尿路結石
こ榮養問題
東京女子醤學專門學校皮膚泌尿器科教室教 授 田
村
一
緒 言 尿路結石に關する研究は、各方面に於て近年實に目畳しい躍進を示した。撃ち第一に膠質化學の進歩によ って尿石生成が或程度迄明確に説明されるに到っ把。第二に﹁レントゲン槍査﹂方法の進歩改善殊に腎孟撮影 術︵芝Φざσ・峯冒ぼΦ︶の磯達は診断上に往昔には夢想だもなし得なかった光明を齎しだ。第三に﹁レントゲン槍 査﹂に振る診断の明確さに助けられて其治療法の適慮症が嚴定され、其手術方法も改善され、其結果治療成 績が著しい向上を示すに到ったのである、 然るに其尿路結石の原因に就ては、各方面から落涙な業績の螢表があって、之亦刮目すべき進境を示して はみるが、多くは唯事一班を明確にしπに過ぎぬ歌語で、其全貌を窺知する事は至難である。尿路結石問題 に於て最も大きな謎を含んで吾人の前に聾訳する﹁カンチンジヤンガ﹂の瞼である。 之は一面其原因が複雑錯綜してみる結果と考へられるが、之とても研究の進歩により輩純化される事は決 して遠い將來では無いと思ふのである。現在其原因として墨げられてるるものは︵一︶地理的關係︵地層、飲 料水、幽霊、人種、宗敏、地方病、榮養︶︵二︶遺傳及膣質、︵三︶榮養問題、︵四︶他器疾患︵傳染病、化膿性 疾患、骨疾患、神経性疾患、内分泌障碍︶︵五︶泌尿器疾患等で、是等の申には、其を突詰めると泌尿器系統 田村臼尿路結石と榮養問題 第三巻 二八一14 田村H尿路結石と榮養問題 第三巻 二八二 の病垂に聾せしめ得るものも勘くないのである。從て局所原因尽して泌尿器系統の礎化が主要なる要約であ る事は推知するに難くない、其他の原因で最も吾人の興昧を喚び、其研究も尖鏡的で、其成績に観るべきも ののあるのは榮養問題である。地理的病理學の方面からも最も重要覗されてるるのは共地方の榮養問題で ある。從て愛には尿路結石と榮養問題に就て述べて見πいと思ふのである。御墾考になる所があれば幸甚で ある。 一、臨躰的方面より観た榮養問題 榮養が尿路結石と關係があると云ふ事が注目され把のは可成古い事である。然し特に斯界の注目を喚起し だのは一九〇九年丙舞器.及び芝亀爾氏の¢げ富国霧曾。。哉霞ぎ芝麟.牙菩9σqなる論文である、墜ち其庭では一 八五〇年以糖乳兜黒旗が改善されセ爲めに小見の尿路結石症が著明に減少した事を基げ、之を合理的榮養の 結果であると述べてみる。元來欧羅巴では昔非常に膀胱結石が多く、戴石術師が地方を巡歴し泥とか、結石 に封ずる特殊病院が存在しπとかいふ歴吏芸事實からも當時如何に多かったかと云ふ事を想像する事が出來 る。泌尿器科病院として世界最古の倫敦の。Q戸国け臼、。,閏。。,暮、一は一八六〇年︵夕霞元年︶の創設で、其病院名 に特に8・ωε蕊§山9ず西霞量・団像風雪。とつけてあるのも當時を偲ぶよすがとするに足ると思ふ。所が之が 漸減して來把、といふ報告が各地からあって一般に事實として認められるに立つ元。傍で余は時代を異にし 地方を別とした膀胱結石の年齢的關係を調べて表にしてみ忙、膀胱結石を選んだのは古くは臨躰上主として 膀胱結石が異象であっ忙し、現在でも尿路結石の五〇%は膀胱結石であるので比較の便宜上之を選んだもの である。 之に糠ると昔欧羅巴には小見に膀胱結石が多かった︵鳥Q一く凶騨一〇 ドOoQQQO︶が近年では非常に減少しセ︵︸。ぐδ厳i
_ _ 一 一 一 一 0ル!∂ノε V00∂加soη erθンεr { 邦 nr8η5ゐ∂w ioノン [ 一一 一 一 一 一 一 1 \\ ! 、 \、 / I 、、 、眠 / 、\ 1 乃 堰^ \\ 1\ @\ 一 一 @ 一 一 一 @ ヤ I 一 r @ r @一 f \、賦:ミ、 一 黶@ 一 一 ρ 黶@ 一 一 ! 