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イチョウの胚軸, 上胚軸 : 2裂した子葉をもつ胚

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Academic year: 2021

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イチョウの匪軸,上駐軸

- 2

裂した子葉をもっ匪-相 馬 早 苗

大学構内のイチョウ並木が伐られることに なったので,最期の種子を集め土中に埋めた. イチョウの種子内では,匪がゆっくりと成熟 していることが

L

i

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によって確かめられ ている.そこで冬の間土中に置いた種子内の 匪が発芽直前にどのように発達しているか観 察した.又大部分の種子は播種して発芽させ, t 将来文教構内生まれの樹を育てたいと試みた. イチョウの発芽については

Cook

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, Hills (1

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, Favre-Duchartre (1

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が観察しているが匪全体の外部的観察で,内 部組織の細かい観察ではない.今回の観察は 厚さ5μmの切片で、行ったものである.特に 今回用いた匪,及び発芽した匪に顕著なこと は,二つの子葉のうちの一方,時には両方が 基部近くまで深く裂けて2分していることで あった.過去

1

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年来同じ構内で採取している が,子葉が 2裂していることは今回が始めて であり,また裂けていないものの方が少い位, 多数のものが裂けていた. 2裂した子葉の例 を中心にして観察を行なった. 材料と方法 イチョウ

Ginkgob

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a

の種子はなるべ く大きいものを選んだ.構内の種子は市販の ものと比べるとかなり小さいものである. 種子はまとめて土の中に埋め冬を越させた. 4月中旬に堀り出して,柔かな外種皮が取れ るように水洗した.そのあと

1%

の次亜塩素 酸ナトリウム水溶液に

1

5

分間浸して滅菌し さらによく水洗いしたものを用いた. (1) 脹観察用のものは,かたい中種皮をペ ンチで割り,種子内の雌性配偶体の中に入っ ている駐を傷つけないように取り出して, リ ソ酸バッファーに溶かした

2%

グルタルアル デヒド溶液で固定した.エタノール・第3ブ チルアルコールで、脱水置換しパラフィ γに 包理した. 5μmの厚さの連続切片にし,ベ ソゾエイトバッファーに溶かした

0.05%

トル イジンブルーO溶液で染色した.

(

2

)

水洗した種子を,円筒形の水槽に湿ら せたノミーミキュライトを入れたものの中に播 いた,水槽は人工気象器に入れ,明るい室内 に置き,上部から更に蛍光灯を照射し,窓、の 光で芽生えが斜めにならないようにし発芽さ せた.蛍光灯は朝6時から夕方 6時まで照射 した. 結果と考察 (1) 発芽直前の佐の観察 妊の大きさは個体によってかなり異なるが 7, 8

m

m

のものが多かった.これまで子葉は 2枚 で あ っ た し 文 献 で も 2枚となっている. しかし

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年に採種した怪で、は,理由は分か らないが一方の子葉が 2裂して 3子葉となっ ているものが多く見られた.図1- 1で見ら れるように 2裂したものは大きさが他方の 子葉の約半分である.成長点附近の横断面 (図1-C-2)では 5枚の葉の形成が見られた. 幼葉の数は4枚というものもあった.更に 子葉の基部に近ずくと,図

1

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'

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3

のように, 2つの小さな子葉が接している.接している

(2)

イチョウの匪軸,上陸軸 部分を拡大したものが図

2-1

である.図中 に黒く丸く見えているのはタ♂ンニγ様物質を 含んだ細胞である.写真では黒いが緑色に見 える.子葉中には樹脂道も見られるが樹脂は 薄いピンクに染まるので図1-3, 1-4,

1-5

などに白く抜けて穴のように見える部 分が樹脂道である.子葉が怪の主軸に附いて いる部分の横断面は図1-4に示した.矢印 のところが子葉の端である.この断面でも2 裂した子葉の維管束は2つに分れたままであ る.更に基部になると,やっと維管束が向き 合う子葉で同じようになる(図1- 5). 子葉 の端には小さなへこみが見られる(矢印) . 子葉の基部から下の匪軸といわれる部分の断 面は図

