VFAによるGH分泌抑制機構の細胞生理学および分子
生物学的解明
著者
加藤 和雄
VFAによるGH分泌抑制機構の細胞生理学
および分子生物学的解明
課題番号
09460 1 22平成9年-10年度 科学研究費補助金(基盤研究B)
研究成果報告書
平成11年3月
研究代表者 加藤和雄
(東北大学農学部 助教授)
はしがき
前胃や後腸で産生される揮発性低級脂肪酸(VFA)もしくは短鎖脂肪酸
(Short-chain fatty acids; SCFA)は、反窮動物においては維持エネルギー のおおよそ60%を賄ってい首主要な栄養素であるばかりでなく、種々の薬理学 的あるいは生理学的作用を持つ(Cumings eta1., 1995)。 反嚢動物では、種の特異性として古くから知られている内分泌機能上の特徴 として、脂肪細胞などでのインスリン低反応性が知られている(佐々木、 1994)。 最近、この動物種で、 VFAが豚内分泌および外分泌腺を刺激し、インスリンや グルカゴンなどの勝島ホルモンや消化液の分泌を増大ざせることが知られてき
た(Sasahi zmd Takahashi, 1983; K如ohand Tsuda, 1984; Mineo et a1.,
1994)。 VFAの化学的構造の違いによって刺激効果に差異を生じることから、 細胞膜上にはVFAを特異的に認識する機構が存在する可能性が考えられてい
る(K如ohbd Ya).ima, 1989; Mineo eta1., 1994)。
一方、下垂体前葉から分泌される成長ホルモン(GH)は、泌乳や成長を促 進するホルモンとして顕著な注目を集めてきたが、反額動物におけるGH分泌
調節機構には多くの不明な点が多い。 GHは、他の下垂体前葉ホルモンに共通
して見られるように、パルス状に放出され、その放出を調節している視床下部
ホルモン(GHRHおよびSRIF (ソマトスタチン))の分泌もパルス状である
(Fob eta1., 1990;Thomas eta1., 1991)。しかし、ヒツジで観察される GHパルスはGHRHパルスの増加あるいはSRIFパルス減少とあまり同期しな い(Frohmaneta1., 1990)。さらに、血vl'tTOの実験で、 SRIFは、ラットと 異なり、ヒツジ下垂体前葉細胞中のcAMP濃度を低下しないことが報告されて いる(hw eta1., 1985)。また、反翁動物では、採食に伴う血中GH濃度の低
下が著しい(Bassett, 1972; Driverand Forbes, 1981;Tindal et aL., 1982;
廿enkle, 1989)。このGH分泌抑制機構には、神経性調節が関与(Matsunaga et al., 1998)していることが示唆されている。 採食に伴うGH分泌抑制反応は、揮内外分泌と対称的な反応であり、 「採食」 行為に伴う生理反応としては合目的的な反応である点が興味深い。以前の研究 (加藤和雄、 1996)では、採食後に見られる下垂体前葉からのGH分泌抑制機 構に、神経性調節機構以外に、採食後に上昇する血中VFAがその調節因子と なる可能性があることを明らかにした。本研究では、 VFAによるGH分泌抑
研究組織 研究代表者 加藤和雄(東北大学農学部 助教授) 研究分担者 萩野顕彦(東北大学農学部 助手) 研究経費 平成 9年度 3,400千円 平成10年度 1,900千円
研究発表
学会誌・その他( 1 ) Ohata, Y., Mzmyana, Y., Katoh, K.and Sasaki, Y. (1997) Growth hormone releaseinduced byanarnino acid mixture from primary
cultured anterior pituitary cems of goats. Domestic jhal Endoc血dogy 14(2): 99 - 107.
(2)加藤和雄、 Chen, C. (1997)成長ホルモンを刺激する人工ペプチドに関
する研究動向. 「畜産の研究」 51(4):501-505.
( 3 ) K如oh, K.and lshiwata, H. (1998) Changes inintracenuh calcium
concentrationand growth homone release induced by nutrientsin
primary culturedanterior pituitary ce皿s of goats. A血al Science
and Technolow 69: 994 - 1003.
(4)加藤和雄、石渡広子(1999)第3回家畜内分泌学国際学会(TYle
somatotropic axis)参加報告. 「畜産の研究」 (印刷中)
( 5 ) Matstmaga, N., Arakawa, N.T., Goka, T., Nan, KrT., Ohneda, A., Sasaki, Y.and Katoh, K. (1999) Effects of n血nalinfusion of
volatne fatty acids on plasma concentration of growth hormone
and ins血insheep. Domestic AdmalEndocrinology (impress).
