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訪問看護師および病院看護師の利他性とバーンアウトに関する研究

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Academic year: 2021

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(1)公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2017年度(後期) 一般公募「在宅医療研究への助成」完了報告書. 訪問看護師および病院看護師の利他性とバーンアウトに関する研究. 申請者: 原理恵 所属機関:四條畷学園大学 看護学部看護学科 提出年月日:2019 年 4 月 1 日. 在宅看護学.

(2) Ⅰ.研究背景 我が国の国民医療費の高騰に対する医療施策として,厚生労働省は医療機関完結型医療 から地域完結型医療への転換を図っている.在宅で障害や疾病をもちながら生活する人々 を支える地域完結型医療を構築していくためには,訪問看護師のニーズは増大していくも のと考える.厚生労働省の調査 1)では,2014 年の訪問看護ステーションに従事する看護職 員数は、約 4 万 6 千人となっている。しかし,2020 年までには,6 万人を超える訪問看護 師が必要になると推計 2)されていることから,訪問看護師の人材確保は急務の課題である. しかし、訪問看護師の離職率は 15.0%3)と高く、病院での臨床経験が豊富な看護師が訪問 看護ステーションに従事した際に,病院での経験と訪問看護の実践内容でのギャップが生 じている現状があるとの報告 4)がされている。このことが訪問看護師の人材が定着しない要 因の一つと考えるが、訪問看護師の離職についての研究が乏しく、その要因については明ら かにされていない。 現状では、病院看護を経験後に新たな就職場所として、訪問看護ステ ーションへ転職する看護師が多くを占める。筆者は、「病院勤務の看護師が訪問看護ステー ションへの移行期に体験した困難」5)をテーマとし、訪問看護ステーションに就職した 6 か 月以内の新人訪問看護師を対象にインタビューを実施した。その結果、とりわけ大学病院で 豊富な看護経験を培った看護師は、「病院看護と訪問看護の色が違う」と語り、病院看護で は看護業務主体の看護実践場面が多く、訪問看護は対象者主体の看護実践場面が多いこと 等に気づき、これらの看護業務内容のギャップに親しむことが出来ず、離職意思に至った 1 事例があった。訪問看護師の看護業務内容を考慮すると在宅療養を支えるために、利用者や その家族の困り事や生活上の利益および幸福のために、利用者の利用する介護保険サービ ス事業所等の多職種やインフォーマルな人的資源との連携及び調整を密に実施することが 求められる。これらの援助行為は、病院看護師以上に利他性が求められる職務環境であろう と考えるのである。したがって、大学病院看護師、訪問看護師を対象に調査を行うことで、 病院看護業務内容および訪問看護業務内容の相違を明確にし、各々の看護業務内容および 利他性とバーンアウトの関連から訪問看護師の人材確保についての示唆を得ることができ ると考える。訪問看護師のバーンアウトに関する先行研究では、多職種との密な対人関係が 必要となる看護業務内容や多職種とのコミュニケーションが負担と感じている訪問看護師 は、情緒的な消耗感からバーンアウトを起こしやすいことが示唆されている 6)。 そこで本研究では、大学病院看護師、訪問看護師を対象に同様の質問項目での調査を実施 することで、各々の看護業務内容によるバーンアウトと利他性との関連について比較検証 を行う。さらに、訪問看護師の人材確保についての示唆を得ることを目的とする。 Ⅱ.研究目的 大学病院看護師、訪問看護師を対象に調査を行い看護業務内容による利他性とバーンア ウトの関連を調査し比較検証を行う。さらに、大学病院看護師(以下:病院看護師)と訪問 看護師のデータ比較を行うことで、訪問看護師の人材確保についての示唆を得る。.