1-6

に示す.発芽後この部分は根に なるところで,種子内の匪でも表皮細胞に多 くの含有物を含む.図

1-6

1

部分を拡大 したものが図2-4である.表皮第一層には 含有物が多く含まれる.染まる色から見てこ れは樹脂とも,タンニジとも異なるあい色を 示す. この匪軸部分の縦断面は図

2-5

に示した. 表皮第一層には細胞含有物が多い.根端分裂 組織が図のM の部分である.この部分を拡大 したものが図2-3である . Mから下の部分 が根冠で, Mの真下には,きちんと列をなし た細胞群が見られ, コルメラと呼ばれるもの である.図2-3のQは, トルイジγブルー Oの染色がうすく,分裂組織の静止中心と思 われる. コルメラの存在と根冠部分の境界と 皮層の区別がないことから,イチョウの根は

Clowes

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)

openmeristem

に属すると 思われる.図中にCと示したコルメラの更に 下部に,即ち図

2-5

の表皮細胞の含有物の 見られなくなった部分より根端に近い部分に は,不定形の細胞群がある.この細胞群は, 秋に佐が形成されるときに,根端分裂組織が 妊の内部に内生的に生じたため,分裂組織が 活発に分裂した結果,外に押し出された細胞 群であろう.つぶれたような形になっている 細胞が多い.匪軸中央部分に細長く点々と黒 く連なる管状部分は樹脂道のようであるがト ルイジγブルーOで緑色に染まっている. ト ルイジγブルーOは塩基性色素で水溶液では pH2位になるので植物組織の染色に都合の よいように,ベγゾエイトバッファーで、pH4. 4にしてある.多量に存在している細胞内含 有物も, うすいピンクのもの,緑色のもの, 匪軸表面の細胞のようにアイ色のものがある. 異なる物質であることは分るが,物質名まで は分らないのが残念である. 子葉の向軸表面には気孔が見られた(図2 - 2) .

1

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年に採取した種子に多く見られた子葉 の 2裂の原因は全く不明である.維管束が基 部から2裂した子葉のそれぞれに分れて存在 するので,若い時期に2つに分れて成長した ように考えられる.昨年の夏の暑さは記録的 であったが,脹形成の9月中旬以降にも,そ の影響があったのか,或いは飛来した花粉が 異なったのか,今のところ全く不明である. 移植した雌の2本のイチョウは移植のため 殆んどの枝を切ってしまったため,種子を多 くつけるようになるには何年か先になるかも しれないが,今後も子葉の2裂が見られるか, 同じ木で再び調べてみたいと思っている. (2) 種子250粒をノミーミキュライトに播い たが,発芽率は

87.1%

と非常に良かった.発 芽しなかった種子は,中種皮をペンチでこわ い発芽しない原因を調べた.その結果,種 子内は雌性配偶体細胞だけで匹が存在しなかっ たものが

8.6%

,次亜塩素酸ナトリウム溶液 で滅菌したにもかかわらず,カビが生じたり 腐敗したものは4.3%であった. 図

2-6

は発芽したイチョウである.写真 からはちょっと分りにくいが,軸の白い部分 の下端まで、子葉が覆っている.子葉の下の佐 軸は図

1-6

2-5

で見られる部分で,外 側からみると茶色く見える.子葉は基部が一 部種子から出ていて2裂している,子葉は発 - 53ー

(3)

『教育学部紀要』文教大学教育学部第29号 1995年 相 馬 早 苗 芽時に急速に生長するが,種子内に大部分が 留まっている.Bierhostによれば,子葉は種 子内に2年間も存在するといっている.今回 はパーミキュライト中で発芽したものを畑に 植えかえたため,種子が地表に近すぎたため か,移植後間もなく子葉と種子は鳥か何かに 食われてしまい,硬い中種皮の割れたものだ けが転がっていた. しかし,子葉からの栄養 補給はなくても,イチョウは元気に育ってい る.今後の成長と観察は,また後の機会に報 告したい. イチョウは1つの雌性配偶体中に通常 2コ, 時に3コの卵細胞をもっ.また受粉後珠孔か ら伸長した花粉室内に生じる精子は1つの精 細胞から2個生じることが知られている.又 1つの雌性配偶体に複数の花粉が受粉するこ とも可能である.それゆえ秋には1つの雌性 配偶体に2コの匹発生が見られることはかな りある. しかしなぜか翌年の春まで2つの匪 が元気に成長し 1つの種子から2つの芽生 えの生じることは非常に少ない.今回もやっ と1例見られただけである.

