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子どもたちが主体的に学び合う複式理科の授業 : 学びのためのスキルアップと授業計画を通して

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Academic year: 2021

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子どもたちが主体的に学び合う複式理科の授業

∼学びのためのスキルアップと授業計画を通して∼

中 西 大

複式学級における理科の授業は,実験時の安全確保が十分にできないなどの理由で,学年別で行われることが少な い。そこで,実験のスキルを身に付けさせ,子どもたちだけでも安全に実験が行えるようにし,学年別での授業を成 立させようと考えた。同時に,複式学級の子どもたちが授業を進行するための 「司会・記録・フォロワー(司会と記 録以外の発言者)」の役割を充実させ,主体的に学び合うようにしたい。そのためには,学びのためのスキルアップが 重要であると考え,授業進行や話し合いなどのスキルを身に付けさせようと考えた。 また,複式学級で学ぶための活動について,計画・評価・改善させることで,子どもたちの主体的な学びがどれ程 高まるのか検証した。課題意識をみとり,どのように支援することで主体的に学ぶようになるのか,授業を行うため のスキルアップや授業計画の活用ついて研究した内容を報告する。 キーワード:複式学級,理科,主体的,スキル,授業計画

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研究の目的

複式学級において教師が各学年に関われる時間は,ほ ぼ半分になる。本研究は, 教師が関われない間接指導の 時間であっても,子どもたちが主体的に学び合う場を生 むことを目的としている。加えて,授業進行や実験のス キルを身に付けることは, 自ら課題を設定して学習を進 めることと深い関わりがあると考えている。自ら計画し, 実践して評価することで,より主体的に学ぶ子どもを育 てることを目的とした。 また,複式学級をもつ小学校における理科の授業は, A B年度方式が多い。しかし,統廃合や転校などにより, 該当学年の学習を終えずに進級してしまう可能性もあり, 望ましくない。学年別で授業を進めることが望ましいが, 準備に手間がかかったり,実験時の安全確保が十分にで きなかったりすることから,ほとんど行われていない。 そこで,学年別での授業展開をどのように行えばいいの か考えた。教師が深く関わって授業を展開することが困 難であれば,子どもたちが主体的に授業を展開すればい いと考え,そのための方法を探ることを目的とした。

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研究の方法

主体的な学び合いの場を生むため,主に次のようなこ とに取り組んだ。次項に,これらの詳細を示す。 るようにした。否定的に捉えるのでなく,その可能性も 考えながら発言を聞くようになってほしい。そのため, 朝の会に連想ゲームを取り入れた。示された言葉から連 想することを全員が発表する。記録者は,可能な限り分 類しながら図1のように板書し,設定時間終了後に関係 する部分を線でつないだり,囲んだりして関連を示す。 フォロワーは,板書された内容について質問を出し合う。 J^ ヽ ::,.,

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学級風土をつくる どの教科でも, 自分の考えを大切にして多様に表現し てほしい。安心して考えを表出できる雰囲気とは,相手 の考えを受けとめようとする雰囲気でもある。そのため, 互いの考えをあたたかい気持ちで認め合う学習環境づく りに取り組んだ。 例えば,考えを出し合った場合正しいか誤っている かではなく,同じ様に考えたり,違う点を挙げて考えた り,視点を変えて考えたりするなど,幅広くつなげられ

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複式学級で主体的に学び合えるように

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子どもの視点に立つ

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主体的な学びが成立する要素を,子どもの視点に立 ってまとめた。教師は,子どもがどのような思いをも って活動する時に主体的な学びが成立するのかみと る必要がある。また,教師のどのような働きかけで, 子どもたちが主体的に学ぶようになるのかなど,日々 の授業や子どもたちの反応を振り返り,記録した。以 下にその一部を挙げる。 .腺味関心のある内容がある .何かを制作しようとする ・具体物を用いることができる ・未体験のものに触れる ・予想や考察が様々にできる ・自分が1つの対象に深くかかわれる

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子どもたちのオープンな関係

子どもたちは,作品やノートに書いた内容を見られ ることを恥ずかしがったり,嫌がったりすることがあ る。しかし,そこにある「青報は,互いの表現や考えを 広めたり,更新したりする重要な役割を果たすと考え た。「見せる ・見てもらう」ことを進んでできるよう にした。

