Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
ポリメタクリル酸メチルレジン溶出液による線維芽細胞
層の穿孔とN‐アセチル : システインによるその予防
Author(s)
西宮, 紘子; 山田, 将博; 櫻井, 薫
Journal
歯科学報, 111(4): 429-429
URL
http://hdl.handle.net/10130/2589
Right
目的:上顎臼歯部では上顎洞の存在による垂直的な
骨量不足がインプラント植立を困難にする。そこで 1980年 Boyne らに よ っ て 報 告 さ れ た Lateral win-dow technique 以来,種々な方法が考案されてい る。今回私たちはソケットリフトの一方法であり, ドリリングに伴う削除骨を上顎洞内へ自然に填入可 能とされているハッチリーマーを使用し,上顎臼歯 部にインプラントを植立する機会を得たので報告す る。 方法:術前に採取した上下顎の口腔内模型を咬合器 に付着し,インプラントを植立する部位,方向に考 慮し,ステントを作った。このステント内に直径5 mm の金属球を設置し,パノラマエックス線写真を 撮影,歯槽頂から上顎洞底までの長さを推測した。 手術は歯槽頂より,ステントにあわせ,ハッチリー マーにてドリリングをし,リーマー周囲に付着した 削除骨を採取,洞内へリーマーが到達した後,上顎 洞粘膜の剥離を確認した。インプラントを植立する 前に採取した自家骨,あるいは自家骨とアパタイト を1:1にて混合したものを,上顎洞粘膜下に填入 し,インプラントを植立,初期固定を確認,手術を 終了した。術後にデンタルならびにパノラマエック ス線写真を撮影した。 成績:本法にてインプラントを埋入した症例は12例 であった。抜歯後即時埋入が4例,待機埋入が7 例,サイナスリストにてインプラントを埋入した が,固定が得られなかったため,インプラントを除 去し,3ヶ月間待ち,再埋入したものが1例であっ た。またパノラマエックス線写真上で歯槽頂より上 顎洞底までの距離はおよそ3−7mm であった。術 後のエックス線写真上からインプラント先端周囲の 変化が観察された症例は8例,他の症例では変化を 見つけることは困難であった。現在までのところ症 例1から5までの5例に上部構造を装着したが,イ ンプラントと周囲骨との osteointergration は十分 であり,上部構造装着後の経過は良好である。 考察:ハッチリーマーを使用した症例においてイン プラントの安定した状態が得られており,本方法は lateral window technique と同様に有用な方法であ ると考えられた。特に抜歯後即時埋入に対して効果 的であると考えられる。今後とも症例の積み重ねと 長期にわたる経過観察が必要と考えられる。 目的:ポリメタクリル酸メチルレジン(PMMA) ベースの歯科用常温重合レジンは補綴処置に必須で ある。一方で,皮膚・粘膜に対する接触性の炎症や アレルギー反応が報告されている。レジン重合体か らの溶出成分による細胞の損傷や酸化ストレスおよ び溶出成分の組織内浸透がその発症や進行に関与す る。抗酸化アミノ酸誘導体 N−アセチルシステイン (NAC)はレジン材料を解毒することが知られてい る。本研究の目的は PMMA レジンへ NAC を応用 することで,PMMA レジン溶出液による細胞傷害 や酸化ストレスおよび溶出成分の細胞内侵入を防ぐ ことができるかどうか歯肉線維芽細胞単層培養モデ ルを用いて評価することである。 方法:NAC 含有もしくは非含有させた 常 温 重 合 PMMA ベース歯科用レジン(ユニファストⅢ)の 重合体をダルベッコ変法イーグル培地(D-MEM) 中で7日間浸漬し,レジン溶出液(Ex),NAC 含 有レジン溶出液(NEx)を作製し,培養液とした。 ポリスチレン培養皿上で生育されたコンフルエント な単層状のラット初代継代歯肉線維芽細胞層を Ex 添加,NEx 添加もしくはレジン溶出液未添加の D-MEM 中で1日間培養した。メチレンブルー染色に よる接着細胞数の評価,乳酸脱水素酵素(LDH) による細胞傷害解析,細胞内活性酸素種(ROS)お よび消化酵素レベルの蛍光定量を行った。統計解析 法として一元配置分散分析後にボンフェローニ多重 比較検定を用いた(α=0.05)。 成績および考察:各解析それぞれにおいて培養条件 間で統計学的有意差が認められた。Ex 添加単層培 養上のメチレンブルー陽性面積率は,未添加培養上 の94%と異なり,55%の値を示し,このことから Ex による単層細胞層の空隙の存在が示された。一 方,NEx 添加培養上では94%に達した。LDH 放出 量は,Ex 添加によって未添加培養上の値よりも60 %増加した。一方,NEx 添加培養の値と未添加培 養の値に差は認められなかった。Ex 添加培養液中 の細胞内 ROS および消化酵素レベルは未添加培養 の値よりも,それぞれ30%および200%大きかった が,NEx 添加培養での値は未添加培養の値と同程 度となった。これらの結果から,PMMA レジン溶 出液は細胞内侵入と酸化ストレスを介した細胞死お よび細胞傷害による線維芽細胞層の穿孔を引き起こ すことが示唆され,レジンへの NAC 添加はこれら レジン溶出液の為害性を防ぐことが明らかとなっ た。