IRUCAA@TDC : 歯科大学新入生の理科的基礎知識とその後の変化
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(2) 歯科大学新入生の理科的基礎知識とその後の変化 池上健司* 1. はじめに. 平成 18 年 4 月から大学にはいわゆるゆとり教育を受けた世代が入学し ている。この世代は平成 10 年(中学校)、11 年(高等学校)に告示された学習 指導要領による教育を受けてきた世代であり、この学習指導要領は内容削 減による学力低下を懸念する声のため平成 15 年にそれまでの範囲を逸脱 して指導しやすくなるよう改正された。またこれらの反省のもと作成され た次の新指導要領は平成 23 年に実施される予定であるが、小中学校では 理数教育を中心に平成 21 年から前倒しで実施される予定である. 1)。しか. し今後数年は現行の指導要領による中学・高校教育を受けてきた学生たち が大学に入学し、今までの学生とは理科的知識にかなりの隔たりがでる可 能性がある。 この現行の指導要領のもとでの高校の理科科目履修状況や理科科目履 修に与える影響に対する検討は以前に報告しており. 2)、平成. 18 年度入学. 者によるアンケートの結果、多少でもその科目を高校で履修した学生の割 合は物理 66%、化学 98%、生物 81%であった。また平成 19 年度入学者 によるアンケートの結果では、物理 66%、化学 98%、生物 74%であった。 よって学生の 3 割以上は高校で物理をまったく学んでいない。同様に学生 の 2%が化学を、学生の 2、3 割程度が生物を高校で学んでいない。つまり これらの学生の知識は中学で学んだ内容にとどまっており、しかも上で述 べたようにこの世代が中学で学んだ理科的内容も以前より著しく削減さ れている。 このような状況により、著者が勤務する歯科大学での入学者の理科的基. *. 東京歯科大学. 物理学研究室.
(3) 礎知識もかなり変化していると思われる。この変化を確実にとらえ教育に 生かすため、本大学にて平成 19 年度初めに第 1 学年全体、平成 20 年度初 めに第 2 学年全体を対象に「理科に関する基礎的知識のアンケート」と題 する調査を実施した。このアンケートは物理的分野を中心とした基礎的問 題 10 問からなり、答が分からない場合は分からないを、分かる場合は答 を選択肢から選ぶ形式である。この結果で、入学時の学生たちの理科的基 礎知識を調査し、さらに本学での教育が理科的基礎知識の定着にどのよう に影響しているかを分析し、問題点を挙げた。そして、この問題点に対す る解決策を検討した。 以下では、まず次章でアンケートの結果を概観する。そして 3 章でアン ケートの問題別に考察をする。4 章でこれらをまとめる。. 2. アンケートの概要. 2.1 アンケートの時期や方法 アンケートは平成 19 年度 4 月に新入生 125 名に答えてもらい、進級後 の 20 年度 4 月に第 2 学年 133 名に同じ問題を答えてもらった。アンケー トは全 10 問からなり、答が分からない場合は分からないを、分かる場合 は選択肢から答を選ぶ形式である。実際の様式は末尾に付けたアンケート 用紙を見て貰いたい。なお1年次に答えてくれた学生のうち 2 名が休学な どのため 2 年でのアンケートで不参加となり、また留年・学士編入などの ため 10 名の新たな学生が 2 年でのアンケートで参加している。次に提示 するアンケート結果では、これらの学生たちの回答は差し引いていない。 2.2 アンケート結果 アンケートの結果を次ページの表1に示す。 どの問題も平成 18 年入学以前に入学した学生ならば中学校までに学ん でいる内容であり、かなり基礎的な知識を問う問題である。選択肢で答え る問題ということを考慮すると、下の表の正答率はかなり低いと思える。.
