会話のマネージメントにみられる性差 : その1
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(2) 会話 のマ ネ ー ジメ ン トにみ られ る性差. 152. 歴 史 的背 景 と問題 点. 1.1.フ. ェ ミニ ス ト言語学. 言語行動 (speech beha宙 or)に お け る性 差 につ い ての 言及 はデ ンマ ー クの 英語学 者 で あ るオ ッ トー. イェ ス ペ ルセ ン (Jespersen)の 1922年 に出 され た. ιαηご οrzgグ η(Jespersen,1922(1990))│こ さ υθ JOpttθ η αrθ , ごθ ι んαttzαgη ′グ 5ηα″ か のぼ ることがで きる。 クラ ッシ ックス ともい える この本 の なかで イェスペ ルセ ンは, “ The. Woman"と. い う タイ トルで一 章 を割 き女 1生 語 につ い て次. の よ うな観察 を述 べ て い る。女性 は男性 よ り話 し方が ソフ トで丁 寧 で あ る. ,. 語彙 が少 な い,`teeny weeny'と い った指小辞 (diminutive)を 使 う, 文 を完 成 せ ず ,途 中で 終 わ らせ て しまう, トピ ックを頻繁 にか える (Cameron,1985, 1992よ. り引用 )。 しか し彼 の指摘 した こ う した女性特有 のス ピー チ ス タイル を. ,. フェ ミニ ス トたちや フェ ミニ ス ト社会言語学者 は実証 に欠 け る逸話 にす ぎな い と批 半Jし て い る。 た とえば,ジ ェニ フ ァー. コー ツ (Coats,1986)は 彼 の. 主張 の根拠 の希薄 な こ とを次 の よ うに批 判 して い る。女 の語彙 が 一般 に男 の 語彙 に比 べ て著 しく狭 い とい う主張 の裏付 け とな って い るの は,ジ ャス トロ ウ とい うアメ リカ人が 行 な った実験結果 だ け で あ る。 この 実験 で は100語 か ら成 る文章 を書 きな さい と言 われた男女 の学 生 との比 較 にお い て男子学 生 の ほ うが女子学生 よ りも多様 な語 を用 い た とい うもので あ る。 また,女 性 の副 詞 の使 い 方が男性 と異 なる こ とをチ ェス ター フ イー ル ド卿 の vastlyと い う 副詞 につ い ての説 明 を引用 して ,女 は誇張 を好 むゆえに強意副詞 の使用 にお いて流行 の先頭 をい くことが 多 く,本 来 の意味 を逸脱 して使 って い る, と述 べ て い る。 しか し,vastlyの 本 来 の意味が い か な る ものか とい う説 明 もな く ,. こ う した副詞 を使 うの は女性 だけ とか,圧 任1的 に女 性 が 多 い とい うことを示 す証拠 が 与 え られて い ない (Coats,吉 田訳1990:21よ り引用 )。 デ イル. スペ ンダー (Spender,1987:18)は 国際的 な女性 の連帯 をめ ざす フ. ェ ミニ ス ト言語学者 で あ るが ,イ ェスペ ルセ ンの よ うな言語学 の権威者 が女.
(3) 林. 礼. 子. 153. 性 の ことばが 欠陥 に満 ちて い る とい う よ うな発言 を して い ること,そ して現 代 の言語学者 たちの 多 くが イェスペ ルセ ンのい う女性 の ことばの否定 的 な特 性 をその まま研 究 の前提 と して い ること,に 厳 しい批判 を して い る。 スペ ン ダー はイェスペ ルセ ンが言語研 究 を通 じて女性 をどの よ うに見 て い るか を示 す ため に彼 の ことば を引用 して い る。. 女 はそ の性 ゆえに 「ごつ ごつ した荒 っぽ い表現 をひか え,… ヴェ ー ルで 包 んだ 間接 的 な表現 を好 む」,そ のため 男 の よ うな効果 的 な話 し方が で きない, と主 張 して い る。 しか も,女 の不完全 さをあげ るだけで は足 り な い と見 えて ,女 の悪影響 か ら言語 を守 る必 要 もあ った ら しい。 イェス ペ ルセ ンに よる と,女 は言 語 を衰退 させ る影響 を もっ てお り,「 女 の 表 現 に満足 して い る と,言 語が活気 のない気 の抜 け た もの にな って しまう 恐 れがあ る,正 々堂 々 と抗議す るのは,男 に とって当然 の こ とだ」 とい う こ とになる。 イェスペ ルセ ンは「威勢 や躍動感 は価値 の あ る ものだ」 と考 えてお り,女 にはそ うい う資 質 が欠 けて い て役 に立 たない とい う意 見 で あ ったか ら,女 こ とばに危険 を感 じた ので あ る。 (ス. スペ ンダー は言語. (あ. ペ ンダー,れ いのるず訳 1987:18よ り引用). るいは言語の一部)は 男 の もの だ とはっ き り主張 した男. の言語学者 の名 を挙 げ,そ の主 張 の論法 ,研 究方法 に疑 間 を投 げ て い る。 さ らに言語 の1生 差研 究 に携 わ って い るフェ ミニ ス トや フェ ミニ ス ト言語学者 自 身 の研 究 の なか に も,女 こ とばは欠陥のあ る もの,あ るい は,逸 脱 した もの で あ る とい う考 え方が研 究 の前提 や プ ロセスの基盤 にな って い る ものが 多 い. ,. と批 判 して い る。 た とえばア ンケ ー ト調査 や イ ン タ ビュー とい った研 究方法 を とる場合 ,女 の こ とばは不完全 だ とい う こ とを前提 に した問題 を作成 した り,解 答 や結果 の解釈 も女 の こ とばは不完 全 だ とい う概念 をフ ィル ター に し て しまって い る とい うので あ る. (ス. ペ ンダー1987:12-13)。. 1980年 代 は言語 と性差 に関す る研 究が大 き く転換 した10年 で あ る。 コー ツ.
(4) 会話 のマ ネ ー ジメ ン トにみ られ る性差. 154. や ス ペ ン ダー の他 に も,デ ボ ラ ン,ナ ンシー. カメ ロ ン (Cameron)(1985)バ リー. ヘ ン リー とシェ リス. ソー. クラマ レ (Thorne,Henley and Kramarae,. 1981,1983)と い った研究者が 1970年 初期 まで の言語学 にお け る性差 の研 究 の 欠点 を指摘 し,新 しい研究 の方法 や学問分野 を生 み 出 して きた。彼女 らの批 判 は女が使 う こ とばや ス タイルが男 とは違 った (diferent)も ので あ り男 の使 う標準 的 (standard)な こ とば と比較 して劣 って い る, と言 う前提 の もとに これ まで研究が な されて きた とい う こ とで あ る。逸話 的 に語 られて きた仮定 ′ を性差別的偏 見 だ と抗議す る こ と自体 が 性差別 を正 当化 して しまうことに な る とい うのが 彼女 たちの主張であ る。 そ の例 と して頻 緊 に出 され るのが ロ ビ ン. ηむPttε θ(Lako1 1975)で あ る。 レイ コ フ (LakoI)の Lα 獲″等 αηご %π θ. この 本 の なか で レイ コ フは我 々の 意 識 と してあ る女 の従属. (subordirlation). と男 の 支 配 (dominance)と い う関係 が ,生 まれ つ い た生 物 上 の 違 い に よる ので はな く,書 物 な どの言語 の使 い方 に現 われ る性差別 に よって作 られて き たのであ る と述 べ ,様 々 な分野 で イ ンパ ク トを与 えた。以後 ,言 語 と性差 に 関す る研 究が この本 に大 き く影響 された と言 って も過言で はな い。 レイ コ フ に よる と,女 は示唆的 で婉 曲な言 い方 ,た め らい表現 ,丁 寧表現 ,意 味 を も たな い形容詞 な どをよ く使 うが ,こ れは,女 が不安感 や確信 や 自信 の な さを 伝 えるような話 し方 を した り,自 らの ことば をとるにた らな い もので あ るか の よ うに話す か らであ る, と説 明 して い る。 こ う した レイ コ フの見解 を支持 1). す る言語学者が い る一 方 で ,彼 女 の研究方法 や観察 の仕方 に疑 間 を もつ研 究 者 が 多 くでてお り,次 の二 点 が よ く問題 に され る。 まず ,第 一 点 は, レイ コ フは男 の使 うこ とばが優性 であ る とい う考 えかた を受 け入 れてお り,男 こ と ば を標 準 (standard language)と して,男 こ とば を もとに女 こ とば を観 察 し て い る とい う批 半Jで あ る (例 えばスペ ンダー1987)。 女 1生 が使 う こ とばが 男性. 1)た とえば, レイ コ フの欠損 の理 論 (d“ dt theOry)に 影響 を受 けた研究者 の一 人 で あ る ピー タ トゥラ ッ ドギ ル (Tnldgill,1975)は レイ コ フの 定 義 に従 い付加 疑 間 を抽 出 し,そ の 出現 の頻度数 を数 える とい うコ ンテ クス トを除外 した量分析 の研 究方法 をとって い る。.
