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長期入院のペルテス病児における数概念の研究 : 数行動の分析を中心とした健常児との比較

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(1)長期入院のペルテス病児における 数概念の研究 一 数行動の分析を中心とした健常児との比較 一. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科. 障害児教育専攻 M92304E. 岡 部 久 美 子.

(2) 目. 1. !. 2. 11. 1. はじめに. 問題と目的 数概念について. 5. 研究の方法. 1. 対象. 2. 検査実施期間. 3. 検査の手続き. 4.. 皿 1.. 次. 検査. 検査の結果と分析. …一・一一一一・・一一・…………一…・一・. 短時間に呈示された集合の量化検査. …一一. 13 13. 2. 「個数減」検査. 3. 集合の命名検査. 4.. 多少判断検査. 27. 5.. 数唱検査(上昇系列と下降系列) …一一一・一…. 28. 6. 一一…………一一一・・……一・・…一一・…一. 一…一一・…一…一・一一一一一・. 20. 23. 保存性検査 A 数の保存性 B 液量の保存性. ……………・・一一一…一・…一…一一・. 32. ・・一一・一…一一・一一………一……. 37. 7. 推移律検査(長さの課題と数の課題) ・・一一. 41. 8.. 棒の系列化の検査 一一一一一・一一一……・一一一一. 46.

(3) v. 結果のまとめ. 55. 考察. 62. 要約. 74. 謝辞 文献.

(4) 1 はじめに. :L 問題と目的. A養護学校は病院隣接の肢体不自由児のための養護学校で、幼・小・中学部 で構成されている。病院への入退院が常時あるために、在籍者数は他校にくら. べて変動が多いものの、ほぼ80名から100名前後にある。その在籍者の約7割 が知的障害を伴わない単一障害児であり、さらに単一障害児の約半数:が表題の ペルテス病児である。. 隣接のA病院は、施設開設以来のおよそ30年間にペルテス病が600例におよ ぶ全国でも有数のペルテス病治療施設でもある。ここでの発症年齢をみると、. 特に5∼8歳に多く、当然のことながらA養護学校のペルテス病児も幼稚部お よび小学部1∼3年に集中する傾向にある。 ここでペルテス病についての説明を南山堂医学大辞典より抜粋する。「ペル. テス病:若年性変形性骨軟骨炎。女児に比し男児に多くみられる疾患で、6歳 から8歳くらいまでに発症するものが多い。何らかの原因により、大腿骨頭へ の血行が障害され、骨頭の無腐性壊死が生ずる。通常約3年くらいの経過で再 び修復されるが、発症年齢、骨頭壊死の部位や範囲、治療の開始時期やその適 否などに関連して、ほぼ正常な形の骨頭に戻ることもあれば、扁平骨頭、頚部 の短縮や幅の増加など若干の変形を残したりする。治療の要点は、変形の予防 で、壊死に陥った骨組織が、再び修復され健常状態に戻るまで、骨頭へ加わる 力をできるだけ軽減することが肝要である。免荷装具による保存療法が原則で あり、種々の型の装具が用いられている。本症の予後は一般に良好で、若干の 骨頭頚部変形が遺残しても将来あまり機能上の問題にはならない。」. このようなペルテス病児は、A病院で免荷装具装着での保存療法による加療 を受け、平均2年間の病院生活の後、退院となる。彼らはこの入院中に治療を 受けつつ、病院とは渡り廊下でつながっている隣接のA養護学校へ各自の移動 具(ペルカー)を使用して自力通学をする。. 上述のように、ペルテス病は、骨系統の末梢の病気である骨端炎の一種であ 1.

(5) り、回復可能の一過性のものである。脳などの中枢神経系に障害のある病気で はないので、永峰(1980)はペルテス病児の知能について、 「ポリオ、ペルテス. 病、外傷などの肢体不自由児の知能は、普通児集団と特に変わりがないとされ. ている」と指摘している。したがって、A養護学校のペルテス病児は、三三装 具装着による体動抑制のために現時点で立位・歩行が不能なだけで、知的発達 は健常児と同レベルにあるので、普通学校の児童と同じ教科書を用い、同じ内 容の教科学習をしている。また一般的には、長期に入院をするこどもへの学習. の空白の影響が懸念されているが、A養護学校のペルテス病児は、発症前は普 通学校に通学し、入院とともに病院隣接のA養護学校において学習をすすめる ので、発病や入院による学習の空白はなく、学習権は保障されている。. このようにペルテス病児は発症前は健常児であり、発症を機に立位・歩行制. 限による肢体不自由児となって病院隣接のA肢体不自由養護学校に学び、退院 とともに再び健常児として普通校に戻ることとなる。したがって、ペルテス病 児は、現時点での立位・歩行が不能なこと以外は、普通学校の健常児と何ら変. わるところはないとされているが、A養護学校の教師の多くは、ペルテス病児 の教科学習指導にあたって、彼らは学習課題はできるのだが、どこか健常児と 異なるものがあるという、ことばでは表現し得ない何かを感じている。学習課 題達成に際しての質的な相違とでもいえようか。. ところで、A養護学校のペルテス病児が健常児と大きく異なるところは、立 位・歩行の不能以外にも存在する。それは、ペルテス病児の生活環境である。. つまり、一般社会や家庭から隔絶された病院での長期の生活である。長期入院 がこどもに及ぼす弊害については、医療看護問題でしばしば指摘されるところ であるが、その弊害が、具体的にどのような形でこどもの上に現われてくるの かについて言及した研究は少ない。知的能力では、健常児と同レベルにあると. されるペルテス病児であるが、健常児と大きく異なるこの2つの背景、体動抑 制による立位・歩行不能と長期入院が発達期にあるこどもにどのような作用を なしているのだろうか。. ペルテス病児についての研究は、その病気が一過性のものであり、中枢神経 2.

(6) 系の障害もないことから、医学的な立場からの症例研究はなされているが、そ の他、心理学や教育学的見地からのものはみあたらない。ペルテス病児を指導 する現場教師にとっては、教育場面での彼らの特性に関する研究をこそ待望す るものである。. そこで、本研究では、長期入院のペルテス病児の数概念の特徴を明らかにす ることを目的とし、教育現場での彼らへの指導の一助になればと考える。. 数概念についての研究は、幼児を対象としたものを中心に数多くなされてい るが、その内容は数概念獲得の可否を主としたもので、どのような数へのかか わり方を以てその判断に至ったのか、すなわち、こどもたちがどのような数行 動をとって課題解決をしたのかという過程に言及した研究はみあたらない。し たがって、本研究では、ペルテス病児の数概念の特徴を明らかにするために、. 数概念を諜題とすることにより現われるであろう数行動の分析を中心に研究を 進めていく。ペルテス病児の数概念を支える数行動を捉え、分析し、その数行 動を健常児の数行動と比較することにより、ペルテス病児の数概念の特徴が明 確になることが予測されるからである。言い換えれば、この数行動の分析の視 点によって、本研究が問題とするペルテス病児の学習課題に対する質的な側面 の特徴をより明らかに捉え得ると思われるのである。なお、ここで数行動の定 義をすると、数行動とは、数に対するかかわりかたの方略をいう。. 2 数概念について 数概念の成立については、多くの研究者が各自の考えに基づいて定義づけを 行なっている。たとえば、須賀(1969)は、数次元の分化と数の体系の理解をも って数概念の成立とし、伊藤(1963)や寺田(1967)は、事物の集合の大きさが抽. 象化され、集合の知覚的形態にかかわりなく、数が保存されていることとして いる。また、数概念の形成を発生的認識理論の立場から捉えたPiagetら(1966). は、 「こどもにおける自然数の構成は、もろもろの系列化とクラスの包摂の構. 成と緊密に関係しながら実現される」と指摘するとともに数の不変性の成立を 必要条件として強調している。しかし、これらの研究に掲げられた数概念成立 3.

