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JAIST Repository: 科学技術における研究開発マネジメント : 生産性とセレンディピティ

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Academic year: 2021

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Japan Advanced Institute of Science and Technology

JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 科学技術における研究開発マネジメント : 生産性とセ レンディピティ Author(s) 清水, 洋 Citation 年次学術大会講演要旨集, 26: 75-77 Issue Date 2011-10-15

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/10073

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

(2)

― 75 ― 5 基礎技術・要素技術開発やそれによる新規技術の融合による新しい事業を創造するためである。㻌 ●㻌 大学との共同研究・委託研究やアウトソーシング研究を実施する企業は、実施前の事前調整打合せを 重要視している。事前打ち合わせの調整内容は、何れも「開発技術目標」が最優先事項で、次いで「特許 の実施権」、「役割分担」、「情報漏洩・守秘義務等」等である。㻌 ●研究活動の主導権は大学との共同研究、大学以外のアウトソーシング研究とも企業側が主に主導的立 場に立っていることが多い。大学との共同研究に比較し、アウトソーシング研究はパートナー側が主導的立 場になることが多い。㻌 ●㻌 「初期に設定した技術目標を達成したか否か」の成功判断基準の下に、それぞれの研究活動の成功 確率を調査したところ、大学も含めたいわゆるアウトソーシング研究では成功確率 㻣㻡%以上と約半数の企 業が回答されている。全体では約 㻢㻜%の成功確率と捉えられる。㻌 ●㻌 大学も含めたいわゆるアウトソーシング研究を実施している企業サイドはアウトソーシング研究の相手 側に対する問題として、以下の事項を挙げている。㻌 㻌 㻌 ・大学に対しては、研究開発に対するスピード感不足、コスト意識不足、マネジメント不足㻌 㻌 㻌 ・大学以外のアウトソーシング先に対しては、事務処理の煩雑さ、研究開発期間の柔軟性の欠如㻌 ●㻌 大学も含めたいわゆるアウトソーシング研究を実施している企業自身の問題として、以下の事項を挙げ ている。㻌 㻌 㻌 ・継続できない状況になっても止めることができない。組織体制化が難しい。企業側にリーダーシップを㻌 㻌 㻌 㻌 発揮できる人材がいない。㻌 ●㻌 大学も含めたいわゆるアウトソーシング研究の成功要因は、以下のように要約できる。㻌 㻌 㻌 ・連携先の技術力を活用し、自社の事業戦略と整合した研究開発を、企業側の強いリーダーシップでマ㻌 㻌 㻌 㻌 ネジメントすることである。これは企業自身の問題として指摘された問題を解決し得たケースと言えるの㻌 㻌 㻌 㻌 で、課題と成功要因は表裏一体をなしていると言える。㻌 㻌 4.おわりに  我が国の科学・技術振興政策に基づく産学連携事業に関して、-67 や 1('2 等の公的機関が推進するシ ーズ型産学連携事業(大学発のシーズ研究成果を産業界に紹介し、企業とマッチングを図る産学連携事 業で、企業サイドの研究投資負担が全額でないもの)と、企業が、企業ニーズに基づき大学等公的機関 に直接依頼するいわゆるニーズ型産学連携事業(企業サイドの研究投資が全額負担のもの)について、 アンケート調査法を活用し、調査研究した。これは、産業界において今後ますます増大するオープンイ ノベーション活動の一環として、大学等公的機関をはじめとした多くの組織機関とのアウトソーシング 研究をより効率的・効果的に進める上でのマネジメント上のポイントを明確にし、産学連携事業の成功 確率を高めるためのマネジメントの要諦を明らかにしようとの目的からである。シーズ型産学連携事業、 ニーズ型産学連携事業双方に共通のマネジメントの要諦を要約すれば、「企業は、連携先の技術力を活 用し、自社の事業戦略と整合した研究開発を、企業側の強いリーダーシップのもとにマネジメントする ことである」と言える。  本調査研究では、十分とは言えないので、企業として心得ねばならないマネジメントの要諦について 更に研究を継続する必要がある。  謝辞㻌 㻌 本調査研究実施に際し、アンケート調査にご協力頂いた社団法人「科学技術と経済の会」会員企業の関係者 各位に謝意を表する。また、アンケート調査結果の分析にご協力をいただいた関西電力㈱石田氏、㈱フジクラ 黒坂氏、東工大三森氏、早大藤原氏、芝浦工大八代氏、㻶㻿㼀 森本氏、その他林氏、鶴岡氏等に感謝するととも に、研究助成いただいた㻔財㻕新技術振興渡邊記念会に謝意を表する。㻌 㻌 参考資料 [㻝]:「民間企業の研究活動に関する調査報告、平成 㻝㻥 年度」文部科学省㻌 [㻞]:鈴木康之「シーズ型産学連携事業のマネジメントの要諦」1㻱㻜㻣、研究・技術計画学会、第 㻞㻢 回年次学術大㻌 㻌 㻌 㻌 会、㻞㻜㻝㻝.㻝㻜 月

