台湾における司法改革の挑戦 : 裁判官の人事問題
を中心として
著者名(日)
林 超駿, 後藤 武秀, 李 秀文[共訳]
雑誌名
東洋法学
巻
54
号
1
ページ
245-275
発行年
2010-07-30
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000772/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja︽特別寄稿︾
台湾における司法改革の挑戦
−裁判官の人事問題を中心としてー
司法人事の問題を取り上げる理由林
超
駿
後藤 武秀
︵共訳︶李 秀文
民主化の波が台湾を席巻してからというもの、司法改革に関する問題もまた台湾の各界注目の焦点となった。司 法改革に注目が集まる雰囲気が醸成される中で、台湾の司法改革の重要な里程標となったのは一〇年前、すなわち 一九九九年夏に開催された全国司法改革会議であった。同会議においては、司法改革に関する数々の問題について 議論された。すなわち、将来の一元化を見込んだ司法院の位置づけ、刑事訴訟における当事者主義の採用および法 245律扶助制度等であり、それぞれに大きな成果がもたらされた。 しかし、司法改革に関する問題はその経緯も複雑であり、ただ一回の数日問の会議で関連するすべての問題を解 決することは不可能であった。例えば、今回の司法改革会議で取り上げられた最も重要な問題は、司法院の位置づ けの問題であり、本会議では一元化制度を採用するという結論になったが、法律改正の面で様々な困難があること から、今日に至るもなおその決議は実行に移されていない。ここにも司法改革の難しさが表れている。しかし、こ の例で言えば、台湾における司法改革の問題は、時に形式と概念に拘泥しすぎていると言えよう。例えば、司法制 度一元化とは何かは、いまだに明確化されていない。しかも、形式と概念にこだわりすぎると、往々にしてどのよ うな問題が存在しているかを見落とすことになりかねない。特に、最も見落とされている問題が裁判官の人事問題 であり、具体的に言えば、少なくとも以下に列挙するようないくつかの問題について議論しなければならない。 第一に、裁判官の人事制度が正視されていないということである。裁判官の合理的人数に関する問題は、裁判官 が負担する仕事の量および内部独立の問題と関わるだけではなく、人民の裁判を受ける権利の保障とも深く関わっ ており、また弁護士、検察官の人数とも密接に関係しているので、正視すべき問題である。第二に、裁判官の人事 問題は、量だけでなく、質にも関係する問題であるということである。すなわち、現在行われている裁判官の筆記 試験︵司法特考︶にはどうしても限界があるので、口述試験によってこれを補うべきである。第三に、現在弁護 士、学者から裁判官を選任するルートは、司法官特考の至らざる点を補うことができるが、実施形式が定型化して おり、改善の必要があり、また同時に、司法院が自ら選任するという手続は、違憲のおそれがあるということであ る。第四に、裁判官の移動および昇進の制度であって、それは人民の裁判を受ける権利の保障を考慮しておらず、 事実審を過度に重視することで、優秀な裁判官の登用を妨げているだけでなく、裁判の質の向上にも益するところ 246
がない。第五に、政策の策定と推進の観点から、司法院内で司法行政に対して責任を負う官員はすべて裁判官が担 当するのではなく、政務をよりよく推進させるために、政務官を増やすべきである。 さて、本稿において台湾の裁判官の人事問題を論ずる前に、比較法の観点から、現在の台湾における裁判官の人 事制度の特徴と問題点について考えてみよう。 二 台湾における裁判官の人事制度の特徴と問題点−内部コントロールが強い 現在、台湾の司法体系における重要な議題は、裁判官の人事問題とかなり密接に関係しており、人事問題と表裏 一体の関係にあると言える。すなわち、裁判官の質は裁判の質に影響を与え、裁判の質は人民の司法に対する信頼 と関わっている。しかも、裁判官の質は、個人的要素以外に、制度設計ともかなり関係している。諸外国の制度と 比較して、台湾における裁判官の人事問題は、内部コントロールが強すぎることにあると言えよう。 e 英米法系と大陸法系における司法人事制度の主な違い1台湾における裁判官の人事の特徴の理由 世界の主要国の法体系は英米法系と大陸法系に分けられるが、司法制度も同様で、この二つの法体系に分けられ る。無論、英米法系に属するイギリス、アメリカの両国、そして、大陸法系に属するドイツ、フランス両国のよう に、同じ体系に属していても、司法制度の設計が異なるところも存在する。しかし、台湾の現行の裁判官の人事制 度が大陸法系に由来するものであってみれば、その二つの法体系の裁判官の人事制度の差異を比較することは、台 湾の裁判官の人事制度の特徴を理解する出発点となる。 247
︵1︶ イタリアの学者によると、英米法系と大陸法系の裁判官の特徴の違いは、専門職的と官僚的に分けられる。その 二つの法体系における裁判官の人事制度の差異は、以下に述べる五点により説明できる。 1、裁判官の選任手続 大陸法系と英米法系における裁判官の人事制度の最も大きな違いは、裁判官の選任方式である。大陸法系におい ︵2︶ ては、大学卒業後、試験を経ることなく裁判官になるために、初任裁判官は若年者が多い。これに対して、英米法 系においては、裁判官の任命は一定の実務経験を前提とし、ある職務において特別な経験を積んでいることも求め ︵3︶ られる。 2、裁判官の養成および訓練の過程 二大法系における裁判官の人事に関する第二番目の違いは、裁判官の養成方式である。大陸法系においては、初 ︵4︶ 任裁判官はほとんど実務経験がなく、実務経験は裁判官になってから訓練されることが一般的である。これに対し て、英米法系では、裁判官は実務経験のある者から選任する。ここで言う実務経験とは、必ずしも弁護士であるこ ︵5︶ とを要件としないが、裁判官の最初の養成訓練は、裁判官体系内部で行われことはない。 3、裁判官の昇進 大陸法系では、裁判官の階級の決定は組織的に行われ、そこに競争が見られるのが普通である。裁判官が昇進で きるか否かは、能力によるだけでなく年齢も考慮されなければならず、事実上、裁判官の年齢は最も重要な要素で あると考える。これに対して、英米法系においては、裁判官が昇進できるか否かは、そのような形式的な昇進ルー ︵6︶ トによるのではない。 4、裁判官の移動および事案審理の範囲 248
