Title
大規模発電用貯水池における堆砂過程とその対策に関する
研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
新庄, 高久
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第276号
Issue Date
2006-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2973
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 専 攻 学位論文題目 学位論文審査委員 新 庄 高 久(神奈川県) 博 士(工学) 甲第 276 号 平成18 年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 大規模発電用貯水池における堆砂過程とその対策に関する研究
(Studies on sedimentation process and countermeasuresin a
large-SCalereservOirforpowergeneration) (主査) (副査) 藤安 玉 授授授 教 教教助 田 田 裕一郎 孝 志 教 授 田 中 光 宏 一 郎
論文内容の要旨
本論文の冒頭では,研究の目的に関連して以下の点が述べられている。 国民の自然環境に対する関心の高まりから,河川は貴重な水辺環境として各層から強 く注目されており,河川において治水・利水面に極めて優れた機能を有するダム貯水 池も,大規模な構造物であるだけに,一般に高い関心が持たれ,その役割や環境改変 の問題等,論議の的となることが多い。現実に,堆砂,濁水長期化,淡水赤潮,維持 流量,魚道等と多岐に亘る環境面での課題への対応が求められているが,なかでも, 堆砂問題は,北海道から九州に至る多数のダムで大きな問題になっており,その処理 に年間膨大な費用が費やされている。 とくに,佐久間ダムは,堆砂量が当初の総貯水容量約327■×106m3の約1/3にあた る約114×106m3に至っていて,その対策には河川管理者や水利権者に限らず広く注 目を集めている。したがって,この課題に関しては同ダムを運用する電源開発株式会社を中心に以前から種々の調査が行われ,膨大な資料が蓄積されてきた。しかしなが
ら,今日まで,その資料に対して水理学的な観点から系統的な検討が加えられてきた とはいえない状況であって,これが同貯水池における過去の堆砂対策を場当たり的な 対応に終始させてきたことは否めない。 上述の点を踏まえて,本研究の内容は,この膨大な資料を堆砂問題の解決に活用する ことを目的として,最初に,水工学的観点からそれらを整理・検討し、土砂流入量の 長期的特性の解明から将来の流入傾向を明らかにした後,堆砂測量と粒度資料から貯 水池に流入する土砂の粒度特性とその量とを明確にして,貯水池内における土砂の流送状況を解明している。その結果と既往の土砂流送量の評価式による算定結果とを比
較して,微細土砂の流送に関する問題点を指摘してその簡明な対応方法を示し,堆砂 対策として採用されている流砂促進の効果を適切に評価するとともに,ダム堆砂の長期的予測に対する標準的な1次元解析の適用性について詳細な検討を加えている。 以下に各章の概要を示す。 第1章では,現在わが国における発電用等の大規模なダム貯水池が直面している問題点 を明示し,そのうちから,本研究の対象である佐久間ダムについて,流砂系の観点から解 決すべき課題を説明し,研究の背景と目的を明らかにしている。すなわち,本研究の主な 課題として,佐久間貯水池における長期的な堆砂状況の予軌 計画維持河床の確保方法, そのための流砂促進の評価を挙げ,その課題解決には,まず,蓄積されている既存資料か ら貯水池内部での土砂流送状況を解明することが基本であることを指摘している。 第2章では,佐久間貯水池の概要と現在までの堆砂の概況を明らかにしている。すなわ ち,佐久間ダムが構築されている天竜川とその流域の地質・地形的,気象学的自然条件を 説明するとともに,.既往資料に基づいて上流ダム群の状況ならびに佐久間貯水池の堆砂概 況を示し,さらに現在実施されている堆砂対策を紹介し,その課題について述べている。 第3章では,既往の測量成果から,佐久間貯水池における堆砂性状の詳細を示し,通常 の河川と同様の流れとなる堆積区間がかなり長いなどその特徴を明確にするとともに,年 間流入土砂量と様々な水文諸量との関係を丹念に検討して,両者の間に有意な相関がほと んど認められないとの結論を得ている。さらに,堆積土砂の粒度特性と1次元不等流解析 による水理量との関係から,貯水池上流区間での粗粒化と中流区間での平衡的流砂状況に よる河床低下の抑制,および,下流区間におけるデルタの進行など,貯水池内で生起して いる現象と土砂流送との対応関係を明確にしている。 