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B t量の保存性検査

(1)液量の保存性の獲得について

①正答率について

 物質量の保存の獲得時期についてPiagetら(1966)は7〜8歳の具体的操作期 であるとし、天岩(1973)は液量、数、長さ、粘土の保存完成時期は、7歳6か 月から8歳5か月の年齢段階であり、なかでも数と液量はほぼ同時期に完成す るとしている。ところで、表10は本検査での液量の保存課題正答率と数の保存 課題正答率を並記したものである。これにより、数の保存は両群ともに、幼稚 園段階からすでに確立していることが結果として得られたので、前述のPiaget らの研究と異なり、数の保存性は液量の保存性に先行することが明らかになっ た。このことは、軽度知的発達遅滞児10名と教室における学力遅進児3名の、

計13名を対象にした両保存検査結果で、同様の傾向が観察されたことからも支 持されるものである。

表10。数および液量の保存検査正答率

学年

液量

応させると、幼稚園、小1、小2である。したがって、金子の結果と比べると 本被二二のうち特に健常児小1段階で液量の保存に難を示したことがわかる。

 液量の保存検査の正答率について、ペルテス群と健常児群とを比較すると、

幼稚園段階と小1段階で顕著な差がみられ、前者の段階では健常児群が、後者 の段階ではペルテス群が優った。

 液量の保存獲得時期について幼稚園段階で認められた両群の差異は、幼稚園 児の縦断研究結果からも支持された。,すなわち両群間の差異の開きは、小学校 入学後の1学期前半期でさらに大きくなり、この期のペルテス群の正答者は皆 無であるのに対して、健常児群は3/7名が正答し、この正答率の開きはその まま1学期末まで続いた。なお、幼稚園段階で保存検査に誤反応した者は、還 逆性(②に詳述)のない場合が多かったが、入学後は保存成立の必要条件であ

る還逆性を全員が有するようになり、この傾向は両群ともに同じであった。

② 還逆性(逆操作)について

 Piagetら(1941)は、「真の可逆性とは、逆操作を操作として発見することに ほかならない。それ故、直感から操作行為への移行を示すこのような思考のメ カニズムは保存のはじまりすらも、生じさせる」とし、保存概念は可逆性のは たらきから成立することを指摘した。さらに「可逆性とは、順操作と逆操作、

すなわち思考操作のメカニズムのことなのだ。出発点へ試行錯誤的にあともど りするだけでは、なんら保存を確保するのに十分ではない」と、可逆性を定義 づけるとともに、 「逆操作」の存在を明らかにした。

 ところで、可逆性を保証する「逆操作」について位頭(1974)は、 「非保存の 者は、保存概念形成に近づくにつれて、逆操作(丁丁性)を理解するようにな る」と逆操作の発達性の位置づけをした。

 可逆性についての以上の研究の論点に則り、本検査においても液量の非保存 の被検児に対して二丁性(逆操作)の有無を調べた。この結果、幼稚園段階で はペルテス群、健常児群ともに非保存の者は還逆性が生じていないケースが多 いことがわかった。小1段階ではペルテス群では非保存の1名はすでに二丁{生

を有しているのに対して、健常児群では、非保存の4名のうち3名が未だ還逆 性のない段階に留まっていた。その他の学年の非保存の者をみると、ペルテス 群では小3の1名が、健常児群では小2段階の1名があり、ともに還逆性を有

しなかった。

(2)保存性の判断に関する数行動

 被三児の全員が判断理由の説明も可能であった。保存牲を判断する理由とし て、次の数:行動が観察された。

①保存性がない場合

  健常児群小1の1名を除いた他のすべての被検:児は、コップbを多い  とした。その判断理由として「(水面が)ここまであるから」や「(水面  が)高いから1、「こっちは長くていっぱいあるから」をあげ、コップ  bの水面の高さのみに焦点をあてた数行動であった。

②保存性がある場合

  主として次の2種の数行動が観察された。

    同等不変性:はじめ同じだったから入れ替えても同じ。

相補性 :コップの太さと高さの2視点に注視した思考ができ ることを指す。こどもの表現としては「(コップb は)細いぶん上に浮いてきた」「こっちは太くて短 くて、こっちは細くて長い。見た目は変わるけど同 じ」「(コツbは)太さが違って細いから、その分 野も高いしきゅうくっだから縦に多くなる」などが

ある。

 保存性成立の場合の2種の判断方略のうち、もっとも出現率の高かったのは 同等不変性であり、これは両群ともにおなじ傾向であった。数の保存性課題で

出現率が高かった変形同一性は1例もなく、真の同一性である「増やしも減ら しもしなかった」も出現は皆無であった。このように、数の保存性においては 2例しかなかった同等不変性での判断が、液量の保存性においては圧倒的多数 の出現をみたところに、数と液量の保存性に対するこどもの思考メカニズムの 特徴が示唆される。