(3) Ⅲ.研究方法 1.研究デザイン アンケート調査による量的研究 2.研究協力者 研究協力者は、近畿県内の訪問看護ステーション協議会に参加している訪問看護ステー ションに従事している病棟勤務経験のある管理職、非常勤、常勤含む訪問看護師とした。さ らに、近畿県内の病院の管理職、非常勤、常勤を含む病棟勤務看護師を対象とした。 3.データ収集方法 病院看護職のアンケート調査の選定においては、近畿県内の大学病院を対象とした。まず、 病院看護部長へ研究目的・調査内容・調査期間・倫理的配慮について、口頭と文書にて研究 協力の依頼を行った。②研究協力の同意が得られた段階で、アンケート調査実施可能な病棟 勤務看護職の人数の相談を行い、 「病院看護師研究協力者数調査書」に署名と研究協力が可 能な看護師数の記載を依頼した。③後日、指定された研究協力者の人数分を病院看護部長宛 に送付し、病棟勤務看護師へ配布を依頼した。研究協力者へ研究目的・調査内容・調査期間・ 倫理的配慮について文書で説明し、同意についてはアンケート調査票の同意チェック欄の 記入を依頼、同意を得た上でアンケート調査票への記述を依頼した。返信用封筒を同封し記 入されたアンケート調査票を個別に投函を依頼した。 訪問看護師のアンケート調査の選定においては、①近畿県内の訪問看護ステーション協 議会に参加している施設名簿に番号を付与し乱数表を用いて割付けを行い選定した。さら に、選定した訪問看護ステーションの管理者へ研究目的・調査内容・調査期間・倫理的配慮 についての文書を郵送し、 「訪問看護師研究協力者数調査書」にご署名と研究協力者の可能 な人数について記述を依頼し、返信依頼を行った。訪問看護ステーションに従事している管 理者を含む全ての看護職とした②返信された「訪問看護師研究協力者数調査書」にて研究協 力者の人数を確認の上、指定された人数分のアンケート調査票を訪問看護ステーション所 長宛に送付し、研究協力者へ配布を依頼した。③研究協力者へ研究目的・調査内容・調査期 間・倫理的配慮について文書で説明し、同意についてはアンケート調査票の同意チェック欄 の記入を依頼した。同意を得た上でアンケート調査への記述を依頼した。返信用封筒を同封 し記入されたアンケート調査票を個別に投函を依頼した。 4.調査内容 調査項目は、1.基本的属性(病院および訪問看護師経験年数、年齢、家族構成、性別、 職位、最終学歴) 、2.日本語版バーンアウト尺度(Maslack Burnout Inventory:以下 MBI)7)、 3.利他性質問内容、4.看護業務内容とした。 Ⅳ.結果及び考察 近畿県内の訪問看護ステーション 700 施設へ研究協力依頼を実施し、事前調査で 134 施 設 723 名の研究協力の同意を得たため該当施設へ調査票を郵送した。その結果 454 名の回 収を得、回収率 62.8%であった。調査票の無回答箇所のある 63 名を除く、387 名を分析対.

(4) 象とした。 さらに、近畿県内の大学病院 9 箇所に研究協力依頼を実施した結果、6 箇所からの同意が 得られ全 1160 名の研究協力者に調査票の配布を行った。その結果 451 名の回収が得られ、 回収率は 38.7%であった。調査票の無回答箇所のある 20 名を除く 431 名を分析対象とし た。分析した結果を用いて、今後の訪問看護師の人材確保に関する方策について以下に述べ る。 1.研究協力者の基本的属性(表1) 平均年齢は、訪問看護師 46.2 歳、病院看護師 35.4 歳であった。看護師総平均経験年数 は、訪問看護師 14.0 年、病院看護師 12.3 年であった。さらに、訪問看護師群での訪問看護 師経験年数は、6.5 年であった。 経験年数別では、訪問看護師では 4-10 年以下が最も多く 34.6%、病院看護師では、11 年以上が最も多く 47.8%を占めていた。職位は、両群ともにスタッフの占める割合が多く、 訪問看護師 74.7%で病院看護師 82.6%であった。勤務形態では、両群ともに常勤が多くを 占めており訪問看護師が 68.2%、病院看護師が 82.9%、訪問看護師は病院看護師と比較す ると非常勤が多かった。 さらに、 訪問看護師群の病院経験年数では、 4-10 年以下が 44.7%、 11 年以上が 49.1%であり、病院での臨床経験を4年以上経た後に訪問看護ステーションへ 転職する看護師が 93.8%を占めていた。 表1.訪問看護師・病院看護師の基本属性 訪問看護師(N=387). 病院看護師(N=431) 人数. 平均年齢 看護師経験年数. 46.2. 病院看護師経験年数. %. 35.4 49. 12.7. 7. 1.6. 1-3年. 122. 31.6. 80. 18.6. 4-10年. 134. 34.6. 145. 33.6. 11年以上. 82. 21.1. 206. 47.8. 6.4 スタッフ. 12.3. 289. 74.7. 356. 82.6. 98. 25.3. 75. 17.4. 常勤. 264. 68.2. 357. 82.9. 非常勤. 123. 31.8. 74. 17.2. 0-1年. 3. 0.78. 1-3年. 21. 5.4. 4-10年. 173. 44.7. 11年以上. 190. 49.1. 管理者 勤務形態. 人数. 1年未満. 平均経験年数 職位. %. 平均. 14.