(4) 表1 19年度入学者へのアンケート結果 入学時(1年次)(回答125)進級後(2年次) (回答133) 問題 内容 正解 不正解 わからない 正解 不正解 わからない 1 比熱 46.4% 33.6% 20.0% 72.9% 22.6% 4.5% 2 熱と温度 54.4% 19.2% 26.4% 61.7% 25.6% 12.8% 3 遺伝 80.0% 12.8% 7.2% 85.1% 12.7% 2.2% 4 季節 63.2% 26.4% 10.4% 71.4% 24.8% 3.8% 5 イオン 80.0% 8.8% 11.2% 71.2% 25.0% 3.8% 6 電圧 44.8% 25.6% 29.6% 62.4% 21.8% 15.8% 7 電圧 57.6% 33.6% 8.8% 63.9% 30.1% 6.0% 8 月の公転 56.0% 16.0% 28.0% 62.9% 21.2% 15.9% 9 月の公転 44.8% 16.0% 39.2% 57.6% 21.2% 21.2% 10 水の質量 87.9% 2.4% 9.7% 91.7% 6.0% 2.3% しかし本学の学生の名誉のために言うが、本学の学生たちは優秀であり、 ほとんどの学生はより高度な内容を簡単に理解する能力をもっている。こ れらの問題に対する正答率が低いのは、世代としての特徴、特に学習指導 要領の影響と思われることを注意しておく。 1 年次、2 年次を通じて最も目立つ結果は問題6の正答率の低さである。 この問題は家庭用コンセントの電圧を選ぶ問題であるが、1 年次では正答 率が 50%を割っている。大学新入生の理科的基礎知識が以前とかなり変わ ってきているのがよく分かる例である。この結果はすでに喜多 3)や本研究 室の望月 4)が報告している。同様に電圧に関する問題である問題7も正答 率が低い。 次に目に付くのは、全問題中で問題5の正答率だけが 1 年次より進級後 の 2 年次の方が下がっていることである。この問題はイオンと原子の違い を問う問題である。履修状況のアンケートによると 98%の学生は高校で多 少なりとも化学を学んでいるので、イオン結合などの現象をほとんどの学 生は知っていると思われる。しかし、2∼3 割の学生はイオンとは何かとい う本質を理解していないと思われる。特に 1 年での物理や化学の講義にお いてイオンについてさらに学んでいるにもかかわらず、正答率が約 8 割か ら 7 割に落ちているのは非常に問題である。このことは次章で詳しく考察 する。 問題 5 以外では、すべての問題で2年次の正答率の方が高い。問題.
(5) 1,3,6,7 などは1年の講義でも触れられる内容のため当然であるが、それで もまだ 100%よりかなり低く反省をするべき結果であろう。しかし講義で はまったく触れられない内容の問題 4,8,9 でも正答率が 7∼13 ポイントほ ど上がっている。この結果が、多少なりとも理科的な内容に興味を持たせ ることに 1 年の講義が貢献できたことを示しているのならばうれしい限り である。 次章で、これらを問題別に考察する。. 3. 問題別の考察. 3.1. 問題1. 問題1は比熱という量の理解を問う問題である。問題 1 の問題文は以下 の通りである。 問題1. 比熱が大きい物質ほど、熱を加えたときに温度が 1.あがりやすい. 2.あがりにくい. 3.どちらともいえない. 4.わからない 答:2 問題1の結果のグラフを以下に示す。 19年度1年(1) (125人回答). 20年度2年(1)(133人回答) わからない 5%. わからない 20%. 不正解 23% 正解 46%. 不正解 34%. 正解 72%. 以前の学習指導要領では中学校で比熱を扱うことを示す記述があった.
(6) が、現行の学習指導要領では中学理科の教科書で比熱を扱う必要がない 1)。 よって、現役で入学した学生のうちの多くは高校の物理で初めて比熱を習 ったのかもしれない。アンケートによる履修調査の結果では約 66%の学生 は高校で多少なりとも物理を履修しているので、残りの約 34%の学生は比 熱という言葉を大学入学後に初めて聞いた可能性がある。この場合、全体 で正答率 46%という結果でも仕方がないのかもしれない。高校で多少でも 物理を履修した 66%の学生のみ比熱を習ったことがあると仮定すると、そ れらの学生のうちの約 7 割の学生は正答していることになるので、この内 容を習ってきた学生たちにはある程度理解されていると見ることも出来 る。 比熱は本学1年の講義で触れられる内容であるため、高校までに習った ことのない学生も2年では大きく理解が進んでいるようで、全体の 7 割以 上の学生が正答している。しかし、3 割近い学生はいまだに充分には理解 してないという結果が出てしまった。上記の問題は計算で答を求めるとい う問題ではなく、比熱という量を理解しているかを問う問題なので、もう 少し実感に訴える指導が必要なのかもしれない。実習でも比熱をテーマに 実験をしてもらっているが、より実感が伴うよう指導するべきだろう。 3.2. 問題 2. 問題 2 は、熱以外のエネルギー移動や転換が無い場合、熱が加えられな ければ温度は変化しないことを問う問題である。問題文は以下の通りであ る。 問題 2. 夏の暑い日に同じ大きさの氷を綿で包んだ場合と包まなかった場 合を比べると早く解けるのは 1.. 綿で包んだ氷. 4.. わからない. 2.. 包まなかった氷. 答:2 問題 2 の結果のグラフを次ページに示す。. 3.. どちらも同じ.
