• 検索結果がありません。

新たなUHF帯RFIDタグによる病棟内患者認証の可能性評価について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新たなUHF帯RFIDタグによる病棟内患者認証の可能性評価について"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.  まえがき

RFID(Radio Frequency IDentification)は,次世代認証 メディアである.RFIDでは,無線通信により認証を実 施する.これまでの代表的な認証メディアであるバー コードは印刷物であり,記された情報を光学的に読み取 る.RFIDでは,タグに記された情報を前述のように無 線的に読み取る.このため,RFIDのリーダアンテナが 適切な仕様の下で実現されれば,自動的な認証さえ実現 できる.この場合,人が認証に関わらないため,ヒュー マンエラーは原理的に生じない.すなわち,医療環境の 個体認証にRFIDを応用すれば,ヒューマンエラーに依 存する医療過誤は回避できる.一般的に医療過誤の多く は病室で,与薬などの認証中に,看護師により生じると 言われている.このため,そのような医療手技の過程に おいて,認証に関わる部分にRFIDを応用すれば,医療 過誤の多くが抑止される. 最も普及しているRFIDタグは,パッシブタグであ る.このパッシブRFIDタグでは,バッテリなどの電源 無しに無線的な認証が行われる.タグからの情報発信 は,読み取り信号に含まれる電気エネルギに依存してい る.そのエネルギは非常に小さく長距離の返信は困難で あり,一般に認証距離は小さい.現在,医療環境で最も 多く使用されているRFIDタグは,13.56MHz帯を利用す るパッシブタグである.このタグの認証距離は小さく, 出力10mW程度のハンディリーダと組み合わせた場合, 最大でも数mm程度である.これでは,布団の下に隠れ たタグも認証できない. 一方,病院規模の医療施設では,安全確保のため,不 要な箇所への患者の進入を制限することがある.バルコ ニーなどの解放された箇所でも,不慮の事故を抑止する ために,そこへの入出をモニタする場合もある.このよ うな作業への人員配置は,医療施設にとっての負担と なっている.監視カメラなどを置いても,画面監視のた めのマンパワが必要となる.合理的にかつ自動的に,患 者の検知が可能なシステムが入院病棟に供されれば,そ のような環境の安全性が向上する. 著者らは,パナソニックコミュニケーションズと共同 で,UHF帯を利用する高機能パッシブタグを開発した. このタグは,出力10mWのハンディリーダでも150mm 程度の認証距離が得られる.1W程度の据え置き型リー ダと組み合わせると,最大で10000mm(=10m)程度の認 証距離が得られる.これを入院病棟の随所に設置すれ ば,進入制限区域や,ナースステーションから死角とな る区域への患者の接近などを,遠方から自動的に検知で きる.一方でUHF帯は,旧来の13.56MHz帯よりはるか に周波数が高いため,高周波に依存する問題が生じる可 能性もある.本研究では,実際に医療施設でこの高機能 タグの認証特性を測定し,そのような環境での応用可能 性を検証した. 2.  入院患者と患者検知 入院病棟には,外来診察室とは異なり常に患者が行き 来する.同時に,病棟内には非常階段などの,患者の不

新たなUHF帯RFIDタグによる病棟内患者認証の可能性評価について

保 坂 良 資

*

Study for availability of patient identification in hospitalization ward by new UHF band RFID tag

Ryosuke HOSAKA*

Spread of medical use RFID system has been started. High performance UHF band passive RFID tag is developed. Over 10000mm long distance identification can be realized by the new tag. In this study, availability of the tag in hospitalization ward was estimated to measure its identification characteristics by experiments in hospital.

(2)