1)01

科学技術における研究開発マネジメント:生産性とセレンディピティ





○清水洋(一橋大学)

1. 研究の目的

本研究は、科学技術の研究開発プロジェクトにおけるマネジメントと研究の分業の効果を、研究 の生産性とセレンディピティの2 つの観点から考察することを目的としている。1 つの研究開発プ ロジェクトに携わる研究者の数は増加してきている。研究開発プロジェクトで協働する研究者の人 数が増加することに伴って、タスクの分業やその調整のマネジメントが重要になってきていると考 えられる。研究開発プロジェクトの規模が大きくなるに従って、マネジメントが成果に影響を与え る余地が大きくなってくると考えられる。 経営学では企業のマネジメントに焦点を当て、その戦略や組織構造、動機付けなどの分析を蓄積 させてきた。ただし、科学技術における研究開発については、その重要性にかかわらず、マネジメ ントという観点からは研究が蓄積されてきたとは言えない。大学や国の研究機関の研究開発につい てはマネジメントの観点からの分析は進んでいない。そのため、本研究では、マネジメントの中で も最も基本的な事項である分業の観点から、科学技術における研究開発マネジメントを考察してい く。 分業については、経営学だけでなく、社会学や経済学においても考察されてきた。分業の中身に ついてはさまざまなものが考えられるが、本研究ではマネジメントと研究開発の分業関係を分析す る。研究開発チームの規模が小さい場合には、研究開発のマネジメントを担う人材と、研究開発を 実際にリードする人材が同一である場合が少なくない。しかし、チームの人数が大きくなると、マ ネジメントを担う人材と研究開発を実質的にリードする人材が同一である場合ばかりでなくなる。 つまり、マネジメントと研究開発の間に分業関係が生じてくるのである。この分業が成果に与える 影響を分析することが本研究の目的である。

2. マネジメントと研究の分業

本研究では分業についてのこれまでの知見の次の2 点に着目する。第 1 点は、分業による専門化 は、タスクの生産性を向上させるという点である。タスクがサブタスクに分解され、専門化される ことによって、サブタスクにおける生産性が向上する。マネジメントと研究開発が分業されること によって、マネジリアルなタスクに忙殺されることなく、研究開発に従事する成員はそのタスクに 集中できる。この点から、マネジメントと研究開発の分業は、研究開発の生産性を高めるという仮 説が考えられる。 第2 点は、分業による専門化と調整のコストに関するものである。これは、分業のデメリットに 関連するものである。分業による専門化が進むと、マネジメントと研究開発の間での調整のコスト が大きくなる。研究開発において意図せざる結果が生じた場合などは、マネジメントと研究開発の 分業が行われている場合、調整の必要性が大きくなると考えられる。もしも、マネジメントと研究 開発の分業がなされていない場合には、より柔軟な研究開発のマネジメントができるはずである。 セレンディピティを当初の目的とは異なる問題についての解決策を意図せざる結果として見出す こととして考えると(Stephan, 2010)、マネジメントと研究開発の分業とセレンディピティは負の関 係があると考えられる。 これらの点から、本研究では次の2 つの仮説を分析する。[1]研究開発とマネジメントの分業は、 研究開発の生産性を高める。[2]研究開発とマネジメントの分業がなされているほど、セレンディピ ティが生み出される可能性は小さくなる。