( 6 ) Katoh, K., Ohata, Y.and lshiwata, H. (1999) Suppressing effects of
short-chain fatty acids on GHRH-induced GH releaseinisolated
anterior pituitary cens of goats. Domestic A血malEndocrinolqgy (in
口頭発表・ポスター発表 (1)石渡広子、萩野顕彦、加藤和雄、佐々木康之 ラット下垂体前葉初代 培養細胞における酪酸のGH分泌抑制作用 第92回日本畜産学会(平 成9年3月) (2)加藤和雄、石渡広子、佐々木康之 栄養素刺激によるヤギ下垂体前葉 細胞内カルシウム濃度変化とGH放出 第93回日本畜産学会(平成9 年8月) (3)石渡広子、萩野顕彦、加藤和雄、佐々木康之 ヤギおよびラット下垂 体前葉細胞からのGH放出に及ぼす酪酸の抑制効果 第94回日本畜 産学会(平成10年3月) (4)加藤和雄、石渡広子、佐々木康之 ヤギ下垂体前葉細胞のカルシウム 電流とホルモン放出に及ぼすオレイン酸の抑制作用 第94回日本畜産 .学会(平成10年3月)
( 5 ) Isfdwata, H., Hagino, A.and K如oh, K. ⅠⅠ血ibitory effects of
short-chain fatty acids on the growth homone releaseinprimary
culturedanterior pituitary ce止s of goats and rats. 3rd Conference of fm ardmalendocrinol喝y. (1998, Dec., Belgium)
論 法 果 括 文 緒 方 結 総 論
章 章 章 章 章
1 2 3 4 5
第第第 第 第 1 3 4 1 1 1 2
( 1 ) Ohta, Y., Maruym, Y., Katoh, K.and Sasaki, Y. (1997)
Growth hormone release induced by an amino acid
mixture from primary culturedanterior pituitary cens of
goats. Domestic Admd Endocrinology 14(2): 99 - 107.
( 2 )加藤和雄、 Chen, C. (1997)成長ホルモン放出を刺激する人工ペ プチドに関する研究動向. 「畜産の研究」 51(4):501-505.
( 3 ) K如oh, K.and lshwata, H. (1998) Changesinintracenuh calcium concentration and growth hormone release induced by nutrients in primary cultured anterior pitl山tary cells of goats. Animal Scienceand Technology
69: 994 - 1003.
( 4 )加藤和雄、石渡広子(1999)第3回家畜内分泌学国際学会(me
somatotropicajds)参加報告. 「畜産の研究」 (印刷中)
( 5 ) Matsunaga, N., ArakzIWa, N.T., Goka, T., Nan, K.-T.,
Ohneda, A., Sasaki, Y.and Katoh, K. (1999) Effectsl of
ruminalinfusion of volatne fatty acids on plasma
concentration of growth hormoneandinsu止n in sheep.
bmestic A山malEndocrinology (impress).
( 6 ) Katoh, K., Ohata, Y.and lshwata, H. (1999) Suppressing
effects of short-chain fatty acids on GHRH-induced GH release in isdated anterior pituitary cells of goats. Domestic Admal Endocrinology Gn press).
