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東南アジア諸国国際家族法の現在《国際家族法研究会報告(第 37 回)》 利用統計を見る

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東南アジア諸国国際家族法の現在《国際家族法研究

会報告(第 37 回)》

著者

笠原 俊宏

著者別名

Kasahara Toshihiro

雑誌名

東洋法学

56

2

ページ

293-300

発行年

2013-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00004096/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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《 国際家族法研究会報告(第 37回)》

笠原   俊宏 一   前書き   研究会においては、すでに、東アジア諸国国際家族法立法 に 関 し、 韓 国、 中 華 民 国、 中 華 人 民 共 和 国、 北 朝 鮮、 マ カ オ、ベトナム、モンゴルの国際私法立法の諸規定が報告され (拙 稿「東 ア ジ ア 諸 国 国 際 家 族 法 の 現 在」 東 洋 法 学 五 四 巻 三 号 三 二 九 頁 以 下) 、 ま た、 そ の 後 の 研 究 会 に お い て、 モ ン ゴ ル 国 際家族法を補足するため、同国家族法典中の国際私法規定に つ い て 報 告 さ れ (拙 稿「モ ン ゴ ル 国 際 家 族 法 の 現 在」 東 洋 法 学 五 五 巻 一 号 二 一 五 頁 以 下) 、 そ れ を も っ て、 モ ン ゴ ル 及 び ベ ト ナムをも含む広義の東アジア国際家族法については、英法の 影響を強く受けている香港法を除いて、一先ず、その現状が 概観された。   本報告は、それに続くものであり、ベトナム以外の東南ア ジア諸国の国際家族法として、フィリピン、タイ、カンボジ ア、ラオス、インドネシアの国際家族法について報告するも の で あ る。 そ れ ら 以 外 の 東 南 ア ジ ア 諸 国 と し て、 マ レ ー シ ア、シンガポール、ミャンマー、ブルネイの国際家族法につ いては、特にそれらの諸国が英法の影響を受けている国々で あり、その点において、ある程度の共通性を有するものと考 えられること、及び、ミャンマー、ブルネイについては、十 分な情報が得られていないこと等の理由により、 それらの諸 国の国際家族法の現状については、 後日、改めて報告するこ ととしたい。 二   フィリピン   フィリピン国際私法の法源としては、まとまったものはな く、 断 片 的 に、 民 法 典 (一 九 四 九 年 六 月 一 八 日 第 三 八 六 号 共 和 国 法 律、 一 九 五 〇 年 七 月 一 日 施 行) 序 章、 及 び、 家 族 法 典 (一 九 八 七 年 七 月 六 日 命 令 第 二 〇 九 号、 一 九 八 八 年 八 月 四 日 施 行) 中の外国人と関連する若干の規定に見られるに過ぎない。そ の後の家族法の改正においても、国際私法規定の改正にまで は 及 ん で い な い ( Bergmann/Ferid /Henrich , Internationales Ehe- und k indschafts recht, Philippinen, 155. Lieferung, 2003, S.11. ) 。 そ の 総 括 的 規 定 と も 言 う べ き 民 法 典 第 一 五 条 は、 「家 族 の 権 利 及 び 義 務、 又 は、 人 の 身 分 及 び 法 的 能 力 に 関 す る 法 律 は、 フィリピン市民が外国に居住している場合においても、その 者 を 拘 束 す る。 」 と し て 規 定 し て い る。 こ の 規 定 の 内 容 は、 指 定 部 分 に お け る 事 項 的 範 囲 と し て、 「家 族 の 権 利 及 び 義 務」が付加されている他は、一八〇四年のフランス民法典第 三条第三項の規定と酷似しており、オランダの「王国の立法 の た め の 総 則 に 関 す る 法 律」 (一 八 二 九 年 五 月 一 五 日 法 律) 第 六条等におけると同様、フランス民法典に倣ったまま存続し

