116 臨床報告 (東女医大誌第55巻 第10
・
11号)
頁 1018-1021 昭和60年11月至誠会第二病院における糖尿病専門内科開設
2年間の状況
東京女子医大糖尿病センター(所長平田幸正教授〉 ホ ン ダ マ サ シ タ カ ハ シ チ エ コ キ ム ラ ケ イ コ エ グ チ ョ ウ コ本田
正志・高橋千恵子・木村敬子・江口
洋子
シ ミ ズ メ イ ミ ヨ シ ノ ヒ ロ コ タキガワ ミチ清 水 明 実 ・ 吉 野 博 子 ・ 滝 川
倫
至誠会第二病院糖尿病内科 イ ザカ井 坂 と し 子
(受付昭和60年7月 2日〉 はじめに 擢病期間の長い糖尿病患者の増加に伴い,重症 合併症をもっ患者がふえ,一般内科外来や開業医 での治療困難な症例や内科以外の科の治療を必要 とする症例が増加している.このため総合病院に おいて糖尿病専門内科を設けて管理する事は非常 に有益な事と思われる.私共は至誠会第二病院に おいて昭和57年10月より糖尿病専門内科を開設し たが,その2年間の受診患者の分析を行なったの で報告する. 対象および方法 対象は昭和57年10月より昭和59年9月までの2 年間に至誠会第二病院糖尿病内科を受診した患者 703例である.対象者703例中, 1982年日本糖尿病 学会勧告川こ従って糖尿病と診断された者は455 例,境界型と判定された者109例,妊娠時尿糖陽性 者68例,肥満,眼底出血,巨大児分娩などのため 糖尿病精査目的で受診し非糖尿病と診断された者 71例であった.このうち糖尿病専門内科へ入院加 療した者は226例,のベ289回であった. 結 果 1.糖原病専門内科外来患者について 1) 年齢別,性別構成 表u
こ外来患者703例の初診時の年齢別,性別構 成を示した.女性425例,男性278例で女性が男性 の1.5倍であった.女性は60歳代が最も多く,男性 は50歳代が最も多く認められた. 2)受診者の由来 表2に外来患者703例の初診時の由来を示した. 703例中, 621例 (88.3%)は紹介されて来院して いた.このうち至誠会第二病院の外科,産婦人科, 脳外科,眼科,皮膚科などより271例 (38.5%)と 表l 糖尿病専門内科受診患者の年齢別,性別構成ぷトと
女 性 男 性 計(%) 10-19 4 2 6( 0.9) 20-29 76 12 88(12.5) 30-39 66 24 90(12.8) 40-49 56 57 113(16.1) 50-59 74 73 147(20.9) 60-69 85 50 135(19.2) 70-79 53 51 104(14.8) 80- 11 9 20( 2.8) 計 425 278 703(100) 平均年齢(歳〉 49.8 55.7 52.1Masashi HONDA, Chieko TAKAHASHI, Keiko KIMURA, Yoko EGUCHI, Meimi SIMIZU, Hiroko YOSHINO and Michi TAKIGAWA CDiabetes Center, Tokyo Women's Medical CollegeJ Toshiko ISAKA CDepartment of Diabetes, Shiseikai-Daini-HospitaIJ : Activities of Newly Established Department of Diabetes at Shiseikai-Daine-Hospital for Two Years
表2 糖 尿 病 専 門 内 科 受 診 者 の 由 来 由 来 例数(%) 至誠会第三病院内科 132(18.8) 至誠会第三病院内科以外の科 271(38.5) 女子医大病院 8602.2) 他病院及び医院 9803.9) 通院中の患者に紹介され来院 23( 3.3) 保健所及び福祉事務所 11( 1.6) 紹介者無く直接来院 8201.7) 言 十 703(100) 最も多く,また
8
6
例(
1
2
.
2
%
)
が女子医大病院よ り来院していた. 受診者の居住地域別検討では,至誠会第二病院 の 位 置 す る 世 田 谷 区 に 在 住 す る 患 者 は3
3
0
例(
4
6
.
9
%
入隣接する調布市に在住する患者は1
2
3
例 (17.5%)
であり,その他,他区,他府県の遠隔地 より来院した患者2
5
0
例(
3
5
.
6
%
)
であった.2
.
