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甲南女子大学学術情報リポジトリ

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(1)

児童文学 にお ける 「家」

一 イギ リス児童文学 に描 かれ た

の力

「家」の研究一

2008年

1月

福本

由紀子

ぐ■

363987

(2)

目 次

第一章 建物 と しての家

1.家

の力 の トポス と しての石 の館一Lucy M.BostonとAlison Uttleyの 作 品

2.家

の力 の源 として の 自然

一 Beatrix Potter、 A.A.Mllne、 Kenneth Crahameの 動 物 フ ァ ン タ ジ ー 作 品

(1) Peter Rabbit bOoksの 場 合

(2) 1∼ζJ貿 77jι―tみ `―

Pοtt Booksの場合

(3)T71`Wi“

′れ Й

`1竹IIοωsの場 合

(a)Mole′

Raし

Badgerの

(b)Toadの

館 第 二章 人 の生 き る家 1.「子 ども部屋 」 とい う トポスの構造 .……… ………63

(1)作

者 の子 ども時代 を反 映す る家 .……… ………64

(2)子

ど もの遊 び 空 間 と して の「子 ども部 屋 」

(a)Edith Nesbitの

作 品

(b)J.M.Barrieの

作品 .21 ¨41

(c)A_A.Milneの

描 く「子 ども部屋 」

(3)子

どもの成長す る場所―食 べ る空間

(a)家

にお いてみ られ る「食」の意味 .…..81

(b)フ

ァンタ ジー と「食」 97

(3)

2.記

憶 の堆積 と しての家 ….………… ……・………・101

(1)Lucy M.Bostonの

描 く家

.…

………・…・……・………・102

(a)館

とそ こに生 きる人 々

.…

………・………102

(b)館

の周辺 。………・………106 ( c ) Lucy III.Bostonと 館 .………・………・…・………・・………・………・・・109

(2)時

間 と空 間の接 点 と しての「家」の定義一Philippa Pearceの 描 く時の堆積 ..……114 結 論 120 注 文 献 目録

(4)

序 Gr`θ “ K“οω `物語 シ リー ズ (1954-1976)の作者 で あ るLucy M.Boston(1892-1990)力`、イ ギ リスの Cambridgeshireに 実在 す る何 百年 もの時 を経 た石 の館 に住 み、館 の息遣 い を直接感 じ なが ら物語 を書 き上 げた こ とは よ く知 られ てい る。物語 は、読 み手 に石 の 「館 」の特異性 につ いて考 え させ 、そ こに住 んでいた人の記憶 を辿 らせ る。Alison Uttley(1884-1976)も また 、

A

TF″フιJJ`r′″Tlir71ι (1939)のなかで

16世

紀 のマナーハ ウス と現代 の館 を行 き来 し、古 き 「館 」 で 過 去 の人物 に出会 う少女 を描 く。 この よ うに、イ ギ リス児童文 学 の作品 には 「館 」や 「家」 が 物語 の背景 で重要 な役割 を果 た し、確 固た る位 置 を 占めてい る ものが特徴 的 に見 られ る。「家」 と密接 に繋 が る物語 、「家 」や場 所 の感覚 を強 く感 じさせ る作 品が多 く存在す る。

英語 にお いて、「家」を示す語 は豊富であ る。〃house″の同義語 として、abOde、accommodation、

building、 cabin、 cot、 cottage、donlicile、 dwelling、 edifice、 habitauon、hall、 home、 homestead、

hut、 lodge、 lodging、 quarter、 residence、 shack、 shed、 shelter、 tenement等が挙 げ られ る

(大橋 12)。 そ の他 に も、

bungalowや

chalet、 hermitageやlairな ど、家 の形や性 質 で分類 すれ ば さ らに多様 な語 が見 られ るで あろ うし、Placeな ども 「家」 の意味 を持つ。 この よ うな例 は、 イ ギ リス児 童文 学 にお いて、多様 な家 の物語 が多 く見 られ る点 と関連 が あ るに違 いない。

児童文学 にお け る 「家 」の物語 につ いて の先行研 究 に関 してい えば、 これ まで作品論 の なか で 「家」 につ いて触れ られ る こ とはあ つた が、「家」 を中心 に論 じた研 究 は見 られ なか つた。 そ のなかで 、Pauline Dewanが動 θ Ho"sθ ′sS`オ′j“ g′ LS1/7「Ibο:ノ ″

“JSチ r夕cf“zJ Mο げ j“ (耽′J′″ “

t

Lttθγ′ `z″ (2004)を発 表 し、英語 圏の児童 文学作 品にお ける 「家」 の物語 に焦点 を当て、主 に背 景 と しての 「家 」が作品構 造 上 どの よ うに機 能 してい るか とい う点 につ いて述 べてい る。児童 文学 にお け る初 めての「家」の物語 の研 究書 と して 、多 くの作 品 を取 り扱 った労作であ り、「家」 の物語 を概観す る ときに有効であ るが、その一方 でイ ギ リス児童文学のみではな く、網羅 的に 作 品 を取 り上 げたた め、個別 の詳細 な作 品検討 には至 ってい ない。 また、 日本 にお けるイ ギ リ

(5)

ス児童文学研 究では、三宅 (1993)力`「古い館 その ものが、主人公 であるかの よ うな作 品群」 (321)を取 り上 げ、児 童文学 にお け る 「家 」の重要性 を指摘 してお り、 この分野 の研 究 にお け る 鍬入れ を行 った。 けれ ども、そ の後他 の研 究者 に よつて深 め られ る ことはなか つた。 そ こで本研 究 は、イ ギ リス児童 文 学 にお いて、「家」 が重要 な意味 を持つ と考 え られ る作 品 に着 眼 し、児童 文学 にお いて描 かれ る 「家」 の意味や役割 、象徴す るもの を、「家