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子ども同士で教え合う

問われていることの意味がわからなかったり,難し くで悩んだりした子どもは,教師に助けを求めること が多い。しかし,子ども同士の視点・考え方 ・言葉が 大きな支援につながると考え,考えがまとまらない場 合や,解答を導けない場合には,進んで友だちに支援 を求めるようにした。子どもが説明する“子どもの言 葉’が,技術を伝えるために役立つ。

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多くを話さない

「発問は適切な短い言葉で••」 とよく言われる。 そ こで,発問や支援のみならず,子どもたちへの声かけ も最小限にとどめた。子どもたちが進める学習活動に かかわり過ぎると,結局は多くを話すことになる。逆 に,子どもたちの主体性に任せたままにしておくと, 肝心なところで教師が出られない。その結果,子ども たちの考えが焦点化されなかったり,課題解決の筋道 からそれてしまったりすることがある。 そこで,ただ話すことを減らすのではなく,教師の 出番について考えた。その授業で子どもたちに身に付 けてほしいことや,知らせたいことを明確にするので ある。子どもたちの反応を待っことを大切にしつつ, 自分が定めたラインを過ぎた場合には,教えるべきこ とを教えるようにした。 さらに,わかりやすい考えや適切な考えをしている 子どもには,「わかりやすい!」「なるほど,ええなあ …」。 などつぶやく。すると,さらに説明を書こうと したり, ミニボードに書き写して発表の準備をしたり する。時には,隣の友だちがどんなことをしているの かと覗きに来る子どももいる。悩んでいる子どもには, 「うまいこといかんなあ。」「難しいわな」。 などつぶ やくと,考えがまとまっている子どもが近くに寄って 来て, 一緒に考えたり,方法を説明したりする。多く を話さないことで,学び合うのが自分たちだという意 識をもたせられると考えて取り組んだ。

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異学年が刺激し合う

異学年が同じ教室で学ぶ複式学級では,下学年が上 学年の活動を見て学ぶことも多い。良い手本を見て実 践し,時には失敗を目にして自分たちの学習活動に生 かすこともあるだろう。上学年は,下学年に伝える・ 教えるための技術を身につけることができ,前年度の 自分たちとは違う考えに触れ,改めて考える機会をも てる。 図2は, 6年生が 5年生の発表を聞き,それについ てコメントをしようとしているところである。下学年 が上学年を参考にするばかりではなく, 5年生のまと め方を参考にしようと6年生がその様子を見に来て いるのが図3である。 固2:発表を聞く 6年生 因3:5年生の活動を参考にする さらに,例えば騒がしくなった場合に教師から指摘 されるより,上学年・下学年から指摘されると明らか に反応が違う。そして,そんな影響力のある関係を生 かし,図 4のように,月に 1回程度 「ちびっ子参観」

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47-を行い,子どもたちが互いに授業を見る機会を設けた。 高学年と中学年の相互参観も行った。授業進行・授業 態度•発言など,様々な観点で参観し,長所と改善点 に分けて記録した。 図4:「ちびっ子参観」の様子 記録したメモは,長所と改善点に分けて付箋に記入 して掲示した。自分たちで授業を進めるための長所や 改善点を全員で共有できるようにしている。「ちびっ 子参観」後は,明らかに授業の様子が変わり,自分た ちの授業に生かそうとしたことがうかがえた。

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多様な考えを引き出す

複式学級の少人数という環境では,多様な考えが出 ないために話し合いが深まらなかったり,幅広い考察 ができなかったりする。これまで,極少人数の複式学 級の悩みとして挙げられていたことでもあり, どのよ うな対策が必要か研究を進め,より多くの考えを出す ために次のような手立てをとった。 ・子どもたちが柔軟に考えられるよう,“考え”は 様々で良いとする。 . 1つの考え方のみではなく,視点を変えた見方 や考え方を出せるよう揺さぶりをかける。 ・課題設定や教材提示の工夫をする。教師も指導の 傍らで一緒に実験をしたり,算数では,別のやり 方を示したりすることで自分との違いに気づか せる。

