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スリル構造の明確化についての考察

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Academic year: 2021

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スリル構造の明確化についての考察

著者

古澤 照幸

雑誌名

埼玉学園大学紀要. 人間学部篇

5

ページ

99-107

発行年

2005-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1354/00000953/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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1.はじめに

 スリルとは、いったいどのように定義した らよいであろうか。スリルについての欲求に 関しては、Farley(1986)の“Big T” 、Zuck-erman(1978)のThrill and Adventure Seeing がある。Big Tというタイプの人間はスリル を強く求める(thrill seeking)傾向にあるが、 スリルのある職業、例えば警察官や消防士の ような職業につけば満足し、よい成績をあげ るという。Thrill and Adventure Seeing(以下、 TAS)はSensation Seeking Scale FormⅤ(SSS-FⅤ)の4つの下位尺度のなかのひとつの尺度 概念であり、定義としては「スピードや危険 を含むスポーツや活動に携わろうという欲 求」(Zuckerman, 1979)とされている。パイ ロット、消防士、機動隊の隊員、レースカー のレーサーがTASにおいて得点が高い。古澤 (2000)が指摘しているが、危険な業務につい て、スリルを求める傾向にあることは適性と しては高いものと考えられる。しかしながら、 thrill seekingに関しては反社会的行動との関 連も指摘されている。薬物乱用や未成年者の 飲酒の問題もTASとの正の関連が指摘されて いる(Pedersen, 1991;千葉県健康福祉部、 2001)。またいたずら電話をかける傾向につ いてもTASとの正の関連が古澤(1991)によっ て示されている(千葉県と古澤の結果はいず れもSSS-AE(古澤、1989)の下位尺度のTAS である)。  スリルについては、上で述べた職業適性や 反社会的行動の予測の他に、スポーツの適性 や交通事故の起こりやすさやテーマパークの 利用予測など研究としての価値は高いもので

Discussion on Clarifying the Structure of Thrill

  

古 澤 照 幸

FURUSAWA, Teruyuki  スリル構造を明確にするための検討を行った。153名の大学生に「あなたにとってスリ ルとはどのようなものか」という質問をし、自由記述文を得た。各文章を形態素解析し、 各文章中の形態素の共起度を計算し、共起度をもとに「キーグラフ」によって2次元グラ フを得た。高頻度語のみならず、中頻度語も反映されるように解析し、スリルを生起する ための基盤としての非日常性、不安や恐怖をスリルに転換させるためのコントロール感 などが見出された。 キーワード:スリル、スリルの欲求、チャンス発見、キーグラフ、刺激欲求 Key words :thrill, thrill seeking, chance discovery, key graph, sensation seeking