(5) 林. 礼. 155. 子. が使 う こ とば と異 なる と,そ の 女 こ とばが逸脱 して い る (deviant)と 判 断す るわ けで ある。初 めか ら女 こ とばが 男 ことばの逸脱 で あ り,欠 陥があ り,効 果 に欠 け る, とい う定義 の もとに女性 の こ とば を研 究 した ところで ,結 果 は そ の定義 を確 認す るだ け にな って しまう, とい うのが彼女 たちの主張 で あ る。 男女 の こ とばの使 い方 を比較す るのであれば,な にを中立 とす るのか をまず 決 め ,そ の 中立 となる もの を基 準 に照 ら して二 者 を測 らなけれ ば正確 な比較 2). はで きな い。第 二 点 は レイ コ フの研 究が逸話 的だ とい う批判 で あ る (例 えば. ,. Crosby&Nyquist,1977;Dubois&Crouch,1975)。. レイ コ フは実際 の デ ー タか. ら女性 の ことばの特徴 を選 び,そ れ を直感 に よって説 明 して い るわ け だが. ,. 彼女 の主 張 に基 づ い て実験 や調査 を実際 に してみ る と彼女 の主 張 と反対 の結. 2)れ いの るず (1987:366)は ,70年 代 の レイ コ フ批 判 を(1)女 こ とば劣 等説. (女 が. 女 こ とば を話 す 限 り女 の立 場 は従属 的 な地位 に とどまる),(2)社 会変化優先説 (社 会 や そ こに住 む人 間 の 意識 が 変 わ らな い 限 り言 語改 革 は望 め な い ),(3)主 張 に経験 r(LakoI, 的 裏 づ けが な い ,の 三 通 りに ま とめ て い る。 彼 女 の 動 Jた グ 昭 Pο ι “ 1990)に つ い て もサ リー マ ッコ ネ ル =ギ ネ ッ ト (McConnell‐ Ginet,1991)に よ って同様 の批判が な されて い る。 マ ッコネ ル =ギ ネ ッ トは レイ コ フが性差 と言語政 略 を結 び付 けた言 語学 者 の 第 一 人者 であ り,言 語 と性 差研 究 を学 問 (ア カデ ミ ッ ク)と して認 め させ た こ と,そ のため ,言 語が無政略的 で あ る とい う前提 に挑 まな rに お い て も けれ ば な らなか った こ とを評 価 して い る。 しか し 1動 Jれ ηg Pο ι “ ん鍔 ztt αηご ″レ肥 ηむP滋 で受 け た批判 を越 える洞察 を して い な い とい う′ 点 で は レイ コ フヘ の批判 は痛 烈 で“あ る。 マ ッコ ネ ル =ギ ネ ッ トの批判 の焦点 は考慮 に い れ るべ きコ ンテ クス トや こ とばの 多様 1生 が限定 されて い る, しか も実際 のデ ー タ が使 われてい ない , とい うこ とであ る。 た とえば,女 性語 の ス ピーチ ス タイルが無 力 であ る とみ な され ることにた い して, レイ コ フは次 の よ うな説 明 を して い るが マ ッコ ネル =ギ ネ ッ トは レイ コ フが問題 に して い る権勢 の対 象 は地位 あ る白人の エ リー ト女性 に限 られてお り,彼 女 の `論 評 'の 有効性 には限界 があ る と して い る。 ,. 女 の こ とばは権勢 とはか け離 れた,あ るい は権勢 にた い して興味 を欠 い た,記 号言語 になる。女 ことばは断定 的 に言 い きった り,影 響 力 を持 つ こと を望 んで い るので はない …事実 は ど うであ ろ う と… とい うこ とを相手 に示す話 し方 であ る。 しか し,そ の結果 と して,断 定的 に話 した り,強 制 的 にな らなければな ら な い立場 に置 かれ る と,女 は よい女 になれ るが悪 いエ グゼキ ュテ イブや プ ロ フ ェ ッシ ョナ ルに, またはその逆 にな って しまう, とい うパ ラ ドックスに直面す る。両 方 で よい女 になる こ とは不 可 能 で あ る。女が “ 女 の立 場 ",つ ま り,家 庭 や プ ライベ ー トな世界 に留 まって い る限 り,矛 盾 は浮上 して こない。. (Lakor, 199o:206か らヲ1汗1).
(6) 156. 会話 のマ ネ ー ジメ ン トにみ られ る性差. 果が でて い る。 た とえば, レイ コ フは女が好 んで付加疑 間 を使 うのは付加疑 間 に よってため らい や ことばの強 さを加減で きるか らであ る, と説明 して い るが , ドビ ウス とク ロ ウチ ュ (Dubois&CrOuch,1975)の 研究 で は男 の方 が 女 よ りも付 加疑 間 を多 く使 う とい う結果 が で たので あ る (Coats,1986,1990 からワ1用. )。. こ う した結果 につ い て言語学 や社会学が どの よ うな反応 を示 したか とい う こ とにつ い てスペ ンダー は痛烈 な批判 を して い る。男が付加疑 間 を多 く使 っ た とい う発見 が されれ ば,そ れが もっ と文献 に載 って もよい はず だ し,男 こ とばの逸脱や欠陥 につ いての議論 や研究が もっとな されて もいい はず であ っ た。 それが な されず ,た とえ女 こ とばが劣 等 だ とい う仮定 が崩 れて も,研 究 の方法 や見方が悪 か った と説 明 されて しまった りして きた (Spender,1987), とい うので あ る。 多 くの言語 と性差 の研 究 で女 の使 うこ とばに欠陥があ る と い う こ とは支持 で きな い とい う結果 がでて い るに もかかわ らず ,こ の 欠陥説 は依 然根 づ よ く信 念 とな って い るばか りか ,強 化 さえ され て きた ので あ る (Kramer,Thome,&Henly 1978)。. ヘ ン リー とクラマ レ等 (Henly and Kramarae,. 1991;JohnsoL 1983;Kramarae,1990)は レイ コ フの アプ ロー チ は欠損 者 の立 場 (dencit pOSition)を 認 め る もので あ る とし,女 が効果 的 な話 してにな るに は男 の よ うな話 しかた,た とえば,い か に断定 的 に話す か とい う よ うな話 し 方 を学 ば なけれ ばな らない , とい う よ うな考 えを持 たせ て しまう恐 れが あ る と して い る。 レイ コ フのアプ ローチで は,女 の使 うこ とば. (男. のことばはそう. ではな く)が 規範 や標準 か らはず れて い る と見 られ る危険 が あ る。 そ して な ぜ そ の よ うに見 られ るのか とい う と,言 語 の優劣 が言語 それ 自体 の優劣 に よ るので はな く,性 の優 劣 に基 づ い て 決 め られ るか らなのであ る。. 1。. 2.社 会言語学 と会話分析. 言語 とい う用語 を文法や音韻 とい った言語 の形式 的構造 の範囲内 で とらえ. ,. 文 を言語構造 の最大 の単位 と して,こ とばの形式 を研究す るのが従来 の言語 学 の方法 で あ った。 そ の方法 が ,近 年 ,社 会言語学 に持 ち込 まれた。文法 や.