第1章 緒 論
反努家畜の生産性向上に有効なGHは、下垂体前葉の好酸性細胞であるGH 産生細胞(ソマトトロフ)から分泌される。主な分泌調節は、視床下部弓状核 由来のGH分泌刺激効果を持つGrowth Hormone - releasing hormone (GHM)および視索前野/視床下部前野に存在する神経細胞由来のGH分泌 抑制効果を持つソマトスタチン(SRIF)により行われている.これらの神経の 終末部は正中隆起部に散在しており、 GHRHやSRIFは正中隆起部で下垂体門 脈中に分泌され下垂体に達し、 GH分泌を調節する。 これまで研究された全ての種で、 GHは脈動的に分泌されることが知られて -おり、ラットにおけるGHパルスは、 GHM抗血清投与により抑制され、 SRIF 抗血清投与ではパルスの谷のレベルが上昇することから、 GHパルスは主に GHMの脈動的分泌増加とSRIF分泌低下の同調により引き起こされていると ラットでは考えられている(Tzmnenbaume eta1., 1990)。ヒツジにおいても、 下垂体門脈血のGHMおよびSRIF濃度変化が脈動的であことが確かめられ ている。しかし、 GHパルスはSRIFパルスとは関連性がなく、 GHRHパルス とわずかに60%程度一致するのみである(Frohnan eta1., 1990)。 GHRHお よびSRIF分泌を調節することにより間接的にGH分泌調節に加わっていると 考えられている中枢での神経伝達物質としては、ドーパミン、アドレナリン、 アセチルコリン、セロトニン、 GABAなどが知られている(Caman山et a1., 1989; Buonomoand Baile, 1990)。一般に、ドーパミンはSRIF分泌を刺激 することによりGH分泌を抑制する。また、アドレナリンはα作用を介してGH 分泌を刺激し、 β作用を介して抑制する。一方、アセチルコリンはSRIF分泌 を抑制することにより、セロトニンはGHRH分泌を刺激することによりGH 分泌を刺激する。 GABAはGHRHおよびSRIFに対し抑制的に働くとされて いる。 一方、採食行為や種々の栄養素も反寮動物のGH分泌に影響を与える
(Admura, 1994)。すなわち、ウシ(Reynaert eta1., 1975)、ヒツジ(Bassett,
1972; Driverand Forbes, 1981; 1Yenkle, 1989)およびヤギ(Tindal et a1.,
1982)においては、採食前に血中GH濃度が増加し、採食後に低下することが 知られている。この現象はヒトや他の霊長類でも認められる(Sopwith et a1., 1985; Stewart et a1., 1984)。しかし、このGH濃度変化がウシの視床下部・
下垂体茎部の機能的切断によっても認められること(Plou紀k et a1., 1988)か
ら、 GHRHとSRIFだけで採食後のGH分泌抑制機序を説明することは困発で
ある。 Matsunaga et al. (1993)は、この抑制機構にルーメン内あるいは血中
VFA濃度上昇が関与する可能性を示唆している。一方、血中遊離脂肪酸はヒッ
ジのGH分泌を抑制する作用雀有し(Estirme eta1., 1989a)、この作用は脂肪
駿のソマトトロフへの直接作用であることが示唆されている(Katoh et a1., 1996)が、 VFAが長鎖脂肪酸と同じ機構を介して抑制効果を起こすかどうか は知られていない。また、ヒツジにおいてはインスリン注入による急性低血糖 はGH分泌を抑制することが知られている(Thomas et a1., 1991)。逆に、高 血糖は分泌を促進する(Wallaceand Bassett, 1970)。` 一般にタンパク質やアミノ酸の摂取によってGH分泌は増大するすることが、 多くの動物種で知られている。ヒツジでは、アスパラギン鼓が最も有効な分泌 刺激効果を示し(Kuhara et a1., 1991) 、 NMDAも分泌刺激効果を示す(Estime
et a1., 1989b)ので、 GH分泌促進機構の一部に興奮性アミノ酸であるアスパ ラギン酸やグルタミン酸が介在する可能性がある。アミノ酸は、さらに、 GH 分泌のみならず、血中IGF-Ⅰ濃度にも影響する。すなわち、ラットに低蛋白質 の餌を給与すると、血中IGF - Ⅰ濃度が低下することが報告されている(高橋、 1994)。タンパク質の主成分はアミノ酸であることから、生体はタンパク質栄 養状態の量的あるいは質的変化をアミノ酸の変化(情報)として受容し、それ がGHやIGF - Ⅰの血中濃度調節に反映すると考えられる。
本研究の目的
本研究は、ヤギおよびラットの下垂体前葉細胞を用いて、以下の事項を検討 することにより、 VFAのGH放出抑制効果を細胞生理学的および分子生物学 的に解明することを目的として行った。 ( 1 )基礎およびGHRH刺激GH放出に及ぼすVFAの影響を検討する。 (2)細胞膜Ca電流に及ぼすVFAの影響を検討する。 (3)細胞内Caイオン濃度に及ぼすVFAの影響を検討する。 (4) GHmmA含量に及ぼすVFAの影響を検討する。 2第2章 方 法