(7) の条件は、最少限に必要なもののみであって、数概念には、その他に数に関す る多くの概念が含まれると考える。. すなわち、数:は、具体的に実在するものではなく、対象から引き出される抽. 象的な性質を持った概念である。したがって、数はさまざまな側面を持つ。こ の数のさまざまな側面についての知識を総合したものを、数概念と捉えたい。 Ge1田anら(1978)は、数の概念について「現代算術が発展してきた根源の多くを. 含むような概念」と定義づけている。Gelmanらのいう「現代算術が発展してき た根源」とは、前述の「数のさまざまな側面についての知識」と捉えることが できる。具体的には、集合から数を抽象して命名することであったり、多少等. を判断することであったり、数の系列化による数回であったり、1対1対応で あったり、数の不変性であったり、その他さまざまな数についての知識や操作 を指すのである。. そこで、ペルテス病児の数概念を抽出するものとして、①短時間に呈示され た集合の量化、②個数減、③集合の命名、④多少判断、⑤数唱(上昇系列およ び下降系列)、⑥保存性(数および液量)、⑦推移律(長さおよび数)、⑧棒 の系列化、を取り上げる。さらに、①から⑤を算数的側面と捉え、⑥から⑧を. 思考力側面と設定することで、数概念についての2つの側面を比較する。これ により、ペルテス病児と健常児の数概念の特徴が、より的確に把握できると考 える。. 4.

(8) 皿 研究の方法. 1. 対象. (1)病院隣接A養護学校在籍ペルテス病児:22名 (2)健常児. :33名. 内三 ペルテス 健常児. 三. 1. 2. 3. 3. 6 9. 6 9. 7 7. 8. ペルテス病児の入院期間は、1年以上が12名、6か月未満が5名で、平均 10.4か月である。. なお、全冊検児の知的発達は、鈴木ビネー式個人テストおよび教研式知能. 検平等により正常レベルにある(被検児の平均IQはペルテス群105、健常 児群108である)。. 2. 検査実施期間. 平成4年11月末から平成5年3月末. 3 検査の手続き 尉室で個別面接をする。. 4.検査 (1)短時間に呈示された集合の量化. ① 検査用具. a 直径17㎜の赤丸が5・2進法で並べられた1∼10までの数図 b 直径17㎜の赤丸がランダムに並べられた1∼7までの数図. ② 検査方法. a5’2進法数図10枚を裏向けに重ねて示し・「表側を‘調と見せますから 5.

(9) 赤丸がいくつあるか、こたえてください」と指示する。各数図の呈示時間は およそ0.7∼0.8秒とし、回答を待って次を呈示する。なお、数図の呈示順は. 任意である。3試行実施するが正否のフィードバックは行なわない。 b ランダム数図7枚を裏向けに重ねて示し、「表側をぱっと見せますから、 赤丸がいくつあるか、こたえてください」と指示する。各数:図の呈示時間は およそ0.7∼0.8秒とし、回答を待って次を呈示する。なお、三図の呈示順は. 任意である。3試行実施するが正否のフィードバックは行なわない。. c 上記の2課題でmenta1−countingの観察された場合は、検査終了後、被検 児にその状況の説明を求め、mental−count ingであることを確かめる。. (2)個数減. ① 検査用具 黄色のおはじき10個. ② 検査方法 おはじき10個をひとかたまりにして被三児の前に置き、 「ここにおはじきが. あります。ここから8個を取り出してください」と指示する。被三児が8個の おはじきを取り出したら、「ここから先生が1個取ります。すると残りはいく つになりますか」と問う。回答がなされたら「どうして、そのように判りまし たか」と、判断理由の説明を求める。. (3)集合の命名. ① 検査用具. a 円形並び. :直径17rmの赤丸7個を円形に並べた数回. 『b ランダム並び:直径17㎜の赤丸7個をランダムに並べた下図. 。 整一並び. :直径7mの赤平13個を横に1列に並べた三図 6.

(10) ② 検査方法 a 三図の呈示は、円形並び、ランダム並び、es一一並びの順とする。. b 数:図を被検児の前の机上に置き、「赤丸はいくつありますか」と問う。命. 名の正確さと命名への計数方略を観察する。観察により計数方略が判明しな い場合は、「どのように数えましたか」と問い、計数方略についての説明を 求める。. (4)多少判断. ① 検査用具. 黄色と赤色のおはじき、各8個 白色台紙 2ユX30(皿、1枚. ② 検査方法. a 課題の呈示順は、5−7、7−8とする。 b 黄色と赤色のおはじきを対応配置に設定し、各集合を指で示しながら「こ れとこれとでは、どちらが多いですか。それとも同じですか」と問う。回答 を聞いてから、「なぜ、こちらが多いと思いましたか」と多少判断理由の説 明を求める。. なお、対応する1対のおはじきの間隔は5c皿とする。検査者が課題のおは じきを並べる場面は被検児には見せず、設定済みの課題を呈示する。. ㈲ 数:唱. ① 検査方法. a 上昇系列 「1から順に数えてください。いくつまで数えられますか」と問い、1か ら数:えられる数まで数唱させる。100をこえると停止させる。 7.

(11) b 下降系列 「こんどは、反対に1まで降りる数え方をしてください。いくつから数え られますか」と問い、上昇系列数:唱の最大数から下降することをめやすにす. る。上昇系列三唱の最大数からが不可能であれば、適宜、最大数を小さくし て下降系列の三唱を誘導する。. ② 評価基準 A:躊躇がほとんどなく円滑に順序よく数唱できる。 B:数唱に順序性はあるが、躊躇と数:の脱落が少しある。. C:三唱に、行き戻りのくりかえしが多くみられたり、数の脱落がある。 また、何回を規則的にまちがえて三唱する。. なお、三唱の通過点は評価AとBレベルにする。. (6)保存性. A. 数の保存性. (1). 検査用具. a. 異配置課題. 台紙に直径17mの赤丸を異配置に貼ったカード2種. 6と6の比較. 3と3の比較. o o o o o o ooo. oooooo. o o o. −b 同配置から一方を動かして異配置にした途中変形課題 赤色と黄色のおはじき各5個と台紙(白色,21×30c皿)1枚. 8.

(12) ②. 検査方法. a−1 6と6の比較カードを呈示し、手でそれぞれの集合を指し示しながら 「これとこれとではどちらが多いですか。それとも同じですか」と問 う。反応の正否とともに判断理由の説明を求める。. a−2 3と3の比較カードを呈示し、手でそれぞれの集合を指し示しながら 「これとこれとではどちらが多いですか。それとも同じですか」と問 う。反応の正否とともに判断理由の説明を求める。. b−1 おはじきを5と5の同配置に並べ、数が同じであることを確認させた 後、一方を動かして異配置に並べ替えてから(並べ替えの様子を被検 児に見せる)、「ここを動かしますよ。さあ、どちらが多いですか、. それとも同じですか」と問う。反応の正否とともに判断理由の説明を 求める。. o o o o o ooooo 一一),. o o o o o o o o o o b−2 おはじきを3と3の同配置に並べ、数:が同じであることを確認させた 後、一方を動かして異配置に並べ替えてから(並べ替えの様子を被検 児に見せる)、「ここを動かしますよ。さあ、どちらが多いですか、. それとも同じですか」と問う。反応の正否とともに判断理由の説明を 求める。. o o o o o o 一一)F. o o o ooo なお、上記の4検査とも、集合の形態のみかけによって誤判断した場合は、 「数えてごらん」と数導入を促して、数導入後の判断を観察する。. 9.

(13) B 液量の保存性 ① 検査用具. a 少し太めの透明なガラスのコップ、2個. b aのコップより細く背の高いコップ、1個 。 赤い下水. ② 検査方法. ・ aのコップ2個を呈示して「同じ大きさのコップが2個あります。先生が 片方のコップに色水を入れます」と言いながら、a−1のコップに色水を入 れる。次に、「こちらのコップ(a−2)にも同じだけ三水を入れてくださ. い」と指示する。a−1とa−2の色水が同量であることを確認させる。 ・ 「この色水を、こちらのコップに入れ替えます」と言いながら、コップ. a−1の色水をコップbに入れ替える。その後、「それではこれとこれ(a −2とb)とでは、色水はどちらが多いですか、それとも同じですか」と問 い、反応を観察する。答えの正否とともに、判断理由の説明を求める。. 誤反応をした場合は、「それでは、こちら(bコップ)の三水をもとのコ. ップに戻します」と言いながらコップbの色水をコップa−1に戻してから. 「それでは、これとこれ(a−1とa−2)とでは、三水はどちらが多いで すか、それとも同じですか」と問い、三三性の有無を観察する。. (7)推移律. A 長さの推移律課題 ① 検査用具. 巾2㎝、長さ13㎝の黄色の紙テープ 巾2㎝、長さ14㎝の赤色の紙テープを貼りつけた白色の台紙。 巾2(皿、長さ15㎝の青色の紙テープ. 10.

