主要な研究成果
背 景
土木建築分野における規制緩和や性能照査概念の浸透を背景として、電力土木施設の点検頻度、現地調査、
補修・更新判断基準などのあり方が見直されつつある。当所においては、水力土木構造物に関わる長年の研究
を背景としてこれらの診断マニュアルを整備するとともに、鋼構造物のデータベース、力学状態を詳細に評価
できる 3 次元有限要素解析プログラム、それらを活用した健全性診断システムを開発し、電力各社の実務に役
立ててきている。同時に、維持管理に関するニーズや技術は近年大きく変化しており、水力土木保守の実務に
性能照査概念を取り込むこと、状態監視の導入、維持管理におけるリスク・コスト評価などが必要となってき
ている。
目 的
水力発電所の主要な土木構造物としてダム洪水吐ゲートを対象に、リスク・コスト評価まで実施できる性能
照査型維持管理マニュアルを策定するとともに、そのデータ処理を支援する保全支援システムを開発する。
主な成果
1.性能照査型維持管理マニュアルの策定
ゲート本体を対象に、通常時(洪水時を含む)および地震時における、安全性(構造安全性、水理安全性、
制御確実性)、耐久性(耐腐食、耐摩耗、耐疲労)、および使用性(操作性、水密性など)を照査する維持管
理マニュアルを策定した(図 1)。本マニュアルは、点検・調査から始まり、構造解析ならびに性能照査を
経て対策選定までを対象としたもので、以下の特長を有している。①点検・調査については、損傷モード影
響解析を導入し、性能照査に合致する項目を抽出した。②構造解析(図 2)では、3 次元有限要素法を活用
する手法を導入した。③性能照査では、構造信頼性解析に基づいて設備更新時の判断基準である許容応力を
割り増すことを可能とした。④対策選定に、リスクおよびライフサイクルコストを考慮する手法を導入した。
2.保全支援システムの構築
ラジアルゲートおよびローラゲートを対象に、ゲート本体・開閉装置・戸当り・固定部を含めて、性能照
査型維持管理マニュアルの基本的考え方、特にデータ処理の部分を支援する保全支援システム(イントラ
ネットで利用)を開発した(図 3)。本システムは、定性的な評価を主体とする信頼性重視保全(RCM)*
の
枠組みに定量的な評価を加えたもので、具体的には調査結果(外観、応力、たわみ)と劣化進行モデルに基
づき、余寿命評価、管理基準照査、補修・更新の対策選定、リスク発生確率の算定、ライフサイクルコスト
計算、改修優先度評価を行うものである。補修・更新対策の選定は、外観評価と応力評価に基づいて行われ
る。更にリスクとコスト評価をも組み込むことにより、費用対効果の視点を踏まえた設備管理が実現できる
システムとした。
なお、本研究は、7 電力中央研究所、北海道電力 1、北陸電力 1、電源開発 1 の共同研究として実施した
ものである。
主担当者 地球工学研究所 構造工学領域 上席研究員 山本 広祐
関連報告書 「経年化したダム洪水吐きゲートの構造信頼性評価方法の提案」電力中央研究所報告:
N05002(2006 年 2 月)
「ダム洪水吐ゲートを対象とした定性的リスク評価手法の構築」電力中央研究所報告:
N05038(2006 年 7 月)
「水力土木構造物の保全履歴分析法の提案―ダム洪水吐ゲートの不具合発生確率評価―」電
力中央研究所報告: N05018(2006 年 8 月)
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性能照査概念を導入した維持管理手法の構築
―ダム洪水吐ゲートへの適用―
A.コスト低減と信頼性の維持
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図3 信頼性重視保全(RCM)を活用した保全支援システムの評価手順
ゲート本体
点検・調査
損傷モード影響解析
劣化情報の定量化
状態監視
構造信頼性解析
破壊確率レベル
での評価
補修・更新の対策選定(維持管理シナリオの設定)
ライフサイクルコスト
(LCC)評価
改修優先度評価
外観評価 応力評価
保全支援システム
通常管理・
状態監視
補修・更新 補修・更新
必要に応じて
実施
劣化情報の分類
損傷モード影響
の点数化 リスク発生確率の算定
システム分析
点検・調査項目抽出
通常管理・
状態監視
信頼性重視保全
(RCM)
必要に応じて
実施
保全支援システム(イントラネットで利用)
評価手順は、図3を参照
性能照査型維持管理マニュアル
リスク評価の要素技術
損傷モード
影響解析
劣化進行
モデル
水
力
土
木
設
備
の
診
断
技
術
の
高
度
化
リスク定量化
・不具合確率
・信頼性評価
データ処理を支援
点検・調査 構造解析
要求性能
目標性能 性能照査 対策選定
状態監視
対象:
ゲート本体
対象:
ゲート本体、開閉装置、
戸当り、固定部 固定部
戸当り
図1 性能照査型維持管理マニュアルの基本構成と
保全支援システムとの関連
図2 対象設備の一例
(ラジアルゲートの解析モデル)
信頼性重視保全(RCM)*
と
は、定性的評価により、効果
的な保全方式を見つけ出す分
析作業の総称で、近年エネル
ギー施設の保全合理化に用い
られるようになってきた。こ
の考え方に、従来行っている
状態監視(応力評価)やリス
ク評価、コスト評価を組み込
んで合理的な保全を支援する
システムを構築した。