〈論説〉連続的犯罪行為に関する刑事手続上の問題点--「一罪一逮捕・一勾留」「起訴後勾留中の余罪取調べ」「罪数の変化と訴因」
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(2) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. 1は. じめ に. 窃 盗 ・横 領 ・恐 喝 な ど,複 数 回 に わ た る同種 の連 続 的行 為 が刑 事 手 続 の対 象 とな る こ とは,少 な くな い。 そ して,そ れ らが分 割 され て そ の一 部 に つ い て捜 査 ・起 訴 が行 わ れ,そ の起 訴 後 勾 留 を利 用 して他 の部 分 に つ い て捜 査 ・起 訴 が 行 わ れ,裁 判 所 が そ れ らを併 合 審 理 した と ころ,行 為 全 体 が一 罪 を構 成 す る と 判 断 し,そ の 旨 の 有 罪 判 決(の. み)を す る こ と も,生. じる。 現 に,筆 者 自身,. 近 時,複 数 の実 例 に接 した1)。 そ して,こ の よ う な事 例 に お い て は,① 当 初 か ら判 明 して い た 連 続 的 行 為 (し か も裁 判 所 の 判 断 に よ れ ば 全 体 が一 罪 と な る)を 複 数 に 分 割 して,捜 査 ・ 起 訴 が行 わ れ る,② 第1行 為 につ い て の起 訴 後 勾 留 を利 用 して第2行 為(以 降) に つ い て捜 査 が(そ れ ぞ れ を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 が な され た場 合 よ り も長 期 間 に わ た って)行 わ れ る,③ 数 罪 の起 訴 に対 して一 罪 の判 決(だ. け)が な され. る,と い った 問題 が生 じ る。 こ こで,こ れ らに 関 す る従 来 の議 論 は,① は 「個 別 行 為 ご とに逮 捕 ・勾 留 す る こ と の可 否」 とい う観 点 か ら 「一 罪 一 逮 捕 ・一 勾 留 」 「再 逮 捕 ・再 勾 留 」 の 問題 と して,② は 「起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ」 の 問題 と して,③ は 「罪 数 の 変 化 と訴 因」 の 問題 と して,そ れ ぞ れ行 わ れ て き た。 しか し,こ れ らは各 別 に 展 開 され て お り,連 続 的犯 罪 行 為 に 関 す る上 記 の 問題 に つ い て,正 面 か ら説 得 的 な解 決 を与 え るの に十 分 な もの とは い え な い と考 え られ る。 ま た,上 記 の よ うな 事 例 は珍 しい もの で は な く,こ れ に つ い て議 論 す る実 益 もあ る。 そ こで,. 1)本. 文 の 【事 例 】 と ほ ぼ 同 時期 に,業 務 上 横 領 の実 例 に も接 した。 そ れ は,団 体 の金 銭 管 理 を担 当. して い た被 告 人 が約3ケ. 月 の 間 に3回. 消 した と い う事 案 で,検 察 官 は3つ 利 用 して 第2行. 為 ・第3行. 判 決(の. した。. み)を. に わ た っ て そ の管 理 す る金 員 を遊 興 や借 金 の返 済 の た め に費. の横 領 罪 が成 立 す る と して,第1行. 為 の捜 査 ・(追)起 訴 を した が,裁. 24. 為 につ い て の起 訴 後 勾 留 を. 判 所 は全 体 を包 括 一 罪 だ と して 有 罪.
(3) 法科大学院論集. 第8号. 本 稿 で は,筆 者 が実 際 に接 した下 記 【事 例 】(引 用 部 分 も含 め て一 部 修 正 して い る)を 素 材 と して,上 記 ① ② ③ を横 断 的 に検 討 し,従 来 の議 論 を確 認 す る と と もに,残. され た 問題 点 を析 出 し,そ れ に つ い て解 決 の方 向性 を示 す こ とを試. み る。. 【 事例】 Aは,Bと. 共 謀 して,Vか. ら,2010年2月. に 同県 加 古 川 市 内 で25万 円,同 年5月 11月2日,捜. 査 機 関 は,2月. に兵 庫 県 尼 崎 市 内 で50万 円,同 年4月. に加 古 川 市 内 で25万 円 を,そ れ ぞ れ 喝取 した。. の恐 喝 行 為(第1行. 逮 捕 した。 な お,そ の 時 点 で,捜 査 機 関 は(Vの. 為)を 被 疑 事 実 と してAを 通 常 供 述 な ど か ら)事 件 の 全 体 を把 握. して い た。 そ の 後 勾 留(延 長)を 経 て,同 月22日,検. 察 官 は第1行 為 を 内 容 とす る. 恐 喝罪 の公 訴 を神 戸 地 方 裁 判 所 に提 起 した。 (2010年11月22日 付 起 訴 状 の公 訴 事 実) 「 被 告 人 は,… … と して 活 動 して い た もの で あ るが,… … のBと 共 謀 の上,…. …な. ど と して … …Vに 因 縁 を 付 け,同 人 か ら金 員 を 喝取 し よ う と企 て,2010年2月18日 ころ,兵 庫 県 尼 崎 市 …… の 同人 方 に お いて,被 告 人 が,上 記Vに 対 し,… … な ど と 語 気 鋭 く申 し向 け て金 員 の交 付 を要 求 し,さ らに,同 月28日,同 県 加 古 川 市 … … 内 に お い て,被 告 人 が,上 記Vに 対 し,… … な ど と語 気 鋭 く申 し向 け て金 員 の交 付 を要 求 し,も しそ の 要 求 に応 じな け れ ば,上 記Vの. 身 体 等 に い か な る危 害 を 加 え るか も し. れ な い 気 勢 を 示 して 同人 を 脅 迫 し,そ の 旨 同人 を畏 怖 させ,よ 人 方 に お い て,上 記Bが,上. 記Vの 実 母Wを 介 して,上 記Vか. って,同. 日,上 記 同. ら現 金50万 円 の交 付 を. 受 け て こ れ を 喝取 した もの で あ る。」 起 訴 に 際 して,検 察 官 は,裁 判 所 に 「12月下 旬 に追 起 訴 予 定 」 と伝 え た。 裁 判 所 は,第1回. 公 判 期 日を12月16日(予. 12月16日,第1回. 公 判 に お い て,弁 護 人 は 「併 合 の 利 益 は放 棄 す るの で,本 件 に. 定 審 理 時 間20分 間)と. した。. つ い て 速 や か に審 判 さ れ た い」 旨,希 望 した。 検 察 官 は 「2件 の追 起 訴 を 予 定 して お り,そ れ らを 併 合 審 判 す べ き で あ る」 旨主 張 した。 裁 判 所 は,検 察 官 請 求 証 拠 の 取 調 べ ま で で第1回 公 判 を終 え,次 回 期 日を2011年1月27日(予. 定 審 理 時 間20分 間). と した。 2010年12月16日,弁. 護 人 が保 釈 を請 求 した。 翌17日,裁. 2011年1月13日,検. 察 官 は,4月. の恐 喝 行 為(第2行. 公 訴 を神 戸 地 方 裁 判 所 に提 起 した。 25. 判 所 は これ を却 下 した。 為)を. 内容 とす る恐 喝 罪 の.
(4) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点 (2011年1月13日. 付 起 訴 状 の公 訴 事 実). 「 被 告 人 は,Bと. 共 謀 の上,Vが. 被 告 人 を 畏1布して い る こ とに 乗 じて,前 記Vか. 金 員 を 喝 取 しよ う と企 て,2010年4月. 上 旬 こ ろ,前 記Bが,兵. ら. 庫 県 内 に お い て,携. 帯 電 話 機 を 使 用 して,同 県 内 に い た 前 記Vに 対 し,… … な ど と申 し向 けて 金 員 の交 付 を要 求 し,も しそ の要 求 に応 じな け れ ば,被 告 人 か ら前 記Vの. 身 体 等 に いか な る. 危 害 を加 え られ る か も しれ な い 旨 同人 を畏1布さ せ,よ って,同 月10日,同 県 加 古 川 市 … … 内 に お い て ,前 記Bが,前. 記Vか. ら現 金25万 円 の 交 付 を受 け て これ を 喝 取 した. もの で あ る。」 裁 判 所 は こ れ と第1行 為 の事 件 の弁 論 とを併 合 す る 旨決 定 した。 2011年1月27日,第2回. 公 判 に お い て,弁 護 人 は 「追 起 訴 は二 重 起 訴 だ か ら公 訴. 棄 却 され るべ きで あ る。 さ らに追 起 訴 予 定 と され て い る件 も同 じ包 括 一 罪 の一 部 と 予 想 され,起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 を許 容 す る の も不 当 だ か ら,直 ち に審 判 さ れ た い」 旨,述 べ た 。 検 察 官 は 「2月 中 旬 に さ ら に追 起 訴 予 定 で あ り,そ れ も併 合 審 判 され た い」 旨,述 べ た。 裁 判 所 は,第2行. 為 に関 す る検 察 官 請 求 証 拠 の 取 調. べ ま で で第2回 公 判 を終 了 し,次 回期 日を3月3日(予 1月27日,弁. 護 人 が 保 釈 請 求 を した。2月8日,裁. 定 審 理 時 間40分 間)と. した。. 判 所 は これ を許 可 し,同 日,. 被 告 人 は釈 放 さ れ た。 2月15日,検. 察 官 は,5月. の恐 喝行 為(第3行. 為)を. 内容 とす る恐 喝 罪 の 公 訴 を. 神 戸 地 方 裁 判 所 に提 起 した。 (2011年2月15日. 付 起 訴 状 の公 訴 事 実). 「 被 告 人 は,Bと. 共 謀 の上,Vが. 被 告 人 を 畏 怖 して い る こ とに 乗 じて,前 記Vか. 金 員 を 喝 取 しよ う と企 て,2010年5月. 上 旬 こ ろ,前 記Bが,兵. ら. 庫 県 内 に お い て,携. 帯 電 話 機 を 使 用 して,同 県 内 に い た 前 記Vに 対 し,… … な ど と申 し向 けて 金 員 の交 付 を要 求 し,も しそ の要 求 に応 じな け れ ば,被 告 人 か ら前 記Vの. 身 体 等 に いか な る. 危 害 を加 え られ る か も しれ な い 旨 同人 を畏 怖 さ せ,よ って,同 月10日,同 県 加 古 川 市 … … 内 に お い て ,前 記Bが,前. 記Vか. ら現 金25万 円 の 交 付 を受 け て これ を 喝 取 した. もの で あ る。」 裁 判 所 は,こ れ につ い て も弁 論 を併 合 す る 旨決 定 した。 3月3日,第3回. 公 判 に お い て,第3行. 為 に関 す る検 察 官 立 証 と全 体 につ い て の. 弁 護 側 立 証 が 行 わ れ た 後,検 察 官 は 「3つ の恐 喝 罪 が 成 立 す る」 旨 の論 告 を 行 い, 弁護人 は 「 包 括 一 罪 で あ り,2つ. の追 起 訴 は訴 因変 更 と解 す る余 地 は な く二 重 起 訴 に. あ た る か ら公 訴 棄 却 す べ き だ」 と弁 論 で主 張 した。 3月24日,第4回. 公 判 に お い て,裁 判 所 は,大 要 以 下 の とお り,全 体 につ い て一. 26.