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― 76 ―

3. データ

本研究が用いるデータは、科学における知識創造過程や科学知識からイノベーションが創出され る過程についての研究プロジェクトを対象とした体系的な実証研究を行うために、一橋大学イノベ ーション研究センターと文部科学省科学技術政策研究所が2009 年末から 2010 年にかけて実施した 質問票調査によって得られたものである(長岡貞男, 伊神正貫, 江藤学, & 伊地知寛博, 2010a, b)。こ の質問調査は、研究開発プロジェクトを分析単位としたものであり、調査対象は、高頻度引用論文 (分野別の被引用数上位 1%:H project)を生み出したプロジェクトと、無作為に抽出したプロジ ェクト(N project)である。およそ 2100 件の回答が得られている。7 割以上が大学等の研究開発プロ ジェクトである。この調査では、研究開発プロジェクトの目的や性質、インプットやアウトプット など基本的な事項をカバーしている。また、研究開発のプロセスの不確実性、プロジェクトの成果 が当初目的としたものであったかどうか、マネジメントをリードした人材と研究開発をリードした 人材の同一性などについてもデータが得られている。  質問票調査によって、マネジメントで最も重要な役割を担った人材と研究開発で最も重要な役割 を担った人材が同一の研究開発プロジェクトの数は、1,974 であった。ここでは研究開発プロジェ クトが産み出した成果の論文の著者が1 人のプロジェクトの数は 238 であり、マネジメントと研究 開発の分業が行われる余地がないため分析の対象から除いている。マネジメントと研究開発の分業 が行われているプロジェクトの数は、1597 であった。

4. 分析結果

この質問票調査から得られたデータを対象に、マネジメントと研究開発の分業と研究開発の生産 性やセレンディピティなどの成果の関係の分析を行った。研究プロジェクトのサイズ(研究費や投 入された人月)、研究領域、研究開発の当初の目的などをコントロールしている。紙幅の関係で、 ここで全ての結果を示すことはできないが、マネジメントと研究開発の分業の研究プロジェクトの 成果との関係のダイジェストを表したものが下の表である。 Publication

Productivity Serendipity Citedness Citation ORS Logit Logit Poisson Division of Labor in Management-Research 0.37***

(0.10) -0.26*** (008) 0.04 (0.09) 0.01*** (0.00) Number of Observations 2711 2872 2875 2870 Adjusted R-Squared 0.25 0.15 0.13 0.021 論文の生産性で研究開発の生産性を見ると、マネジメントと研究の分業がなされていると、生産性 が高いことが分かる。また、分業とセレンディピティの関係は負の関係があることが分かる。つま り、マネジメントと研究の分業とセレンディピティの関係は、負の関係になっていることが分かる。 つまり、生産性とセレンディピティの間には、トレードオフの関係が見られる。また、ここでは、 研究開発の成果の質を見るために、研究開発プロジェクトが高頻度引用論文を生み出したかどうか (Citedness)と、生み出した焦点となる論文の引用数(Citation)と分業の関係も考察している。この表 にあるように、研究開発プロジェクトが論文の引用数で上位トップ 1%に入るような優れた成果を 生み出せるかどうかと分業との間には関係は見られない。また、引用数においても分業が及ぼす影 響は大きくないことが分かる。

5. 結論

 本研究では、科学技術の研究開発におけるマネジメントと研究開発の分業とパフォーマンスの間 の関係を分析してきた。そこでは、マネジメントと研究開発の分業は、研究開発の生産性との間に

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3. データ

本研究が用いるデータは、科学における知識創造過程や科学知識からイノベーションが創出され る過程についての研究プロジェクトを対象とした体系的な実証研究を行うために、一橋大学イノベ ーション研究センターと文部科学省科学技術政策研究所が2009 年末から 2010 年にかけて実施した 質問票調査によって得られたものである(長岡貞男, 伊神正貫, 江藤学, & 伊地知寛博, 2010a, b)。こ の質問調査は、研究開発プロジェクトを分析単位としたものであり、調査対象は、高頻度引用論文 (分野別の被引用数上位 1%:H project)を生み出したプロジェクトと、無作為に抽出したプロジ ェクト(N project)である。およそ 2100 件の回答が得られている。7 割以上が大学等の研究開発プロ ジェクトである。この調査では、研究開発プロジェクトの目的や性質、インプットやアウトプット など基本的な事項をカバーしている。また、研究開発のプロセスの不確実性、プロジェクトの成果 が当初目的としたものであったかどうか、マネジメントをリードした人材と研究開発をリードした 人材の同一性などについてもデータが得られている。  質問票調査によって、マネジメントで最も重要な役割を担った人材と研究開発で最も重要な役割 を担った人材が同一の研究開発プロジェクトの数は、1,974 であった。ここでは研究開発プロジェ クトが産み出した成果の論文の著者が1 人のプロジェクトの数は 238 であり、マネジメントと研究 開発の分業が行われる余地がないため分析の対象から除いている。マネジメントと研究開発の分業 が行われているプロジェクトの数は、1597 であった。

4. 分析結果

この質問票調査から得られたデータを対象に、マネジメントと研究開発の分業と研究開発の生産 性やセレンディピティなどの成果の関係の分析を行った。研究プロジェクトのサイズ(研究費や投 入された人月)、研究領域、研究開発の当初の目的などをコントロールしている。紙幅の関係で、 ここで全ての結果を示すことはできないが、マネジメントと研究開発の分業の研究プロジェクトの 成果との関係のダイジェストを表したものが下の表である。 Publication