(5) 2.訪問看護師における病院勤務経験年数別の MBI 平均値(表 2) 訪問看護師は、病院看護師の経験がどれほどバーンアウトに影響しているかを確認する ために、病院経験年数別のバーンアウト平均値を算出し下位尺度別に分散分析を行った。経 験年数は、1-3 年、4-10 年、11 年以上に分類した。その結果、情緒的消耗感の平均値 および標準偏差は、1-3 年(12.6±3.5) 、4-10 年(12.9±4.6) 、11 年以上(13.6±4.6)で あった。さらに、上記の情緒的消耗感の経験年数別の分散分析では、 (F 値=1.19、P 値= 0.25)で有意差は認めなかった。脱人格化の経験年数別の平均値では、1-3 年(9.4±2.4) 、 4-10 年(9.9±3.6) 、11 年以上(10.5±3.9)であった。上記の脱人格化の経験年数別の分 散分析では、 (F 値=1.4、P 値=0.13)であり、有意差は認めなかった。個人的達成感の経 験年数別の平均値は、1-3 年(19.8±4.6) 、4-10 年(18.9±4.6) 、11 年以上(17.9±4.4) であった、上記の個人的達成感の経験年数別の分散分析では、(F=1.02、P 値=0.43)で有 意差は無かった。 以上の結果より、両群について MBI の下位尺度の平均値と経験年数別に分析した結果、全 ての群に有意差は認めなかった。したがって、病院での看護経験年数は訪問看護で従事する 際、バーンアウト値に影響しなかったことから、病院経験年数が浅いという理由で、バーン アウト現象を生じ、離職しているとは考えにくいのである。従来では、訪問看護師として従 事していくためには、病院での豊富な看護経験が必要との伝説が看護業界では存在し続け てきた。しかし、病院勤務経験年数が、訪問看護師のバーンアウト値に影響しないことが明 確となった。言い換えれば、訪問看護師として従事する際に、病院勤務経験年数をさほど重 要視する必要はないことから、人材確保の方策としては、病院経験のない新卒訪問看護師を 育成することは可能であろう。病院勤務経験年数より、とりわけ対象者の健康回復のために、 どのような看護を提供したかの看護観に関わることが重要と考える。. 表2.訪問看護師における病院勤務経験年数別の MBI 平均値(一元配置分散分析) 情緒的消耗感 1-3 年(N=24). 12.6±3.5. 4-10 年(N=171). 12.9±4.6. 11 年以上(190). 13.6±4.6. P値. 脱人格化. P値. 9.4±2.4 0.26. 9.9±3.6 10.5±3.9. 個人的達成感. P値. 19.8±4.6 0.13. 18.9±4.6 17.9±4.4. 0.44.