用意な進入を制限すべき箇所も多い.このような箇所に 患者が進入すると,転落などの不慮の事故が生じること もあり,憂慮されている.しかし現在の看護師の実数で は,そのような事象まで対処することは困難である.さ らに,そのような区域がナースステーションから死角に あたった際には,継続した監視は不可能と言ってよい. また,屋上やバルコニーなどのように解放された空間で は,同様に転落などの事故が生じる可能性が高い.その ような箇所の安全性を確保するには,スタッフを常時配 置することが望ましい.しかしこれも,現状では困難で ある.監視カメラなどを設置しても,スタッフによる常 時モニタは困難であり,現実的な解にはならない.ただ し,そのような箇所への患者の接近が事前に検知できれ ば,一時的に急行して対応することは可能である.たと えば該当箇所の十分手前でその接近が自動的に検知でき れば,対処可能である.このようなシステムが開発され れば,現状のように限られたマンパワの看護体制でも, 病棟の安全管理が可能となる. 著者は2001年に,125kHz帯のRFIDを応用して,図1 に示す病棟内の制限区域への入退出管理システムを開発 した1).このシステムは,老人保健施設における重度の 認知症患者の施設内徘徊防止を目的として開発した.こ こでは,ナースキャップや看護服にRFIDタグを着用し た看護師やヘルパーなどのスタッフを認証し,自動ドア を制御する仕様とした.図2にこのシステムのタグを示 す.これは,5.5gで実現できた.このタグの認証距離は 最大で1100mmほどであり,自動ドア直近に設置された リーダアンテナで検知された.実際の環境を模した実 験では,想定身長1500mm以上のスタッフならば,ドア 直前で停止することなく,進入することができた.ただ し,一般的な入院病棟での患者接近検知については,こ の程度の認証距離では不十分である.接近検知後にス タッフが急行するための時間長を配慮するならば,少な くとも5000mm以上の認証距離が必要と考えられる. パッシブRFIDタグは,リーダへの返信用のバッテリ を内蔵しない.このため,その出力が非常に小さく,結 果として認証距離も小さい.アクティブタグならばバッ テリを内蔵できるため,0.5km以上に及ぶほどの長距離 認証も可能である.しかしアクティブタグの小型化は 困難であり,コストの縮小も期待できない.一方で, 800/900MHz帯を使用するUHF帯RFIDタグならば,搬 送波の波長λが小さいため,効率のよい小型アンテナの 設計が可能である.この特徴を活用すれば,小型で長距 離認証が可能なタグが実現できる. 著者らは,パナソニックコミュニケーションズと共同 で,図3に示す小型UHF帯パッシブタグを開発した.こ のタグは60mm×40mm×2mmで,重量は2.4gである. 周波数は950MHzを使用する.また柔軟性に富み,患者 やスタッフの病衣や制服に装着しても違和感が生じにく 図1 RFIDによる制限区域入退出管理システム1) 図2 スタッフ認証用タグ1) 図3 新型UHF帯パッシブタグ

(3)

い.このようなタグを,常時病衣に装着できれば,位置 検知のみならず,与薬時の患者認証なども円滑に実施で きる.このような特徴から,これ以降このタグをリネ ンタグと記す.前述のように,一般にUHF帯RFIDタグ は,認証距離の拡大に有効と言われている.ただし,図 3のリネンタグは,UHF帯の中でも比較的高い周波数を 使用する.このため,高周波帯域特有の様々な障害が生 じる恐れもある.本研究では,彩都友紘会病院の協力の 下で,実際の医療施設でのリネンタグの運用可能性を実 験的に検証した. 3.  実験環境と実験方法 彩都友紘会病院は225床の病床を有している.最上階 には図4に示すサンルームと屋上庭園も備えている.本 研究の実験では,まず図5(a)に示す地下階の廊下を病棟 階の廊下と想定して,徒歩で接近する被験者の検知状況 を測定した.具体的には,同図の右側の階段の直前の位 置に一対のリーダアンテナを設置し,水平に記された廊 下を左方から接近する被験者を検知させ,その状況を 測定した.被験者の進行速度は100mm/sとした.次に, 図5(b)に示すサンルームでも同様の実験を行った.サン ルームは,およそ1500mmの辺4組と同じく2500mmの辺 4組から成る八角形である.ここの最深部に,図4にも見 られる屋上庭園に通じるドアがある.また,サンルーム に向かっては,5000mmほどの取り付き廊下が設置され ている.リーダアンテナはサンルームの出口ドア上方 に設置し,取り付き廊下から進入する被験者を検知し た.このときも,検知状況を測定した.サンルームにお いても,被験者の進行速度は100mm/sとした.また,地 下階およびサンルームの実験にて,リーダアンテナから 500mmと1000mmの位置の電界強度を解析し,安全基準 を満たしていることを確認した. 本実験で利用したRFIDリーダの出力は1Wである. リーダアンテナは送受信分離型であり,実験では双方 を800mm離して設置した.アンテナ中心の地上高は, (a). 地下階廊下 (b). サンル-ムと取り付き廊下 図5 実験箇所サンル-ム 図4 サンル-ム 図6 タグ装着位置

(4)

