と四角形の式から五角形と六角形 の式を統合の観点から発展的に考察させた.児童 は容易にかける数が五角形は 5,六角形は 6 と, かける数が多角形の辺の数だと予想した. C11 五角形は辺が 5 こだから× 5 だと思います. T12 じゃあ,本当になるかどうか,この五角形 や六角形を予想してから調べてみて.  1 辺が 4 個の五角形や六角形の場合を C11 の きまりを使って計算させ,ペアーで演繹的に説明 させ合った. C12 1 辺の個数から 1 を引いて,辺の数をかけ 図5 スライド(四角形への発展) 図6 児童のノート 図7 児童のノート

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りゃあいいので,五角形の場合は辺が 5 つで, 1 辺が 4 個の場合だから(4 - 1)× 5 で 15 個だと思います.  C12 の後,スクリーンの○を丸で囲み答えが 正しいことを全員で確かめ,六角形も確かめた. T13 じゃあ今日のめあてに戻って.○の数は,何 のいくつ分だっていえたの ? 何の ?  本時のめあては,統合の観点からの発展的考察 による一般式を意識したのであり,多角形の一 般式が(1 辺の個数- 1)×辺の数であることを T13 で確認し合い,めあてとまとめの整合性を 図った. (4) 活動を振り返り次に生かす発展的考察  最後に振り返りである.児童には日頃①わかっ た,発見したこと ②これからも使えそうなこと 等を書くよう指導している. T14 では,これからどんなことに気をつける ? 今日の学習から学んだ教訓に焦点を当てた. C13 (式の中の)同じ数とか,数がどんなふうに 変わっているかを調べようと思います. C14 数を大きくしたり,形を変えたりして,き    まりを見つけやすいから,…そうします.  C13 や C14 の発表を受け,発展的に考え,形 や数を変えると,いったんまとめた式で使われる 数が変わったり,変わらなかったり,きまりを一 般化できることを話し授業を終了した.

Ⅳ 本授業実践研究の振り返り

 「統合の観点から発展的に考察し,深い学びの 授業づくり」を構想してきた本事例を,以下の 2 つの視点から分析し検証することにする. ①マッピング式授業過程モデルの有用性 ②統合の観点から発展的に考察して深い学びに向 かう指導上の留意点  1 マッピング式授業過程モデルの有用性  児童の学習活動の過程をマッピング式授業過程 モデルに記述し,それをもとに規範性と記述性の 2 点についてモデルの有用性を考察する.  図中(図 8)の丸囲み数字は,児童の思考の主 な対象を表す.また人数は授業中の発言や事後の 聞き取り調査,ノート等をもとにした人数である. (1) マッピング式授業過程モデルへの記述 ①発展的考察の観点となる三角形の一般化  まず,数学的対象の理解水準である.児童は 1 辺 4 個で三角形を作る場合について考えた.そ 図8 授業の実際の「マッピング式授業過程モデル」への記述

