74 薬やトランキライザーなどと同様,赤血球膜の保護作 用が認められる12). 生体膜の表層は,主にN−acetyl neuramic acidのカ ルボキシル基の存在によって負に荷電しており,ルテ ニウムレッドやcationized ferritinでラベルすること によって,その荷電状態を電顕的に観察することが可 能である.サイコサポニンはin vitroで細胞表層の荷 電に著明な変化をもたらすことが見出されているm. この他,サイコサポニンは細胞膜の流動性10)や膜の 裏うち構造で麟るマイクロフィラメントあるいはマイ クロチュブルへの作用も見出されている. これらのin vitroにおける細胞膜系への作用が,ど の程度in vivoの薬理作用と関連するかについては, まだ,充分明らかにされてはいないが,少なくともサ イコサポニンが細胞膜系と極めて高い親和性を持ち, その機能や形態を様々に修飾することが明らかであ り,サイコサポニンのtargetが細胞膜系である可能性 を強く示唆する実験結果であると思われる. 近年,細胞膜系が細胞の機能調節や分化,増殖, social behaviorなど重要な生命現象に極めて大きな 役割を果たしていることが明らかにされつつあり,サ イコサポニンの細胞膜系への作用は,肝臓,腎臓免 疫系,副腎一下垂体系など各種臓器の細胞の性質や機能 の変換をもたらすと考えられる13)14).これらの臓器の 細胞の性質や機能の変換が,各種の薬理作用をもたら し,結果として様々な病因に対する生体の反応性を変 化させることになると思われる.この生体反応の修飾 作用は換言すれば“体を丈夫にする”あるいは“抵抗 力を増す”という古来,和漢薬の作用として一般的に 言われていた作用と関連することであり,和漢薬の最 も重要で特徴的な作用の一つであると思われる.漠然 とした曖昧なものと思われている和漢薬のこのような 作用も,生薬成分の作用点を細胞膜系などの細胞内小 器官に求めることによって,またその作用を生体反応 修飾作用として総括するこ.とによって,かなり明確な 作用として認めることがでぎるように思われる. 文 献,
1)有地滋,小西啓悦,阿部博子:肝臓19:
430−435, 1978 2)阿部博子,小西啓悦,有地 滋,小田島粛夫:肝臓 19:1053−1057, 19783)阿部博子,長尾孝治,有地滋:肝臓19:
1058−1061, 1978 4)Abe H, Sakaguchi M, Yamada M, Arichi S, 0dashima S:Planta Medica 40:366−372,1980 5)Abe H, Sakaguchi M, Odashima S, Arichi S: Naunyn−Schmiedeberg’s Arch Pharmaco1320: 266−271,1982 6)Abe H, Sakaguchi M, Konishi H, Arichi S, Odashima S:J Pharma Pharmacol 37; 555−559,1985 7)Abe H, Orita M, Konishi H,Arichi S, Odashima S:Eur J Pharmacol,1985 8)Yamaguchi N, Kohno H, Tawara M, Odashima S,Abe H:Int J Immunopharmacol,1985 9)Abe H, Sakaguchi M, K叫ishi H, Tani T, Arichl S:Planta Medica 34:160−166,1978 10)Abe H, Odashlma S, Arichi S:Planta Medica 34:287−290,1978 11)Abe H, Konishi H, Komiya H, Arichi S: Planta Medica 42:356−363,1981 12)Abe H, Sakaguchi M, Anno M, Arichi S: Naunyn・Schmiedeberg’s Arch Pharmacol 316: 262−265,1981 13)阿部博子,安田裕紀子,阪口真智子,有地 滋,小 田島粛夫:薬誌100:602−606,1980 14)阿部博子,安田裕紀子,山田昌代,小西南阿,有地 滋:薬言志100:607−610, 1980 第24回東京女子医大漢方医学研究会 日 時 平成2年11月29日(木)午後5時30分∼7時 場 所 北校舎 3階集会室 演 題 1.当科,針治療外来の現況について (司会) 田中 朱美 (耳鼻咽喉科)永末 裕子・代田 文彦・石井 哲夫 2.高齢老に対する漢方治療の経験例 (第二病院内科2)庄野 紀子・久米 由美・三森 功子・ 一170一75 佐藤 弘・森 治樹 3.小児気管支喘息に対して漢方治療が奏効した2症例 (第二病院小児科)本城美智恵・村上 理子・橋本 景子・ 橋本 節子・村田 光範 特別講演 (司会) 佐藤 弘 西洋医学の立場から見た漢方治療の現況 (大阪医大第一内科教授)大澤 仲昭 当番世話人 佐藤 弘 1.当科・針治療外来の現況について (耳鼻咽喉科) 永末 裕子・代田 文彦・石井 哲夫 当科外来では,主に薬物治療に抵抗する難治性めま い患者と,治癒の遷延している顔面神経麻痺患者とを 対象に針治療を行っている.治療方法は,めまいに対 しては,頭頚部領域に圧痛点を求め,圧痛の強い順に 左右側からそれぞれ2点ずつ合計4点を治療点として いる.顔面神経麻痺に対しては,古典的に顔面神経麻 痺の経穴といわれる6点と,口角の上下および患側の 手に合谷と呼ばれる経穴を加えた9点を治療点とし て,2点ずつを組み合わせて15分通電し,極性を変え て5分,全部で20分間通電刺激を行う方法をとってい る. 今回当科での針治療をとり入れた顔面神経麻痺新鮮 例の治療法につき検討した結果,完全治癒率はベル麻 痺89.2%,ハント症候群63。6%と比較的好成績が得ら れ,針治療は,麻痺の治癒を早め,麻痺の改善に対し ては,有効であることが示唆されるが,後遺症の発現 に対する予防効果,および治療効果は認められなかっ たことを報告する. 2.高齢者に対する漢方治療の経験例 (第二病院内科2) 庄野 紀子・久米 由美・三森 功子・ 佐藤 弘・森 治樹 われわれは漢方治療が奏効したと思われる高齢者3 例の報告を行った. 症例1:80歳女.主訴は寝汗,体重減少.補中益気 湯投与により寝汗の消失,兎糞様便の改善など全身状 態はすこぶる快調となる.他にT.Chol低下, HDLC 上昇傾向を認めた. 症例2:80歳女.主訴は咳,微熱.喘息の診断の下 にβ刺激剤投与後副作用出現.虚証であることから, 補中益気湯+二二姜味辛夏山湯を基本に人参湯を就寝 前投与.睡眠が良好となり,喘息発作,咳も治まって いる. 症例3:82歳女.主訴は下腿の冷え.小腹不仁およ び下腿に浮腫を認める.下焦の虚と考え,八二地黄丸 投与,投与後徐々に自覚症状消失.しかし経過中消化 器症状出現.八三地黄丸の副作用と考えたが主訴に対 し効果を認めたため転即せず六君子湯を併用し症状の 消失をはかった.漢方薬は多方面の薬効が期待でぎ, 作用も穏やかであり,高齢者に試みて良い薬剤と考え られる. 3.小児気管支喘息に対して漢方治療が奏効した2 症例 (第二病院小児科) 本城美智恵・村上 理子・橋本 景子・ 橋本 節子・村田 光範 小児気管支喘息児で入院をくり返す重症例2例に適 した漢方製剤を使用し臨床症状の軽減を認めたので報 告する. 症例1:4歳男子.2歳より6回の入院をくり返し ていて,心理面での影響もでていたので柴朴湯3g分2 で投与を開始した.その後,咳はごく時々でるものの 発作はなく非常に良好な経過を示している.