Jや

「台所」 「子 ども部屋 」 といった切 り口で探 りなが ら、児童文学 にお ける 「家」の様相 をい ろい ろな角 度 か ら論 じるもの で あ る。 構 造 と して の 「家」、枠 と しての 「家 」 の様 相 に加 え、物語 の形成 に不可欠 の存在 として描 かれ た 「家」 とい う空間 と、そ こで生 きるメ、間の有 り様 を中心 に探 る こ とで、物 語 に描 かれ た 「家 」の意 味 を明 らかにす ることを 目的 と して いる。扱 つた作 品は、

19世

紀末 か ら

20世

紀後 半 に至 るイ ギ リス児童文学 作 品のなかか ら、家 に焦 点が 当て られ てい る と考 え られ る代表 的 な物語 で 、かつ現代 において も読み継 がれ ている作品 とい う理 由で選択 した もので あ る。 限 られ た作 品ではあるが、イギ リスの作品 に特化t/、 個 々の作 品の分析 を試 み るこ とで、イ ギ リス児童 文学 の特質 を探 り、作 品において 「家」の力 がいかに機能 し、 どの よ うな役 割 を担 つてい るかが明 らかにな ると考 えてい る。 本 論文 は 「家 」の物語 につ いて、大 き く分 けて二つ の視 点か ら考察 してい る。ひ とつ が、「建 物 と しての家」 の様 相 で あ り、 も うひ とつ が 、家 に生 きる人 々 との関係 が顕著 である 「人 の生 き る家 」 の様 相 で あ る。 第一 章 「建物 と しての家」 で は、最初 に家 の素材 と しての 「石 」 の性 質 を生か した

Lucy M.

BostonとAlison Utteyの 作 品 を取 り上 げ、「家 の力 の トポス と しての石 の館 」 の様 相 を考察す

る。物語 に描 かれ た、何 百年 も建 ち続 け る 「石」の家 の特質 を中心 に探 る。次 に、 自然 のなか の動物 の住処 を扱 った もの として、Beatrix Potter、 A.A.Milne、Kenneth Grahameの 作 品か ら、 擬 人化 され た動物 各 々の住 まい を読 み解 きたい。 そ こか ら、「家 の力 の源 と しての 自然 」 の様 相 を考察す る。登 場 人物 自身 を表 す 「家 」 の姿や 、社 会背 景や 階級 を反 映 した 「家」、複 数 の

家 々か ら構 築 され た世界 の特徴 を明 らか に したい。Soudenが「住 い とい うものは住人 よ り長 ら

(6)

のであ る。 も しイ ギ リスを象徴す るものは何 か と問 われれ ば、人 はただ ちに こ う答 えるに違 い ない一 それ は古いイ ギ リスの民家 だ。(Stuart Dick)」 (スーデ ン 60)と 引用 してい るよ うに、イ ギ リスの社 会や文化 を象徴す る媒体 としての 「家」の機能 もまた、物語か ら読み とれ るで あろ う。 第二章 で は、家 の 中で人 が過 ごす場所 に焦点 をあて、子 どもに とつて生活 の基盤 で あ る、「子 ども部屋 」 とい う トポスの構 造 を考察す る。最初 に、作者 の子 ども時代 を反映す る 「家」 とし て、Potterや Milne、 Edith Nesbit自身 の子 ども時代 を探 り、それ を)がどの よ うに物語 に内包 され てい るのか を確認 す る。次 に、子 どもの遊び空 間 と しての 「子 ども部屋 」につ いて、Nesbit や Jo M.BaFrie、 Philippa Pearce、

Milneの

作 品 を取 り上 げて考 え、「子 ども部屋 」 に見 られ る 要素 につ い て論 じたい。 さ らに、子 どもの成長 す る場所 と して機 能す るのが、「家」 のな かで の 「食べ る」空 間であろ う。「家」の 中で遊ぶ こ とと食 べ ることを通 して、子 どもの生 きる場 所 その ものが構 築 され てい るこ とを明確 に したい と考 えてい る。最後 に、時 の流れ のなか で人 が行 き続 け る様 を見つ め る 「家」につ いて、「記憶 の堆積 としての家」 と して、「時」 と「女性」 とい う観 点 か ら探 る。Bostonの描 く 「家 」 を取 り上 げ、彼 女 自身 の人生 と重 ね合 わせ なが ら、 「家」 とそ こに生 きる人 との関係性 を分析 し、古い 「家」 を拠 り所 としていた Boston力`紡 い だ物語の本質に迫 りたい。その後、Pearceの To″tMゴ ′″ψ `Gα γ′ιπにおける時の堆積 について 論 じる。以上の考察 を通 して、イギ リス児童文学 に描かれた 「家」の力を、材質 を含 めた家の 構造、居住者 との関わ りとい う点か ら、具体的に解明す る。 なお、本論文では、″housё″を表す語 として、主に 「家」と「館」 とい う語を用いる。「館」 とい う場合 、後述す る 「マナーハ ウス」 を含めた大邸宅を意味す ることとす る。また、「イギ リス」 とい う場合、Englandの みでな く、〃The United Kingdom of Great Britain and Northern

(7)

第一章 建物 と して の家

1.家

の力 の トポス としての石 の館一Lucy M.BostonとAlison Uttleyの 作 品

イ ギ リス児 童文学 にお け る 「館」 の物語 にお いて、考察すべ き点 の一つ は 「館 」 の材 質で あ る。「家 」 の主 な材 質 は大 き く 「木 」 と 「石 」の二つ に分 け られ る。 日本 にお いて、家 は第二 次世界 大戦前 までは、主 に本 で作 られ た もので あ った。それ に対 してイ ギ リスの家 は石 造 りの ものが多 く、従 って、物語 に現れ る 「家」 も、大抵 の場合が石 の家 である。 なかで も石 の家 の 印象 が最 も顕 著 な作 品 は、

