モノラル音響信号に対する音源分離のための無限相関テンソル分解
全文
(2) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 256. 256. 192. 192. 128. 128. 64. 64 64. 128. 192. 256. IS-NMF (すべてのビンが独立). LD-PSDTF (周波数方向の相関を考慮) F次元複素ガウス分布. LD-PSDTF (時間方向の相関を考慮). 64. 128. 192. 256. 64. 128. 192. 256. 840. 840. 720. 720. 720. 600. 600. 600. 480. 480. 480. 360. 360. 360. 240. 240. 240. 120. 120. 120. 120 240 360 480 600 720 840. 840. T次元複素ガウス分布. LD-CTF (すべてのビン間の相関を考慮) 120 240 360 480 600 720 840. FT次元複素ガウス分布. 120 240 360 480 600 720 840. 120 240 360 480 600 720 840. FT. *混合音の複素スペクトログラム x ∈ C に対し,IS-NMF は,周波数方向の非負値ベクトル群 W = {w1 , w 2 , w3 ∈ RF + } および時間方向の T F } および時間 非負値ベクトル群 H = {h1 , h2 , h3 ∈ R+ } を推定する.LD-PSDTF は,周波数方向の半正定値行列群 V = {V 1 , V 2 , V 3 ∈ S+ T } を推定 方向の非負値ベクトル群 H ,あるいは周波数方向の非負値ベクトル群 W および時間方向の半正定値行列群 U = {U 1 , U 2 , U 3 ∈ S+ する.LD-CTF は,周波数方向の半正定値行列群 V および時間方向の半正定値行列群 U を推定する(図中では F = 256, T = 840). 図 1. 時間周波数領域での音源分離における IS-NMF, LD-PSDTF, LD-CTF の比較.. で,複素スペクトログラムが無矛盾であることが、対応す. 実際の音響信号の複素スペクトログラムには,周波数方. る時間領域信号が高品質であることを必ずしも意味しない. 向だけではなく,時間方向にも相関が存在する.理論上は,. ことに注意されたい.このことは,周波数領域における位. 定常信号に対してフーリエ変換を用いると,周波数間は独. 相復元は容易ではないことを示唆している.. 立となることが知られている.そこで,実際の非定常な音. 近年,複素スペクトログラムに含まれる位相情報を取. 響信号に対しては,局所的な定常性を仮定して STFT を行. り扱うため,半正定値テンソル分解 (Positive Semidefinite. うのが一般的である.しかし,厳密には,窓関数を用いて. Tensor Factorization, PSDTF) [11, 12] と呼ばれる因子分. 切り出された短時間信号は定常ではないため,対応する複. 解法が提案されている.NMF は,非負値ベクトルを少数の. 素スペクトルにおいては,倍音関係や隣接関係にある周波. 非負値基底ベクトルの線形和で近似するのに対し,PSDTF. 数ビン間には強い相関が発生することが避けられない.ま. は,半正定値行列を少数の半正定値基底行列の線形和で近. た,音響信号は時系列データであるという性質上,時間方. 似する.PSDTF にも様々な変種が考えられるが,LogDet. 向にも相関が存在する.しかし,LD-PSDTF では,周波. (LD) ダイバージェンスに基づく PSDTF (LD-PSDTF) が. 数方向の相関を考慮することができるが,時間方向の独立. IS-NMF の自然な拡張となっている.音源分離において,. 性が仮定されていた.混合音の複素スペクトログラムの周. IS-NMF は,各時刻の混合音のパワースペクトルを,各音. 波数軸と時間軸を入れ替えて LD-PSDTF を利用すること. 源の典型的なパワースペクトルパターンの線形和で近似す. も可能であるが,時間方向の相関は考慮できても,周波数. るのに対し,LD-PSDTF は,各時刻の混合音の複素スペク. 方向の独立性を仮定せざるを得なかった.. トルから計算される共分散行列を,各音源の複素スペクト. 本稿では,NMF,PSDTF に続く究極の因子分解技法と. ルの共分散行列の線形和で近似する.ここで,共分散行列. して,時間周波数上の相関を完全に取り扱える相関テンソ. の対角成分がパワースペクトルに対応することに着目され. ル分解 (Correlated Tensor Factorization, CTF) を提案す. たい.LD-PSDTF では,周波数間の相関を考慮するウィ. る.CTF も NMF や PSDTF と同様に様々な変種を考える. ナーフィルタを用いて,時間ごとに独立に,混合音の複素. ことができ,本稿では,LD ダイバージェンスに基づく CTF. スペクトルを音源信号の複素スペクトルの和に分解するこ. (LD-CTF) を取り上げる.図 1 に IS-NMF,LD-PSDTF,. とができる.実は,このような周波数領域での分解は,時. LD-CTF の比較を示す.LD-CTF は,半正定値行列を,少. 間領域での分解に対応しており,高品質な時間領域の音源. 数の半正定値行列のペアのクロネッカー積の和で近似する,. 信号を推定できる理由となっている.. すなわち,混合音の複素スペクトログラム中の全ての時間. c 2017 Information Processing Society of Japan . 2.