(6) 3.訪問看護師・病院看護師における経験年齢別 MBI 平均値の比較(表 3) 訪問看護師、病院看護師の両群における経験年数別(1 年未満、1-3 年、4-10 年、11 年以 上)MBI の平均値の比較について T 検定を用いて検証した。両群を比較すると、訪問看護師 より病院看護師のほうが、バーンアウト値が有意に高値を示していることが明らかとなっ た。両群を経験年数別に平均値の比較では、1 年未満の情緒的消耗感(20.7±5.3) 、脱人格 化(13.0±4.1)と病院看護師の数値が最も高かったことから、病院看護師の 1 年未満の看 護師が最もバーンアウトしていた。逆に両群のバーンアウト値が最も低かったのは、訪問看 護師 1 年未満の情緒的消耗感(11.8±4.4)、脱人格化(9.6±3.4)であり、両群を比較する と訪問看護師の1年未満の看護師が最もバーンアウト値が低かった。経験年数別の訪問看 護師のバーンアウトの傾向は、1年未満が最も低く、1 年以上からは、バーンアウト値はさ ほど変化を示さず、ほぼ同数値で推移していた一方で、病院看護師群では、1 年未満の次に 高い数値を示したのが、1-3 年未満であり4年目以降からは、ほぼ同数値で推移していた。 訪問看護師では、平均経験年数が 6 年であり病院看護師と比較するとバーンアウト値は 低値であったことから、バーンアウトする前に訪問看護への移行期に離職していることが 考えられる。新人訪問看護師においては、移行期の困難感を把握したうえで、適切な支援が 求められる。それでは、なぜ訪問看護師のほうが病院看護師よりバーンアウト値が低かった のか看護業務や利他性の観点から検証するために、両群における看護業務内容の平均値と バーンアウトとの関連、利他性の質問項目の平均値の比較について以下に述べる。. 表3.訪問看護師・病院看護師におけるMBI平均値(T検定) 病院看護師. 訪問看護師. 情緒的消耗感. 病院看護師 P値. 訪問看護師. 脱人格化. 病院看護師 P値. 訪問看護師. 個人的達成感. P値. 1年未満 (N=7). 20.7±5.3. 11.8±4.4. 0.00. 13.0±4.1. 9.6±3.4. 0.02. 21.2±4.2. 20.0±4.3. 0.44. 1-3年 (N=80). 18.4±4.2. 13.8±4.6. 0.00. 12.7±4.2. 10.7±3.8. 0.00. 21.2±4.2. 18.7±4.6. 0.00. 4-10年 (N=145). 16.8±4.5. 13.2±4.7. 0.00. 12.9±4.6. 10.0±3.9. 0.00. 20.6±4.2. 18.2±4.5. 0.00. 11年以 (N=206). 16.4±4.4. 13.4±4.0. 0.00. 12.1±4.4. 10.0±3.4. 0.00. 21.2±4.2. 17.7±4.4. 0.00.

(7) 4.訪問看護師・病院看護師における看護業務内容の平均値の比較(表 4) 訪問看護師および病院看護師の看護業務内容について、同様の 21 項目の質問内容を設定 した。両群の看護業務内容の相違について検証するために各質問内容の平均値の差を T 検 定にて算出した。その結果、訪問看護師のほうが病院看護師より有意に平均値が高かった看 護業務内容は、 「対象者ニーズのケアが多い」 (訪問看護師:4.1±0.6、病院看護師:3.8± 0.9、P 値=0,00) 、 「医療的ケアに関する指導が多い」 (訪問看護師:3.0±1.0、病院看護師: 2.8±1.2、P 値=0.01) 、 「単独での対応が多い」 (訪問看護師:3.2±1.2、病院看護師:2.1 ±1.0、P 値=0,00) 、 「対象者との生活上のコミュニケーションが多い」(訪問看護師:4.2 ±0.7、病院看護師:3.8±1.1、P 値=0,00) 、 「対象者の生活重視のケアが多い」 (訪問看 護師:4.2±0.7、病院看護師:3.6±1.0、P 値=0,00) 、 「家族への介護指導が多い」 (訪問 看護師:3.6±0.9、病院看護師:2.6±1.2、P 値=0,00) 、 「家族とのコミュニケーションが 多い」 (訪問看護師:4.1±0.8、病院看護師:3.7±1.0、P 値=0,00) 、 「対象者の経済面を 配慮する機会が多い」 (訪問看護師:3.8±0.9、病院看護師:2.8±1.0、P 値=0,00) 、 「対 象者への制度説明が多い」 (訪問看護師:3.3±1.1、病院看護師:2.6±1.1、P 値=0,00)、 「対象者へ福祉用具の説明が多い」 (訪問看護師:3.3±1.0、病院看護師:2.3±1.1、P 値= 0,00) 、 「ターミナル期の病状説明が多い」 (訪問看護師:3.3±1.2、病院看護師:2.6±1.2、 P 値=0,00)であった。 以上の結果より、病院看護師と比較すると訪問看護師のほうが、対象者へのニーズに沿っ た生活重視のケアを実施している頻度が高いため、対象者との密なコミュニケーションを 実施し、病状や経済面に応じた細やかなケアを行っている場面が多いことが明らかになっ た。訪問看護師のバーンアウト値が病院看護師より有意に低値を示している背景には、表 4 にも示している通り、対象者の生活ニーズ等に合わせたケアを実施する頻度が高いため、結 果的に対象者の幸福や安寧に関わる看護介入が可能になるという、看護職の利他性が存分 に発揮できる職務環境が訪問看護には存在しているからであろう。さらに、このような職務 環境は看護介入の結果、看護を提供した側の満足感にもつながる。.