昇進と同じく、大陸法系においては、裁判官はすべての法律問題を処理することができると考えるので、特定の 職位について裁判官を任命するわけではない。それゆえ、職務上の移動は頻繁に行われ、移動も上級の裁判官が決 ︵7︶ 定するために、司法独立の維持が困難となりかねない。そして、特定の職位に対して裁判官を採用するのではない ため、裁判官の移動および昇進は常態として見られる。しかも、その権利は上位の裁判官に握られているため、司 ︵8︶ 法内部のコントロールが弱いのである。 5、司法の独立性の違い ︵9V 最後に、昇進および移動についてはほとんど司法行政部と上位の裁判官の手に握られているために、司法の独 ︵10︶ 立、とりわけ司法内部の独立が脆弱であり、上述した英米法系における裁判官制度の特徴が備わっていない。もと ︵n︶ より、英米法系においては、司法の外部および内部においても独立性が強い。 以上はイタリアの有名な学者が英米法系と大陸法系における裁判官制度の差異について説明したところである。 ︵12︶ その観察力は鋭く、問題点も的確に説明されており、傑作と言って差し支えない。この見方にしたがうならば、台 湾における裁判官の人事制度の特徴は、基本的には大陸法系国家の特徴を有すると言えよう。すなわち、多くの裁 判官は二十数歳で司法界に入り、職に就いている期間に移動、昇進することも普通に見られる。しかも、司法院内 において、政策決定にあずかる官員たちは、主として一定期間のみ司法行政に携る調院弁事の裁判官である。それ ゆえ、裁判官社会内部のコントロールが強く、大陸法系の国家と類似するわけである。 口 第二次世界大戦以降の西洋国家の変遷にみられる共通点ー内部コントロールの縮減 台湾における裁判官の人事制度は多くの大陸法系の国と類似しているが、第二次世界大戦後、 大陸法系の主な国 249
がそれぞれの理由により、裁判官制度を変革している。しかし、台湾の制度が当該変革についていけなかったた め、英米法系の特徴と異なるだけでなく、主な大陸法系国家の現行制度の特徴とも異なっている。正確に言えば、 現在、台湾における裁判官の人事制度は、第二次世界大戦後に大陸法系および英米法体系の国家が改革した制度の 特徴を有していない。改革に見られる三つの共通点を以下において説明する。 1、司法行政権の分離ー裁判官の人事と司法行政権はそれぞれ異なる機関が管掌する 第二次世界大戦後に、主な西洋国家の司法行政権は分離される方向をとった。一九五八年にフランスが司法委員 ︵13︶ 会を設立し︵各国の司法委員の機能および職権が全く同じとは限らない︶、司法人事に関する問題を処理するとしたの ︵14︶ が代表的である。大陸法系のドイツでは、連邦司法委員会を設置してはいないが、一部の法院およびすべての連邦 ︵15︶ 法院の人事が、常設または特設の委員会の諮問または同意によって決定される。 2、司法人事が完全に裁判官の自治により管掌されるわけではない 簡単に言えば、英米法系において大陸法系の司法行政制度と異なるところは、裁判官の任命および昇進が完全に 裁判官の自治によって管掌されていないことである。アメリカにおける裁判官の任命は、連邦、州法院とも裁判官 ︵16︶ の自己決定によるのではなく、しかも長い歴史を有する。イギリスにおける最近の司法改革において、8箆 ○鼠琴色雲は依然として一定の人事権を握っており、また新設された裁判官任命委員会の中においても、裁判官で ︵17V はない委員が半数以上を占めているのはよく知られているところである。ヨッローパ大陸の司法委員会では、フラ ︵18︶ ンスを例とすると、裁判官以外の者が参加するのが原則とされている。ドイツは批判の声はあるものの、終審法院 ︵19︶ 裁判官の任命は外部の力の介入を必要とするとしている。 3、裁判官の選任方式が単一ではない 250
イギリス、アメリカにおける裁判官の選任方式はもちろん、伝統的なヨッローパ大陸においても、裁判官の選任 方式は多様化してきた。フランスを例としてみると、二〇〇二年の普通裁判官︵行政法院の裁判官は含まれない︶ ︵20︶ は、約七二%が司法官学校︵国乞ζ、台湾の司法訓練所と類似する︶から選出されたが、フランスでは、司法官学校で ︵21︶ 訓練を受けるルートが三つあるので、裁判官の任命は多様化していると言えよう。 日 台湾における司法改革の方向ー内部コントロールの縮減 以上に述べた諸外国の法制度の共通点は、我々に一つの観点を提供してくれる。すなわち、英米法系のアメリ カ、イギリス両国にしても、大陸法体系のフランス、ドイツ両国にしても、西洋の主な国家における人事制度と比 べると、台湾における裁判官制度の特徴は内部のコントロールが強すぎることある。 まず、裁判官の選任手続から見ると、台湾の裁判官はほぼ裁判官試験︵司法特考︶により選出され、さらに、多 くの裁判官は若い頃に短期間、司法訓練所で訓練を受けてから司法界に入る。そのために、ほかの職業と異なる文 化が形成され、ほかの法律業界の者とも違う。次に、裁判官による自治という大前提の下で、裁判官の昇進、移動 および懲罰等の基準を設けるにあたっては、外部の者がほとんど参加することはない。それゆえ、下された決定は 裁判官自身の状況を最も優先的に考慮したものとなり、昇進等の人事問題を管掌する司法院人事審議委員会におい ︵22︶ ても、過半数の委員が上位の裁判官である。最後に、司法院内で司法行政の責任を負う職務もほぼ裁判官自身が兼 任する。移動、昇進について責任を負う以外に、主要な司法事務の制定および執行も担当する。そのような状況の 下で、伝統的なしがらみを抜け出し、裁判官内部と異なる主張をするのは困難であろう。 ここで強調したいのは、一九九〇︵民国八○︶年代の半ばごろ以降に一連の司法改革が行われたことである。例 251
︵23︶ えば司法院内における裁判官人事委員会の設置、各法院における裁判官会議の設置、弁護士、学者の中からの裁判 ︵24︶ ︵25︶ 官の選任、庭長の昇進は投票によるといった改革は、ある程度は内部のコントロールを縮減してきたが、裁判官以 外の者から見れば不十分である。 252 三 裁判官の合理的な人数に関する問題の重要性が正視されていない 現行裁判官の人事に関する問題について、裁判官の事件処理の件数による負担、または人民訴権の保障の観点か らみても、最も検討されるべき問題は裁判官の人数である。すなわち、一体どのくらいの数の裁判官であれば内部 の需要に応えられると同時に、人民訴権の保障をも満足させることができるのか。しかし、残念なことに、人々は この問題の重要性を知りながらも、検討する者はほとんどいない。事件の累積、すなわち裁判官の事件処理の過重 負担の問題は、司法人員の数と極めて密接に関係している。事件が累積していく状況が見られるときには、事件が 多すぎるか、事件を処理する人員が不足しているかであろう。後者である場合、どのくらいの人員確保が合理的で あるのか。それには、司法従事者︵裁判官、検察官、弁護士、助手︶の合理的な数を確認し、それに合わせて対応策 ︵26︶ を考えるべきであろう。 ⑨ 裁判官の合理的人数の確定と訴訟制度の設計は密接な関係がある しかし、裁判官の合理的人数をどのように決定するのか、裁判官だけでなく、その他の法律業界︵弁護士、検察 官、書記官等︶の者の任務および職能について、それぞれ判断しなければならない。この問題に関しては、アメリ