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て、現在にまで至っている。因みに、この一方的規定は双方 化されて、フィリピン判例において、フィリピンに居住する 外 国 人 に つ い て は、 そ の 本 国 法 の 適 用 の 規 則 が 導 か れ て い る ( B ur m es te r-B ee r, N eu es F am ilie nr ec ht au f d en P hili pp in en , D as Standesamt 1989, S.255. ) 。民法典中のその他の国際私法規定と しては、第一六条が、動産物権の準拠法選定において、同則 主 義 の 立 場 か ら 所 在 地 法 の 適 用 を 定 め (同 条 第 一 項 参 照) 、 そ の一方、相続との関わりにおける事項は、すべて、被相続人 の 本 国 法 に 依 る べ き こ と を 規 定 し て い る (同 条 第 二 項 参 照) 。 更 に、 第 一 七 条 に お い て は、 法 律 行 為 の 方 式 に つ い て の 行 為 地 法 主 義 を 原 則 と し な が ら ( 同 条 第 一 項 参 照 ) 、 フ ィ リ ピ ン 外 交 官又は領事の許においてはフィリピン法の遵守を規定してい る (同 条 第 二 項 参 照) 。 そ し て、 フ ィ リ ピ ン 強 行 法 及 び 公 序 良 俗が、外国の法律、判決、合意等に対して優先することが定 められている (同条第三項参照) 。   一方、フィリピン家族法典については、すでに、フィリピ ン 人 研 究 者 に よ る 紹 介 が 邦 訳 さ れ て お り(J・ N・ ノ リ エ ド (奥田安弘=高畑幸訳) 「フィリピン家族法(第二版) 」明石書店、 二 〇 〇 七 年) 、 近 時 の 改 正 に も 言 及 さ れ て い る (ま た、 そ の 条 文 の 邦 訳 は、 毎 年 次 の『戸 籍 実 務 六 法』 (日 本 加 除 出 版) に 掲 載 さ れ て い る) 。 家 族 法 典 中 の 国 際 私 法 規 定 に つ い て 言 え ば、 第一〇条が、フィリピン市民間の外国における領事婚につい て規定している。外国人又は無国籍者を婚姻当事者とする場 合に関しては、その婚姻要件具備証明書ないし宣誓供述書に ついて、第二一条第一項及び第二項が規定している。外国に お い て 締 結 さ れ た 婚 姻 の 承 認 に つ い て は、 第 二 六 条 第 一 項 が、 一 定 の 場 合 (無 効 な 婚 姻、 重 度 の 精 神 障 害 者 に よ る 婚 姻、 近 親 婚、 反 道 徳 的 な 婚 姻 等) を 除 い て、 フ ィ リ ピ ン 国 内 に お い て有効であることを定めており、また、同条第二項は、フィ リピン人と外国人とが有効に婚姻した後、外国において離婚 が有効に成立し、外国人配偶者が再婚する資格を得た場合に おいては、フィリピン配偶者もフィリピン法に従って再婚す る資格を取得することを定めて、原則としての婚姻不解消主 義と現実的要請との調和を図るよう、一九九八年に改正され ている。更に、夫婦間の財産的関係については、フィリピン 法 の 適 用 を 原 則 と す る が、 夫 婦 の 双 方 が 外 国 人 で あ る と き か、又は、財産契約がフィリピンの領域外に所在する財産に ついて締結されているときは、それを考慮して、フィリピン 法は適用されないと定められている。更に、又、第一八四条 は、原則として、外国人が養親となることを禁止するが、但 し、親族を養子にする元フィリピン人、フィリピン人配偶者 の嫡出子を養子にする者、フィリピン人と婚姻し、その者と 共同してその親族を養子にする者を除外することを定めてい る。第一八七条は、フィリピンと国交がない国の国籍を有す る者を養子にすることができないことを定める規定である。   その他の国際私法の法源として、フィリピン人である子の