(8) 表4.訪問看護師および病院看護師の業務内容の平均値(T検定) 医師との連絡・調整 訪問NS(N=387). 3.6±1.0. 病院NS(N=431). 4.3±0.7 看護業務主体. 訪問NS(N=387). 3.4±0.9. 病院NS(N=431). 3.6±1.0 他機関との連絡・調整. 訪問NS(N=387). 2.7±1.2. 病院NS(N=431). 2.6±1.1 生活上のコミュニケー ション. 訪問NS(N=387). 4.2±0.7. 病院NS(N=431). 3.8±1.1. P値 0.00. 多職種との連携・ 調整 3.9±0.8. P値. 対象者のニーズ. P値. 0.37. 4.1±0.6. 0.00. 4.0±0.8 P値 0.00. 人間関係の調整 3.3±1.1. 3.8±0.9 P値 0.44. 3.3±1.0 P値 0.29. 医療ケアの指導 3.0±1.0. 0.00. 生活重視のケア 4.2±0.7. 3.3±1.0. P値 0.55. 3.2±1.1 P値 0.01. 2.8±1.2 P値. 意思決定支援. 単独での対応 3.2±1.2. P値 0.00. 2.1±1.0 P値 0.00. 3.6±1.0. 家族への介護 指導 3.6±0.9. P値 0.00. 2.6±1.2. 家族とのコミュニケー ション. P値. 担当対象者数. P値. 看護ケアの道理 理解. P値. 訪問NS(N=387). 4.1±0.77. 0.00. 2.9±1.0. 0.00. 2.3±0.9. 0.89. 病院NS(N=431). 3.7±1.0. 3.3±1.7. 2.3±0.9. 基本的マナー. P値. 対象者の経済面. P値. 対象者への 制度説明. P値. 訪問NS(N=387). 2.3±0.9. 0.90. 3.8±0.9. 0.00. 3.3±1.1. 0.00. 病院NS(N=431). 2.3±0.9. 2.8±1.0. 2.6±1.1. 福祉用具の説明. P値. ターミナル期の病状 説明. P値. 訪問NS(N=387). 3.3±1.0. 0.00. 3.3±1.2. 0.00. 病院NS(N=431). 2.3±1.1. 2.6±1.2.

(9) 5.訪問看護師・病院看護師における経験年数別の MBI と看護業務内容との相関(表 5) 訪問看護師、病院看護師の両群の各経験年数(1-3 年、4-10 年、11 年以上)における看 護業務内容とバーンアウトの関連を検証するために両群の各 MBI 平均値および各看護業務 内容の相関(Pearson)を算出した。その結果、訪問看護師群では、情緒的消耗感と看護業務 内容の相関では、 「1 日の訪問利用者数」において全ての経験年数群において、 (r=0.2~ 0.3)の 1~5%水準での弱い相関を認めた。さらに、脱人格化では、 「ケア方法道理の理解」 において 1-3 年、4-10 年の経験年数群で(r=0.4~0.3)の 1~5%水準での相関を認めた。 病院看護師の 11 年以上では、脱人格化との相関において、 「患者ニーズへのケアが多い」 (r=-0.2) 、 「家族へのニーズへのケアが多い」 (r=-0.2) 、 「家族とのコミュニケーショ ンが多い」 (r=-0.2) 、 「訪問看護 ST との連絡・調整が多い」 (r=-0.2)と全てにおいて 弱い負の相関があり、1~5%水準で有意差を認めた。 以上の結果より、訪問看護師とバーンアウトとの関連があったのは、 「1 日の訪問利用者 数」と「ケア方法の道理への理解」についてであった。したがって、 「1 日の訪問利用者数」 については、訪問看護師個人の能力や利用者の重症度等を考慮し適切な訪問利用者数を設 定する必要がある。さらに、「ケア方法の道理への理解」については、その対象者に応じて ケア方法の根拠を理解できるよう訪問看護ステーション内での教育支援が求められる。 病院看護師では、 「対象者のニーズへのケアが多い」 、 「家族とのコミュニケーションが多 い」についてが、脱人格化との有意な負の相関が認められた。これは、病院看護師が理想と するような対象者へのニーズに沿った看護実践が十分に提供できない職務環境があること が推測できる。病院看護師のバーンアウト値が高値を示していた背景として考えられるの は、対象者のニーズを重視した患者や家族の幸福度に関わる看護実践を希求しているにも 関わらず、それが叶わない職務環境でのジレンマが存在するのであろう。 表5.訪問看護師の経験年数別の情緒的消耗感と看護業務内容との相(Pearson) 急変時の単独 対応. 訪問利用者 数. ターミナル 経過説明. ケア方法道理の 理解. 1-3年(N=120). 0.2*. 0.2*. 0.2*. -. 4-10(N=131). -. 0.3**. -. 0.3**. 11年以(N=78). -. 0.2*. 0.2*. 0.3**. **1%水準で有意(両側)、*5%水準で有意(両側). 表5.訪問看護師の経験年数別の脱人格化と看護業務内容との相関(Pearson) 生活重視ケア. ケア方法道理 の理解. 経済面. 1-3年(N=120). ー0.2*. 0.4**. -. 4-10(N=131). -. 0.3**. 0.2*. 11年以(N=78). -. -. -. **1%水準で有意(両側)、*5%水準で有意(両側).