(5) 法科大学院論集 罪 が成 立 す る と い う内容 の 有 罪 判 決 を した(な お,(罪. とな るべ き事 実)の. 第8号 「… …」. の部 分 は,起 訴 状 公 訴 事 実 欄 の記 載 と同 内容 で あ る)。 (罪 とな る べ き事 実) 「 被 告 人 は,… … と して 活 動 して い た もの で あ るが,… … のBと 共 謀 の上,… ど と因縁 を付 け,… …Vか 尼 崎市 … …上 記V方. ら金 員 を 喝 取 しよ う と企 て,2010年2月18日. …な. こ ろ,兵 庫 県. に お い て,被 告 人 が,上 記Vに 対 し,… … な どと語 気 鋭 く申 し向. け,さ らに 同月28日,同. 県 加 古 川 市 … … 内 に お い て,被 告 人 が,上 記Vに 対 し,… …. な ど と語 気 鋭 く申 し向 け て金 員 の 交 付 を要 求 し,も しそ の 要 求 に応 じな け れ ば,上 記Vの. 身 体 等 に いか な る危 害 を も加 え か ね な い気 勢 を示 して 脅 迫 し,そ の 旨 同人 を. 畏 怖 さ せ,よ っ て,同 日か ら同 年5月10日. まで の 間,3回. にわ た り,別 紙 『年 月 日』. 欄 記 載 の各 日に,『 場 所 」 欄 記 載 の 各 場 所 にお い て,『 方 法」 欄 記 載 の各 方 法 に よ り, 現 金 合 計100万 円 の交 付 を受 け て こ れ を 喝取 した もの で あ る。」 (別紙). 番号. 場. 年月 日. 所. 方. 法. 1. 2010年2月28日. V方. Bが,Vの 実 母 を 介 して現 金50 万円を受領. 2. 2010年4月10日. 兵庫県加古川市 ……内. Bが 同年4月 上 旬 こ ろVに 携 帯 電 話 で … … な ど と 申 し向 け,B がVか ら現 金25万 円 を 受 領. 3. 2010年5月10日. 兵庫県加古川市 ……内. Bが 同年5月 上 旬 こ ろVに 携 帯 電 話 で … … な ど と 申 し向 け,B がVか ら現 金25万 円 を 受 領. (弁護 人 の主 張 に対 す る説 明) 「 検 察 官 は,別 紙 番 号1の 喝 取 分 を2010年11月22日 年1月13日. 付 で,同 番 号3の. 喝取 分 を 同 年2月15日. 付 で,同 番 号2の. 喝取 分 を2011. 付 で,各 恐 喝罪 で 公 訴 提 起 して. い る が,本 件 は,同 一 の 事 実 を種 に,一 ・ 連 一 個 の恐 喝行 為 に よ り畏 怖 さ せ た 同一 の被 害 者 か ら,数 回 にわ た り金 員 の交 付 を 受 け た事 案 と認 め られ るか ら,併 合 罪 で は な く,包 括 して一 罪 が成 立 す る と判 断 した。 弁 護 人 は,上 記2件 の 追 起 訴 に対 し,二 重 起 訴 に該 当す る か ら公 訴 棄 却 の判 決 が さ れ るべ きで あ る と主 張 す る が,上 記 各 起 訴 は,各 公 訴 事 実 の 記 載 自体 か ら両 訴 因 が一・ 罪 の 関 係 に あ る こ とが 明 白 とま で は い えず,各 訴 因 は 全 て 併 合 審 理 さ れ,被 告 人 の 防 御 や 手 続 負 担 の観 点 か らそ の 不 利 益 は生 じて お らず,二 重 に有 罪 判 決 が さ れ た り,矛 盾 す る判 決 が さ れ る お そ れ もな い こ とか ら,公 訴 を棄 却 す る必 要 は な い と. 27.
(6) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. 判 断 し た 。」. 2捜. 査 機 関 に よ る 分 割 に つ い て の 規 制 一 一 罪 一 逮 捕 ・一 勾 留. (1)問 題 の所 在 捜 査 機 関 が,連 続 的犯 罪 行 為 を分 割 して そ の一 部 を被 疑 事 実 とす る逮 捕 ・勾 留 を請 求 す る こ とに つ い て,制 約 や 限界 は な い の か。. (2)分 割 の可 否 これ に 関 して は,従 来,「 科 刑 上 一 罪 や 包 括 一 罪 な ど,一 罪 の事 実 が個 別 に犯 罪 を構 成 し得 る複 数 の行 為 か らな って い る場 合 に,そ の一 部 た る犯 罪 構 成 事 実 (A事 実)を 被 疑 事 実 とす る逮 捕 ・勾 留 が な され た 後,他 実(B事. の一 部 の 犯 罪 構 成 事. 実)を 被 疑 事 実 とす る逮 捕 ・勾 留 を す る こ とが許 され るか」 とい う問. 題 設 定 が な され,議 論 が 重 ね られ て き た。 いわ ゆ る 「一 罪 一 逮 捕 ・一 勾 留 」「再 逮 捕 ・再 勾 留 」 を め ぐ る議 論 で あ る。 こ こで は,「 一 罪 一 逮 捕 ・一 勾 留 」 と い う と きの 「一 罪 」(一 回性 の原 則 が働 く 「同一 の被 疑 事 実 」)を どの よ うに と らえ るか が 問題 とな り2),こ れ につ いて, ① 令 状 に記 載 され た被 疑 事 実(個 説)3)と,②. 々 の犯 罪 構 成 事 実)と. 令 状 に記 載 され た事 実 と実 体 法 上 一 罪 の 関係 に あ る事 実 ま で含 む. とい う考 え方(実 体 法 上 一 罪 説)4)と. 2)た. い う考 え方(単 位 事 実. が 主 張 され て い る。 しか し,単 位 事 実 説. だ し,「 被 疑 事 実 の 同一 性 が 実 体 法 上 の 罪 数 を 基 準 と して画 さ れ る こ と」 を 「一 罪 一 逮 捕 ・一. 勾 留 の原 則 」 と呼 ぶ 論 者 もあ る(光 藤 景 咬 「刑 事 訴 訟 法1』(成. 文 堂,2007年)83頁,秋. 罪 の一 部 につ い て の再 逮 捕 ・再 勾 留 」 平 野 龍 一 ほ か編 『新 実 例 刑 事 訴 訟 法1』(青. 葉 康 弘 「一 林 書 院,1998年). 119頁)。 3)村. 上 保 之 助 「常 習 一 罪 の 一 部 につ い て の 逮 捕,勾. 留 の可 否 」 判 夕296号(1973年)84∼85頁,安. 廣 文 夫 「包 括 一 罪 の一 部 につ い て の勾 留 の可 否 」 判 夕296号(1973年)183頁 4)小. 。. 田健 司 「常 習 一 罪 の各 部 分 につ い て の逮 捕 ・勾 留 の 可 否 」 新 関 雅 夫 ほ か 『増 補 令 状 基 本 問 題 上 」. (一 粒 社,1996年)204頁,小. 林 充 「常 習 一 罪 の 各 部 分 に つ い て の 逮 捕 ・勾 留 の 可 否 」 判 タ272号. 28.