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国 際 養 子 縁 組 を 規 律 す る 規 則 を 定 め る 法 律 (一 九 九 四 年 七 月 二 五 日 法 律 第 八 〇 四 三 号) 、 及 び、 フ ィ リ ピ ン 人 で あ る 子 の 国 内 養 子 縁 組 の 規 則 及 び 政 策 に 関 す る 法 律 (一 九 九 八 年 二 月 二 五 日 法 律 第 八 五 五 二 号、 一 九 九 八 年 三 月 一 二 日 施 行) が あ る (そ れ ら の 内 容 に つ い て は、 加 藤 文 雄「フ ィ リ ピ ン 養 子 法 に 関 す る 情 報 整 理 の 試 み ― 渉 外 家 事 事 件 処 理 に 関 わ る 同 法 の 改 正 経 過 と 解 釈・ 適 用 上 の 諸 問 題 ―」 家 裁 月 報 五 七 巻 六 号 二 〇 七 頁 以 下。 ま た、その条文の邦訳については、前掲『戸籍実務六法』参照) 。 三   インドネシア   インドネシア国際私法に関する邦文献は乏しく、かつ、外 国文献についても、それらが公表されてから既に久しいもの が殆どである。それに基づいて言えば、インドネシア国際私 法は、オランダ国際私法に由来するものであり、一八四七年 四月三〇日の法律第二三号が規定する諸条項が重要な立法上 の法源となっている ( Bergmann/Ferid, a. a. O., Indonesien, 54. Lief -erung, 1976, S.12f. ) 。   右法律第三条は、別段の規則がない限り、同法律が民商事 法の諸問題について、インドネシア人にも外国人にも同様に 適用されることを定めている。同法律は、インドネシア人が 外国にあっても、その者の身分及び行為能力について適用さ れるが、但し、営業所がオランダにあるか、オランダの植民 地にあって、そこに住所があるときは、その地において施行 さ れ て い る 民 法 へ 服 す る も の と さ れ て い る (第 一 六 条 参 照) 。 不 動 産 に つ い て は そ の 所 在 地 法 が 適 用 さ れ (第 一 七 条 参 照) 、 法律行為の方式については、行為が行なわれる地の法に従っ て 決 定 さ れ (第 一 八 条 第 一 項) 、 そ し て、 そ れ ら の 条 項 の 適 用 に際しては、常に、ヨーロッパ及び自国の立法を考慮すべき も の と 定 め ら れ て い る ( 同 条 第 二 項 ) 。 そ れ ら の 諸 条 項 に 従 い 、 イ ン ド ネ シ ア 人 に 対 し て は、 そ の 者 が 外 国、 内 国 の い ず れに住所を有するかに拘わらず、常に、インドネシア法が適 用されることになる。従って、インドネシア国際私法におい て は 国 籍 主 義 が 採 用 さ れ て い る と い う こ と が で き る ( Berg -mann/Ferid, a. a. O., S.12. ) 。   国籍主義は、外国人に対し、その者がインドネシアに住所 を有している場合であっても、その本国の国際私法が国籍主 義を採用している限り適用される。インドネシア最高裁判所 判決によれば、その原則の例外となる場合としては、外国法 が、人の宗教又は人種の相違が婚姻障碍であってはならない と い う 原 則 に 反 す る こ と と な る よ う な 場 合 が 挙 げ ら れ る ( Bergmann/Ferid, a. a. O., S.12. ) 。 そ の 意 味 に お い て、 イ ン ド ネシア法は外国法に優先することとなるが、これは、狭義の 反致主義が採られ ながらも、国籍主義が原則として採用され て い る こ と の 結 果 で あ る (佐 々 木 彩「イ ン ド ネ シ ア 国 際 家 族 法 の現在」東洋法学五六巻一号三〇九頁以下参照) 。   外国において締結された婚姻は、インドネシア人間におけ るものも、インドネシア人と外国人との間におけるものも、

