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統計数学の講義の中での演習問題の役割

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Academic year: 2021

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教 育 実 践

統計数学の講義の中での演習問題の役割

三角 淳

(理学部数学コース)

1.はじめに

本稿では、2013年度の「統計数学 IA」の授業におけ る取り組みについて報告する。 この授業は、理学部数学コースの2年生向け必修講 義という位置付けの科目であり、主に数学コース・情 報科学コースの2〜4年生が受講している。2013年度 の受講者数は94人で、それなりに大人数の授業である。 授業内容としては、学部2年生レベルの予備知識を前 提とした、本格的な確率論への入門的な内容を扱って いる。

2.演習問題の重要性

授業の予習復習のうち、ここでは特に復習について 考えてみたい。 まず、数学の場合、学生が講義を受けた後の復習の 方法として、本・ノート・プリント等を単に黙読する だけでは、その内容を十分に理解する事は難しく、ほ とんど身に付かない。その代わりに、実際に紙の上で 計算しながら、時間を惜しまず演習問題にじっくりと 取り組んでみる事によって、内容の理解を深める事が できる。 このように演習問題はとても大切なものだが、では 教員の側としては、日頃から学生に演習問題に取り組 んでもらうために、実際にどのような方針で臨めばよ いものだろうか。 一つの方法として、「本に掲載されている問題を、各 自解いておく事を勧める」というのがシンプルなやり 方である。ただしこの方法だと、学生の自主性に委ね る部分が大きく、その効果は特に意欲的な学生に限ら れる。 別の方法として、「講義とセットで開講されている、 演習の授業をとる事を勧める」という手がある。基本 的にはこれが一番自然で良いようにも思える。 ただ、少なくとも現状では、何らかの理由で演習の 授業をとっていない(とれない)学生もそれなりにい る。(また、今回取り上げる統計数学 IA の講義には演 習の授業が付いているが、授業科目によっては、そも そも演習の授業の付いていない講義も多い。)そのた め、講義の時間内の一部に演習的な要素を取り入れる、 ある程度の配慮も必要になってくる。 「講義の一部に演習の要素を取り入れる」という考 え方自体は別段目新しいものではなく、既に様々な取 り組みが行われている。以下では、そのような既にあ る数多くの取り組みの中の一つのサンプルとして、統 計数学 IA の授業の中における筆者の具体的な実践方 法について紹介しつつ、普段考えている事などを述べ てみたい。 − 97 −

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3.具体的な実践方法

3-1 配布資料 具体的な方法として、まず、毎回の授業のはじめに、 以下のような形式のプリントを配布している。(実際 の大きさは A 4サイズ。) プリントは1回ごとになるべく1ページの分量に収 め、その内容は以下の3つで構成されている。 ・「講義概要」。 ・「レポート問題」。 ・「補充問題」。 − 98 −