(7) 法科大学院論集. 第8号. も,捜 査 機 関 が意 図 的 に事 実 を細 分 化 して逮 捕 ・勾 留 を く り返 す こ とを許 容 す る も の で は な く,一. 定 の 範 囲 で 全 体 に つ い て1回. の 逮 捕 ・勾 留 し か 認 め ら れ な. い場 合 が あ る とす る。 す な わ ち,併 合 罪 関係 に あ る数 個 の事 実 で あ って も,当 初 か ら可 能 な 限 り,そ の全 事 実 に よ る逮 捕 ・勾 留 を す べ き で あ り,当 初 か ら数 個 の犯 罪 事 実(逮 捕 ・勾 留 の被 疑 事 実 の取 調 べ に付 随 して被 疑 者 の取 調 べ が許 され るよ うな別 事 実)が 発 覚 して い た よ うな場 合 に は,2度 留 は 許 さ れ な い5)な. ど と 説 か れ て い る 。 他 方,実 体 法 上 一 罪 説 も,保 釈 中 にB. 事 実 を犯 した場 合 に は例 外 的 に(あ な い と して)B事. るい は,一 罪 一 逮 捕 ・一 勾 留 の原 則 が及 ば. 実 を被 疑 事 実 とす る逮 捕 ・勾 留 を認 め る6)し,A事. 訴 され た後 に(A事 (1972年)52頁,同. 目以 降 の逮 捕 ・勾. 実 を被 疑 事 実 とす る逮 捕 前 に生 じて い た)B事 「勾 留 の 効 力 と犯 罪 事 実 」 判 夕341号(1977年)86頁,竹. 実 が起 実 が発 覚 し. 崎 博 允 「常 習 一 罪 の一. 部 に つ い て の 逮 捕 ・勾 留 」 平 野 龍 一 ほか 編 「実 例 法 学 全 集 続 刑 事 訴 訟 法 』(青 林 書 院,1980年)20 ∼21頁 ,井 上 弘 道 「一 罪 一 勾 留 の 原 則 」 松 尾 浩 也 ほ か 編 『刑 事 訴 訟 法 の 争 点(新 版)』(有 斐 閣, 1991年)71頁,三. 井 誠 「刑 事 手 続 法(1)〔新 版 〕」(有 斐 閣,1997年)193頁,池. に関 す る諸 原 則 」法 教262号(2002年)93頁,酒 年)100頁,川. 田 公 博 「逮 捕 ・勾 留. 巻 匡 「身 柄 拘 束 処 分 に 伴 う諸 問 題 」法 教291号(2004. 出 敏 裕 「逮 捕 ・勾 留 に関 す る諸 原 則 」 刑 ジ4号(2006年)146頁. な ど。 通 説 と さ れ て. い る。 な お,実 体 法 上 一 罪 説 の根 拠 につ い て は,従 来,「 実 体 法 上 の一 罪 につ い て は1個 生 せ ず,被. の刑 罰 権 しか発. 疑 者 の逮 捕 ・勾 留 も刑 罰 権 実 現 の た め の手 続 の一 環 で あ る か ら,実 体 法 上 一 罪 と さ れ る. 事 実 は逮 捕 ・勾 留 に 関 して もこ れ を1個 掲 注4)205頁. の もの と して扱 うべ き で あ る」 と い わ れ て き た(小. な ど)。 しか し,近 時 は,「 刑 罰 権 が1個. す る逮 捕 ・勾 留 も1つ. しか 発 生 しな いか ら とい って,そ. 田 ・前. れ に対 応. で な け れ ば な ら な い と は 当然 に は い え な い」 と い う単 位 事 実 説 の主 張 に も理. 由 が あ る と して,「実 体 法 上 の 一 罪 性 は,全 体 の事 実 の密 接 関連 性 な い し一 体 性 を基 準 と して決 せ ら れ て い るの で,そ. れ らを 分 割 して 逮 捕 ・勾 留 す る こ と を 許 す と,実 質 上 逮 捕 ・勾 留 の む し返 し と. な っ て,法 定 さ れ た身 柄 拘 束 期 間 が潜 脱 さ れ る お そ れ が類 型 的 に高 く,こ れ を予 め封 じて お くた め に は,比 較 的基 準 と して 明確 な実 体 法 上 一 罪 説 に よ る の が妥 当 で あ る」 と い う説 明 が な さ れ て い る (川 出 ・前 掲 注4)145∼146頁)。 5)安. 廣 ・前 掲 注3)182∼183頁. に逮 捕,勾. 。 村 上 ・前 掲 注3)84頁. も,「 常 習 一 罪 を 細 分 して い く と,必 然 的. 留 の く り返 しが増 え る お そ れ が あ る が,こ. 様 に考 え れ ば よ く,逮 捕,勾. の点 は併 合 罪 関係 の多 数 の犯 罪 に お け る と 同. 留 の 時点 で捜 査 官 に判 明 して い た事 実 は で き る だ け そ の逮 捕,勾. 機 会 に 同 時処 理 す る こ と が望 ま し く,逮 捕,勾. 留の. 留 の む し返 しに な らな い よ う 司法 審 査 を厳 格 に行 な. う こ と に よ っ て そ の弊 害 を 防止 す れ ば足 りる」 と して い る。 6)小. 田 ・前 掲 注4)205頁,小. 20頁,井 100頁,川. 上 ・前 掲 注4)71頁,秋 出 ・前 掲 注4)146頁. 林 ・前 掲 注4)判. タ272号51頁,判. 葉 ・前 掲 注2)123頁,池. タ341号84頁,竹. 田 ・前 掲 注4)95頁,酒. 。 た だ し,平 場 安 治 ほ か 『注 解 刑 事 訴 訟 法 上 巻. 29. 崎 ・前 掲 注4) 巻 ・前 掲 注4). 〔 全 訂 新 版 〕』(青 林.
(8) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. た場 合 につ い て も,「 再 逮 捕 ・再 勾 留 」 と同 じ枠 組 でB事 実 を被 疑 事 実 とす る 逮 捕 ・勾 留 の可 否 を 決 す る と い う見 解 が 有 力 で あ る7)。 そ して,「 再 逮 捕 ・再 勾 留 」 の許 容 性 判 断基 準 に つ い て は,再 度 身 柄 拘 束 した うえ で捜 査 す る こ とが 不 可 欠 と認 あ られ,か つ,再 度 の身 柄 拘 束 に伴 う不 利 益 を被 疑 者 に 負担 させ る こ とが正 当 とい え る こ と8),な. ど と され て い る。 さ らに,こ れ らの両 説(単 位. 事 実 説 と実 体 法 上 一 罪 説)の 具 体 的結 論 に は,そ れ ほ どの差 は な い とい わ れ て い る。 そ うあ るべ き で あ り,そ の方 向 で両 説 を精 緻 化 して い く必 要 が あ る。 な ぜ な ら,連 続 的 犯 罪 行 為 の 場 合,常 習 性 の 有 無 や 故 意 の 発 生 時 期 等 に よ って, 事 実 関係 が ほ ぼ 同一 で あ るに もか か わ らず,実 体 法 上 一 罪 に な る場 合 と数 罪 に な る場 合 とが あ り得 る。 そ して,一 罪 に な る場 合 は実 体 法 上 一 罪 説 の 枠 組 に よ って,数 罪 に な る場 合 は単 位 事 実 説 の枠 組 に よ って,そ れ ぞ れB事 実 を被 疑 事 実 とす る逮 捕 ・勾 留 の可 否 が決 せ られ る こ とに な る。 この場 合,両 者 の判 断 は整 合 的 で あ るべ き だ か らで あ る。 これ を 【事 例 】 に つ い て み る と,単 位 事 実 説 に よ って も,実 体 法 上 一 罪 説 に よ って も,第2行. 為(以. 書 院,1987年)205∼206頁. 降)を 被 疑 事 実 とす る逮 捕 ・勾 留 は,許 〔 高 田卓 爾 〕 は,こ. れ に反 対 し,B事. され な い と考. 実 を被 疑 事 実 とす る勾 留 は許 す べ. き で は な く,保 釈 の取 り消 しに よ っ て対 処 す べ き だ とす る。 こ れ に対 して は,必 ず 保 釈 の取 消 事 由 が あ る と は い え な い し,逆 に,保 釈 を取 り消 す とB事 実 につ い て期 間制 限 な しの被 疑 者 勾 留 を実 質 的 に認 め る こ と に な っ て しま う,と 7)小. 田 ・前 掲 注4)206頁,小. 21∼22頁,井 注4)101頁,川. い う批 判 が あ る。. 林 ・前 掲 注4)判. 上 ・前 掲 注4)71頁,秋 出 ・前 掲 注4)147頁. 夕272号53頁,判. 葉 ・前 掲 注2)127頁,池. タ341号89頁,竹. 。 た だ し,三 井 ・前 掲 注4)31頁. り広 範 に新 た な勾 留 を許 す お そ れ も あ る。 した が っ て,先. 崎 ・前 掲 注4). 田 ・前 掲 注4)95頁,酒. 巻 ・前 掲. は,「 運 用 次 第 で は,か. な. の勾 留 前 に発 生 した事 実 につ い て は,ほ. ぼ例 外 な く,同 時処 理 の可 能 性 が あ っ た と み なす 運 用 が望 ま しい と い え よ う。 学 説 に は,…. …再 勾. 留 と 同 じ観 点 か ら許 容 で き る とす る立 場 もあ る。 しか し,こ れ は ゆ きす ぎ る と結 局 単 位 事 実 説 と ほ とん ど ち が い は な く問題 を含 む」 とす る。 さ らに,常 習 累 犯 窃 盗 の よ う に,個. 々 の単 位 事 実 が独 立 した犯 罪 と して の実 質 を有 し,単 位 事 実. 間 に関 連 性 が な く,単 位 事 実 が多 数 あ る よ う な場 合 に は,当 初 か ら捜 査 機 関 が全 体 を把 握 して い た と して も,1の. 逮 捕 ・勾 留 期 間 内 にす べ て を処 理 す る こ と は不 可 能 で あ り,複 数 回 の逮 捕 ・勾 留 を. 認 め な け れ ば な らな い場 合 もあ ろ う。 8)秋. 葉 ・前 掲 注2)127頁. 。 さ ら に,大 澤 裕=佐. 々 木 正 輝 「再 逮 捕 ・再 勾 留 」 法 教332号(2008年). 86∼88頁 。. 30.
(9) 法科大学院論集. 第8号. え られ る。 す な わ ち,犯 人 も被 害 者 もす べ て共 通 で あ り,行 為 も3つ に と どま り,当 初 か ら全 体 が捜 査 機 関 に判 明 して い た の で あ るか ら,単 位 事 実 説 に よ っ て も全 事 実 に よ る逮 捕 ・勾 留 を す べ き場 合 に あ た り,実 体 法 上 一 罪 説 か ら も 「再 逮 捕 ・再 勾 留 」 が 許 され る場 合 に あた らな い。 つ ま り 【事 例 】 にお いて は, 行 為 全 体 につ い て1回. の 逮 捕 ・勾 留 しか 認 め られ な い。 こ こ で,被 疑 者 の逮. 捕 ・勾 留 は,そ の理 由 と され た被 疑 事 実 に 関 して,被 疑 者 の逃 亡 や罪 証 隠滅 を 防止 した 状 態 で,捜 査 機 関 が捜 査9)を. 行 う こ とを許 容 す る制 度 で あ る。 した. が って,【 事 例 】 に お いて,捜 査 機 関 が 被 疑 者 の逃 亡 や 罪 証 隠滅 を 防 止 した状 態 で捜 査 を す るた あ に被 疑 者 の身 柄 を拘 束 す る こ とが許 され る期 間 は,行 為 全 体 に つ い て連 続 最 大23日 間 ま で とい う こ とに な る。. (3)逮 捕 ・勾 留 手 続 に お け る規 制 しか し,捜 査 機 関 が行 為 全 体 を分 割 し,第1行. 為 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 を. 請 求 して しま う と,そ の令 状 審 査 に お い て上 記 の よ うな判 断 を す る こ とが 困難 に な る。 す な わ ち,第1行 第2行. 為 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 の 際 に,疎 明 資 料 と して,. 為(以 降)に 関 す る資 料10)が 含 まれ て い れ ば,令 状 審 査 に あ た る裁 判. 官 が全 体 を被 疑 事 実 とす るよ う捜 査 機 関 に勧 告 す る11)な どの 方 法 に よ り,「行 為 全 体 に つ い て1回 の逮 捕 ・勾 留 」 が実 現 し得 る。 しか し,疎 明資 料 に第2行 為(以. 降)に 関 す る資 料 が含 ま れ て い な け れ ば,裁 判 官 は第1行 為 が行 為 全 体. の一 部 分 で あ る こ とを認 識 し得 な い。 そ の結 果,第1行. 9)こ. 為 を理 由 とす る逮 捕 ・. れ に は被 疑 者 の取 調 べ も含 ま れ る。 た だ し,い わ ゆ る 「出 頭 ・滞 留 義 務 」は 否 定 す べ き で あ り,. 任 意 処 分 性 が確 保 さ れ な け れ ば な らな い(拙 稿 「逮 捕 ・勾 留 中 の被 疑 者 取 調 べ の在 り方 」 本 誌7号 (2011年)81頁 10)被 害 届,被. 以 下 参 照)。 害 者 の供 述 調 書,被. 疑 者 の供 述 調 書 な ど に,行 為 全 体 につ い て記 載 さ れ て い る場 合 も. あ ろ う。 11)捜 査 機 関 が勧 告 に応 じな い場 合 は,後. に第2行. しよ う と意 図 して い る と評 価 で き る の で,第1行. 為(以. 降 を)理. 由 とす る(違 法 な)逮 捕 ・勾 留 を. 為 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 請 求 自体 も違 法 だ と し. て こ れ を却 下 す る こ と も考 え られ る。. 31.