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婚姻締結地法 上の実質的成立要件 に反しない限り有効と認め られる。婚姻挙行の方式についても同様である。外国におけ る婚姻の承認において、領事婚の方式の遵守は必要とはされ ていない。夫婦はインドネシアへの帰国後、一年以内に、夫 婦の住所の戸籍係へ婚姻証書を提出して、登録しなければな らない ( Bergmann/Ferid, a. a. O., S.13. ) 。一方、インドネシア における外国人間の婚姻締結は、その本国法に従って行なわ れ る こ と と な る が、 そ の 場 合 に は、 戸 籍 係 (民 事 登 録) が 外 国法の適用において婚姻要件を立証する ( Bergmann/Ferid, a. a. O., S.13. ) 。   インドネシアにおける外国人の離婚については、夫婦が住 所 を 有 す る 地 区 の 裁 判 所 が 管 轄 権 を 有 す る 。 ま た 、 イ ス ラ ム 法 に 従 っ て 締 結 さ れ た 婚 姻 は、 宗 教 裁 判 所 が 管 轄 権 を 有 す る。その場合において、国籍主義に従い、外国実質法が適用 されることとなるが、外国国際私法がインドネシア法を指定 する場合には、 狭義の反致主義の下に、 インドネシア法が基 準 と さ れ る こ と に つ い て は、 前 述 の 通 り で あ る ( Bergmann/ Ferid, a. a. O., S.13. ) 。 四   タイ   タイにおいては、比較的に早い時期から、単独形式の国際 私 法 立 法 で あ る「仏 暦 二 四 八 一 年 国 際 私 法」 (一 九 三 七 年 八 月 四 日 制 定、 一 九 三 八 年 三 月 一 〇 日 施 行) が 存 在 し て お り、 そ れ が、 全 く 改 正 さ れ る こ と な く、 現 在 に 至 っ て い る (独 訳 と し て、 Bergmann/Ferid, a. a. O., Thailand , 78. Lieferung, 1983, S.5ff. 参 照。 ま た、 邦 訳 と し て、 須 藤 次 郎 訳「タ イ 国 国 際 私 法 ・ 帰 化 法 及 び 国 籍 法 」 法 学 研 究 三 五 巻 一 二 号 五 四 頁 以 下 が あ る。 な お、 両 者 間 に は、 第 一 〇 条、 第 一 一 条、 第 一 三 条、 第 一 五 条、 第 二 五 条、 第 二 七 条、 第 三 二 条 に お け る 項 数 立 て に お い て 相 違 が 見 ら れ る が、 そ れ に つ い て は、 確 認 作 業 の 結 果、 前 者 の 方 が 正 確 で あ る と 見 ら れ る) 。 同 法 中 に は、 総 則 規 定 と し て、 抵 触 規 定 の 欠 缺 (第 三 条) 、 狭 義 の 反 致 (第 四 条) 、 公 序 (第 五 条) 、 本 国 法 (属 人 法) の 決 定 (第 六 条) 、 法 人 の 国 籍 (第 七 条) 、 外 国 法 の 証 明 (第 八 条) 、 法 律 行 為 の 方 式 (第 九 条) 等 の 諸 規 定 が 置 か れている。その内容について見れば、諸国国際私法中の規定 のそれと比較してみても大差はなく、全体的に、ほぼ一般的 な規則を有しており、その限りにおいて、タイ国際私法 の制 定 の 時 期 が か な り 古 く、 従 っ て、 そ の 改 正 が 遅 れ て い る と は、必ずしも言い切れないであろう。   翻って、各論規定、就中、国際家族法規定について、諸国 国際私法の趨勢を顧慮して、改正が求められるべきと考えら れるものに言及すれば、次に掲げるような諸規定がそれとし て指摘されるべきであろう。先ず、婚姻関係に関しては、婚 姻の効力について、夫婦に共通本国法がないときにおける夫 の 本 国 法 の 適 用 を 優 先 す る 立 場 で あ る (第 二 一 条 及 び 第 二 二 条 参 照) 。 ま た、 離 婚 に 関 し て は、 協 議 離 婚 で あ れ、 裁 判 離 婚であれ、その一般的許容性について、夫婦双方の本国法の