2000mmと2400mmに調整できるようにした.被験者 には,病衣への装着を想定して,3カ所にタグを装着 した.一つは病衣ズボンの裾を想定して地上高150mm の位置に,他の一つはベルト部分を想定して地上高 800mmの位置に,最後の一つは病衣の上着の前身頃を 想定して地上高1100mmの位置に装着した.図6にタグ の設置位置を示す.○を記した位置にタグが設置されて いる.図7に地下階廊下に設置した実験機器と,図8にサ ンルームでの実験の状況を示す. 4.  実験結果 4.1. 地下階廊下実験 地下階廊下での実験結果を図9と図10に示す.図9は リーダアンテナを2000mmの位置に調整した場合であ り,図10は同じく2400mmに調整した場合である.アン テナは,前者では俯角-10度(下向き)に,後者では俯角 -20度に設定した.各図の横軸は,リーダアンテナから の水平距離を示す.単位はmmである.両図とも,(a) は地上高150mmのタグの検知状況を,(b)は800mmのタ グの,(c)は1100mmのタグの検知状況を示す.灰色の部 分がタグが検知された箇所である.実際の実験では,各 条件ごとに5回試行した.ただしデータの性質上,単純 な加重平均処理などが適さないため,代表的な結果を一 例づつ示した. 図9と図10より,地下階の廊下についてはリーダアン テナを地上高2000mmに設定した方が良好な結果が得 られ,その最大認証距離は11500mmにも及ぶことがわ かった.なお,地下階廊下での実験にあたり,リーダア ンテナから500mmおよび1000mmの位置で電界強度を観 測したが,医療用電気機器としての安全基準値に抵触す ることはなかった. 4.2. サンルーム実験 サンルームおよびその取り付き廊下での実験結果を 図11と図12に示す.4.1の場合と同様に,図11はリーダ アンテナを2000mmの位置に調整した場合であり,図12 は同じく2400mmに調整した場合である.アンテナの俯 角も,地下階廊下実験の場合に等しい.各図の横軸は, リーダアンテナからの水平距離を示す.両図とも,(a) は地上高150mmのタグの検知状況を,(b)は800mmのタ グの,(c)は1100mmのタグの検知状況を示す.灰色の部 分がタグが検知された箇所を示している.本結果も代表 的な例を示す. 図7  地下階廊下に設置した実験機器 図8  サンル-ムでの実験状況

(5)

図11と図12より,サンルームおよび取り付け廊下にお いても,リーダアンテナを地上高2000mmに設定した場 合で良好な結果が得られた.サンルームの実験結果で は,最大認証距離は7000mm程度であった.これは地下 階廊下の結果には及ばなかったが,パッシブ型RFIDタ グとしては非常に大きな認証距離であった.サンルーム の実験でも,リーダアンテナから500mmおよび1000mm の位置で電界強度を観測したが,医療用電気機器として の安全基準値に抵触することはなかった. 5.  考  察 地下階廊下およびサンルームの実験結果から,パッシ ブ型RFIDとしては充分に大きな認証距離が得られるこ とがわかった.従来より,UHF帯のパッシブタグは大 きな認証距離が得られやすいとされていたが,その場合 でも最大で3000mm程度であった.新たに開発したリネ (a).  地上高0mm (b).  地上高800mm (c).  地上高00mm 図9 地下階廊下の検知結果 (リーダアンテナ位置2000mm) (a).  地上高0mm (b). 地上高800mm (c). 地上高1100mm 図11 サンル-ムの検知結果 (リ-ダアンテナ位置2000mm) (a). 地上高150mm (b). 地上高800mm (c). 地上高1100mm 図10 地下階廊下の検知結果 (リ-ダアンテナ位置2400mm) (a). 地上高150mm (b). 地上高800mm (c). 地上高1100mm 図12 サンル-ムの検知結果 (リ-ダアンテナ位置2400mm)

(6)