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見通しをもって取り組む子

複式学級の高学年では,自分たちで課題解決に最適 な学び方を選択し,学習を効率良く進めて学びを高め る子どもを育みたいと考えている。最適な学び方や効 率を求めるためには,自分たちが達成したい目標とそ こまでの筋道がある程度見えている必要がある。つま り,「見通しをもつ」ということである。そこで,複 式学級の学習においての「計画→実行→評価→改善」 のサイクルに注目して取り組んだ。複式学級にて主体 的に学び合うには, 自ら計画を立てて実行し,評価し て改善していくことが求められる。 0 計画••単元全体を見通した学習計画を立てさせ る・ 1日の司会,記録,フォロワーのめあてを設定 する・授業の司会計画を立てる

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実行噌十画に沿った進行と臨機応変な対応

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評価・・「複式活動振り返りシート(図5)」を活用 しての自己評価・「ちびっ子参観」による相互評価 0改善••評価やめあての反省交流 ・対策を見出す・繰 り返してのチャレンジ・具体的な手法の紹介 図5:複式活動振り返りシート 2. 2. 8.

単元計画の工夫

異学年が共に学び合う複式ならではの単元計画を 立てる必要があり,関連した学習が同時期に進行でき るよ うにした。 すべての単元で可能となるわけではな いが,同様分野の単元を同時期に並べ直した。 2. 3.

理科で主体的に学び合えるように

2. 3. 1.

対象に多く“触れる”

単元の導入では,対象に

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他れることから疑問をもた せ,課題を設定させた。そのため,授業だけではなく, 休憩時間にも触れるようにしたり, 一人 1つの対象を 確保したりした。実験単元では,単元導入以前に実験 キットを与え,実験の練習・準備・計画ができるよう にした。ただし,対象に多く触れることで考えが多様 化し過ぎたり,学習指導要領に示されている内容から 逸れたりすることもあるため,学習課題を焦点化する よう適切に支援する必要がある。 2. 3. 2. ICT

機器の活用で“わかる”

本学級の理科における ICT機器の活用は,デジタ ルカメラや多機能携帯端末による結果の記録やイン ターネットの活用が中心となっている。ICT機器を 使いこなせるようになると,相手に何かを示す場合 素早く正確な情報を示すことができ, “百聞は一見に 如かず”の通りわかりやすい。 インターネットの利用は,実験結果など多くの情報 をもたらしてしまうこともあるが,特に利用を制限し なかった。「こんな結果が出てほしい。」という思いを もった上で実験や観察をして確かめてみるのも決し

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-148-て無駄ではないと考えたからである。逆に,自分たち が得た情報が一般的なものか確かめることで,実験や 考えの適切さの実感や達成感につながるとも考えた。 2. 3. 3.

イメージ図で“伝える”

イメージ図は, 自分の考えを表出して伝えるための ツールである。目に見えない事象を図に描き,説明を 加えることで,相手に伝えたいことがより明確になる と考えた。事象をイメージ図にすることが主ではなく, 図6のように授業の中で相手に伝えるツールとして 自然な形で子どもたちが活用できるように指導した。 水 に と 可 た 物 の ゆ く え ..,Jc.よう液.の重さ

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でL" • ,}<(5b..,¥) えた。全員が顔を合わせて実験できる環境を作った。 図8:実験専用スペース“ラボ” 図6:イメージ図を活用した板書 2. 3. 4. 実験や観察のスキルと環境整備 実験方法や実験で使う対象にある程度の自由度を 設けた。子どもたちは実験が大好きだからこそ, 自分 が考えた実験が実現できることに興味を示し,意欲的 に課題解決のために取り組むと考えたからである。そ のためには,実験や観察スキルが必要となる。 高学年では,理科室にある器具を使う機会が多くあ る。そこで,図7のように有害な薬品や火気以外の器 具を教室に置くことで,休憩時間などいつでも練習が でき,実験や観察の計画を立てられるようにした。教 師が見ていられる場合には,火気の使用も許可した。

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学びをデザインする子どもを育てる

複式学級においての学びのデザインは,子どもたちが 授業進行に必要なスキルを適切に身につけ,解決に至る 見通しをもって取り組む時だと考えた。 2. 4. 1.