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して 1 辺 4 個で三角形を作るのに○がいくつか 直観的に図の○を囲みながら考え,数えなくて も計算で出せるように反省的思考を働かせ,① 3 個の○を大きな丸で囲み,3 × 3 の式を導いた (図 4).  次に,同様に 1 辺 4 個で三角形を作る場合,4 × 3 - 3 の式が表す図の説明を試みようと,児 童は直観的に丸で囲んだり,反省的思考を働かせ ② 4 × 3 の意味や- 3 の意味を説明したりした.  さらに学習活動は 1 辺が 3 個や 5 個などの三 角形の場合に進んだ.児童は直観的思考と反省的 思考を繰り返し働かせ(③ 1 辺 3 個→④ 5 個→ ⑤ 6 個→⑥ 2 個の場合),対象間の関係を考えず, 丸で囲んだ図をもとに,式を考え○の個数を求め た.  しかし,理解のはやい児童は,かける数やかけ られる数のきまりを早い段階で見つけていた.  「マッピング式授業過程モデル」(図 8)では, 太い矢印を主な児童の活動の流れ,点線の矢印で 理解のはやい児童の活動の流れ,細い矢印で理解 がゆっくりな児童の活動を表した.  その後,T3 の発問で,三角形の場合のきまり を考え,○の個数を求める⑦式を全体で帰納的に 考え確認した.この一連の活動を関連づける思考 は,一般化を目指した分析的思考である.  この段階で,かけられる数は(1 辺の個数- 1) と一般化できた.しかし,かける数 3 の意味理 解や一般化はまだできていない.そこでT9「三 角形ができたので,終わっていいですか ?」と児 童に投げかけ,C9「もし四角形だったらどうな るんですか ?」の発言を引き出し,T10 で四角形 や五角形を発展的に考えようとする児童を評価し た.この評価で発展的に考えることを価値付けた のである. ②統合の観点による発展的考察  三角形の後は,四角形の場合を発展的に考察さ せた.机間指導の際,29 名の児童は,授業の実 際でも述べた図 6 の児童のように,⑧ 1 辺 4 個 の四角形ないし⑨の自分が調べたい個数の図を丸 で囲む具体的操作から分析的思考を働かせ(4 - 1)× 4 または 3 × 4 の式を導いた.四角形の場 合は三角形の式や活動と関連づけて,かけられる 数の共通点やかける数の相違点に着目する活動が 自力解決で多くの児童の活動に見られた.  2 名は⑧の 3 × 4 を考えた段階で,直観的に 3 × 4 を見つけ発表しようとしたが止めた.「三角 形は丸が 3 つじゃけれど,四角形は 1 つ増えて 4 つになるけえ,× 4 になる」と理由を述べた.  理解のゆっくりな児童は,三角形の式と関連づ けることができず対象の理解から抜け出せなかっ た.三角形の場合と同様に,図を描いて丸で囲み 調べ,自分が調べたい個数○個△個などの場合も やはり図を描いて丸で囲み調べ,⑪帰納的に一般 式(1 辺の個数- 1)× 4 を導こうとした(4 名 細い線).理解のゆっくりな児童は細い矢線の通 り,たくさんの四角形をいちいち描きながら確認 し,2 名は(1 辺の個数- 1)× 4 に到達した(図 7)が,2 名は自力で到達できなかった.  ③再び統合の観点による発展的な考察  統合的考察によってまとめた三角形・四角形の 式を観点として,多角形の一般式を考えていく. 多角形への発展的な考察である.  かける数が,⑫三角形の場合× 3,四角形の場 合× 4 であることをもとに,1 辺 4 個の五角形 や六角形の場合,かける数がいくつになりどんな 式になるかをまず予想させた.次に,予想した式 に 5 や 6 を当てはめ,計算で求めることを児童 に促した.児童は⑬五角形や六角形の場合で予想 が当たっているかどうかまず式(4 - 1)× 5 や (4 - 1)× 6 を書き,図で確かめた.C12 のよ うに,ペアーで立式の理由を演繹的に説明し合っ た.最後にかける数が辺の数であることを全体で 確認し⑭の式で一般化した.この思考は統合を図 るもので分析的思考であり,「統合の観点による 発展的考察」である.⑭の一般化により,35 名 中 32 名の児童が「関係の一般性」の理解に達した.  このように,モデルの縦軸に思考の質と対象の 水準,横軸に考察の過程を位置づけマッピングす

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ることで,児童の考察の変化・発展が視覚化でき, 児童が直観的思考に導かれ,統合の観点から反省 的思考,分析的思考を繰り返しながら発展的な考 察をすることにより,対象の水準を高める過程が 視覚化し考察できるという感触を得た. (2)「マッピング式授業過程モデル」の有用性 ①マッピング式授業過程モデルの規範性  まず,マッピング式授業過程モデルの規範性に ついて考察する.筆者は図 2 でマッピング式授 業過程モデルを用い,授業の展開を構想した.そ れは統合の観点から発展的な考察を児童に促すと き,対象の水準や思考の質を明確にすることが, 児童の思考の質を直観的思考から徐々に統合を図 ることを目的とする分析的思考に促すことにな る.そして,統合した対象を観点として発展的に 対象間の関係性や関係の一般性について考察させ ていくよう方向性を示すことで,関係の一般性に 向かう深い学びの構想に不可欠であると考えたか らである.  実際この授業では,35 名中 32 名が「関係の 一般性」の理解の水準まで達することができた.  例えば,統合の観点から発展的な考察を行う場 面,ただ単に範囲を広げる場合(図 8 の①から⑦) もあれば,対象の水準が「対象の理解」から「対 象間の関係の理解」(図 8 の⑦から⑧)あるいは「対 象間の関係の理解」から「関係の一般性の理解」(図 8 の⑪から⑫)に水準が高まる場合もある.当然 対象の水準が高まれば,児童にとって困難な課題 になるが,発展的な考察の観点となるものを授業 過程モデルの構想に明確に位置づけたことで,段 階を踏み,無理なく「関係の一般性」の理解に向 かう授業を展開することができた.  このように,統合の観点から発展的に考察し深 い学びの授業構想を考える上で,マッピング式授 業過程モデルは発展的考察の観点と方向性を示 し,規範となるモデルであるという感触を得た. ②マッピング式授業過程モデルの記述性  次に,マッピング式授業過程モデルの記述の有 用性についてであるが,児童の考察の過程を記述 することで児童の思考の変化や発展は勿論,次の 2 点が読み取れる.  まず,マッピングが示すとおり,児童は三角形 と同じ帰納的考え方を用いる場合でも,四角形の 場合は明らかに事例数が少なくても,きまりを見 つけられるということである.先の(1 辺の個数 - 1)× 3 に着目し発展的に考察したからであり, 「統合の観点による発展的な考察」が行われたか らだと考えられる.  さらにマッピングが示すように,関連づけて 1 つの式にまとめようとする統合的考察のタイミン グ(図 7 の④⑤⑥や⑧⑨⑩)は,児童によって様々 である.急げば多くの児童が学習から離脱する可 能性が高いことを示すものである.すなわち,先 の調査のような 1 例や 2 例程度からきまりを見 つけ出し,これを観点として,条件を変えて数を 当てはめる活動は,発展的考察の観点自体を児童 が形成しにくく,多くの児童にとって困難な課題 であることを示しているのである.  このように,この過程モデルは授業を構想する 上での規範性と児童の思考の変化や発展を捉える 記述性の両面から有用であるという感触を得た. 2 統合の観点から発展的に考察して深い学びに 向かう指導上の留意事項  先のマッピングで記述した際に示したように統 合の観点から発展的に考察し,「関係の一般性」 の理解の水準に達した児童は 32 名であった.Ⅱ - 1 で述べた関係の一般性の理解水準はほぼ到 達でき,多くの児童が深い学びに向かうことがで きた.  できなかった 3 名の児童は既習のきまりを関 連づけて新しく立式することができず,常に図に 戻って帰納的に考えようとして時間切れになった.  特に,対象の水準が高まるとき,統合の観点を つくり発展的に既習と関連づけて考察できる児童 とできない児童に別れやすい.その局面を乗り越 え,さらに高い水準に向かうためのモデルの運用 上の配慮すべき留意事項は,主に以下の 3 点で ある.