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ある。  しかしながらスリルという概念に明確な定 義を施している研究は少なく、Zuckermanや Farleyのように単にスリルを求める傾向とし て述べられているに過ぎない。確かに、TAS やBigTとさまざまな行動との関係からthrill seekingを説明する試みを行っているのであ るが、それでは、スリルとはいったい何かと いうことの説明は行ってはいない。  ところで、Apter(1992)は、reverse theory によってスリルを検討している。生理的な覚 醒と認知の観点からスリルを検討しているの であるが、覚醒が高い場合にスリルを感じる 場合もあれば、不安や恐怖を感じることがあ るとし、個人の認知によって、同じ覚醒水準 でも快と不快に感じ方が分かれるとした考え 方である。生理的な覚醒水準が高い場合に快 である興奮を感じる例として、スポーツ観戦 やパーティなどの期待感の高まりが考えられ よう。同じ高い覚醒水準でも、重要な面接試 験を受けなければならないときは不安を感じ ることだろう。低い覚醒水準の場合には、不 快感としては、退屈感の増加があり、1日の 仕事の後の入浴タイムなどはリラックスとい う心地よさを示すことになる。このように同 じ覚醒水準であってもどのようにとらえるか と い う 認 知 の 観 点 を 重 視 す る と こ ろ がre-verse theoryの特徴といえよう。  こういったApter(1992)の考えを参考に して、考察を古澤(2004)は行っている。156 名の学生に「スリルとは何か」「スリルの事態 とはどのようなものか」という質問を行い、 それをキーグラフ(大澤、2003)という解析 法によって2次元平面に形態素をプロットし、 スリルの構造化を行っている。キーグラフは 回答反応として高頻度の形態素がグラフ上に 反映されやすい。古澤(2004)の結果も意味 としては重要だと考えられるが、頻度の比較 的少ない形態素が結果に反映されていなかっ た。そこで、本研究においては古澤(2004) で使用した高頻度の形態素を意図的に削除し、 それ以外の形態素のデータ(これを以下、中 頻 度 と い う)を も と に 解 析 を 行 い、古 澤 (2004)と比較し、総合的な考察を行う。特に、 「スリルとは何か」という質問に関する回答を 分析する。さらに、高頻度データの結果にお いて重要と考えられる部分と中頻度データに おいて重要と考えられる部分を合わせ、キー グラフによる分析も行う。 2.方  法 2.1 自由記述調査  自由記述調査は、東京都内の私立大学の教 職課程の2つの授業において計156名を対象 に実施された。このうち、有効回答の得られ た153名分の文章を分析することにした。質 問内容としては、 1)あなたにとって、スリルとは何か。 2)スリルと考えられる事態にはどのような ものがあるだろうか。 3)スリルを欲しいのはどのようなときか。 4)あなたは何をすればスリルを感じるのか。 の4点であり、自由に回答するように求めた。 1)はスリルをどのようにとらえるかという 本人にとっての定義を問う質問であり、2) は実際のスリルについてのケースに何がある かを質問している。3)はスリルを欲しいの はどういうときか、4)はスリルを獲得する ための方法についての質問である。1)、2) はそれぞれスリルの定義と事態ということで スリル構造の中心的な質問になり、3)、4) は1)、2)の補足的な質問ということになる。

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本論文においては、中心的な興味となる1) について報告し、検討することとする。 2.2 解析法  自由記述文の解析については、Chasen(奈 良先端科学技術大学院大学松本研究室)に よって形態素解析を行い、キーグラフ(大澤、 2003)によって2次元平面に形態素をプロッ トし検討を行う。なお、先にも述べたとおり、 高頻度の反応(頻度7以上の41語)を削除し、 中頻度(頻度6から頻度3までの63語)を分 析し、その後高頻度と中頻度の中のそれぞれ 重要と考える語を合わせ、分析を行う。  さて、形態素解析の結果、キーグラフで不 要と考えられる ①接続詞「しかし、でも」 ②「に」「の」「や、たり」「て」などすべての 助詞 ③連体詞「その、大きな、同じ」 ④助動詞「う」助動詞「だ」 ⑤名詞・非自立・一般「もの・こと」 を削除し、単独でも意味が理解できる形態素 を残すことにした。  キーグラフは大澤(2003)によって開発さ れた「チャンス発見」における解析法である。 チャンス発見の原理(大澤 他、2002)は「目 の前の注目している状況とそれ以外のできご とや事物との関連の有無を見出し、人間の推 察によって、それらの関連のうち興味あるも のに意味を付与することだ」としている。こ のチャンス発見における解析方法がキーグラ フであるが、これは文章中の形態素の共起度 を計算し、形態素間の関係性をグラフ化する ものである。なお、共起度とは、特定の2つ の語について、同一文章中に出現する頻度の ことをいう。いくつもの文章中に特定の2つ の語が出現する場合、共起度が高いという。 キーグラフの実際の内部処理の手順について は、以下の通りである。 (1)ノイズ語の削除  形態素解析の結果、先に示した基準で不要 な形態素を取り除いているが、解析の途上で さらに不要な語が出現するときもある。この ような語を削除する。 (2)有人島の抽出  頻度の高い語を上位から一定個数(M1個) 取り出す。共起度が多い上位M2対の2語ず つを実践のリンクで結び、共起グラフを作る。 実線の連結部分グラフが有人島ということに なる。 (3)橋の抽出  文章D中の任意の語wについて、(1)の有 人島gの中のいずれかの語と同時に出現する 文の数を共起度f(w、g)とし、f(w、g)の値 が上位になるw、gのM3対だけを橋とする。 (4)キーワードと無人島の候補抽出  文章Dの中の各語wについて、(3)のすべ ての橋を介する有人島giとの共起度f(w、 gi)の和をkey(w)とする。key(w)の上位M4 語の集合をK(キーワード候補集合)とする。 Kのうちの高頻度語に含まれないものを無人 島の候補(白ノード)とする。Kのうち、key 値の高いものM5個を「キーワード」(ノード を丸で囲む)とする。 (5)図の完成  K内の各語wと、wとの共起度f(w、g)の 上位2つの有人島gを、すべて点線で結ぶ。 gとの接点はgのうちwと最も共起文数の多 い語woを選んでその間を結ぶ。ただし、点線 を引こうとする位置にもともと実線があれば、 点線を引かない。  なお、共起度についてはJaccardの係数を