(14) ② 検査方法 「ここに赤のテープがあります」と赤色テープの台紙を呈示した後、「こ の青色のテープとどちらが長いですか」と青色のテープも呈示する。回答が 終わると、青色のテープだけ取り、彼三児から見えないところに置く。. つぎに、「こんどは黄色のテープと赤と比べてください。どちらのテープ が長いですか」と黄色のテープを呈示する。回答が終わると、赤のテープを貼 った台紙を取り、被検児から見えないところに置く。. 最後に、「それでは、この黄色のテープとさっきの青のテープとではどちら が長いですか」と質問し、その判断と判断理由の説明を求める。. B 数の推移律課題 ① 検査用具. 直径9mのシールを貼った台紙3種。. 赤色5個. 緑色6個. 青色7個. o o o o. o o. o o o o o o o. o o o o o. ② 検査方法 6と7のカードを呈示し、 「緑と青と比べるとシールの数はどちらが多いで. すか」と問い、回答を待つ。つぎに、7のカードを取り、被三児から見えない ところに置き、かわりに5のカードを呈示し、「シールの数はどちらが多いで すか」と問う。回答が得られたら、6のカードを取り、被検児から見えないと ころに置く。最後に、「それでは、この赤のシールとさっきの青のシールとで はどちらが多いですか」と問い、その判断と判断理由の説明を求める。. 11.

(15) (8)棒の系列化の検査. ① 検査用具. a 棒A群10本(8㎜ずつの差がある). b 棒B群9本(8㎜ずつの差がある). ② 検査方法. a まず、A群を机の上に出し、バラバラに立てて「いろいろな長さの棒があ ります。長い順に並べてください」と指示する。. b その後はこどもに任せ、こどもの並べるのを観察する。. c 10本で系列化させることができたこどもには、B群の9本を渡し「ここに もあるのを忘れていました。全部で1列に並べてください」と指示する。課 題の意味が把握できないときは、理解できるよう十分に説明する。. d 評価に関するフィードバックは行なわない。. 12.

(16) 皿 検査の結果と分析. L 短時間に呈示された集合の量化検査. (1)数行動. 次の2種の数行動が量化方略として観察された。. ①subitizing(即時量化、即時把握): 集合が呈示されるとすぐに量化し、正確に命名する。. ②mental−counting(視覚イメージの計数): 集合が短時間に呈示されたあと、その記憶したドットパターンを 視覚イメージの中で数え、命名する。その結果、正答、誤答、「わ. からない」の3通りの判断をする。この方略についての被二二の表 現は、「並んでいるのを思い出して考えた」、「丸の並び具合を覚 えて数えた」、「形をおぼえて数えた」などであった。. ところで、短時間に呈示さ:れた集合の量化について、Oyamaら(1981)は、量. 化の反応時間を調べる中で、ドット数1∼4と5以上の問の反応時間に顕著な 差があることを指摘した。前者はドット1個あたり0.04秒の速度で量化するも ので、この即時に量化する方略をsubitizingとした。後者はドット1個あたり 0.37秒の速度での量化で、これをcount ingとした。これらはともに、対象数が. 残した視覚イメージに基づいたもので、特にco皿tingはイメージに残ったドッ トを数えることを意味するとしている。このイメージに残ったドットを数える ことについては、友永(1991)のチンパンジーにおける「数:」の処理の研究があ. り、そこで彼は、ヒトとチンパンジーの間に視覚イメージの操作に関する能力 に違いがあることが示唆されたとする。つまりヒトには短時間呈示されたドッ トを「イメージ」の中でri数える」こと、すなわちmefltal−COUntingが観察さ. れ左のに対してチンパンジーはそれをしなかったというもので、前述のOyama らのいうcount ingは友永のいう皿ental−countingに相当する。なお、 Oyamaら. 13.

(17) のいうcount ingは、「イメージ」の中で「数える」ことであるが、一般に用い. られている「計数」という意味と誤認されやすいので、「視覚イメージの中で 数える」ことを皿ental−countingと捉える方が、より的確にそのもつ意味を表. わすと考える。そして本検査において観察された2種の量化方略もOyamaらお よび友永のいうSUbitiZing(即時量化)とmental−COUnting(視覚イメージの 計数)とみなすことができる。ただ、皿ental−countingについて前述の研究で. はイメージの中で数えて正確な量化をすることを指しているが、本研究では最 初の観察された数行動の説明であげたように、正確な量化の正否にかかわらず 視覚イメージの中で計数する数行動をmenta1℃ount ingとする。. ところで、subitizing(即時量化)とmenta1−counting(視覚イメージの計. 数)の2種の量化方略の用い方を検討すると、次のことが明らかになった。そ れは、第1試行でmental−counting方略を使用した者の多くが、第3試行では mental−countingを消滅させてsubitizingを用いるようになったことである。. したがって、量化方略としてmental−countingはsubitizingに先行するとみら れる。. (2)正確量化. 表1.短時間に呈示された集合の量化における刺激数別正答率. ②ランダム製図. ①5・2進法数図 刺 激. 数 二L. 2. 3. 4 5. 6 7. 8 9. 10. 幼i小1i小2 i小3. 刺 激 数. P NIP NiP NiP N @ @ @ @. @. 1. @i@ @1@ @1@ @ @1@ @1@ @1@ @ @i@ @1@ @i@ @ @i@ @1・ @i@ @ ’i’ ’i@ @i’ ’ ’i@ ’i@ @i’ @ ’i@ ’i@ ’i@ ’. 2. 3. 4 5. 6 7. 幼i小!i小2i小3 P NiP NiP NiP N @1@ @i@ @ @ @1@ @ @1@ @i@ @i@ @ @i@ @1@ @i@ @ @1@ @i@ @i@ ・ @1・ @1@ @i@ ・ ;1・ ・F ・’i・. @ @ @ @ @. il[S’ ;lil ll;・ i. ・:正答率75%未満. ◎:正答率75%以上. ・1@ @1@ @i・@ ・. P:ペルテス群. ◎:subitizing750/。以上. (subitizing:即時に正確量化). N:健常児群. 14.

(18) 表1より、正確量化の基準を正答率75%に設定し、正確量化可能な集合をみ る。. まず、5・2進法数図において1∼4の正確量化はペルテス小2を除くすべ ての学年段階で可能であった。5以上の集合については、特にペルテス小1∼ 小2段階において正確量化の可能な対象集合が多く、全体的にペルテス群は健 常児群より正確量化が多くできた。また、正確量化の可能な集合が、小さい数. から大きい数へと順に拡大していく範囲は1∼4であって、5以上の集合につ いては正確量化可能の対象は、順序を問わない任意性があった。特にペルテス. 群では全学年段階で集合数7の量化が可能で、対する健常児群では集合数7の. 正確量化ができなかった。また牛合数10の量化が両群ともに小1および小2段 階で可能であった。. ランダム数図においては5・2進法数図の結果とは反対に、ペルテス群より 健常児群の正確量化の数範囲が明らかに大きいことが示された。つまりペルテ. ス群の量化範囲は幼・小1段階で1∼4、小2・小3段階で1∼5までである のに対して、健常児群ではすでに幼稚園段階で1∼5の量化を可能とし、小3 にいたっては1∼6とその量化数範囲を広げている。さらに健常児群は幼稚園 段階を除けば5の量化を1000/.の正確さでもって行なうことができ、5・2進. 法三図での正確量化範囲1∼4を上回った。なお、刺激数5と6の量化を可能. とした多くの被検児は、5の量化を3と2の合成で、6の量:化を3と2と1の 合成で行なった。また、両群ともにどの学年も正確量化の集合数は1から順に. 大きい数へと拡大していき、量化可能の臨界数が明確であった点で、5・2進 法三図課題の結果と異なった。なお、subitizingについて、足立(1982)の研究. では、4∼5歳児は3以内、6歳児は4以内の集合を90%をこえる正答率で量 化するという。この研究結果と本検査結果を比較すると、本検査で6歳児の4 以内の正答率が100%とやや高いのは、前者が刺激呈示に際して精巧な装置を 用いて、きわめて短い呈示時間をコントロールした実験であるのに対して、本 検査では検査者の手操作による刺激呈示であり、呈示時間もおおよそ0.7∼0.8 秒であったことに起因するものと推測される。. 15.