(10) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. 勾 留 が認 あ られ る。 第1行 為 に つ い て起 訴 され た後,第2行. 為 を理 由 とす る逮. 捕 ・勾 留 の 請 求 が な さ れ れ ば,そ の 令 状 審 査 の段 階 で,被 疑 者 側12)か 摘 に よ り,第1行 る。 しか し,第1行. らの指. 為 ・第2行 為 が行 為 全 体 の構 成 要 素 で あ る こ とが 明 らか に な 為 の起 訴 後 勾 留 を利 用 して第2行 為(以. 降)の 捜 査 が行 わ. れ る と,そ の よ うな機 会 もな くな って しま う。 そ して,本 来1回. の逮 捕 ・勾 留. しか許 され な い に もか か わ らず,そ の期 間 を超 え て被 疑 者 の身 柄 を拘 束 した状 態 で捜 査 が継 続 され た場 合 に は,次 節 で述 べ る とお り,そ の捜 査 や そ の後 の起 訴 の適 法 性 に影 響 を及 ぼ す。 この よ うな こ とか ら,捜 査 機 関 は,行 為 全 体 に つ い て1回 の逮 捕 ・勾 留 しか 許 され な い可 能 性 が あ る事 案(連 続 的犯 罪 行 為 な ど)に お い て は,第1行 理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 を請 求 す る際 に,第2行. 為(以. 疎 明資 料 と して提 出 す べ き で あ る。 ま た,第2行. 降)に つ い て の資 料 を も. 為(以. 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 とい う形 を と らず,第2行. 為を. 降)に つ い て も起 訴 後. 為(以. 降)を 理 由 とす る逮. 捕 ・勾 留 手 続 を履 践 して,令 状 審 査 を受 け るべ き で あ る。 しか し,こ れ らは法 律 上 の義 務 とま で は い え ず,現 に 【事 例 】 の よ うな事 態 も生 じて い る。 そ こで,第1行. 為 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 ・起 訴 が な され,そ. の起 訴 後 勾 留 を利 用 して第2行 為(以. 降)に つ い て捜 査 が行 わ れ るに至 った場. 合,そ の局 面 に お い て何 らか の規 制 が 考 え られ な いか を,検 討 す る必 要 が あ る。 節 を改 あ て これ を行 う。. 12)捜 査 機 関 は,第1行 199条3項 第1行. 為 と第2行. 為 は そ れ ぞ れ犯 罪 を構 成 し併 合 罪 の 関係 だ と考 え て い る か ら,法. の 通 知 は しな い で あ ろ う。 為 が被 疑 者 国選 弁 護 対 象 事 件 で な い と か,第1行. 由 で,被 疑 者 に弁 護 人 がつ い て い な い場 合 は,こ 弁 護 対 象 事 件 で あ れ ば,第2行. 為 につ き処 分 保 留 で釈 放 され た な ど の理. れ は 困難 で あ る。 しか し,第2行. 為 が 被 疑 者 国選. 為 に 関す る勾 留 請 求 が な さ れ た後 に弁 護 人 が付 き,弁 護 人 か ら勾 留. に対 す る不 服 申立 が な さ れ る と い う か た ち で,司 法 審 査 が行 わ れ よ う。. 32.
(11) 法科大学院論集. 第8号. 3起 訴後勾留を利用 した余罪捜査についての規制一起訴後勾留 中 の余罪取調べ (1)問 題 の所 在 起 訴 後 勾 留 が 余 罪13)捜 査 に利 用 さ れ(か つ,当 初 起 訴 事 件 の 公 判 審 理 が追 起 訴 予 定 事 件 を併 合 す る前 提 で進 あ られ)る. こ とに よ り,余 罪 捜 査 に つ い て被. 疑 者 勾 留 の よ うな期 間 の制 約 が な くな り,余 罪 捜 査 期 間 が長 期 化 す る とい う点 は,古. くか ら問題 視 され て き た14)。. そ して,そ れ に対 す る制 約 た り得 る もの と して,以 下 の よ うな提 示 が な され て い る。 国 勾 留 中 の被 告 人 に対 す る余 罪 捜 査 は本 来 裁 判 所 の許 可 を得 てす べ き 筋 合 の もので あ り,そ の期 間 もせ い ぜ い1月. ぐ らい に制 限 され るべ きで あ る15),. 図 勾 留 期 間 の更 新 に 関 す る規 定(法60条2項,89条)を. 厳 格 に適 用 す る16),團. 不 当 に長 い拘 禁 で あ る こ とを理 由 と して勾 留 を取 り消 す(法91条)17),國 余 罪 捜 査 中 とい う理 由 で保 釈 決 定 を留 保 しな い18),團 併 合 審 理 の要 求 を あ る程 度 無 視 して,起 訴 ず み の事 実 の み に つ い て判 決 を言 い渡 す19),囹 起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ は,当 該 余 罪 に つ い て逮 捕 ・勾 留 され て い な い 限 り,許 され な い20),囮 13)な. お,こ. こ で い う 「余 罪 」 は,「 起 訴 され た事 実 で は な い 犯 罪(を. 構 成 し得 る)事 実 」 と い う程. 度 の意 味 で あ り,「 被 告 事 件 と公 訴 事 実 の 同 一 性 が 認 め られ る事 実 」 も含 む 。 14)小 野 慶 二 「勾 留 と被 疑 者 の取 調 」 判 夕201号(1967年)249頁,石 取 調 と刑 訴 法39条3項. の 指 定 処 分 」 判 夕242号(1970年)79頁. 告 人 に 対 す る余 罪 の 取 調 べ につ い て」 立 命 館 法 学271・272号 事訴訟法. 〔 第5版. 〕」(弘 文 堂,2009年)146頁. 松 竹 雄 「被 告 人 に対 す る余 罪 の 以 下,久. 岡 康 成 「起 訴 後 勾 留 中 の被. 下 巻(2000年)767頁,田. 口守 一 『刑. な ど。. な お,起 訴 後勾 留 中 の余 罪 取調 べ に 関 して は,被 告 人(余 罪 につ いて は被 疑者)が 望 まな い取 調 べ に さ ら され る こ と に対 す る規 制 と い う観 点 か らの議 論 も,蓄 積 され て い る(山 本 正 樹 「被 疑 者 に 対 す る (余罪 の)取 調」 近 大法 学35巻3・4号(1988年)53頁 15)小 野 ・前 掲 注14)249頁. 以 下,久. 16)石 松 ・前 掲 注14)81頁. 。. 17)石 松 ・前 掲 注14)81頁. 。. 18)小 野 ・前 掲 注14)249頁,石. 松 ・前 掲 注14)81頁. 19)石 松 ・前 掲 注14)81頁. 。 小 野 ・前 掲 注14)249頁. 20)石. 。. 松 ・前 掲 注14)81頁. 岡 ・前 掲 注14)762頁. 。. 33. 。 も同 旨 と考 え られ る。. 以下 な ど)。.
(12) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. 起 訴 前 に行 お う とす れ ば で き た余 罪 取 調 べ を起 訴 後 に行 う こ とで,公 判 の 当事 者 ・論 争 主 義(起 訴 事 実 の告 知 ・聴 聞 を受 け る権 利,公 正 ・公 平 ・迅 速 な公 開 の公 判 審 理 を受 け る権 利,証 人 喚 問 ・審 問権,弁 護 権 が被 告 人 に保 障 され た手 続)の 構 造 を危 う く させ る こ とは許 され な い21),團 被 疑 者 勾 留 か ら起 訴 後 勾 留 に切 り替 わ る際 に改 あ て勾 留 質 問 を行 うべ き で あ る22),團 起 訴 及 び起 訴 後 勾 留 が全 体 と して余 罪 取 調 べ を 目的 と した もの と判 断 され る場 合 に は,い わ ば別 件 起 訴 と して,被 告 人 が余 罪 取 調 べ に任 意 に応 じた か ど うか に 関 わ りな く,当 該 起 訴 後 勾 留 及 び余 罪 取 調 べ は違 法 とな る23),圃 被 告 事 件 の審 理 の た あ に通 常 必 要 と され る期 間 を経 過 した後 の起 訴 後 勾 留 は,そ の継 続 の必 要 性 を欠 い て違 法 とな る24),圓 起 訴 後 勾 留 を利 用 して余 罪 に つ い て捜 査 を行 い得 るの は,起 訴 前. 21)渥. 美 東 洋 「全 訂 刑 事 訴 訟 法 〔第2版. 〕』(有 斐 閣,2009年)83頁. 。 た だ し,同 書 は,続. い て,「 起. 訴 後 に重 大 な事 実 が判 明 した り,重 大 証 拠 が発 見 さ れ た と か,起 訴 後 の捜 査 を肯 定 しな け れ ば,捜 査 に不 可 能 を強 い る結 果 と な る場 合 に は,例 外 的 に,公 判 手 続 を停 止 させ て取 調 を許 す と い う配 慮 を払 う べ き で あ る」 と して い る。 ま た,「被 告 人 に対 す る余 罪 の取 調 を 在 宅 の 被 疑 者 の 取 調 と同 様 に見,身 柄 拘 束 中 で あ る と い う現 実 を踏 ま え る な らば,被 告 人 の実 質 的 防禦 権 の保 障,被 告 人 の主 体 的地 位 と公 正 な裁 判 を受 け る権 利 の保 障 に照 ら して,余 罪 の取 調 を考 え る ほ か は な い と思 わ れ る。 そ うす れ ば,被 告 人 に対 す る余 罪 の取 調 を許 容 す る余 地 は ほ と ん ど な い もの と考 え られ る」 と論 じる 山本 ・前 掲 注14)87頁. も,同. 様 の観 点 か らの立 論 と い え よ う。 22)白. 取 祐 司 「刑 事 訴 訟 法 第6版. 23)後. 藤 昭 『捜 査 法 の論 理 』(岩 波 書 店,2001年)86∼87頁,田. 訴訟法. 〔 第2版. 』(日 本 評 論 社,2010年)248頁. 〕」(成 文 堂,2011年)192頁. 。 口 ・前 掲 注14)146頁,上. 口裕 『刑 事. 。. こ れ に 関す る裁 判 例 と して,余 罪 取 調 べ が起 訴 後 勾 留 の利 用 の 限度 を超 え て違 法 だ と して 自 白調 書 の証 拠 能 力 を否 定 した もの と して,広 別 件 起 訴 と認 め て第1回 崎 支 判 平 成9年3月21日(判 24)川. 島高 判 昭和47年12月14日(高. 時1610号45頁)が. え ば,余 罪(本. 由 と さ れ た被 疑 事 実(別 よ う な場 合 に は,そ. あ り,. 件)の. 件)の. 岡高 宮. あ る。. 出 敏 裕 「別 件 逮 捕 ・勾 留 の研 究 』(東 京 大 学 出版 会,1998年)237頁. れ ゆ え,例. 刑 集25巻7号993頁)が. 公 判 期 日後 の余 罪 取 調 べ 及 び身 柄 拘 束 を違 法 と した も の と して,福 。 同 書 は,引. き続 い て,「 そ. 取 調 べ お よ び そ の追 起 訴 の た め に公 判 期 日 が延 期 され,勾. 留 の理. 審 理 の た め に通 常 必 要 と さ れ る期 間 を超 え て勾 留 が継 続 さ れ て い る. の期 間 を超 え た後 の勾 留 は,勾 留 の理 由 と され た被 疑 事 実(別. 件 を欠 くが ゆ え に違 法 と な る」 「も っ と も,こ れ に 対 して は,そ. 件)に. つ い て要. の よ う な期 間延 長 を 認 め る た め の. 根 拠 と して,『被 告 人 の 併 合 審 理 を受 け る利 益 』と い う こ と が しば しば主 張 さ れ る。 こ の根 拠 自体 は 正 当 で あ る と思 わ れ る が,そ 要 で あ る。 した が っ て,例. れ は,あ. くま で被 告 人 の利 益 を 図 る た め の例 外 で あ る こ と に注 意 が必. え ば,被 告 人 が余 罪 に つ い て も積 極 的 に 自 白 し,そ れ につ い て の裏 付 捜. 34.