 同等不変性についで多く出現したのが相補性であった。これは丁丁ともに5 例ずつ観察された。なお、「もとに戻せば同じ」という可逆性方略と推移律方 略は健常児群で各1例が観察されたのみであった。

 そこで、まず、可逆性での判断が健常児群のわずか1例しかなかったことを 問題として取り上げてみたい。可逆性とは、Piagetら(1941)によると順操作と 逆操作、すなわち、思考操作のメカニズムのことであるされる。したがって、

色水が入れ替えられたのを見た時、元に戻せば同じであるという逆操作が容易 にできるものと推測されるが、この単純に元に返る復元性の操作を意味する逆 操作の思考過程がなぜ1例しか観察されなかったのだろう。

 次の問題点は、保存性の判断方略として相補性が可逆性より多く観察された ことである。Piagetら(1941)は「液体の保存性を認めるためには、水面が高く なれば、いつも、巾の方がへることによって、補われているのだということを 理解する必要がある。つまり、これらの2つの値は、たがいに反比例している のだということがわからなくてはいけない」という。言いかえれば、 「いくつ かの関係を同時に考慮して(水面の高さ、巾、コップの数など)、2つの量を たえず、比べる」という関係の乗法が可能であることが液量の保存性を生じさ せる。これを相補性というのだが、本検査においての相補性の出現は前述のよ うに、丁丁それぞれ5例、合計10例が観察された。ところで、位頭(1976)は軽 度精神薄弱児への可逆性と相補性の実験で、相補的説明は可逆的理解ができて から可能になるという知見を得ている。またCraigら(1973)は普通児でもこの 相補性で説明するのは困難であると報告している。したがって、これらの研究 から可逆性は相補性に先行すると考えられる。にもかかわらず、本検査の結果 では、可逆性より相補性の方が多く用いられる保存性の判断方略なのである。

 このように、保存性の判断方略に関しては、本検査において観察された数行 動と、位頭やCraigらの研究にみられる数行動との間に顕著な相達が認められ るが、本検査でのべルテス群と健常児群それぞれの保存性判断方略の出現を比 較すると、両群ともに同様の傾向がみられ、特別な違いは観察されなかった。

7 推移律検査

A 長さの推移律課題

(1)検査における通過

 判断理由を考慮に入れずに課題に正解した者をみると、ペルテス群幼稚園児 1名が判断理由「わからない、」で誤反応した以外は、全員が通過した。

(2)数行動と出現動向

 本課題での数行動には、次の3種が観察された。

   ①直観的判断:「さっきの方が長いと思った」「青が細かったから」

       「青が長細かったから」 「青が長いもん、青が好きや       もん」等、みかけから直感で判断する。

   ②半推移律:「赤より青が長いから」というように、2度比較した        うちの1回の比較結果のみで判断する。

   ③推移律 :「青は赤より長く、赤は黄より長いから、黄より青が       長い」という推移律での説明が正確にできる。

 この数行動の発達性をみると、低学年で理由なしと直感で判断するケースが 多く観察され、学年がすすむにつれて、推移律で判断できるようになり、小3 段階ではほとんどが推移律の思考を可能にしていた。

 表12に、本課題において推移律での判断を 可能とした数を示した。これから、両群の推 移律方略の獲得時期にずれがあることが示唆

された。

B 数の推移律課題

表工2.長さ課題の推移律

ぺ 健 ル 常 テ 児

小1 △ ○ 小2 ○ @

小3 ◎ @

一二難甕満

8i瞬謡撫上

(1)検査における通過

 本課題での正答率は両群ともに100%であった。

(2)数行動と出現動向

 判断理由数行動として、次の4種が観察された。

   ① 直接比較

     直観的判断:カード上の赤と青のドットの並び具合を手がかりにし        て、赤カードと青カードを直接比較する。「青の丸が

       多かったように思う」、「青は赤より大きな形をして        いた」、「青は赤のここらへんにも丸があった」等。

     数詞使用 :「5と7だから青の方が多い」というように、数詞で        直:接に赤と青の多少判断をする。

   ②半推移律:「青は緑に勝ったから」というように、2度の比較の        うちの1回の比較結果のみで判断する。

   ③推移律 :「青は緑より多くて、赤は緑より少ないから青の方が        多い」 「赤と緑と対戦して赤が敗けた。青と緑は緑の

       方が敗けたから青の方が勝ち」という正確な推移律で        の判断をする。

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