(19) (3)subitizing(即時量化)出現の動向. 本検査で最も多く観察された量化方略はsubitizing(即時量化)であった。 そこで、subitizingの用いられ方について以下に概観する。. ①5・2進法数図におけるsubitizing fig.1よりsubitizing(即時量化)出現率について両三比較をすると、幼・. 小1・小2段階でペルテス群が高く、小3段階で両群は小差で逆転した。群別 に出現動向をみると、ペルテス群では、幼稚園段階から小2段階へと加齢に伴 う増加を示したが、小3段階で大きく低下した。健常児群では、幼稚園段階か. ら小1段階へ著しく増加した後、小1段階以降は変動はみられず、同様のレベ ルに位置し安定した。また、前掲の表1より刺激数別に正答中のsubitizingの 出現動向をみると、両三ともに1∼4の小さな集合においては、subitizingを 多く用い、大きな集合になるとsubitizingと皿enta1−countingを併用する傾向. が観察された。ただ、両群ともに小1および小2段階では、他学年で難を示し た刺激数10の量化をsubitizingで遂行したところに両学年の特徴がみられた。. 出現率. 囎. 出現率 IDO. 階. 100. Nペルテス. ひ一〇ペルテス. 90. ー・一・. gg. 衷寬. 80. 80. 70. 70. 60. 60. ー一・. ,●一一層一一. 衷寬. 一●ノ. se. 50 げ. 40. 40 %. 幼小小小学年. %. 幼小小4・学年. Fig.1,5・2進法数列におけるsubitizing Fig.2,ランダム数図におけるsubitizi㎎. 16.

(20) ②ランダム数図におけるsubitizing fig.2より、subitizing出現率を5・2進法数図のそれと比べると、ペルテ ス群での出現率は全学年で顕著に低くなっているのに対して、健常児群での出. 現率は小1∼小3段階においては、5・2進法数図との間に大きな差はなく、 幼稚園段階においてランダム二丁での出現率が大幅に高くなった結果、学年間 の開きは小さくなった。. 出現率を両群比較すると、小2段階でペルテス群が健常児群より上回ったの を除けば、下学年ともにべルテス群より健常児群の方が大幅に高い出現率であ った。健常児群での出現率は加齢にともなって徐々に高くなり、対するペルテ. ス群は、小2段階まで加齢にともなう出現率の増加が観察されたが、小3段階 でレベルダウンし、この傾向は前述の5・2進法数図と同様であった。. 次に刺激数別に正答中の量化方略をみると、ペルテス群では1∼4に100% のsubitizing(即時量化)方略を用い、5以降の集合には主として、皿ental−. counting(視覚イメージの計数)を用いた。ただ、小2段階のみは、1∼5に subitizing方略を使用し、その後menta1−counting方略となった。これに対し. て健常児群は1∼4で100%のsubitizing方略を用いたのはペルテス群と同様 であるが、5においてもまたsubitizing方略を高い比率で使用した。そして、 6以降の数でsubitizingにかわりmenta1−countingが主たる方略となった。. (4) 皿enta1℃ountingからsubitizing方略の変換. 第1試行でmental−countingを行い、第3試行でsubitizing方略に変換する という数行動が観察された。この方略の変換について、5・2進法下図ではペ ルテス群15例、健常児群28例が、ランダム二丁ではペルテス群11例、健常児群 20例が観察された。. subitizingへの変換率(第1試行の皿ental−countingの出現数で割る)によ. り両群を比較すると、両課題ともに幼稚園段階で両群は等しく、小1段階以降 は健常児群の方が高い傾向にあった。両課題合計の変換率を各学年ごとに示す と、幼稚園段階(ペルテス群40.O%,健常児群39.1X)、小1(30.8%,38.9%)、. 17.

(21) 小2(22.2%,70.8%)、小3(37.5%,60.0%)である。. ㈲ まとめ. この結果にみられる大きな特徴は、両群の正確量化の数範囲とsubitizing出 現の様相が、ふたつの課題において正反対の傾向を示した点にある。つまり、. 5・2進法数図課題においてはペルテス群が優位で、逆にランダム牛脂課題に おいては健常児群が優位にあったことである。. 5・2進法数図は小学校入学直後の算数科で1から10までの数を学習する時 に、具体物での学習から数字による抽象的な数の学習への橋渡しとして用いる. 半具体物としての教材である。したがって小1以降のこどもにとっては学習済 みの数図であるので、正答率が幼稚園段階に比べて高いのは当然であり、特に. 小1段階は5・2進法三図での学習直後でもあるので両群に観察された高正答 率は自然なことといえる。. 5・2進法二二の量化のポイントは、5以上の数図において「1列が5」で あることに気づくか否かであるが、1列が5であることは過去の学習経験から. 想起が容易であるので、1列が5であることに気づくと、あとの1列を即時量 化し、5+αの合成で集合を命名できる。5+αの量化のしかたについては、 幼稚二段階ですでに理解している被丁丁が観察され、第1試行では誤答を重ね. ていたが、第2試行で1列が5であることに気づいた後、第3試行まで正答し た。反対に1列が5であることに気づくことができなければ、誤答を連ねるこ. ととなる。ペルテス群小3段階で4の量化を5としたために、4以上の数回が 十1の量化となり誤答となった者が3名あった。ペルテス小3段階の正答率が ペルテス小1・小2丁目低くなった理由がここにある。このように、過去の学 習の経験に左右されるのが5・2進法数図の量化であることを考えると、ペル テス群にみられる正確量化数の多いこと、およびsubitizingの高出現は、学習 の保持がよいためであると推測される。さらにペルテス群は長期入院児である ため両親の学習への関心が高く、外泊時に数図による数の学習や加減の計算練 習を重ねているものが多い。したがって、学習経験の累積の影響もペルテス群. 18.

(22) の5・2進法数図検査結果に現われていると考えられる。 ところで本検査の真の目的である「短時間に呈示された集合の量化」の能力. を測ることができるのは、上記の5・2進法数図よりも過去の学習に影響され ることのないランダム数図での量化と考える。したがって以下にランダム数図 課題の結果について考察する。. ランダム数図課題の結果から提起すべき論点は、この項の冒頭で述べたよう に健常児群がペルテス群に比べて、正確量化の数範囲が広いこと、subitizing (即時量化)を多く用いることである。これらは何を意味するのだろうか。. ランダム数回課題での正確量化を支える方略が、subitizingであることは表 1の②から明らかである。吉田(1991)は、subitizingを「数えるという行為に. 頼らなくても数の大きさがわかる知覚的な過程である」と紹介したが、それで は、どのようにして数えるという行為に頼らない段階に到達するのかという問 題が提起される。その答えはGelmanら(1978)の「数える練習を重ねると、こど. もはその数える過程を省略し、項目の配列を“まとめて捕える”ことができる ようになる」という説により導かれる。“まとめて捕える”ことの意味すると. ころは、ドット数が2,3個の時はドットを直接把握することであり、ドット 数が多くなれば適宜のグループにまとめて把握することである。これは、ゲシ ュタルト心理学のWertheimerの唱えた群化の法則につながる考えである。した. がって、本検査においてランダム数図での刺激数1∼4の量化を、全被三児が 100%の出現;率で以てsubitiz ing方略により行ない得たということは、今まで. の数える経験の積み重ねから数えることを省略して直接把握をすることが可能 であったためと考えられる。そして、さらに、健常児群の多くが5という数に ついてもsubitizingによる量化ができたということは、この刺激カード上のド. ットの並び具合が3と2にまとめやすいために、過去の経験の積み重ねによっ て、Gelmanらのいう項目の配列への“まとめて捕える”操作により量化したこ とが示唆されるのである。. また、menta1−countingからsubitizing方略への変換という現象が示すこと. は、第1試行でドットの視覚イメージを数えることにより、まずそのドットパ. 19.