第4章では,初めに,佐久間貯水池の運用状況,すなわち,主に流入流量と発電放流量 と,それらによって制御される貯水位との組み合わせに対して,貯水池内における土砂の 流送状況がどのような変化するのかを明らかにして,効果的な流砂促進の条件とその時期 を見出している。このため,流入流量と貯水位との組み合わせ実績を検討し,土砂流送に, 有意あるいは代表的な状況を抽出して,流砂促進時期の位置付けを行い,また,詳細な水 理解析の対象とすべき状況の把握も行っている。ついで,調査地点のみの河床粒度組成を 各測量断面に適切に内挿し,断面変化量と組み合わせて,貯水池内における粒度階毎の土 砂流送量を明らかにして,流入土砂の貯水池内での挙動を解明している。同様の検討を流 砂促進の前後で行うことによって,その効果の適切な評価が可能であることを示している。 さらに,最後に,明らかにした流送状況と既往の流砂量式による流送量とを比較した結果, 微細土砂流送量の算定値が極めて過大となることを見出し,その抑制のために導入した簡
便な方法が妥当であることを検証して,同様の浮流砂量式を用いた河床変動解析法の適用
性が高められる可能性を指摘している。 第5章では,既に汎用性があるとされている1次元河床変動解析法を貯水池堆砂域に適 用する際の問題点を明らかにし,浮流差の算定に前章の考え方で対処するとともに,流砂 促進期間中を中心とした渇水期について解析を実施している。すなわち,河床からの浮流 砂の発生を合理的に抑制した1次元河床変動解析を行って,流送土砂の粒度範囲やそれぞれの粒度の流送区間,および,流砂促進の効果がデルタの上流10km余りの区間に限られ ることなどを明示し,これらが第3章の資料解析結果とかなり合致することから,1次元 河床変動解析法に高い適用性のあることを検証している。また,上流端付近の河床堆積土 砂の粒度分布資料等,解析目的に応じた適切な情報収集の重要性を指摘している。 第6章では以上の結果がまとめられて結論とされている。
論文審査結果の要旨
国民の自然環境に対する関心の高まりから,河川は貴重な水辺環境として各層から広 く注目されており,治水・利水面に極めて優れた機能を有するダム貯水池も大規模な 構造物であるだけに,その役割や環境改変の問題等,論議の的となることが多い。現 実に,堆砂,濁水長期化,淡水赤潮,維持流量,魚類回遊等と多岐に亘る環境面での 課題への対応が求められているが,なかでも,堆砂は大きな問題になっており,その 処理に年間膨大な費用が費やされている。・とくに,佐久間ダムは,日本最大の約114 ×106m3の堆砂量となっていて,その対策に注目を注がれている。この課題に関して は以前から種々の調査が行われ,膨大な資料が蓄積されてきたが,今日まで・,その資 料に水理学的な観点からの系統的検討が加えられてきたことはなく,これが同貯水池 における対策を場当たり的対応に終始させてきたことは否めない。 上述の点を踏まえて,本研究では,最初に,この膨大な資料を堆砂問題の解決に活用することを目的として,水工学的観点から整理・検討が加えられ,土砂流入量の長期
的特性の解明から将来の流入傾向を明らかにした後,堆砂測量と粒度資料から貯水池 に流入する土砂の粒度特性とその量とを明確にして,貯水池内における土砂の流送状 況,ならびに,上流からの流入土砂の粒度特性を解明している。その結果と既往の土 砂流送量の評価式による算定結果とを比較して,微細土砂の流送に関する流砂量式の 問題点を指摘し,それへの簡明な対応方法を示して,その妥当性を検証している。つ いで,堆砂対策として採用されている流砂促進の効果を適切に評価するとともに,水 位設定や実施時期について改善すべき方向を提示している。とくに,ダム堆砂の長期 的予測に対する標準的な1次元解析の適用性について詳細な検討を加え,上述の微細 土砂の対応方法を導入すれば,実測結果と合致する結果が得られ,適用性が向上する ことを示している。 以上のように,本論文は,大規模貯水池における堆砂問題について,膨大でありすぎる ために,ともすれば手が付けられないで放置されがちな既存資料を系統的に整理・解析す ることによって,ダムへの流入土砂の粒度特性と各粒度成分の量的変化,および,それら の貯水池内での流送・堆積挙動を明らかにしている。この結果,大規模ダム貯水池の堆砂 現象に対する既往の1次元河床変動解析法の適用性を詳細に検証することを可能とした が,この点について,実際に,上流端境界条件が明確な流砂促進時を対象に解析を実施し て,その適用性が高いことを明らかにしている。これらの点から,本論文は,今後の貯水 池における土砂挙動に関して,既存の大量な資料の水工学的な取り扱い方に道筋を付け,現象の解明について既往の解析手段の適用性を向上させるとともに,それらに基づいて堆 砂対策の進展に貴重な知見をもたしている。これらのことなどから,本論文は工学的に極 めて有用性の高いものと判断される。 学位論文審査委員会では,論文および発表論文(原著3編)を慎重に検討した結果,提 出された論文は完成された内容を有しているものと認め,合格と判定した。