カのイェール大学のぢ9霊語幕ぼ教授が二十年余り前の論文で示した見解が参考になると考えられる。 冨轟幕5教授がその論文を書いたきっかけは、他の二名の教授が論文で主張した見解に対して反論することに あった。二名の教授はそれぞれの論文でアメリカとドイツの司法制度について比較研究を行った。その中で最も重 要な論点の一つは、アメリカ法とドイツ法では、人口に対する裁判官数を比較すると、ドイツのほうがかなり多 ︵27︶ く、それゆえアメリカはドイツに倣って裁判官の数を増やすべきであると主張していることである。これに対し て、霊躍訂ぎ教授はその二名はアメリカとドイツの訴訟制度の根本的な違いを見落としている主張した。すなわ ち、ドイツで裁判官の数が多い理由は、職権調査主義が採用されていて、裁判官が証拠調べの仕事を担っている が、しかし、アメリカでは、当事者進行主義を採用しているために、原則として証拠調べは当事者、つまり検察官 ︵28︶ と弁護人がするので、ドイツのように数多くの裁判官が必要とされないとする。 霊轟幕3教授は、一体どのくらいの数の裁判官が合理的であるのか、訴訟制度のあり方によって決まるのであっ て、特定の訴訟制度が各司法従事者にどのように仕事を分配するかによると主張する。したがって、裁判官の合理 的人数の決定は、単なる裁判官の内部問題ではない。 口 裁判官の合理的な数はなぜ司法院だけで決められないのか1三つの要因 以上に述べたように、裁判官の合理的人数を検討するに当たり、訴訟制度の設計だけでなく、以下に述べる三つ の要因を考えなければならない。 1、裁判官が全司法従事者中に占める割合 冨躍幕ぎ教授の主張が正しいとすれば、裁判官の合理的人数はどれくらいであろうか。少なくとも訴訟制度上 253
における裁判官、検察官、弁護士等の仕事の分配問題があり、それらの者の人数と密接に関わっているので、司法 ︵29︶ 院が単独で裁判官の数を決めてはならない。また、検察事務官、司法事務官、裁判官助手等の業務の決定および配 ︵30V 置問題も、司法行政機関が単独で決定するのはよくない。 2、裁判官の細分化後の割合 裁判官の合理的人数と深く関わっているもう一つの問題は、裁判官は細分化されるべきかどうかという問題であ ︵3 1︶ る。比較法的にみると、たとえばイギリス、日本のように主要国で裁判官を細分化しているものは少なくない。そ れゆえ、異なるルートにより選任された裁判官の割合が問題となる。台湾においては、裁判官の種類は区別されて いないが、裁判官の選任方法は一種類だけではない。つまり、裁判官試験以外に、弁護士、学者から選任すること もできる。この二つのルートから選任される裁判官の割合についても、慎重に考える必要がある。 3、法院の審級ごとの裁判官数の合理性 裁判官団から見ても、上位と下位の審級の裁判官の比率が妥当であるかどうかは、上級審の訴訟制度構造と関係 している。どのような制度設計を採用するかは当事者の上訴制限に影響してくるので、上、下級審の裁判官の配置 問題を司法院が単独で決定するのはよくない。 254 日 小括 裁判官の人数問題は各界の叡智を結集して検討すべきである 以上の分析から、裁判官の合理的人数の問題は、単なる裁判官の補填の問題であるだけでなく、法律従事者全体 の人員分配と運用の問題でもあると言える。したがって、人民訴権の保障の観点から、司法院が自ら決めてはいけ ないのである。しかし、裁判官の人数が不足していても、より優秀な裁判官を選出できるならば、裁判官が負担す
る事件の量的問題も緩和されるであろう。 いて検討しよう。 以下においては、現行の裁判官選任手続がどのように改善されるかにつ 四 裁判官試験︵司法特考︶の筆記試験の不十分な点補うために、口述試験をより適切に行うべきで ある 基本的には、どの選任制度であっても、裁判官に最も相応しい、資格のある人材を選出するという目的は同じで ある。つまり、その目的は、優秀な人材が裁判官になることは、人民に公正的な審判を受ける機会を提供し、裁判 の質を保障することにつながる。なぜなら、信頼できる裁判の質を保証することができれば、司法全体の信頼を得 ることができるからである。人民の信頼が得られてはじめて、司法の独立を確保できるのである。優秀な人材が裁 判官になる前提としては、優れた裁判官侯補者を評価する制度が必要である。しかし現在、裁判官の選任制度はど のように調整して最も相応しい人材を選出するのか、これは難しい問題である。 O 現行の筆記試験により優秀な裁判官を選出することには限界がある 現行の試験制度に優れた点があるのは言うまでもない。合格者の家庭背景からみると、初任裁判官の中には貧し ︵3 2︶ い者もいるし、裕福な家庭の出身であっても、法律知識が一定の程度に達していなければ、裁判官という職位には 無縁である。したがって、現段階では、筆記試験により裁判官を選出する方式は、競争上の公平性が維持できる ︵33︶ し、その存在価値を有する。しかし、人民の訴権の保障、または完壁な制度構築を追及しようとするならば、当面 の裁判官試験はより改善すべきである。 255
この問題に対して、アメリカの著名な憲法学者甲≦ぎ9。日9霧ξの行った裁判官の各種選任制度の比較研究 は参考になる。彼は、どの選任制度でも、裁判官侯補者の評価基準は三つであると主張した。第一に、侯補者の学 識、経験能力について判断する。第二に、候補者の司法気質︵甘身一巴鼠ヨ冨轟日①邑について判断する。第三に、 ︵34︶ 侯補者の政治意識について認定を行うことを求める。制度によって、いずれに重点に置くかは異なるかもしれな い。また、評価のポイントも、司法の公正に意義を求めるか、侯補者の権利を重視するかといったことと深く関 わっている。当然、ここで言う三つの判断基準は大まかなものであり、他の基準を設けることもできる。 ︵35︶ 伝統的な選抜試験制度の下で、試験機関が統一されているか否かという問題は別として、評価の責任を負う機関 は主動的な地位にあり、適任の裁判官を選出できるかが肝心である。したがって、筆記制度の下で、出題または問 題を変えることの重要性は言うまでもない。題目自体に一定の範囲と問題の深さ以外に、相当の鑑別力も必要とさ れる。さらに、採点委員にも相当な学識能力、公正な態度が求められるだけでなく、一定の寛容さも必要である。 そうでなければ、優れた学識を有する裁判官を選任することはできない。しかし、法律学の学説が百花糠乱たる様 相の現在、どの題目が相応しい題目とされ、各界に受け入れてもらえるかを見極めることは困難である。それゆ え、現行の考試院が裁判官試験︵司法特考︶、弁護士試験︵律師高考︶についての改革のポイントは出題の方法およ ︵36︶ び採点方式であるとするのは正しい方向であり、これを支持し、期待すべきである。 しかし、筆記試験がいくら改革されても、受験者は受動的な地位にあるために、その特徴が他人とどのように異 なるのか、どのような特質を有するのか、裁判官になる性格を有するのかといったことは、筆記試験により明らか にできるとは限らない。しかし、裁判官の特徴および性格は、人民が公平な審判機会が得られるか否かに深く影響 している。したがって、適切な裁判官を選出するために、その他の適切な制度が導入されるべきである。当面口述 256