第1節 基礎およびGHRH刺激GH放出に及ぼすVFAの影響
ヤギ下垂体前葉細胞の単離法・培養法の詳細は、論文(1)の MAmRIAI5 AND hgETHODSに記載してある。ラットでの単離法・ 培養法も基本的にはヤギと同様である。 第2節 細胞膜Ca電流に及ぼすVFAの影響 細胞膜Ca電流の測定は、パッチ・クランプ法で行った。その詳細は、 以前の報告に記載した(加藤、 1996)。 第3節 細胞内Caイオン濃度に及ぼすVFAの影響 Fural2/AMを細胞内に取り込ませ、共焦点レーザー顕微鏡を用いた 測定法の詳細は、論文(3)のMate血sandme仇odsに記載してある。 第4節 GHmRNA含量に及ぼすVFAの影響 Northemblotting法により測定した。ブローベとして使用したcDNA は、ヒツジGHの833bpをプラスミド(BR322)に挿入し、クローン 化したものである。オーストラリアのC. Chen博士(Pdne HenⅣ,s
lnstitute of Medical Research)の寄贈による。
第3章 結 果
第1節 基礎およびGHM刺激GH放出に及ぼすVFAの影響 ヤギ下垂体前葉細胞を、 1から10 mMの濃度のVFAで72時間にわ たり処理した後、 1p叫から100nMのGHMで刺激した時のGH放出 量を図1に示す。いずれの濃度の酪酸(プロピオン酸の場合は、 3 mM 以上)は、 GHRH刺激GH放出を有意に抑制した。しかし、 GHRH刺 激と同時に酪酸を添加しても、 GH放出には有意な抑制は生じなかった。 GH含量(刺激前に細胞内に存在したGH量)の変化を、図2に示す。 酷熱ま、いずれの濃度でも、 GH含量を有意に抑制した。 また、上述のヤギでの結果は、ラットでも確認された。 第2節 細胞膜Ca電流に及ぼすVFAの影響 ・パッチ・クランプ法で行ったヤギ細胞膜Ca電流の測定を、図3に示 す。階段状に細胞内電位を脱分極していくと、内向きの電流が大きくな る。この電流は・酪酸(3 mM)で抑制され、 rdfedipine (1 pM)で消 失した。 第3節 細胞内Caイオン濃度に及ぼすVFAの影響 Fural2/AMを取り込ませたヤギ細胞では、酸酸(3 mM)添加はや や濃度を増加する一方、 GHm刺激効果を抑制した(図4)。 第4節 GHmRNA含量に及ぼすVFAの影響 100 bp付近に観察されるGHmRNAのバンドの濃度(矢印)は、酪酸 (10mM)添加で低下することが示された(図5)。 4ー12 -1 1 -10 -9 -8 -7 10 10 10 10 10 10 GERE concentration (M) 70 60 50 胡 3 0 20_ 0 0 70 6050 胡 3 0 20 1 0 0 (tpJhJh)aSt!3PJ[HD (TPJhJh)aSt!3]巴HD 70 60 朗 胡 3 0 20_ 0 0 (n3AAPtt)3St!3]3JHD 図1基礎およびGHRH刺激GH放出に及ぼすVFAの影響 5
0 1 3 10 Butyrate concentration (mM) 胡 20 00 80 60 胡 2 一l▲ll (tpJ∼LJ叫u)HD 240 200 E;il己I i 160 き Ii=ヨ 。bJ) 120 ヽ一ノ′ I 0 80 40 0 0 1 3 10 B utyrate concentration (mM) 図2 GH含量に及ぼすVFAの影響
(vd)東田恥bJE
-60 -40 -20 0 20
膜電位(mV)
図3 細胞膜Ca電流に及ぼすVFAの影響
(A)!suatuf)uO!telluaUuO3eUJeJnlP3
0 25 50 75 100 125
Time (sec)
I+義善や暮
c G _a BG
図5 GHmRNA含量に及ぼすVFAの影響
図の説明 図1ヤギ下垂体前葉細胞を1から10 mMの濃度のVFAで72時間にわたり 処理した後、 1 pMから100 nMのGHRHで刺激した時のGH放出量の変化。 上から、酢酸、プロピオン酸および酪酸の影響を示す。シンボルは、いずれの グラフにおいても、それぞれの酸の濃度が、 ●が0、 ▲が1、雷が3、そして ◆が10 mMを示す。また、それぞれのオープン・シンボルは、 ●と有意差が あることを示す。酪酸は、いずれの濃度でも(プロピオン酸の場合は、 3 mM 以上で) GHm刺激GH放出を有意に抑制した。 図2 ヤギ下垂体前葉細胞内GH含量(刺激前に細胞内に存在したGH量)に