(3) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 周波数ビン間の超大規模な共分散行列を,各音源に対応す. ×T ただし,K min(F, T ) は基底数,Y ∈ RF は低ラン +. る周波数方向の共分散行列と時間方向の共分散行列のクロ. クな再構成行列を表す.行列積表現である式 (1) は,各要. ネッカー積の和で近似する.この結果を用いると,混合音. 素ごとに書きくだすことができる.. の複素スペクトログラムに対し,全ての時間周波数ビン間. xf t ≈ yf t =. def. の相関を考慮したウィナーフィルタを適用することで,音. wkf hkt. k=1. 源の複素スペクトログラムを一挙に得ることができる.. LD ダイバージェンス最小化に基づく LD-CTF は,全て. K . ここで,ykf t = wkf hkt と定義すると,yf t =. (2) k. ykf t が成. の時間周波数ビン上の超高次元の多変量複素ガウス分布. 立する.観測値 xf t と再構成値 yf t との間の誤差 C(xf t |yf t ). の共分散行列パラメータ(周波数方向の共分散行列と時間. を評価する尺度のひとつに,Bregman ダイバージェンス [14]. 方向の共分散行列の少数のペア)の最尤推定を行うことと. が知られている.. 等価である.本稿では,IS-NMF や LD-PSDTF と同様に, 収束性の保証された Expectation-Maximization (EM) ア. Cφ (xf t |yf t ) = φ(xf t ) − φ(yf t ) − φ (yf t )(xf t − yf t ) (3). ルゴリズムおよび Minorization-Maximization (MM) アル. ここで,φ は厳密に凸な関数である.常に Cφ (xf t |yf t ) ≥ 0. ゴリズムを導出する.実際には,適切な音源数を事前に設. が成り立ち,xf t = yf t であるときに限り Cφ (xf t |yf t ) = 0 と. 定することが困難である場合が多い.そこで,観測データ. なる.その特別な場合として,φ(x) = x log x − x の場合の. に合わせて音源数を自動的に調整するため,ガンマ過程に. Kullback-Leibler (KL) ダイバージェンスや,φ(x) = − log x. 基づくノンパラメトリックベイズモデル(無限モデル)の. の場合の IS ダイバージェンスがよく知られている.. 定式化を行う.さらに,パラメータの事後分布を推定する ため,補助関数を用いた変分ベイズ法を導出する. 理論的には,LD-CTF は究極の分解技法ではあるが,数. CIS (xf t |yf t ) =. 百万次元を超えるような巨大行列の計算は現実的ではない ため,計算量削減のための工夫が必要不可欠である.まず,. xf t yf t. (4) (5). NMF のコスト関数 Cφ (X|Y ) は次式で与えられる.. 周波数方向および時間方向の共分散行列をともにブロッ ク対角行列に限定した LD-CTF の近似モデルを提案する.. xf t − xf t + yf t yf t xf t − log −1 yf t. CKL (xf t |yf t ) = xf t log. Cφ (X|Y ) =. T F . Cφ (xf t |yf t ). (6). これは,局所的な時間周波数領域に限定して完全な相関を. f =1 t=1. 考慮することに相当する.また,これまで時間周波数領域. このコスト関数を最小化する W および H を求めるため,. における LD-CTF について議論してきたが,複素スペクト. 乗法更新 (Multiplicative Update, MU) 型の MM アルゴリ. ログラムの周波数軸あるいは時間軸に対して,任意の線形. ズムが提案されている [15].これは,ある確率モデルの最. 変換を施した空間(例:観測音響信号の各フレーム信号を. 尤推定を行うことと等価である.一方,ガンマ事前分布を. 並べただけの時間時間領域や複素スペクトログラムの時間. 導入してベイズ推定を行うこともできる [16, 17].. 軸に対してさらにフーリエ変換を施した周波数周波数領域 など)においても等価な分解が得られる.このことから,. 2.2 IS-NMF を用いた音源分離. 周波数方向の共分散行列群を同時にほぼ対角化できるよう. 与えられた混合音の複素スペクトログラム S ∈ CF ×T. な線形変換と,また,時間方向の共分散行列群を同時にほ. (F は周波数ビン数,T はフレーム数)を K 個の音源信号. ぼ対角化できるような線形変換をそれぞれ見つけることが. の複素スペクトログラムの和に分解することを考える.音. できれば,変換後の空間における IS-NMF が時間周波数領. 源 k の複素スペクトログラムを Z k ∈ CF ×T とし,周波数. 域での LD-CTF の良い近似になると考えられる.. 領域での瞬時混合過程を仮定すると,以下が成り立つ.. 2. 因子分解と音源分離. S=. や LD-PSDTF [11] の理論的な裏付けについて説明する.. とする複素ガウス分布に従うことを仮定する.. zkf t |ykf t ∼ Nc (0, ykf t ). ×T NMF では,非負値行列 X ∈ RF を二つの非負値行列 +. W ∈ RK×F および H ∈ RK×T の積 Y で近似する. + + def. c 2017 Information Processing Society of Japan . (7). IS-NMF では,潜在変数 zkf t が,ykf t を分散パラメータ. 2.1 非負値行列分解 (NMF). X ≈ Y = WTH. Zk. k=1. 本章では,従来の因子分解技法である NMF や PSDTF に ついて説明する.特に,音源分離を行ううえで,IS-NMF [13]. K . (1). ここで,sf t =. . k zkf t. かつ yf t =. k. (8). ykf t であり,複素. ガウス分布の再生性から,sf t も複素ガウス分布に従う.. sf t |yf t ∼ Nc (0, yf t ). (9). 3.
(4) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. これは,sf t の位相に関わらず,時刻 t・周波数 f における. の 場 合 の von Neumann (vN) ダ イ バ ー ジ ェ ン ス や ,. パワー xf t = |sf t |2 が指数分布に従うことと等価である.. φ(Z) = − log |Z| の場合の LogDet (LD) ダイバージェ. def. xf t |yf t ∼ Exponential(yf t ). (10). 最終的に,観測される複素スペクトログラム S に対する対 数尤度関数を導出できる.. log p(S|Y ) =. T F . ンスなどが知られている [19].. CvN (X t |Y t ) = tr (X log X − X log Y − X + Y ) (15) . + tr X t Y −1 − M (16) CLD (X t |Y t ) = − log X t Y −1 t t PSDTF のコスト関数 Cφ (X|Y ) は次式で与えられる.. log p(sf t |yf t ). f =1 t=1. Cφ (X|Y ) =. T F xf t = − − log yf t yf t t=1 = −CIS (X|Y ). Cφ (X t |Y t ). (17). t=1. LD-PSDTF に関しては,このコスト関数を最小化する V. f =1. c. T . (11). したがって,対数尤度関数の最大化 p(S|Y ) は,IS ダイ バージェンス CIS (X|Y ) の最小化と等価である. パラメータ Y (W および H )が推定できれば,式 (8) および式 (9) から,観測変数 S が与えられたもとで,潜在. および H を求めるため,乗法更新 (Multiplicative Update,. MU) 型の MM アルゴリズムが提案されている [11,12].こ れは,ある確率モデルの最尤推定を行うことと等価であり, 共役事前分布を導入してベイズ推定を行うこともできる.. 