試験を適切に改革すれば、不足部分を補うことができるであろう。 口 現行の裁判官試験の口述試験制度の改善方向 もし、裁判官の各種の選任方式が、受験者に対して上述した三つの評価基準を満たしているかを判断する目的で あるとすれば、筆記試験の方式により裁判官を選任するのには限界がある。したがって、試験により裁判官を選任 する多くの国では、筆記試験以外に、口述試験も加えられている。適切に運用できれば、筆記試験に不足している 部分を口述試験により補うことができる。しかし、残念なことに、台湾の裁判官試験の口述制度は、まだ理想状態 に達してはいない。とりわけ、厳しい競争試験であることから、多くの受験者は筆記試験の合格点に非常に近づい ていても口述試験に参加できない。口述試験がよりよく利用されていないことは残念である。 ︵37︶ 現行の口述試験制度について見ると、合格予定数の一・一倍くらいの受験者が口述試験に参加している。事実上 は選別しているわけであるが、口述試験を利用して筆記試験の不十分な点を補うならば、量と質に対して手をつけ るべきである。現行の口述試験で改善すべきところを、以下の二点について分析する。 1、量的にみれば、合格予定者の二∼三倍の人数を口述試験に参加させるべきである 筆記試験制度は、優れた法律学識を有する者を裁判官に選任すること、または受験者に裁判官になる要件に達し ているかを評価することを目的としているが、それが不十分であるならば、口述試験をよりよく利用することで、 筆記試験の不足を補うことができるはずである。これに関する問題は多くあり、すべてを検討することは不可能で あるので、本論文では原則的なことを提言する。 簡単に言えば、現行の試験制度では、一点差で最低合格点に満たない者が多数いる。このような受験者に口述試 257
験に参加させるべきであると考える。上限を設けるならば、採用予定数の二∼三倍の受験者を口述試験に参加さ せ、それにより実質的な選別を行うべきである。 2、質的にみれば、口述試験はより慎重に行うべきである 第一に、最も基本的なことは、口述試験の公平性と公正性の問題である。例えば、各受験者は同じ口述試験の委 員により質問されるのか、また、口述試験の委員が同じであっても、委員は同じ質問をしなければならないのか。 さらにまた、口述試験の委員はどのような場合に回避されなければならないのか。受験者に教えた経歴があれば、 回避されなければならないのか、またはかつての指導教授であれば、回避されるべきであるのか、といった問題は 複雑である。 第二に、口述試験の委員の選任および構成方式が合理的であるかという問題である。簡単に言えば、口述試験の 委員はどのような資格を有する必要があるのか、またどのように構成すればいいのかといった問題である。委員の 質と量が口述試験の結果に影響する以上、その構成は重要な問題である。これは少なくとも二つの問題に関連して いる。一つは実務界と教育界の委員の配分問題である。第二は専門科目の配分問題である。この二つの問題につい ては、法律実務と学術界とではそれぞれ重点を置くところが異なる。法律学が細分化され、様々な学説が並存する 今日、委員の構成が不合理になると、口述試験に影響するのである。 第三に、口述試験の時問と内容は合理的であるのか。口述試験において、質問問題は裁判官になろうとする者の 法学知識を試す以外に、質問問題がそれにふさわしいかどうかについても考慮しなければならない。本論文では、 この点は現行の口述試験制度において最も検討すべき問題であると考える。現行の口述試験は範囲を設けておら ず、しかも受験者ごとに異なる問題が質問される。口述試験の目的が、裁判官になろうとする者の専門能力をより 258
︵38︶ 確認することにあるならば、口述試験の問題がまったく違うのは、公平性を欠くであろう。 3、フランスとイタリアの制度 最後に、我が国の制度のあり方を考える上で、外国の制度を参考にすることが必要であろう。ヨ!ロッパの主要 国︵イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、イタリア︶の裁判官選任制度をみると、フランスとイタリアのそれが 我が国と最も似ている。この両国の裁判官の主な選任方式は、第一段階で筆記試験、第二段階で口述試験を行う。 ︵39︶ 筆者は別のところでこの五か国の裁判官口述試験について紹介したことがあるのでそれを参考にされたい。
日小括
現行の裁判官試験︵司法特考︶の口述試験制度が適切に設計されれば、筆記試験の不足を補うことができるはず である。しかし残念なことに、実務からみると、理想状態になるまでにはまた時問がかかりそうである。しかし、 現在、裁判官の選任ルートはもう一つある。つまり、弁護士、学者から裁判官を選任する方式である。それは適切 に運用できれば、優秀な人材を裁判官に登用することもでき、裁判の質も高くなるはずである。 五 弁護士、学者から裁判官を選任する方式をよりよく利用し、裁判官構成の多元化を促進する 考試院の行う国家試験により裁判官を選任する方式が台湾の伝統である。しかし、数年前から、有識者は司法裁 判の質を高めるために、実務経験のある弁護士から裁判官を選任しようとした。この考えは、一九八九年に制定さ れた司法人員人事条例により実現された。すでに述べたように、比較法的にみると、大陸法系の国家も類似する動 259︵40︶ きがあった。例えば、上述したフランスである。それ以外に、裁判官の選任制度を徹底的に改革するために、すべ ての裁判官の採用を弁護士、検察官、学者の中から行うと公布したことがあるが、司法院から提出された裁判官草 ︵覗︶ 案の中には、試験による選任方式が依然として残されている。このような動きからみると、改革は実現できそうに ない。 しかし、司法院から提出された法院組織法改正法案、および改正後の司法人事条例の規定によれば、裁判官の選 任制度の多元化が維持されただけでなく、以前より広範になった。例えば、高等法院の裁判官は弁護士から選抜す る︵司法人員人事条例第一一条︶。また、司法院が公布した﹁司法院が弁護士、教授、准教授、助理教授、講師を選 抜し、裁判官に移動させる方法﹂により、弁護士、学者等から裁判官に移動する機会が増加する。同法の第三条に おいて、申請により、弁護士からの選任方式が二つまで増えた。つまり、推薦と選抜である。したがって、裁判官 選任の多元化は必ずや継続することができると思われる。しかし、制度的に改正されはしたが、予想通りの効果が ︵42︶ 生じていない。近年、弁護士、学者から裁判官に移動した数も限られている。 e 弁護士、学者から裁判官を選任する手続の機能の明確化 弁護士、学者から裁判官を選任する効果が予想通りに行かない現状を改善するには、当該選任手続から手をつけ るべきである。当該方式により裁判官を選任するに当たって、積極的な申請、または推薦と選抜の方式は、ともに 伝統的な選任手続の不足を補う目的である。当該方式で採用される選任基準は、前述した裁判官試験︵司法特考︶ で採用されるものとは異なるものとすべきである。簡単に言えば、当該手続により選任される裁判官は、単なる裁 判官の職位を填補するだけでなく、現行裁判官の組織で不足している特定の人材を補うことに目的がある。例え 260