(7) 林. 礼. 157. 子. 音韻 が異 なった地域 や社会 階層 で どの よ うな変異 (variation)や 変項 (va五 able) (さ. まざまな形態をとって現われる言語単位 )と な るのか , また, こ とばの違 い. と社会 階級 との相 関関係 をみ る, とい った数量 的研 究が盛 んにな された。 そ の古 典 的 な研 究 が ウイ リア ム お け る研 究 や ピー タ ー. ラボ フ (Labov,1972a,b)の ニ ュ ー ヨー クに. トラ ッ ドギル (Trudgill,1975)の イギ リスの ノース. リッジの研究 で あ る。社会言語学 の研究 にお い て,性 もまた,地 域 や階級 と 同様重要 な社会 的変項 で あ る とい う ことが 認識 され るにい た り,言 語 にお け る性差が社会 階層 にお ける変異 と関連が深 い こ とが わか って きた。 た とえば. ,. 女が標準形 とされて い る言語形態 を用 い る割合が多 いの に対 し,男 が非標 準 形 に近 い 形 態 を用 い る割 合 が 多 い とい う こ とな どが 証 明 され た (TrudgiH, 1975)。. しかし, こうした現象は女が. `女 性'で. あるがゆえに社会に対 しより. 敏感にならなければならないということの証拠である, という現実があるこ とには言及 されていない。その最大 の原因 は,従 来 の社会言語学が “ 言語が 現実 を作 る社会行為 である"(Fowler,1984:62)と い う洞察 をするに至 らなか ったか らである。つ ま り,ロ ジャー. フォウラー (FOwler,1984)が 指摘す る. ように,従 来 の社会言語学が,社 会において階層や制度が形成 される過程や 手段 に感心 を向 けず,そ れ らの存在 を周知の事実 とみな し,社 会制度,役 割. ,. 地位 ,不 平等 とい った要 因は言語 とは無関係 に創 られる, とい う立場 をとっ たか らである。そ してその結果,言 語構造 にお ける変異 は社会構造 の もとに 観察 され,そ れ らにいかに相関があるか, とい う調査 に終始す ることになっ て しまったのである。そ して言語権造 と社会構造 は規則的 に変化 し,そ の変 化 は予知 で きうる, とい う変異 を体系的 に整理する作業 に終 わって しまった のである。 男 と女 のことばのなかか ら文法や形態 とい う言語 の一部分 のみを選 び,そ れ らを男 女 とい う要 因 の もとに数量 的 に分析 す る とい う断面 的. (cross‐. secional)な 研究方法 はフェミニス ト言語学者等 が指摘 した問題 を未解決 に. したままである。 コンテクス トを除外 した数量分析 に限界があることに気づ いた言語学者 はことばが話 される状況,社 会的,文 化的要因な どが どのよう.
(8) 158. 会話 のマ ネ ー ジメ ン トにみ られ る性差. に言語 と絡み合 って い るか を記述す る必 要性 を認 め,談 話分析 とい う学際的 アプ ローチ をとるに至 る。1980年 代初期 の社会言語学 にお け る言語 と性差 の 研究方法や理論 の枠組 みの転換 はこの よ うな歴史的流 れの中であ る意 味 で 自 然 な こ とであ った とい える。 ソー ンとヘ ン リー とクラマ レ等 が実際 に言語が 使 われて い る コ ンテ クス トの なか で ことば と性差 を研究す るのが 一番 よい結 果 が 得 られる と主 張 し,同 時期 に,パ メラ 1978)や キ ャ ンデ ィス. ウエ ス トと ドン. フ ィ ッシュマ ン (Fishman,1977,. ジマ ーマ ン (West and zimmerman,. 1983,Zimmeman and West,1975)が ,同 性 間 の会話 や異性 間 の会話 を言語資 料 と し,社 会学 で発 展 した会話分析 の手法 を使 って会話 のや りと りにみ られ る様 々 な現象 を分析 した。会話分析が発展 し,応 用 され るに従 い,社 会言語 学 が こ とば と性差 の研 究 で扱 う範 囲 も理論 や アプ ローチ も多様 にな り,音 韻. ,. 語彙 ,文 構造 だ けで な く,会 話 のや りと りやそ のス トラテ ジ ー,言 語使用 の 違 い が なぜ起 こるのか ,言 語使用 の社会化 とい う面 まで包含す るに至 って い る。 しか し,多 様 なアプ ローチ に よ り,研 究結果 や解釈 に多 くの不 一 致 をみ るこ とにな り,現 在 ,研 究 の理論 と方 向 は大 別す る と,権 力 と支配の アプ ロ ー チ (e.g.Kramer,Thome,&Henley 1978;Kramarae,1981;Kramarae,1990;. Henley and Kramarae,1991;)と 文化 の相違 の アプ ローチ (Malts and Borker, 1982;Tannen,1990;Tannen,1993)の 二 つ の グル ー プに別 れて い る。本論文で は基 本的 には権力支配 のアプ ローチ の視点 か ら分析 を試 み るが , レイ コ ヤ シ とタクオ. ハ. ハ ヤ シ (Hayashi and Hayashi,1994)は この グル ー プの分岐 は. 対立す る もので はな く,本 質的 に分析 の前提 が異 なるわけで ,三 分化 して い るアプ ローチ を統 合 させ る こ とに よって,現 象 をよ り深 く包括す るこ とがで きる と して い る。 役割 や地位 ,不 平等 とい った要 因 は社会構造 に内在 してお り,社 会行為 と して の言語行為 を分析す る うえで排 除 で きる もので はな い。 ゆえに,男 女 の ことば を分析す る場合 マ ク ロ な社会 コ ンテ クス トを除外す る ことはで きな い。 一 方 ,す べ ての会話 のス タイルや マ ネ ー ジメ ン トの ヴ ァリ エ ー シ ョンを権勢 に帰属 させ て しまうこ ともで きない。 こ とば を選択す る. ,. つ ま りどの よ うな ス トラテ ジ ー を とるかは ミク ロ な状況 の コ ンテ クス トや会.
(9) 礼. 子. 話 者 の相 互作 用 のス タイル と相対 して い る (Tannen,1993)の で , とられ た 言語行為 の意味 を深 く探求す る必 要 があ る。 つ ま り,権 力 と支配 のアプ ロー チ を縦 の軸 とす る と,文 化 の相違 の アプ ローチ は横 の軸 の連続体 なので あ る。 発話行為 はこの縦 の社会 コ ンテ ク トと横 の状況 の コンテ クス ト内で起 こるの で あ る。 そ してハ ヤ シ とハ ヤ シは二 つ の コ ンテ クス トもそ こか ら生 まれ る言 語行為 も発話 にい た る認知 の プ ロセス を理解 しなければな らない として い る。. 会 話 の分析 単 位 会話 にお け る相互作用 と性差 に関す る研 究 に触 れ る前 に,会 話構造 の分析 に使 われ る分析 の単位 と定義 を簡単 に述 べ てお く。. 2。. 1. 言 舌しの番 (turn)と 言 舌者交 :替. (turn口 taking). 話 しの番 (tum)と は話 してが話者 としての役割 を持 って い る機会 で あ り ,. そ の 話 してが言 った こ とや した こ とが 有効 で あ る とみ な され る こ とで あ る 会話 の規則 や エ チケ ッ トを直接教 え られ る とい う. (Sche」 oI&SaCks,1973)。. よ うな経験 が な い に もかかわ らず ,我 々は会話行為 に従事 して い る ときは無 意識 の うち に あ る種 の想定 の もとに話 しの番交替 (話 者交替)を して い るは ず で あ る。社会学者 で あ り,会 話分析者 で もあ るハ ーベ イ ニ ゥエ ル. シェグ ロ フ,ゲ イ ル. サ ックス,エ マ. ジェフ ァー ソ ン (Sacks,Scheglo∬ ,&Jefer_. son,1974)は ,話 者交替が制 度 的 に一 定 のル ール に従 って行 なわれ る とい う こ とを発 見 した。話者 は 自分 の話 しの番 を終 える と き,話 しの終 わ りに,語 句 ,節 ,あ. ,. るい は文 とい った言語 コー ドを使 って番 の終焉 を告 げ る。話 して. が番 を終 える と,会 話者 は次 の話者 を決 めな けれ ば な らず ,つ ぎに誰が番 を とるか ,交 渉 をは じめ る。サ ックス等 に よる と,そ の交渉 は次 の三 つ の規則 に従 ってお こなわれ る。 今 の話者が話 し終 わ る と. ,. (1)今 の話者 は次 の話者 を選 ぶ ことがで きる,そ して今 の話者 に選 ばれた.
