岡 山 医 誌 (1994) 106, 599∼611
免疫 ア レル ギー反 応 にお け る好 酸球 機 能 に関す る研 究
-反
応 好 酸 球 の 形 態 と免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ-の 検
討-岡山大学医学部第二内科学教室(指 導:木 村郁郎教 授)
中
東
廣
志
(平成6年2月23日 受稿)
Key words:
Reactive
eosinophil,
Discontinuous
Percoll
gradients,
IgG receptor,
IgE receptor,
Immune
SEM
緒 言 好 酸 球 が エ オ ジ ン で 染 色 さ れ る こ と を1879年 にErhlrichが 発 見 し て 以 来,末 梢 血 や 組 織 中 に 好 酸 球 の 増 加 す る疾 患 が 多 数 知 ら れ る よ う に な っ た.特 に 寄 生 虫 や 気 管 支 喘 息 な ど の ア レ ル ギ ー 疾 患 と の 関 連 が 注 目 さ れ て い た が ,好 酸 球 が こ れ ら の 病 態 に ど の よ うに 関 与 し て い る か は 十 分 解 明 さ れ て は い な か っ た. 1970年 代 に は,肥 満 細 胞 や 好 塩 基 球 か ら遊 離 さ れ る ヒ ス タ ミ ン, SRS-A, PAFあ る い は ヘ パ リ ン な ど の 化 学 伝 達 物 質 を好 酸 球 が 不 活 性 化 し,ア レ ル ギ ー 反 応 を 抑 制 す る役 割 を 担 っ て い る と考 え られ て い た1, 2, 3). そ の 後, Gleichら は 好 酸 球 の 細 胞 質 内 顆 粒 中 か ら分 離 し たmajor basic protein(MBP)が 気 管 支 粘 膜 の 細 胞 剥 離(detachment)や 融 解 (celllysis)な ど の 組 織 傷 害 作 用 を 有 す る こ と を 示 した4, 5).さらにEPO6)(eosinophil peroxidase) やECP7)(eosinophil cationic protein)な ど に も 同 様 の 物 理 活 性 作 用 の あ る こ とや,好 酸 球 に は 正 比 重 と低 比 重 とい うheterogeneityが 存 在 し,好 酸 球 の 増 加 す る病 態 ほ ど 低 比 重 好 酸 球 が 増 加 して お り,し か も 組 織 傷 害 作 用 が 強 い こ と も報 告 し て い る8, 9). 以 上 の 如 く,近 年 ア レ ル ギ ー 反 応 に 際 し て 従 来 か ら の 好 酸 球 の 役 割 が 見 直 さ れ,組 織 傷 害 性 や ア レ ル ギ ー 性 炎 症 反 応 の 増 幅 作 用 な ど,好 酸 球 機 能 の 多 面 性 に 関 心 が 向 け られ て い る.そ こ で 著 者 は,ア レ ル ギ ー 反 応 の 場 で あ る喀 痰,気 管 支 肺 胞 洗 浄 液(bronchoalveolar lavage fluid:
BALF)あ る いは 肺 組 織 へ 出 現 す る好 酸 球 の 免 疫 学 的 背 景 と そ れ ら の 病 態 と の 関 連 性 を解 明 す る 目 的 で,ま ず 末 梢 血 よ り分 離 した 好 酸 球 に 各 種 刺 激 を 加 え て そ の 反 応 性 を形 態 学 的 に 評 価 す る 方 法 を 考 案 し た.さ ら に,か か る 指 標 と各 種 病 態 並 び に 好 酸 球 膜 表 面 上 の 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ ター との 関 連 性 に つ い て 検 討 し た. 対 象 と 方 法 1.対 象 対 象 に は,岡 山 大 学 第2内 科 に 入 院 あ る い は 通 院 中 の 気 管 支 喘 息35例(25-65歳,平 均48± 13歳,男14例,女21例)とpulmonary infiltration with eosinophilia syndrome(PIE症 候 群)7
例(33-60歳,平 均45±11歳,男3例,女4例) 及 び 対 照 と し て ア レ ル ギー 性 疾 患 を有 し て い な い 健 常 人15例(27-35歳, 31±3歳,男13例, 女2例)を 選 ん だ.気 管 支 喘 息 の 病 型 別 内 訳 は ア トピ ー 型13例,非 ア ト ピー 型22例 で あ り,重 症 度 別 で は 軽 ・中 等 症22例,重 症13例 で そ の う ち ス テ ロ イ ド依 存 性(プ レ ドニ ゾ ロ ン 換 算5mg/ 日以 上 を1年 間 以 上 服 用)の 難 治 性 が5例 で あ っ た.な お,そ の 病 型 分 類 は, ① 若 年 発 症, ② 他 の ア レ ル ギ ー 性 疾 患 の 合 併, ③ 血 清 総IgE (RIST)が 高 値(≧500U/ml), ④ 抗 原 特 異 的 IgG RAST Scoreが2以 上, ⑤ 即 時 型 皮 内 反 応 陽 性(真 菌 類 の み 陽 性 の 場 合 を 除 く)の5項 目 の う ち, 3項 目以 上 を 満 た す もの を ア ト ピー 型 と し,そ れ 以 外 を 非 ア ト ピー 型 と し た.ま た, 重 症 度 分 類 は ア レ ル ギ ー 学 会 の 分 類 に 従 っ た. 599