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使用した。

 Jaccard(a, b)= p(a AND b)/p(a OR b) ∏  この係数は、a、bの2つの事象が生起する ときaまたはbが生起する確率とaかつbが生 起する確率の割合をとったものである。 3.結果と考察 3.1 スリルとは何か(中頻度語)  2.1の1)の質問「あなたにとって、スリル とは何か」については、2.2の解析法における M1、M2、M3、M4、M5は、それぞれ57、40、 57、36、15に設定している。  図1は高頻度語を除いたキーグラフの結果 だが、これ以前の初期の解析では、まったく 意味をなさないノイズとなる語は除外し、再 度分析を行った。これは頻度が低い語を中心 として分析することによってきれいに語と語 との関係性を抽出できなかったためであると 考えられる。そこでノイズ語を除外し、逆に 高頻度語でも加えられることによって意味を なさなかった語が意味を付与される場合には、 高頻度語(「危険」1語のみ)をあえて加えて 再度解析を行った。  さて、図1において、実線は2つの語の間 の共起度が高いことを示している。右下に位 置している実線によって結び付けられている 語群はひとつの大きな「島」と言ってよい。こ の右下の語群は、「可能」であるか「不可能」で あるか、「あまり」「すっきり」と「分か」ら「ぬ」 「気持ち」がスリルであるとしている、「島」 である。これはさらに「身」に「危険」があ り、「ハラハラ」する「負の」イメージのある ものを「常に」または「たまに」「求め」、「求 め」た「その後」「危機」から「安全」になっ たときにスリルを感じる。ただし、この「危 機」は「人生」で「より」「必要」とされてい るものである。左下の実線で結ばれている 「島」は「人間」が「危険」と「隣り合わせ ぬ 分かる 不可能 不可能 気持 気持ち 可能 可能 予想 予想 いつ 性 上 時 伴う 大きい の 線 死 境界境界 見る 思う よい 違う 毎日 たまに 求める その後 常に 安全 安全 身体 危機 危機 不安 不安 未知 未知 必要 必要 人生 人生 より 感覚 感覚 悪い 行為 行為 負 身 ハラハラ 瞬間 瞬間 楽しむ 及ぼす 紙一重 紙一重 危険 危険 隣合 隣合わせる 意味意味 人間 人間 しまう 一種一種 待つ 行う 一瞬 一瞬 面 要因 要因 少し 心理 心理 すっきり あまり 味わえる ぬ 分かる 不可能 気持ち 可能 予想 いつ 性 上 時 伴う 大きい の 線 死 境界 見る 思う よい 違う 毎日 たまに 求める その後 常に 安全 身体 危機 不安 未知 必要 人生 より 感覚 悪い 行為 負 身 ハラハラ 瞬間 楽しむ 及ぼす 紙一重 危険 隣合わせる 意味 人間 しまう 一種 持つ 行う 一瞬 面 要因 少し 心理 すっきり あまり 味わえる 図1 「スリルとは何か」という問いに対する中頻度語を使用したキーグラフの結果