(23) ターンと数を結びつける、結びつけた後はそのパターンの配列を記憶し、呈示 されたパターンから、数を即時に同定するという操作を行なうことである。こ. の操作では、まず第1試行で、対象を正確に視覚イメージとして捉える能力が 求められ、次の試行でパターンが呈示された時は、前の試行においてmental− count ingで確定した数:詞とパターンとを一致させるため、呈示パターンを即時. に識別することがポイントとなる。. このように、subitizing(即時量化)を可能にする、“まとめて捕える”こ と、および皿ental℃ounting(視覚イメージの計数)で対象を正確に視覚イメ ージとして捉えること、さらにmental−countingからsubitizingへの方略変換 において、ドットパターンを即時に正確に識別することはすべて、「まとめて 見ること」にかかわるものである。したがって、subitizingの出現やmental− countingからsubitizingへの方略変換の出現に関する両群の顕著な相違は、こ の「まとめて見ること」の方略獲得時期にずれがあることを示唆するもので、 このことが両群の正確量化の数:範囲の差として表われるのである。. 2 「個数減」検査. (1)検査における通過 三三検:児が個数減後の集合を7と命名し正解した。. (2)数行動と発達性. 8個のおはじきから1個を取り去り、残りの集合数を問う個数減検査での判 断に関する数行動は、3種類が観察された。ひとつは、残りの集合を計数によ って命名する「計数」である。つぎは、数の連結性および数系列の把握による 「数の構造」から命名するものである。数の連結性とは、被検児の表現として. 「8から1をぬいたら減ったから7になる」とあるように、整数は1つ1つ加 えたり減じたりすることによって、あらゆる整数:をつくることができ、数は孤. 20.

(24) 立したものではなく相互にむすびついているという性質を示すものである。ま. た、数系列とは、被三児の表現に「8の下が7だから」、「8の前の数は7だ から」、 「8のうしろは7」とあるように、数の位置関係での系列化が確立し ていることである。この数の連結性と数系列は、ともに数を構造的側面から捉. えるものであるといえよう。個数減検査での3つめの数行動は、 「8ひく1は 7だから」という説明に表されるように、「減法数式」による個数減集合の命. 名である。この3種類の数行動の出現動向を表2に示したところ、これらの数 行動の発達性が示唆された。つまり、計数による 個数減の判断は、幼稚園段階で少数:の出現をみた. 表2.「個数減」の数行動. 後、ほぼ消滅した。数構造による判断は幼稚園段. 計数減 数 の 法. 階から出現し、特にペルテス群では小2段階まで 主たる方略として用いられたが、加齢とともに減. ぺ幼. 少していく傾向にある。減法数式による判断は小. ル 小1 テ 小2 ス 小3. 1段階ではじめて出現し、加齢とともに主軸とな ● ■. っていく。したがって、発達の順序は、第1段階 に「計数」が位置し、次に「数の構造」となり、. ●.」 ・專9 臨。 ・. ・ ・邑■ 冒 隔. 健幼 常小1 児 小2. 回数 造式 △○ ◎ ・ ・○ ・. △○ △○ ○△ ・ ・ ◎. ● ●o ■●.o・● o. ・9鱒9. 小3. ・ ◎. 第3段階として「減法数式」となるのである。ま た、この発達の順序性を裏付けるデータとして、. 幼稚園段階から小1段階1学期にかけての縦断研. 空欄:出現率。% ・:出現率工7%未満 △:出現率工7%∼ ○:出現率44%∼ ◎:出現率75%以上. 究の結果があげられる。すなわち、幼稚園段階で. 「計数」と「数の構造」による判断がなされ、小1前半期では「計数」は. は、. 消滅して「数の構造」のみとなり、小1後半期では、わずか1名ではあるが、 「減法数:式」での個数減の判断方略が観察されたのである。. (3)数行動出現の動向. 数行動について両三を比較すると、幼稚園段階では少数:の計数方略とともに. 主として数構造での判断を用いる点において同じ傾向が観察されたが、数行動. の相違は小1段階以降に顕著となった。つまり、健常児群では小1段階で数構. 21.

(25) 造方略が終了、かわって減法数式が用いられ始め、小2・小3段階ではその減 法数式が主たる方略となった。これに対してペルテス群では小2段階まで数の 構造が主たる方略として用いられるとともに小3段階まで存続し、減法数式は 小3段階でようやく主たる方略として出現した。このように本検査では、個数 減判断方略である数行動の出現時期に両群のずれがみられた。. ところで、減法数式方略はその学習性から考えると幼稚園段階で皆無である. のは当然の結果であるが、加減法の学習が導入されているはずの小1段階以降 においてペルテス群での出現が遅いのはなぜであろうか。. 個数減課題を呈示されたあと、「のこりは7個」と判断したその理由につい て、健常児の多くは減法数式方略の「8−1=・7だから。覚えたので知ってい る」とした。このことは、8から1の個数減は、計数や数系列を思い出すとい. った手間のかかる方略ではなく、反射的な8と1と7の関係から導きだされた ことを物語っている。減法数式が課題解決の方略として実践力を与えられてい るのである。対するペルテス群の小1段階以降の被検児たちも学習経験により. 当然8−1=7であることを理解はしている。にもかかわらず、8−1=7と いう減法数式が使用されないのは、それを実践の場での簡便な方略として適用 し得ないことを示唆している。この減法数式方略使用の時期のずれは何に起因. するものであろうか。ちなみに、A養護学校小2在籍児童で、ペルテス病以外 の整形外科関係の症状により短期入院の者5名の個数滅の判断方略は、全員が 減法数式であった。この事例は、減法数式方略出現の時期のずれを説明するひ とつの資料となり得るかもしれない。. 22.

(26) 3 集合の命名検査. (1>検査における通過. 本検査について、全開検死が3課題において命名を可能とした。. (2)計数における数行動と発達性. 集合を命名するときに用いる計数の数行動は次の3領域に分かれ、それぞれ の数行動に発達性が観察された。. ①記号化すべきモノを見るための数行動 第1段階は「指を用いる」方略である。なお、「指を用いる」の中に もスモールステップでの発達性が観察された。すなわち、指でモノを押 さえる段階、次に指をモノの手前にずらして押さえる段階、そして指を モノから空間的に離してモノと対応させる段階へとつながる。. 第2段階は「目を用いる」方略である。この「目を用いる」の中にも スモールステップでの発達性が観察された。すなわち、目をモノに対応 させる毎にうなずく段階、次に目でモノを追う段階、そして一目で把握 する段階へと発達していく。なお「うなずき」方略について、こどもは 「頭で数えた」と表現した。. ②数の用い方に関する数行動 最初の段階として「1つずつ数える」方略、次に「2飛び3飛びなど で数える」方略、そして最後に「合成で数える」方略が発達性を伴って 観察された。. ③数唱時の声に関する数行動 はじめは「声を出して数える」段階で、次に「小声で数える」段階と なり、さらに「計数の最初は小声ではじまり、終盤は唱なしとなる」段. 23.

(27) 階に移行し、最後に「声を出さずに数える」段階となった。なお「声を 出さずに数える」について、こどもは「心の中で数えた」と表現した。. ところで、この命名への計数方略の発達について幼稚園児の1事例がある。 彼は、モノを1つずつ数えるときは、発達段階が上位の「目で見て、小声で」. の方略を使ったが、幼稚園児としては比較的難易度の高い2飛びでの計数を用 いた時は、:方略レベルが下位の「指で押さえて、声を出して」に切り替えたの. である。このように、こどもたちは計数する対象の集合に応じて計数方略を使 い分けていることが観察され、同一被検児でも、命名の3種の課題に対応して 計数方略を使い分けている場合が多かった。. (3)数行動出現の動向. 表3に、命名検査での数行動の出現動向を課題別に示した。 表3,命名の数行動 見る技法 ベル群1健常群 …. 数 学. } 年. w目三目 でi で ゥi 見 るi る…. 数の用い方. ペルテス群i健常児群. 数唱時の声. ペル群i健常群. @ …⊥ 飛 合i1 飛合. @…声 声i声声. 対 び 成i対 び成1 計 1工 計. あ なiあ な ●. ?し;り し. 対 数 i対 数 ?. i応. ■ o. 幼. 円 1 形 2. 3. }一一鳴一一噸一_. ラ 幼. ○ △i△ ○ ・ ◎i・ ◎ ・ ◎i ◎ ・ ◎i・ ◎ _喚___晶______. ?; i△ ◎. △Oi・@・ ◎i・ ◎ 層・ ◎i・ ◎______ユ_____ ;◎. ン !. i△ ○. ○ △. @. }◎. い ◎. ・ ◎i・ ◎ ○ ・ ・iO △ ・ △ △ △i△ ○ △ ◎i△ ◎ ○ OiO ・ ・ △ Ol・ ◎ 一_輔_鴫____一_乙_____心__一__. ?. 2. i◎ ・ ・. ○△ i・○○・ ○ △i・ ○ ○. 2. ______こ_______一. ●△ △ △i・ ○ △一一一一頓一一一一一周一トー一一一一一一一日一一. ●○ △. iO △ ・. _ 2. O △い ◎ E「 ◎i・ ◎. @◎i @ ,△ Oi・ ◎一_____4一_一___ 3@ i・ ◎. ? 3・一一軸一一一闘闇. @幼 整 1 一. 2. 3. △ Oi△ ◎ △ Oi△ ○ △ Oi△ ○ ,. ◎ i△ ○ ○ ・ ・i・ ◎ ・. △ ○ ・iO O 1. ・ ◎i・ ◎. △ Oi ◎. △ Oi△ ○ 1. 空欄:出現率。% ・ :出現率17ラ6未満 △ : 出現率17%∼ ○ : 出現率44%∼. ◎:出現率75%以上. 24.

