原 著 〔東女医大誌 第56巻 第10・11号頁 1009∼1021 昭和61年11月〕
右肺全摘後および右主気管支遮断後の循環動態に関する実験的研究
東京女子医科大学 第2外科学教室 タカ ハシ 高 橋 (主任 織畑秀夫教授) サトル 敏 (受付 昭和61年8月8日)Experimental Stduy on Hemodynamics After Right Total Pneumonectomy
and Obliteration of the Right Primary Bronchus
Satoru TAKAHASHI
Department of Surgery(Director:Prof. Hideo ORIHATA)
Tokyo Women’s Medical College
In the.present study, the effect of a more than 50〔殆decrease in the pulmonary vascular bed due to
unilateral total p且eulnonecto阻y during the early postoperative phase were investigated, and those of
hypoxemia due to obliteration of the right bronchus were also studied.
Adult mongrel dogs weighing 13−20kg were subjected to right total pneumonectomy(seven dogs)of
obliteration of the right primary bronchus(eight dogs), and de.termination of hemodynamics and blood gas analysis were performed in the animals for a three−hour period after surgery.
The results were as fo110ws.
1)An increase in the pulmonary arterial pressure and central venous pressure and a decrease in the cardiac output were noted from soon after right total pneumonectomy. There was a negative correlation (r=・0.77)between the pulmonary arterial pressure and the cardiac output, showing a marked decrease in the cardiac output at a pulmonary arterial pressure of more than 20mmHg.
2)There was no hypoxemia in the early postoperative phase, whereas the mixed venous blood PO2 decreased with a decrease in the cardiac output, suggesting the presence of concomitant peripheral
ci「culatory insufficiency.
3)Hypoxemia due to obliteration of the right primary bronchus exerted minimal effects on the
pulmonaryarterial pressure and cardiac output, indicating that the involvement of hypoxic contraction of pulmonary blood vessels in very slight until three hours after surgery.
On the basis of the above results, it is presumed that an abrupt decrease in the pulmonary vascular
bed due to right total pneumonectomy leads to an increase in the pulmonary arterial pressure and a
decrease in the cardiac output and that right total pneumonectolny has a greater effect on the pulmonary heart system than does obliteration of the right primary bronchus, probably inducing cardiac failure, peripheral circulatory insufficiency or pulmonary edema.