Lucy M.BostOn(1892-1990)の

Gr``“ Kttοω `物語 シ リー ズ全

6巻

(1954-1976)であ ろ う。Bostonは、1120年 頃1に建 て られ た、「常 に住 みつづ け られ て きた家 」 と しては、イ ギ リス最 古 の石 の館 に実際 に住み (D.Boston(1995)121)、 そ の館 か らイ ンス ピレ ー シ ョンを得 て、館本来 の姿 とその歴 史 とを刻 み込み なが ら、館 とその館 を取 り巻 く互 いに調 和 し合 う様 々な空間 を物 語 の中で描 き出 した。Bostonはこの館 に53年間住 み 、1990年に死去 の

後 、館 は息子Peter夫 妻 の手 に よって管理 され た。Peterの 亡 き後 、現在 は妻Dianaが管理 を行 つ

て い る。 まず最初 に、イ ギ リス を代表す る館 の物語 のモデル とな り、現存す るBostonの住 んだ

館 につ い て述 べ てお きたい。

Bostonが初 めてイ ギ リス、Cambridgeの Hemingford Creyを訪れ たのは1915年、23歳 の時 だ

つた。看護婦 として戦地への赴任 を待つ間、Cambridgeに 住 む兄弟 を訪 ね たので ある。 そ の小

さな村 は彼 女 の 目に は:'the most forgotten bit of rural England′ 、vonderfully left behind‖ (Boston(1992)171)と 映 つた。Lucy Bostonの息子 の妻 で あ るDiana Bostonによれ ば(1993′ 3)、

Lucyは1935年 に離婚 した後 、 ヨー ロ ッパ の音楽の都 を訪れ よ うと、フランス、イ タ リア、オー

ス トリア 、ハ ンガ リー を街 径 って い た。 そ して1937年 に ヨー ロ ッパ 旅 行 か ら戻 つ た 際 、

HemittfOrd Creyのマナーハ ウスが売 りに出 され てい るの を見つ けたのであ る。つま りBoston

は、ち ょ うど孤独 の旅 か ら戻 つて きた ときに この館 と巡 り会 ったのだ つた。館 は彼 女に とつて、

(8)

方 が川 に面 した、完全 に水 に囲 まれ た ノーマ ンハ ウス2でぁった。初 めてその館 に足 を踏 み入れ

た ときに、Bostonは暖 かい歓 迎 の雰 囲気 を感 じ、興奮 に包 まれ て直t)に館 の虜 とな り、息子 の

手 を借 りなが ら二年 か けて この建物 を修 理 した。

館 の修 理 が進 む なか 、Bostonは、館 が建 築 され て か ら今 日ま で八世 紀 の 間 に こ こに住 ん だ

人 々の足跡 を辿 り、そ の人 々の息遣 い を感 じる。Roseは、 この館 は ″a key tO exPlahing how

and when she came to be a writer.″ (20)と指摘す る。 また、Bostonは作家 と してのス ター トが

遅 く、1972年62歳 の時 に第 一作 目の 並ωH″::、 同年 、児 童 文 学 作 品 と して の 第 一 作 目の動 θ C層:′″ “げGr`θ4K“ουιを発表 しているが、「そんなに年をとつてか ら書くことを始めようと思 ったのはなぜか」と尋ね られると、「この家自身が、書 くようにとやかましく言 うからです」(D. Boston(1993)4)と答 えて い る。 さ らに 、Bostonは、館 と館 を取 り巻 くもの か らの語 りか け につ い て、 次 の よ うに も述 べ て い る。

I use rny eyes′ Iny ears and my nOse and report as carefuny and as accurately as l can

l∼rhat these tell lne′ about the house′ the garden′ the people that come here′ th,

village′ the sky and all the trailingノ mysterious relics and suggestions of the past.

(ibid.4)

Crouchが ″...she[=Bostonl is herself possessed by the sPirit Of the lovelシ infinitely old

house in which she lives.Green]く nowe is waiting to dictate rnore of its secret to this wise and

understanding amanuenids.″ (305)と 述 べ る よ うに 、この古 い館 は巧 み にBostonを刺 激 し、筆 を 執 る よ う触 発 した の で あ り、彼 女 を虜 にす る魔 法 と もい え る大 き な力 を備 えた館 だ とい え る。 Bostonが館 の外 観 の み な らず 、そ の歴 史 を 明 らか にす れ ばす るほ ど、彼 女 は そ の雰 囲気 や 背 景

を なす 風 潮 を感 じと り、館 に対 す る親 しみ や 愛 情 が増 せ ば増 す ほ ど、彼 女 の想 像 も広 が っ てい

つ た の だ と、Rose(24)は述 べ て い る。

(9)

語 にお け る館 の 成 り立 ち を見 てお きた い。館 の始 ま りの エ ピ ソー ドは、

Green Knowe物

語 の最 終 巻 動 `Stο`sげ G“θ “ K“θωθ(1976)に 描 かれ て い る。1120年にOsmund d′

Aulneauxは

ノル マ ンの伯 爵 に仕 え、マ ナ ー と呼 ばれ る領 地 を所 有 してお り、地所 の 中央 に新 しく美 しい石 でマナ ー ハ ウス を建 て る3。

Osmundの

次 男 で11歳の

Rogerは

、新 しい 家 が建 て られ て い くの を熱 心 に 眺 め 、 そ れ が 完 成 す る と非 常 に誇 りに 思 い 、 い つ ま で も生 き て い て ほ しい と願 う。Creen

Knowe物

語 の第一巻 動 θ(勁J:′ ““げ Grθι “ K“θωθ(1954)の時代設定は 1970年 であるが、

850年

を経て も、このマナーハ ウスはまだ堂々 と建 っている。館 は強 くて暖かみがあ り、三フィー ト に もなる厚い石の壁や、美 しく磨かれた古い時代の家具、大きく構え られた暖炉 といつた過去 の遺物 を抱 えなが ら建 ち続 けている。 これ らの遺物 は ″as certain and Permanent as the smell

and sound ofthe sea in a shell″ ″(the atinOsPhere Ofl unexpectedness of the hOuse″ (ス