2.4 LD-PSDTF を用いた音源分離. 変数 Z k の事後分布を求めることができる. −1 2 (12) p(zkf t |sf t ) = Nc zkf t ykf t yf−1 s , y − y y f t f t kf t t ft. ペクトル(潜在変数)を z kt = [zk1t , · · · , zkF t ]T ∈ CF と. この処理はウィナーフィルタと呼ばれ,Z k と S の位相は. 多変量複素ガウス分布に従うことを仮定する.. LD-PSDTF では,音源信号 k の時刻 t における複素ス F を共分散行列パラメータとする すると,z kt は Y kt ∈ S+. 同一となる.これは NMF に基づく音源分離の性質であり,. z kt |Y kt ∼ Nc (0, Y kt ). 音源信号の合成品質に限界がある根本的な原因のひとつ となっている.最後に,重畳加算合成法 [18] を用いれば,. E[Z k |S] から音源信号を復元することができる. 2.3 半正定値テンソル分解 (PSDTF) PSDTF では,観測データとして,特別な形式を持つ 3. ここで,混合音の時刻 t における複素スペクトル(観測変 数)を st = [s1t , · · · , sF t ]T ∈ CF とすると,st = k z kt かつ Y t = k Y kt であることと,複素ガウス分布の再生 性から,st も多変量複素ガウス分布に従う.. 階のテンソル X = [X 1 , · · · , X t ] ∈ CF ×F ×T が与えられ るものとする.ここで,各要素 X t ∈. F S+. は半正定値行列. であるとする.PSDTF の目標は,それぞれの半正定値行 F K }k=1 (基底行列 列 X t を K 個の半正定値行列 {V k ∈ S+. とよぶ)の線形和で近似することである.. Xt ≈ Y t =. def. K . hkt V k. k=1. ここで,Y kt = hkt V k と定義すると,Y t =. (13) k. Y kt が成. 立する.hkt ≥ 0 は n 番目の要素 X t における基底行列 V k の重みである.観測行列 X t と再構成行列 Y t との間の誤. (18). st |Y t ∼ Nc (0, Y t ). (19). 最終的に,混合音の時刻 t における局所的な共分散行列を. X t = st sH t とすると,観測される複素スペクトログラム def. S に対する対数尤度関数を導出できる. log p(S|Y ) =. T . log p(st |Y t ). t=1. =. T . − log |Y t | − tr(X t Y −1 t ). t=1 c. = −CLD (X|Y ). (20). 差 Cφ (X t |Y t ) を評価する尺度として,Bregman 行列ダイ. したがって,対数尤度関数 p(S|Y ) の最大化は,LD ダイ. バージェンス [14] が利用できる.. バージェンス CLD (X|Y ) の最小化と等価である.. Cφ (X t |Y t ) =φ(X t ) − φ(Y t ). − tr ∇φ(Y t )T (X t − Y t ). パラメータ Y (V および H )が推定できれば,式 (18). (14). ここで,φ は微分可能で厳密に凸な関数である.式 (14) は 式 (3) の自然な多次元拡張となっており,常に Cφ (X t |Y t ) ≥. および式 (19) から,観測変数 S が与えられたもとで,潜 在変数 Z k の事後分布を求めることができる. −1 p(z kt |st ) = Nc z kt Y kt Y −1 s , Y −Y Y Y (21) t t kt kt t t. 0 が成り立ち,X t = Y t であるときに限り Cφ (X t |Y t ) = 0. このウィナーフィルタを用いると,S から Z k の位相をあ. となる.その特別な場合として,φ(Z) = tr(X log X − X). る程度正しく復元することができる.. c 2017 Information Processing Society of Japan . 4.
(5) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. log p(S|Y ) = log p(s|Y ). 3. 相関テンソル分解. = − log |Y | − tr(XY −1 ). 本章では,相関テンソル分解 (Correlated Tensor Factor-. c. = −CLD (X|Y ). ization, CTF) とよぶ新しい因子分解法について説明する.. (26). CTF は NMF や PSDTF の本質的な拡張となっており,最. したがって,対数尤度関数 p(S|Y ) の最大化は,LD ダイ. 尤推定やベイズ推定が可能である.. バージェンス CLD (X|Y ) の最小化と等価である. パラメータ Y (V および U )が推定できれば,式 (24). 3.1 定式化. および式 (25) から,観測変数 S が与えられたもとで,潜. FT CTF では,観測データとして,半正定値行列 X ∈ S+. が与えられるものとする.CTF の目標は,半正定値行列 X F K を半正定値行列の集合 {V k ∈ S+ }k=1 と対応する半正定. T K }k=1 とのクロネッカー積の和で近 値行列の集合 {U k ∈ S+. 似することである.. X≈Y =. def. K . V k ⊗ Uk. k=1. ここで,Y k = V k ⊗ U k と定義すると,Y =. (22) . 在変数 Z k の事後分布を求めることができる. p(z k |s) = Nc z k Y k Y −1 s, Y −Y k Y −1 Y k. (27). このウィナーフィルタでは,時間周波数ビン間の完全な相 関が考慮されている.また,Z k = z k z H k と定義しておく. def. 3.3 補助関数法 LD ダイバージェンス CLD (X|Y ) を V および U に関し. k Y k が成. て直接最小化することは困難であるため,補助関数法 [15]. 立する.これらすべての半正定値行列が対角行列のとき,. を用いて,CLD (X|Y ) を間接的に最小化することを考える.. 式 (22) で定義される CTF は,式 (2) で定義される NMF. いま,θ に関して最小化したい目的関数 F (θ) に対して,. に帰着する.また,{V. K k }k=1. あるいは. {U k }K k=1. のいずれ. F (θ) ≤ F + (θ, φ). かが対角行列の集合であるとき,式 (22) で定義される CTF. (28). は,式 (13) で定義される PSDTF に帰着する.CTF では,. を満たす上限関数 F + (θ, φ) を F (θ) の補助関数と呼ぶ.こ. PSDTF と同様に,観測行列 X と再構成行列 Y との間の. こで,φ は補助パラメータであり,任意の値に対して不等. 誤差 Cφ (X|Y ) を評価する尺度として,Bregman 行列ダイ. 式が成立する必要がある.このとき,以下の反復更新則. バージェンス [14] を利用する.. Cφ (X|Y ) = φ(X) − φ(Y ) − tr ∇φ(Y )T (X − Y ) (23) CTF では,Cφ (X|Y ) を最小化する V および U を求める. φnew ← argminφ F + (θ old , φ). (29). θ new ← argminθ F + (θ, φnew ). (30). を用いると,F (θ) は単調非増加となる(式 (29) により. ことが目標となる.本稿では特に,モノラル音響信号の音. F + (θ, φ) が最大化されて F (θ) に一致する).このアルゴ. 源分離を行うのに適した LD ダイバージェンス CLD (X|Y ). リズムの収束性は保証されており,IS-NMF や LD-PSDTF. に基づく CTF (LD-CTF) について議論する.. のベイズ学習でも同様の手法が利用されている [11, 17]. 対 数尤度関数 p(S|Y ) を最大化する場合には,下限関数を補 助関数として,下限関数を逐次最大化すればよい.. 