『 『 ω 50 40 刃 20 10 o/o 年歯総 0−/0 〃一20 2ノー」O J/一40 4ノー50 5/−60 6/−ZO ア/−80 8/−30 石の増加而も蔭酸結石の増加は﹁トマト﹂、 温であると共に飲料水が悪く、穀粉、﹁トマト﹂及び張酒によると謂はれ、印度では小耳が主食で牛乳の飲用 田村目尿路結石と榮養問題 第三巻 二八三 H旨距ρ窪ω冨毒μ露じ事が一目瞭然である、この著明な減少は專 ら文化の向上と共に其榮養十二が合理的に改善されπ結果であ ると読明されてみるのである。所で印度では醇紹曾︵おOG。︶の観 察も最近の窓。○弩同ぎコ︵6GQμ︶あ統計も殆んど同様な曲線を示 し轟轟を脱し得ざる状態にある、欧米の其に比して興味ある事 實である。翻って本邦の統計を観ると其二者の問に介在してみ る。甚だ狭い範園からの観察であるが、尿石の方面からも本邦 小兇榮養問題は未だ改善の鯨地あるものと愚考するものであ る。 細謹尿路結石に養して榮養問題を云々しπ対丈は枚墨に蓬が ないが、共を少し紹介すると次の如くである。露國では内舞。・。。 ︵酸き飲料︶を用ひ︵国鐸Φε馬鈴薯を食し、小見榮養が主乏し て穀粉である︵野国oOq・︶事が關係あると謂はれてるる、英國で は榮養不足︵の’の巨蹄ゲ匂∩犀一己謄℃。くΦ嵩。ノ<一団︶ボスニァでは小見の不合 理な榮養︵国。強のげ霞σQ臼︶ダ〆マチアでは黒.ハン、玉蜀黍粥、乾酪、 燃肉、辛味料︵園90凶。︶を墨げてるる、濁逸では近年の輸尿管結 大黄、等に關係ある︵℃円OOけO同.一qoo︶と謂はれてるる。ツシ罠では高
16 田村”尿路結石と榮養問題 第三巻 二八四 が少ない︵り肖O ︵U9門同一qαO昌︶、支那では野菜、肉、果物の撮取少く︵9。箒︶穀物の外に骨肉を囁るだけで新鮮な野 楽が少ない︵出五聖︶、フロリダ及南カリフォ〆ニァでは果物が豊富な爲命に﹁リモナーデしを過飲する︵国。巨①。。 鎖・o。覧碧︶ブラジ川では蔭愛器を多く含む黒豆を過食する︵φ日び9盗めであるといふ。如昔昔報告は複雑極 りなく、其等を総括して、秩序ある結論を求むる事は困難である。要するに尿路結石は肉食を主とするも のにも、植物性食餌を主とするものにも、混合食餌のものにも來る、而して更らに食物と尿石成分との關係 を観察すると、尿酸璽結石は痛風と關書して榮養過剰の結果の如く考へられるが、榮養魚充分で﹁プリン﹂鉄 乏食餌を撮るシシリア ︵困乙・冨9︶シャム︵冥。げe廣東地方︵︸。な︶等に多く見あれ、衣魚盤結石が植物性食餌 を主とする地方に多い︵中野氏︶といふ報告があると共にマダガスカルの如く肉食を主とする所にも見らる\ ︵<貯。。Φ雄︶といふ檬に、尿石成分の方面から観察しても亦決して軍一ではないのである。 要するに人類に於ける尿路結石と榮養問題は種々の観察から緊密な關係にある事は明かであるが、まだ調 査及統計に粗密があり、不充分の所があるので、榮養方法と結石の頻度及び成分との問に一定の法則を求め 難い状態にあるのである。 一﹁動物の尿石に就て 人類の複雑極り無きに困し果て㌧、生活状態が箪純な動物に注目して、愛に何等かの解決の緒を見出さん とする研究が生れて來たのは自然の趨勢であるが、此方面に癒しては未だ報告が僅少なのは遺憾である。一 般に家畜及び鑑の申に居るものに結石が多いと謂はれ、之は專ら榮養過剰と運動不足に因ると読明されてみ るが、一面観察され易い環境にあるといふ事も考へて置かねばならぬ。叉一九三二年Oδ・⋮雪毒は犬に尿石 が多く、猫が尿石が曇れな事實を次の如く読明してみる。即ち犬に尿石の多いのは元來肉食である犬が圭とし
て草食を張ひられてるる爲めで、海胆に於てまだ猫の方が食餌が選繹的である爲めに尿石が与れである。即 ち本能的に選毒した食餌を撮るものは尿石が稀れであると説明して、未開民族殊に黒人に尿石の勘いのは本 能的に合理的七号を擁ってみる爲めだらうと推測してみるのは.面自い観察である。践は更らに人類を三つ に大別して第一に未開民族は結石が少ない。第二に古代交化を有するが現在交化の劣つセ民族︵南部アジア 東及東南欧羅巴︶は幼少のものに尿石が多く殊に膀胱結石が頻登する.第三に帰化の高い民族、︵欧羅巴及其 姉妹國︶は幼少なものに結石が捲れで膀胱結石は漸減して腎及輸尿管結石が多いと謂ってみるが現在の尿石 に關する分布及頻度の歌態を大膿知るには便利な分類である。 