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る」スリルを「意味」している。しかしなが ら「安全」を確保しながら、「行う」という 「意味」においてである。さらに、このスリル は「人間」の「心理」として「ハラハラ」す る危険と「紙一重」であり、「不安」で「未 知」な「感覚」を「要因」とするものである。  右上の島には「死」「の」「境界」「線」があ る。この島だけは他と点線によるブリッジが かかっていないが、相当、大きな危機であり、 他とは異質なスリルということになろう。  島と島を結ぶブリッジの役割としての点線 となるが、「一瞬」の「行為」や「瞬間」の 「楽し」みのようにごくわずかな時間に感じる ものとして、スリルをとらえている部分もあ る。  古澤(2004)の高頻度語による結果では、非 日常性や危険、また興奮などの感情がスリル を表す語として特徴的に抽出された。図1か らは、瞬間のスリルや危機の後のスリルのよ うな時間が関わるものが抽出された。また、 危険との隣り合わせや死の境界線のように危 険とは一皮隔てたところでのスリルが示され た。危機の後のスリルは、危険を乗り越える という意味合いが含まれると考えられるが、 危険との隣り合わせは、現在危険をコント ロールしているという意味合いが含まれる。 いずれにしてもApter(1992)が指摘するよう に危険へのコントロール感が不安ではなく、 スリルを生み出す要因となっているのであろ う。 3.2 スリルとは何か(高頻度語と中頻度語の 統合)  古澤(2004)の「スリルとは何か」につい ての高頻度語が構造化された結果からは、ス リルは「非日常的な経験であり、普段の生活 では経験できない、興奮したとき、緊張した ときに感じるドキドキする経験」としている。 また、こういった緊張や興奮は危険なときに 感じるものとしている。図2は、古澤(2004) の結果を確認しやすくするために簡単なモデ ル図として表したものである。ここでは、ス リルは「非日常性」を基盤としつつ、ドキド キする感情、リスクの伴う快感、危険の際の 興奮、緊張、そして好奇心を持ちつつ行動す る楽しさといった感情であることを示してい る。スリルは感情であるが、非日常性という 状況が必要であり、または非日常性を認知す るという前提が重要だと考えられよう。  そこで、高頻度語と中頻度語の重要語を合 わせた分析を行う際に選択する形態語である が、図1も参考としつつ、高頻度語に関して は古澤(2004)の島の部分にあたる「非日常 性」に関する語とその周辺につながる語、そ してキーワード語となる19語を選択した(表 1)。同様に、中頻度語についても、可能か不 可能か予想のつかない図1の右下から伸びる 島とその周囲、左下の危険と隣り合わせの島 とその周囲、そして右上の死の境界線の島、 およびキーワード語と時間に関連する「瞬間」 などの語の合わせて40語を選択した(表1)。 非日常性 感 情 ド キ ド キ 快 感 リ ス ク 興 奮   緊 張 危 険 楽 し さ 好 奇 心 図2 古澤(2004)の高頻度語を反映したスリ ルの分析結果のモデル図

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な お、「リ ス ク」を「危 険」に、「体 験」は 「経験」に、「行う」は「行為」に、「一瞬」は 「瞬間」に統一し、高頻度語、低頻度語合わせ て59語とした。  さて、解析において2.1の1)の質問「あな たにとって、スリルとは何か」については、 2.2の解析法におけるM1、M2、M3、M4、M5は、 それぞれ56、55、55、35、17に設定している。  図3が高頻度語と中頻度語を合わせたキー グラフによる分析結果である。右下には、図 1の中頻度語でも見られた島である「人間」 が「危険」と「隣り合わせ」のスリルが表れ ている。「危険」との「紙一重」という意味合 いでの「隣り合わせ」ということができる。こ の島に連結されている形態語に「好奇」があ る。これは高頻度語であった。この語が入る ことにより、「隣り合わせ」としての「人間」の 「心 理」「要 因」と し て「未 知」の も の へ の 「好奇」がスリルと関連するというように解釈 が可能である。未知なものは好奇心の対象で あるが、危険の可能性もあるということの意 味においてスリルなのであろう。その隣には、 図1の中頻度で現れていた「可能」か「不可 能」か が「あ ま り」「す っ き り」「分 か」ら 「ぬ」「気持ち」がスリルであるとする島があ る。これらの語群は「たまに」や「常に」「そ の後」といった時間に関連する語と一緒の島 である。さらにその隣には、「日常」「生活」 に「ない」「経験」や「非」「日常」「生活」の 古澤(2004)のまたは図2のモデル図で示し た「非日常性」が示されている。この島は 「可能」「不可能」の島とは「非」を仲介にし て結ばれている。もともと、「可能」「不可能」 の島は中頻度であり、古澤(2004)では出現 しなかった島である。中頻度語を活かす形で 分析を行うことによって、高頻度語の島と結 びつく形となった。「可能」か「不可能」か 「予想」がつかない、「すっきり」した「気持 ち」では「分か」らないというところが非日 常性につながるのであろう。非日常性の島は 「恐怖」「感」と結びつき、「緊張」「感」につ ながる。「緊張」「感」は中頻度語である「人 生」に「必要」な「危機」と結びついている。 再度「恐怖」にもどると、中頻度の「楽しむ」 「瞬間」とつながっている。恐怖感がある瞬間 に楽しみに変化することを示すものであろう。 さらにこの「恐怖」は「ハラハラ」「ドキド キ」「ワクワク」といった「興奮」や「感情」 とつながり、このうち「感情」は「身体」「感 覚」につながり、この身体感覚こそが「日常」 に「ない」「経験」ということになろう。図3 の上には図1の島にあった「死」「の」「境界」 高頻度語 中頻度語 中頻度語 ない 恐怖 日常 ある 感 危険 生活 ドキドキ 刺激 緊張 興奮 感情 非 中 経験 快感 楽しい ワクワク 好奇心 ハラハラ よい 不安 人生 心理 予想 行為 感覚 及ぼす 瞬間 ぬ の 未知 身体 必要 危機 悪い 死 要因 性 負 持つ あまり 可能 人間 不可能 安全 紙一重 たまに 面 その後 常に 分かる すっきり 気持ち 意味 境界 線 隣り合わせる 求める 表1 高頻度語と中頻度語の重要語の分析に 使用した形態語