(10) 160. 会話のマネージメントにみられる性差. 次 の話者 は次 の話 しの番 を取 る義務 と権利 を持 つ 。. (2)も し今 の話者が次 の話者 を選 ばなか った ら,今 の話者以外 の会話 の参 加者全員 に次 の話 しの番 を取 る権利 があ る。. (3)も し今 の話者が次 の話者 を選 ばず ,か つ 会話 の参加者 のだれ も次 の話 しの番 を取 らな けれ ば,今 の話者が再度話 しの番 を取 ることがで きる。 この 話者 交替 (tum tahng)の 規則 は(3)番 よ りも(2)番 が ,そ して,(2)番 よ り も(1)番 が優先 され る。実際 の会話 の構造 を分析 してみ る と,こ の システ ムが 規律正 しく繰 り返 し現 われて い るわ けで は な い。 また,こ の規則 は,会 話行 為 をす る ときは必 ず この規則 に従 って会話 を しなければな らない, とい った 規範的 な もので もな い。 しか し,こ の システ ムの発 見 は 自然 に発生 した会話 にお い て,話 しの番 と りや交替 が どの よ うに行 なわれ るか を分析す る際 に議 論 を発展 させ るための基本的 なモ デ ル とな りえる。 このモデルが どの よ うな 状況 の ときに,誰 が ,あ るい は,誰 に, どの よ うに崩 され るのか , とい った 研究 がで きるわけであ る。. 2。. 2。. 場 の ネ ッ トワ ー ク. (■ oor). 次 の会話 を上 の話者交替 のモデルに従 って分析 してみ る と,Aは 話 しの番 (turn)を 二 回 とって い る。 さらに,Aは 問 い掛 け(1)で. Bを 指名 し,指 名 され. た Bは 反応(2)を して い る。 Bの 反応 は同時 に質問 の機能 もしてお り,Bは 再 び Aを 指名 してお り,Aは (3)で Bの 質問 に答 える義務が あ るわ けで あ る。. A(1):You know something?. B(2):What? A(3):It's time for lunch. (日 本 語 訳 ). A(1):あ の ね B(2):な に. A(3):お 昼 の 時 間 で す よ。. (Nofsinger,1975:2).
(11) 林. 礼. 161. 子. ■oor"と い う ことばはサ ックス (Sacks,1972:325-345)が 初 めて使 英語の “ loo「 'の 意 味 は話 しを始 め る,あ る い は,陳 述 す る権 った。彼 の定義 した “. 利 で あ り,彼 はこの権利 をチケ ッ ト (ticket)と 呼 んだ。 つ ま り,サ ックスの 定義 に よる と,話 者 が話 の番 (turn)を とった ときそのチ ケ ッ トも同時 に と るわ けで あ る。 た とえば子供 が “ You know whatr'(あ のね)と 言 って母親 に 自分が今 これか ら話 を した いん だ とい う意志表示 を し,母 親 がそれ に応 じ る とその子 は母親 に対 して話 しを始 め るチケ ッ トを得 た ことに なるわけで あ. You る。 ロバ ー ト ノフシ ンガ ー (Nofsinger,1975)は , “. know what?" と. い う よ うな開始 の しかたは “ You know what?"と い う発話 を した時点 で話 して は 自分 に再 び話す権利 つ ま り,フ ロ アが戻 るよ うに要求 も同様 に して い る こ とになる と主 張 し,こ の よ うなチケ ッ トを要求券 (demand ticket)と 呼 んだ。 た とえば上 の会話 を例 に とってみ る とAバ 1)を 発話 した ときAは フ ロ アを獲得 した ことに なる。 Aの 獲得 した フ ロ アは B(2)の 反応 に よ りBに 一旦 移 るが ,Aは (1)を 発話 した時点で Bに 譲 った フ ロ アが Aに もどる ことを期待 して い るのであ る。 ノフシ ンガー もサ ックスが定 義 した よ うにフ ロアは話 し をす る (番 をとる)権 利 で あ る とし,話 者 交替 の た びにその権利 も移 る と し て い る。 しか し,教 室 内 にお け る授 業 のや りと りの分析 か らフ ロ アは もっと グ ローバ ル な粋組 み を もって い る とい う発 見 (Philip 1972;Shultz,Florio and Erickson,1982)が な され,キ ャ ロ ル. エ デル ス キ ー (Edelsky,1981)は フ ロ. アを “ 心理的 な時 間 と空 間 のスペ ース "で あ る と定義 した。 そ の定義 に よる と,フ ロ ア とター ンは同義 で はな くフ ロ アを持 って い な くて もター ンを と り 話 しをす る場合 もあ る し,話 して い な くて もフ ロ アを持 つ こ とは可能 だ とい うこ とになる。 これ をハ ヤ シ (HayasЦ 1987,1994)は. ,会 話者 が共 同で作 り. だす “ 場 の ネ ッ トワー ク"で あ る と定義 しなお し,会 話構造 にお い て話者交 替 や動機 の レベ ル とは異 な った レベ ルに存在 す る認 知的 な概念 で あ る と した。 つ ま り先述 の ノフシ ンガーの会話 の例 を使 う とA力 Xl)を 発話 した時点 で Aは フ ロ アの要求 を し,B力 ×2)を 発話 した時点で Aの 要求 は Bに 承認 され Aは フ ロ ア を獲得 した こ とになる。 Aは そ の ままフ ロ アを持続 させ ,Bは Aの フ ロ.