図1 末梢 血好 酸球 の分離法 と反応好酸球 の観察手
順
2.方 法 1)末 梢 血 好 酸 球 の 分 離 法 好 酸 球 の 分 離 は, Robertsら の 方 法10)に 準 じ てPercollに よ る 比 重 勾 配 遠 心 法 を用 い た(図 1).な お こ の 際,比 重 が 近 似 し 同 一 分 画 に 存 在 す る 好 酸 球 と好 中 球 を 分 離 す る た め に,好 中球 のchemotactic peptideで あ るFMLP(f-Met-Leu-Phe)で 刺 激 し て そ の 比 重 を低 下 さ せ た.す な わ ち,採 血 し たEDTA加 末 梢 血 にFMLPを 加 え て37℃, 15分 間incubateし た.次 にPercoll(Pharmacia Fine Chemicals)原 液 をPBSで 希 釈 作 成 し た65%と75%のPercollの 層 を15ml の 試 験 管 に 作 成 し,そ の 上 層 にFMLPで 反 応 させ た 全 血5mlを 重 層 し て, 22℃, 1,500回 転, 25分 間 遠 心 し,図1に 示 す2層(I, II層)の 白 血 球 分 画 を 得 た.好 酸 球 とほ ぼ 比 重 の 等 しい 好 中 球 はFMLPと の 反 応 後 第1層 に 移 動 し,
図2 好 酸球 の形態変化(反 応好酸球)
左 上の球状の対照好 酸球 と比較 し,反応好酸球 は洋梨状や棒状 の形態変化,あ るいは胞体 の一部が偽 足様
に突出 した形 態変化 を示 した
免 疫 ア レル ギー 反 応 に お け る反 応 好酸 球 の 役割
601
第II層 は 大 半 が 好 酸 球 で 占 め られ て い た.従 っ て 以 下 第II層 を 好 酸 球 分 画 と し て使 用 し た. 分 離 した 好 酸 球 は,好 塩 基 球 ・好 酸 球 同 時 直 接 算 定 液11)で染 色 しFuchs-Rosenthal計 算 盤 を 用 い て 白 血 球 数 と好 酸 球 数 を 算 定 し た.な お, 好 塩 基 球 ・好 酸 球 同 時 直 接 算 定 液 で 染 色 した 好 酸 球 は 黄 緑 色 に 染 色 さ れ,他 の 白 血 球 細 胞 と の 鑑 別 は 容 易 で あ っ た. 2)好 酸 球 の 形 態 変 化 の 観 察 分 離 した 好 酸 球 を1×104/mlに 調 整 し,抗 ヒ 卜 免 疫 グ ロ ブ リ ン(抗 ヒ トIgGあ る い は 抗 ヒ トIgE 家 兎 血 清; Hoechst社 製,以 下 抗IgG,抗IgE と略 す)100倍 希 釈 液0.1mlお よ びCaI(Calcium ionophore, Calbiochem-Behring)を 添 加 し て, 37℃, 15分 間incubateし た 後,好 塩 基 球 ・好 酸 球 同 時 直 接 算 定 液 で 染 色 し,好 酸 球 の 形 態 変 化 を光 学 顕 微 鏡(×400)で 観 察 し た. 各 種 刺 激 後 の 好 酸 球 は,図2の 如 く対 照 の 球 状 を呈 す る 好 酸 球 に 比 し,明 ら か に 洋 梨 状 や 棒 状 の 変 化,あ る い は 胞 体 の 一 部 が 偽 足 様 に 突 出 し た形 態 変 化 を示 し,細 胞 膜 の 一 部 も 不 明 瞭 と な っ て い る 場 合 が 多 か っ た.そ こ で 長 短 径 比 が 図3 免 疫 走 査 型 電 顕 法 に よる好 酸 球 膜 表 面 上 のIg レセ プ ター の観 察 手順 1.3以 上 の 洋 梨 状 や 棒 状 の 形 態 変 化 を示 した もの, お よ び 球 状 の 形 態 が 保 た れ て い て も胞 体 の 一 部 が 偽 足 様 に 突 出 し た り,細 胞 膜 が 不 明 瞭 に な っ て い る もの を “反 応 好 酸 球 ” と判 定 し,以 下 そ の 出 現 率 に つ い て 検 討 し た. 3)免 疫 走 査 型 電 顕 法 に よ る 好 酸 球 の 観 察 上 記 の 方 法 で 分 離 した 好 酸 球 浮 遊 液 に,一 次 抗 体 を 反 応 後 教 室 の 宗 田12)が考 案 し た 方 法 に 準 じ て 作 成 し た 二 次 抗 体 結 合 カ ル ボ キ シ ル 基 結 合 ラ テ ッ ク ス 粒 子(Dow Chemical社 製)を 反 応 させ る 免 疫 走 査 電 顕 法 を用 い て,好 酸 球 の 膜 表 面 上 の 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー と反 応 好 酸 球 の 出 現 態 度 の 関 連 性 を検 討 し た(図3).す な わ ち,分 離 し た 好 酸 球 に 抗IgGま た は 抗IgE 0.1 mlを 添 加 し, 37℃ に て15分 間 反 応 させ た.な お, 対 照 に は 非 感 作 家 兎 血 清0.1mlを 使 用 し た.こ の 反 応 浮 遊 液 を リ ン 酸 緩 衝 食 塩 水(PBS)に て 洗 滌 後, 2% paraformaldehydeを 等 量 添 加 して, 4℃ に て1時 間 固定 し, PBSで 洗 條 遠 沈 後, 0.2% bovine serum albumin(BSA)加PBSに