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累積的適用の立場が採られており、そして、裁判離婚の場合 に お け る 離 婚 原 因 は、 訴 訟 地 法、 す な わ ち、 タ イ 法 で あ る (第 二 六 条 及 び 第 二 七 条 参 照) 。 次 に、 親 子 関 係 に 関 し て は、 子 の 利 益 保 護 に 対 す る 顧 慮 は 不 十 分 で あ り、 子 の 嫡 出 性、 認 知、親子間の法律関係は父の本国法の適用を原則として、さ もなければ、母の本国法が適用され (第二九条ないし第三一条 参 照) 、 子 の 法 の 適 用 は 全 く 顧 慮 さ れ て い な い。 但 し、 未 成 年者後見については、その者の本国法に依り、タイ国法の適 用 の 下 に お け る 属 地 的 後 見 が 規 定 さ れ て い る (第 三 二 条 参 照) 。 特 殊 な 規 定 と し て、 親 権 の 剥 奪 に つ い て は 裁 判 所 所 在 地 法 の 適 用 が 規 定 さ れ (第 三 三 条 参 照) 、 卑 属 に よ る 尊 属 に 対 す る 訴 訟 は 前 者 の 本 国 法 の 適 用 が 規 定 さ れ て い る (第 三 四 条 参 照) 。 更 に、 養 子 縁 組 に 関 し て は、 養 親 と 養 子 と が 異 な る 本国法を有するとき、縁組の能力及び要件については、それ らを配分的に連結し、縁組の効力には養親のそれを適用する が、 実 親 と の 関 係 に は 子 の そ れ を 適 用 す る (第 三 五 条 参 照) 。 更 に、 ま た、 扶 養 義 務 に 関 し て は、 扶 養 権 利 者 の 法 に 依 る が、 そ れ は 本 国 法 へ の 単 一 的 連 結 に 限 ら れ て い る (第 三 六 条 参 照) 。 そ し て、 相 続 に 関 し て は、 相 続 分 割 主 義 が 採 用 さ れ ており、不動産相続についてはその所在地法、動産相続につ いては被相続人の住所地法が適用され、遺言能力については 遺 言 者 の 本 国 法 が 適 用 さ れ る と 規 定 し て い る (第 三 七 条 及 び 第 三 八 条 参 照) 。 か よ う に、 相 続 の 基 本 事 項 に つ い て は、 属 人 法としての本国法に依り、個々の遺産との関連における事項 については、遺産所在地法と被相続人の住所地法とを使い分 けるという立場である。   尚、仏教国であると考えられているタイにおいても、イス ラム教徒がその人口の相当の割合を占めている。従って、人 的不統一法国法の適用に関する問題についても顧慮する必要 が あ る (拙 稿「タ イ 人 の 離 婚 問 題」 判 例 タ イ ム ズ 一 一 〇 〇 号 七 八 頁 以 下 参 照) 。 具 体 的 に は、 タ イ の 人 際 法 と し て、 当 事 者 が 全てイスラム教徒である場合には、イスラム法が適用される と い う 規 則 が 行 な わ れ て い る と 見 ら れ る (安 田 信 之『A S E AN法』 (日本評論社、一九九六年)一五九頁) 。 五   カンボジア   カンボジア国際家族法立法の法源は、一九八九年七月一七 日成立の「婚姻家族法」第四章「外国における婚姻及び外国 人 と の 婚 姻」 中 の 諸 規 定 (第 七 九 条 な い し 第 八 一 条) 、 一九九〇年七月七日の政令、及び、一九二〇年の民法第一二 条である。以下においては、婚姻家族法規定を中心として、 言及することとしたい。   まず、 「婚姻家族法」第七九条は、 「外国において生活する カンボジア市民とカンボジア市民との間、又は、カンボジア 市民と外国人との間の婚姻は、当事者双方が居住する国に所 在するカンボジア国の大使館又は領事館の登録係のもとにお い て 行 な わ れ な け れ ば な ら な い。 」 (第 一 項) と 規 定 し、 又、