及ぼすのVFA処理の影響。 Aは、 GHm刺激時間(30分)のみVFAで処理 処理したききの、 Bは72時間にわたりVEAで処理したときの、 GH含量を示 す。白いバーは1 nMのGHm刺激で放出されたGH量を、黒いバーは細胞 内に残ったGH量を表す。 Bで、異なる小文字のアルファベットを付けた億の 間には、有意な差があることを示す。 図3 ヤギ下垂体前葉細胞における内向き電流(Ca電流)に及ぼすNi由dわine (1 pM,Ni触)あるいは酪敢(10mM,C4)の影響。フグ毒(1 pM)存在下で、 2.5 mVずつ脱分極方向に膜電位をクランプしたときに観察された内向き電流 の大きさを表す。 図4 ヤギ下垂体前葉細胞の細胞内Caイオン濃度に及ぼす酪酸(10 mM, C4) の影響。酪酸存在下では、 GHRH (1 IIM、 30秒付近)刺激による細胞内Ca イオン濃度増大は、わずかでゆっくりとした反応である。 図5 ラット下垂体前葉細胞を酪酸(10mM)で72時間にわたり処理した後、 GHM (1 nM)で刺激した時のGH血m量の変化。矢印は、 100bp付近の バンドを示す。また、 Cは無刺激, GはGHm刺敦、 Bは酪敢刺敦、そして BGは酪酸存在下でGHRH刺敦を行ったときの細胞内GH血RNA量を示す。 10
第4章 総 括
第1節の「基礎およびGHRH刺激GH放出に及ぼすVFAの影響」を検討し た結果、ヤギおよびラット下垂体前葉細胞をVFA (プロピオン穀と酪酸)で72 時間にわたり処理すると、 GHRH刺激GH放出量が有意に低下することが示 された。また、 VFA (プロピオン酸と酪酸)で処理した細胞では、 GH含量が 有意に低下していた。しかし、この抑制効果は、 GHRH刺激と同時に酪酸を添 加しても発現しなかったことから、 VFAの効果発現にはVFA処理開始後数時 間は必要であることが示唆された。 第2節の「細胞膜Ca電流に及ぼすVFAの影響」を、 /iッチ・クランプ法 で検討したところ、 rdfedipine(1 pM)感受性の内向きのCa電流を酪酸(3 mM) が抑制することが示された。 第3節の「細胞内Caイオン濃度に及ぼすVFAの影響」に関して、Fura-2/JM を取り込ませたヤギ細胞で検討した結果、酪酸(3 mM)自体は細胞内濃度を わずかに増大する一方、 GHRH知敢効果を抑制することが明らかとなった。 第4節の「GHmRNA含量に及ぼすVFAの影響」を検討した結果、乾酸(10 mM)はGHmRNAの発現量を低下することが示された。 以上に結果から、酪酸は、ヤギおよびラット下垂体前葉細胞に対して2通り の経路でGH放出を抑制する可能性があることが明らかとなった。すなわち、 1つは、 GHmRNAの発境を抑制することにより細胞内のGH生成量を抑制す るためにGI廿とH刺敦GH放出量を抑制する経路である。もう一つは、細胞膜 のCa電流を抑制することにより,分泌に必須の過程である細胞内Caイオン 濃度増加を抑制する経路である。 このように、酪酸がGHm刺敦によって賦括化される細胞内情報伝達系の 1つであるCa系を抑制することは明らかである。しかしながら、 cAW系も GHRH刺激によって拭括化されることが知られているので、今後はcAAP系 の統括化に及ぼす影響もさらに検討を加える必要がある。 ll第5章 論・文
( 1 ) Ohata, Y., Maruy/ama, Y., Katoh, K.and飴saki, Y. (1997)
Growth homone releaseinduced byanamino acid
mixt1∬e from primary culturedanterior pittdtary cens of goats. Domestic AdmalEnd血nol喝y 14(2): 99 - 107.
(2)加藤和雄、 Chen, C. (1997)成長ホルモンを刺激する人工ペ プチドに関する研究動向. 「畜産の研究」与1(4):501-505.
( 3 ) Katoh, K.and lshiwata, H. (1998) Changes in intracendar
calcium concentration and growth homone release induced by nutrients in primary cultured anterior ′ pittdtary cells of goats. Admal Science and Technology
69: 994 - 1003.
(4)加藤和雄、石渡広子(1999)第3回家畜内分泌学国際学会(ne
somatotropicaxis)参加報告. 「畜産の研究」 (印刷中)
( 5 ) Katoh, K., Ohata, Y.and lshiwata, H. (1999) Suppressing
effects of short-chain fatty acids on GHRH-induced GH
release inisolated anterior pituitary ceus of gents.
Domestic AdmalEndocrindqぎy Gn press).
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