再 浮 遊 し, 0.5mlに 調 整 し た.こ れ に 二 次 抗 体 と し てimmunolatex液(抗 家 兎IgG山 羊 血 清 結 合 ラ テ ッ ク ス 粒 子)0.1mlを 添 加 し, 37℃ で30分 間 反 応 させ た. 続 い て 得 ら れ た 好 酸 球 浮 遊 液 を ゆ る や か に pipettingし,ポ リカ チ オ ン 膜 処 理 ガ ラ ス 板 上 に そ の1滴 を滴 下 して 細 胞 を 付 着 さ せ た.そ の 後, 2.5% glutaraldehyde-0.1M cacodylate buffer に て4℃, 15分 間 固 定 を 行 っ た.こ の ガ ラ ス 板 上 の 好 酸 球 は,好 塩 基 球 ・好 酸 球 同 時 直 接 算 定 液 で染 色 後,光 学 顕 微 鏡 で 好 酸 球 を 同 定 し そ の 位 置 を マ ッ ピ ン グ し た.次 に, 0.1M cacodylate bufferで 洗 滌 し て か ら,上 昇 ア ル コー ル 系 列 で 各5分 間 脱 水 後,酢 酸 イ ソ ア ル ミに よ る 置 換 を 数 分 間 施 し,液 体 炭 酸 ガ ス に て 臨 界 点 乾 燥 を行 った.さ らに,白 金 パ ラ ジウム で蒸 着 後, JEM-T330 型 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 を用 い て マ ッ ピ ン グ に 従 っ て 好 酸 球 を 観 察 した.好 酸 球 表 面 の 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー の 評 価 は,免 疫 走 査 電 顕 写 真 上 の 好 酸 球 膜 表 面 に 結 合 し た ラ テ ッ ク ス 粒 子 の 数 を 各 症 例 と も20個 の 好 酸 球 に つ い て 計 測 し,そ の 平 均 値 を 免 疫 グ ロ ブ リ ン レセ プ ター 数 と した.
図4 健 常 人 の 反 応 好 酸 球 出 現 率 反 応 好 酸 球 は,対 照 に 比 し抗IgG,抗IgEお よ びCaIの 順 に 有 意 に 高 い 出 現率 を示 し,こ れ らの刺 激 の 中で は抗IgGで 最 も高 い反 応 性 を示 した
図5 好酸球 の反応性に及ぼすFMLPの
影 響
FMLP添
加 の有無 で反応好 酸球 出現率 に差
はなかった
結 果 1.末 梢 血 好 酸 球 の 分 離 健 常 人 及 び 気 管 支 喘 息 な ど の ア レ ル ギ ー 疾 患 患 者 末 梢 血 よ りPercoll比 重 勾 配 遠 心 法 を用 い て 分 離 さ れ た 好 酸 球(図1の 第II層)のpurity は,平 均79.4±18.4%で あ っ た.末 梢 血 好 酸 球 増 多 の 有 無 に よ っ て 検 討 す る と,好 酸 球 数 が500/ μl以上 の 症 例 で は90.6±8.2%,以 下 の 症 例 で は 68.2±18.9%で あ っ た.な お,末 梢 血 好 酸 球 数 図6 好 酸 球 の 反 応 性 に 及 ぼ すCaイ オ ン の影 響 反 応好 酸球 出 現 率 はCaイ オ ン依 存 性 で あ る こ とが 示 唆 され たと回収率 の 間 に は一 定 の相 関 関 係 は み られ なか
った.
2.健
常 人 に おけ る好 酸球 の反 応 性 に 関す る検
討
(1)形
態 変 化
各 種 刺 激 の至 適 濃 度 を決定 す る にあ た っ て,
抗IgGとCaI刺
激 では,添 加 した抗 原 量 が 多
い場 合 に は 脱顆 粒 や 脱核 な どの形 態 変 化 が み ら
れ,特 にCaI刺
激 で は好 酸球 の形 態 を とどめ な
い程 の 形 態 変化 が高 率 にみ られ た.一 方,抗IgE
は,濃 度 差 に よ る形 態 変 化 は 少 な か っ た.そ こ
で,今 回 は,図2に
示 した よ うな洋 梨 状 や棒 状
の変 化,あ
るい は 胞体 の一 部 が偽 足様 に突 出 し
た好 酸 球 の 形 態 変化 に とど ま る濃 度 を至 適 濃 度
と した.本 実 験 で は,抗IgG,抗IgEに
つ いて
は最 終 濃 度 が100倍 希釈, CaIは1μg/mlを
至 適
濃度 と した.