(28) ①記号化すべきモノを見るための数行動 方略を旨旨にみると、ペルテス群においては幼稚園段階で「指を用いる」こ. とが主たる方略であり、次の小1段階で「指」と「目」の双方が「目」に重心 を置いて出現したことから、この時期は「指」から「目」への移行期と見られ. る。小2段階以降は「目で見る」方略に移行した。対する健常児群では、幼稚 園段階でペルテス小1段階と同様の「指」から「目」への移行期が出現し、小 1段階以降では「目で見る」が主たる方略となった。 したがって、 「指を用いる」から「目で見る」方略への移行年齢に両下間の. ずれがあり、この移行期はペルテス群では小1段階であるのに対して、健常児 群では幼稚園段階となっていることが明らかとなった。. ② 数の用い方に関する数行動. 両群の数の用い方を比較すると、ペルテス群は1対1対応方略がどの学年段 階においても比較的多く用いられているのに対して、健常児群では小1段階に おいてすでにより合理的な飛び計数方略へと移行し、小2段階では飛び計数と 合成が主たる方略となるというように、ここでも健常児群とペルテス群の数行 動の使用時期にずれがみられた。. さらに、数の用い方での両型の顕著な相達はランダム並び課題に現われた。. すなわち、ペルテス群では1対1対応と飛び計数が主たる方略であるのに対し. て、健常児群では1対1対応が小1段階以降に減少し、替わって飛び計数と合 成が主たる方略となった。この課題で合成方略を用いた者は、下図のドットが. 5と2のまとまりで捉えら:れやすい並びであるために、全員が5と2の数の合 成で命名した。この合成方略は健常児群ではすでに幼稚園段階から観察された. が、ペルテス群では小2段階になってはじめて出現してきたもので、合成方略 使用者は健常児群が11/33名、ペルテス群4/22名で、両群の差は大きい。こ の点に関して、短時間に呈示された集合の量化検査で、健常児群のほとんどが. ランダム数図の5までをsubitizingで捉えることができたのに対して、ペルテ ス群のsubitizingで捉えることのできる数の範囲が4までであったことを考え. 25.

(29) ると、計数方略の中の合成法とsubitizingとの関連が推測される。. なお、数の用い方に関する方略の種類に相違が観察されたことを指摘してお く。つまり、健常児群では9種のより効率的な方略を駆使して命名諜題を遂行 したのに対して、ペルテス群では4種の方略が観察されたのみであった。. ③ 数三時の声に関する数行動 ペルテス群では、幼稚園段階で数等と小声の技法、つまり「声あり」が多く. 出現したが、小1・小2段階は「声なし」が主軸を成した。小3段階では「言 なし」を主として、さらに「小声」技法も用いられた。 健常児群では、全課題を通じて圧倒的に「声なし」技法によった。. 以上のように、命名検査における3領域での数行動の使用時期の相違は、常 に健常児群がペルテス群に先行する形であらわれる。ペルテス群が1対1対応 とか指とか丁丁などの具体的な操作による方略からなかなか抜け出せないでい るのに比べ、健常児群は「目で見て」、「声なし」で飛び計数や合成による知 覚操作の方略で命名を行なうのである。この現象は、幼稚園児の縦断研究にも 現われ、健常児群は入学後には知覚操作の方略へと移行したのに対して、ペル テス群は依然として具体的な操作による方略の段階にとどまった。この両群の 特徴的な傾向は、Kephart(1960)が指摘したように、一般的に知覚的認知をす. る場合に身体の各部の運動を用いる段階から、最小限の感覚だけで対象を知覚 できる段階へと発達していくとされる、そのより効率的な方略を用いることへ の両群の相違から生じていると考えられる。そして、この効率的な方略使用の 相違については、数の用い方での方略種類の両群の差としても現われた。. 26.

(30) 4.多少判断検査. (1)検査における通過. 本検査において、全被検児が2課題とも通過した。. (2)数行動. 多少判断での判断理由として、3種類の数行動が観察された。 ひとつめは「長いからこちらの方が多い」、「こちらの方が巾が広いから多 い」、「おはじきがはみでているから多い」等の形態による判断である。ふた. つめは数詞レベルでの比較をする方略で、 「5と7だから7の方が多い」とい うものである。最後は「線でつないで比べた」、 「おはじきをくっつけるとわ. かった」という1対1対応を用いての比較方略であった。. (3)数行動出現の動向. 両課題ともに数行動は同様の出現傾向を示したので、両諜題での数行動の出 現動向をまとめて表示したのが、表4である。 この3種の比較方略の加齢に伴う推移の様相は、 表4.多少判断の数行動 健常児群において明快に現われた。すなわち、多. 形数対 態詞応 比 使比. 少判断課題においては、幼稚園段階で形態による 比較と数詞レベルでの比較の2方略が観察され、’. 較 用較. ぺ幼. 小1段階では形態による比較が減少するとともに. ル 小1 テ 小2 ス 小3. 数詞レベルでの比較が主軸となり、1対1対応比 較が少数ながら出現してくる段階、小2と小3は. 璽・r■幽●■鱒■・.・.■・●...魯.. 前段階でみられた数詞使用も姿を消して、かわっ て対応比較が主軸となる段階である。. 以上のような欝児群における明快な発達肋空 ○ : 出現率44%∼. ◎=出現率75%以上 存在に対して、ペルテス群での加齢にともなう使. 用方略の変化はそれほど明白ではないが、幼稚園. 27. 健幼 常小1. 児 小2 小3. ◎. ・ △ ○. ○ ・ △ ・. ◎. .■9.・oo.o曙.o噂●.o..■”瞳・o篤唱. ○ △ ・ ・ ○ △. ・ ◎. ^i灘1蜘. ◎.

(31) 段階で形態での比較方略が多く出現したことや、学年がすすむにつれて対応比 較方略が多く観察される傾向は、健常児群と様相を同じくしており、特に小1. 段階では、健常児群に比べ対応比較方略の出現率が高かった。しかし、小2段 階では数行動の発達により当然減少すべき形態比較方略が依然として主軸をな し、対応比較が従の方略となっているのは特筆すべき結果であった。. なお、大内・天野(1976)、野呂(1961)、伊藤(1963)、Russac(1978)、前田ら. (1986)および前田(1988)らの研究から知見として得られた「視知覚(形態)で. の比較」から「計数:での比較」、次に「1対1対応による比較」へという多少 等判断方略の発達の順序性と、本検査結果に示された順序性とは一致した。さ らにこの現象は幼稚園児における縦断研究結果にも発現し、比較方略の発達の 順序性が支持された。. 5・ 数:唱検査. A 上昇系列数唱. 表5に数唱評価を示した。 表5.上昇系列数回評価 健常児群. ペルテス群. 幼. A 1名 a l. 幼. P∼16A o. 小ユ. o ■o ■ ■ ●.畳 ● ■● ●. A 5 a ユ . . o ・ ・ , .. B噂●唐曹,●●曹. @. A. B. 7名 P. ユ. ■ 曾 雪 . ・ 層 o.. 小1 A. 小2. A 6. 小2 A @ B. 小3. A 5 a 2. 小3 A @ B. 層 . .邑.● ・. . . o. 9. 8工. ※表中の記号のみかた ・アルファベットの前の数字は数回範囲を示す。 ・数字のない場合は1∼100までの範囲である。. 例、1∼16A 1名:数唱範囲が1∼ユ6でA レベルの数唱をする者。. 6ユ.. 28.