(12) 162. 会話のマ ネージメン トにみられる性差. ア内で Aと の会話 を進 め る とい うのが ハ ヤ シの提案 した フ ロ アの性格 であ る。 フ ロ アはふ た り以上 の対話者が協 力 してあ るい は無意識 につ くりだす認知 レベ ルに存在す る知識 で ,会 話行為 があれば必 ず創 生 され,会 話行為 が続 く 限 り対話者 間 に存在す る もので あ る (Hayashi,1991)。 会話 を続 け よ う とい う 意志 が会話者 の 間 にあれば,会 話者 はフ ロ アを存続 させ るための努力 をなん らか の形 で して い るわ けで あ る。会話が始 まったばか りの 時 の フ ロ アは不 安 定 な形態 になって い るが会話者 の努力 に よって安定 して くる。 フ ロ アは会話 者 の 共 同作業 に よって維持 され るのだが ,会 話 の参加者 の あ い だになん らか の力 関係があ った り,力 のバ ラ ンスが とれていな い と,だ れかが フ ロ ア を コ ン トロールす る主 導権 を持 つ こと も多 い。会話行為 にみ られ る,力 (pOWer) の 配分 ,協 調 ,丁 寧 (pOhteness),衝 突 ,競 争 とい った縦 の社 会 的要 素 と場 の状 況 や個 人 の感情 とい った横 の要 因が フ ロ アを構築す るの に影響 して い る わ けで ,だ れが , どの よ うな時 に, どの よ うに して フ ロ アを コ ン トロールす るのか とい うこ とを明確 に しなが ら目的 とす る分析 を しなければな らな い。. 権 力 と支 配 の アプ ロー チ ロ ジ ャー. ブ ラウ ン とアルバ ー ト ギ ルマ ン (Brown and Gilman,1960)が. ヨ ー ロ ッパ 言 語 に お け る代 名 詞 の 使 い 方 の 分 析 をす るの に 権 勢 と連 帯. (power and sddarky)の 概念 をフ レーム ヮー クに使 って以来 ,権 勢 と連 帯 は 社会言語学 だ けで な く,他 の談話研 究 の分野 で も基本的 な理論 の用語 とな っ て い る。二 人称代 名詞 ,た とえ ば,フ ラ ンス 語 の tuと vousや ドイツ語 の. duや Sieの 用法 は英語 の youと は異 な り,そ の使 い分 け は話 して い る相 手 との ダイクテ イクな関係 に よって決 まる。 ブ ラウ ン とギル マ ンの説 に よる と. ,. 権 勢 は会話者 間 の 関係 が ,優 位 にあ る, とか 劣 勢 にあ る, とい った不均衡 (asymmet五 cal)な 場合 に生 じる。 そ の場合 ,た とえば,フ ラ ンス語 で は一 方. が相手 に tuを 使 い,そ の相手 は vousで 返答 した りす る。連 帯 は対話者 の 関 3). 係 が平等 (symmetrtal)な 場合 に起 こる。 そ の場 合両者 は tuで 呼 び合 う。権.
(13) 林. ネL. 163. F藤. 力 と支配 のアプ ローチ はこの権勢 の概念 を発展 させ た もので ,こ とばの選択 や会話 のや りと りの ダイナ ミックにお い て性差 が権勢 とい か に関 わ って い る か を明確 に しようと して い る。 この章 で は権勢 の概念が性差 の研 究 に影響 を 与 えた過去 の談話分析 の実証例 を使 い なが ら,権 勢 が会話構造 で どの よ うに 生 じるか を,二 つ の異 なった レベ ルで 論 じる。. 1.発 話 レベル にお ける性差. 3。. 発話 レベ ル とは 3章 で述 べ た よ うに,一 人 の会話者が ター ンを持 って い る 時 に話 した こ とば,つ ま り,タ ー ン内 の 発 話 をい う。 1980年 に ウイ リア ム オバ ー とバ ウマ ン. ア トキ ンス (O'Barr and Atkins,1980)は 法廷 にお い て女. 性 の証人 と男性 の証 人で は使 うこ とばが 異 なる とい う仮説 を実証す るため に. ,. レイ コ フの欠 損 の理 論 に基 づ い て 女性 こ とば (women's language)と され る 表現 を次 の10項 目に分類 した。 そ して ノース カ ロ ライナの犯罪最高裁判所 で 行 なわれた裁判 を150時 間以 上 録音 し,一 人 一 人 の証 人 の証 言時 にお け る各 項 目の 表現 の頻 出度 を数量化 した。 それ を発話 (質 問に対 し,返 答 したターン の回数 の合計)の 総数 で 割 って得 点 をつ け た ところ,証 人が得 た得 点 は1。 39 (一 つの発話につ き平均 1以 上の女性ことばが見 られたことをしめす)か. ら0.18(女. 性 ことばの出現が平均 1以 下で非常にまれにしか使 われなかったことを示す)に 亘 った。以下 は証言者 の発話 の例 で あ る (0'Bar and Atkins,1980:96-99よ り引 用,下 線 は筆者 による)。 1. 垣根表 :現. :“. It's sOrt of hot in here.". 2(過 度の)丁 寧表現. :“ Itt. It I guess...'' “ “. really appreciate it if.¨. seerns like...''. Would you please “. open the door, if yOu dOn't rnind?". 3. 付加疑 問文. :“. Is John here?"の 代 わ りに “ John is here,isn't he?". 3)会 話運営 にお ける権勢 と連帯のダイナ ミックな関係 はことばの分析 に入る前 に状 況にお ける文 寸話者間の複雑 な対人関係や心理状況 を分析 しておかなければならない。 社会的 に上位 の者が下位 の者 に丁寧表現 を使 うときの権勢 と連帯 の意味 については 扱 わな けれ ばな らない現象が多 くあるが ここでは省 く。論議 につ いては Tannen (1993)を 参照 のこと。.
(14) 164. 会話 のマ ネージメ ン トにみ られる性差. 4. イ タ リ ック体 で 話 す (強 調 ):`so'や `very'を 強調 す る ,語 や 句 を下線. を引 いたようにイ ン トネーシ ョンに変化 をつ ける. 5意. 味 を も た な い 形 容 詞 :`divine',`charming',`cute',`sweet',. `adorable', `10vely'. 6 7. 過剰訂正 の文 と発音 :肩 苦 しい文,よ リフォーマ ルな発音 ユーモ アの感覚 の欠如 :女 は冗談 をい うのが下手であるとか,男 のい. うジ ョークの意味 を理解で きない とかいわれる. 8 9. 直接引用 :言 い替える代 わ りに引用 を使 う 特殊な語彙 :専 門的な色彩 ことば,マ ゼ ンタ. ーズ. (明. (深 紅色)や. シャル トル. るい黄緑色)な どを使 う. 10 平叙文 の 文脈 で疑 間 と同 じイ ン トネ ー シ ョンをつ け る :例 えば. ,. “ When will dinner be ready!"の 質 問 に対 す る返 事 で “ Around 6 o宅 10ckメ 'と. 答 える時,許 可 を求めた り,そ の時間で よいか どうか を尋. ねた りする ようなイ ン トネーシ ョンをつ ける 例 1は 女性 ことばの使用 の度合 いが高かった例 で,こ の証人 Aの 取 った得 点 は1。 14で あった. 例. (“. W"は 証人を表す)。 L"は 弁護士, “. 1。. L. State whether Or not, Mrso W。 , you were acquainted with Or. knOw the late ms.Eo DoP Wo Ouite well. L. What was the nature of yOur acquaintance with her?. W.Well,we were,並 ,Very. close friends.Uh,she was even sory of. hke a mOther tO me. (日 本 語 訳. ). L.Wさ ん ,亡 くな っ た E.D。 W. とて も よ く. さ ん と知 り合 い か ,知 っ て い ま した か. L.ど のような知 り合いで したか ?.
(15) 礼. 林. W.え. え―. 私達 は. は私 に とって. あの. まあ そ の. 子. 165. とて も親 密 な友 達 で した。 あ の ―. 彼女. お 母 さん の よ うで した。. この 例 で は上 の 項 目の ため らい や強 調 が頻 出 して い る。 例 2の 証 人 Bの 証 言 は女 の こ とば とされ る表 現 と断定 表現 が混在 し,得 点 は0.84に 落 ちて い る。. 例 2.. L. All right.I sak you if your husband hasn't beaten hiln up in the last week?. W.Yes,and do you knOw why? Lo Well,I。 ¨. Wo Another gun episode. L. Another gun episode? W. Yesslree. (日. 本語訳 ). L.わ か りま した。 あなた の夫 は先週彼 をぶた なか ったか ど うか聞 い て い るのです。. W.ぶ ち ま した。で もなぜ かわか ります か。 L.あ の― 私 は… W.ま た拳銃 の ことです。 L.ま た拳銃 の こ と ?. W.そ おおおで えええす この例 で は,答 え方が受 け身的 ,(弁 護士 に)質 問 を返す ,(弁 護士 の )タ ー ンを遮 る, とい った女 のス ピーチ ス タィル とされて い る特徴 が発話 ご とに出 現 して い るが ,証 人 Aと 比較す る とBの 発言 は率直 で 断定的 な表現が多 くな って い る。.