“ E“ `″1/ ′ `G″ι“ K″θωθ 41)と描 かれ る よ うな雰 囲気 を作 り出 してい る。 館 の材 料 と して の石 に は 、独 特 の雰 囲気 を作 り出す 要 素 が 多 く含 まれ て い る。 物 語 の 主 人公 と もい え る、館 に住 む

Mrs 01dknowの

曾 孫Tollyは 初 め て館 を訪 れ た とき、イ′Its thick stone walls were strong′ warm and lively.″ (磁

`Ch ttγι4 o/Gγ`θ“

K71θω

`17)と描写 され る石 の壁 か ら、自分

が迎 え入れ られたことを感 じる。また、 この館に過去に住んでいたAlexanderは 教会で歌って い ると、″He cOuld feelthe building round him alive and trembling with sound.″ と宛tじ、′′

The

shivered echO multiPlied itSelf by thOusands. . ..every stOne in the building stirred and murmured.〃 (ibid.108-109)と 実感す る。また、Tollyは 日の見 えないふ りを して遊んでいる と

き、石 の壁 のまた違 った一面を見つ ける。

The stOne walls that were so imposing and certain to sight were gentle and curving

to touch′ allnost warnl′ to be patted like living creatures.They bulged or sloped

away and their edges were blurred or worn off。 (TたιCみj″

“`ν

sげG“ι “

K“θωι 40)

(10)

こか ら暖かみ と優 しさを感 じとる。 このことは、次の動ι Sfθ

““げGrιι“K“θυ

`に

おける石工 の言葉によっても説明されている。

Thereis good stone and bad stone′ you could say it:s livin3・ ・・・Put your hand on a natural boulder warm in the sun′ you can feelitis not dead′ like bone for instance....

Some pieces of stOne are by nature bad′ you canit do anything with thenし and some are solid and 10yal and will last for ever.Besides thaし stone takes something from whatitis used for.(10)

この よ うな石 の持 ってい る性 質 は、我 々に永遠性 を も感 じさせ る。石 は ″….all daing back tO the day ofthe creation when God made the earth″ (ibid。43)と描 かれ るよ うに、 この世 の始

ま りか ら存在 し続 け、すべ ての こ とをいつ まで も ″Stone remembers.″ (ibid.28)なのであ る。

従 って、石 が家 の材料 と して使 われ るな ら、そ の家 は思い 出 と共 に長 く続 いて ゆき、「永遠性 」 の要素 は家 に安定感 を もた らす。石 は ″(Stone)had settled down to being simply stone again′ reared up here by some Flatural action′ sm(x)thed and welded by sheer age.″ (A Sfγ′

“ gar α ` G“ι “ KIIοω `108)と 変化 してい くので あ る。そ のた め、 この館 を訪れ る といつ で も、何 も変 わ

らず 自分 た ちを迎 えて くれ るこ とに気付 く。Tollyも また

Green Knoweを

何 度 も訪れ 、その たび

に安心感 を得 る こ とにな る。 石 (stone)は、「堅 さ、堅 固 さ、土台」 を、転 じて 「統一、強 さ、団結 」 を表す とい つたイ メ ー ジが あ る (フ リー ス 606)。 また、「神 のエ ンブ レム」 で あ り、新約 聖書 に 「キ リス トは、不 信 心 な人 々の上 に落 ち、彼 らを打 ち砕 く石 であ り、家造 りが捨 てた隅のか しら石であ る。」(ル カ に よる福 音書 20:17-18)と 記 され てい ることか らも、「創造主 」の イメー ジを もち、「原始 的 な祭壇 」 を表す こ ともあ る (フ リー ス 607)。 さ らには、部族 の名 前 を刻 んだ石 な どか ら、「証

言 と記憶 」「言葉 」 と関連 す る (ibid.607)。 この よ うに、

Green Knoweの

石 の館 か ら感 じとる

こ とので き る、永遠 を感 じさせ るよ うな安 定感 、神 に守 られ てい るかの よ うな安心感 、人 々の 10

(11)

記憶 の連 な りな どは、素材 で あ る石 の持 つイ メー ジがその一端 を担 ってい る こ とが わか る。

Townsend(32)は

3ostonの館 の描 写 に対す る姿勢 を、″She believes in the goodness of the

natural living creature′ in■oots/in continulty′ and she is able tO symbolize these values in the

house′ itself built of natural materials′ which she has said she cannOtthink of as′a thing′.″とl塗

べ る。 またその館 を 「物」だ と考 えることはできず 、コンク リー トとそれが象徴す るものすべ て を嫌 悪 して い る と指摘 してい る。BostOnのコンク リー ト嫌 いは、スSfr′ “ g″′:G″ `“ K“θωιか らも窺 え る。

...COnCrete which seems tO be chosen because where it is there can be nothing

else∼―not the tiniest covering oflichen of moss′ nor the slenderest blade of grass.The most it can tolerate is green or yellow slime.It is kind of solid nothingness it takes nothing in/it gives nothing back.(43)

この描 写 で は コンク リー トが 「無」の世界だ とされ 、Boston自 身の館 が 「物」ではな く生 きた 存在 だ と捉 え られ てい るの と対 照的 であ る。