(13) 法科大学院論集. 第8号. の身 柄 拘 束 期 間 の最 大 限度 で あ る23日 間 ま で が 限度 で あ る25)。 これ ら を分 類 す る と,起 訴 後 勾 留 の 要 件 に 関 す る も の([2]團 團 圃),起. 訴後. 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ の可 否 に 関 す る もの(国 囹 図),起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ の 限界 に 関 す る もの(国 團 匝D,保. 釈 との 関 係(團),併. 審 判 され た場 合 の 異 同 に 関 す る もの(團),と. 合 され た場 合 と個 別 に. な る。 そ して,こ れ らは,こ の. 順 序 で検 討 す べ き と考 え られ る。 そ こで,以 下,項. を分 け て順 次 検 討 す る。 な. お,国 ∼ 圓 は,い ず れ も,「 起 訴 され た事 実 」 と 「余 罪」 とが 併 合 罪 の 関 係 に あ る こ とを,主. と して念 頭 に置 い た議 論 で あ る26)。した が って,一 罪 を分 割 し. て そ の一 部 を起 訴 し,そ の起 訴 後 勾 留 を利 用 して他 の部 分 の捜 査 を行 う場 合 に つ い て は,そ の特 殊 性 に即 した追 加 ・修 正 が必 要 で あ る。 これ に つ い て も各 箇 所 で適 宜 行 う。. (2)起 訴 後 勾 留 の性 質 ・要 件 一[2]團團 圃 起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ に つ い て考 え るに あ た って は,起 訴 後 勾 留 の制 度 趣 旨の確 認 か らは じあ るべ き で あ る。 そ して,起 訴 後 勾 留 は,被 告 人 の逃 亡 や 罪 証 隠滅 を 防止 した状 態 で被 告 事 件 に つ い て審 判 を行 うた あ の制 度 で あ る。 審 判 は可 及 的速 や か に行 わ れ な け れ ば な らな い か ら,起 訴 後 勾 留 は,当 該 被 告 事 件 の 審 判 に必 要 と認 め られ る 限 度 で の み,正. 当視 す る こ とが で き る。 す な わ. ち,当 該 被 告 事 件 の審 判 に必 要 な期 間 を経 過 す れ ば,起 訴 後 勾 留 は そ の要 件 を. 査 に時 間 が か か っ て い る と か,あ な場 合 な らば,そ. る い は今 後 も積 極 的 な 自 白 が続 け られ る可 能 性 が あ る と い う よ う. の根 拠 が妥 当す る で あ ろ う が,逆. に,例. え ば,余 罪 につ い て逮 捕 ・勾 留 す る に足. りる嫌 疑 もな い た め,被 告 人 か らそ れ につ い て の 自 白 を獲 得 す る手 段 と して起 訴 後 の勾 留 を積 極 的 に利 用 して い る よ う な場 合 に は,被 告 人 の利 益 に か な う と い う前 提 が成 り立 た な い か ら,そ れ は妥 当せ ず,そ. の 間 の勾 留 は違 法 と な る」 と して い る。. 25)川. 出 ・前 掲 注24)259∼260頁. 26)実. 務 上 よ くあ る の は,最 初 の被 疑 事 実(例. 定 数 の余 罪(他. の窃 盗)に. 。 え ば あ る窃 盗)に. つ い て の逮 捕 ・勾 留 の期 間 中 に,一. つ い て も 自 白 が な さ れ,最 初 の被 疑 事 実 につ い て起 訴 さ れ た後,そ. 訴 後 勾 留 を利 用 して,順 次,他. の事 実 につ い て捜 査 ・起 訴 が行 われ る と い う も の で あ る。. 35. の起.
(14) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. 欠 く(圓)。 そ の場 合 は,勾 留 の 更 新 が 許 され な い(囮)こ 留 期 間 中 で あ って も勾 留 を取 り消 さな け れ ば な らな い(團)。. とは も ち ろ ん,勾 そ して,「 追 起 訴. を 待 って 併 合 審 判 す る予 定 な の で,『 追 起 訴 を 待 つ 間』 も 『被 告 事 件 の 審 判 に 必 要 な期 間』 だ」 とい う論 理 は,認 あ られ な い27)。そ の 時点 で行 わ れ て お らず 将 来 確 実 にな さ れ る と も限 らな い 追 起 訴28)を. 「被 告 事 件 の 審 判 」 に取 り込 む. の は,妥 当 で な い。 起 訴 後 勾 留 の手 続 に 関 して,團 は,被 疑 者 勾 留 が起 訴 後 勾 留 に切 り替 わ る際 に も勾 留 質 問 を行 うべ き だ とす る。 た しか に,起 訴 後 勾 留 は被 疑 者 勾 留 とは制 度 趣 旨が 異 な る か ら,令 状 審 査 の 内 容 もそ れ に応 じて 異 な る点 が あ る。 また, 被 疑 者 勾 留 の違 法(被 疑 事 件 の起 訴 ・不 起 訴 の決 定 が可 能 に な った後 も身 柄 拘 束 を継 続 した な ど)が あ れ ば,そ れ は,そ れ に続 く起 訴 後 勾 留 を不 相 当 とす る 事 情 と して考 慮 す べ き で あ る。 さ らに,被 疑 事 実 の起 訴 ・不 起 訴 の決 定 が可 能 に な った後 も身 柄 拘 束 が継 続 され,そ の 間 に余 罪 の捜 査 が行 わ れ た場 合 は,余 罪 捜 査 着 手 以 降 の期 間 は,そ の後 の 当該 余 罪 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 の期 間 か ら,差 し引 か れ るべ き で あ る29)。この よ うな こ とか らす れ ば,被 疑 者 勾 留 か ら 切 り替 わ る場 合 に も起 訴 後 勾 留 前 に勾 留 質 問 を行 い,そ. こで被 疑 者 勾 留 に 関す. る問題 の有 無 を確 認 す る こ とが望 ま しい30)。【事 例 】の よ うな 場 合 に は,勾 留 質 問 に お い て被 告 人 か ら 「事 件 全 体 に つ い て供 述 して い るの に,そ の一 部 だ け が 起 訴 され,『 残 り は ゆ っ く り追 起 訴 す る』 と捜 査 機 関 か ら言 わ れ て い る が,お か しい の で は な い か」 とい った 陳述 が な され,分 割 捜 査 の 問題 点 が表 面 化 す る. 27)被. 告 人 が追 起 訴 事 件 の併 合 審 判 を希 望 し,追 起 訴 を待 つ 間起 訴 後 勾 留 が(被 告 事 件 の み の審 判 に. 必 要 な期 間 を超 え て)継 続 す る こ と を承 諾 した場 合 に は,別. に解 す る余 地 が あ る。 しか し,本 文 で. 後 に論 じる よ う に,被 告 人 が そ の よ う な希 望 をす る理 由 を解 消 す べ き で あ る。 28)「 追 起 訴 予 定 」 が 消 滅 す る こ とは 少 な い と考 え られ るが,「 予 定 時 期 」 が後 にず れ込 む こ と は珍 し くな い。 29)引. き続 き起 訴 後 勾 留 さ れ た場 合 は,そ. の起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 が許 さ れ る期 間 は,余 罪. 捜 査 着 手 時 か ら連 続 最 大13日 間 ま で とす べ き こ と に な る。 30)こ. れ が現 行 法 上 要 請 さ れ て い る と ま で い え る か につ い て は,こ. 36. こ で は立 ち入 らな い。.