(7) 20年度2年(2)(133人回答). 19年度1年(2)(125人回答). わからない 13%. わからない 26%. 不正解 26%. 正解 55%. 正解 61%. 不正解 19%. 1 年で選択肢1を選んだ学生が 12%ほどおり、2年で 17%ほどいるこ とから、服を着込んだ方が暖かいという事実と熱とを関連付けていない学 生たちが多いということが分かる。問題 1 にも言えることであるが熱や温 度変化は非常に身近な問題なので、理論的に考えずそのため誤った実感に とらわれていることが多いのかと思う。 熱は 1 年次に講義している内容であり、そのためか 2 年では正答率が 6 ポイント増えている。しかし依然正答率が低いので、問題 1 と同様に講義 の内容と普段の生活とが関連づけられるよう実習などで実感させること が重要であろう。 3.3. 問題 3. 問題 3 はメンデルの法則など遺伝の基礎的知識を問う問題である。問題 3 の問題文は以下の通りである。 (3)血液型がA型の父とB型の母の間に生まれた子の血液型は 1.. AかB. 2.. 4.. AかBかOかAB. AかBかAB 5.. 3.. わからない. 答:4 問題 3 の結果のグラフを次ページに示す。. AかBかO.
(8) 19年度1年(3)(125人回答). 20年度2年(3)(134人回答) わからない 2%. わからない 7%. 不正解 13%. 不正解 13%. 正解 80%. 正解 85%. 医療系大学をめざして入学してきた学生たちだけあって、入学時にすで に 8 割という高率で学生が正答している。平成 19 年度入学の学生たちは 74%しか高校で生物を習っていないことを考慮すると、かなりの高率であ る。 一方で 1 年次より正答率が増えてこそいるが、大学で生物を 1 年間勉強 してきた 2 年生で 15%も ABO 式血液の遺伝の問題を正しく答えていない。 誤答した 13%の学生はうっかり思い違いをした可能性もあるが、分からな いと答えた 2%の学生は ABO 式血液の遺伝を理解していないということ になる。学士編入者も入学前に高校理科の内容を課題として課されている ので、メンデルの法則を知らない 2 年生はいないはずである。しかし血液 型など身近な例に応用できない学生はいるようである。 3.4. 問題 4. 問題 4 は季節による気温の違いの理由を問う問題である。問題文は次ペ ージの通りである。 (4)冬と夏とで気温が違う主な原因は. 答:3. 1.. 太陽と地球の距離の違い. 2.. 3.. 太陽光が地球にあたる角度の違い. 太陽の出す熱量の違い 4.. わからない.
(9) 問題 4 の結果のグラフを以下に示す。 19年度1年(4)(125人回答). 20年度2年(4)(133人回答) わからない 4%. わからない 10% 不正解 25% 不正解 26% 正解 64%. 正解 71%. この内容は、平成元年より前に施行された学習指導要領では小学校まで に、それ以降でも中学校までには扱うことになっている基礎的な内容であ る。しかしこのような天文現象の正答率は高くなく、関連する問題 8,9 も あまり高くない。著者はこの知識は一般常識であると感じていたが、既に 一般常識ではなくなりつつあるようだ。 このような分野は講義で教えるよりも、講義で養った科学的な目を日常 的な現象にも適用する習慣を付けさせることをねらうべきであると思う。 そのために著者は学生たちに毎週講義の最後に質問を提出することを義 務づけて学生たちの素朴な質問にはできるだけ答えるようにしている。そ の効果はすぐには現れないと思われるが、1 年での講義でこの内容を扱う ことがないにもかかわらず、2 年では 7 ポイントではあるが正答率が上が っている。 3.5. 問題 5. 問題 5 は原子とイオンの違いを問う問題である。問題文は次ページの通 りである。.