(32) これによると、上昇系列数唱では、全被検児がAとBレベルで通過し、不可 であるCレベルの出現はなかった。数唱範囲をみると、ペルテス群幼稚園段階. で1から16にとどまっている者が1名あっただけで、その他はすべて100まで を可能としていた。したがって、前記の1名を除いて、幼稚園段階よりすでに 1から100までの数を順序よく数唱できることがわかる。このように、本検査 ではペルテス群と健常児群との間に特筆すべき相違はない。. B 下降系列数唱. (1)誤りの数行動について. 両三共通の全体的傾向として、3パターンの呼唱の誤りが観察された。. ①三十を規則的に脱落する。 99,98,...........92,91,脱落, 89,88,...........82,81,脱落. 79,78,...........72,71,脱落,. ②何十を規則的に(何10−10)に置き換える。 99, 98, . . .. . . . . . . . . 92, 91, 8@,. 89, 88, . . .. . . . . . . . . 82, 81, 7@,. 79, 78, . . .. . . . . . . . . 72, 71, 6@,. ③19∼11の部分脱落をする。 「29,28,...........22,21,20,じゅうきゅう,. 8,7,6. ........2,1」というように、本来 は20の次を19とすべきところであるが、 「19(じゅうきゅう)」を. 「10,9(じゅう、きゅう)」と捉え、続けて、言い慣れた「10,. 9,8,7......1」と唱えてしまい、結果的に19から. 29.

(33) 11を部分脱落してしまう。. (2)三唱範囲について「. 表6より100∼1の数唱範囲については、幼稚園段階で両群の差が顕著であ った。すなわち、健常児群では半数の者が下降系列三唱の範囲を100∼1とし ていた。これに対してペルテス群の数唱範囲は、全被三児が20以下にとどまっ. た。小1段階以降では、両群の間に数唱範囲についての顕著な相違はみられな かった。. (3)数唱における通過. 表6より、評価点AとBを課題通過とし、通過者数を各学年ごとに両群比較 をすると、幼稚園段階から小2段階にかけて健常児群の通過者がペルテス群よ. り顕著に多い。小3段階での通過者は、逆にペルテス群の方が健常児群より多 かった。 表6.下降系列数回個入評価 評価. ペルテス 幼. iCBA. アi O b1 奄W. 表7.下降系列数唱評価 評価. 範囲. CBA. 健常児 10∼エ G5ん工. 幼. 800. あ{い}コi八・i. i評価 範囲 ペルテスiCBA. 範囲. 幼. エG∼1. アi O 工O∼1. @疹i8 11=圭. Q0∼1 Q0∼1. Q0∼1. 縦断研究(幼∼小1). R0∼工. i評価 範囲. 健常児 iCBA. 一三 818=1. @皇i818=1・ li§. “…§. dつ 1. ゥ1 小1.. エi オi. 20∼1. 小1. く=. ○. けi. ○. 小1アi OIO∼エ ウiO. 10∼1. こi/. 2. 回. さしす. Jiキiクi. イiO. 50∼1. 50∼1. 百. ケiO. §. せi. サi たi ちi. 小2. li§. 8セiソi. 50∼工. 小2. つi§. 」811=1 3 イiO 50∼1. ○ 8. 8. てとなiにiぬi. 小1. 小3. 鋸. 小3. 享i§. 二i O. 8. 慧iへi. 堅…σ亀 1みi. … ○. むi. ○. ※範囲の空欄は10G∼1を表す。. 30. 50∼1 6G∼工. 目薯iO。 かi O. 小1. 小1 う1. 0工。∼1. 讐 …. 冒li 88. @えiO 50∼工. 3 あiO. ※ 範囲の空欄はIOO−V 1を表す。. ね1 のi はi. №奄W11=1. 2 いiO 回 えiO.

(34) (4)縦断研究結果. ペルテス群と健常児群の幼稚園期3学期末から小学1年生1学期末まで、3 回の縦断観察を実施した結果を表7に示す。これによると、両群ともに数唱範 囲の拡大および数唱評価のレベルアップが観察された。しかし、ペルテス群は. 1学期前半期で検査成績があがったものの、その後の1学期後半期まで停滞気. 味であるのに対して、健常児群は1学期後半期まで順当な伸びを示し、1学期. 後半期において数等範囲を100∼1とした者は5/7名、そのうち数唱課題通 過者は4名であった。つまり、健常児群の57%は100からの下降系列数回が可 能となったのである。これに対して、同期のペルテス群で数唱範囲を100∼1 とした者はみられず、最大で50∼1の数範囲を持つのみであった。. 数唱についての2課題の結果をまとめると、数回検査の上昇系列課題におい て両群の相違は観察されず、下降系列課題で相違が認められたところに、本検 査の特徴があった。. ところで、上昇系列の数回は日常生活や学習の中でしばしば体験するもので ある。そこには学習性が存在する。これに反して、下降系列数唱は、本検査で はじめて体験した被三児がほとんどであった。過去における学習性がないので ある。この未経験の下降系列三唱での両群の相違は何を意味するのだろうか。. 数唱検査は、数系列における数の位置関係を把握しているか否かを測るもの であるが、未経験の数唱課題である下降系列を可能にするためには、今までに 知識として累積されている数の構造のシステムから、数の体系を推論し、構築 していく論理的思考が作動していると推測されるのである。したがって、この 数の体系を構築していくべき論理的思考の積極的に用いられる時期のずれが、. 下降系列下期検査結果にみられる両群の差をもたらしているのである。そして. このことは、幼稚園段階の3学期末から小学1年1学期末までの縦断研究結果 から明らかになった下降系列数唱の発達にみられる商群の顕著な相違の理由で もある。. 31.

(35) 6 保存性検査. A 数の保存性. (1)保存性の獲得. 数の保存性についての4課題中の完全な誤反応は、1例のみ観察された。そ れは、本検査で最初に呈示された異配置の集合課題の6と6の比較において、 ペルテス幼稚園児1名が集合の形態のみかけによる判断で疎を多いとしたので 数:導入したところ、やはり疎を多いとした1例である。これは、数導入によっ. て各集合を6と6と命名できても、そのドットの並びぐあいである形態に影響 されて2つの集合が同じ大きさの数であることが信じられないという、保存性 の確立していない段階にみられる特有の反応である。この他、課題呈示直後は 即その集合の形態に影響され、疎の方もしくは密の方を多いとした後、自主的. に正判断に訂正できた事例が6例あったが、自主的な訂正であるために、この 6例は保存性獲得とみなされる。第2番め以降の課題、すなわち異配置の集合. 3と3の比較課題および同配置から一方を動かして異配置にした時の5と5お よび3と3の比較課題では全被検児が保存性についての正反応を示した。 ところで、数の保存性検査の通過率について、伊藤(1963)は3歳児での実験. で、配置の形態を被検児の前で変える課題の方が、最初からの異配置課題より も誤答が多かったと報告している。そして、その理由として形態の変わる過程 がこどもにとって問題となるために、形態のみかけに影響されると分析してい る。しかし、本検査では伊藤の実験結果に反して、最初からの異配置課題であ る第1課題にのみ集合の形態のみかけに影響されての誤反応が観察されたが、. この誤反応が学習となって、後続の3と3問題以後では形態のみかけに影響さ れることがなくなり、全被検児が正反応した。これは、伊藤の実験対象者が3. 歳児という低年齢であったのに対して、本検査の被検児は幼稚園段階の6歳児 から小3段階であるという点で、この学習効果がより強く生Oたためではない かと推測される。. 32.

(36) (2)保存性の判断理由に関する数行動. a.異配置課題における数行動 ① 数詞使用. ② 対応比較(1対1対応、2対2対応、3対3対応). b.同配置から一方を動かして異配置にした途中変形課題における数行動. ①直接比較. :数詞使用および対応比較による比較。. ② 論理的思考比較:具体的には次の4種類の数行動である。. 数の同一性:元の数のまま変化していないから同じであると判 断ずる。こどもの表現では、 「もとの3つのまま. だから同じ」とした。 同等不変性:はじめに2つの集合は同等だったから変形後も同. 等であると判断する。こどもの表現では「さっき 比べたとき同じだったから」とした。. 変形同一性:おはじきが縮んだだけだから同じであるとし、集 合の形態の変形に視点をあてたものである。こど もの表現では「縮めただけ」、 「寄せただけ」、 「まとめても広げても同じ」とした。 同一性. :増やしも減らしもしなかったから同じとする。こ. どもの表現では「くっつけても、減らしたり多く したりしなかったから同じ」、「並べ替えても増 やしたり取ったりしていないから同じ数になる」. とした。. (3)課題別数行動出現の動向. 表8に、前述の数行動の出現動向を示した。. 33.