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「線」がやはり単独で存在している。しかし、 ここには図1とは異なり「楽しい」が結びつ いている。この「楽しい」は高頻度語である が、死との境界線を隔てたところに楽しさが 存在するということを示している。 4.総合的考察  スリルの構造について中頻度語を活かす形 で分析し、検討した。高頻度語だけが反映さ れた古澤(2004)の結果からは非日常性とい うスリルの発生する基盤とそれに伴う諸感情 が示された。中頻度語のみの分析結果(図1) では、可能か不可能か予想のつかない気持ち や時間に関するもの、危険との隣り合わせや 死の境界線が示されていた。高頻度語だけで は見えないスリルの構造が図1では見ること ができたと考えられる。さらに高頻度と中頻 度の語のそれぞれ重要な語を選択し、合わせ て分析することによって、高頻度語と中頻度 語がうまく結びつき、意味を補完する様子が 見られた。  Apter(1992)は、覚醒を高めるための方法 として、次の4つの方法を指摘している。そ れらは、未知のものに触れ、新たな疑問の追 及、新しい技術を試すと思うだけで覚醒が高 められるとする「探検」、障害を克服すること で気持が高まる効果があるとする「フラスト レーションへ直面する」、身体的な限界を克 服することにおける成功に関連する「積極的 な作戦」、ある状況で要求されたり、期待され ていることと反対なことをし、これが悪質な スリルの喜びを生む「否定主義」である。「探 検」については、図3の右下の「未知」なも のへの「好奇心」が相当する。これはまた、 「危険」と「隣り合わせ」であり、危険が潜ん でいるからこそ、未知なものはスリルがある のだと言えよう。「可能」「不可能」に関する 島は、予想がつかない危険を有していると言 えよう。この島のなかの「その後」は図1で は「危機」と「安全」につながっていた。予 すっきり あまり ぬ 必要 危機 人生 緊張 感 恐怖 刺激 非 境界 線 死 の 楽しい ある 日常 中 生活 快感 性 求める たまに その後 常に 悪い よい 面 持つ 楽しむ 瞬間 いる ワクワク ハラハラ ドキドキ する 感情 興奮 興奮 ない 経験 感覚 身体 安全 紙一重 好奇 未知 要因 心理人間 意味 隣り合わせる 危険 行為 分かる 気持ち 可能 予想 不可能 すっきり あまり ぬ 必要 危機 人生 緊張 感 恐怖 刺激 非 境界 線 死 の 楽しい ある 日常 中 生活 快感 性 求める たまに その後 常に 悪い よい 面 持つ 楽しむ 瞬間 いる ワクワク ハラハラ ドキドキ する 感情 興奮 ない 経験 感覚 身体 安全 紙一重 好奇 未知 要因 心理人間 意味 隣り合わせる 危険 行為 分かる 気持ち 可能 予想 不可能 図3 「スリルとは何か」という問いに対する高頻度語と中頻度語の重要語を使用した    キーグラフの結果