司会を育てる

司会者が教師の発問を復唱し,フォロワーを指名す るだけの役割では,学びはデザインできない。授業の 中心に位置し,課題解決のために取り組むリーダーで なければならない。 そのため,課題に応じた適切な学習活動ができるよ う,授業進行に必要なスキルを身につけさせている。 かつこれで/(ッチ,,,

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-る。基本的な流れを示した上で,一人学びをするのか, グループで話し合うのか,どのように何を使って発表 するのか,またどれくらいの時間をかけるのかなど計 画できるようにした。 また,予習や教師との打ち合わせを勧め,取り組み たい内容を整理して考えておけるようにした。 複式学級では,授業進行の支援として「ガイド」が 知られている。しかし,子どもたちの思考に沿わない 教師主導の授業展開になることを避け,柔軟な展開が できるよう,このような取り組みを行った。毎日,毎 時間の取り組みではなく,新しい単元導入時に全体の 見通しをもたせたり,どちらかの学年に教師が深く関 わらなければならない場合などでも授業を進められ るように計画させたりした。

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記録者を育てる

複式学級における指導では,「わたり」を適切に計 画することで,発言場面や実験場面に関わることが可 能である。しかし,子どもたちの主体的な学びのため, 同時間接指導をめざして取り組んでいると,教師がか かわれないこともある。そこで,子どもたちの考えを 発言からみとれるようにした方法の 1つが記録者を 育てることである。 •'roo1 とめ s,;e,-ば ● 《 , .鴫ヽ *● .,.,.四生ぐ·~ H•>-•• ぐ.Tジ_,.

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みとりと支援を適切に行う 子どもたちには,自分の考えをノートに書かせるよ うにしている。また,記録の活動を充実させ,子ども たちの考えや発言が板書として残し,そこからみとる ようにしている。このとき,教師が願う姿(目標達成 のための手がかりなど)が表れている子どもをみとり, それを全員で共有できるように支援したいと考えた。 さらに, レディネス チェック,因11のよう なウェビングマップ, 机 間 指 導 行 動 観 察 発言などからみとり, 全員を同じ対話の土俵 に上げる支援を行った。 図11:ウェビングマップ 2. 4. 5. 自主課題学習を支援する 家庭学習の1つに自主課題学習を設定した。自分が 決めたテーマで学習を行い,ノートにまとめる。曜日 別に教科を設定するが,次の日の学習に応じて内容を 変更して取り組んで来るようにさせた。主に,漢字練 習 ・計算練習・社会科や理科の予習やまとめ ・テスト 対策•新聞の切り抜きにコメント ・ 自分の巽味のある ことや調べたいことを調べてまとめるなどの課題が 考えられる。 主な支援として,ノートヘのまとめ方を教師が示し たり,手本となる自主課題学習を参考にさせたりした。 また,テーマを設定しにくい子どもには,個別にテー マを与えたり,得意なことや不得意なことにそれぞれ 取り組ませたりした。 3

授業の実際

3. 1.異学年が学び合う場面 5年生の「メダカの食べ物が水中にあるのか」という 課題で,メダカがいた川の水を観察し,濁りや小さい物 が混ざっていることを発見した。虫眼鏡などで観察した が大きく見えず,顕微鏡を初めて使うことになった。そ こで, 6年生に教えてもらいながら観察できた。 6年生は,食物連鎖について下調べしていたことを発 2. 4. 3.

フォロワーを育てる

表してまとめようという展開だった。 ここで, 「ミジンコ 司会者と記録者以外の発言者をフォロワーと呼ぶ が植物プランクトンを食べる」ということに注目させた。 ことにしているのは,授業に参加する「その他一般の ミジンコが植物プランクトンを食べていたか思い出させ 人々」ではなく,その名の通り 「フォローする人々」 たところ,そんな様子はなかったということで,改めて であってほしいという思いがある。つまり,司会者に ミジンコを観察して確認することにした。

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-ここに先ほどの5年生が合流し,顕微鏡の使い方を教 えながら観察した。6年生は,自分たちの学習を中断し てまでも一生懸命に5年生に教えていた。(図12)

メ ・ 図12:6年生が顕微鏡を教える様子 3. 2.