(10) (5)陰イオンは元の原子よりも電子の数が 1.. 多い. 2.. 4.. わからない. 少ない. 3.. 多いものも少ないものもある. 答:1 問題 5 の結果のグラフを以下に示す。 19年度1年(5)(125人回答). 20年度2年(5)(132人回答) わからない 4%. わからない 11% 不正解 25%. 不正解 9%. 正解 80%. 正解 71%. この結果は非常に重要である。現行の学習指導要領では、イオンは中学 理科で扱わず、高校の化学で初めて学ぶ内容である。履修状況のアンケー トでは約 98%の学生は高校で多少なりとも化学を履修しており、高校生物 や物理でも多少触れるので、ほぼ全員がイオンについて入学前に学んでい るはずである。しかし現状はとてもほぼ全員が理解しているとは言い難い。 上の結果から、イオンと原子の区別を知らない学生が入学時で約 2 割、2 年次で約 3 割おり、選択問題であることも考慮するとかなりの高率である。 筆者はこの状況を数年前から気がついており、1、2 年での講義でもこの内 容はかなり強調している。しかし、なかなか一部の学生には難しいようで ある。生体内でのイオンの役割は 2 年以降でも講義されると思われるが、 この結果を見る限り約 3 割の学生はあまり理解できていないように思われ る。 また一年間の大学在学中で理解している人の割合が減っているのは特 に深刻な問題であり、1 年次での物理や化学の教育になんらかの改善が求.
(11) められる。自己反省とともに対策を考えているところであるが、講義や演 習の時間に出来るだけ強調し、試験でも直接この内容を問う以外の方法は 思いついていない。関係する科目の担当者も協力をお願いしたい。 3.6. 問題 6. 問題 6 は家庭用コンセントの電圧を問う問題である。問題文は以下の通 りである。 (6)家庭にあるコンセントの電圧は 1.. 40アンペア. 4.. わからない. 2.. 72ワット. 3.. 100ボルト. 答:3 問題 6 の結果のグラフを以下に示す。 19年度1年(6)(125人回答). 20年度2年(6)(133人回答). わからない 16%. わからない 30% 正解 44%. 不正解 22%. 正解 62%. 不正解 26%. この内容は理解されていたかどうかはともかく、20、30 年前のほとん どの高校生に知られていたということに異論がある人はいないだろう。し かし現在は上の結果のように、かなりの学生は知らなく、大学新入生の理 科的基礎知識の変化がはっきりと分かる。この事実は本研究室の望月が本 学歯学教育セミナー4)にて報告している。また喜多 3)などが報告しているよ うに、社会人まで含めて 30 代くらいまでのかなり広い年代層で同様の結.
(12) 果が出ている。現代は家庭用のコンセントの電圧を意識する機会はあまり ないので無理からぬことかもしれないが、学生たちは電気を日常的に使う が我々上の世代より関心の薄い存在と感じている。高校までの教育も改善 するべき部分があると思うが、現時点では大学で教育に携わるものとして 新入生世代の理科的基礎知識の現状を受け止め大学教育を考える必要が ある。 本学では 1 年次に電圧について講義している。しかし講義では家庭用コ ンセントの電圧自体は教えていない。なぜなら、電圧という量を様々な場 面で応用できることは重要であるが、家庭用コンセントの電圧自体を知っ ているかどうかはそれほど重要とは思われないからである。講義を通して 学んだ電圧という量に関して日常生活でも注意が向くようになり、多くの 学生が家庭用コンセントの電圧にも注意が向くようになるというのが理 想だろう。そして実際にも、1 年で直接は講義していないにもかかわらず、 依然低い正答率ではあるが 2 年では 6 割以上が正答しており、1 年での結 果より 20 ポイント近く上がっている。理想に多少でも近づけたのだろう か。 3.7. 問題 7. 問題 6 に引き続き電気関連の問題である。この問題は電池を直列につな いだ場合の電圧の変化を問う問題である。問題文は以下の通りである。 (7)電池を直列に3本つなぐと、その電圧は電池が1本のときの 1.. 3倍になる. 4.. わからない. 2.. 1/3になる. 答:1 問題 7 の結果のグラフを次ページに示す。. 3.変わらない.