(37) 表8.数の保存性の数行動 途中変形課題. 異配置課題 6と6 1 3と3. 1’●’物”峰’風。’・曜画’6.’蹄”「’8網。●’闘随。輯・・’”.●億’鱒. 不 数対1不 数対 1可 詞 応}可 詞応. 使 比1 使 比 用 較1 用 較. @i. べ 幼. ル 小1 テ 小2 ス 小3●■9曜■ ・・8鱒弓■■●●o・ 雷■■●8■. 健 幼. 常 小1 児 小2. @小3. 書’●・四●■鯉圏邑層”8’欄6噛”・’。「’・曜’・冒■”圃墨噂●曲’舳’闘鱒”●騨. 理 直 論1理 直 論 1由 接 理!由 接 理. 不 比 的1不 比 的 可 較 比1可 較 比. @ 較1 △. △ △ △} ◎ ◎ 1 ◎ i ○ △; △ ○. 5と5 ; 3と3. ○ △1 0 △. d. 較. O△. △Ol △○ ・ ◎1 ・ ◎. △ Oi O △ 1. 量・●’嘔’”。’闘・’り’幽噂’o・”「”噛’●巳9鯛●・”騨・。”■●鱒。 ’噛’’”騨刷闘’●’・噛5’騨.卿’・i臼師・’”・.蜀・胆”嗣。’電暉朋”.●’. ◎△! ◎ ○ Ol O○ △ ○ ○! △. 1. E △ Ol O O ○ ○} △ ◎1. ○ ○. △ ◎ 1△ Ol. O △. 「Oi △○ 空三論満 ○:出現率44%∼ ◎:出現率75%以上. ① 異配置課題 両群ともに加齢にしたがって、数詞使用から対応比較への推移が見られた。. この課題で特徴的な数行動は、ペルテス小1段階にのみ対応比較の出現が皆無 であったことである。数詞使用と対応比較の出現について両群を比べると、両 群ともに数詞使用方略を主軸とするが、対応比較の安定した出現はペルテス群. では小2段階、健常児群では小1段階であった。 数詞使用と対応比較の発達性については、数詞使用が対応比較に先行する。. なぜなら本検査において精神遅滞を伴った被検断の多くが計数による数詞使用 によって集合の比較をしたことと、前述の伊藤の実験においては自主的に事物. の1対1対応を比較判断の方略として用いた者が見られなかったこと、また野 呂(1961)も伊藤と同じ結果を報告していること、さらには、Russac(1978)の. 5歳児から7歳児までを対象に多少等判断をさせた結果、幼児は1対1対応よ りもむしろ数詞使用で判断したという報告、前田ら(1986)および前田(1988)が. 34.

(38) 1対1対応は計数よりも使用されにくい方略であると指摘したことにより、数 詞使用と対応比較の発達の順序性が示唆されているからである。したがって、. 対応比較方略が可能となる時期においてペルテス群は健常児群より1年遅いこ とが明らかとなった。. ところで、対応比較方略については、前述のように多少判断検査でも数行動 のひとつとして観察されたが、そこでは本検査結果とは対照的にペルテス小1. 段階での対応比較が多数出現した。これにより、ペルテス小1段階ではすでに 多少判断の方略として対応比較を持っているということが明白である。なのに. 何故に本検査ではペルテス小1段階に対応比較が皆無であったのだろうか。そ れは、対象となる集合の配置の達いによる。つまり、多少判断検査でのおはじ きは同配置であり、本検査でのおはじきは異配置に設定された。同配置のおは じきは対応が容易であり、これに比べると異配置での対応は、対象を短時間に まとめて見る操作が特に必要とされるので、より高度の技能となる。したがっ. て、本検査においてペルテス小1段階で対応比較が出現しなかったことは、対 象をまとめてみることの稚拙さを示唆するものである。また、対応比較の機能 について考えてみると、対応比較は計数よりも操作手順が少ないという点で効 率的な比較方略である。したがって、対応比較方略出現時期の両群のずれの背 景には、効率性の原則に応じることや対象をまとめて見てとる力の相違が存在 すると考えられる。. ② 同配置から一方を動かして異配置にした途中変形課題 本課題における数行動として、異配置課題には見られなかった論理的思考比 較が丁丁で同様に多く出現したが、その論理的思考比較の内容において両下間. の相違が観察された。すなわち、表9が示すとおり、論理的思考比較の主な数 行動として「変形同一性」と「同一性」が観察されたわけであるが、「増やし も減らしもしなかった」という数の本質に着目した「同一性」が健常児群にの. み出現し、ペルテス群では1例も観察されなかった点である。したがって、論 理的思考のメカニズムとしては、ペルテス群は数の属性である集合の形態に着. 35.

(39) 目した「変形同一性」が主たる方略であるのに対して、健常児群では「変形同 一性」とともに「同一性」の2つの思考過程を持っていることが示唆される。. なお「同一性」による判断をした者は、健常児群では33名のうち9名、延べ12 名にのぼった。. 表9.論理的思考比較の数行動. 三. 変換率 sa. 一ペルテス. 量. Tと513と3 1’’’”」’’’”闘開’量’”●’騨’”. ’一弓. 40. 衷寬. 変 同1変 同 1形 一1形 一. 同 性}同 性一. 3g. }一. 性 権 ぺ 幼. 2 h. 20. 4 13 i44. ル 小1. 10. e3 小2 14…・一………一…・…・一…1一・一……… ス 小3 健 幼. ?小1. 兜 小2 小3. 3 112 1. e. R 213 1 1. %. 幼. !j、. ノ」、. ノ」、. 韓. 5 214 3. 3 212 1. Fig.3,数の保存の比較方略の変換率. (4)比較方略の変換. Fig.3は異配置の2課題で数行動を変換した者と、同配置から異配置への途 中変形の2課題で数行動を変換した者の総出現率を示したものである。 これにより、方略変換の数行動は各学年において常にペルテス群より健常児 群に多いことが明らかである。これは何を意味するのだろうか。数行動を変換 させるということは、つまり、対象に応じて比較方略を自在に操る能力の存在 を意味するものである。はじめの課題で適応させた方略をそのまま次の課題に 移行させて使用するケースが多いのがペルテス群で、対象に応じて方略を使い 分けるのが健常児群であるといえる。場に応じた柔軟な方略使用の相違がここ に現われている。. 36.

(40) B’. t量の保存性検査. (1)液量の保存性の獲得について. ①正答率について 物質量の保存の獲得時期についてPiagetら(1966)は7∼8歳の具体的操作期 であるとし、天岩(1973)は液量、数、長さ、粘土の保存完成時期は、7歳6か. 月から8歳5か月の年齢段階であり、なかでも数と液量はほぼ同時期に完成す るとしている。ところで、表10は本検査での液量の保存課題正答率と数の保存 課題正答率を並記したものである。これにより、数の保存は両群ともに、幼稚 園段階からすでに確立していることが結果として得られたので、前述のPiaget らの研究と異なり、数の保存性は液量の保存性に先行することが明らかになっ た。このことは、軽度知的発達遅滞児10名と教室における学力遅進児3名の、 計13名を対象にした両保存検査結果で、同様の傾向が観察されたことからも支 持されるものである。 表10。数および液量の保存検査正答率 学年 数 液量. 幼}小11小2}小3. ロ ペル 健常}ペル 健常}ペル 健常}ペル 健常. ぐ 1001100 100. 92 だ 1001 100 100 1 100 0 83 561100. 251. 89{. 86. 100. 表11,健常児の液量保存検査 正答率(金子による). 年齢 正答率. 6歳 7歳 8歳 20. 100. 90. 表11は、金子(1979)が精神薄弱児の保存概念について行なった実験的研究に. おいて対照群として設定した普通児群の結果である。この金子の行なった実験 は同等性保存を内容としたもので、本検査と内容を同じくしているので、正答 率比較のために引用した。金子が対象とした年齢段階を本検査の学年段階に対. 37.

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