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Title
筋組織およびその周囲における弾性線維とヒアルロン酸
の共存に関する組織学的研究−頭頸部筋とヒト尿道括約
筋複合体の比較−
Author(s)
小川, 雄大; 北村, 啓; 山本, 将仁; 松永, 智; 阿部,
伸一
Journal
歯科学報, 116(5): 385-385
URL
http://hdl.handle.net/10130/4126
Right
Description
385
歯科学報 Vol.116,No.5(2016)
№5:マウス胎児翼状突起における発生形態学的研究
三友啓介,山本将仁,森田純晴,小高研人,松永 智,阿部伸一(東歯大・解剖)
目的:蝶形骨翼状突起の発生には軟骨内骨化と膜性
骨化の2つの骨化形式が存在する。また翼状突起の
軟骨発生は体幹四肢の長管骨よりも遅れて発生して
くるため二次軟骨であると定義されている。近年,
二次軟骨の研究は下顎頭や鎖骨を用いた形態学的観
察により軟骨発生から骨化までの詳細な報告がされ
ている。しかしながら,翼状突起における骨形成過
程を経時的に観察した報告はなく,二次軟骨の石灰
化や膜性骨との関連性について不明な点が多く残さ
れている。そこで今回われわれはマウス胎児を用い
て蝶形骨における翼状突起および周囲組織を形態学
的に観察し,その詳細な発生過程の解明を試みた。
方法:試料として胎生13.5-18.0日および生後0日
のマウスを用いた。得られた標本は前額断および矢
状断で連続切片を作製し,トルイジンブルー染色・
HE 染色を行った。また生後0日マウスで透明骨格
標本を作製するためにアルシアンブルー染色を行っ
た。
結果:胎生13.5日において,翼状突起内側板は間葉
系細胞の凝集として認められ,翼状突起外側板と接
していた。胎生14.5日において,間葉系細胞の凝集
は異染色性組織として石灰化組織や軟骨組織へ分化
を開始した。胎生15.5日において,翼状突起内側板
下部に幼弱な軟骨細胞が観察された。さらにその軟
骨細胞の上部において石灰化組織が認められ,上下
骨幹部原基となる2層の骨化形態が観察された。胎
生16.5日において,翼状突起内側板下部に肥大軟骨
細胞が認められ,その上部に石灰化骨が観察され
た。また同時期に翼突鈎原基となる間葉系細胞の凝
集が認められた。胎生17.0日において,翼状突起内
側板の下部は急速に骨化し上部の石灰化骨と連続し
た骨を形成していた。さらに翼状突起内側板の底
面,翼突鈎周囲に軟骨組織が認められた。一方,翼
状突起外側板は胎生13.5日では前額断で異染色性の
基質が扁平細胞間の間隙にすでに認められていた。
そして胎生17日で肥大型軟骨細胞が骨幹ではっきり
と形成された。
考察:以上の結果から,翼状突起内側板は外側板を
構成するいくつかの細胞から分化することが示唆さ
れた。また,翼状突起外側板は長管骨に似た軟骨内
骨化をし,翼状突起内側板は⑴骨幹上部の膜性骨化
領域 ⑵骨幹下部の軟骨内骨化領域 ⑶最も遅れて
発生する翼突鈎部の軟骨内骨化領域の3つの骨化領
域に分けられるとことが明らかになった。
№6:筋組織およびその周囲における弾性線維とヒアルロン酸の共存に関する組織学的
研究 -頭頸部筋とヒト尿道括約筋複合体の比較-
小川雄大,北村 啓,山本将仁,松永 智,阿部伸一(東歯大・解剖)
目的:筋組織周囲に存在する弾性線維とヒアルロン
酸が,括約筋における様々な機能不全と関連する可
能性が近年報告された。しかしながら,高齢者の献
体から用いた試料で,その局在を詳細に調べた報告
は少ない。また,咬筋,オトガイ舌筋など頭頸部の
筋周囲における弾性線維とヒアルロン酸の存在を調
査した報告はみられない。そこで今回我々は,咬
筋,オトガイ舌筋,棘下筋,尿道括約筋周囲複合
体,肛門括約筋を観察対象とし,筋組織内および筋
組織周囲の弾性線維ならびにヒアルロン酸の局在に
ついて,比較検討を行った。
方法:研究試料は東京歯科大学解剖学講座所蔵,解
剖学実習用の献体標本14例(男性10例,女性4例)
から摘出した。観察対象は咬筋,オトガイ舌筋,棘
下筋,尿道括約筋周囲複合体,肛門括約筋とした。
摘出した試料は通報に従い固定処置を行い,観察の
ための薄切切片を作製した。得られた切片像に対
し,Elastica-Masson 染色,ビオチン化ヒアルロン
酸結合蛋白を用いた染色を施し,組織学的検討を
行った。
結果および考察:筋内における弾性線維の存在は,
尿道括約筋および肛門括約筋において,他の筋に比
べ有意に観察された。筋組織周囲の弾性線維網は,
尿道括約筋周囲においてのみ認められ,その局在は
前立腺部尿道を含む男性尿道において粘膜下層に特
に密に存在していた。また筋内におけるヒアルロン
酸は,尿道括約筋においてのみ観察され,筋組織周
囲のヒアルロン酸は,尿道括約筋周囲の尿道粘膜下
層において観察された。すなわち尿道括約筋および
尿道括約筋周囲の尿道粘膜下層において,弾性線維
とヒアルロン酸の共存が明らかとなり,その相互作
用の可能性が示唆された。さらに男性に比べ女性の
標本では,染色が弱い傾向が認められた。今回の観
察結果より,高齢者における尿失禁などの臨床症状
がみられる原因として,尿道括約筋の線維化と筋内
および筋周囲に発現するヒアルロン酸の相互作用が
関連している可能性が考えられた。今後高齢者の誤
嚥性肺炎につながる頭頸部における括約筋,および
その周囲組織について,同様の検索を行っていきた
いと考えている。
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