(16) 166. 会話 のマ ネージメ ン トにみ られる性差. 例 3は 女 の こ とば と され る表現 の 使 用 の 度 合 い が最 も低 か った例 で ,こ の 証 人 Cの 取 った得 点 は0。 18で あ った。. 例. 3。. L. And had the heart nOt been functiOning,in other words,had the heart been stopped,there would have been no blood to have come from that regiOn? W. It lnay leak dOwn depending On the pOsition of the body after death.But the presence of bloOd in the alveOll indicates that sOme active respiratory action had to take place。 (日 本語 訳 ). L.そ して心臓 が 機 能 して い なか った ら,つ ま り,心 臓 が停 止 して い た ら,そ こか ら出血 しなか った はず で し ょう ?. W.死. 後 遺 体 を置 い た 位 置 に よ って は 流 れ 出 るか も しれ ませ ん 。 しか. し肺 胞 に血 が 見 られ る こ とか ら, な ん らか の 活発 な呼 吸 が あ った は ず です。. 証 人 Cは 病 理 学 者 で ,返 答 は率 直 ,た め らい や垣 根 表現 や強調 が ほ とん ど見 られ な い 。 最 後 は証 人 Dの 例 で ,取 った得 点 は 1.39で あ った。. 夕J4. L.And you saw,you observed what?. wo wen, after l heard―. I can't reany, I can't deinitely state. whether the brakes or the lights came lrst,but l rotated my head slightly to the right, and looked directly behind Mro Z,and l saw renections of lights, and uh, very, very, very instantaneously after that, I heard a very, very loud explosiOn― 一一一frOrn my stand point.
(17) 林. ネL. 167. F藤. Of view it wOuld have been an implosion because everything was. fOrced Outward like this,k a grenade thrown into a room.And, uh, it was, it was terrincany loud。 (日 本 語訳 ). L.そ して あ な た は見 た ,な に を観 察 した の で す か ? W.え え,私 が 聞 い た 後 で ,一 一 本 当 に,ブ レ ー キ か ラ イ トか どち ら が先 だ った か は っ き り言 え ませ ん 。 で も私 は右 に頭 を少 し回 しま した. ,. そ して Zさ んの 後 ろ を じか に 見 ま した ,そ して ,ラ イ トの反射 を見 ま した ,そ して ,あ の う,そ の あ と. とて も, とて も,急 に , とて も. ,. とて も大 きな爆 発 を聞 きま した一 ― 私 の 見解 で は ,そ れ は爆 発 だ った. と思 い ます , とい うの はみん な こん なふ うに外 に出 され ま したか ら. ,. 部屋 に投 げ込 まれた手 相弾 の よ うに。 そ して,あ の,そ れ は物凄 く大 きな音 で した。. この証人 の発話 には レイ コ フの項 目の特徴 が 多 く見 られ る。 なか で も強調 の 頻 出度 は顕著 で あ る。 4). 例. 1, 2, 3,の 証 人 は女 ,例 4は 男 で あ り,こ の分析 か らオバ ー とア ト. キ ンスが 定義 した10の 女 の こ とばの特性 とされ る表現 が必ず しも女性 の こ と ば特有 の もので はな い こ とが わか った。男 の証 人 Dが 取 った得点 は1.39で. ,. 例 1の 女 の証人が取 った得点 よ り高 か ったわけであ る。 オバ ー とア トキ ンス は さらに証人 の社会 的要 因 も変項 として分 析 にい れた。証 人 Aは 主婦 ,証 人. Dは 経験 の浅 い救急車 の助手 で法廷 にお け る経験 はほ とん どない。 それ に対 し,病 理学者 の証人 Cは 専 門 の証人 と して法廷 の経験 が豊富 で あ った。 この よ うに証人が だれで ,だ れ に, ど うい う状況 で , どの よ うな話 し方 をす るの か とい うことを分析 の対 象 に入 れた結果 ,女 の こ とばの特性 とされる表現 の 出現頻度 は性別 で はな く,第 一 に話 して の社会的地位 ,次 に話 しての法廷 に. 4)オ バ ー とア トキ ンス (1980)は 男 の証 人 の例 をあ と 2例 挙 げ て い るが ,こ こで は 省略す る。例 は O'Barr and Atkins(1980:99,102)を 参照 の こ と。.
(18) 168. 会話のマネージメン トにみられる性差. お け る経験 と相 関関係 があ るこ とが わか った。 この結果 か らオバ ー とア トキ ンス は レイ コ フの挙 げ た女 こ とば を無力 の ことば (powerless language)と 呼 び変 え,無 力 な こ とばが女 の こ とばであ る と定義 され るのは社会 にお い て女 が男 よ り力 が な い か らであ る,そ して多 くの女 が無力 の ことば を使 うの は女 とい う性 に よるので はな く,社 会 にお け る女 の地位 に よる もので あ る と,結 論 を出 した。 この 結 果 につ い て は, リー ト・ペ レグ リニ (Leet=PellegHni,1980)(Coat, 1990:114か ら引用)が 会話 を支配 (dominance)の 視 点か ら分析 して,同 様 の 結 果 を得 て い る。 リー ト・ペ レグ リニ は話 して の性別 と専 門的知識 (話 題に 対す る知識の程度)と い う二 つの変項 が どの よ うに作用 し合 うか を研究 した結 果 ,男 でかつ 知識 の豊富 な話 して は会話 を支配す る傾 向が あ り,話 し相手 よ り多 くしゃべ り,相 手 の話す順番 の権利 を侵害す る,こ れ に対 して女 で知識 の な い話 して は相手 よ り回数 が少 な く,よ り反応 を示 し,相 手 を支持す る言 語的態度 を とった と報告 して い る。 さらに知識 の豊富 な男 の話 して は権力 に 基 づ い た対応 の しかた をす るので会話 を支配す るが ,知 識 の豊富 な女 の話 し て は連 帯意識 と支持 に基 づ い た対応 の しかた を好 んだ と報告 して い る。. 3。. 2.会 話の相互作用 にお ける性差. 上 の例 は女 の こ とば とされ る特徴 が一人の会話者 の発話 内 で どの よ うに出 現す るか を分析 し,そ してそ の 出現頻度 を数量 で 算 出す るこ とで ,こ とばの 権勢 が どの よ うな社会 的要 因 とどの よ うに関係 があ るか を調 べ た もので あ る が ,会 話 のや りと りをい か にや り繰 りす るか とい う会話 の マ ネ ー ジメ ン トに も性差が み られ る。 この章 で は 3章 で紹介 した二 つの分析 モ デル を使 った研 究 の例 をあげて `遮 る'と い う行為 と `質 問 をす る'と い う行為 につ いて考察す る。. 3。. 2.1.遠 りにみ られる性差. 遮 り行為. (inteπ. uption)と は話 しの順番 の規則 を破 った結果生 じる現象 で. ,.