(10) 表5.病院看護師の経験年数別の情緒的消耗感と看護業務内容との相関(Pearson) 患者ニーズ. マナー. 担当患者数. ケア方法の道理. 1-3年(N=80). 0.3*. 0.2*. -. -. 4-10(N=145). -. -. 0.2*. 0.2*. 11年以上 (N=206). -. -. 0.3**. 0.2*. **1%水準で有意(両側)、*5%水準で有意(両側). 表5.病院看護師の経験年数別の脱人格化と看護業務内容との相関(Pearson) ケア方法の道 理の理解. 急変時の単 独対応. 患者ニーズ へのケア. 家族ニーズ へのケア. 家族とのコ ミュニケー ション. 訪問看護ST との連絡・ 調整. 1-3年(N=80). 0.4**. -. -. -. -. -. 4-10(N=145). 0.2**. 0.3**. -. -. -. -. 11年以上 (N=206). 0.3**. 0.2**. ー0.2**. ー0.2**. ー0.2**. ー0.2*. **1%水準で有意(両側)、*5%水準で有意(両側). 6.訪問看護師・病院看護師における利他性平均値の比較(表 6) 利他性の質問項目として、 「仕事を通して対象者への幸福・安寧のための目標ができた」 、 「仕事を通して対象者や地域貢献の気持ちの芽生えがある」、「仕事を通して自己が対象者 へ役に立っていると思う」という質問項目を設定し、1-5 段階のリッカート形式で回答を得 た。両群において3つの質問内容に対する各平均値の有意差を確認するために、T 検定を用 いて検証を行った。 その結果、3 つの質問項目全てにおいて訪問看護師の平均値のほうが病院看護師と比較す ると高値であり、1~5%水準で有意差を認めた。表 4 に示している通り、看護職の業務内 容は、訪問看護師のほうが病院看護師と比較して、対象者のニーズに合わせた看護実践でき る職務環境にあるため、おのずと利他性は高まることが考えられる。 元来看護の対象者は、病をもつ生活者である。看護とは、その生活者が病をもちつつ、い かにその人らしく安寧のなかで暮らしを継続できるのかを支援する、医療的な側面と福祉 的な要素を含む看護援助行為である。それらが、発揮できる職務環境は、治療の場で看護を 提供する病院と比較すると、生活の場で看護を提供する訪問看護のほうが、対象者の幸福を 考えニーズに沿った看護実践が発揮できると考える。 表6.訪問看護師・病院看護師における利他性の平均値(T検定) 対象者や地 域貢献の気 持ちの芽生 え. P値. 自己の対象 者への役立 ち. P値. 対象者への 幸福・安寧 のための目 標設定. P値. 訪問看護師. 3.1±1.0. 0.00. 3.3±0.8. 0.02. 3.0±1.0. 0.00. 病院看護師. 2.6±1.1. 3.1±1.0. 2.6±1.0.

