子どもの「問い」が生じる場-小学校における子ども哲学クラブの参与観察を通して-

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子どもの「問い」が生じる場 ―小学校における子ども哲学クラブの参与観察を通してー 人 間 教 育 専 攻 現代教育課題総合コース 小 牧 祐 里 はじめに 現代の教育における子どもたちの課題として、 判断の根拠や理由を明確に示しながら、自分の 考えを述べることが指摘されている。子どもが 自分の意見をしっかりと発言していく力を身に つけ、主体的に活動し、考える力を育成するに あたって、子どもの「問い」 は従来から大切と されている。しかし、子どもの「問い」が、ど のような場で生じるかについては、十分に明ら かになっていない。よって、本論文では、小学 校における「子ども哲学クラブ」で参与観察を 行い、子どもの「問い」に着目することで、子 どもの「間い」が、どのような場で生じるか、 明らかにしていく。中でも、子どもが自らで考 え、思考が深まるような「問い」が生じる場で ある。 第1章 子どもの限月い」に向かって 本論文の「問い」 としては、『「頭の中にだけ ある内的な問い」と外に表明される「外的な問 い」の両方を含むもの』 と、定義する。 「問い」のでき方についてであるが、ここで、 月齢岸の知見から考えると、「間い」が生じる時 に、(ひ見状へ違和感などをもつ感情力②その感 情に気づくメタ認知力③それを具体的な言葉に する 「論理力」が働いていることが分かった。 この「感情力」にあたるものが、「問い」の定義 指導教員 谷 村 千 絵 で述べている、「内的な問い」と類似していると 考えられる。よって、「問い」を出すには「内的 な問い」(感周が大切であると言える。 子ども哲学とは、思考力の育成と人間関係づ くりの両方を目指した教育方法のーつであり、 日本でも多くの学牧で実施されている。子ども 哲学においても、子どもが自ら 「問い」 を出す ことは重要視されている。よって、子どもの「間 い」が尊重され、生じやすいとされる「子ども 哲学」の実践の場に参加し、参与観察を行った。 本論文では、心理・社会・身体的アプローチを ベースとしながら、より構造化された視点であ る、社会的存在を捉える批判的実在論(CR)の 4 平面((①肘人関係②)社会構這3‘質界との交 麺)人格形成の過程)の視点を用いて、フイー ルドノーツの分析を行う。 第2 章 子ども哲学クラブの参与観察 第2 章では、参与観察を行った全4 回分にお ける、各々の回のCR の4 平面からの考察と、 特徴をまとめている。「間い」の回数からも考察 を行うと、子どもの「問い」が生じる時は、参 加者全体の「間い」が増え、場が盛り上がって いるということが分かった。また、自己観察で は、筆者の考え方の変化として、対話中に、コ ンテクストを気にしすぎていることが分かった。

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第3 章 参与観察における子どもの「問い」の 考察 全4 回分の参与観察において、各々の回の子 どもの「問い」に注目すると、子どもの「問い」 が生じるのに大きく影響を与えるものとして、 「コンテクスト」「セーフティ」「社会的関係」 「環境」の、 4 つの要因があることが考察でき た。[髪型の回]では、コンテクストに影響され て、子どもの「問い」が分けられることが分か った。[楽しいの回]では、子どもの「問い」が 増えており、場のセーフティがあったことが分 かった。このセーフティには、①身体的セーフ ②感清的セーフ(動1I1的セーフの3 つがあるとさ れ、これらはお互いに連鎖しているのではない かと考察した。[すきなことの回]では、欠席者 やゲームが場に与える影響力から社会的関係の 繋がりの広さを実感した。[めんどくさいの回] では、教室から校庭へと場所 を移動したことによる、子どもの様子の変化が 印象的であり、環境がその場や子どもの「間い」 に、大きく関わっていることが分かった。 第4章 子どもの「間い」 とコンテクスト 本論文では、先に述べた4 つの要因の内、「コ ンテクスト」 に注目することにする。理由は、 参与観察者として、実践の場で最も娩藍に感じ 取ったものであるからだ。さらに、その 「コン テクスト」に影響されている発言が「子どもの 問い」からも見えたからである。「コンテクスト」 が、「問い」が生じることに影響している1つの 要因なのではないかと考えられる。 よって、「コンテクスト」に注目して、参与観 察した全4 回分の「子どもの間い」について、 深く考察した。ここで、「コンテクスト」に注目 すると、他の3 つの視点である「社会的関係」 「セーフティ」「環境」も影響し合っていること が分かった。 まず、子どもの「間い」の種類を、「はじめる 間い」「確認の間い」「切る問い」「うかぶ間い」 「違和感の問い」の5 つに分けることができた。 次に、月齢岸の知見から子どもの「問い」を考 察すると、場の対話の内容を、自分事として捉 え、コンテクストを掴み、思考しているからこ そ、思考が深まっている「問い」 を生じている ことが理解できた。特に、「うかぶ問い」と「違 和感の問い」 は、コンテクストを子どもがよく 掴んでいる様子が見られ、知的セーフがあるこ とが考察できた。 つまり、その場に「共有されているコンテク スト」を尊重しつつも、恐れずに、自分なりの 「コンテクスト」 を掴み、場に 「共有されてい るコンテクスト」の外側から 「問い」を出すこ とができることは、知的セーフがあると言える のである。だが、この知的セーフがあるから、 コンテクストを気にせずに言えるということだ けではない。知的セーフの場とは、フアシリテ ーターなどが用意しているセーフティの場に加 えて、対話の参加者である子どもたち自身が、 対話の中でコンテクストを掴んだり、配慮した りすることで、作り上げていくのである。子ど もが自らで考え、思考が深まるような「問い」 が生じる場となるのである。 おわりに 本研究では、以上のことが明らかになった。 しかし、目標と評価などの様々なコンテクスト の縛りがある学校の中で、子どもの「問い」 を 大切にし、知的セーフをいかに守れるようにす るか、ファシリテーターとなる学校教師のあり 方について、さらに検討が必要である。

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