主体的に実験方法を考える場面

20mlの水に溶質を溶かし,溶けきらなくなったらさ らに 20mlの水を加えて溶かしてみるという 5年生の実 験である。実験中に2つの課題が浮かび上がってきた。 溶けきらなくなった入浴剤を溶かそうと 20mlの水を追 加したが,それでも溶けきらなかった場面と,水の温度 が高いとさらに溶けるのかを確かめる場面である。授業 翫帷展を見てみると,子どもたちがその場で実験方法を再 構成して進めていた。 1●水をさらに追加する場面 ひかり :もう入れやんでもいい? のぞみ :これやってから入れよう。 (中略) のぞみ :ねえみんな,水 20mlで入浴剤 5g入れたん な。それにまた水入れたけど全然溶けへんね けど,追加で水入れていいんかな? こだま :いいんちゃうん? つばさ :水多いほうが溶けるっていうことになるし。 ●水の温度を上げる場面 はやて:みんな,ちょっといい?温かくやるやつある ゃん?水をそのまま温めるよりも,お湯を使 ってやってもいいかな? のぞみ:うん。 ひかり :いけると思うで。 2つの実験方法の修正は,実験結果や考察に大きな影 響を及ぼさないと判断したため,特に教師からの声かけ をせずに実験を進めさせた。

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授業の考察

顕微鏡を扱った授業では, 6年生の子どもたちの主体 的な学びに教師が足を踏み入れて課題を与えてしまった 可能性があった。子どもたちが,与えられた課題を解決 するためにじっくりと取り組むこともできないままで5 年生に顕微鏡の使い方を教える授業になったと考える。 異学年の交流は,自分たちの学びを成立させた上で子ど もたちから発生するものである必要があると考える。 しかし, 6年生が自分たちの学習を中断してまで5年 生に教える姿はとてもほほえましく,隣を見ながら教え ている子どももおり, 6年生自身も顕微鏡の使い方を再 確認する機会になったと考える。 実験方法を考える場面は,本来であれば実験中にない 方が望ましい。見通しをもって計画した実験を行うこと が理科では求められる。しかし,子どもたちのしたい実 験をさせるということや,主体的な活動を前面に出した 場合,このような場面も必要であると考える。 考察に重点を置く授業もあるが,今回のような課題で は実験や観察に重点を置く必要があると考えている。実 験や観察から得た多くの情報により,課題を解決できた と考えている。ただし,それが適切だったかどうかは, 次時以降の活動によって判断する必要があると考える。 5 成果と課題 疇として,授業計画により全員が流れをつかんで授 業を進行できた。結果をどのように示すかなどの計画を していたので,結果報告がスムーズに行われていた。 ラボでの実験では,主に6年生が計画的に実験できて いた。5年生は,実験中に方法を確認し合うなど子ども たち同士でのやりとりが見られ,互いに器具の使い方な どを教え合う姿が見られた。両学年共に, 自分の机上で 実験を行うよりも効率よく実験に取り組めた。実験器具 に触れる時間を設定したことや,休憩時間にでも触れら れるようにしたことから,基本的な実験の技能が身に付 いている。スキルを身に付けておくことで,理科室でな くても安全に実験ができた。さらに,同様の単元を同時 進行することで,共通で使える器具があった。 課題として,子どもたちが,授業計画通りにしなけれ ばならないと思い,考察を短時間で済ませてしまったこ とが多かった。 子どもたちの主体的な実験活動を意識しすぎ,実験の 幅が広がり,考察する要素が多くなったため, 目的に迫 るための再実験が必要となった。予想の段階で,実験で 扱う事象のイメージを強くもたせることができていなか ったこともあり,特に新しい実験に取り組む5年生では さらなる支援が必要だった。 参考文献 • 西川純 (2010) 「クラスが元気になる! 『学び合い』ス タートブック」学陽書房 ・広島大学附属東雲小学校 (2010)「複式教育ハンドブッ クー異学年が同時に学び合うよさを生かした学習指 導一」東洋館出版社 ・桂聖紀美野町立小川小学校 (2009) 「3つのステップ で読解力をつける複式の国語科授業」東洋館出版社 - 151

参照

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