(15) 法科大学院論集. 第8号. 可 能 性 が あ る。. (3)起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ の可 否 一 口 囹[コ そ れ で は,適 法 な起 訴 後 勾 留(当 該 被 告 事 件 の 審 判 に必 要 と認 あ られ る期 間) 中 の被 告 人 を,捜 査 機 関 が,起 訴 され た事 実 以 外 の余 罪 に つ い て(被 疑 者 と し て)取. り調 べ る こ とは,許. され るか。 囹 図 は これ を否 定 し,国 は裁 判 所 の許 可. が必 要 だ とす る。 囹 は,「 逮 捕 ・勾 留 され て い る被 疑 者 は 当該 被 疑 事 実 に 関 して い わ ゆ る 出頭 ・ 滞 留 義 務 を 負 う」 とい う実 務 の運 用 を前 提 に 「余 罪 に つ い て は 出頭 ・滞 留 義 務 が な い か ら,捜 査 機 関 が余 罪 に つ い て(出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した)取 調 べ を行 う こ とは許 され な い」 とい う立 論 で あ り,そ れ 自体 と して は成 り立 ち得 る。 し か し,い わ ゆ る 出 頭 ・滞 留 義 務 は否 定 す べ き で あ る31)。す る と,「 余 罪 につ い て の もの だ か ら」 とい う理 由 で起 訴 後 勾 留 中 の(任 意 の)取 調 べ を禁 じ る こ と は で き な い32)。ま た,被 告 人 が余 罪 に つ い て取 調 べ ・追 起 訴 ・併 合 審 判 を望 ん で い るの に,捜 査 機 関 が な か な か捜 査 を進 あ な い(た あ に追 起 訴 が な か な か行 わ れ な い)と い う場 面 で は,起 訴 後 勾 留 中 の 余 罪 の取 調 べ を 禁 じる だ け で は, 問題 は解 決 しな い。 こ こで必 要 な の は,捜 査 機 関 に早 期 に捜 査 に着 手 させ,そ の期 間 を制 限 す る理 論 的枠 組 で あ る。 図 は,当 事 者 主 義 の観 点 か ら,被 告 人 に対 す る取 調 べ を(原 則 と して)禁 止 しよ う とす る もの で あ る。 た しか に,被 疑 事 件 に 関 す る捜 査 が,被 告 人 と して の 防御 に支 障 を き た す よ うな場 合 は,当 事 者 主 義 の観 点 か ら捜 査 を規 制 す る こ 31)拙. 稿 ・前 掲 注9)81頁. 32)こ. の 点 に 関 して,「 身 柄 拘 束 中 の 取 調 べ は,出. 以下。 頭 ・滞 留 義 務 が な い と解 して も,そ れ 自体 強 制 的. 雰 囲 気 が 伴 っ て い るか ら,身 柄 拘 束 の 根 拠 と な った 被 疑 事 実 及 び そ れ と一 定 の 関 係 に あ る余 罪 に 限 っ て許 さ れ る」 旨 の主 張(鈴. 木 茂 嗣 『刑 事 訴 訟 法. 〔 改 訂 版 〕』(青 林 書 院,1990年)83∼84頁)が. あ る。 しか し,身 柄 拘 束 の根 拠 と な っ た被 疑 事 実 に 関す る取 調 べ も 「強 制 的雰 囲気 」 を払 拭 した任 意 の取 調 べ で な け れ ば な らな い と解 す べ き で あ り,そ う で あ れ ば,余 罪 取 調 べ を(身 柄 拘 束 の根 拠 と な っ た被 疑 事 実 に 関す る もの で な い か らと い う理 由 で)禁 ず る こ と は で き な い と考 え られ る。. 37.
(16) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. とが有 効 で あ り得 る。 しか し,そ の よ うな事 態 は,い わ ゆ る出頭 ・滞 留 義 務 を 否 定 し,身 柄 拘 束 中 の被 疑 者 の取 調 べ に つ い て任 意 処 分 性 が確 保 され れ ば,生 じな い と考 え られ る。 ま た,被 告 人 に対 す る取 調 べ を一 切 禁 止 す る と,複 数 の (併 合 罪 関係 に あ る)嫌 疑 が あ る者 につ い て,そ の 一 つ に つ い て 逮 捕 ・勾 留 ・ 起 訴 が な され る と,そ の裁 判 が終 わ るま で他 の事 実 に つ い て取 調 べ が で き な い こ とか ら,個 々 の事 実 ご とに裁 判 を繰 り返 さ ざ るを得 な くな って しま う33)。ま た,当 事 者 主 義 の観 点 か ら捜 査 を制 限す る方 向 の論 理 は,被 告 人 が 早 期 の 捜 査 ・ 追 起 訴 ・併 合 審 判 を望 ん で い るの に,捜 査 機 関 が捜 査 を進 あ な い とい うケ ー ス に つ い て は,有 効 に機 能 しな い。 結 局,い. わ ゆ る出頭 ・滞 留 義 務 は否 定 す べ き で あ り,逮 捕 ・勾 留 され て い る. 者 に つ い て も,逮 捕 ・勾 留 され て い な い者 と同様,任 意 の取 調 べ しか許 され な い。 逆 に,任 意 の取 調 べ で あ れ ば,対 象 者 が別 事 件 の被 告 人 で あ って 当該 被 告 事 件 に つ い て起 訴 後 勾 留 され て お り,被 疑 事 件 に つ い て は逮 捕 ・勾 留 され て い な い場 合 で あ って も,禁 じ られ な い とい うべ き で あ る34)。国 は余 罪 取 調 べ に裁 判 所 の許 可 が必 要 だ とす るが,そ の よ うな 限定 は不 可 能 で あ ろ う。. (4)起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ の限 界 一 口 團 圖 そ こで次 に 問題 とす べ き は,起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ に つ い て,何. らか の. 制 限 は な い か とい う点 で あ る。. 33)「 あ る被 疑 事 実 に つ い て 逮 捕 ・勾 留 して 捜 査 を 遂 げ た が,起. 訴 をせ ず 処 分 保 留 で 釈 放 し,そ れ と. 同時 に次 の被 疑 事 実 で逮 捕 ・勾 留 して そ の事 実 につ い て捜 査 を遂 げ,す べ て の事 実 につ い て捜 査 が 完 了 した 段 階 で ま と め て起 訴 す る」 とい う方 法 を と れ ば,各 別 の裁 判 とい う事 態 は避 け られ るが, そ の よ う な運 用(起 34)余. 訴 す る と い う判 断 が で き た の に処 分 保 留 で釈 放 す る こ と)は 不 当 で あ る。. 罪 に 関す る取 調 べ が被 告 事 件 の 防御 に支 障 を もた らす よ う な もの で あ る場 合 は,被 告 人 が そ れ. を拒 否 す る で あ ろ う か ら,当 事 者 主 義 の観 点 か ら原 則 禁 止 と ま で い う必 要 は な い と考 え る。. 38.
(17) 法科大学院論集. ①. 第8号. 「別 件 起 訴 」. この点 に 関 して,團 は,「起 訴 及 び起 訴 後 勾 留 が余 罪 取 調 べ の た あ の もの と評 価 され る場 合 に は,被 告 人 が取 調 べ に任 意 に応 じた か否 か に か か わ らず,当 該 起 訴 後 勾 留 及 び取 調 べ は違 法 と な る」 と す る。 しか し,こ の 論 理(「 別 件 逮 捕 ・勾 留 」 に 関 す る 「本 件 基 準 説 」 の論 理)に. は,疑 問 が あ る。 問題 とな る起. 訴 後 勾 留 は,起 訴 され た事 件 の審 判 の た あ の もの で あ るか ら,ま ず,そ の観 点 か ら適 法 性 を判 断 す べ き で あ る。 「他 の 目的 の た め の もの だ か ら違 法 」 とい う 前 に,「本 来 の 目的 の た め の もの と して 適 法 か」を厳 格 に判 断 す べ き で あ る。 ま た,取 調 べ の適 法 性 に つ い て も,身 柄 拘 束(起 訴 後 勾 留)の 適 法 性 とい う形 で は な く,そ れ 自体,す. な わ ち 「起 訴 後 勾 留 中 の余 罪 取 調 べ の許 容 範 囲 の逸 脱 の. 有 無 」 とい う形 で,検 討 ・判 断 す べ き と考 え る35)。た とえ ば,軽 微 な罪 で起 訴 して,そ の起 訴 後 勾 留 中 に,逮 捕 ・勾 留 す るだ け の嫌 疑 が な い重 大 事 案 に つ い て追 及 的 な取 調 べ を長 期 間続 け る よ うな 場合 は,起 訴 後 勾留 の要 件 が 欠 け る36), あ る い は,取 調 べ が 違 法 で あ る37)と い う形 で,規 制 す る こ とが 可 能 で あ り, か つ,妥 当 で あ る。. ②. 期 間制 限. 次 に,国 圓 は,起 訴 後 勾 留 を 利 用 した捜 査 の 期 間 に制 限 を 加 え よ う とす る。 国 は詳 細 を論 じな い が,圓 は か な り詳 細 に論 じて い る。 そ の骨 子 は,「 『起 訴 後 勾 留 を利 用 した捜 査 』 を 行 い 得 る期 間 は,起 訴 前 の身 柄 拘 束 期 間 の最 大 限度 (23日 間)ま で」 で あ り,「 『起 訴 後 勾 留 を 利 用 した 捜 査 』 が 行 わ れ た 場 合 は,. 35)囹. の論 者 は,こ. 36)当. 初 か ら起 訴 後 勾 留 の要 件(特. れ が不 可 能 だ と考 え て い る が,後 述 す る よ う に,こ に必 要 性)が. れ は可 能 だ と考 え る。. 欠 け る場 合 もあ ろ う し,被 告 事 件 の審 判 に必 要 な期. 間 を経 過 した こ と に よ り要 件 が欠 け る場 合 もあ ろ う。 37)「 追 及 」 の 程 度 に よ っ て(出. 頭 ・滞 留 義 務 を課 した 場 合 な ど)は,任. を超 え て 違 法 とな る。 ま た,「 長 期 間 」 の 程 度 に よ っ て は,後 違 法 と な る。. 39. 意 処 分 と して 許 され る範 囲. 述 す る期 間 制 限 に 反 す る もの と して.