(19) 林. 礼. 子. 169. 次 に話 しの番 をとろうとするものが,現 在 の話 してが話 し終 わったとい うこ とばや身振 りの信号 を出 してい ないの に話 し始 めて しまう行為 をい う。 こう した遮 り行為 は現在 の話 してが話 し終えるのを妨げ ると同時に,話 しの順番 を狂わせて しまうことになる。ジマ ーマ ンとウエ ス ト (Zimmerman&West, 1975)は カリフォルニ ア大学 の キ ャンパスにある喫茶店や ドラッグス トアで. 二人 の会話者間で交わされた11の 異性間会話 と20の 同性間会話,合 計31の 会 話 を書 きとり,サ ックス等 の会話 の規則 をもとに,会 話者が どのような規則 違反 をするか調べ た。ジマーマ ンとウエス トの分析結果 をみると,異 性間会 話 では男 の話 してが女の話 してを遮 った行為が46回 ,女 の話 してが男 の話 し てを遮 ったのが 2回 であった。 これは同性間の会話 にお ける遮 りが男の場合. 3回 ,女 の場合 4回 しかなかった ことを考えると非常に数値が高 いこ とを示 してい る。異性間で行 なわれる会話において男が女 の話す権利 ,あ るいは. ,. 話 し終える権不Jを 侵害 してい ることを示 してい るわけである。そ して,女 が 男 の話 し終 わる権不Uを 侵害せず,話 し終わるまで待 つ ように心掛 けてい るこ とを示唆 してい る。正常 な話 しの番 と り (tllrn taking)の 規則が破 られると ,. 話 しては黙 って しまう傾向があ り,異 性間の会話では遮 り行為 をするのは男 で沈黙す るのは女 とい う結果がでたのである。つ まり,権 力 と支配のアプロ ーチでは こうした現象 を,男 の方が会話の話題 を支配する権利 を女に拒否す るために遮 り行為 を行 ない,そ のため話 しの番 と りにおいて正常な交替規則 に従 わないのだ とい う解釈 をす るのである。 コー ツ (1986)は 大人 と子供 の 会話 に同様 の行為が見 られ,大 人の方が話題 を支配するために話者交替 の原 則 に従 わない と説明 してい る。 筆者が採取 した12時 間に及ぶデ ー タでは女 も男 のターンの途中で話 しを始 めた り,割 り込みを頻繁に していた。 しか し,こ うした行為 が必ず しも話 し てにターンを放棄 させ るような タイプの ものではな く,例 5の ように話 して はターンを継続 してい る。遮 りが相手か ら話 しの番 を取 って しまう行為 であ るのに対 し,あ いづ ちをうつ ための重複行為 (overlap)や 例 5の ふ さこやわ たるの行為 は相手 の話 しを継続 させ る手助 け になってお り,ハ ヤシ. (1991,.
(20) 170. 会話のマネージメントにみられる性差. 1994)は これ をフ ロ アを支持す るための フ ロ ア ワ ー クであ る と説 明 して い る。 例 5の 会話 で は,ふ さ こ, きよ し, きみ こ,わ た る,の 四人が フ ロ アを共有 して い て, きよ しが メ キ シ ヨ旅行 を話題 に話 しを展 開 してお り,フ ロ アの中 心 にい る。 きよ しは ピ ラ ミッ ドの 説 明 を して い て,“ はんた い が わ"の 発 話 の あ とに短 い ポ ーズ を入れて い る。 そ のポ ーズ でふ さ こが ター ンを取 り, き よ しの説 明 に階段 の説 明 を加 えて い る。 このふ さ この付則 は きよ しの話 しの ター ンを中止 させ た こ とにはな って い な い。 きよ しはふ さ この付則 を繰 り返 し,中 断 した ター ンを再 び継続 させ て い る。 伊j5 ふ さこ. きよ し. きみ こ. そ とが わに ピラ ミッ ドが あ. わた る うん. るんです けれ ども そ の しんで ん とピラ ミッ ド をつづ けて い るか い だん そ してそ の はんた いが わに(2) お りるか い だんが. か い だんが あ るんです. あ. はああああああ. お りるか い だんが あ るんで す おそ ら く そ の エ ジプ トの. ふ さ こは きよ しの 話 しを支持 ,サ ポ ー トす るため に,`遮 り'を して い るわ け だが , この タイプの `遮 り'が 話 し手 に不快 を与 えるか,好 意 と して受 け取 られ るか は,`遮 り'の あ との話 し手 の 反応 を分析 すれ ば よい わ けで,こ の例 で は きよ しは不快 を感 じた とは い えな い表情 と身振 り (大 きくうなづ く)を し て い る。遮 り行為 は相手 を沈黙 させ て しまう権力 と支配 の メカニズムが深層 で働 い て い るが ,こ の例 で はフ ロ アの支持行為 が会話 をつづ けて とい うメ タ メ ッセ ー ジを送 ってお り,服 従 (deference)と 従属 (subordinate)の メカニズ.
(21) 林. 礼. 子. 171. ムが作用 してい る。. 3。. 2。. 2。. 質問 における性差. 質問をす るとい う行為が話 しの番 と りとフロアのマ ネージメン トにおいて どの ような社会的意味 を持 つ か をフィシュマ ン (Fishnan,1980)の 研究か ら 考える。 フイシュマ ンは12時 間半 にわたる男女 の会話 の なかに現われた付加疑間 と yes‐. noの 疑問文 を数量分析 した。その結果,会 話 のなかに370の 疑間があ り ,. その うち,263が 女が尋ねた もので あった。つ ま り,女 は男 の 3倍 も付加疑 間 と yes_nOの 疑問文 を使 った とい う結果 が出たのである。聞 くとい う行為 は,サ ックス等 の会話 の規則 によると現在 の話 し手が次 の話 し手 を指名する とい うことだか ら,指 名 された次の話 し手 は現在 の話 し手 になんらかの反応 を しなければな らない わ けで あ る。 シェグ ロ フ とサ ックス (Scheg10r and Sacks,1973)は この 聞 く― 反応す る とい う行為 を隣接応答 ペ ア (adiacenCy pa缶 )と. 呼 んでいる。会話 をスムーズ に進めるには,会 話者 にこの隣接応答. ペ アの第一ペ アが出された ら,相 手 は第二のペ アを満足 させ なければならな いので,疑 問文 は陳述文 よ りも相手 に反応 を促す とい う意味では強い影響力 をもっているわけである。 女 の方が男 よ り疑問形式 を多用す るとい うことは,女 が男 よ り下位 にあ り ,. フロアを維持,継 続 させ るために聞 くとい う行為 をしてい ると考 えることが で きるわけである。例 6を 見 ると,ジ ェニ ファは下降調 のイン トネーシ ョン で話 しの番 を終えるシグナルを出 してい る。 しか し,次 の話者 を指定 してい ないので次 の話 しの番 は残 りの三人のだれが とって もいいわけである。 ワオ ナ. (女 )が. ターンを取 るが,そ の ター ンを不U用 してアダムにフロアの中心 を. 振 り向けてい る。 ワオナが質問の発話 をするまでに 4秒 の沈黙があ り,ワ オ ナはその沈黙 を破 り,共 同のフロアを維持す るためのマ ネージメ ン トとして 質問をし,ア ダムにフロアを譲 ることでフロアを継続 してい るのである。.
(22) 会話 のマ ネージメ ン トにみ られる性差 伊16. Paul. Jennifer Yeah,. yeah,. Adam. Waona it. cOuld. (4)HOw is ZAC. now? Five six April grOw_ ing up a little tOo. yeah. quickly for us lseems. [yeah that'sa fun like sometimes]Yeah. (日. agel. it really is He's reany. ワオナ. ア ダム. 本語訳 ). ポ ール. ジェニ フ ァ そお,そ お,そ の とお りよ. (4)ザ. ックはどう. て るの. しがつ にごさい, ろ く さい になったよ ぼ くたちにはせ いち ょ. そうね 「そ うね. た の し うがす こしはやす ぎる. い と しご ろ だ か. け ど「 ときどきそ うお. ら」. もうよ」ああその とお りだよ ほんとに. アー ヴ ィン. ゴ フマ ン (Gofman,1977) は会話 のや りと りを どの ようにす. るか を決め る決定 的 な要 因 は権勢 で あ る. ,. と指摘 してい る。社会的地位が上.