3.2 LD-CTF を用いた音源分離 LD-CTF では,音源信号 k の複素スペクトログラム Z k の全ての時間周波数ビンを並べたベクトル(潜在変数)を. z k = [zk11 , · · · , zk1T , · · · , zkF 1 , · · · , zkF T ]T ∈ CF T とし, zk が Y k ∈. FT S+. を共分散行列パラメータとする多変量複. ることは困難であるので,下限関数を設計する.. (24). ここで,混合音の複素スペクトログラム S(観測変数)を同 様に展開し,s = [s11 , · · · , s1T , · · · , sF 1 , · · · , sF T ]T ∈ CF T とすると,s = k z k かつ Y = k Y k であることと,複 素ガウス分布の再生性から,次式が成立する.. s|Y ∼ Nc (0, Y ). (25). したがって,X = ssH とすると,観測される複素スペクト def. ログラム S に対する対数尤度関数は,次式で与えられる. c 2017 Information Processing Society of Japan . LD-CTF の確率モデル(3.2 節)を考えることで,補助 関数法の一種である EM アルゴリズムを用いた最尤推定を 行うことができる.対数尤度関数 p(S|Y ) を直接最大化す. 素ガウス分布に従うことを仮定する.. z k |Y k ∼ Nc (0, Y k ). 3.4 Expectation-Maximization アルゴリズム. log p(S|Y ). p(S, Z|V , U ) dZ = log q(Z) q(Z). p(S, Z|V , U ) ≥ q(Z) log dZ q(Z). = q(Z) log p(S, Z|V , U )dZ − q(Z) log q(Z)dZ = L (q(Z), V , U ). def. (31). ここで,q(Z) は潜在変数 Z に関する変分事後分布である.. 5.
(6) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. まず,E ステップにおいて,V および U が既知のもと. 3.5 Minorization-Maximization アルゴリズム. で,L (q(Z), V , U ) を最大化する q(Z) を求める.具体的. 対数尤度関数 p(S|Y ) に対して EM アルゴリズムとは異. には,q(Z) が真の事後分布 p(Z|S, V , U ) と一致するとき. なる補助関数(下限関数)を設計することにより,MM ア. (式 (27) 参照),L (q(Z), V , U ) は最大化される.. q(Z) = p(Z|S, V , U ) =. K
(7). ルゴリズムに基づく最尤推定を行うことができる.EM ア ルゴリズムは,確率モデルの最尤推定にのみ適用できるが,. p(z k |S, V k , U k ). MM アルゴリズムは,補助関数さえ設計できれば,一般的. k=1 K
(8). =. . Nc z k Y k Y −1 x, Y k − Y k Y −1 Y k (32). k=1. この結果から潜在変数 Z に関する期待値を計算しておく.. E[z k |X, V , U ] = Y k Y −1 x. (33). E[Z k |X, V , U ] = Y k − Y k Y −1 Y k + Y k Y −1 XY −1 Y k. = Y k I + Y −1 X − I Y −1 Y k (34) 次に,M ステップにおいて,q(Z) が既知のもとで,. な目的関数の最適化問題に適用できる. まず,半正定値行列を入力にとる関数の凸性および凹性に 基づく不等式を導出しておく.まず,f (Z) = log |Z| (Z ∈ M S+ ) が凹関数であることに着目すると,f (Z) に対して 1. 次のテイラー展開を行うことで,次式を得る.. log |Z| ≤ log |Ω| + tr(Ω−1 Z) − M. (39). ここで,Ω は任意の半正定値行列である.等号成立条件は, M Ω = Z で与えられる.次に,任意の半正定値行列 A ∈ S+. L (q(Z), V , U ) を最大化する V および U を求める.まず,. に対して g(Z) = tr(Z −1 A) は凸関数であることに着目す. L (q(Z), V , U ) のうち,V および U を含む項を書き下す.. ると,澤田らの提案する不等式 [20] を適用可能である. K −1 K −1 H (40) tr Z A ≤ tr Z Φ AΦ k k k k k=1. L (q(Z), V , U ). c = q(Z) log p(X|Z)p(Z|V , U )dZ c. =. K . k=1. M K ここで,{Z k ∈ S+ }k=1 は任意の半正定値行列の集合であ M ×M K }k=1 は k Φk = I M,M を満たす補助 り,{Φk ∈ C. Eq(z k ) [log Nc (z k |0, V k ⊗ U k )]. 変数である.ここで,I M,M は M × M の単位行列である. 等号成立条件は,Φk = Z k ( k Z k )−1 で与えられる.. k=1 c. = −T. K k=1. −. K k=1. log |V k | − F. K . log |U k |. 式 (39) および式 (40) を用いると,対数尤度関数 p(S|Y ). k=1. −1 tr (V −1 k ⊗ U k )Eq(z k ) [Z k ]. に対する下限関数を導出できる.. (35). L (q(Z), V , U ) を V −1 k で偏微分する. ∂L = T V Tk − (I F,F ⊗ 1TT ) ∂V −1 k T (1F,F ⊗ U −1 k ) Eq(z k ) [Z k ] (I F,F ⊗ 1T ) (36) ここで,1∗ は全要素が 1 のベクトルあるいは行列を表す (添え字はデータのサイズ).これを 0 とおいて V k につい て解き,式 (34) を代入すると V k の更新則を得る. 1 V k ← (I F,F ⊗ 1TT ) (1F,F ⊗ U −T k ) T. (I F,F ⊗ 1T ) (37) Y k I + Y −1 X − I Y −1 Y k 同様に,U k の更新則も求められる. 1 U k ← (1TF ⊗ I T,T ) (V −T ⊗ 1T,T ) k F. −1. −1. (1F ⊗ I T,T ) (38) Yk I + Y X −I Y Yk. EM アルゴリズムでは,対数尤度関数 p(S|Y ) が収束する まで式 (37) および式 (38) を反復する.このとき,V k と. U k にはスケール不定性があるので,反復のたびに,V k の 対角成分(IS-NMF における基底スペクトル wk に相当) の和が 1 となるように,両者のスケールの調整を行う.こ の処理で,L (q(Z), V , U ) の値は影響を受けない. c 2017 Information Processing Society of Japan . log p(S|Y ). c = − log |Y | − tr XY −1 c. ≥ − log |Ω| −. K K . . H tr Y k Ω−1 − tr Y −1 k Φk XΦk k=1. k=1. = L(Ω, Φ, V , U ). def. (41). ここで,Ω は半正定値行列であり,{Φk }K k=1 は. k. Φk =. I F T,F T を満たす補助変数である.等号が成立する,すな わち,L(Ω, Φ, V , U ) を最大化するときの条件(補助パラ メータの更新則)は次式で与えられる.. Ω=Y Φk = Y k Y. (42) −1. (43). 次に,Ω および Φ が既知のもとで,L(Ω, Φ, V , U ) を最 大化する V および U を求める.行列変数微分のチェイン 則に注意しながら,L(Ω, Φ, V , U ) を V k で偏微分する.. ∂L ∂vecT (V k ) = −vecT (I F,F ⊗ 1TT ) (1F,F ⊗ U k ) Ω−T (I F,F ⊗ 1T ) C T T + vecT (I F,F ⊗ 1TT ) (1F,F ⊗ U −1 k ) Φk X Φk −1 (I F,F ⊗ 1T )) V −T ⊗ V (44) k k. 6.