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なお、プリントの PDF ファイルは、筆者のホーム ページ(http://www.math.kochi-u.ac.jp/misumi/) にも掲載している。 3-2 講義概要 「講義概要」は、当日解説する予定の項目をコンパ クトにまとめたものである。学生はこれを見る事で、 その日の授業の流れをいち早く確認する事ができる。 また授業に欠席した回など、後から授業内容を把握す るのにも役立つ。 ただし筆者としては、この「講義概要」はどちらか といえば付録のようなつもりであり、むしろ後述する 「レポート問題」と「補充問題」の方が主要な本体をな す部分と考えている。 3-3 レポート問題 「レポート問題」は、その日の講義内容に関連した 基本的な問題を、翌週までの宿題として週1題用意し たものである。 レポートは1回2点満点で採点し、普段からよく頑 張っている学生は、それに応じて成績にプラスに反映 される。(定期試験のプレッシャーも軽減される。) また、レポートの余白に、授業に関する要望や質問 等があれば自由に記入してもらっている。 一つ気を付けている点として、レポートの問題は数 値を変えるなど、できるだけ前年度と同一にならない ようにしている。(筆者の経験では、前年度と同じ難 しい問題と、前年度と異なる易しい問題では、時とし て後者の方が正答率の低いケースがある。) 3-4 補充問題 「補充問題」は、「レポート問題」以外にも分量を補 う意味で、自習用の問題として週2題程度を用意した ものである。(本来はすべての問題を「レポート問題」 にできればよいのだが、毎週、多数の答案をきちんと チェックするのに要する時間の都合上、「レポート問 題」は週1題のみとしている。) 「補充問題」に対しては、授業時間内に内容を直接 解説する余裕がないため、代わりに略解を作って後か ら配布している。 毎回の授業ごとに、「今週はこの問題とこの問題を 解いてみましょう」と具体的に指定する事がポイント で、はっきりと目の前の目標ができる事によって、学 生が少しでも復習しやすくなればと思っている。 なお、定期試験の際にはプリントの問題の中から類 題を出題する事もよくあるので、学生にとっては普段 から問題にしっかり取り組んでおく事が、そのまま定 期試験対策にもつながる。 3-5 レポートの提出∼返却の流れ レポートの答案は、出題した翌週の授業時間のはじ めに回収する。レポート回収は、その日の授業の出席 確認も兼ねている。 統計数学 IA は早朝1限目の授業であり、学生に とってはまず早起きして、開始時刻に遅れずに授業に 参加する事が当然ながらポイントになる。スタートか ら集中した状態で、しっかり講義を聞いてもらえれば と願っている。 次に、回収した答案のチェックが手間のかかる作業 になるが、これはティーチングアシスタントの大学院 生に予備採点を依頼し、その後に筆者が最終チェック を行う。ちなみに答案は完全な記述式であり、解答を 見る際には漢字の書き間違いなども、とても基本的な 事だと思うのでなるべく添削している。(ただし減点 はしない。) チェックを終えた答案は、翌々週の授業時間内の後 半に、個別に返却する。返却した直後のまだ興奮さめ やらぬうちに、返却した問題の解答について、その場 で黒板を使った解説を行っている。 3-6 講義1コマの時間配分 講義1コマ(90分)の時間配分は、概ね以下のよう になる。 ・プリント配布、前回の答案回収:約5分。 ・講義:約60分。 ・前々回の答案返却、問題解説:約15分。 − 99 −

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・予備時間:約10分。 最後の「予備時間」は、例えば連絡事項のアナウン スがある場合はそれに使う。あるいは当日の内容を見 て、少し説明の時間が足りない箇所を補うのにあてる など、柔軟に活用する。 演習的な内容にそれなりに時間を割くため、講義自 体の時間はどうしても圧縮される。授業時間を延長す る事なくまとまった分量の講義予定をこなすには、タ イムスケジュール的に手際のよい進行が求められる。 そのためには毎回、内容の所要時間を見積もっておく など、事前の授業準備に十分な時間を確保する必要が ある。 3-7 その他、心掛けている事など レポートの解答用紙は、必要のある場合を除いて、 特に指定していない。(ただしこれは良し悪しの微妙 なところもあり、単に筆者のこだわりのようなものだ と理解していただければと思う。) 答案の整理は少しばかり大変になるが、レイアウト 等に学生の独創性が発揮され、ユニークな答案の数々 を眺めるのはささやかな楽しみでもある。個性的な答 案は、名前を見なくても誰が書いたものかすぐに分か る場合も多い。 また、講義のスタイルは黒板を使うごく標準的なも のだが、学生が余裕を持ってノートを取る事ができる よう、板書はハイペースで飛ばし過ぎず、なるべく適 度に間をおくよう気を付けている。その間に少し余裕 ができるので、学生が授業内容にちゃんとついてきて いるかどうかなど、それとなく反応を確認する事も可 能になる。

4.おわりに

今回述べてきた取り組みは、一つ一つを取り出して 眺めれば、決して奇抜な事をやっているという訳では ない。むしろ地味な取り組みの積み重ねの感が強い。 ただ、そうした当たり前のようにも思える取り組みを、 十分な手間と時間をかけて続けていく事や、また今後 も少しずつ改良を怠らない事が、とても大切なのでは ないかと考えている。 最後に、授業を受講した学生と、教育奨励賞の推薦・ 選考で御世話になった方々にあらためて深く感謝いた します。 −100−

参照

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