目 次 緒言 実験方法 1.実験動物および麻酔方法 2.右回全摘の作成 3.右主気管支遮断肺の作成 4.右肺全摘群および右主気管支遮断群 5.血行動態の測定 1)平均動脈圧 2)中心静脈圧 3)肺動脈圧 4)左房圧 5)心拍出量 6)心電図
6.血液ガス分析 実験結果 1.血行動態の変動 1)平均動脈圧 2)心拍数 3)中心静脈圧 4)肺動脈圧 5)左房圧 6)心拍出量 2.血液ガス分析の結果 1)大動脈血酸素分圧および炭酸ガス分圧の変 動 2)混合静脈血酸素分圧および炭酸ガス分圧の 変動 3)左房血酸素分圧および炭酸ガス分圧の変動 考察 結論 文献 緒 言 近年,肺癌症例の増加,麻酔および術前術中管 理の進歩,高齢化社会に伴い,胸部疾患に対する 手術適応が拡大され肺切除例が増加してきてい る.肺切除に際して,その心肺機能の面からの適 応は,肺換気能,肺拡散能,換気血流分布等のい わゆる肺機能検査成績1)∼3)や左右別肺換気循環機 能ないし各種運動負荷時の検査成績の評価4)∼7)に よって決定されている.しかし,その許容範囲内 であっても,一側肺全摘術などの過大な手術侵襲 は,術後心肺機能不全を引き起こすこともまれで はない8)∼12). 肺は他臓器に比べ,予備血管床容積が大きく, 肺血管床は血液量の増加に対してその容積を増す と言われており,一側肺全摘でも肺循環系に影響 を及ぼさないとの報告13)14)もある.しかし,肺切除 により肺血管床は減少し右心系への圧負荷が起こ るという肺循環動態の変化は,以前より研究され ており15)∼17),Harrisonら18)は,大量肺切除により 肺水腫あるいは右心不全により早期死亡した実験 例を報告しており,また富木19)も肺切除の術前術 後における循環動態の検討を行ない,一葉切除程 度までの手術侵襲では肺動脈襖入圧,肺動脈圧に 影響を及ぼさなかったが,二葉切除以上では肺1血 管容積が限界を越えて変化するため肺動脈喫入 圧,肺動脈圧は上昇し,ある程度以上までこれら の圧が上昇すると肺水腫が危惧されると報告して いる. 右筆は左肺に比べその容積は大きく,門門を全 摘した場合肺血管床は50%以上減少することが知 られている20).これにより,肺予備血液量の減少, 対側肺の相対的血液量の増加などにより肺動脈圧 の上昇をきたし,右心機能の特性および圧受容体 を介して心拍出量を減少させ,術後早期より循環 動態の変動を来たせば,経過とともに心肺機能不 全を呈してくると考えられる.胸部外傷に伴う肺 および主気管支損傷の場合に,右肺全摘をするか, 右四気管支遮断に止めるかは問題のある所であ る. そこで,著者は右肺全摘犬および門主気管支遮 断犬を作成し,術後早期の血行動態,血液ガス分 析を中心として観察し,肺血管床の減少が,肺動 脈圧に与える影響を検討するとともに,主気管支 遮断による低酸素血症が肺動脈圧に及ぼす影響を 比較検討し,若干の知見を得たので,文献的考察 を加え,ここに報告する. 実験方法 1.実験犬および麻酔方法 体重13∼20kgの雑種成犬15頭を用い,麻酔ぱ, Pentobarbital Sodium 251ng/kgを静注し,丁丁 反射の消失を指標として必要に応じ,Pentobar− bitalを少量ずつ追加投与した.呼吸は,#28∼30の カブ付きチューブを気管内に挿管し,Ventirator (ACOM, R−300)を用い,毎分20回,1回換気量 20∼30ml/kgの七二的陽圧呼吸を行ない,毎分31 の酸素を投与した.右大腿静脈より,レーマン7F カテーテルを挿入し,乳酸化リンゲル液を5ml/ kg/hの割合で滴下した. 2。右肺全摘の作成 左側臥位にて,馬肥5肋間で開胸し,右上肺動 脈主幹および右上肺静脈主幹を露出剥離し, Swan・Ganzカテーテルおよびレーマン7Fカテー テルを挿入して,心拍出量,肺動脈圧,左房圧の 測定に利用した.次いで,右上中下葉,縦隔葉を 切除し,即興全摘を行なった,
3.右主気管支遮断肺の作成 右肺全摘犬と同様に,左側臥位にて,右第5肋 間で開胸し,右上肺動脈主幹および右上葉静脈を 露出剥離し,Swan Ganzカテーテルおよびレーマ ソ7Fカテーテルを挿入して,心拍出量,肺動脈圧, 左房圧の測定に利用した.次いで,凡主気管支を 絹糸にて二重結紮し,同側の肺が虚脱を起こし, 高度の無気肺になることを確認した後,閉胸した. 4.右肺全摘群および右主気管支遮断肺群 右肺全摘群(A群):7頭,右肺全摘術を施行 し,閉胸後3時間にわたり,血行動態の変動を連 続的に記録し,また経時的に血液ガス分析を行 なった. 右主気管支遮断群(B群):8頭,同様に,右主 気管支遮断後,閉回し3時間にわたり,血行動態 の変動を連続的に記録し,また経時的に血液ガス 分析を行なった. 5.血行動態の測定 実験中の血行動態の指標として,平均動脈圧, 心拍数,中心静脈圧,肺動脈圧,左房圧,心拍出 量を測定し,心電図を記録した. 1)平均動脈圧および脈圧測定のために,左大腿 動脈よりレーマン7Fカテーテルを腹部大動脈に 挿入留置し,これを高圧Straingauge型Trans− ducer(M.P,U.0.5,290型,三栄測器)に接続した. 2)中心静脈圧測定のために,左大腿静脈より レーマン7Fカテーテルを下大静脈に挿入留置し, これをTransducerにi接続した. 3)肺動脈圧測定のために,右開胸後,右上肺動 脈主幹よりSwan Ganz汐テーテル(Model 93−