(9) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. = −vecT (I F,F ⊗ 1TT ) (1F,F ⊗ U k ) Ω−T (I F,F ⊗ 1T ) −1 C T T T + vecT V −T k (I F,F ⊗ 1T ) (1F,F ⊗ U k ) Φk X Φk (I F,F ⊗ 1T )V −T (45) k これを 0 とおいて V k について解き,式 (42) および式 (43) を代入すると V k の更新則を得る. def P k = (I F,F ⊗ 1TT ) (1F,F ⊗ U Tk ) Y −1. (I F,F ⊗ 1T ). G ∼ GaP(α, G0 ). ここで,G0 はある空間 Θ 上に定義された基底測度であ .サンプル り,G(Θ) = c を満たす(確率測度に限らない) される G は Θ 上の離散測度となることが知られており,. {Θ1 , · · · , Θ∞ } とすると,G(Θk ) = θk を満たす.α は集 (46) . (I F,F ⊗ 1T ) 1 12 1 −1 −1 ← P k 2 P k2 V k Qk V k P k2 Pk 2. (47). = P −1 k ◦ (V k Qk V k ). (48). 中度と呼ばれ,α が小さくなるほど θ はスパースになる. また,パラメータ U および U に関しては,複素ウィ シャート事前分布を用いるのが都合がよい.. ここで,◦ は半正定値行列同士の幾何平均を表す [21].同 様に,U k の更新則も求められる. def Rk = (1TF ⊗ I T,T ) (V Tk ⊗ 1T,T ) Y −1. (56). (1F ⊗ I T,T ) 1 12 1 −1 −1 U k ← Rk 2 Rk2 U k S k U k Rk2 Rk 2. いま,観測データ S が与えられたもとでの,パラメータの 事後分布 p(θ, V , U |S) = p(S, θ, V , U )/p(S) を計算した p(S, θ, V , U )dθdV dU い.しかし,周辺尤度 p(S) =. p(θ, V , U |S) を近似的に求める.まず,因子分解が可能な. def S k = (1TF ⊗ I T,T ) (V Tk ⊗ 1T,T ) Y −1 XY −1. (50). 関数形をもつ変分事後分布 q(θ, V , U ) を考える.. q(θ, V , U ) =. K
(10). q(θk )q(V k )q(U k ). (57). k=1. そのうえで,真の事後分布 p(θ, V , U |S) に対する KL ダイ バージェンスを最小化するような q(θ, V , U ) を求めたい.. = R−1 k ◦ (U k S k U k ). (51). これは,対数周辺尤度 log p(S) の変分下限 L を最大化する ことと等価であることが知られている.. log p(S). 3.6 ノンパラメトリックベイズモデル 本節では,基底数を K → ∞ としたノンパラメトリック. ≥ E[log p(S|θ, V , U )]. ベイズモデルについて説明する.無限モデルにおいては,. + E[log p(θ)] + E[log p(V )] + E[log p(U )]. 無限個の基底のうちで,観測データを表現するのに実質的 には少数の基底しか利用されないようなスパースな学習を 行う必要がある.いま,基底の重みを表す無限次元の非負 値ベクトル θ = [θ1 , · · · , θ∞ ]T を式 (25) に導入する. K s|Y ∼ Nc (0, Y ) = Nc 0, θk (V k ⊗ U k ) (52) ここで,Y k = θk (V k ⊗ U k ) かつ Y k =. (55). U Wc (RU 0 , γ0 ). の計算は解析的に行えないため,変分ベイズ法を用いて. (49) . k=1. V k ∼ Wc (RV0 , γ0V ) Uk ∼. (1F ⊗ I T,T ). (54). E[G] = G0 となっている.空間 Θ の微小区間への分割を. def Qk = (I F,F ⊗ 1TT ) (1F,F ⊗ U Tk ) Y −1 XY −1. Vk. このとき,K → ∞ とすれば,ガンマ過程が得られる.. k. Y k とした.. − E[log q(θ)] − E[log q(V )] − E[log q(U )] c. ≥ E[log L(Ω, Φ, θ, V , U )] + E[log p(θ)] + E[log p(V )] + E[log p(U )] − E[log q(θ)] − E[log q(V )] − E[log q(U )] = L(Ω, Φ, q(θ), q(V ), q(U )). def. (58). ここで,第一項に関して,不等式 (41) では,Y k = V k ⊗ U k. このとき,無限次元の θ のうちで,一部の要素のみが有意. であったのを,Y k = θk (V k ⊗ U k ) とした不等式を用い. に大きな値をもち,それ以外はほとんどゼロとなるような. た.このとき,変分下限 L(Ω, Φ, q(θ), q(V ), q(U )) を最大. 学習を行うには,θ に対する事前分布としてガンマ過程を. 化するには,L(Ω, Φ, q(θ), q(V ), q(U )) が収束するまで各. 用いるのが自然である [17].最も簡単なガンマ過程の近似. 変数の最適化を反復する.まず,補助パラメータ Ω および. 方法は,K を十分に大きくとり,各要素 θk がガンマ事前. Φ に関する最適化を行う.その後,各パラメータに関する. 分布に従うことを仮定することである.. 変分事後分布を順番に更新すればよい.. θk ∼ G(αc/K, α). (53). ここで,α ≥ 0 および c ≥ 0 は正の超パラメータであり, Eprior [θk ] = c/K および Eprior [ k θk ] = c となっている. c 2017 Information Processing Society of Japan . q(θ) ∝ p(θ) exp(Eq(V ,U ) [log L(Ω, Φ, θ, V , U )]) (59) q(V ) ∝ p(V ) exp(Eq(θ ,U ) [log L(Ω, Φ, θ, V , U )]) (60) q(U ) ∝ p(U ) exp(Eq(θ ,V ) [log L(Ω, Φ, θ, V , U )]) (61). 7.