石 の館 につ いて論 じるにあた り、 こ こで、イ ングラン ドの風 土 と石材 につ いて簡単 に述べ て お きたい。Great Britain島には、南北 にペ ナイ ン山脈 (the Pennines)が 背骨 の よ うに横 た わ り、 そ の南部 には険 しい地形 は少 な く、唯一 ジ ュラ系石灰岩 帯 と呼 ばれ る緩や か な 山地 が あ る。 こ の石灰 岩 帯 は、イ ングラン ドでは数少 ない石材 の産 出地 となってい る (大橋 6)。 Braunに よる と、二千年 以上前 か ら、イ ング ラン ドの西部 には多 くの石 があ り、人 々は蜜蜂 の巣の よ うな ドー ム状の建物 を石で作 る方法 を習得 していた。初期 のイ ングラン ドの家 々は西 部 の荒地や低 地 の丘陵地 帯、あ るい は温和 なイ ングラン ド南東部 の 自亜質 の平地 か ら生 じて発 達 した と考 え られて い る。 この国の古 い建物 に使 われ ていた二つ の主 な材料 は木 と石 で あ るが、 特 に、西部 の石 の多 い地方 で は、石 を荒 く積 み重 ね て壁 を築 くことが始 め られ 、その一方 で、 南部 で は木材 が豊富で あつたた め、木 造 の家が多 く建 て られ た。つ ま り、イ ングラン ドの建築 11

(12)

は、西部か ら生まれた もの と同東部か ら生まれたもの との、二つのスタイルか ら始まつている。

征服王

Williamが

イギリスに来たとき、最初にしたことはアングロ・サクソンの農民たちの

怒 りか ら自分 た ちの家 を守 るた めの城 を築 くこ とで あった。城 の防御 物 の 内側 には、非 常 に厚 い壁 を もつた石造 りの家屋 が建 て られ ていた。 ノル マ ン人の城 の建築者 た ちは、頑丈 で城壁が 敵 に 占領 され た場合 で も、引 き籠 もる こ とので き る よ うな住 まい を築いた。 また、西部や北部 で はア ング ロ・ サ ク ソンの人 々は、最初 は ローマ の修道僧 に教 わ り、その後 は独習で、周 りに 散在 して い る″rubble stolle″ (粗石

)を

そ のまま加 工 もせ ず に用 いて教会 を建 てていたが 、次 第 に四角 いブ ロ ックに切 り出 した石 や 、〃lime stOne〃 (石灰 石

)か

ら作 られ たモル タル を使 っ て美 しい壁 の あ る建物 を建 築す るよ うになった。 ノルマ ン時代 には、キ リス ト教の普及 に も従

い、立派 な石造教会 を含 む多数 の教会が建築 され 、Tower of Londonや Windsor castleな どの

大規模 建 築 も次 々 と建 て られ た。1120年に建 て られ た と描 かれ る 「Green Knoweの 館 」 も同時 期 の建築物 で あ り、 この館 の素材 としてバ ーナ ック石 (Barnack stone)4が 用 い られ てい る。 そ の一方 で 、一般 の人々の家 は簡単な小屋程度 の ものであ り、その 中には、小 さくは あるが石 の 家 も見 られ た。 中世 にな る と、 ノル マ ン人 の貴族 た ちは 自分 た ちの住 む家 を持つ よ うにな り、財 産 を納 め る こ とがで きるほ どの頑 丈 な部屋 のある、石造 りの家が建 ち始 めた。 ノルマ ン人 の住 宅の建築者 が、寝室の床 を木造 ではな く石造 にす るこ とを好 んだ理 由の一つ は、石造 の床 の上では火 を焚 くこ とが で きた か らで あ る。 ま もな く、囲炉裏 か ら壁 の 中に暖 炉 を作 る こ とも考 え出 され た。 王官 な どの大 きな館 では、ホール と呼ばれ る低い壁 でできた石 の建物が 中央 に建 て られ 、そ こ で、王 に仕 え る人 々が寝食 を共 に し、ホール の周囲全体 に小 さな石 の家が散在 し、その うちの 一つ に王や 女王 が住 んだ。その後 、大地主 たち も大 きな邸宅 を構 えるよ うになったが、それ に つ いて は、本論第一章2-(3)―(b)「

Toadの

館 」 で後述す る。 A4E4θtty αサGr`ι “ K“θω `におい て は、石 の館 の もつ神秘性 が顕 著 に現れ てい る。 た とえば、

Pingは"Stones ought to be magic′ they fit your hand too well.It feels as though they meant something important.‖ (A“ E“

`協ノα

`G“

ιK4οω

`9)と

語 り、Tollyは ‖

I'm glad this house is 12

(13)

stone.It smells of stone. . . .lDo you think when they built this they put in some magic somewhere to make itlast?"(ibid.13)と 感 じる。 この よ うな石 に関 して魔法 の意識 が現れ る一 因 として 、石 そ の ものの歴 史 を感 じさせ る多様 な石 の形状 が挙 げ られ る。す べ て の石 は、雨や 風 、潮 流や 波 の よ うな 自然 に曝 され た末 、あ らゆる色や形 を持つ に至 る。典型 的な石の館 で あ

るGreen Knoweも また、磨 り減 って砕 け、脆 く崩れ 、その結果 、神秘的 な要素 に溢れ た館 とな

つた。 この点 にお ける館 の描写 は次の通 りであ る。

(At Creen K■o、ve)behind the exciting colours and shapes of its andent self there

IIIlight be surprises fron■ the unknOwn universe′ that the house、vas on goOd terms

、″ith that t00′ and had nO intention ofshutting outthe un― understandable.(ibid.15)

いつ で もす べ て を暖 か く迎 え入 れ て くれ る心地 よ さ と、見知 らぬ世 界 か らの驚 異 が共存 した結 果 、謎 めい た雰 囲気 に溢 れ た館 が 生 まれ て きた。・Now and Not―now is the mostteasing of all

mysteriesr and if you let in a nine― hundred―year dose of tilne′ you let in alllnost everything.‖