ば、伝統的な裁判官試験制度の下で、誰かがある科目︵民法︶の天才であるかもしれず、民法で八○点を取ったと しても、その他の科目が平均点数の基準に満たない場合は、採用されるはずがない。それゆえ、弁護士、学者から 裁判官を選任する目的は、このようなことを回避することが目的である。 口 採用人数を固定して、好循環を促す 現在、弁護士、学者から裁判官を選任することが予想通りに行かないもう一つの理由としては、採用数が定めら れていない、限られているとさえ言えることにある。採用数が固定されていない、または限られていると、優秀な 弁護士が選抜に参加する意欲が薄れ、悪循環に陥る。したがって、前もって採用数を公告し、優秀な弁護士が自ら 応募するようにさせ、好循環を促す。筆者は、経験豊かな弁護士が裁判官になることにより、現行の裁判官団に一 定の影響を与えることができると考える。 日 司法院が自ら裁判官を選任することは違憲のおそれがある 司法院が自ら裁判官を選任することに違憲のおそれがある理由として、以下の三点について論じよう。 第一に、弁護士、学者から裁判官を選任する目的は、裁判官の構成を多様化させ、裁判の質を高めることにあ る。しかし、もし司法院が自ら弁護士からの裁判官選抜を担当すると、とりわけ、上位の裁判官がその任務を負う ことになれば、現行の司法界の基準を採ることが避けられない。そのようにして選出された裁判官は、今までの司 法界にいる者と類似するようになり、多様な裁判官の構成には有益ではない。第二に、司法院または一般法院、裁 判官等は弁護士および学者との間に付き合いがあるのは避けられない。このような付き合いの中で、裁判官に転任 261
しようとする弁護士、学者は特定の裁判官または司法行政人員との間に争いが生ずることも避けられない。第三 に、最も重要と思われることは、制度の設計は文言上それなりのものであっても、選抜は試験と本当に異なるのか ということである。選抜という名目で、司法院が考試院に代わって、憲法第八三条、第八六条の権限を有するの か、疑わしい。したがって、司法院が自ら裁判官を選任することは違憲のおそれがある。 262
四小括
現行の二種類の裁判官の選任方式が適切に調整できれば、より相応しい人材を選出でき、人民に司法に対する信 任感を与えることもできる。しかし、裁判官の選任方式が改正される前に、現行の裁判官の移動および昇進に関す る方式を適切に調整すれば、ある程度人民訴権の保障を強化することができ、人民の裁判官に対する信頼を高める こともできる。現行の裁判官の移動制度は、人民の公平で迅速な裁判を受ける権利をまったく考慮していないと思 われる。 六 裁判官の移動および昇進は人民の訴権の保障の実現に関係する 人民の訴権を保障するという点からみると、裁判官の移動および昇進は単なる裁判官の内部事情だけでなく、人 民が公平で迅速に審判を受ける権利とも深く関わっている。それゆえ、人民の司法に対する信頼を強化させようと するならば、裁判官の移動および昇進の問題を検討しなければならない。しかし残念なことに、裁判官の移動によ り人民が公平で迅速な審判を受けることについて生じうる問題がまだ重視されていない。裁判官の昇進制度に関しては、現行の制度設計は裁判の質を高めることについて配慮しているが、事実審を重視し、法律審を見落とす傾向 がある。最も重要なことは、昇進に関しては、年齢と資格の要素を過剰に重視し、競争によって裁判の質を高める ことに障害を生じているので、改善する必要がある。 ⑭ 裁判官の移動と人民の公平で迅速な審判を受ける権利 前述した通り、大陸法系における伝統的な制度の下で、裁判官は特定の欠員により職に就くのではない。そのた め、裁判官がその生涯において頻繁に移動するのは普通である。台湾では、司法界はこのような職務上の恒例の移 動は当然のことと考え、裁判官の職務移動により人民が公平で迅速な審判を受ける権利を侵害され、それにより悪 影響が生じることを見落としている。実際、事件の審理が延長され、または裁判官の移動により裁判の質に影響が 生じることからみても、現行の裁判官移動制度が、一部の事件当事者に不利な影響を与えているのは事実である。 1、移動と事件審理の延長 裁判官、検察官の恒例の移動、離職および定年等の要因により、事件の審理が延長させられることは不可避であ る。事件の処理が長びけば、当事者は適切に権利の保護が受けられないことになる。訴訟手続に問題があるだけで なく、司法人員の職務移動等の事情による延長は最も重要な要因である。大まかに言えば、毎年、新しく職に就く 裁判官、検察官の数は一五〇人を超える。それに、移動、定年、転職等の裁判官の数は一五〇近くに上る。つま り、毎年約三〇〇人の職位が移動していることになる。それに、移動の時に一人当たり七〇件の事件に結末をつけ ていない。このように計算すると、毎年の職務移動により影響を受ける事件の数は約二〇、○○○件に上る。一つ の事件が一・五人の当事者に影響するとすれば︵刑事訴訟の原告である検察官は計算に入れていない︶、司法官の職務 263
移動により影響される当事者は三〇、○○○人近くになる。 実際、筆者の統計によると、過去三年間の司法院における人事異動は、二〇〇五年に四〇二人、二〇〇六年に ︵43︶ 三二四人、二〇〇七年に四六〇人であり、過去三年間の移動の平均数は四〇〇人ほどである。現在、裁判官の総数 ︵44︶ が一、七〇〇人ほどであり、四〇〇人の移動はその四分の一にあたるので、その影響は大きいはずである。した がって、司法人員の移動が事件審理にどのような影響を及ぼしているかについて一層の検討が必要になる。さら ︵45︶ に、移動による事件の累積問題は、司法行政部門が裁判官に下級審の職に就くよう推進したためであった。現行の 移動制度は全面的に検討されるべきである。 2、移動と各法院の裁判の質が一致していない 裁判官の移動が裁判の質に影響する原因は、現行制度の下で、各法院の中で上位と下位︵侯補、試署︶の裁判官 の割合が異なるということにある。例えば、直轄市法院︵高雄地方法院を例とする︶の裁判官の移動が頻繁であり、 しかも上位の裁判官が外部に移動し、下位の裁判官が入ってくるので、高雄地方法院に勤務する裁判官の割合は他 ︵46︶ の法院より低い。このような状況の下で、高雄地方法院で訴訟を起こす当事者が受ける裁判の質は台北のそれと同 様であるとは言えないであろう。それゆえ、裁判官の恒例の移動により各法院の裁判官構成に違いが生じ、裁判の 質の不一致までもたらしている。司法行政部門は裁判官の移動問題について、訴訟当事者の立場に立って配慮しな ければならない。 また、移動により各法院の裁判官の構成が異なる結果になれば、構成が不合理な法院の裁判官に対しても、内部 独立の権利の享有を侵害する行為となる。言い換えれば、構成が不合理な法院に勤務している裁判官にとって、下 位の裁判官に対する指導貢任が不必要的な負担となる。一方、当該法院に勤務している下位の裁判官にとっては、 264