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「方 式 上、 婚 姻 法 に よ っ て 定 め ら れ た 婚 姻 手 続 に 従 っ て 挙 行 されたカンボジア市民とカンボジア市民との間、又は、カン ボジア市民と外国人との間の婚姻は、かような婚姻が、カン ボジア国の法律規定に反しない限り、カンボジア国において 有効なものとして承認されるものとする。婚姻証明書又は婚 姻証明書の写しはカンボジア国の大使館又は領事館の登録簿 へ 登 録 さ れ な け れ ば な ら な い。 」 (第 二 項) 、 更 に、 「カ ン ボ ジ ア国は、夫婦双方が居住する管轄の公共団体又は区域の登録 簿 へ 婚 姻 証 明 書 又 は 婚 姻 証 明 書 の 写 し を 記 載 す る も の と す る。 」 (第 三 項) と 規 定 し て い る。 こ れ ら の 諸 規 定 か ら、 婚 姻 の方式については、挙行地法主義が採られているものとみら れ る (

Bergmann/Ferid, a. a. O., Kambodscha, 108. Lieferung, 1991,

S.12. ) 。 又、 同 法 第 八 〇 条 は、 「カ ン ボ ジ ア に お け る カ ン ボ ジ ア市民と外国人との間の婚姻は、カンボジア国の法律に従っ て 挙 行 さ れ る も の と す る。 」 と 規 定 し て、 カ ン ボ ジ ア 実 質 法 に服すべきことを定めている。その一方、同法第八一条は、 「外 国 に お け る カ ン ボ ジ ア 市 民 と カ ン ボ ジ ア 市 民 と の 間、 又 は、カンボジア市民と外国人との間の婚姻の解消は、カンボ ジ ア 国 に お い て 有 効 な も の と し て 承 認 さ れ る。 」 (第 一 項) と 規定しており、カンボジア国際離婚法において、属地法主義 ないし行為地法主義の立場が採られていることが明らかにさ れ て い る。 従 っ て、 カ ン ボ ジ ア に お い て は、 「カ ン ボ ジ ア 国 に お け る カ ン ボ ジ ア 市 民 と 外 国 人 と の 間 の 婚 姻 の 解 消、 又 は、外国人の間の婚姻の解消は、カンボジア国の法律に従っ て 解 決 さ れ る も の と す る。 」 (第 二 項) と い う 規 定 と 規 定 し て、カンボジア法が基準とされており、法廷地法主義が表明 さ れ て い る ( Bergmann/Ferid, a. a. O., S.13. ) 。 そ し て、 「カ ン ボジア国の人民裁判所は、カンボジア国に住所を有する夫婦 の 何 れ の 一 方 の 解 消 申 立 を も 決 定 す る 権 限 を 有 す る。 」 (第 三 項) と い う 規 定 に 見 ら れ る よ う に、 カ ン ボ ジ ア 裁 判 所 の 管 轄 権は、夫婦のカンボジアにおける住所に基礎を置いている。 その住所概念については、民事訴訟法典第七四条が、人がそ の常居所を有するか、又は、営業の本拠を置いている地と定 義している ( Bergmann/Ferid, a. a. O., S.13. ) 。   その他、親子関係に関する事項に関しては、子の本国法の 適用が支配的であることが、専門家の鑑定によって明らかに さ れ て い る ( Bergmann/Ferid, a. a. O., S.13. ) 。 ま た 、 養 子 縁 組 の 要 件 に つ い て は、 養 親 及 び 養 子 の そ れ ぞ れ に つ き、 そ れ ぞ れ の 本 国 法 が 配 分 的 に 連 結 さ れ る が、 縁 組 の 効 果 に つ い て は、 養 子 の 本 国 法 主 義 が 採 用 さ れ て い る ( Bergmann/Ferid, a. a. O., S.14. ) 。 更 に 、 後 見 に つ い て も、 婚 外 子 の そ れ に つ い て、 子 の 本 国 法 に 依 る こ と が 明 ら か に さ れ て い る ( Bergmann/ Ferid, a. a. O., S.14. ) 。 六   ラオス   ラオス国際家族法立法の法源は、一九九〇年一一月二九日 成立の「家族法」第四部「在留外国人、外国個人及び無国籍