糖尿病専門内科を受診した糖尿病患者につ いて 1)年齢別,性別構成 表3
に外来患者7
0
3
例中,糖尿病と診断された4
5
5
例の初診時の年齢別,性別構成を示した.女性2
3
7
例,男性2
1
8
例と女性は男性よりやや多く,女 性は6
0
歳代が,男性は5
0
歳代が最も多く認められ た 2) 病型分類 臨床症状とその経過からみてインスリン依存型 表3 糖 尿 病 患 者 の 年 齢 別 , 性 別 構 成命トヱ
女 性 男 性 計(%) 10-19 1 2 3( 0.7) 20-29 6 3 9( 2.0) 30-39 23 12 35( 7.7) 40-49 26 39 65(14.3) 50-59 54 59 113(24.8) 60-69 70 48 118(25.9) 70-79 46 47 93(20.4) 80- 11 8 19( 4.2) 言 十 237 218 455(100) 平均年齢(歳〉 58.9 58.7 58.9 ~1 0l 9 117 表4 糖 尿 病 患 者 の 推 定 権 病 期 間 別 分 布〉事
く5 5- 10- 15- 20- 不明 計 (女%) (2162.28) (495.9) (37.33) (31.53) (21.02) (21.26) (5223.71) (男%) (2172.55) (360.6) (24.28) (31.53) (42.04) (1.6 3) (4271.89) (計%) (5244.73)(1765.5)(152.51)(63.06) (63.06) (31.89) (140.550) 糖尿病と考えられる者は7例で,そのうち 5例は 女子医大糖尿病センターより紹介され受診した者 であり,その殆んどはコントロールの悪化のため 入院加療した症例であった.インスリン非依存型 糖尿病と考えられる者は3
4
6
例であった.また,二 次性糖尿病と考えられるいわゆる“その他の糖尿 病"が2例認められた.そのうちの 1例は末端肥 大症経過中に糖尿病が発症し,女子医大脳神経セ ンターにて手術施行したものであり,他の1
例は 肝機能障害と糖尿病がほぼ同時に発見され,イン スリン加療中で、あったが軽度の貧血,血中フュリ チンの異常高値のため肝生検にてへモクロマトー シスと診断したものである. 3)推定羅病期間 表4
に糖尿病患者の推定権病期聞を示した.5
年未満は2
4
7
例(
5
4
.
3
%
)
と最も多かった.5
年以 上1
0
年未満は7
5
例(16
.
5
%
)
,1
0
年以上1
5
年未満5
5
例(
1
2
.
1
%
入1
5
年以上2
0
年未満3
0
例(
6
.
6
%
)
,2
0
年以上は3
0
例(
6
.
6
%
)
であった.この中で1
0
年以 上の擢病期聞を示す者は1
1
5
例(
2
5
.
3
%
)
であり, 平均6
.
1
年であった. 4) 治療方法と推定擢病期間 表5
に糖尿病患者の治療方法と推定擢病期聞を 示した.食事療法のみは1
7
6
例(
3
8
.
7
%
)
と最も多 く,経口血糖降下剤1
3
8
例(
3
0
.
3
%
)
,インスリン 表5 糖 尿 病 患 者 の 治 療 法 と 推 定 権 病 期 間 症例数(%) 推M定±権S病.D期歳間 食 事 療 法 176(38.7) 3.7:t5.2 経 口 剤 138(30.3) 5.7:t5.7 イγス リ ン 141(31.0) 9.7士9.8118 表6 糖尿病患者の合併症の頻度 陽 性 陰 性 不 明 284 157 14 神 経 症 (62.4) (34.5) (3.1) Scott 76 1 a-II (16.7) 243 39 網 膜 症 (53.4) (8.6) Scott 97 IIIa- (21. 3) 59 385 11 腎 症 (13.0) (84.6) (2.4) 10 445
。
壊 痘 (2.2) (97.8) (0) 5 450。
昏睡及び前昏睡 0.0) (99.0) (0) 1 454。
低血糖昏睡 (0.2) (99.8) (0) ( )%1
4
1
例(
3
1
.
0
%
)
と,ほぽ同数であった.各治療法 別推定権病期聞は食事療法では平均3
.
7
年と最も 短かく,経口剤5
.
7
年,インスリン9
.