(18) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. そ の分 だ け後 の余 罪 に よ る逮 捕 ・勾 留 期 間 が認 あ られ な くな る」 の で,そ れ と の 関係 で,「 『起 訴 後 勾 留 を利 用 した捜 査 』 と評 価 す るた あ に は,単 に並 行 して 余 罪 に つ い て も捜 査 が行 わ れ て い た とい うだ け で は足 りず,少 な く と も,余 罪 に つ い て,そ れ を理 由 と して身 柄 拘 束 され た場 合 と同等 な捜 査 が行 わ れ て い る 必 要 が あ り,そ の 際 に は 余 罪 に つ い て の 取 調 べ の 状 況 が 重 要 な 判 断 要 素 とな る」 とい う もの で あ る38)。 これ は基 本 的 に妥 当 だ が,い ア. くつ か の点 で さ らに検 討 が必 要 と考 え られ る。. 「利 用 」 の 基 準 ・起 算 点. ま ず,「 起 訴 後 勾 留 を利 用 した 捜 査 」 と評 価 す る基 準 が,問 題 で あ る。 論 者 は 「余 罪 を理 由 と して身 柄 拘 束 され た場 合 と同等 の捜 査 」 で あ る こ とが必 要 だ と し,そ の判 断 は 「取 調 べ状 況 を 中心 とす る実 際 の捜 査 状 況 」 を も とに行 う と い う。 しか し,被 疑 者 勾 留 の場 合 は,勾 留 請 求 の 日か らカ ウ ン トが始 ま り,現 に捜 査(取 調 べ)を. しよ うが しま い が,10日. 間(勾 留 期 間 が延 長 され た場 合 は. そ の満 期 ま で)で 公 訴 提 起 か 釈 放 か を しな けれ ば な らな い の で あ り,「余 罪 を理 由 に身 柄 拘 束 され た場 合 と同等 の捜 査 」 と 「取 調 べ状 況 を 中心 とす る実 際 の捜 査 状 況 」 とは理 論 的 に は結 び つ か な い39)40)。 この 点 に 関 して は,「 捜 査 の 状 況 」 で は な く 「検 察 官 の言 動 」 に 着 目す べ き と考 え る。 す な わ ち,検 察 官 が(起 訴 後 勾 留 の基 礎 とな って い る被 告 事 件 の受 訴)裁 判 所 に対 して 「追 起 訴 予 定 」 と明示 した 時点41)か ら,「起 訴 後 勾 留 を利. 38)川. 出 ・前 掲 注24)259∼260頁. 39)後. 藤 ・前 掲 注23)91頁. 40)ま. た,実. 。. 。. 際 の判 断 が ど の よ う に行 わ れ る の か に も,疑 問 が あ る。 例 え ば,丸1日. お き に行 わ れ た場 合,丸1日. の取 調 べ が4日. の 取 調 べ が 行 われ た 日だ け を 「起 訴 後 勾 留 を 利 用 した 捜 査 」 と評 価 し,. こ れ が累 積 して23日 に な っ た と き,そ 的 に捜 査 状 況 を振 り返 っ て,丸1日. れ以 後 の取 調 べ が で き な くな る の だ ろ う か。 それ と も,事 後. の取 調 べ が行 わ れ た初 日か ら 「起 訴 後 勾 留 を利 用 した捜 査 」 と. 評 価 し,そ こ か ら24日 目以 降 の取 調 べ は違 法 と さ れ る の だ ろ う か。 41)起. 訴 状 に 「12月中旬 に追 起 訴 予 定 」 な ど と記 載 した付 箋 をつ け る な ど の方 法 で,行. を受 け た受 訴 裁 判 所 は,追 起 訴 含 み で第1回. 公 判 期 日 の 日時(追. 40. わ れ る。 こ れ. 起 訴 事 件 も審 理 す る前 提 で遅 い時.
(19) 法科大学院論集. 第8号. 用 した捜 査 」 を起 算 す べ き で あ る。 な ぜ な ら,検 察 官 の裁 判 所 に対 す る 「追 起 訴 予 定 」 とい う表 明 は,「余 罪 に つ い て追 起 訴 の ほ ぼ確 実 な見 通 しが立 つ だ け の 嫌 疑(逮 捕 ・勾 留 の要 件 と され て い る嫌 疑 以 上 の もの)が あ る」,「そ の余 罪 に つ い て の捜 査 を起 訴 後 勾 留 を利 用 して行 う」 とい う宣 言 と,「追 起 訴 事 件 も併 合 審 判 され た い」 とい う要 請 とを含 む もの で あ る。 そ して,「起 訴 後 勾 留 を利 用 し た余 罪 捜 査 」 は,「 余 罪 に つ い て 逮 捕 ・勾 留 した の と同 様 の 効 果」 す な わ ち 「被 疑 者 の身 柄 が拘 束 され,そ れ に よ って逃 亡 や余 罪 に 関 す る罪 証 隠滅 等 が 防止 さ れ て い る状 態 で,余 罪 に つ い て捜 査 を遂 行 で き る こ と」42)を もた らす もの で あ る43)。しか も,「 追 起 訴 事 件 の併 合 審 判 の要 請 」 は,起 訴 後 勾 留 を 「当 該 被 告 事 件 の審 理 に必 要 な期 間」 を超 え て継 続 させ る可 能 性 を伴 う もの で あ る44)。こ れ ら に鑑 み れ ば,「 起 訴 後 勾 留 を 利 用 した余 罪 捜 査 」 に 関 して は,検 察 官 に よ る 「追 起 訴 予 定 」 の表 明 を 起 点 と して,「 余 罪 を 理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 」 が な され た場 合 と同様 の期 間制 限 に服 させ るべ き で あ る45)。 イ. 期. 間. 次 に,「 最 大23日 間」 とい う点 に つ い て も,さ らに 検 討 す べ き で あ る。 被 疑 者 勾 留 の場 合 に は,(現 行 犯 を 除 く)逮 捕,勾 留,勾 留 延 長 の そ れ ぞ れ に際 し て 令 状 審 査 が行 わ れ る。 そ こ で は,「 被 疑 者 の身 柄 を 拘 束 した 状 態 で 起 訴 ・不 起 訴 の決 定 に 向 け た捜 査 を行 う必 要 が あ るか ど うか」 も,審 査 され る46)。特 に, 期 に す る な ど)・ 審 理 予定 時 間(追. 起 訴 が 間 に合 わ な い とみ れ ば,第1回. 公判 は起訴事件の検察官. 立 証 の み を想 定 し,20分 程 度 とす る な ど)を 決 定 す る の が通 例 で あ る。 42)出. 頭 ・滞 留 義 務 否 定 説 か らは,「 起 訴 後 勾 留 の 利 用 」 と 「余 罪 を 理 由 と す る逮 捕 ・勾 留 」 とは,. 期 間制 限 の有 無 以 外 に効 果 に違 い が な い。 43)し. か も,令 状 審 査 を 経 ず に,そ. の よ うな 状 態 が 実 現 す る。 こ の 点 で は,「 検 察 官 に よ る追 起 訴 予. 定 の表 明」 は,「(余 罪 を理 由 とす る)逮 捕 ・勾 留 状 の請 求+令 44)こ. 状 発 付 」 に相 当す る。. の点 で,「 起 訴 後 勾 留 」 の 利 用 は,「 受 刑 状 態 」 等 の利 用 と は異 な る。 後 藤 ・前 掲 注23)91頁. 参. 照。 45)そ. の 期 間 内 に 保 釈 等 に よ り被 告 人(余. 疑 者)勾 46)す. 罪 につ い て の被 疑 者)の. 身 柄 拘 束 が 解 か れ た 場 合 は,(被. 留 中 に処 分 保 留 で釈 放 さ れ た場 合 と 同様 に扱 え ば よ い。. で に起 訴 ・不 起 訴 の決 定 が可 能 な状 態 で あ る場 合 や,そ. の た め の捜 査 に必 要 と認 め られ る期 間. を経 過 して い る場 合 な ど は,令 状 請 求 は却 下 さ れ る こ と に な る。. 41.
(20) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. 勾 留 延 長 の場 合 に は,「 や む を 得 な い事 由」(法208条2項)が. 正 面 か ら問 題 と. な る。 と ころ が,起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 の場 合 に は,こ れ らの審 査 が 行 わ れ な い。 しか も,起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 の期 間 が延 び るほ ど,起 訴 後 勾 留 が被 告 事 件 の審 理 に必 要 な期 間 を超 え る可 能 性 が高 くな る。 これ らの こ とか らす れ ば,起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 は,逮 捕 ・勾 留 期 間 で あ る13 日間 ま で を 限度 とす べ き で あ る。 そ れ を超 え る期 間 が必 要 と見 込 ま れ る事 案 に つ い て は,捜 査 機 関 は(と. りわ け勾 留 延 長 に関 す る)令 状 審 査 を経 る た あ に,. 余 罪 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 ・勾 留 延 長 の手 続 を と るべ き で あ る47)。 以 上 は,起 訴 に か か る事 実 と余 罪 とに つ い て そ れ ぞ れ逮 捕 ・勾 留 が許 され る こ とを前 提 に した議 論 で あ る。 【事 例 】 の よ うな,「 一 罪 一 逮 捕 ・一 勾 留 」 との 関係 で,行 為 全 体 に つ い て1回 の逮 捕 ・勾 留 しか許 され な い場 合 は,起 訴 後 勾 留 を利 用 した捜 査 は,行 為 全 体 に つ い て,最 初 の逮 捕 時 か ら起 算 して連 続 最 大 23日 間 の 限度 で しか許 され な い こ とに な る。 そ して,こ の場 合 の起 訴 後 勾 留 を 利 用 した 捜 査 の許 否 や許 さ れ る 期 間 は,行 為 全 体 に つ い て 「や む を得 な い事 由」(法208条2項)が い て は,第1行. あ る か ど うか に よ って 決 す る こ と に な る。 【事 例 】 に お. 為 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 が21日 間 な され て い るの で,起 訴 後. 勾 留 を利 用 した捜 査 が許 され る期 間 は,行 為 全 体 に つ い て,最 大 で起 訴 の翌 々 日ま で とな る。 「起 訴 後 勾 留 を 利 用 した捜 査 が 許 さ れ る期 間 」 を 超 え て な され た 捜 査 は,逮 捕 ・勾 留 に 関 す る期 間制 限(被 疑 者 の身 柄 を拘 束 し,そ の逃 亡 や罪 証 隠滅 を 防 止 した状 態 で,一 定 の被 疑 事 実 に つ い て捜 査 を 開始 した以 上,当 該 被 疑 事 実 及 び一 定 の 関連 事 実 に つ い て は,一 定 の期 間 内 に必 要 な捜 査 を遂 げ,起 訴 す るか 釈 放 す るか す る こ とを求 あ て い る法 の趣 旨)に 反 し,違 法 で あ る。 違 法 の 程 度 ・. 47)起. 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 を 開始 した後 に,13日. 間 で処 理 で き な い状 況 に な っ た と き は,そ. の時 点 で余 罪 を理 由 とす る逮 捕 手 続 を と るべ き で あ り,裁 判 所 は,起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 の 開始 時 か ら起 算 して連 続 最 大23日 間 の範 囲 で,逮 捕 ・勾 留 を認 め るべ き で あ る。. 42.