(ibid.15)と 描 か れ て い る よ うに 、 そ の″mystery″ と時 の要 素 が 混 ざ りあ つて 、 現 実 の館 の な か に別 世 界 が現 れ た の で あ る。 そ して そ の別 世 界 を維 持 す るた め に働 く館 の力 が 強 く感 じ られ る。 Rogerが ‖...the new house that■vOuld stand to repelinvaders′ to receive heroes′ t00utlast

perils′ to withstand in its living stone walls the e宙 ls of witches and demons.‖

η

`S′

θ

4の

G″θθ″K″θυι 23)と感 じてい る よ うに、館 は 自分 自身 を守 るた めの力 を携 えていたか らこそ 、

こん なに も長 い問建 ち続 け るこ とがで きたのだ ともい えよ う。

Boston同様 、Alison Uttley(1884-1976)も また、館 と風景 に強 い魅力 を感 じてい るイ ギ リス 人 のひ と りで あ り、A Tr′υιιιθrれ 爾″ (1939)にお い ては

Creen Knowe物

語 と同様 、館 に焦点

が 当て られ てい る。物語 は、主人公 の少女Penelopeが Thackers農園 と呼 ばれ るかつて の荘 園

で時間の旅 をす る、Uttleyの作 品 中唯一 の長編 ファンタジー で あ る。療養 のた め、母方 の 田舎

(14)

で あ るThackers農場 に転 地 したPene10peは 、そ こで

16世

紀 へ と時 を超 え る。 時間 を超越 し た旅 にお いて、時 間 は過 去へ と遡 つて も、場所 は変 わ らずThackersの館・農 園 で あ り、Penelope はThackersの推移 を 目の 当た りにす る。 初 めてPenelopeが姉弟 と共 にThackersを訪れ た時 、彼女 は緩 や か な谷 間 を背 景 に浮 かび あ が る礼拝堂の塔や納屋 の切妻 を眺 め、道端の草花や湿 つた苔 の匂 いをか ぎ、

Londonで

は味わ えない 田舎 の平和な静 け さに足 を踏 み入れ る。そ して、Thackersの館 で最初 に案 内 された のが、 広 くて気 持 ちの よい台所 であった。 その時の台所 の様子 は次 の よ うである。

...where the fire blazed in a side′ open hearth′ and a kettle sung and lights came sparkling and glittering froln brass and copper and grey pewter.Such a smell of cooking there was一 a brown fowl baking in front Of the blaze′ sausages sizzling in

the frying― Pan′and the logs hissing and sPluttering on the hearth。 (28)

この活気に満ちた台所は、食事をとり、暖炉を囲んで交流する Penelopeら の生活の基盤 とな る場所である。台所にある暖炉は、″Home could just be a hearth′ a fire on the bare grOund by any human lair.That may、ven be the one thing that nobody can quite do■ vithout:a fireplace′ some focus.After all′ ifa home had no focus′ you could not startfrom it.Home is atthe center.

For many of us′ a hearth marks thatfOcus from which we start.〃 (Rykwert 47)と述 べ られ る よ うに、家 が ま だ原 始 的 な もの で あ った 時代 か ら、家 の 中心 で あ り、家 には不 可 欠 の もの で あ り、

人 々 の 出発 点 とな る場 所 で もあ った。 そ して 台所 は 、〃■s(sic。

)a g00d hOmely room as our

family has lived in for generations.″

“ Tr″υιJルγ効 爾協ι42)とい う Attnt Tissieの 言 葉 どお り、 整 理 整 頓 され 磨 き た て られ た 客 間 や 居 問 よ りも皆 を くつ ろがせ る部 屋 とな つ て い る。 台 所 は 、 Penelopeの行 き来す る

16世

紀 と

20世

紀 の館 の不 変 性 を示 唆 す る。

16世

紀 の 台 所 の様 子 は 、 次 の よ うに描 写 され る。 14

(15)

...along the stone passage tO the roOm l knew so well....Strange smells came drifting through the air/pungent odours of spices and lneats and smoke from the fire′ and strattge peOple were standing about on the flagged floor、 vhere green rushes were strewn.A great fire burned in the Open hearth and round it were saucepans of brass and iron siinmering in the edges Of the frames... (ibid.60)

16世

紀 のThackersの館 の台所 で は絶 えず 暖炉 が燃 や され 、そ こは、大鍋 が湯気 をたて るなか を陽気 な人 々が忙 しく立 ち働 く、館 内で最 も活気 のあ る場所 で あ る。特 に台所 にあ る暖 炉(open hearth)は、「か ま どとそ の生 き生 き と した火 は、い わば家 そ の ものの核 心 で あ り本 質 で あ る。 それ は、男 も女 も、老 い も若 き も、主人 も僕 も、すべての者 が食事 を とるためにその周 囲に集 ま る場所 で あ る。そ こで、か ま どの火 と食卓 とは象徴 的な意味 をもつ もの とな る。」(川崎 (1991)

73)と

述べ られ てい るよ うに、家庭 の団攣 の象徴 であ り、館 の雰囲気 を形成す る大 きな役 目を 担 っ て い る。 時 は違 え ど も暖 炉 に燃 え る炎 に変 わ りは な い。壁 面 にか か つて い るの が″the

long―shafted weapontt the pikes and halberds″ で あ る代 わ りに″uncle′s gun″で あ り、暖炉 に掛

け られ てい るのが″the great cauldron Of venison″で あ る代 わ りに〃a copper kettle″であ り、炎 の前 にあ るのが″the sPit turned by a swarthy/gree‐ eyed boy″ で ある代 わ りに″Dutch oven

with a bird grilling in iピ′ Trαフ

`:ι

ιr,κ T滋

`87)であ る とい う違 い は あれ ど、暖炉 の あ る台所 が

常 に館 の原 動力 で あ り、人 々が集 い憩 う場 で あ る こ とは時 を経 て も変 わ りは な く、そ こに住む 人 々の生活様 式 に も共通 点 が あ る。

また、〃Early kitchens were often of PlaStered wood′built round an Open hearth.The danger

of fire lnade it essential for them tO be free― standing′ although sOmetimes connected to the hall by a passage or covered way leading to it through the buttery and Pantry....When stOne kitchens began to become the norm in the fourteenth century7 the fire risk disappeared′

and

they cOuld safely elide with the hall b10ck.″ (Girouard 66)とい う中世 の台所 に関す る記述か

らも、

Penelopeの

入 り込 んだ過去 のThackersの台所 は独 立 した別棟 で はな く、本館 内に置 か 15

(16)