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者並びに在外ラオス人へのラオス家族法の適用」中の諸規定 (第 四 七 条 な い し 第 五 一 条) で あ る。 そ れ ら の 諸 規 定 中 に 婚 姻、離婚、養子縁組に関する抵触規定が存在している。以下 においては、ラオス家族法中のそれらの規定を中心として、 言及することとしたい。   先ず、婚姻の締結について言えば、第一章「ラオス民主主 義人民共和国におけるラオス国民と外国個人、在留外国人及 び無国籍者との間、並びに、外国個人、在留外国人及び無国 籍 者 の 間 の 婚 姻 及 び 離 婚」 中 の 第 四 七 条 (ラ オ ス 民 主 主 義 人 民 共 和 国 に お け る ラ オ ス 国 民 と 外 国 個 人、 在 留 外 国 人 及 び 無 国 籍 者 と の 間、 並 び に、 外 国 個 人、 在 留 外 国 人 及 び 無 国 籍 者 の 間 の 婚 姻) が、 次 の 通 り 定 め て い る。 す な わ ち、 「外 国 個 人、 在 留 外国人及び無国籍者は、婚姻及び家族関係において、ラオス 市 民 と 同 一 の 権 利 及 び 義 務 を 有 す る。 」 (第 一 項) 、「ラ オ ス 民 主主義人民共和国におけるラオス国民と外国個人、在留外国 人及び無国籍者との婚姻、並びに、外国個人、在留外国人及 び無国籍者の間の婚姻は、婚姻希望者の本国の法律が未成年 者又は一夫多妻婚者との婚姻を許容していても、本法の諸規 定 を 遵 守 す る も の と す る。 」 (第 二 項) 、「ラ オ ス 民 主 主 義 人 民 共和国における外国個人、在留外国人及び無国籍者の間の婚 姻の登録は、関係国の大使館又は領事館において挙行される こ と が で き る。 」 (第 三 項) 、「無 国 籍 者 間 の 婚 姻 の 登 録 は、 本 法を遵守するものとする。ラオス市民が外国個人、在留外国 人又は無国籍者と婚姻する場合には、婚姻は、ラオスの家族 登 録 官 吏 へ 登 録 さ れ な け れ ば な ら な い。 」 (第 四 項) 、「ラ オ ス 市民と外国個人、在留外国人及び無国籍者との間の婚姻につ い て の 規 則 は、 政 府 に よ っ て 定 義 さ れ る も の と す る。 」 (第 五 項) と規定している。   次 に、 離 婚 に つ い て 言 え ば、 「家 族 法」 第 四 八 条 (ラ オ ス 民 主 主 義 人 民 共 和 国 に お け る ラ オ ス 市 民 と 外 国 個 人、 在 留 外 国 人 及 び 無 国 籍 者 と の 間、 並 び に、 外 国 個 人、 在 留 外 国 人 及 び 無 国 籍 者 の 間 の 離 婚) は、 次 の よ う に 規 定 し て い る。 す な わ ち、 「ラ オス民主主義人民共和国におけるラオス市民と外国個人、在 留外国人及び無国籍者との間、並びに、外国個人、在留外国 人及び無国籍者の間の離婚は、本法の諸規定を遵守するもの と す る。 」 (第 一 項) と 定 め る 一 方、 「ラ オ ス 市 民 と 外 国 個 人 との間の離婚が、ラオス民主主義人民共和国の領域外におい て挙行されるときは、その離婚は、その国の法律を遵守する も の と す る。 」 (第 二 項) と 規 定 し て 、 行 為 地 法 主 義 の 採 用 を 明らかにして いる。   又 、 在 外 ラ オ ス 人 間 の 婚 姻 及 び 離 婚 に つ い て は 、「 家 族 法 」 第 二 章 「 在 外 ラ オ ス 人 間 の 婚 姻 及 び 離 婚」 中 の 第 四 九 条 (在 外 ラ オ ス 人 間 の 婚 姻) が、 「在 外 ラ オ ス 人 間 の 婚 姻 は、 ラ オ ス 大使館又は領事館に通知されなければならない。在外ラオス 人間の婚姻規則は、本法を遵守するものとする。 」 (第一項) 、 「国 家 は、 か よ う な 婚 姻 が 本 法 を 遵 守 す る と き、 在 外 ラ オ ス