動物に序する尿石の観察はまだぐ幼稚でこの方面の研究が進めば入選の尿石に嵜塗する所が大であらう と思ふので大いに將來の研究を望む次第である。動物の方面でも奮発験的研究に就ては刮目すべき藪々の業 績があるので之を次に述べ泥いと思ふ。 陶﹃實験的観究 已に述べπ如く牧拾困難なる複雑さに紛糾し柁尿路結石と榮難問題も最近榮養學の上に立つ泥系統的研究 に由って曉光を乗出しπ観がある、其は圭として﹁ヅイタミン﹂研究に關するものである。結石と﹁ヴイタ、、、 ン﹂の問題は一九一七年の○。。ぴ。BΦ鐸冨Φ鼠9の研究が掛矢で、其後藤巻、︵μ⑩トコ⑪︶寓。O題基9以ドリbっ・っy芝⑦ぴ2掌 零二日き某おト。○。︶bΦ2ωロ日︵一票Q。︶臼杵︵H旨ゆ︶・O霧冨こ睾ρ○<正夢ぼ巳閃。毛︵お。。O︶男。ωけ︵遷。。O︶鈴木︵ド蕊。。︶等によって 實鹸的に確認きれπ。是等の研究を総括観察してみると試験動物は多くは自鼠を選んでみるが藤巻氏は﹁マ ウメ﹂をも實鹸に供してみるし、臼杵氏は專ら家兎を用ひて實験してみる。試験飼料は脂肪溶性﹁ヅイタミソ﹂ 鉄乏食餌が主翼で,各研究者により種をの封照試験が行はれてるる。其成績は脂肪溶性﹁ヴィタミン﹂映乏食 田村龍尿路結石と榮養問題 第三巻 二八五
18 田村洞尿路結石と榮養問題 第三巻 二八六 餌では試験動物の二〇一五〇%といふ様な高率に尿路結石︵腎臓及膀胱結石︶を形成する、膿石形成を謹明し πものもある。而も其尿石は殆んど悉くが燐酸璽結石であっπ。封照試験として行はれπ﹁ヅィタ・、ン﹂8。 c敏乏食餌及常食では結石形成を認めす、又上記脂肪性﹁ヴィタミン﹂映乏食餌でも同時に牛乳を與へ沈場合 には結石を認めないといふのは多くの署者の成績の一致せる所である。鈴木氏が飼養動物の環境を替へての 實験によると明所に飼養しπ動物には結石形成少く、暗所に飼養しπ動物には結石形成多く其の差異は八・○ 八%と二一・入○%といふ著明なものであっだ。是等の實験成績から脂肪溶性﹁ヅイタミン﹂敏乏が結石形成 と緊密な關係にある事は肯定して間違ない事と思ふ。 慮が愛に一九三〇年園舅氏が﹁ヴィタミン﹂Aを豊富に有する食餌を與へても、前記實験成績と殆んど同 率の結石形成を認め忙といふ螢表があっ泥。從て脂肪溶性﹁ヴィタミン﹂は結石形成に關係があって、是等﹁ヴ ィタミン﹂の徹乏及過剰によって結石形成が招致さる㌧事が知らる、に至つセ。而もこの脂肪溶性﹁ヴィタ ミン﹂中のAは專ら眼疾と書置があり、Dは結石形成に關係があるとの説もある。 而らば是等﹁ブイタミン﹂量の攣化と結石形成との問には如何なる連鎖機轄があるかと云ふ事になると、種 々な臆測.種々な研究があるがまだ悉く明確にされπといふ事は出版ぬ現歌にある。帥ち一、﹁ヴィタミン﹂ 峡乏は細菌に封ずる抵抗力を低下せしめる。二、血清中の9、罎σQ、囚、多,等の増加を招致する、三、石友 新陳代謝に關係ある上皮小膿に鍵化が起る。四、尿の反鷹が著しく﹁アルカリ﹂性に傾く、五、腎臓、膀胱並び に他の實質性臓器に出血其他の病礎が起る等の事が知られてみるが﹁ヴィタミン﹂訣乏が如何にしてか\る凝 化を起すかと云ふ事になると未だ明答が困難である。 實験的研究は唯軍に﹁ヴィタミン﹂の問題にと\まらす園。。,けは實験的に各種成分の尿路結石を實験的に形
成さす事に成功し把と磯表してみる、郎ちC鍾三鼻の投身に因って蔭酸茎結石形成を。尿酸の投與に由って 尿酸盤結石形成を動物車塵で謹聴してみる。更らに本邦に於ては佐伯、藤本細動は米姿精白用揚粉の害作用 に關する實験的研究を黒丸されて﹁カルシウム﹂の過剰が尿路結石を招致する事を實験的に讃明してみる。 発ち尿路結石と榮養問題は是等の實験的研究によって華々しい進境を示して來π。恐らく是等の研究がこ の上更らに磯船する事によって、この多くの謎を逸する尿石の原因の上にも一大光明がも把らされるのでは 無いかと考へる、又かくある事を願ふのは唯余猫りではあるまい。 闘村ロ尿路結石と榮養問題 第三巻 二八七