132−5F EDWARDS LABORATORIES INS)を
挿入留置し,Transducerに接続した. 4)左心房圧を測定するため,右開胸後,右上肺 静脈主幹を露出し,左心房内にレーマン7Fカテー テルを挿入留置しこれをTransducerに接続し た. 5)心電図は四肢に針電極を刺入し,第2誘導で 記録した. 以上のTransducerおよび電極はすべて, Poly− graph(Surgical Monitor 125三栄測器)に接続し 測定し,全経過を記録した. 6)心拍出量は,Swan Ganzカテーテルを使用し,Thermodilation Cardiac Out Put Computer
(Model 9520 EDWARDS LABORATORIES
INS)に接続し,0∼1℃のブドウ糖5mlの注入に より言十測した. 6.血液ガス分析 腹部大動脈に挿入したカテーテルより動脈血 を,肺動脈幹に挿入したカテーテルより混合静脈 血を,また左房内に留置したカテーテルより左心 房血をそれぞれ採取し,ただちに自動ガス分析装 置(CORNING M−168)で,酸素分圧(以下PO2 く Cardiac Outpuも Pulmonary Atrial Pressure Left Atrial Pressure ∼Aortic Pressure CVP 図1 実験装置
と略す),炭酸ガス分圧(以下PCO2と略す)を測 定した.採血は,右肺全摘前,右肺全摘直後,右 肺全摘後30分,60分,90分,120分,150分,180分, B群では,右主気管支遮断前,右主気管支遮断直 後,右主気管支遮断後30分,60分,90分,120分, 150分,180分に行なった. 実験結果 1.血行動態の変動(表1) 1)平均動脈圧 麻酔導入後における平均動脈圧は,A群98.4± 16,4mmHg(mean±SD以下同様), B群104.8± 18,5mmHgであり, A群では三二全摘後90分ま ではわずかにB群と比較し低いが,有意の変化は なかった.両者ともそれ以降は有意差なく,安定 していた(図2). 2)心拍数 麻酔導入後における心拍数は,A群152.2±
20.1回/min, B群156,4±20.1回忌minで, A群で
は徐々に心拍数の増加を認めたが,著明な変化は 認められなかった.B群では術後もほとんど変化 はみられなかった(図3). 3)中心静脈圧 麻酔導入後における平均中心静脈圧は,A群 L8±0.9cmH20, B群2.1±0.4cmH20であっ た.A群では,右肺全摘後より上昇傾向を示し180 分後では3.9±1.7cmH、Oであり,8.5%の上昇を 認めた.B群では,民主気管支遮断後30分で,2。3± 0.9cmH20と軽度上昇を認めたが,その後は漸次 減少し麻酔導入時よりも低下傾向を示した.A群 mmHg 150 100 50 O一一◎右肺全剛群 n=7 ●一●右主気管支遮断群R=8 mean±SD 目 一 N 寸 QO 一 Pり 寸 卜 ○○ ① り oう o 畑 σD Φ(衰 雪 自 蕊 雲 H o 軸 oり 州 一 鵯 酋 。 o 十1 十1 十1 十1 十1 料 十「 十1 十1 十1 十1 十1 αD OO ? 一 αり 卜 マ 鴎 ① マ ゆ N 一 n の σ9 ㊤ ゆ OD ① φり 剛 oり ㊤ 6り N o o o 9 卜 o 囚 囲 σ○ の 一 目 一 耳 詔 ト ゆ マ ① 寸 ト φ H 鴎 ① ㎝ 卜 の o Φ(§ 曽 雪 9 曽 一 一 ○う N 一 一 圏 芙 0 0 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 LO の ? 一 卜 一 DO ① o ゆ ① 寸 o N σり の ゆ ト 卜 卜 oり 一 一 り q N o 軸 o o ㊤ 頃 eq 一 頃 eり { 一 一 一 可 囚 一 囚 寸 個 卜 り ト N 頃 寸 N ト o N o 頃 Φ(貸 戴 巽 訟 蕊 一 一 6り 6り o 一 霧 芙 o o 十1 十「 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 N Ng H ¢ 一 oう 卜 ○り o ” ㊤ a 寸 oり 卜 ① 卜 野 一 oう 一 N ⑩ eq N σQ 寸 o o 卜 鴫 国 H ⑩ H H 一 一 一 QO の H 釦 o OQ め 的 ○り 一 寸 N OD N 頃 DO 寸 の QQ o ゆ 一 OQ の ΦΦo o 肩 肩 肩 羽 翁 肩 鵯 零 肩 嘱 肩 羽 ① ① り { マ o Pう oり OD n o 頃 σり の N ① OD o oり 一 N ト oり N o 鈴 o o ト ㊤ ⑳ 一 oり o H 一 一 一 o ⑳ N 凶 N H 寸 ” N 卜 DQ 卜 寸 の 可 o 一 凶 N OQ 寸 寸 寸 寸 虫〔叙o o 鋼 肩 鋼 羽 肩 翁 鵯 羽 噺 羽 鋼 鋼 ¢ o ○り ㎝ 一 卜 N QO 卜 ⑦ N 頃 ◇り 卜 周 eq OQ 的 oり 一 一 o oり ¢q oう 寸 o 一 め ¢ N H マ H 一 例 州 H oN 凶 咽 魯。