れ てい た と考 え られ る。 さらには、ラベ ンダーの良い香 りのす る居心地の良い居 間、″a carved

bed with grape― vines″ (ス Trαυ

`ルゴTizι 96)や

the great carved tallboy chest′ ′(ibid.99)な どの

重厚 な家 具 のお かれ た寝室 とい つた ょ うに、館 内の空 間は詳細 に描 かれ る。 これ らの館 の持つ 不変 的要素 に よつて、館 には時代 を経 て も常 に同 じ雰 囲気 が醸 し出 され てい る。

時 を超 え る館 の物語 にお い て、重要 な要素 は部屋 その もののみ な らず、そ こに流れ る空気や 香 りで あ る。A Trαυ

`JルrJ“

Timθ にお いて、Penelopeは Thackersに到着 した途端 、多 くの匂 い

を感 じとる。農 園 に広 が る花や木や 苔、台所 の ソーセー ジ、寝室 の ラベ ンダー と薬草、ベ ッ ド に塗 られ た蜜蝋 、Uncle Barnabasの 干 し草。これ らす べてがThackersの匂 い と して、Penelope に染 みつ いてい くこ とにな る。それ ら現代 の館 の匂 い は、時 に過去の匂い と重 なつて館 の不変 性 を感 じさせ 、時 に、そ の時代特有 の もの と して、その時代へ と導 く手段 ともなる。Penelope の訪れ た過去 の世界 では薬 草の匂いが強 く、そ のほか甘いバ ラや干 し草、あぶ り肉の匂 いな ど が漂 う。 この匂 いは、時 を超 えて

Pene10peに

染みつ き、彼 女 が時 を超 えて過 去か ら持 ち帰 る こ とので きた唯一の もの ともな る。一方 で

Penelopeは

、過 去 か ら逃 げ る よ うに現代 へ と戻 つ て きた あ る時 、苦労 の末 、現代 の日1染み深 い踊 り場へ 出 るこ とがで き (Penelopeは 自分 の意 思

で 自在 に現在 と過去 を行 き来で きるわけで はない)、 ″The air was different the Smell were

homely―odours of primroses and fresh linen.… ″(128)と、過 去 と現在 を匂 い に よつて識別す る こ とがで きて い る。 前述 した

Green Knoweの

館 にお いて も、匂 い は館 の不可欠 な一要素 と して詳細 に述べ られ る。館 は建 築 当時か ら様 々な匂 いに包 まれ て きた。木 々や木 を燃 した煙や 、納屋 の干 し草や お が くず 、館 のまわ りに降 り積 もつた雪の匂 い、馬番 のBogisが塗 ってい る漆 喰の、気持 ち を落 ちつかせ優 しく包み こむ匂 い 、教会 の香料や冷た く湿 つた地面や 、館 を形作 ってい る石 の匂 い。 それ ゆえ、 これ らの匂 い は我 々 を過 去 の世界へ と誘 う要因 とな る。

Mrs 01dknowも

".…

the scent is an orering.‖ “ “ E“ `協y″′G“`“ K“θω `94)と匂 い を重 要視 してい る。動`Cra滋 “ヮsO/ Gr``“

K∽

ωιにお いて、匂 い は 日の見 えない

Susanに

とって不可欠 の もので あ り、彼女 はあ ら 16

(17)

ゆ る匂 い に頼 って生 きてい る。

18世

紀 の

Green Knoweに

住 む

Susanは

、見 る こ とはで きない が匂 い には敏感 で、″the kind ofthing that stars belong to and happen in〃 (87)と 表現 され るよ

うな、遠 く離れ た誰 の 日に も見 えない ものまで感 じる ことが で きる よ うで あ る。

Susanに

とつ

て現在 と過 去 の境 は存在 しないかの よ うに描 かれ 、

20世

紀 に住 むTolyと も何 度 も遭遇 してい

るc Susanが 時 を超 える ことがで き る一 因 は、いつ の時代 に も変 わ らない匂 い をよ り深 く感 じ

る ことで あろ う。匂 い とい う点 もまた 、館 にお いて時の連続 を感 じさせ る一要素である。Boston

自身 も香 りを特 別 な もの だ と考 えてお り、″Scent is to me very mysterious.It is the mOst

illnlnediate of the senses′ seerning to reach straight intO the unconscious/unanalysable and

PrOfOundly moving.It can produce the same kind of awed delight as great art....Scent is

bliss.″ と述べ てい る(BostOn(1992)265-66)。

匂 いのほか にも、 これ らの館 には時を感 じさせ る象徴的なものが数多 く存在す る。例 えば、

Tollyが 初 めて

Green KnOweの

館 を訪れた とき、玄関には大 きな鏡があ り驚か され る。

There、vere three big old inirrOrs all reflecting each other so that at first Toseland was

puzzled to find what was real′ and which doOr One could go through straight the

■vay one wanted to′ not side■vays somewhere else.He all■ ost wondered、″hich was

really himself。 (動ιC/2JJ′ “κげ

G“ι″K″θωι 15)

Dゴθ′あ

“″

vげ

Sy“bθιS α“′Iπαg`r1/(431-32)に よれ ば、鏡 (mirrOr)は 「(自

)意

識、 自我」「内 的 自己、感情、記憶な どの反映」 を象徴 している。Tollyは 鏡 に幾重にも映つた 自分の うち、 どれが真 の 自分 自身なのかわか らな くなるが、それは Tollyが まだ 自分 自身のアイデ ンテ ィテ ィを獲得 していない ことを意味す るのであろ う。鏡 は過去の子 どもたち と出会 うための必要な 鍵 となる。 なぜ な ら、鏡は虚像 と実像の間に位置す るものであ り、 このことは Tollyが 館 を訪 れた とき、過去 と現在の二つの世界、つま り虚の世界 (空想 の世界 ともいえる