ま と め

1994年秋に採取したイチョウ種子による匪 の観察はノミラフィ γ包埋法とテクノビット 7100という樹脂包埋法の両方で行った. テクノピットを用いた場合は2---3μmと いう薄い切片が得られ,パラフィン切片とは 異なった知見も得られた.テクノピットによ る切片の観察は今後報告する.過去10年来観 察しているイチョウが,今年のみ深く 2裂し た子葉を持っていた. 3個の子葉があるとい うことはLyon(1904), Hills(1909)がす でに報告しているが,まれに存在すると述べ ているが,今回はかなり多数存在した.また Lyonの観察した子葉の横断面では 3個が 同じ大きさで 2個のうちの 1つが 2裂した ものとは異なっている. 3個の子葉について, 今後も調べてみたい. 参考文献 1. Bierhost

D . W. ; 1971

Morpho1ogy of Vascu1ar P1an ts : The Macmillian, N.Y.

2. Bo1d, H.C., C.].A1exopou1os & T. De1evoryas ; 1987 Morpho1ogy of P1ants

&

Funji; Harper

&

Row, N.Y.

3. Cook, M. T. 1903, Po1yem bryony in Ginkgo Bot.Gaz. 36, 142

4. C1owes, F. A. L .1981. The Difference between Open and C10sed Meristem, Ann. Bot. 48 761 -767 5. Favre-Duchartre, M. 1943, Sur 1e comporthment des ovu1es de Ginkgo biloba, B叫1,Soc.Bot.Fr.ω, 111-116 6. Hills, T.G. & E. de Fraine ; 1909, On the Seedlings Structure of Gymno-sperms. III Ginkgoaceae . Ann. of Bot.23, 433-458

7. Li, T. T. 1934, The Deve10pment of Embryo of Ginkgo biloba. Soc. Rep. Natl. Tsing Hua Univ. Ser. B.

2, 29-35.

8. Lyon, H.L. 1904. The Embryogeny of Ginkgo. Minn. Bot. Studies 3, 275-290

9. Mauseth, ].D. 1988, P1ant Anatomy. The Benjamin Cummings, Men1opark, Ca1if.

10.0' Brien, T.P. & M.E. McCully, 1981 The Study of P1ant Structure, Princip1es & Se1ected Methods.

Termarcarphi PTY, Me1 boume, Austra1ia.

(4)

イチョウの匪軸,上匪軸 図1 3子葉をもっ匪の横断図 (x29) 1 小さい 2子葉は大きい子葉の約半分の大き さ。緑近くに存在する大きな樹脂道はピンク。 図中に黒く点在する細胞は緑色のタンニン細胞。

~

71

3 子葉の分離する位置。 2子葉として匹軸か ら出るが、基部近くで分離(矢印)。 5 上匹軸の基部。 2 上匪軸成長点附近の横断図。5幼葉が存在。

4

4 子葉の基部。 2裂 し て い る 子 葉 の 維 管 東 (V)はすでに分離。

6

6 下匹軸。樹脂道はない。表皮細胞中に含有 物がありあい色に染まっている。 -

(5)

55-『教育学部紀要』文教大学教育学部 第29号 1995年 相 馬 早 百 図2 1 図1-3の矢印部分を拡大。 (x 145) 2 子 葉 の 向 軸 表 面 に 気 孔

s

0 (x 290) 3 下匹軸の根端分裂組織部分の拡大図。図2-5のM附 近。Qは静止中心。Cはコル メ ラ 。 (x 145) 4 下匹軸横断面の表皮細胞。 含有物が多くあい色を示す。 (x 290) 5 下 匹 軸 の 縦 断 面 。 根 端 分 裂 組 織M、 表 皮 細胞 に 含 有 物。 根端に不定形のつぶ れた細胞群。 (x29) 6 2裂 し た 子 葉 を も っ た 匪 の 発 芽。子 葉 は 伸 長 し て 種 子 内 に 存 在。下匹軸は表 面 は 茶 色。目盛は l mm。

参照

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