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人 の 婚 姻 を 承 認 し な け れ ば な ら な い。 」 (第 二 項) と 規 定 し て い る。 一 方、 在 外 ラ オ ス 人 間 の 離 婚 に つ い て は、 第 五 〇 条 (在 外 ラ オ ス 人 間 の 離 婚) が、 「ラ オ ス 市 民 間 の 離 婚 は、 そ の 居 住 国 の 法 律 を 遵 守 す る も の と す る。 」 (第 一 項) 、「夫 又 は 妻 がラオス民主主義人民共和国において生活するときは、本法 が 満 た さ れ な け れ ば な ら な い。 」 (第 二 項) と 規 定 し て、 行 為 地 法 主 義 に 重 き を 置 い た 立 場 が 採 ら れ て い る。 尚、 「家 族 法」中には、外国離婚判決の承認に関する規定は置かれてお らず、一九九〇年一一月二九日の「ラオス民事訴訟法典」に も、それについての規定は見られない。従って、一九七三年 一月一日改正の一九二七年の「民事及び商事手続に関する法 律」が適用されることとなる ( Bergmann/Ferid, a. a. O., Laos, 119. Lieferung, 1994, S.14. ) 。   更 に、 養 子 縁 組 に つ い て は、 「家 族 法」 第 三 章「ラ オ ス 人 である子の養子縁組」中の第五一条 (ラオス人である子の養子 縁 組) が、 「ラ オ ス 市 民 権 を 有 し、 か つ、 外 国 に 居 住 す る 子 を養子にすることを希望する在外ラオス人は、本法に従い、 ラオス大使館又は領事館においてかような養子縁組の手続を しなければならない。養親がラオス市民でないときは、養子 縁組は、先ず、ラオス民主主義人民共和国の関係官庁によっ て 許 可 さ れ な け れ ば な ら な い。 」 (第 一 項) 、「ラ オ ス 市 民 権 を 有し、かつ、ラオス民主主義人民共和国に居住する子を養子 に す る こ と を 希 望 す る 外 国 個 人、 在 留 外 国 人 又 は 無 国 籍 者 は、本法の諸規定を満たさなければならず、ラオス民主主義 人民共和国に居住する外国人又は無国籍者である子を養子に することを希望するラオス市民も、本法の諸規定を満たさな け れ ば な ら な い。 」 (第 二 項) と し て、 徹 底 し た ラ オ ス 法 の 適 用が求められ ている。 七   後書き   かくして見る限り、 ある程度広範に法律関係の規律のため に 整備された国際私法規則を、しかも早くから有しているの は、タイのみであると言うことができるであろう。 それ以外 の国々において、多様な民族、宗教、雑多な慣習法の存在が 国際私法の立法化にとって困難な問題を惹起していることが 考えられる。また、 第二次世界大戦を挟んで、それ以前の時 代におけ る英国、フランス、オランダ等の 列強の殖民地でな かったこと、軍部クーデターは別として、大戦後における国 家分裂の内戦等がなかったことも、 国際私法をも含めたその 法体系全体の整備と 必ずしも無関係であると言えないであろ う。取り分け、カンボジア及びラオスについては、今後にお けるわが国による法整備のための援助が更に充実されること が期待される。 (かさはら・としひろ   東洋大学法学部教授)

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