っ ⑳ マ ゆ いり ぴユ ① 窺 ① ⑪ ト ト N ゆ o ワo ① OD OQ ㊤ の の 虫姻 一 一 一 eq o o N N 一 一 N 囚 霧枢 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 十1 藁誕 σり 卜 寸 卜 Pり の ゆ o 頃 寸 寸 門 く刊取 ⑪ ⑦ ㊤ 寸 ○り N H ト oう N 的 創 境相 A担 ① 雪 雪 旨 q 円 日q お囚 巡 N H 蜜 N 鴎 寸 N ㊤ QO 一 QQ ゆ 寸 寸 脚 姻 寸 N 軌 寸 σ⊃ N 巡i似 嚢囮 鋼⑰ 羽寸 肩σり 羽り コOD 翁N 鵯N 羽N 零卜 肩の 羽卜 唱州 剣脈 n裡 撃 9 お 舘 N N 脅 密 囚 eq 霧 ま 再拠 一 一 一 一 苺 爵 槌 一 H 蜜 卜 ゆ N マ ゆ 寸 o o oo 寸 eり 囚 遡 DO り QO o N “ 橿枢 結
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右肺全摘前開胸時のA群の平均肺動脈圧は
14.6±2。6mmHgであり,全摘直後には19.2±3.1 mmHgで34%の上昇を示した.さらに肺動脈圧は 上昇傾向に「?閨C全摘後30分値21.5±2.7mmHg (47%の増加),60分値21.7±3.4mmHg(49%の増 加),90分値22.8±3.8mmHg(56%の増加),150 分値21.9±3.5mmHg(50%の増加),!80分値 23.5±2.9mmHg(61%の増加)であり,いずれも 全摘前の約50%の上昇であった(p<0.01). これに対して,下主気管支遮断前開三時のB群 の平均肺動脈圧は14.3±2.OmmHgであり,術直 後は15.2±3.8mmHgで6%の上昇(p<0.05)を 示し,その後も肺動脈圧はわずかな増加であり, いずれも約10%の上昇であった(p<0.05).A群 80 90 100 110 120 ユ30mmHg (平均動脈圧) 図6 平均動脈圧と肺動脈圧 とB群との肺動脈圧差は術直後より徐々に増加 しており,両群の肺動脈圧の変化は,明らかな有 意差を認めた(図5). 平均動脈圧と肺動脈圧との相関では,両三とも 有意差はなく動脈圧の影響はうけなかった(図 6). 5)左房圧開胸時における左房圧は,A群2.4±0.8
mmHg, B群2.8±0.4mmHgであり,A群では右 肺全摘後30分値で3.5±1.2mmHgと上昇したも のの,その後経時的には低下傾向を示した.また B群もわずかながら低下傾向を示したが,軽微で あり両群とも比較的安定していた(図7).mmHg 5 4 3 2 1 0 O■一副O 右肺全別群 n=7 ●一一●右主気管支遽断群n高8 mean±SD m£/min 3000 2000 1000 購口前 右肺門蘭 右白蝋30分 60分 90分 120分 150分 180分 盲主気管難断前 右主気管難断直写右圧気管購断後35勇 図7 左心房圧 0 H 右肺全雰1群 n=7 ●一一● 右主気管支遮断群nE8 mean±SD 左房圧 mmHg 5 4 3 2 1 0 o o 右昌市全易口君羊 ・右主気管支遮断群 ♂。o。 ●●● り . 80 90 100 UO 工20 130 mlnl−lg 平均動脈圧 図8 平均動脈圧と左房圧との関係 両群とも左房圧の変化は認められず,また平均 動脈圧の変化による影響もうけなかった(図8). 6)心拍出量 開胸時の心拍出量は,A群2,575.1±123.1ml/ min, B群2,367.6±:142,1ml/minであった. A群
では嬉嬉全摘直後より減少し,全摘後30分値 2,213.4±250.2ml/min,14%(p<0.01),60分値 2,043.3±241.2ml/min,20%(p〈0.01),120分 値1,868.3±260。4ml/min,27%(p<0.01),!80 分値1,480.3±2842ml/min,42%(p〈0.001)の 減少を示した.B群では,右主気管支遮断直後お よび30分値で,25,991±222.1ml/min,9.7%およ び2,612.1±238.9ml/min,10%の増加をみたが, 60分値以降では約2,200ml/minでほとんど開胸 時の値と差がなかった.B群に比べA群では心拍 右醗卿胴 右殿肥后 右麗副後]o分 60分 90分 120分 150分 180分 右室更管鑓断醜 右主気管鎚断己后右主気管鎚断後30分 目 図9 心拍出量 心拍出量 m£ノmin 2500 2000 1500 O右肺全別群 。●● ●右主気管支遮断群 o ●を
o
o o o O γ=一〇、丁6879 。L_______。。脈圧 10 20 mmHg 図10 心拍出量と肺動脈圧との相関 出量の明らかな減少を認めた(図9). 心拍出量と肺動脈圧との相関では,A群では肺動脈圧の変動に伴う負の相関を認め(γ=一
〇.77),肺動脈圧が20mmHg以上に上昇すると,心 拍出量は2,200ml/min以下に減少した(図10). 2.血液ガス分析の結果(表2) 1)大動脈血PO2およびPCO2の変動 麻酔導入後における大動脈血PO2は, A群で 152.3±18.1mmHg, B群では130.5±11.1mmHgであった.A群では全摘直後に122.3±16.1
mmHgと低下したが,その後130∼150mmHgを