まず,抗IgG,抗IgE及
びCaIを
添加 した
際 の 反応 好 酸 球 の 出 現率 を健 常 人 にお いて検 討
した.そ の結 果,図4に
示 す 如 く反応 好 酸球 の
出 現率 は,抗IgG添
加 群 で は14.9±2.6%,抗
IgE添
加 群 で12.3±1.8%及
びCaI添
加 群 で
免 疫 ア レル ギー 反 応 に お け る反 応好 酸 球 の役 割
603
11.8±3.1%と 対 照 の6.3±2.7%に 比 しそ れ ぞれ 有 意 に 高 か っ た(p<0.01).ま た,そ れ らの 中 で は 抗IgEやCaI群 に 比 し,抗IgG群 が 有 意 に 高 か っ た(p<0.05). つ い で 好 酸 球 の 反 応 性 に 及 ぼ すFMLPの 影 響 を 検 討 し た.そ の 結 果,図5の 如 く生 理 食 塩 水 添 加 群,抗IgG刺 激 群 及 び 抗IgE刺 激 群 の い ず れ の 刺 激 で も, FMLP添 加 の 有 無 に よ る 反 応 好 酸 球 の 出 現 率 に 差 は 認 め られ な か っ た.し た が っ て 本 実 験 系 で はFMLPの 影 響 は 除 外 で き る こ とが 判 明 し た. 次 に 反 応 好 酸 球 の 出 現 率 がCaイ オ ン依 存 性 か ど うか を 検 討 し た と こ ろ,図6の 如 くCaIに 対 す る反 応 好 酸 球 出 現 率 はPBSで は9.4±3.4 %で あ っ た が, Ca2+を 含 むRPMIで は14.2±2.0 %と 推 計 学 的 に 有 意 に 高 い 反 応 性 を 認 め た(p< 0.01).以 上 の 結 果 か らCaイ オ ン 依 存 性 の 反 応 で あ る こ とが 示 唆 さ れ た. ② 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ ター 反 応 好 酸 球 膜 表 面 上 の 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー を免 疫 走 査 電 顕 写 真 で観 察 し た と こ ろ,図 7の 如 く に 結 合 し たimmunolatex粒 子 は 球 形 に観 察 さ れ し か も形 状 も均 一 で あ り,好 酸 球 の 膜 表 面 の 微 細 構 造 と容 易 に 識 別 可 能 で あ っ た. か か る健 常 人 の 好 酸 球 膜 表 面IgGレ セ プ タ ー に 図7 Immunolatex粒 子 の結 合 した好 酸 球(免 疫 走 査 型電 顕 法) ラ テ ッ クス 粒 子 の 形 状 は均 一 で,好 酸 球 膜 表 面 上 の微 細 構 造 と容 易 に 識 別 可 能 で あ る 結 合 し た ラ テ ッ ク ス 数 は,図8に 示 す 如 く対 照 と し て一 次 抗 体 を使 用 し な か っ た場 合 の0.8個 に 比 し て12.8個 と有 意 に 多 く,ま たIgEレ セ プ タ ー の そ れ も5 .6個 と同様 の結 果 であ った. 3.ア レ ル ギ ー 疾 患 に お け る好 酸 球 の 反 応 性 に 関 す る検 討 (1)形 態 変 化 好 酸 球 増 多 症 を示 す ア レ ル ギ ー 疾 患 患 者 の 抗 IgG,抗IgEに 対 す る 好 酸 球 の 反 応 性 を前 項 の 健 常 人 の 結 果 と対 比 して 検 討 し た.そ の 結 果, 図9の 如 く抗IgG刺 激 に 対 す る 反 応 好 酸 球 の 出 現 率 は,気 管 支 喘 息(p<0.01), PIE症 候 群(p< 0.01)と もに 健 常 人 に 比 し て 有 意 に 高 い 反 応 性 を 示 し,ま た 抗IgE刺 激 で も,抗IgGの 成 績 と同 様 健 常 人 に 比 して 高 い 反 応 性 を示 した(p< 0.01, p<0.01). さ ら に 疾 患 別 に 検 討 す る と,抗IgG刺 激 に 対 してPIE症 候 群 は 気 管 支 喘 息 よ り も高 い 反 応 性 を有 す る傾 向 を 認 め た が,抗IgE刺 激 下 で はPIE 症 候 群 は 気 管 支 喘 息 よ り も有 意 に 高 い 反 応 性 を 図8 健 常 人の 好 酸球 膜 表 面 上 のIgレ セプ タ ー IgGとIgEレ セ プ ター数 は対 照 に比 し有 意 に 多 く, IgEよ り もIgGレ セ プ ター が 多か っ た (Igレ セ プ タ ー 数 は ラ テ ッ クス粒 子 の結 合 し た好 酸 球20個 を計 測 し,そ の 平 均 値 と した)★: 健 常 人(n=15), *: p<0.01(対 健 常 人)