(13) 19年度1年(7)( 125人回答). 20年度2年(7)(132人回答). わからない 9%. わからない 6% 不正解 30%. 不正解 34%. 正解 57%. 正解 64%. 電池につないだ電球が光る明るさということならば、この問題も以前は 小学校で教えていた内容であるが、現行の指導要領では乾電池をつなぐの は 2 本までと決められている。また中学では現行の指導要領のもとでも電 圧を用いて教えているはずであるが、問題 6 でも分かるように電圧に対す る理解が不十分なため、高校在学中に忘れてしまうのではないだろうか。 本学 1 年次での講義で電圧を学んだ後の、2 年生の結果では数ポイント の上昇が見られるが、まだ正答率が高いとは言えない。ただし問題 6 と同 様に直接この内容を講義で教えてはいない。しかし必要な知識はもってい るはずであり、この問題のような日常に知識を適用できるよう工夫して指 導することが必要なようだ。講義での演示実験や実習などを電圧を講義す るときでも行うなど、実感の伴う指導が必要なのかもしれない。 3.8. 問題 8、問題 9. 問題 4 と同じく、問題 8,9 も天文現象に関係する問題である。問題文は 以下の通りである。 問題 8 (8)満月が昇るのは. 答:1. 1.. 東から. 5.. わからない. 2.. 南から. 3.. 西から. 4.. 北から.
(14) 問題 9 (9)上弦の月が昇るのは 1.. 東から. 5.. わからない. 2.. 南から. 3.. 西から. 4.. 北から. 答:1 問題 8 の結果のグラフを以下に示す。 19年度1年(8)( 125人回答). 20年度2年(8)(132人回答). わからない 16%. わからない 28%. 正解 56%. 不正解 21%. 不正解 16%. 正解 63%. 問題 9 の結果を以下に示す。 19年度1年(9)(125人回答). 20年度2年(9)(132人回答). わからない 21%. わからない 39%. 正解 45% 不正解 21%. 正解 58%. 不正解 16%. 問題 4 と違い、月の動きに注意を向けていれば簡単に気がつくはずの問 題であるが、このようなことでも我々の世代とは基礎知識がかなり違うの.
(15) である。講義をする者はこのことを充分に理解して講義する必要があるこ とをこの結果は教えてくれている。 1 年の講義でこのような天文現象を教えることはないが、正答率は 1 年 から 2 年で問題 8 で 8 ポイント、問題 9 で 20 ポイント以上増えている。 このことは何を示しているのであろうか。前述の、講義での質問と回答の 効果が現れているのかもしれないが、分からない。 3.9. 問題 10. 問題 10 は水の体積と質量との関係を問う問題である。問題文は以下の 通りである。 (10)水2リットルの質量は 1.. 200g. 2.. 800g. 4.. 8000g. 5.. わからない. 3.. 2000g. 答:3 問題 10 の結果のグラフを以下に示す。 19年度1年(10)(124人回答). 20年度2年(10)(133人回答) わからない 2% 不正解 6%. わからない 10% 不正解 2%. 正解 88%. 正解 92%. この問題は全問題中で最も正答率が高かった。水の体積と質量の関係は よく知っているようである。1 年と 2 年で 4 ポイント正答率は増えている.