上位の裁判官の数がそれほど多くないために、十分に教えを受けることができず、自ら模索しなければならない。 このような構成が不合理な法院では、裁判官は上位か下位に関係なく、多くの仕事量を負担しなければならない。 したがって、司法院は各法院の裁判官の合理的な構成を裁判官の移動の最も基本的な条件としなければならない。 ︵47︶ そうでなければ、人民が各法院の裁判の質に疑問を持つことは避けられない。 口 裁判官の昇進と裁判の質 移動の問題に比べて、裁判の質により大きな影響を与えるのは裁判官の昇進制度であると考えられる。昇進制度 は裁判官の能力について判断するものであり、昇進の決定について十分に納得いく理由がなければ、裁判官全体の 士気に影響するのは当然なことである。最も重要なのは、司法行政部門で決定した昇進のルート、つまり各職位間 の高低と重要性は、各裁判官の努力の方向性に影響し、しかも裁判の質および人民の司法に対する信頼に影響を与 える。 1、年齢と資格の要件を下げるべきである︵昇進に弾力性が必要である︶ ︵48︶ 台湾においては、年齢と資格の要件が裁判官の昇進問題に多大な影響を与えている。これはもっと早い時期に検 ︵弱︶ 討すべき課題であろう。年齢および資格の要素が裁判官の昇進に重要な影響を与えた要因としては、司法官訓練所 ︵50︶ ︵51︶ の設置と関係している。司法官訓練所の設置が憲法に従っているか否かの問題は別として、現状では、人民の司法 に対する信頼を促進させるには、年齢および資格の要素が裁判官の昇進に与える影響を減ずべきである。 まず、年齢および資格制度の実質は、上位を優先させることになる。このような制度は年功序列を強調してい る。逆に言うと、経歴が浅いが優秀な裁判官は、なかなか昇進できない。それゆえ、過ちを犯さなければ、昇進す 265
る日が来る、しかも、上位の者が優先するはずという心理が働く。このような制度設計は裁判官の間に良心的な競 争を促すことができず、裁判の質を高めることもできない。すなわち、経歴が裁判官の昇進の最も重要な判断基準 であれば、積極的に努力する裁判官が減少するのは当然なことであり、旧来の方法と命令にしたがえば、昇進する ︵52︶ ︵53︶ はずである。無論、このような状況は台湾に限らず、イタリア、インドにも類似する事例がある。しかし、一部の ︵5 4︶ 国においては、年次が若くて優秀な裁判官もいるはずである。例えば、アメリカの連邦法院等がそれである。 2、昇進制度がピラミッド型法院を形成する 現行裁判官の昇進制度についてもう一つ重要な問題は、前述した経歴の要素以外に、各種の制度設計にあると言 ︵55︶ えよう。例えば、一定の条件の下で、事実審裁判官の地位は最高裁裁判官のそれと同じであり、上級審の裁判官を 下級審︵一審または二審︶に戻して職務をとるよう促すことができる。本論文は、この問題について完全には同意 できない。裁判全体の質の維持、またはピラミッド型法院体系の構築という点からみても、制度の設計は優秀な裁 判官を最高裁または最高行政法院に昇進する目標を立てられるようにしてほしい。そうでなければ、人民が司法全 体の裁判の質を信頼するのは不可能である。 まず、アメリカの法学者覆。冨巳勺・誓段が、事実審の裁判官が有すべき能力は法律審の裁判官のそれと完全に ︵56︶ 同様ではないと前から指摘していた。二者の違いについては、法律審の本質からみると、法律審が適任の裁判官に 求める要件は、事実審のそれとはかなり異なる。簡単に言えば、法律審の裁判官も事件の審理を原則とするが、法 律審の審理は判例になる可能性がある。事件に対する見解が、最後に実質上の抽象的な規範になる。すなわち、法 律審の裁判官は個別事件を救済するのに重要な役割を果たす以外に、最も重要な機能としては、法創造力を具備 ︵57V する。筆者がここで強調したいのは、裁判官による法創造の影響する範囲は、立法者が法律を制定するよりも重大 266
な貢任を有するということである。最優秀の裁判官が判例、決議の制定を担当するのでなければ、その結果は憂慮 されるべきであろう。多くの人々に影響する終審法院の判例と決議を、最優秀な裁判官に担当させるべきである。 3、上級審の裁判官に重要な事案審理に参加させることにより、事実審の裁判の質を強化する 司法行政部門は事実審裁判官の経験不足を懸念する。とりわけ、第一審裁判官の経験不足により裁判の質に影響 ︵58︶ を与える問題は、制度設計により改善できる。例えば、侯補および試署裁判官の期間を延長させる。さらにまた、 海外で行われている共同制度を導入し、特別な事案において、上級審および下級審の裁判官が共同で審判を担当 ︵59︶ する、つまり、重要かつ複雑な事案を審理するに当たって、一名の上級審裁判官と二名の原審裁判官が共同で審理 することである。経験不足により裁判の質に不利な影響を与えることを避けられるし、豊かな審判経験を下級審の 裁判官に伝え授けると同時に、上級審裁判官の重要性も強調できる。優秀な裁判官に上級審、特に法律審法院を目 指す志を持たせることになる。 日 司法院の人事審議委員会が人事異動および昇進について設計しなおす 上述した裁判官の移動および昇進に関する問題を解決するために、人事を担当する部門が信頼され、かつ積極的 に仕事をこなせるか否かは重要なポイントである。現在、裁判官の人事異動および昇進を担当する司法院人事審議 ︵60︶ 委員会の機能と組織の構造からみると、不十分であるのは明らかである。現在、司法院に設けられている人事審議 委員会は、構成、職務権限および機能からみても、さらなる検討が待たされる。本論文では、司法院の院長が人事 審議委員会のメンバーとなるべきではないと考える。人事審議委員会の地位は司法院の下に置かれる独立した階級 に引き上げるべきである。委員会の構成も、裁判官ではない委員が半数以上︵少なくとも相当な数︶を占めるべき 267
︵6 1︶ である。機能と職務権限に関しても、より詳細な規定を設けるべきである。 ︵6 2︶ においてさらなる検討を行う予定である。 上述した問題は複雑であるため、今後 268
四小括