(11) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. まず,L(Ω, Φ, q(θ), q(V ), q(U )) を最大化する補助パラ メータ Ω および Φ を求める. Ω = k E[Y k ] −1 −1 −1 −1 Φk = E Y −1 k k E Y k. (62). 次に,L(Ω, Φ, q(θ), q(V ), q(U )) を最大化する変分事後. (Generalized Inverse Gaussian, GIG) 分布あるいは複素行 列 GIG (Matrix GIG, MGIG) 分布で与えられる [11, 22].. (64). U q(U k ) = MGIG(U k |γ0U , RU k ,Tk ). 1TT ). = + E[θk ](I F,F ⊗ (1F,F ⊗ E[U Tk ]) Ω−1 (I F,F ⊗ 1T ). ∼ ⊗ . ܲ. ֤ϒϩοΫಠཱ. 図 2 ブロック対角行列に制限した LD-CTF.. T 列を対角上に I 個に並べた半正定値行列であり,U k ∈ S+. は,同一サイズ Q の半正定値行列を対角上に J 個に並べ. T = QJ とする.実際には,すべての k について共通であ れば,各ブロックのサイズは可変でよい.また,必ずしも 隣接する行あるいは列を同じブロックにいれる必要はなく, 行および列をそれぞれ I 個と J 個のブロックにクラスタリ ングしておけばよい.このとき,計算量は O(KIJP 3 Q3 ). (67). T Vk = E[θk−1 ](I F,F ⊗ 1TT ) H (1F,F ⊗ E[U −T (I F,F ⊗ 1T ) (68) ]). Φ XΦ k k k U −1 RU + E[θk ](1TF ⊗ I T,T ) k = (R0 ) (E[V Tk ] ⊗ 1T,T ) Ω−1 (1F ⊗ I T,T ). ࢂ. た半正定値行列であるとする.ただし,F = P I および. ここで,各分布のパラメータは以下で与えられる.. (65) ρθk = 2α + 2tr E[V k ⊗ U k ] Ω−1 −1 (66) Φk XΦH τkθ = 2tr E V −1 k k ⊗ Uk. (RV0 )−1. ܨ. F 簡単のため,V k ∈ S+ は,同一サイズ P の半正定値行. q(θk ) = GIG(θk |αc/K, ρθk , τkθ ). RVk. ࢁ. (63). 分布 q(θ), q(V ), q(U ) を求める.各分布は一般化逆ガウス. q(V k ) = MGIG(V k |γ0V , RVk , T Vk ). ܳ. ܶ. (69). −1 T TU k = E[θk ](1F ⊗ I T,T ) H (E[V −T (1F ⊗ I T,T ) (70) ] ⊗ 1 ). Φ XΦ T,T k k k. MGIG 分布に従う確率変数の各種期待値を計算するには, ウィシャート分布を用いた重点サンプリングを行う必要が ある [23].. となり,大幅な計算量の削減が可能となる. 優れた近似精度と劇的な高速化を同時に達成するための 方法として,V および U に対してそれぞれ同時対角化を 行うことが考えられる.本稿では,時間周波数領域におけ る複素スペクトログラム S の確率モデルを考えていた. K (71) S|V , U ∼ Nc 0, V k ⊗ Uk k=1. ここで,S は行列であるが,全ての要素を並べたベクトル が多変量複素ガウス分布に従うと考える.S に任意の線形 変換 A および B を両側から適用すると,次式が成立する. K H H H ASB |V , U ∼ Nc 0, AV k A ⊗ BU k B k=1. 3.7 計算量削減. このとき,すべての k について,AV k AH および BU k B H. これまで説明した通り,理論上は LD-CTF の最尤推定と. が対角行列となれば,変換後の空間では,LD-CTF は IS-. ベイズ推定が導出できるが,計算量が極めて膨大であり,. NMF に帰着し,高速な実行が可能となる.したがって,同. 現実的には実行不可能である.音源分離問題において,F. 時対角化を行う A および B の推定と,V および U の更新. と T はそれぞれ周波数ビン数とフレーム数に対応してお. を反復的に繰り返す手法が有望である.図 3 に,A と B. り,F T × F T という巨大な行列を取り扱う必要があるこ. が,ともに離散フーリエ変換 (DFT) 行列である場合の例を. とから,LD-CTF の計算量は O(KF 3 T 3 ) である.. 示す.もし,時間領域信号が定常であれば,V k は巡回行列. 計算量を削減する一つの方法は,半正定値行列 V k や U k. となり,DFT 行列 D F で対角されるため,A = DF とする. をブロック対角行列に制限することである(図 2) .音源分. ことはよい選択となる.これが,周波数方向には独立であ. 離においては,時間周波数領域を矩形領域に分割し,各ブ. るとして IS-NMF を適用する理由であったが,LD-PSDTF. ロックでは完全な相関を考慮するが,ブロック間は独立で. を用いれば分離精度が向上することから,DF は同時対角. あるとみなすことを意味する.ここで,V k と U k がどち. 化のための最適な変換ではないことが示唆されている.一. らも対角行列の場合には IS-NMF,いずれかが対角行列の. 方,フレーム方向の時間軸の変換については,これまでほ. 場合には LD-PSDTF となることに注意されたい.ブロッ. とんど議論されてこなかった.ガウス過程の観点から,周. ク対角 LD-CTF は,制約のない LD-CTF と LD-PSDTF. 波数方向・時間方向の依存性を一挙に解決する試みについ. の間の中間的な表現力のモデルになっている.. てさらなる研究が期待される.. c 2017 Information Processing Society of Japan . 8.