図9
気管支喘 息及 び
PIE症 候 群の 反応好酸球 出現率
反応好酸球 出現率 は, 健常 人に比 し気管 支喘息及び
PIE症 候 群 で 有 意 に 高 い 反 応 性 を示 し た★: 健 常 人(n=6), *: p<0.05(対 健 常 人), **: p<0.01(対 健 常 人)
図10
気管支 喘息及び
PIE症 候 群 のIgレ セ プ タ ー健常 人に比 し気管支 喘息
及びPIE症 候 群 は, IgG, IgEレ セ プ タ ー と も 有 意 に 多 く, PIE症 候 群 と気 管免疫 ア レル ギー 反 応 に おけ る反 応好 酸球 の役 割
605
(*: p<0.01, **: p<0.05) 図11 気 管 支 喘 息,病 型 別 で の検 討
抗IgG,抗IgEに よ る反 応 好 酸 球 出現 率 は ア トピー 型 が 非 ア トピ-型 喘 息 に比 し有 意 に 高 か った
図12 反 応 好 酸 球 とIgレ セ プ タ ー の 関 連 性
抗IgG刺 激 で 反 応 好 酸 球 とIgレ セ プ ター の 間 にr=0.73,抗IgE刺 激 でr=0.68の 正 相 関 が あ り,好 酸 球 の 形 態 変 化 はIgレ セ プ ター の密 度 に依 存 して い る こ とが推 測 され た 示 し た(p<0.01).ま た 気 管 支 喘 息 を 病 型 別 に 比 較 し た と こ ろ,図11の 如 くア トピ ー 型 喘 息(13 例 中9例 が 血 清IgE 1,000U/ml以 上)は,非 ア 卜ピー 型 に 比 して 抗IgG(p<0.05)と 抗IgE(p< 0.01)で と も に 有 意 に 高 い 反 応 好 酸 球 出 現 率 を 認 め た. ② 免 疫 グ ロ ブ リン レ セ プ タ ー 同 様 に 免 疫 走 査 電 顕 に よ る 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー に つ い て 検 討 し た と こ ろ,図10の 如 く IgGレ セ プ ター の 局 在 を示 す ラ テ ッ ク ス 粒 子 数 は 健 常 人 に 比 し,気 管 支 喘 息(p<0.05), PIE症 候 群(p<0.05)と も有 意 に 多 く,し か も 気 管 支 喘 息 よ りPIE症 候 群 の 方 が 有 意 に 多 か っ た(p< 0.05).ま た, IgEレ セ プ タ ー も健 常 人 に 比 し, 気 管 支 喘 息(p<0.01)お よ びPIE症 候 群(p< 0.01)と も 有 意 に 多 か っ た が,両 疾 患 群 間 に は
有 意 差 は み ら れ な か っ た. さ ら に 気 管 支 喘 息 の 病 型 別 検 討(図11)で は, IgG及 びIgEレ セ プ タ ー と も に ア トピ ー 型,非 ア ト ピー 型 喘 息 の 間 に 有 意 差 は み ら れ なか っ た. 4.反 応 好 酸 球 出 現 率 と免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ ター の 関 連 性 免 疫 グ ロ ブ リ ン刺 激 に 対 す る 反 応 好 酸 球 出 現 率 と免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー の 相 関 を 検 討 し た と こ ろ,図12の 如 く抗IgG刺 激 で はr=0.73 の 正 相 関 を 認 め,ま た 抗IgE刺 激 で はr=0.68 の 正 相 関 が あ っ た.従 っ て,好 酸 球 の 形 態 変 化 は,免 疫 グ ロ ブ リン レ セ プ タ ー の 密 度 に 依 存 し て い る こ とが 推 測 さ れ た. 抗IgG及 び 抗IgEで 刺 激 し た 際 の 反 応 好 酸 球 出 現 率 を,健 常 人,気 管 支 喘 息 及 びPIE症 候 群 で 対 比 す る と(図4, 9),健 常 人 の 抗IgG及 び 抗IgE刺 激 で は,そ れ ぞ れ14.5±2.5%と 12.3±1.8%で あ り,気 管 支 喘 息 で は22.8±10.0 %と16.5%±5.0%で, PIE症 候 群 で は29.1±7.4 %と25.0±4.3%で あ っ た.従 っ て い ず れ の 病 態 で も 反 応 好 酸 球 は,抗IgEよ り も抗IgG刺 激 で よ り高 率 に 出 現 し た. 