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(1) 丁寧な統合的な観点づくりで足場を固めること  1 つめは,発展的考察の観点を明確に児童に持 たすことである.本授業では,三角形の場合の(1 辺の個数- 1)× 3 を発展的な考察の観点と位置 づけ,かける数の発展を繰り返し(1 辺の個数- 1)×辺の数 にまとめる授業を構想した.  三角形を対象に,5 つの事例をもとに帰納的な 考え方で,式のかける数とかけられる数に注目す る,足場づくりを丁寧に行った.  マッピングや児童のノート(図 6,図 7)にも 見られるように,気づきや理解の遅い児童も,最 初の三角形のときの見方・考え方や式をもとに, 条件や場面を変えるごとに既習の式と関連づけ, 異なる式から共通点を見つけまとめようとした.  三角形の共通点を見つけようとした児童が 9 名に対して,次の発展的な四角形になると合計 31 名が事例数が少なくても共通点を見つけ,そ の 31 名全員が三角形と四角形の式をもとに五角 形や六角形のかける数を類推できた.これは最初 の観点を,異なる式から見出し式にすることを丁 寧に行い,観点の作り方や目の付け所を児童が学 んだからであると考えられる. (2) 統合的な考察のための適切な事例数の準備  足場となる統合的考察を行うときの事例の数だ が,「特定の課題に関する調査」(2006)で見ら れるように,1 ないし 2 の事例から共通点を見い 出すことは,本実践のマッピングが示すように 個人差が大きい.本学級では,最初の三角形の 4 つの事例で,自発的にきまりを見つけたのは 9 名だったが,四角形に場面を変えた場合,事例は 3 つでも 29 名の児童がきまりに気づいた(図 8). 三角形の(1 辺の個数- 1)× 3 の既習と関係づ けるという統合的考え方が働いたと考えられる.  このように,発展させた場合の事例数は,内容 の困難度にもよるが,最初で 3 ~ 5 例,発展の 2 回目では 1 ~ 3 例が適した事例数で,この程 度の数の事例を授業を構想する際,準備しておき たい. (3)「関係の一般性」を目指した学習のめあて  児童が次にどう進むか困ったとき「めあて」は 重要な働きをする.「めあて」に統合の観点によ る発展的考察で到達する「関係の一般性」に関す る言葉を入れることで,発展的思考を水準が高ま る方向に導き,深い学びに向かわせるのである.  例えば,本時の授業では「いろいろな場合の, 何のいくつ分かを考えよう.」という単位の考え 方をめあてとした.これは児童が発展的な考察を 行う局面で,めあてを統合の観点づくりのヒント として活用したり,解決に困ったときにめあてに 戻れるようにしたりするためである.また「何の いくつ分か」をキーワードとして T13 のように 授業のまとめをすることができるのである.  発展的な考察を行う統合の観点を,児童に意識 させ,考察の方向を示し,まとめとの整合性を図 るために,授業で到達させたい「関係の一般性」 に関する言葉が入るめあてづくりが重要である. 