(21) 法科大学院論集. 第8号. 影 響 に よ って は,そ の期 間 内 に得 られ た証 拠 の証 拠 能 力 を否 定 す べ きで あ る48)。 ま た,「 起 訴 後 勾 留 を 利 用 した 捜 査 が 許 さ れ る期 間 」 を 経 過 した 後 にな さ れ た (追)起 訴 も,同 様 に,期 間 制 限 に反 す る もの で あ るか ら,「公 訴 提 起 の手 続 が そ の規 定 に違 反 した た あ無 効 で あ る」(法338条4号)と. して,公 訴 棄 却 判 決 を. す べ き場 合 もあ る と考 え られ る49)。さ ら に,「 起 訴 後 勾 留 を利 用 した 捜 査 が許 され る期 間」 を経 過 し,(追)起. 訴 が な され な い状 態 で,被 告 事 件 の 審 理 の た. あ に必 要 な期 間50)が 経 過 した と き51)は,裁. 判 所(官)は. 起 訴 後 勾 留 を取 り消. さな け れ ば な らな い。 【事 例 】に お い て は,起 訴 後 勾 留 を利 用 した捜 査 が許 され る期 間 は最 大 で2010 年11月24日 ま で で あ った に もか か わ らず,第2行 1月13日 に,第3行. 為 に つ い て の追 起 訴 は翌 年 の. 為 に つ い て の追 起 訴 は 同年2月15日. い る。 最 初 の追 起 訴 は約50日,次. の追 起 訴 は約80日,そ. に,そ れ ぞ れ行 わ れ て れ ぞ れ期 間 を徒 過 して. お り,そ の程 度 は甚 だ しい とい わ ざ るを得 な い。 した が って,2件 期 間徒 過 に よ って(も)無 つ い て み れ ば(あ. の追 起 訴 は. 効 と解 す べ き と考 え られ る。 ま た,第1行. る い は,全 体 が2010年11月24日. 為 のみに. ま で に起 訴 さ れ て い た ら),. 年 内 に は判 決 が可 能 だ った と考 え られ るか ら,被 告 事 件 の審 理 の た あ に必 要 な 期 間 は年 内 ま で で あ り,裁 判 所 は年 明 け に は勾 留 を取 り消 す べ き で あ った。. 48)そ. の法 的根 拠(自. 白法 則 か違 法 収 集 証 拠 排 除 法 則 か)及. び判 断 基 準 につ い て は,こ. こ で は立 ち入. らな いQ 49)法208条 訟 法 中巻. の 期 間経 過 後 も身 柄 拘 束 を 継 続 して起 訴 した 場 合 につ い て,平 場 安 治 ほ か 『注 解 刑 事 訴 〔 全 訂 新 版 〕』(青 林 書 院,1982年)897頁. 〔中 武 靖 夫 〕,小 林 充 「逮 捕 権 の濫 用 的行 使 が 問. 題 と な る事 例 」 新 関雅 夫 ほ か 「増 補 令 状 基 本 問題 上 』(一 粒 社,1996年)129頁 昭和25年7月4日(高. 刑 集3巻2号259頁)は,「208条. 。 た だ し,東 京 高 判. は,被 疑 者 を 勾 留 した事 件 に つ き,勾 留 の. 請 求 を した 日 か ら所 定 期 間 内 に公 訴 を提 起 しな い と き は検 察 官 は直 ち に被 疑 者 を釈 放 す べ き 旨 を規 定 した もの で あ っ て,勾 留 の ま ま所 定 期 間後 に為 さ れ た公 訴 提 起 が 無 効 な る 旨 を規 定 した も の で は な い」 と して い る。 50)こ. れ につ い て は,追 起 訴 予 定 が は じめ か らな か っ た と措 定 して,考. え な け れ ば な らな い。. 51)「 追 起 訴 予 定 」 が 遅 れ た 場 合 の ほか,「 追 起 訴 予 定 」 が な くな っ た場 合 な ど に,こ 起 こ り得 る。. 43. の よ う な事 態 が.
(22) 連続 的犯罪行為 に関す る刑事手続上 の問題点. ウ. 開始 時期. と ころ で,「起 訴 後 勾 留 を 利 用 した 余 罪 捜 査」の 開始 時期 を捜 査 機 関 が任 意 に 選 択 で き る とす れ ば,上 記 の枠 組 は事 実 上 意 味 を失 って しま う。 実 務 上 は,検 察 官 に よ る 「追 起 訴 予 定 」 とい う表 明 は,起 訴 と同 時 に行 わ れ て い るが,こ れ を制 度 と して確 立 す べ き で あ る。 す な わ ち捜 査 機 関 は,余 罪 の存 在 を覚 知 した 場 合 に は,可 及 的 速 や か に そ の 捜 査 に着 手 す べ き で あ り,本 罪 につ い て の逮 捕 ・勾 留 中 に余 罪 を覚 知 し(逮 捕 ・勾 留 の要 件 と して要 求 され て い る以 上 の嫌 疑 を認 あ),本 罪 につ い て起 訴 後 勾 留 が な さ れ た場 合 に は,本 罪 の起 訴52)後 直 ち に余 罪 の捜 査 に着 手 しな け れ ば な らな い53)54)。な ぜ な ら,① 併 合 罪 に つ い て 実 体 法 上 加 重 主 義 が と られ原 則 と して一 括 処 理 が要 求 され て お り,② 捜 査 に お い て も迅 速 な裁 判 の要 請 は あ て は ま り,と りわ け被 疑 者 の身 柄 を拘 束 して い る 場 合 に は そ の要 請 は強 く,③ 逮 捕 ・勾 留 は無 罪 の推 定 の あ る段 階 で一 市 民 を拘 束 す る とい うい わ ば必 要 悪 とで もい うべ き もの で あ るか ら,で き る限 り短 い期 間 で す ま す べ き だ か らで あ る55)。 工. 追 起 訴 事 件 に つ い て の起 訴 後 勾 留. 起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 が行 わ れ,そ れ に つ い て(追)起 合,裁 判 所(官)は,当. 訴 され た場. 該 余 罪 に つ い て起 訴 後 勾 留 の判 断 を す べ き で あ る。 す. な わ ち,追 起 訴 が な さ れ た 時 点 で,裁 判 所(官)は,(追)起. 訴 状 に 「別 件 勾. 留 中求 令 状 」 の記 載 が な く と も,そ の 時点 に お け る余 罪 を理 由 とす る起 訴 後 勾 留 の要 件 と,追 起 訴 に至 るま で の起 訴 後 勾 留 を利 用 した捜 査 の適 法 性 とを検 討 し,い ず れ に も問題 が な け れ ば,余 罪 を理 由 とす る起 訴 後 勾 留 決 定 をす べ き で. 52)こ. れ を で き る 限 り速 や か に行 うべ き こ と は,当 然 で あ る。. 53)起. 訴 後 勾 留 中 に余 罪 が発 覚 した場 合 に は,そ. の 時点 で速 や か に そ の捜 査 に着 手 しな け れ ば な ら な. い。 54)本. 罪 の逮 捕 ・勾 留 中 に余 罪 の捜 査 が行 わ れ た場 合 に,後. る か と い う 問題 が あ る が,こ 55)安. 廣 ・前 掲 注3)182頁. こ で は立 ち入 らな い。. 。. 44. に余 罪 を理 由 とす る逮 捕 ・勾 留 が許 さ れ.
(23) 法科大学院論集. 第8号. あ る。 これ に よ って,追 起 訴 事 件 の審 判 に必 要 な期 間被 告 人 の身 柄 を拘 束 す る 根 拠 が 明確 に な る し,保 釈 に つ い て も全 て の起 訴 事 実 を基 礎 と した1回 的処 理 が 容 易 に な る。 他 方,余 罪 を 理 由 とす る 起 訴 後 勾 留 の 要 件 が欠 け て い る場 合 は,当 然,余 罪 に つ い て起 訴 後 勾 留 しな い こ とに な る。 問題 は,起 訴 後 勾 留 を 利 用 した余 罪 捜 査 が許 容 期 間 を超 え て行 わ れ た場 合 で あ るが,こ の場 合 は,期 間 の徒 過 を起 訴 後 勾 留 を否 定 す る方 向 の事 情 と して考 慮 す べ き で あ り,起 訴 後 勾 留 す る場 合 に は,そ の起 算 点 を 「起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査 が許 され る 期 間」 の終 期 と して,そ の後 の処 理 を す べ き で あ る56)。な お,余 罪 に つ い て起 訴 後 勾 留 しな い場 合 は,本 罪 の起 訴 後 勾 留 に 関 して,余 罪(追 起 訴 事 実)を 度 外 視 して勾 留 更 新57)・勾 留 取 消 ・保 釈 な ど の判 断 をす べ きで あ る。. (5)保 釈 と余 罪 一 囚 「追 起 訴 予 定 」 と い う検 察 官 の 表 明 が あ る と,事 実 上 保 釈 が 許 可 され に く く, そ の こ とが,起 訴 後 勾 留 を利 用 した余 罪 捜 査(余 罪 に つ い て逮 捕 ・勾 留 手 続 が と られ な い こ と)を 助 長 して い る こ とは,現 在 で も,否 定 で き な い と考 え られ る。 【事 例 】 にお いて も,裁 判 所 が 最 初 の 保 釈 請 求 を 却 下 した こ と に は,「2件 の追 起 訴 予 定 」 が影 響 した とみ られ る。 しか し,こ の よ うな実 情 は,早 急 に改 あ られ ね ば な らな い。. ①. 権 利 保 釈 の 除外 事 由 の判 断 に お け る余 罪 の考 慮. この点 に 関 して は,ま ず,権 利 保 釈 の 除外 事 由(法89条1号 5号)の. ・3号 ・4号 ・. 判 断 に つ い て,余 罪 を考 慮 で き るか とい う問題 が あ る。 これ に つ い て. 56)「 被 告 事 件 の審 判 の た め に必 要 な 期 間」 は 「起 訴 後 勾 留 を 利 用 し た余 罪 捜 査 が 許 され る期 間」 の 終 期 か ら起 算 し,そ の期 間 が経 過 す れ ば勾 留 の更 新 は許 さ れず,勾. 留 期 間 中 で あ れ ば勾 留 を取 り消. す べ き で あ る。 57)本. 罪 の 審 理 に必 要 と認 め られ る 期 間 を経 過 した 後 は,追 起 訴 事 実 の審 理 に さ ら に期 間 が 必 要 で. あ っ て も,起 訴 後 勾 留 の要 件 が欠 け る こ と に な る。. 45.
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