示し,平ぎな変動はみられなかった.B群では気 管支遮断直後より大動脈血PO2は低下し,直後で 76.4±19。8mmHg,41%(p<0.05),60分値で 76.8±15.4mmHg,41%(pく0.05),120分値で 68.1±15.2mmHg,47%(p<0.01),180分値で 62.3±14.3mmHg,52%(p<0.01)の低下がみら れた(図11).外
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mmHg 30 25 20 15 10 5 0 右脳全副前 右肺全嗣直后 右膨全朋後30分 右主気管娩断前 右主凱寳越断直后右主気管鎚断後3自分 図11 60分 90分 大動脈血PO2 一A群(n=7) ●一→B群(n=8) 120分 150分 180分 mean±SD 麻酔導入後右肺全別前右肺全別直右肺全別後 60 90 工20 工50 180分 右主気管支後 30分 遮断前 右圭気管支右主気管支 遮断直後 遮断後30分 図12 大動脈血PCO2 一方,麻酔導入後における大動脈血PCO2は, A 群13.8±1.6mmHg, B群14.0±1.9mmHgで あった.A群では右肺全摘により大動脈血PCO、 は上昇し,60分値17.9±2.5mmHg,30%(p< 0.05),180分値で19.8±2.9mmHg,43%(p< 0.05)の上昇であった.同様に,B群でも術後よ り大動脈血PCO,は上昇し,60分値19.6±2.3 mmHg,40%(p<0.05),180分値23。4±2.1 mmHg,67%(p<0.05)の上昇を認めた(図12). 2)混合静脈血PO2およびPCO2の変動混合静脈血PO2は,術前A群で48.8±7.2
mmHg, B群で41.8±8.4nlmHgであった. A群 では全摘後徐々に低下し,60分値45.0±8.6 mmHg,7%(p<0.05),120分値38.6±8.3 mmHg,20.9%(p<0.05),180分値38.8±7.2 mmHg,20.4%(p<0.01)の低下であった. B群 では右主気管支遮断直後より低下し,60分値 37.0±7.2mmHg,11%(p〈0.05),!20分値32.8±mmHg 100 50 o O一一く)右肺全別群 n韓7 ●・一一●右主気管支遮断酵n=B mean±SD 右麗齢 右腱躍1窟后 静釧後30分 60分 90分 120分 150分 180分 右主鼠管超気前 右主気管鑓断蛎右主気管越断後30分 図13 混合静脈血PO2 心拍出量 me/min 2500. mmHg 35 30 25 20 15 10 5 0
HA群
(n二7) 一B群 (n−8) mean±SD 120 150 180分 2000 15QO ・右肺全摘群 ・右主気管支遮断肺群 ●}. o ● o o γ=0.94746 oL_________
ユ0 20 30 40 50 混合静脈血PO2 mmHg 図15 心拍出量と混合静脈血PO2との相関 右肺全別前 右肺全別直 右肺全別後 60 右目気管支 後 30分 遮断前 右主気管支 右主気管支 遮断直後 遮断後30分 go 図14 混合静脈血PCO2 8.4mmHg,21.5%(p<0.05),180分値31.8±9。O mmHg,23.9%(p〈0.01)の低下を認めた.両三 とも同様に低下し,両群間に有意差はみられな かった(図13). 一方,術前の混合静脈血PCO2は, A群18.7± 6.3mmHg, B群15.9±5.8mmHgであり,術後両 群とも上昇しA群では全摘後180分値で29.7± 4,1mmHg,58%上昇した(p<0.05). B群でも気 管支遮断後180分値で28.3±5.2mmHg,78%上昇 した(p<0.05).両町の間に特に有意差はみられ なかった(図14). A群において,混合静脈血PO2と心拍出量の間 には正の相関がみられ(γ=0.94),心拍出量が減 少すると混合静脈血PO2の低下がみられた(図 15).また混合静脈血PCO2は両三とも著明な上昇 がみられ,一群の間に有意差はみられなかった. 3)左房血PO2およびPCO、の変動 左房血PO2は,術前A群133.7±13.1mmHg, B群124.5±15.1mlnHgであった. A群では経時 左房血PO2 mmHg 200 15Q /00 50 。一一QA群(n二7/ ←一→B群(n=8) mean±SDoL__________ _一一__
mrnHg 30 25 20 15 10 5 0 右肺全別 右肺全別 前 直後 右主気管 右主気管 支遮断前 支遮断直 後 右肺全易1」 後30分 右主気管 支遮断後 30分 図16 60 90 120 150 180分 左房血PO2 一)A群(n二7) ・一一→B君羊(n=8) mean±SD 郁栓易1」前右肺全易1」直右肺全易ll後 60 90 120 150 工80分 右主気管支 後 30分 遮断前 右主気管支 右主気管支 遮断直後 遮断後3D分 図17 左房血PCO2的に大きな変動はみられなかったが,B群では術 直後より低下し60分値74.7±7.4mmHg,180分値
57.2±7.4mmHgで54%の低下であった(p<