ンタグでは,地下階廊下で最大で11000mmという認証 距離が測定された.サンルームでも7000mmもの認証距 離が得られた.いずれの場合にも,リーダアンテナは地 上高2000mmで,タグはベルト位置に装着した場合が最 も良好な結果を示した.この程度の認証距離が保障され れば,対象者検知と同時にナースステーションから急行 して,不慮の事態の発生を抑止できる. サンルームの実験結果が地下階廊下のそれよりも,認 証距離という観点から劣った理由としては,その環境構 造を一因として考えることができる.サンルームは文字 通り陽光を取り込むため,図4,図8からもわかるよう に,ガラスを多用している.これらのガラスには,破損 の際の飛散防止のために,メッシュ状に鋼線が封入され ていた.またガラスを保持し,構造的な強度を確保する ために鉄骨が多く使用されている.これらの諸金属やガ ラス面からの輻射波により,干渉など何らかの障害が発 生したのではないかと考えられる.また,実験当日は雨 天であった.UHF帯も含めて,周波数が高いタグは水 分に脆弱であると言われている.このため,雨の影響が 小さい地下階では良好な特性が得られたのに対して,サ ンルームでは相対的に劣った結果が得られたとも考えら れる. また,リーダアンテナの設置地上高によっても,認証 特性に変化が見られる.地下階廊下,サンルームのいず れの実験においても,地上高2000mmに設置した場合の 方が良好な,すなわち大きな認証距離が得られている. 地下階の廊下の場合その天井高が2600mmほどであり, リーダアンテナの地上高を2400mmに設定すると,その 最上部は天井とほぼ接する.このような条件で信号を発 することで,天井からの不要輻射が生じ,それらの干渉 により誤認証が発生したと考えられる.これにより,認 証距離が短縮したものと考える.サンルームの場合に は,正面出口付近には,地上高2600mmほどの位置に, 鉄骨による水平な梁が存在している.リーダアンテナの 地上高を2400mmに設定すると,アンテナはこの梁に近 接する.ここで利用したリーダアンテナの指向性は,ア ンテナ前方に向かってほぼ円形である.しかし,若干後 方にも漏洩する.この漏洩成分が,その後方に位置する 鉄骨やガラス材などの影響によって反射し,本来の信号 波と干渉することで,認証特性が悪化したのではないか と考える. 図9と図10に示した地下階廊下の実験結果では,部分 的に認証が途絶する不感帯の存在が認められる.たと えば図9(c)の6500mm付近におよそ500mmほどの不感帯 が,また図10(b)の4000mm付近にも700mmほどの不感 帯が生じている.これは様々な輻射波が干渉する際に, 位相差により,複数の波が相互に相殺することにより生 じると考えられる.このような現象は,比較的周波数の 高い信号系を狭領域で運用した際に出現する.地下階廊 下は幅員が2500mmほどであった.このため天井面や壁 面で各種の反射が生じて,結果として不感帯が出現した ものと考える.しかし不感帯は不安定であり,その位置 についても継続性は小さい.たとえば本実験でも,直後 に再度実施した試行では,同一箇所に不感帯が生じるこ とはなかった.たとえばタグを装着した被験者が,微妙 に姿勢を変化させても,周囲の電磁環境は大きく変化す る.このため,仮に被験者が不感帯に進入しても,ごく 短時間後には再び検知される可能性が高い.その時間長 は数秒程度であり,被験者すなわち患者を見失う可能性 は小さい. 6.  おわりに 入院病棟では,患者の行動管理も課題の一つである. しかし現在の看護環境では,それらすべてに対してマン パワを配分できない.このような場合にRFIDタグは, 効果的なツールとなる.ただし旧来のタグでは認証距離 が小さく,ここで求められるような用途には適していな かった.今回評価対象とした新型リネンタグは,パッシ ブ型であるにも関わらず大きな認証距離を示した.これ は,小さな認証距離で十分な場合には,リーダの出力 の縮小で対応できることを示している.すなわち,ここ で評価したリネンタグを医療環境に投入すれば,これま での個体認証メディアであったバーコードで実現し得な かったほとんどの要求に対応可能となる.このような仕 様のタグを積極的に医療環境に応用することで,患者の 安全性が高い水準で保持されると考える. 参考文献 1) 保坂良資:無電源スタッフ用マーカを用いたドア制御 による痴呆症老人の施設内徘徊抑止,計測自動制御学 会論文集,第37巻-8号,pp. 704-712(2001)

参照

関連したドキュメント

 彼の語る所によると,この商会に入社する時,経歴

地盤の破壊の進行性を無視することによる解析結果の誤差は、すべり面の総回転角度が大きいほ

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

と言っても、事例ごとに意味がかなり異なるのは、子どもの性格が異なることと同じである。その

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

て当期の損金の額に算入することができるか否かなどが争われた事件におい

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

本プログラム受講生が新しい価値観を持つことができ、自身の今後進むべき道の一助になることを心から願って