(12) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 512. 時間. 周波数. 時間. 時間. 512 840. 時間. 周波数. 周波数. 図 3. 周波数. DFT による空間変換.S ∈ CF ×T は混合音の複素スペクト ログラム(ここでは F は窓幅)であり,D F ∈. CF ×F. 840. 図 4. (P, Q) = (64, 20) のときの LD-CTF の結果.. および. D T ∈ CT ×T はそれぞれ離散フーリエ変換行列である.. 4. 評価 LD-CTF を用いた音源分離実験について報告する.本稿. 表 1 音源分離精度 [dB]. IS-NMF LD-PSDTF LD-CTF (P, Q) (1, 1) (256, 1) (840, 1) (128, 10) (64, 20) (32, 40) SDR 18.88 21.58 21.04 19.68 20.60 20.21 SIR 24.14 27.01 24.67 25.29 26.17 25.45 SAR 20.45 23.14 23.50 21.47 21.47 22.15. では,3.5 節で述べた MM アルゴリズムに基づく最尤推定 を用いて,LD-CTF の基本的な動作と性能を確認した.. るはずであるが,複素行列計算に関する計算誤差の影響が 考えられる.一方,(P, Q) = (1, 840) に対応する LD-CTF. 4.1 実験条件. (時間方向の相関を考慮した LD-PSDTF)でも優れた分離. 実験には,MIDI のピアノ音を用いた.三つの音高 (C4,. 結果が得られることが本実験で初めて確認された.図 1 を. E4, G4) をもつ 1.2 秒間の音響信号を準備し,それらを 7 つ. 見ると,周波数方向においては,倍音の間には強い相関が. の異なる組み合わせで重畳したもの (C4, E4, G4, C4+E4,. あり,時間方向においては,音量の大きいフレームの間に. C4+G4, E4+G4, C4+E4+G4) を連結して 8.4 秒の音響信. は強い相関があることがわかる.. 号を合成した.サンプリング周波数は 16[kHz] とした.窓. ブロック対角 LD-CTF は,IS-NMF より高精度な分離が. 幅 512 点ガウス窓を用いて,窓シフト長 160 点の STFT を. 可能であるはあるものの,LD-PSDTF には及ばなかった.. 行った(F = 256,T = 840).. 図 4 に実行結果の例を示す.時間周波数領域を排他的なブ. 合成した混合音を C4, E4, G4 に対応する音源信号に分離. ロックに区切ることで,ブロックの境界付近で位相が不適. することを試みた(K = 3).ブロック対角 LD-CTF の設. 切になる可能性が考えられる.また,隣接する周波数を同. 定は,(P, Q) = (256, 1), (1, 840), (128, 10), (64, 20), (32, 40). じブロックにしているが,倍音周波数を同じブロックにい. とした.比較のため,IS-NMF も評価した.このとき,計. れて,倍音周波数間の相関は完全に取り扱うことで,分離. 算量を削減し,局所解を回避するため,IS-NMF の結果. 精度は向上することが期待できる.. を,LD-CTF の初期値とした.ブロック対角 LD-CTF は,. 5. おわりに. (P, Q) = (1, 1) のとき IS-NMF に,(P, Q) = (256, 1) あるい は (P, Q) = (1, 840) のときそれぞれ周波数方向あるいは時. 本稿では,NMF や PSDTF を特別な場合として含む,相. 間方向の相関を考慮する LD-PSDTF と等価である.各手法. 関テンソル分解 (CTF) と呼ぶ究極の因子分解法を提案し. に対して,反復回数は 100 回とした.BSS Eval Toolbox [24]. た.特に,音源分離に適した LD ダイバージェンスに基づ. を用いて,Source-to-Distortion Ratio (SDR),Source-to-. く CTF (LD-CTF) を取り上げ,最尤推定のための EM ア. Interferences Ratio (SIR) および Sources-to-Artifacts Ra-. ルゴリズムおよび MM アルゴリズム,さらにガンマ過程. tio (SAR) で評価した.. に基づくノンパラメトリックベイズモデルと変分ベイズ法 を提案した.また,ブロック対角制約や同時対角化などの. 4.2 実験結果 表 1 に実験結果を示す.(P, Q) = (256, 1) に対応する. 計算量を削減する方法について議論した.. CTF は一般の N 階のテンソルデータに対して適用でき,. LD-CTF (周波数方向の相関を考慮した LD-PSDTF)は. よく知られた Canonical Polyadic (CP) 分解のエレガント. IS-NMF に対する明確な優位性を示した.LD-PSDTF を時. な数学的拡張でもある.テンソルの各モードにおける完全. 間領域で実行した場合は,SDR は 26.6 [dB] であった [12].. な相関を取り扱うことができる強力な枠組みであり,音響. 理論的には両者は等価であり,ほぼ同じ分離精度が得られ. 信号処理分野以外への応用について検討していきたい.. c 2017 Information Processing Society of Japan . 9.