(23) 林. 礼. 子. 173. の者 の前 で は,誰 で も比較 的 回数が少 な くな り,地 位 が上位 の ものは,割 り 込 んだ り,話 し続 け た りす るのが 普通 で あ る。男女 の会話 の場合 ,こ う した 会話 の仕方 に違 いが見 られ るの は,男 女 の地位 の不均衝 の現 われであ る。筆 者が採取 した二人の女 の アメ リカ人 の大学生 の 間 で も,会 話運 びに役割分担 がみ られたが ,分 担 が 時間 の経過 や話 しの 内容 に よって平等 に振 り分 け られ て い た。 しか し,異 性 間 の会話 で は この役割分担 が 一 定 で ,男 が上位 に い る 会話形態が長 く続 い た。 この章 で は権力 と支配 の アプ ローチの枠組 で女 と男 の会話運営 の方法 に違 いが あ ることを例 を挙 げ て論 じた。 フ ロ アをサ ポ ー トす るための マ ネ ー ジメ ン トに使 われ る会 話 のス タイル を無力 のス タイル と呼 ぶ ことがで きるの は. ,. フ ロ アを持 つ こ とを優位 と定義 し,常 にフ ロ アを維持 しようとす る もの,あ る い は維持 して い る ものが い るか らであ る。 コー ツ (1986)は 女 ど う しの会 話 を分 析 してみ る と,こ の無力 のス タイルが相 互的支持 や連帯感 を表す こ と ばに なってお り,女 ど う しが無力 の ことばやス タイル を互 い に使 うことで女 は協 力 的 で協調 の あ る会 話 を持 つ こ とがで きる と言 って い る。会話 のス タイ ルの違 い を文化 の違 い で あ る とす るアプ ローチ は,権 力 や支配 を個人の レベ ルで捉 え,ス タイルの違 い は個 人 の意志 や解釈 で あ る,男 と女 の異 なった ス ピーチ ス タイル にはた しか に違 いがあ るが ,そ の違 い は平等 に有効 な話 し方 で あ る, と考 える。 しか し,競 争 的 ,自 己主張的男性 ス タイル と,共 同的. ,. 支持 的女性 ス タイル とい った違 い を単 に文化 的 な違 い に よる もので あ る とい う見解 は社会 とい う大 きな問題 を避 けて男女 の コ ミュニ ケ ー シ ョンを観 察 し て い るに過 ぎな い ともい える。男女 の コ ミュニ ケ ー シ ョンのス タイルの違 い を理 解 し協力 しあ う ことに よって男女 の 問題 は解決 で きる とい う見解 は,男 が支配的態度 を取 る傾 向 にあ る社 会構造 の なかで は,欠 損 とされて い ること ばや立 場 の対 象 が女 で ある とい うこ とを前提 に して しまうこ とになるのであ る。.
(24) 会話 のマ ネ ー ジメ ン トにみ られ る性差. 174. 結. び. こ とば と社会 の 関係 , と りわけ,性 別 に よるこ とばの違 い と社会の関係 は. ,. 複雑 な要素が複雑 に絡 み合 ってお り,興 味 の尽 きる ことの な い研究 テ ーマ で あ る。女 と男 が どの よ うな ことば を使 うのか, どの よ うな話 し方 をす るのか とい った,言 語学 的 な男女 の こ とばの使 い方 を記述す る とい う こと,さ らに. ,. なぜ男女 は異 な った こ とば を使 うのか , どの よ うな社会 的意味が含 まれて い 、 理学 的 ,社 会学 的 な考察 を加 える とい うこ とは と るのか, とい った,社 会 ′. ,. 性差 だけで な く,こ とば と社会 の 関係 を明 らか に して い くうえで重 要 な研 究 課題 で もあ る。 また,こ とば と性差 の 問題 を社会構造や認知構造 との関係 の なかで論 じる こ とに よ り,言 語学 の さまざまな分野 ,た とえば歴史言語学 や 意味論 ,語 用論 な どの分野 に異 な った視点や方法論 を提案す るこ ともで きる。 サ ピア =ウ ォー フの仮 説 で 知 られて い る,言 語 と文化 (現 実)と 思考 の 関連 の深 さを探求す るための一つの アプ ローチで もあ る。 本論文 で は 中立 であ るはず の こ とばが男の領域 で話 され る時 と女 の領域 で 話 され る時 で は,中 立 でな くな ること,こ とばが 男 と女 の 関係 を不均衡 に し て い ることを外観 した後 ,実 際 の会話行為 にお い てそ う した男女 の不均衡 な 関係 が どの よ うな言語行為 と して現 われて い るか ,そ して ,そ の不均衡 が権 勢 の こ とば と無力 の こ とば を使 うこ とと関連 して い るこ と,男 が権勢 の こ と ばやス タイル を使 い,女 が無力 の ことばやス タイル を使 う傾 向 が強 い こ とを 論 じた。 ウ ォー フ (1976)は 言語 を通 して我 々 は世界 の事 象 を見 て い るが ,言 語 は 透明. (廿 ansparent)で. もなけれ ば,中 立 (neutal)で もな く,概 念 を形 づ くる. もので あ り,心 的活動 の プ ロ グラ ム であ る (Spender,1985よ り引用)と 述 べ て い る。 そ の言語 の持 つ 意味 の枠組 みのなかで我 々は現実 を見 て い るのであ る。我 々の まわ りにあ る事象 が どの よ うな もので あ るか を決定 し,現 実 を構 築す るの は言語 なので あ る。 こ とばの使 い方 が異 なる とその違 いは我 々の社.
(25) ネL. 林. ト 月. 会機構 を形成 して い る力や地位 ,役 割,職 業 に微妙 な境界 を作 って しまう (Gumperz,1982)。 異なったことばを使 うことで社会的なアイデ ンティテ イー. がで き,力 関係が生 まれるのである。フォウラー (Fowler,1981,Ragan,1983: 171よ り引用)は コ ミュニケ ーシ ョンは多 々に して,不 平等 な力関係 を作 る. ,. あるい は維持す ることである, と述べ,す べ ての関係 は本質的 に不均衡 であ ると主張 してい る。支配す る者 にとって,力 は権力であ り支配である。支配 される者 にとって,力 は協調 と共生 のためのエ ネルギーであ り,相 互作用 を よ り効果的 に し,強 くなるための もので ある (Thorne,et.al.1983)。. 女のこ. とばが無力 になるのは,女 どうしの会話 のスタイルーー 話 し手か ら話 しを聞 きだ し,話 し手 の言 うことにあいづ ちをうち,支 持 し,感 情 に共感 し,個 人 的な ことを打ち明けあい,フ ロアを尊重す る一一 が比較 されるときであ る。 相手が同 じ会話 スタイルで応 じる時は共同が生 まれるが,相 手が同 じ態度 で 臨 まなければ,女 の会話 スタイルは無力になるのである。感情 を表に出 して も,相 手が同 じように感情 を分かち合 った り,表 に出さなければ無力になる ので ある。女が断定的な話 し方 を練習 した り (asserdve trainhg),低 い発声 法 を学ぶ とい うことは,男 のことばの特徴 を権勢 のあるもの と認めることに なるだけでな く,(中 立からみた)`男 ことばのスタイル'の 特徴 とい うものを 見過 ご して しまうことになる。. 参考文献 Brown,Roger&Gilman,Albert(160)The prOnOun of power and solidarity.In Thomas Sebeok(ed。 ),Sク ル ゴ ηttηgzzgι .Cambridge:Cambridge University Press.pp.253-276。. Cameron,Deborah(1985/1992)。. んι οったSecond Edition。 グ ει ηグ ル πグ sπ &Jグ 、 群 おι. London:MacMinan。 Coats,Jermifer(1986/1993)"ろ π ,π ιη,α ηグ ルη遜 ″αJ″ 。Second editiono Lon‐ don:Longman。. `η. CrOsby,Fo and Nyquist,L。 (1977)The female register:an ernpirical study of Lakor's hypOthesis.Lα ηgπ 4gι グ ηSο ε グ , 6, 313-322. `り. Dubois,Bo Lo and Crouch,I。. (1975)The question of tag questions in women's.
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