(16) が、講義でも多少触れている内容なので、当然の結果であると思われる。. 4.まとめ 前章で個別に考察したように、大学入学者の理科的基礎知識が以前と大 きく変化してきたことが分かる。天文現象などの基礎知識の低下は新聞で も取り上げられたように全国的な変化である。また家庭用コンセントの電 圧のようにかなり前から常識と呼べる基礎知識では無くなっていても、教 育現場では長い間認識されていなかった内容もあった。そして、熱現象や イオンなど歯科にも重要な内容でも正答率が低いものがあった。しかもイ オンでは、その内容を講義などで扱い改善しようとしても、むしろ 2 年で 正答率が下がってしまったものもあった。一方で比熱などのように 1 年次 に講義で扱い、2 年での正答率がかなり上がったものもあった。 今回の調査の結果分かった入学時の理科的基礎知識の低下は、時代の変 化による部分と現行の学習指導要領による影響の部分とがあるように思 われる。時代の変化は一大学の努力ではどうしようもできないが、学習指 導要領は平成 21 年には理科分野が前倒しで改正されるため、数年後に入 学する学生はより高い正答率をとると期待できる。しかしそれまではこの 現状を事実として受け止めるしか無く、そうなると入学後の講義が重要で ある。勿論 2 年でのアンケート結果ではほとんどの問題で正答率が上がり、 1 年次での講義に一定の効果が見えている。しかし充分高い正答率とは言 い難く、現状を我々教員が確実に認識し、さらに講義を改善する必要があ る。 必要な基礎知識をもっていない場合については上で述べたが、一方で必 要な知識をもっているのに誤答してしまった学生も多いのではと想像す る。その場合に、より高度な内容でも理解できる本学の学生たちが誤答す るのは、その知識をもっている実感が伴っていないためではないだろうか。 特に 1 年で教えている内容についてはそう思う。できるだけ実感をもたせ ることができるよう時間がとれると良いのだが、そうも行かない。ただし、 イオンについては歯科にとっても重要な内容であるため著者が担当する.
(17) 講義や演習で多少時間を割いているが、正答率が 2 年で下がっていること から効果が上がっていないことがはっきりと示されてしまった。関係する 他の講義にも協力をお願いしたいと思っている。 また最後になったが、アンケートに協力してくれた学生たちにはとても 感謝している。これらの結果を今後の教育に生かすよう工夫するつもりで ある。. 参考文献 1). 文部科学省ホームページ. 教育(小学校、中学校、高等学校). http://www.mext.go.jp/a_menu/01_c.htm 2). 望月隆二、高畑悟郎、中村弘明、池上健司: 「高等学校新学習指導要領. の理科科目履修に与える影響」、東京歯科大学教養系紀要第 22 巻(2007) 3). 喜多. 誠:「交流 100V」は常識ではない、教育報告《座談会》高校. と大学の接続. −工学部学生のための物理教育、大学の物理教育 2001-1. 号(通算 21 号) (2001) 4). 望月隆二: 「高校出の未履修問題と歯科医学教育」、東京歯科大学第 59. 回歯科医学教育セミナー(2006).
(18) (参考資料). 理科に関する基礎知識のアンケート これは皆さんが理科に関する知識をどの程度持っているかを調べ、授業に役立てるため のものです。テストではありませんので、わからない場合は当てずっぽうではなく、「わ からない」をマークしてください。 (1)比熱が大きい物質ほど、熱を加えたときに温度が 1.. あがりやすい. 4.. わからない. あがりにくい. 2.. どちらとも言えない. 3.. (2)夏の暑い日に同じ大きさの氷を綿で包んだ場合と包まなかった場合を比べると早く 解けるのは 1. 4.. 綿で包んだ氷. 包まなかった氷. 2.. 3.. どちらも同じ. わからない. (3)血液型がA型の父とB型の母の間に生まれた子の血液型は 1.. AかB. AかBかAB. 4.. AかBかOかAB. 2.. AかBかO. 3.. わからない. 5.. (4)冬と夏とで気温が違う主な原因は 1.. 太陽と地球の距離の違い. 3.. 太陽光が地球にあたる角度の違い. 太陽の出す熱量の違い. 2.. 4.. わからない. (5)陰イオンは元の原子よりも電子の数が 1.. 多い. 4.. わからない. 少ない. 2.. 3.. 多いものも少ないものもある. (6)家庭にあるコンセントの電圧は 1.. 40アンペア. 72ワット. 2.. 100ボルト. 3.. 4.. わからない. (7)電池を直列に3本つなぐと、その電圧は電池が1本のときの 1.. 3倍になる. 1/3になる. 2.. 3.変わらない. 4.わからない. (8)満月が昇るのは 1.. 東から. 南から. 2.. 3.. 西から. 4.. 北から. 5.. わからない. 3.. 西から. 4.. 北から. 5.. わからない. 800g. 3.. 4.. 8000g. (9)上弦の月が昇るのは 1.. 東から. 2.. 南から. (10)水2リットルの質量は 1.. 200g. 5.. わからない. 2.. 2000g.
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