(13) Vol.2017-MUS-116 No.6 2017/8/24. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 謝辞: 本研究の一部は,JSPS 科研費 26700020, 16H01744 お よび JST ACCEL No. JPMJAC1602 の支援を受けた.. [14]. 参考文献 [1]. [2]. [3]. [4]. [5]. [6]. [7]. [8]. [9]. [10]. [11]. [12]. [13]. Itoyama, K., Goto, M., Komatani, K., Ogata, T. and Okuno, H. G.: Query-by-Example Music Information Retrieval by Score-Informed Source Separation and Remixing Technologies, EURASIP Journal on Advances in Signal Processing, Vol. 2010 (2010). Article ID 172961. Goto, M.: Active Music Listening Interfaces based on Signal Processing, IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), Vol. 4, pp. 1441–1444 (2007). Yoshii, K., Goto, M., Komatani, K., Ogata, T. and Okuno, H. G.: Drumix: An Audio Player with Real-time Drum-Part Rearrangement Functions for Active Music Listening, IPSJ Digital Courier, Vol. 3, pp. 134–144 (2007). Sturmel, N., Liutkus, A., Pinel, J., Girin, L., Marchand, S., Richard, G., Badeau, R. and Daudet, L.: Linear Mixing Models for Active Listening of Music Productions in Realistic Studio Conditions, The 132nd Audio Engineering Society (AES) Convention (2012). Lee, D. and Seung, H.: Algorithms for Non-Negative Matrix Factorization, Neural Information Processing Systems (NIPS), pp. 556–562 (2000). Griffin, D. W. and Lim, J. S.: Signal Estimation from Modified Short-Time Fourier Transform, IEEE Transactions on Acoustics, Speech, and Signal Processing, Vol. 32, No. 2, pp. 236–243 (1984). Roux, J. L., Kameoka, H., Ono, N. and Sagayama, S.: Explicit Consistency Constraints for STFT Spectrograms and Their Application to Phase Reconstruction, Workshop on Statistical and Perceptual Audition (SAPA), pp. 23–28 (2008). Roux, J. L., Kameoka, H., Ono, N. and Sagayama, S.: Fast Signal Reconstruction from Magnitude STFT Spectrogram Based on Spectrogram Consistency, International Conference on Digital Audio Effects (DAFx), pp. 397–403 (2010). Kameoka, H., Nishimoto, T. and Sagayama, S.: Complex NMF: A New Sparse Representation for Acoustic Signals, IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), pp. 45–48 (2009). Roux, J. L., Vincent, E., Mizuno, Y., Kameoka, H., Ono, N. and Sagayama, S.: Consistent Wiener Filtering: Generalized Time-Frequency Masking Respecting Spectrogram Consistency, International Conference on Latent Variable Analysis and Signal Separation (LVA/ICA), pp. 89–96 (2010). Yoshii, K., Tomioka, R., Mochihashi, D. and Goto, M.: Infinite Positive Semidefinite Tensor Factorization for Source Separation of Mixture Signals, International Conference on Machine Learning (ICML), pp. 576–584 (2013). Yoshii, K., Tomioka, R., Mochihashi, D. and Goto, M.: Beyond NMF: Time-Domain Audio Source Separation without Phase Reconstruction, International Society for Music Information Retrieval Conference (ISMIR), pp. 369–374 (2013). F´evotte, C., Bertin, N. and Durrieu, J.-L.: Nonnegative Matrix Factorization with the Itakura-Saito Divergence: With Application to Music Analysis, Neural Computa-. c 2017 Information Processing Society of Japan . [15]. [16]. [17]. [18]. [19]. [20]. [21]. [22]. [23]. [24]. tion, Vol. 21, No. 3, pp. 793–830 (2009). Bregman, L. M.: The Relaxation Method of Finding the Common Points of Convex Sets and Its Application to the Solution of Problems in Convex Programming, USSR Computational Mathematics and Mathematical Physics, Vol. 7, No. 3, pp. 200–217 (1967). Nakano, M., Kameoka, H., Roux, J. L., Kitano, Y., Ono, N. and Sagayama, S.: Convergence-Guaranteed Multiplicative Algorithms for Non-Negative Matrix Factorization with Beta Divergence, International Workshop on Machine Learning for Signal Processing (MLSP), pp. 283–288 (2010). Cemgil, A. T.: Bayesian Inference for Nonnegative Matrix Factorisation Models, Computational Intelligence and Neuroscience, Vol. 2009, pp. 1–17 (2009). Hoffman, M., Blei, D. and Cook, P.: Bayesian Nonparametric Matrix Factorization for Recorded Music, International Conference on Machine Learning (ICML), pp. 439–446 (2010). Allen, J. B. and Rabiner, L. R.: A Unified Approach to Short-Time Fourier Analysis and Synthesis, IEEE, Vol. 65, No. 11, pp. 1558–1564 (1977). Kulis, B., Sustik, M. and Dhillon, I.: Low-rank Kernel Learning with Bregman Matrix Divergences, Journal of Machine Learning Research (JMLR), Vol. 10, pp. 341– 376 (2009). Sawada, H., Kameoka, H., Araki, S. and Ueda, N.: Efficient Algorithms for Multichannel Extensions of ItakuraSaito Nonnegative Matrix Factorization, International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP), pp. 261–264 (2012). Pusz, W. and Woronowicz, S. L.: Functional Calculus for Sesquilinear Forms and the Purification Map, Reports on Mathematical Physics, Vol. 8, No. 2, pp. 159–170 (1975). Itakura, K., Bando, Y., Nakamura, E., Itoyama, K., Yoshii, K. and Kawahara, T.: Bayesian Multichannel Nonnegative Matrix Factorization for Audio Source Separation and Localization, International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP), pp. 551–555 (2017). Yang, M., Li, Y. and Zhang, Z.: Multi-Task Learning with Gaussian Matrix Generalized Inverse Gaussian Model, International Conference on Machine Learning (ICML), pp. 423–431 (2013). Vincent, E., Gribonval, R. and F´evotte, C.: Performance Measurement in Blind Audio Source Separation, IEEE Transactions on Acoustics, Speech, and Signal Processing, Vol. 14, No. 4, pp. 1462–1469 (2006).. 10.
(14)
関連したドキュメント
音節の外側に解放されることがない】)。ところがこ
A large number of bridge piers in Japan, which were mostly constructed in the 1970s or 1980s, are suffering from serious damages caused by alkali-silica reaction (ASR). The
Segmentation along the time axis for fast response, nonlinear normalization for emphasizing important information with small magnitude, averaging samples of the brain waves
5 On-axis sound pressure distribution compared by two different element diameters where the number of elements is fixed at 19... 4・2 素子間隔に関する検討 径の異なる
BC107 は、電源を入れて自動的に GPS 信号を受信します。GPS
If in the infinite dimensional case we have a family of holomorphic mappings which satisfies in some sense an approximate semigroup property (see Definition 1), and converges to
(4S) Package ID Vendor ID and packing list number (K) Transit ID Customer's purchase order number (P) Customer Prod ID Customer Part Number. (1P)
External interruption function 2 (exclusive with GP12 and GP42) Over current detection signal input for USB 2 (exclusive with GP52) Emphasis flag input/output for Audio (exclusive