同 様 に 抗IgG及 び 抗IgE刺 激 時 の 反 応 好 酸 球 の 免 疫 グ ロ ブ リン レ セ プ タ ー 数 を 対 比 す る と (図8, 10),健 常 人 で は そ れ ぞ れ7.1±0.8個 と 5.1±1.0個,気 管 支 喘 息 で は12.9±7.4個 と 8.1±4.0個,及 びPIE症 候 群 で は21.1±11.4個 と10.6±3.0個 で あ り,い ず れ も 反 応 好 酸 球 の 高 率 出 現 と共 にIgEレ セ プ タ ー よ り もIgGレ セ プ ター の 発 現 が よ り 多 く認 め ら れ た. 考 察 ア レ ル ギ ー 疾 患 の 病 態 に お い て 好 酸 球 が 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ とは 従 来 か ら周 知 の 事 実 で あ る が,そ の 免 疫 学 的 機 序 に つ い て は 不 明 な 点 が 多 く残 さ れ て い た.し か し近 年,好 酸 球 の 顆 粒 蛋 白 で あ るMBP(major basic protein) やEPO(eosinophil peroxidase), ECP(eosino phil cationic protein)等 に 組 織 傷 害 性 の あ る こ
と が 報 告 さ れ4, 5, 6, 7),ま た 低 比 重 の 好 酸 球 ほ ど組 織 傷 害 性 等 の 好 酸 球 活 性 が 高 い こ と な ど 好 酸 球 のheterogeneityが 注 目 さ れ て い る8, 9).そ こ で 著 者 は,好 酸 球 と ア レ ル ギ ー 疾 患 の 病 態 と の 関
連 性 を解 明 す る 目的 で,末 梢 血 よ り分 離 した好
酸 球 に免 疫学 的刺 激 を加 えて,そ の 反 応性 を形
態学 的 に 評価 す る と と もに,好 酸球 膜 表 面上 の
免 疫 グ ロブ リンレ セプ ター との 関 連性 につ い て
検 討 した.そ の結 果,好 酸球 は 免 疫刺 激 に対 し
て洋 梨 状 や棒 状 の変 化 及 び 胞体 の 一部 が偽 足様
に突 出す るな どの形 態 変 化(反 応 好酸 球)を 示
す こ とが 判 明 し,さ ら に反 応 好 酸球 出現 率 と免
疫 グ ロブ リン レセプ ター 数 に は正 相 関 が認 め ら
れ た.ま た 反応 好 酸 球 出現率 と免 疫 グ ロ ブ リン
レセ プ ター 数 は,健 常 人に比 し気 管 支 喘 息やPIE
症 候 群 で 高値 を示 し,か つIgEよ
りもIgGの
関与 が 強 い こ とが 示 唆 され た.こ れ らの成 績 か
ら反 応 好 酸球 は,好 酸 球 増 多 を示 す病 態解 析 の
有 用 な指 標 に な り うる と考 え られ た.
末梢 血 中 に存 在 す る好 酸 球 は,通 常 白血球 分
類 で数%以 下 を 占め るにす ぎないが, in vitroの
実 験 に供 す る ため に は この数 少 な い好 酸球 を高
純 度 で 回収 す る必 要 が あ る.そ の 目的 で従 来 か
ら,主 と してMetrizamideやPercollに
よる
比 重 勾 配遠 心 法 が 用 い られ て い た13,
14)が,
Metr
izamideに
はPHや
浸透 圧 の点 で細 胞傷 害 作 用
が 懸 念 され る.ま たPercollは
細 胞分 離用 に広
く用 い られ て い るが,好 酸球 と好 中球 の 比重 が
近 似 す るため 好 酸 球 増 多 が な い場 合 に は 高純 度
に 回収 す るこ とが 極 め て 難 しい とい う問題 点が
残 されて い る10,
15).か
か る難点 を克服 す るため に,
Robertsら10)は,好
中球 に対 す るchemotactic
peptideで あ るFMLPを
使 用 し,好 中球 を低 比
重 化 す る こ とに よ り,末 梢 血好 酸 球 数 が3%以
下 の健 常 者 か ら90%以 上 のpurityで 好 酸球 を回
収 で きる簡 易 法 を考案 した.その後Yazdanbakh
shら は, FMLPに
は 好 中球 に比 し軽 微 では あ
るが 好 酸球 活性 化 作 用 のあ るこ とを報 告16)し注 意
を喚 起 し たが, FMLPが
ご く低 濃 度 で あれ ば健
常 者 の 好 酸球 を活 性 化 しない との 報告 もみ られ
る17).本研 究 では,好 酸 球 増 多の ない健 常 人 を対
象 にRobertsら
の 方法 に準 じて,好 酸球 の分 離
を行 い平 均80%の 純 度 が 得 られ,ま た 好 酸球 増
多症 例 で は90%と い ず れ もか な りよい 成 績 で あ
っ た.さ
らに 好 酸球 形 態 に及 ぼ すFMLPの
影
響 は今 回 の条 件 下 で は 認め られ なか っ た.