7
年とインス リン使用者の推定権病期聞が最も長かった. 5) 合併症の頻度 表 6に糖尿病患者の合併症の頻度を示した.ア キレス臆反射及び膝蓋腫反射の減弱,消失,知覚 異 常 を 指 標 と し た 糖 尿 病 性 神 経 症 は2
8
5
例(
6
4
.
8
%
)
に 認 め た . 糖 尿 病 性 網 膜 症 は1
3
7
例(
3
0
.
1
%
)
に認められ,そのうちS
c
o
t
tI
I
I
a
以上の 症例が9
7
例(
2
1.3%)
であった.蛋白尿を指標と した糖尿病性腎症は5
9
例03.0%)
に認められた. 下肢の壊痘は1
0
例(
2
.
2
%
)
,高血糖昏睡及び前昏 睡は5
例(1.8%)
,低血糖昏睡が1
例(
0
.
2
%
)
に 認められた. 考 察 以上 2年間に至誠会第二病院糖尿病専門内科 を受診した患者は,女性が男性に比べ1.5
倍と多 かった.この理由の1
っとして外来受診者のうち2
0
歳代,3
0
歳代の尿糖陽性妊婦が多く含まれてい た事によると考えられた.1
9
8
3
年,高橋ら2)の同外 来開設半年後の報告では女性が男性の1.1
8
倍と多 かったが,今回の検討でも外来受診者中の糖尿病 患者4
5
5
例では女性は男性の1.0
9
倍とやや女性が 多い傾向を認めた.しかし,三原らめ4)の女子医大 糖尿病センターの報告では男性が女性の1.2
3
倍, 1.3
6
倍と男性が多い傾向を認め,飯田ら5)も同様 に男性に糖尿病患者が多かったと報告している. これは至誠会第二病院の立地条件として世田谷区 の住宅地域に位置するため,昼間人口として多い 女性の患者が比較的多いためと考えられた. 糖尿病患者の年齢別検討では,6
0
歳代が25.9%
と最も多く,5
0
歳以上の患者が75.3%
,7
0
歳以上 でも24.6%
を占めていた.これは三原ら3)の5
0
歳 以上47.2%
,7
0
歳以上1
4
.
2
%
と比べると外来受診 者は高齢者が多い事が特徴的であった. 糖尿病の推定擢病期間は,5
年未満の患者は2
4
7
例(
5
4
.
3
%
)
と最も多く認められたが,1
0
年以上 の長い擢病期聞を有する者も1
1
7
例(
2
5
.
7
%
)
と多 く,最長5
5
年であった.5
年未満の患者が多かっ た理由として,糖尿病が発見された直後に開業医 より紹介され来院した患者が多かった事と,皮膚 科,眼科,婦人科等を通院中,糖尿病を疑われ受 診後初めて糖尿病が発見された症例が多かったた めと思われた.一方,1
0
年以上の長い擢病期間を 有する患者が多かった理由としては,女子医大糖 尿病センターより権病期間の長い通院中の患者が コントロールが悪化し,入院目的で来院した事と, 地域の基幹病院として躍病期間の長い合併症,特 に糖尿病性網膜症の進行した患者が多数紹介され 来院したためと考えられた. 受 診 者 の 治 療 方 法 と し て は イ ン ス リ ン が ,31.0%
と,三原らの16.0%
に比べ多かった.また, 治療法別の擢病期間の検討では,食事療法が最も 短かく,インスリンが平均9
.
7
年と最も長かった. これは擢病期間の長い経口剤使用中のインスリン 非依存型糖尿病患者がコントロールが悪化しイン スリンに変更した症例や,感染症の併発,あるい は手術を必要として入院しインスリン治療とした 症例が多かった事によると思われた. 糖尿病の合併症としては,糖尿病性網膜症が38.0%
と飯田ら5)の2
1.1%
に比べ多く,三原らめの39.4%
とほぼ同程度に認められた.これは至誠会 第二病院眼科では,進行した糖尿病性網膜症に不 可欠な光凝固療法が何時でも実施できる状態にあ るため,眼科開業医よりS
c
o
t
tI
I
I
a
以上の糖尿病 性網膜症患者が多数紹介され来院したためと思わ-1020-れる.糖尿病性腎症に関しては,三原ら3)の