以上の分析から、現行裁判官の移動および昇進制度を適切に運用できれば、多くの問題を縮減することもでき る。しかし、上述したように、裁判官の移動および昇進に関する問題の検討は、現行の政策制定を担当する司法行 政官と密接に関係している。以下において、司法院の司法行政官について論述する。 七 政策の制定と実行の点から、司法行政の仕事を裁判官が主導すべきではない 今まで論じてきたように、裁判官の合理的人数、選任方式、および移動、昇進に関する諸問題は、司法行政官と 一定の関係を有するので、さらなる検討が必要とされる。実際に、以上の問題だけでなく、司法行政官の資格およ び任命に関する問題も検討する価値を有する。司法院院長がその政策を推進する意欲があれば、司法院内部の人事 ︵例えば、司法院副院長、秘書長、副秘書長および各庁の庁長︶は、司法院院長が政策を実行するか否かの問題に対し て、重要な役割を果たす。逆に、司法院院長がある事務にそれほど熟知していない、または躊躇している場合に、 司法院の官員は重要な役割を果たすことになる。このように、官員の助言が司法院院長の熟知していない分野の政 策に相当影響する。したがって、司法院の司法行政官の出自と任命方式について、より検討しなければならない。 現在の司法院官員の構成は、秘書長、副秘書長、および五つの業務庁を中心としている。つまり、民事庁、刑事東洋法学第54巻第1号(2010年7月) 庁、行政訴訟・懲戒庁、行政庁、および少年・家庭紛争庁である。特別な例外を除いて、秘書長、副秘書長には現 任裁判官が転任してくる。同様に、上述した五つの庁において、常任の事務員が大きな割合を占めているが︵各庁 は約一〇名位︶、実権は裁判官からの転任官である庁長または副庁長が握っている。それに、各庁に相当数︵約二∼ 四名︶の調院弁事の裁判官がいる。このような構成で、ある種の重要な議題、または重要な政策の制定にあたっ て、全面的に他の団体、まして人民の立場から考えることは困難である。前述したように、現行の裁判官の移動制 度は人民訴権の保障という点を見落としており、そして、司法事務官の職掌を拡大させることで検察部門との間に 生じた争いはその例である。二〇〇八年に司法院が立法委員を通して刑事訴訟法の改正を打ち出し、簡易裁判に適 ︵63︶ 用する三つの条文草案を示したが、それは弁護士業界で異論が起こる可能性がある。 議題、政策等の事情から考えると、司法院の官員を裁判官が担当するのは相応しくない。現在、司法院が処理す る多くの事務、狭義ではない司法界の特技︵例えば法律扶助法︶、または裁判官自身と他の団体との間に生じる見解 ︵64︶ の相違︵例えば、刑事訴訟法︶について、完全に単一の系統からなる部門が担当するのは妥当ではない。筆者は司 法院は裁判官の立場で関連する問題を論ずることができないと主張するのではなく、重要な政策を制定する過程、 または重要な法律草案を推進する過程において、他の法律団体または一般の人々の声に耳を傾けることを望んでい る。しかし、現在の司法院官員の構成からみると、不十分な点が多々見られる。 八 結論 台湾法学界において、この十数年来司法改革は最も重要な課題となっている。各界から批判と検討の声が後を絶 269
たないのであるが、多くの人々の努力により、現行の司法制度の設計および運用が進歩したのも確かである。それ ゆえ、司法実務の現状について自明のことと考えないで、前向きに司法制度の設計および実務の運用に貢献すべき である。それも本論文の趣旨である。共通の意識がまだ形成されていない裁判官人事に関する問題を、現行の制度 の下で試みながら、可能性のある改革法案を考え、人民訴権を保障できる裁判官の人事制度を構築できることを望 んでいる。本論文では、台湾における裁判官の人事に関する問題は内部のコントロールが強すぎ、または裁判官に よる声を裁判官の内部に伝達するのは困難であると考える。このような特徴は大陸法系からの影響によるところが あるが、大陸法系の主要国ではフランスが改革を行った。台湾における問題も、さらなる検討が必要である。 訳者あとがき 二〇〇九年一一月七日、東洋大学法学会は日本滞在中の台湾国立台北大学副教授、林超駿氏を招いて法学講演会 を開催した。本稿は、その時の講演課題に関連して寄せられた原稿を翻訳したものである。林氏は、国立台湾大学 卒業後、ノースウエスト大学で法学博士の学位を取得し、現在、国立台北大学法律学院で憲法、英米法を担当して いる。近年、台湾の司法改革に関心を寄せ、いくつかの論文を発表している。本稿も、このような一連の作業の中 に位置づけられるものである。講演会では、時間の都合もあり、台湾の司法界の状況から論じられたが、ここでは 寄せられた原稿をそのままの形で翻訳することとした。 270 ︵1︶930轟巨①目ξ且℃餌鼠蹄℃①αΦ嵩。一陣㍉書㌔§ミ勲\ミ鷺勲﹄9§ミ轟ミしり§魯魚9ミ財§践b§8ミq8ふG 。︵N。・ωy
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) ) ) ) ) ) ) ) 』輿 讐9。 疑。 ミ,彗零■ 』9
ミ. 疑, 』9
犀事実上、部長が政治的に任命されるのであれば、 ルする者は上位の司法官ということになる。 14 13 12 11 10 司法行政部内の主な官員が上位の司法官であり、実際に内部をコントロー 政組織的発展趨勢−従審判独立與国家給付行政義務的緊張関係談起﹂ 五月︶。 19 18 17 16 15 』 輿 遼, アメリカの法学者勺○撃Rも同様な観点を主張している。詳細は覆o冨轟℃o弩9園もミ∼ミ晦湧↓ミ薄︵800 。︶を参照されたい。 旨○ぎ切Φ一一り鳶ミ9ミ醇ミ淋ミ醤肉ミ愚鱗冨9ミ腎ミ禽誉尋蔑ミ㎝O−凹︵NOOOy 学者たちは、司法委員会を設立することは西洋国家の司法行政制度の主流であるとことを理由とした。詳細は蘇永欽﹁司法行 法治斌教授記念論文集﹃法治與現代行政法学﹄︵二〇〇四年 団①一言愚ミさ尉Hし 。届二一〇−一一P 田漢矯>ぼ餌冨β竈ミミ帆&Nミ。8ωの︵一8。︶・ 林超駿﹁概論英国当前司法改革架構下之裁判官選任制度﹂月旦法学雑誌二壬二期 9巽巳Φ比磐α℃8①旨○嵩︾吻§ミミ尉一届&ω, ωΦ一一﹄§ミミ尉る’魯冨∵田N ︵二〇〇六年六月︶。 27124 23 22 21 20 』9讐㎝ω, 』舞簿㎝N 司法院組織法第二〇条第二項の規定。 司法院が公布した﹁法官会議設置弁法﹂の中に規定されている。 司法人員人事条例第一〇条の規定、および司法院は弁護士、教授、 准教授、助理教授、講師から裁判官を審査選出することに ついての審査弁法。 ︵25︶ 司法院が公布した﹁法院庭長、法官委員遊選要点﹂の中に規定されている。 ︵26︶ 本文においては、裁判官の人数を増やせば、事件の累積または迅速な審判等の問題を解決できるとは考えていない。筆者は裁 判官の人数増加により引き起こされる問題を当然理解している。例えば、裁判の質のコントロールと裁判結果の一致等の問題であ る。それゆえ、ここで主張したいのは、もし司法行政当局が裁判官の人数が不足していると考えているのであれば、まず一体どの くらいの数が合理的であるのかを確定すべきであるということである。そうでなければ、問題を完壁に解決できない。 ︵27︶一。冨ω8きαUおヨSミ物さ蹴§ぎし・ミ§塁瀞、寒鳴ミミ薦向§愚ミω9ミ江刈冒畠Φω.旨・o旨巴o 。●一〇︵一〇刈o 。︶。 ︵28︶匂・ぎ串審諺び①一p\ミ賢鑓肉ミ藷ミミ窒じo貸ミ嘗≧§−9§融誌嘗、叫寒ミ饗一。 。冒畠①亀2彗巴企①︵§。︶■ ︵29︶ 同様に、弁護士の合理的な人数は弁護士協会が決定するのではなく、検察官の合理的な人数も行政院または法務部が単独で決 めてはいけない。 ︵30︶ 例えば、もう一つの問題としては、現在、司法事務官、検察事務官の試験および訓練をなぜ別々にするのか、また、裁判官の 助手はなぜ各法院がそれぞれ募集するのか。 ︵3 1︶ イギリスの治安判事︵ζ諾酵蚕邑は一般の裁判官と違い、法律関係者でない者が担当し、その数は三万人以上にも上る。日 本での簡易法廷裁判官も、一般の裁判官ではない。 ︵32︶ 当然ながら、具体的なデータは実証研究により得られなければならない。 ︵33︶ とりわけ、国家が民主化され、社会が多元化すればするほど、特定の政治勢力、または特定の利益団体に容易に影響されるこ 272
東洋法学第54巻第1号(2010年7月) とのない裁判官の選任手続が重要な役割を有する。 ︵3 4︶国暑巳9①BΦ浮ωξ㌔婁ミぎ§§誉憩§諒勲\ミミミO§§§§﹄ミ§q§動蕊ミ焼§ミ。 。臼且い園①ミ。 。α噛お刈︵N・8︶麿 ︵35︶ 選考業務の専門性、中立性、および本位主義の回避のために、本稿では試験機関が統一されるべきではないと考える。 ︵36︶ 林光基﹁司法官及律師考試改進方向﹂︵二〇〇八年九月二七日、国立台北大学主催の法学教育改革座談会に提出された論文︶ 一八∼一九頁。 ︵37︶ つまり、採用予定数の一〇%増しの受験者が口述試験に参加する。 ︵38︶ 無論、すべての受験者が同一の内容で試験を受けることを求めるのも不可能である。 ︵39︶ 林超駿﹁初論我国現行法官選任程序中之口試制度﹂﹃論権利保護之理論與実践・曾華松大法官古稀祝壽論文集﹄︵二〇〇六年六 月︶を参照されたい。フランスとイタリアについての詳細は、以下を参照されたい。閃畠段騨お声S書響ミミ§鳴ミ目ミ黛讐鑓” 肉ミミミご斧Oミ鳴ミ§織﹄8ミミ&ミ電黛ミ鳴ミ隷鳶黛、書蕊ミら蔚倦黒肉ミミ魯き菊国o圏肩ζ男θ評○田ωωδ蜜[国<>匹>目○乞彊u O弗田勾・こ8婁>ぎ評・旨・目・器2曽召℃国ぎω舅>萄幻>属鼻Ω国召>葦H↓>長日爵Z胃臣皆>呂ω>冒ω醤乞参ホ︵○富Φ薯Φ9 司a98Φ倉N。8︶O房①唇①U萄aΦ誉ρぞらミ焼§鳴ミ㌔飛魯鞄§ミ窪ミ§誉斧Gミ§§織bミ嘗ミ駄、ミ鷺吻§織等§らミミω き∼融貧黛寄。召昌蕎胃矯雰・田ωωHO暴い穿>ε>口OZ︾召9禺男O問冒∪爵ω夷U雰○。 。国・目○器2曽召勺国︾d。 。弟H>”雰彊O閃る男§Zざ H↓きざ↓臣Z.田田露彊uω夷uω℃≧三N8一ω①︵Ω冨8もΦU萄998①ρNO8︶ 46 45 44 43 42 41 40 ) ) ) ) ) ) ) フランスの裁判官の選抜方式は台湾より複雑である。甲お葬墨跨お−8を参照されたい。 裁判官法草案第五条。 察新毅﹁法官任用制度之変革−以法官法草案之評述為中心﹂司法週刊二三五期を参照されたい。 これは台湾総督府政府の官報に示された大まかな統計による裁判官の人事異動の数である。 司法院統計処による数字である。 法院組織法第二一条第二項、および法官遷調作業要点第一〇条等の規定である。 例えば、二〇〇八年七月二一日、司法院人事審議委員会は、司法官訓練所を卒業した裁判官のうち、 九名を台北地方裁判所 273
に、一八名を高雄地方裁判所に配属した。 ︵47︶ 無論、各法院の裁判官の構成にはそれほど差はないが、各法院で審理された大多数の事件の質もそれほど大きな差がないと保 証できるかどうかについては、検討が必要である。しかし、形式上、合理的な構成は我々の努力目標である。 ︵48︶ 法官遷調作業要点第五条第一項において定められている。 ︵49︶ 比較法の観点からみると、この種の裁判官の期別制度はまれである。 ︵50︶ 合憲性に関する検討は、李山明﹁司法官職前訓練制度之研究−以司法官特考録取人員訓練為中心﹂﹃国立台北教育大学文教法 律研究所修士論文﹄︵二〇〇八年六月︶を参照されたい。 ︵5 1︶ ヨーロッパのすべての主要国家に司法官訓練所が設置されているわけではなく、例えば、ドイツ、イタリア両国には置かれて いない。台湾の司法官訓練所と類似するフランスの国2ζにも異なるところがある。これについては、ここでは詳細に検討しない こととする。 ︵5 2︶ イタリアでは、台湾に似たような司法官訓練所は設置されていないが、裁判官の昇進には経歴が最も重要な判断基準とされ る。ζ蝉蔓rく○一〇磐ω①亘ミ魯9ミの乳象蹴ミき﹄鷺嘗﹄Q箋Nω箋竃8ミ&乳ミ導、ミ誌§肉跨ミ貴き>EO一旨ぼ閃冒8ωぼ弩>鴨9 冒99巴勺○名雲9試。巴勺R呂9身8>3巨α魯Φ毛巳αま9一8︵囚讐①ζ巴一88きα勺9震犀国5ωΦεα鴇08︶を参照されたい。 ︵認︶ インドでは、裁判官の経歴を重視したために、最高裁の裁判官の平均任期が制限されることになった。ψ型留毎ρ﹄ミミ 専§ぎ旨§ミ&卑\ミ牌ミ§§﹂ミ旨R賓魯鑛08ω窪巨・轟>O§B同呂話ωε身Nる詣甲認①︵﹃Φ穿亀○・一α睾旦ξ ①988︶を参照されたい。 ︵駈︶ 例えば、現在の最高法院の首席大法官因○げR諺が初めて任命されたとき、五一歳にも達していなかった。
り包尋聾
法院組織法第三四条。 匹o冨巳℃○ω幕鮮S欝肉蔑鴨\ミ9ミ誘︵一8㎝︶■ 言い換えれば、台湾の最高法院、または最高行政法院における判例および決議の作成過程はすでに事案の事実から離れてお 抽象的規範の創造である。 274︵58︶ 現在、試署および候補裁判官の期間は六年である。司法人事条例第一〇条第一項および第二項の規定による。 ︵59︶ イギリス、アメリカおよびイタリアには、上級審と下級審の裁判官が共同で事案を審理する訴訟制度設計が設けられている。 ︵60︶ 司法院はいまなお﹁人事部﹂の設置を維持し、人事異動の事前作業を担当している。 ︵61︶ フランスおよびイタリアに関する制度を中心に検討する。しかし、イギリスの司法任命委員会︵旨&こ巴︾薯o一旨日Φ具ω○OB− 巨隆8︶は、法律関係者でない委員が半数以上を占めるという制度設計を採用した。イギリスの制度設計に関する変革について は、林超駿前掲︵注17︶を参照されたい。 ︵6 2︶ 蘇永欽前掲︵注14︶における、関連事項の検討を参照されたい。 ︵6 3︶ 三か条の草案は以下の通りである。一六五条の二︵証拠の簡潔化を提示︶、三一〇条の一︵簡易裁判の拡大︶、三六六条の一 ︵第三審への上訴制限︶である。 ︵6 4︶ 学界には多様な立場があり、弁護士、検察官、裁判官の三者が特定刑事訴訟制度の設計について異なる考えを持つのは、よく あることである。 ーい20冨069層国立台北大学法律学院副教授I lごとう たけひで・法学部教授I Iご図ξ類①目東洋大学大学院法学研究科博士後期課程1 275