ア レル ギー 反 応 に お け る顆 粒 球 の 態 度 につ い
免 疫 ア レル ギー 反応 に お け る反応 好 酸球 の役 割
607
て は 教 室 の 木 村 ら18-21)が報 告 し て い る 如 く,喘 息 発 作 で 増 加 した 末 梢 血 好 塩 基 球 は19)アレル ギー 反 応 局 所 へ と遊 出 し20),さ ら に 抗 原 刺 激 に よ っ て 好 塩 基 球 は そ の 運 動 性 が 亢 進 し洋 梨 状 な ど の 形 態 変 化 を 呈 す る こ とが 明 ら か に さ れ て い る21).そ こ で 今 回,教 室 で の こ れ ら の 成 果 を 基 に 気 管 支 喘 息、等 の 好 酸 球 増 多 を 示 す 病 態 に お け る 好 酸 球 の 関 与 を そ の 形 態 変 化 と い う観 点 か ら検 討 し た と こ ろ,好 酸 球 も好 塩 基 球 と 同 様,各 種 の 刺 激 でCa2+依 存 性 に 形 態 変 化 を 示 す こ とが 判 明 し た.か か る 好 酸 球 の 形 態 変 化 と細 胞 機 能 の 関 連 に つ い て の 近 年 の 知 見 と して は,低 比 重 と正 比 重 好 酸 球 と い うheterogeneityの 存 在 が 注 目 さ れ,形 態 学 的,生 理 学 的 な役 割 や 生 物 学 的 活 性 に つ い て の 報 告 が 集 積 され て い る8, 9, 22, 23).例 え ば, immune complexやCaIで 刺 激 さ れ た 好 酸 球 は 正 比 重 か ら 低 比 重 と な る が,そ の 際 の 形 態 的 特 徴 の ひ とつ と し て,特 異 顆 粒 の 変 形 とcentral coreの 不 明 瞭 化(granulolysis),さ ら に 脱 顆 粒 に と も な い 空 胞 化 す る こ と な ど が 透 過 型 電 顕 で 観 察 さ れ て い る24).ま た 低 比 重 好 酸 球 の 増 加 は, 好 酸 球 遊 走 能 な い し は 末 梢 血 好 酸 球 数 増 多 と の 間 に 相 関 が あ る こ と も報 告 さ れ25),そ の 他 に も 好 酸 球 活 性 化 の 指 標 と し て,活 性 酸 素 の 産 生 亢 進26),細 胞 膜 表 面 免 疫 グ ロ ブ リン レ セ プ タ ー の 発 現 増 強27),細 胞 傷 害 作 用3, 4),粘 着 能 やLTC4産 生 能 の 亢 進28)な ど が 報 告 され て い る.か か る低 比 重 好 酸 球 と今 回 著 者 の 観 察 した 反 応 好 酸 球 に は, か な り共 通 点 の あ る こ と が 判 明 し た. そ の 根 拠 の 第1は,抗IgG,抗IgE及 びCaI で 刺 激 し た 際 に,健 常 人 で も有 意 に 高 い 反 応 好 酸 球 の 出 現 率 が 認 め ら れ た が,ま たPIE症 候 群 や 気 管 支 喘 息 で は さ ら に 高 率 に 出 現 し,そ の 形 態 も遊 走 能 の 亢 進 と 細 胞 内 構 造 の 変 化 を伴 い, さ ら に 今 回 は 呈 示 し な か っ た がcentral coreの 不 明 瞭 化 と脱 顆 粒 の 電 顕 所 見 を 認 め る な ど,反 応 好 酸 球 が 低 比 重 化 して い る こ と を 想 定 させ た. 第2の 根 拠 として は,ヒ ト好 酸 球 膜 表 面 のIgG, IgEあ る い は 補 体C3bに 結 合 す る レ セ プ タ ー は 低 比 重 好 酸 球 で は 増 加 し,か つ 好 酸 球 活 性 化 の 一 つ の 指 標 と な っ て い る29, 30)が,今 回得 られ た 反 応 好 酸 球 も膜 表 面IgG(Fcγ R), IgEレ セ プ タ ー(Fcε R)が 増 加 し て お り,低 比 重好 酸 球 を 示 唆 す る も の と考 え ら れ る.さ ら にIgEレ セ プ ター に 関 し て は,肥 満 細 胞 や 好 塩 基 球 に 発 現 し て い るFcε RIと リン パ 球 や 単 球,好 酸 球 に 発 現 す るFcε RIIの2種 類 が あ り,前 者 はIgEと の 親 和 性 が 高 く,後 者 は 低 い こ とが 知 ら れ て い る31). Capronら30)は 血 清IgE値 の 高 い 症 例 で は 好 酸 球 のIgEレ セ プ タ ー も 増 加 して い る こ と を 報 告 し て い る.か か る 観 点 か ら,今 回 の 著 者 の 成 績 を み る と,反 応 好 酸 球 出 現 率 と 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー 数 は 正 の 相 関 を 示 し,か つ 血 清IgE値 の 高 い ア ト ピー 型 喘 息 で 有 意 に 高 い 反 応 好 酸 球 出 現 率 を 認 め て い る.す な わ ち,反 応 好 酸 球 は レ セ プ タ ー と い う観 点 か ら も, Capron の 低 比 重 好 酸 球 の 成 績 と共 通 点 が あ る も の と考 え られ た.今 回,好 酸球 分 離 の 前処 置 で使 用 したFMLP
は, IgGレ セプ ター を増 加 させ る との 報告 が あ
り33),いさ さか の 問題 点 を残 して い る.し か し共
同研 究 者 の岸 本32)は,
FMLPの
関与 しない方 法,
す なわちMetrizamide比
重 勾 配 遠心 法 を用 いて
好酸 球 を正 比 重か ら低 比 重 に5段 階 に分 別 し,
免疫 走査 電 顕法 で結 合 した ラ テ ッ クス数 を半定
量 した結 果,比 重 の低 い好 酸球 ほ どIgGレ セ プ
ター が 多 い こ と を報 告 して お り,本 研 究 での 問
題 点 を補 完 して い るもの と考 え られ る.