Productivity Serendipity Citedness Citation ORS Logit Logit Poisson Division of Labor in Management-Research 0.37***

(0.10) -0.26*** (008) 0.04 (0.09) 0.01*** (0.00) Number of Observations 2711 2872 2875 2870 Adjusted R-Squared 0.25 0.15 0.13 0.021 論文の生産性で研究開発の生産性を見ると、マネジメントと研究の分業がなされていると、生産性 が高いことが分かる。また、分業とセレンディピティの関係は負の関係があることが分かる。つま り、マネジメントと研究の分業とセレンディピティの関係は、負の関係になっていることが分かる。 つまり、生産性とセレンディピティの間には、トレードオフの関係が見られる。また、ここでは、 研究開発の成果の質を見るために、研究開発プロジェクトが高頻度引用論文を生み出したかどうか (Citedness)と、生み出した焦点となる論文の引用数(Citation)と分業の関係も考察している。この表 にあるように、研究開発プロジェクトが論文の引用数で上位トップ 1%に入るような優れた成果を 生み出せるかどうかと分業との間には関係は見られない。また、引用数においても分業が及ぼす影 響は大きくないことが分かる。

5. 結論

 本研究では、科学技術の研究開発におけるマネジメントと研究開発の分業とパフォーマンスの間 の関係を分析してきた。そこでは、マネジメントと研究開発の分業は、研究開発の生産性との間に はポジティブな関係があったものの、セレンディピティとの間にはネガティブな関係が見られた。 この結果は、これまでの分業とそのパフォーマンスに関する知見と整合的である。また、マネジメ ントの分業によって、生産性とセレンディピティの間にトレードオフの関係が見られた。このこと は、研究開発の目的や性質によって、コンティンジェントにマネジメントのあり方を考える必要が あることを示唆している。  大学や国の研究機関の科学技術の研究開発のマネジメントは、企業のそれと比べるとこれまで多 くの分析が蓄積されているとは言えない。もちろん、企業の研究開発のマネジメントと大学や国の 研究機関のそれとは目的も異なる。そのため、企業のマネジメントの知見をそのまま当てはめるこ とには注意が必要であろう。しかし、さまざまな領域でも確認されているように、研究プロジェク トに携わる研究者の数は増加している(Maio & Kushner, 1981; Smith, 1958)。1 つの研究開発プロジェ クトに携わる研究者の数が増え、研究開発が組織的に行われるようになると、マネジメントの重要 性は高まってくる。これまで、大学や国の研究機関の研究開発については、インプットとアウトプ ットの関係などがマクロなレベルで分析するものが多く蓄積されてきた。一方で、ミクロレベルで マネジメントのあり方を分析する研究はまだまだ少ない。本研究ではマネジメントと研究開発の分 業を考察したが、マネジメントの重要なトピックは他にも多く存在する。また、分業に関しても、 マネジメントと研究開発の分業だけでなく、研究開発それ自体の分業構造も重要な分析すべき課題 であろう。 科学技術におけるイノベーションを考える上でも、ミクロレベルでのマネジメントのあり方を分 析していくことの意味は大きい。また、国際的に激しいプライオリティ競争を行う研究開発プロジ ェクトの実施担当者にとっても、ミクロレベルでの最適なマネジメントのあり方を詳細に分析して いく研究の重要性は高いであろう。 参考文献

Maio, G. D., & Kushner, H. W. 1981. Quantification and Multiple Authorships in Political Science. The Journal of Politics, 43(1): 181-193.

Smith, M. 1958. The Trend Toward Multiple Authorship in Psychology. American Psychologists, 13: 596-599.

Stephan, P. E. 2010. The Economics of Science. In B. H. Hall, & N. Rosenberg (Eds.), Handbook of the economics of innovation, Vol. 1: 217-273. Amsterdam: Elsevier.

長岡貞男, 伊神正貫, 江藤学, & 伊地知寛博. 2010a. 科学における知識生産プロセスの研究―日本の研究者 を対象とした大規模調査からの基礎的発見事実. IIR ワーキングペーパー, WP#10-07-1.

長岡貞男, 伊神正貫, 江藤学, & 伊地知寛博. 2010b. 科学における知識生産プロセスの研究―日本の研究者 を対象とした大規模調査からの基礎的発見事実. IIR ワーキングペーパー, WP#10-07-2.

参照

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