Ⅴ まとめと今後の課題

 児童に統合の観点から発展的な考察を促し,深 い学びの授業を創るためには,マッピング式授業 過程モデルにより対象の水準が無理なく高まる授 業展開を構想し,発展的考察の観点を明確にして 統合の観点による発展的考察を繰り返すことが有 用で,その運用上の留意事項について述べてきた.  しかし,以下の 2 点は今後の課題である.  1 つめは,マッピング式授業過程モデルの弾力 的運用である.本授業でも横軸を統合的・発展的 考察に変えたが,単純にモデルに当てはめるので はなく内容に合ったモデルの最適化を図りたい.  2 つめは,1 時間の授業構想をもとに,表 1 の イや他のパターンの授業を構想することである. 【注】 (1)国立教育政策研究所 教育課程研究センター の「特定の課題に関する調査」(2006)の「お はじき問題」3 題は以下の通りの URL で検

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索できる.p.p.50-51 を参照されたい. https://www.nier.go.jp/kaihatsu/tokutei/ 【引用及び参考文献】

文科省学習指導要領算数編,東洋館出版,2018. A.H.Schoenfeld, Mathematical Problem Solving  

(Academic Press,Inc)p.138,1985

赤攝也「数学的な考え方とは何か」初等教育研究  会『教育研究』p.24,1968.

F.K.Lester,Methodological Considerations in Research on Mathematical Problem-living Instruction , p.61,1985 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「特  定の課題に関する調査(算数・数学)調査結果(小 学校・中学校)」pp.8-11,pp.50-51,2006. 片桐重男『数学的考え方の具体化』,明治図書, p.124,p.159,p.161,p.163,1988. 教育課程部会算数・数学ワークンググループの「数 学的な見方・考え方」資料,2016. 小山正孝『算数教育における数学的理解の過程モ  デルの研究』聖文新社,p.133,p.218,p.232 p.233,p.470,p.480,2010. 黑﨑東洋郎「算数の「深い」学びを創ろう-子ど もの主体の深い学びは「問い」から」岡山県教 職員組合研修講座資料,2019 中島健三『算数・数学教育と数学的な考え方』東洋 館出版,p.125,p.127,p.128,p.129,2015. Pirie & Kieren: Growth in Mathematical.

Understanding: How can We Characterise it and How can We Represent it? Educational Studies   in Mathematics,Vol,26,pp.165-190,1994. 清水静海・船越俊介『わくわく算数5・指導書』  啓林館,p.65,2015. 山野定寿「統合的考えを育てる「図形の面積」の 授業の構想」岡山大学,算数数学教育学会『パ ピルス』 第 22 号,pp.50-55,2015. 山野定寿「推論を活かし規則発見の授業過程モデ  ルの研究」日本教育実践学会『教育実践学研究』  第 17 巻,第1号,pp.13-23,2015. 【謝辞】  本論文の執筆にあたり,何度もご指導いただき ました岡山大学名誉教授の黑﨑東洋郎先生,翻訳 のご指導をいただきました鳴門教育大学准教授の 田村和之先生に心より感謝申し上げます.

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A study of lesson development that enhances progressive thinking ability

from the perspective of integration:

Using Grade 5 “Formula and Calculation” as a case study

Sadatoshi YAMANO

Hokubo Elementary School

The purpose of this study is to examine whether a mapping-style lesson process model would enhance children’s ability to think progressively from the viewpoint of integration, and to create a deeper learning of mathematics, in contrast to earlier practices where integration and progression are captured in parallel.

A lesson for this purpose was planned and carried out in a 5th grade unit of "formula and calculation". Initially, the number to multiply and the number to be multiplied are inductively considered by changing the condition of a side of an equilateral triangle that is made of, for example, 4 or 3 marbles, where the word expression of equation is generalized as “(number of marbles in a side-1) x 3.” To further expand the range of the formula’s application, pupils then find the formula for squares in an integrated and progressive way by utilizing their experience in creating formulae for equilateral triangles. Furthermore, based on the formulas for the equilateral triangles and squares, pupils also consider the case of a pentagon from an integrated point of view, and generalize the fact that the number to multiply is the number of sides of the shape in a word expression of the formula.

Through this practice, we found that a lesson development, in which the subject level gradually becomes harder without any unreasonable jump using the mapping-style lesson process model, is able to further their learning; pupils are able to progressively connect the triangle formula to different polygons from an integration viewpoint.

Key Words / Integrative and progressive thinking, Quality of mathematical thinking, Deep learning, Mapping-style lesson process model

参照

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