以上,好 酸 球 の形 態変 化 に伴 うIgEやIgGレ
セ プ ター の増加 とア レ ル ギー疾 患 病 態 の 中 での
好 酸球 の役 割 に つ い て は,今 回 の検 討 で は 十分
に は 明 らか に し得 なか っ た.し か し, IgEレ セ
プ ター は好 塩 基球 あ る いは 肥 満細 胞 の それ と比
べ 親 和性 が低 く,ま たIgGレ
セ プ ター を介 す る
反 応 好酸 球 出現率 と免 疫 グ ロブ リン レセ プ ター
数 はIgEを
介 す る反 応 よ り も優 位 で あ る点 な ど
か ら,低 比重 好 酸球 が 多 い よ うな好 酸 球 増 多 を
示 す 疾 患 で は, IgEの み な らずIgGレ
セプ ター
が その発 症 病 態 に 関 与 して い る こ とが想 定 され
た.従 って,今 後 は ア レル ギー 疾 患病 態 下 での
反応 好 酸球 の 出現 態 度や 好 酸 球 膜 表面 レ セプ タ
ー
,さ らに は好 酸球 活性 化 に伴 う化学 伝 達 物 質
放 出態 度 との関 連 を追 求す る必 要 が あ ろ う.ま
た,今 回 著者 が開 発 した 方法 は ア レル ギー 反応
の指 標 として,基 礎 的 並 び に臨 床 的 に も今 後 有
用 な手段 に な る もの と考 え られ る.
結 論 ア レ ル ギ ー 疾 患 病 態 に お け る好 酸 球 の 役 割 を 解 明 す る 目 的 で, Percoll比 重 勾 配 遠 心 法 を 用 い て,健 常 人,気 管 支 喘 息 お よ びPIE症 候 群 の 末 梢 血 好 酸 球 を分 離 し,免 疫 反 応 下 で の 形 態 変 化 並 び に,免 疫 走 査 電 顕 法 で 好 酸 球 膜 表 面 の 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー を検 討 し,以 下 の 結 果 を 得 た. 1)抗IgG,抗IgE及 びCaIの 刺 激 に よ り, 好 酸 球 は 洋 梨 状 や 棒 状 の 変 化 あ る い は 胞 体 の 一 部 が 偽 足 様 に 突 出 す る な ど の 形 態 変 化(反 応 好 酸 球)を 示 した. 2)反 応 好 酸 球 は,対 照 に比 し抗IgG,抗IgE, CaIの 順 に そ れ ぞ れ 有 意 に 高 い 出 現 率 を示 し(そ れ ぞ れp<0.01),そ の 反 応 はCa2+依 存 性 で, FMLPの 影 響 は 認 め ら れ な か っ た. 3)好 酸 球 膜 表 面 上 のIgGとIgEレ セ プ タ ー 数 は,対 照 に 比 し有 意 に 多 く,し か もIgEよ り もIgGレ セ プ タ ー が 多 か っ た. 4)抗IgGあ る い は 抗IgEで 刺 激 し た 際 の 反 応 好 酸 球 出 現 率 と 免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ ター 数 に は,そ れ ぞ れ 正 相 関 が 認 め られ た(r=0.73, r=0.68). 5)抗IgG,抗IgEで 刺 激 時 の 反 応 好 酸 球 出 現 率 は,健 常 人 に 比 しPIE症 候 群 と 気 管 支 喘 息 で 有 意 に 高 く(p<0.01),ま たIgG, IgEレ セ プ ター 数 に お い て も 同 様 に 有 意 差 を 認 め た(p< 0.05). 6)反 応 好 酸 球 出 現 率 と免 疫 グ ロ ブ リ ン レ セ プ タ ー 数 は,抗IgEよ り も抗IgG刺 激 後 に 高 値 を示 し た. 以 上 の 結 果 か ら,反 応 好 酸 球 は,好 酸 球 増 多 を示 す 病 態 の 解 明 に 有 用 な 指 標 と考 え られ た. 稿 を終 え る に あ た り,終 始 御 指 導御 校 閲 を賜 っ た 恩 師 木 村 郁 郎 教 授 に 深 甚 の 謝 意 を表 す と共 に,直 接 御 指 導 戴 い た 高橋 清 講 師 に 深 謝 い た し ます. (本論 文 の 要 旨 は 第36回 日本 ア レ ル ギー 学 会 総 会 な らび に 第50回 日本 血 液 学 会 にて 発 表 した)
文
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