0.01)(図16).また術前の左房血PCO2は, A群 16.5±2.5mmHg, B群12.6±1.8mmHgであり, A群では全摘後徐々に上昇し180分値で21.8± 2.9mmHg 32%の上昇を認めた(p<0.05). B群 ではさらに著明に上昇し180分値で28.4±2.4 mmHg,125%の上昇であった(p〈0.01).両群の 間に有意差を認めた(図17). 考 察 1910年,Kumme121)が40歳の男性の肺癌患者に 右肺全摘術を行なったのが,文献上にあらわれた 肺癌に対する切除療法の最初の報告であり,この 症例では術後6日目に心不全のため死亡したとい う.本邦では,1916年頃より肺癌に対する外科的 治療が行なわれるようになり,1938年,小沢22>に よって肺癌の一側肺全摘2例,肺葉切除および単 開胸各1例が発表されたのが初めてである.以後, 肺癌に対する外科的治療の研究が進んだが,1940 年代後半頃の外科療法の主流は一側肺全摘術で あった.一方,Churchillらは,1950年,切除した 肺癌患者171例の成績を発表し,手術死亡率が一側 肺全摘群では22.8%であったのに対して肺葉切除 群では14.1%であり,また5年生存率が一側肺全 摘群では12%であったのに対して肺葉切除群では 14.1%であったことを報告した.この頃より肺切 除に伴う生理学的変化が研究され始め23)∼271,肺全 摘術の循環動態についても多くの報告がなされ た11)28)∼30>.実験的には,小沢16)は家兎で左の一側 肺全摘後,右下葉以外の2葉を切除してもよく生 命を保持し,下葉と他の1葉との組み合わせ,ま たは下葉以外の3葉を切除した場合には,数時間 で死亡したと報告している.また,Adames31), Harrison18)らも実験的に全肺容積の80%の切除 を行なえば,著しい肺高血圧が発生し,肺水腫や 右心不全により早期に死亡したと述べている. 辻32)は,50歳以上の一側肺全摘症例について,術後 経時的に心肺動態の変動を観察し,%VCでは術 後3ヵ月から6カ,丁目にかけ低下し,それ以後丁 丁全摘術例では回復するのに反し,右肺全摘術例 は拘束性換気障害に陥入り術後持続し,%MBC では同様に右肺全摘術後経時的に低下し,七二全 摘術例に比べ閉塞性換気障害が増悪したとしてい る.また,肺動脈圧は左右全摘術後いずれも充進 ずるが,右肺全摘術後はその程度も著しく,心拍 出量は一側肺全摘後に低下し低心拍出性心不全の きざしを示し,特に右肺全摘術後はその傾向が強 かったと報告し,一側肺全摘術後は,閉塞性換気 障害を中心とする肺性心への移行が容易であり, 特に二二全摘術後には低心拍出性心不全に陥るこ とから,右肺全摘術は極力避けるべき術式である と警告している. 肺高血圧の発生機序に関して以下の点が考えら れている33).すなわち,機能的肺血管収縮,肺血管 床の器質的減少,肺血流量の増加,肺胞内圧の上 昇,Broncho−Pulmonary shuntの進展である.こ のうち,機能二二血管収縮と肺血管床の器質的減 少の2因子が重要である. 機能的肺血管収縮をきたすものには,まず低酸 素血症が大きな要因を占め,次いでアシドーシス および高炭酸ガス血症も肺動脈圧を上昇させると いわれている.局所のhypoxiaは,肺胞気酸素分 圧を低下させ機能的な肺血管攣縮が起こり,肺血 管抵抗の増大を招くといわれ,この低酸素性肺血. 管収縮は,Von EulerとLilyestrandを始めとし て幾多の報告がある34)∼37).これらの血液ガス異常 の進展に伴い,肺小動脈,回覧毛細血管の収縮が 生じ,徐々に血管の器質的狭窄が起これば,不可 逆性の肺高血圧に移行すると考えられている. 一方,肺血管床の器質的減少は閉塞性肺高血圧 と呼ばれるもので,器質的機能的な血管の閉塞に より肺血管床の減少をきたし,肺血管抵抗は増大 する.Williamら38)は,このうち肺切除後の肺血管 床の態度と肺高血圧との相関に注目しており,ま た仲田39)も肺切除後の循環動態に関して,次のよ うに述べている.肺切除により肺血管床が減少す ると,機能的には肺血管抵抗の増大をきたすこと となり,ある一定の限界を越えると肺動脈圧の上 昇を招来する.これが急激に起こってくれぽ,per− ivascular edema,肺水腫へと進展し,また一方, 肺動脈圧の上昇は肺血管内に存在する圧受容体よりの反射,および右心自身の機能特性により心拍 出量を減少させ,低心拍出性心不全を来たすと考 えられる.鈴木40)も一側肺全摘術後の病態生理に ついて述べ,動脈血PO2はあまり変動を示さない が,混合静脈血PO2は術後6∼12時間頃に最低値 を示し,さらに42時間後に再び低下した.心係数 は,術前には正常値を示したが,術直後から著し く減少し,術後12∼18時間頃に最低値に達し,肺 動脈圧は手術直後から著しく上昇し,最大20∼30
mmHgを示したが,術後18時間頃には10∼25