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想がつかず危機が訪れているかもしれないが、 後になれば安全になり、その狭間のスリルと いうことができよう。この島は予測のしにく さという面でギャンブルと関係し、図3の右 下の島(「未知」がつながる島)もギャンブル にも関連するように考えられよう。図3の非 日常性の島から延びた点線の先には「人生」 に「必要」な「危機」があった。これは「フ ラストレーションへ直面する」に当たる。危 機が障害となり、これが気持ちを高める「刺 激」となろう。  古澤(2004)においても示したが、なぜ非 日常性がスリルを引き起こす基盤となりうる のであろうか。それは非日常性が危険を感じ にくくさせるという点によっている。現実感 を低減することによって危険を危険と見なし にくくするのである。カジノに窓も時計もな いことによって、時間や天候の情報が乏しく なり、チップがお金の代わりに使われること によって、心理的な現実感が低くなってくる。 これが危機感を低め、スリルを感じる土台を 作ることになる。非現実感と言えば、ディズ ニーリゾートも入り口でチケットを買えば、 レストランなどでお金を使う以外は、財布を 開ける必要はない。これも現実感の低減に効 果のある方法である。また、ディズニーリ ゾート内では電信柱はないし、業務用の車も 見かけない。現実の社会にあるはずのものを なくすことによって非現実感を高め、「楽し み」にどっぷりと浸からせることができる。 「非」「日常」「生活」は「恐怖」をも「瞬間」 で「楽し」みに変えさせてしまうということ なのであろう。  スリルを生起させるためには危険のコント ロールが必要であることを古澤(2004)は指 摘している。危険と隣り合わせていても、そ の危険をコントロールでき、その実感がスリ ルを生むのである。死の境界線が楽しいのは、 ぎりぎりのところで危険をコントロールでき ている、それでいて危険を味わっている強い 感覚によるものであろう。  スリルは覚醒を高めるための要素(新奇性、 障害など)と危機感や危険の感覚を低減させ る要因(非日常性、境界)またはそれらをコ ントロールできる要因(自己効力感)が必要 である。危険感覚の低減ということではリス ク知覚のバイアスも関連することであろう。 古 澤(2004)は「ス リ ル と は 何 か」の 他 に 「スリルと考えられる事態」についても検討し ている。後者における知見と本研究において 確認できた知見とを総合的に検討することで thrill seekingの測定尺度を作成できるものと 考えている。 参考文献

Apter, M.J. 1992 The Dangerous Edge: The Psychol-ogy of Excitement, Free Press (「デンジャラス・ エッジ−「危険」の心理学」山岸俊男監訳・渋

谷由紀訳、講談社1995)

Farley, F.H. 1986 The big T in personality. Psychol-ogy Today, May, 44-53.

古澤照幸 1989

刺激欲求尺度抽象表現項目版(Sen-sation Seeking Scale-Abstract Expression;SSS-AE)作成の試み 心理学研究、60、180-184 古澤照幸 1991 刺激欲求尺度(Sensation Seeking Scale)の心理統計的特徴の検討、東京都立大学 心理学研究、1、1-10 古澤照幸 1993 いたずら電話と心理変数、現代の エスプリ、306、84-92 古澤照幸 2000 刺激を求める気持ち 詫摩武俊・鈴 木乙史・清水弘司・松井豊 編、シリーズ・人間 と性格 第5巻 性格研究の拡がり、ブレーン 出版、243-255

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古澤照幸 2004 スリル構造についての考察、埼玉

学園大学紀要 人間学部篇、4、25-34

大澤幸生・松尾豊・松村真宏 2002、予兆発見―自

然・社会からの意思決定 システム/制御/情報、 46、203-208

Pedersen, W. 1991 Mental health, sensation seeking and drug use patterns: A longitudinal study. Brit-ish Journal-of-Addiction; Feb Vol 86(2) 195-204 千葉県健康福祉部 2001 思春期保健に関する実

態調査

Zuckerman, M.1979 Sensation Seeking;Beyond the optimal level of arousal. Erlbaum Hillsdale, NJ.

参照

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