(11) Ⅴ.結論 1.訪問看護師、病院看護師のバーンアウト値を比較すると病院看護師のほうが有意にバー ンアウト平均値が高値であった。 2.訪問看護師および病院看護師の看護業務内容の平均値は、訪問看護師のほうが病院看護 師より有意に平均値が高値を示した項目は、以下の通りであった。 「対象者ニーズのケ アが多い」 、 「医療的ケアに関する指導が多い」、 「単独での対応が多い」、 「対象者との生 活上のコミュニケーションが多い」、 「対象者の生活重視のケアが多い」、 「家族への介護 指導が多い」、 「家族とのコミュニケーションが多い」、「対象者への制度説明が多い」、 「対象者へ福祉用具の説明が多い」、 「ターミナル期の病状説明が多い」、 「対象者の経済 面を配慮する機会が多い」という対象者主体での生活面に関する看護業務内容が多く を占めていた。 3.看護業務内容とバーンアウト値に関しては、訪問看護師では、 「1 日の訪問利用者数」 、 「ケア方法道理の理解」についてであり、訪問看護師個人の能力や訪問利用者数、訪 問経路などを考慮し、訪問看護師の負担につながらないよう配慮を要する。 「ケア方法 道理の理解」については、同行訪問による OJT(On The Job Training)の教育内容の検 討をしていく必要がある。病院看護師では、 「対象者のニーズへのケアが多い」、 「家族 とのコミュニケーションが多い」の項目が、バーンアウト値と負の有意な相関を認め た。これは、対象者のニーズ等を重視した患者やその家族の幸福度に関わる看護実践 を希求しているにも関わらず、それが叶わない職務環境でのジレンマが存在すること が示唆された。 4.利他性の 3 つの質問項目全てにおいて、訪問看護師の平均値のほうが病院看護師と比 較すると有意に高値であった。治療の場で看護を提供する病院と比較すると、生活の 場で看護を提供する訪問看護のほうが、利他性をも含む看護実践が発揮できること が考えられ、訪問看護師の低いバーンアウト値が影響していることが示唆された。. ■ 本研究に関する資金源 本研究は、公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の研究助成を受けて実施したもので ある。 ■謝辞 研究にご協力を頂きました多くの看護職の皆様に心より深謝申し上げます。 引用文献 1) 厚生労働省:平成 26 年度介護サービス施設・事業所調査 (http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service14/dl/tyosa.pdf,2014.10.1) . 2) 公益社団法人日本看護協会:在宅医療の推進に向けた意見 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001jlr7-att/2r9852000001jlwe.pdf, 2011.7.13) . 3) 社団法人日本看護協会:訪問看護事業所数の現象要因の分析及び対応策の在り方に関す る調査研究事業報告書,226-269(2009) . 4) 中村順子:訪問看護ステーション管理者による新人訪問看護師への関わり-安心して訪 問を任せられるようになるまで-.日本看護管理学会誌,13(1),5-13(2009)..

(12) 5). 原理恵:病院勤務の看護師が訪問看護ステーションへの移行期に体験した困難-訪問 看護業務に馴染むことが困難な 1 事例の語りから-,第 22 回日本看護管理学会学術集 会抄録集,211(2018) .. 6). 原理恵,李錦純,岩崎朱美,早川敦子:訪問看護師のバーンアウトに関連する要因- 県 B 市のおける訪問看護師における業務特性に焦点を当てて-,近大姫路大学看護学部 紀要,43-50(2010) .. 7) 田尾雅夫,久保真人:バーンアウトの理論と実際,誠心書房,東京,169-170 (2005). 8). 原理恵,谷水名美:病院勤務の看護師が訪問看護への移行期に体験した困難感 -離職意思に至った 1 事例のプロセス-,日本在宅ケア学会誌(査読結果待ち). 感想 このたび、公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の研究助成を受けたことで大規模な 調査研究が完了できたことに改めて感謝申し上げます。回収率は、訪問看護師 62.8%、病 院看護師 38.7%であり両群ともに予想を上回る回収率でした。多忙な看護業務の傍らでア ンケートにご協力を頂いたことで、成り立った研究報告です。重ねて施設の管理者様、看護 職の皆様に感謝申し上げます。とりわけ、訪問看護師の関心が高い調査であったようで、 「病 院看護と訪問看護は、看護観から異なると思う」、管理者様からは、 「結果を楽しみにしてい ます。このような研究をして下さることがありがたいです。 」など、自由記述を設定してい ないにも関わらず、書き込みを頂いたことで、研究者自身も励みになったことや考察にも反 映することができました。大変、ありがたいことです。 結果にも述べたように、訪問看護師、病院看護師のバーンアウト値を比較すると訪問看護 師のほうが有意にバーンアウト平均値は低かったことから、今後の訪問看護師の人材確保 の方策から考慮すると、訪問看護の道に一筋の光が射すような結果が出せたのではないか と思っております。今後も今回の研究知見をもとに、さらに訪問看護師の定着を目指して訪 問看護ステーション内での教育支援について探求していきたいと思っております。.

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