mmHgに低下して谷を形成した後,再び上昇傾向 を示してプラトーに達したと報告している.これ に対して,一側肺全摘術例で他側肺が正常である 場合は,肺動脈圧の上昇がみられないともいわれ る13)14).これは,肺血管系には再出通性が起こるこ と,肺血管系は拡張性に富み,かなりの血流増加 と対応する予備力があり,実験的には肺血管系の 60%から70%閉塞して初めて肺動脈圧の上昇が起 こるとしている.肺の予備能は,右心に対する体 静脈系と同様に左心ポンプのための予備としての 意義であり,静脈還流,右心拍出量の急激な変化 に際して左心二二量の恒常性を維持し,また急速 に左心拍出量の増加が要求された場合,瞬時的に 作動する機能とされている. 著者は,右肺全摘術による50%以上の肺血管床 の減少が,術後早期に及ぼす影響をみるため,一 側肺全摘犬により,術後経時的に肺動脈圧,心拍 出二等と血液ガス分析を指標として検討した.さ らに二二気管支遮断犬によって,低酸素血症によ る機能心肺血管収縮が肺動脈圧に与える影響を比 較検討とした. 肺動脈圧に関して,佐々木41)は肺切除では術後 肺動脈圧の上昇を認めたが,これに対して単開胸 の場合は不変であったことから,肺動脈圧は主に 肺血管容積に左右されるとし,また富木19》は,肺切 除術中・術後における循環動態の検討を行ない, 肺2葉切除以上では肺動脈圧および肺動脈懊二丁 は上昇し,肺動脈圧25mmHg以上,肺動脈懊二三 15mmHg以上では肺水腫の発生が予測されうる としている.WHO42〕によれぽ,肺動脈収縮期圧30mmHg,拡張;期圧18mmHg,中間肺動脈圧22
mmHg以上を肺高血圧と定義しており,
Fowler43)は安静時肺動脈圧18mmHg以上,笹本 ら44)は肺動脈圧20mmHg以上を肺高血圧として いる.本実験における肺動脈圧は,右肺全摘前 14.6±2.6mmHgであったものが,術直後より上昇し経時的にも30分値以降は20mmHg以上であ
り,術前と比べ,平均50%以上の上昇を示した (p〈0.001).また笹本らに従い肺動脈圧20mmHg 以上を肺高血圧の基準と考えれば,本実験でも右 回全摘後には肺高血圧が発生することが予測さ れ,特に術後3時間までは明白であった.一方, 右主気管支遮断肺では有意な肺動脈圧の上昇は認 められなかった. 心拍出量は,開胸時2,575.1±125ml/minであ り,右肺全摘直後より減少し/50分値以降では約 40%の減少を認めた(pく0.001).同様のことは他 報告でも述べられており,例えば,山根2⑪)は急性段 階的肺切除の実験において,右肺下葉切除および 二丁全摘までは肺動脈圧は軽度上昇にとどまった が,DLCO,肺血流量および心拍出量は肺切除量を 増すごとに漸減しその二二動脈圧の上昇も著明で あったと報告している.右肺全摘後,本実験の如 く著明な心拍出量の減少は,中心静脈圧の増加お よび心拍数の増加も考えあわせると,右肺全摘後 には,肺予備能を越えて肺循環調節障害が発生し, 徐々に低心拍性心不全を呈するものと考えられ た.そして,肺動脈圧と心拍出量とには負の相関 (γ=一〇.77)があり,肺動脈圧20mmHg以上では 心拍出量の減少をきたした. 次に血液ガス分析では,術後低酸素血症に関し て,Maierら45)が肺切除術後に発生すると報告し て以来数多くの研究がある46)∼50).この成因として は,肺胞雲低換気,拡散障害,心拍出量の低下, true shunt(主に無気肺),換気・血流不均等の関 与があげられている.一般的に,このうちtrue shuntと換気・血流不均等が主たる原因とされて いるが,心拍出量の変化と二二シャント,動脈血 PO,の変化との関係も考慮され,北村48)は,開心術 後の低酸素血症が心拍出量の減少による混合静脈 血PO,の低下に基づくものであることを認め,し かも動脈血PO2は心拍出量:の変動によって増減するシャント量の変動と混合静脈血PO、とのバ ランスによって規定されるものであると述べてい る.本実験でも,二二全摘後,心拍出量の減少に 伴い混合静脈血PO2の低下が認められている.一
方,肺切除術式別の検討で小野27)は,術後低酸素血 症の原因を,葉切例ではsmall airway closureに
よるtrue shuntの:増加,開胸例は部分的air way
closureによる換気・血流不均等の増加とし,肺全 摘例では動脈血PO2の低下はほとんど認められ ないとしている.また小池50)も肺内シャントの成 績からでは,肺全摘では肺内シャントは増加せず, 術後低酸素血症は認められなかったと述べてい る.本実験でも,動脈血PO2は右心全摘後一過性 に減少したものの,その後は術前値とほぼ同様の 値を示し,術後の低酸素血症は認められなかった. これに対して,混合静脈血PO、は右肺全摘後徐々 に低下し,術前値と比較すると21%の低下であっ た.true shuntを形成した右主気管支遮断後の混 合静脈血PO、も24%の低下を認め同様の傾向を 示している.右肺全摘後の心拍出量の減少に伴う 混合静脈血PO、の低下は,仲田39)が述べているよ うに,組織のPO2の低下をもたらす.本実験では 遠隔期のfollow upは行なってはいないが,徐々 に末梢循環不全を呈するものと予測される. 一方,片側の気管支遮断時に発生する低酸素血 症の主因は,気管支遮断肺に流れるシャント血が 肺静脈に流れるいわゆる静脈血混合効果によるこ とは周知の事実である.この低酸素血症により, 気管支遮断肺に低酸素肺血管収縮が起こり気管支 遮断肺を流れるシャント血を減少させ健側肺に血 流をシャントさせることにより,低酸素血症を防 ごうとしていることが明らかになっている34)37).
この低酸素肺血管収縮に関して,幾多もの報
告34)∼37)があり,これらによれば,低酸素負荷を行 なうと5∼20分程度で,肺動脈圧の上昇,肺血管 抵抗の増大が起こるとしている.これに対して, 足立5Dは気管支遮断肺の再建に関する実験の中 で,遮断後1時間以内では肺容積の減少やhypox− iaないしhypercapneaによる肺血管抵抗の増大 が優位を示す例はみられず,1時間以降の経過で は全例において肺血流量が減少しはじめているこ とにより,肺虚脱による肺血管抵抗の増大や低酸 素性肺血管収縮が優位を示してきたと考えられる としている.また,沼田37)も一側肺をhypoxiaに すると,動脈血PO2は直ちにコントロールの25% まで低下し,30分程はそのまま変化せず,それ以 降漸次上昇を続け10時間位でコントロールの85% となり,ほぼプラトーに達し,肺動脈圧は術直後 一時上昇したが,すぐコントロール値にもどり以 後2時間は変化せず,その後ゆるやかな上昇傾向 をたどった.心拍出量は経時的に低下する傾向を みせたが,有意な変化ではなかったとしている. 本実験でも,動脈血PO2は二二気管支遮断直後は 急激に低下を示し,その後は徐々に低下傾向を示 し,肺動脈圧は徐々に上昇傾向を示したが,有意 な変化ではなかった.また心拍出量ははじめ軽度 上昇を示したが,その後60分以降は術前とほぼ同 値に復した.このことから,右主気管支遮断後3 時間の経過では,低酸素血症にもかかわらず,低 酸素性肺血管収縮はそれほど作用せず,肺血管抵 抗の増大,肺動脈圧の上昇,右心負荷といった状 態は認められず,沼田37)が述べているように長時 間要するものと考えられた.これに反して,一側 肺全摘後の肺動脈圧の変動は急激であり,肺血管 床の減少による圧負荷が大きな要因であると考え られた. 結 論 著者は犬を用い,二項全摘群と右主気管支遮断 群を作り,両者について術後早期の循環動態,特 に右心系に与える影響および血液ガス分析を行な い,両者を比較検討し,次の結論を得た. 1.右肺全摘では三主気管支遮断に比し,術後早 期より,肺動脈圧の著しい上昇,中心静脈圧の軽 度の上昇および,心拍出量の減少を認めた.肺動脈圧20mmHg以上上昇した場合は著明な心拍出
量の低下を認めた. 2.右肺全摘では左房血および大動脈血のPO2 は変らないが,右主気管支遮断では有意差をもっ て低下する.右主気管支遮断による低酸素血症は, 肺動脈圧,心拍出量に対する影響は少なく,術後 3時間までは低酸素性肺血管収縮の関与は少ない と考えられた.以上の実験結果により,右肺全摘は,急激な肺 血管床の減少により肺動脈圧の上昇,心拍出量の 減少をきたし,右心系に与える影響が大きく,肺 水腫あるいは末梢循環不全をきたす危険がある. しかし,下主気管支遮断では低酸素血症は示すが, 右心系に与える影響が小さく,肺水腫や末梢循環 不全をきたし難いことが明らかになった.した がって,胸部外傷においては,右肺全摘よりも三 主気管支遮断の方が安全であると考えられる. 稿を終わるに当たり,御指導,御校閲を賜った恩師 織畑秀夫教授に深甚なる謝意を棒げるとともに,種々 の御教示と御援助をいただいた鈴木 忠助教授に心 からの感謝の意を表し,また実験に際して御助言,御 協力を頂いた小野田万丈先生,および教室員各位に深 謝する. (本研究の要旨は昭和60年6月13日東京女子医科大 学学会第263回例会において発表した,) 文 献 1)安田隆三郎・佐川弥之助:開胸術の術前検査心肺 機能検査を中心として.外科治療 30(2)655 ∼660 (1974) 2)仲田祐:肺機能検査とその評価.外科治療 30(6) 611∼618 (1974) 3)仲田 祐:肺機能の評価.肺手術適応決定の立場 から一.新しい胸部外科の臨床 191∼203(1977) 4)Sloan, H., Morris,」.1)., Figley, M., et al.: Temporary unilateral occulusion of pulmonary
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