)と

現実世界 と 17

(18)

の狭間 に足 を踏み入れた ことを暗示 してい る。Egoff(1981)は 、館 の 中には 「思い よ りほか に真

実 の もの はな いJこ とや 、そ こでは過去 と現実が うま く調和 していることを、

Mrs oldknowが

Tollyと 読者 に確信 させ てい るのだ と指摘す る。Tollyのい る屋 根裏部屋 には大 きな鏡 が掛 け ら

れ 、部屋 の 中の物 をすべ て映 し出 してい るた め、"In this house.… everything is bvice!‖ (磁ι 働 捌 ″

“げ

Grιι

“ K“οω

`21)と

なってい る。 そ して、夜 には

'_.there was all the room

repeated in the looking―glass′ more mysterious′ the m00nlit parts brighter/the dark more impenetrable.‖ (ibid.42)と 描 かれ る よ うに、そ の神 秘性 は増 してい く。鏡 の存在 はTollyの想

像 を掻 き立て る こととな る。Tollyが初 めて Linnetと Alexanderを見つ けたのは 玄関にあ る鏡

の なかの姿 であった し、最初 の頃

Mrs.oldknowが

時折彼 らを見か けたの も、鏡 に映 つた姿 で あ った。鏡 が 「現象 界 にお け る物 体 の出現 と消滅」(フ リー ス

431)を

象徴 してい るのは全 く意 味深 い こ とで あ る。A“ Eれ `77zノ αオGr“4K“ θ "ι では、古 いペル シャ鏡 が未 来 を映 し出す機 能 を持

ち、魔女 との闘 いの 中で lbllyと

Pingを

助 け る。

Pingが

鏡像 を見た ときの言葉 、‖

Why do

reflected things always 100k mOre mysterious?‖ (34)は、鏡 の なかの世界 が、現実 とは違 う別 世

界 で あ る こ とをいい 当て てい るよ うで あ る。

前述 の ス7rタフグ々ri″ Tlttθ にお けるThackersの館 と同様 、

Green KnOweに

お いて も、鏡 と共

に、暖 炉 もまた部屋 のなかに館独特 の雰囲気 を与 えるもの として考 え られ る。‖The hearth from

all■me was the centre and heart Of the family."(TII`S′ ο “ ιs O/Gγ `θ K“οω `19)とい われ る よ う に、暖 炉 は しば しば家 の 中心 と して取 り上 げ られ る。Tollyは夜 にな る と、暖炉 のそ ばで

Mrs

Oldknowか

ら物語 を聞かせ て も ら う。

...(the fire)was only lnade up into a blaze in the evenings nowち when the firelight and the sunset crossed each Other in the r001Fn and every pohshed surface that could twinkle shone dOuble.Mrs 01dknow did nOtlight any lamps because they were only going to talt and while she talked Tolly watched the shadOws moving and the

(19)

reflection of the flames in the window―Pane′ where itlooked as if the yew tree was on ire。 (T7z`C71ゴ

““

sげGr`ι

θ

ωι

27)

暖炉 の光 と影 が あふれ た部屋 は、過 去 の世界 に思 い を馳せ 、時 の不思議 を感 じるのに最適 の状 況 であ る。 そ して時 に、暖炉 は居 住者 を現実 へ と引 き戻す役 割 も果 たす。

(T01ly)t00k newsPaper and an arlnful of willow logs and IInade a bonfire on the wide hearth.It roared up the chillnney with a draught that pulled aH yesterdayls air up with it and the room was tOday again′ filled with delicious willow―wood scent.(ibid.

9の

暖炉 と同様 に、蝋燭 の炎 と影 もまた館 に謎 めいた雰囲気 を添 え る。蝋燭 は影 を作 り、そ の影 は鏡 で二倍 に され る。影 は想像 力 を呼び起 こ し、過 去 の世界 を簡単 に出現 させ る雰囲気 を も作

り出す ので あ る。

Mrs 01dknowは

おそ らく、現在 と過去 の境 を曖味 にす るた めに蝋燭 を用 い

た ので あ ろ う。Tollyの

Green Knoweで

の第一夜 もまた、次 の よ うに蝋燭 の影 で満 た され てい

る。

Tolly lay happily looking at the surprising shadOws made by the little night― light―‐ the beams′ the big shadow Of the rOcking― horse′ the low one of the doll's house On

the lloor/the elongated wandering criss― crosses of the bird― cage on the celling.The lnirror repeated it all in the Opposite direction/ distant and slightly tilted.(磁 ι

Cみj:′ “げ Gr`“ K″o7oι 23)

Green Knoweは

また音 に満 ちてい る。過 去 の子 どもた ちの笑 い声 を始 め、多様 な音 があち こ ちか ら問 こえて くる。Linnetのイ メー ジはそ の姿 では な く笑 い声 か ら強 く浮 かんで くるが、彼 19

(20)

女 の陽気 な声 は 時の 隔た りを も消 して しま う。 そ の ほか に も、Festeのい な な き、Alexander の フル ー トの音色、ク リスマ スキャ ロル の歌声や 四百年前の婦人 の歌 う子守歌 な どが館 に響 く。 過 去 はまず音 と して現れ 、次 にその実体 を表す。 これ らの過 去 の物音は 、現在 の風 の音や オル ガ ンの音 色 、鳥 の鳴 き声 な どと混 ざ りあ う。 この音 の交わ りが現在 と過去 の混 ざ りあつた世界 を倉1り 出 してい るのだが、それ は ″TheyI=sOundsl reach us with all the quality of the Place

absorbed into them.″ “ πEれι “yα`Grθ θ “ K“α″ι96)と い う音の特質による。奥西(56)は、「視覚 は本来、現実 と結びつ きやす く、音な どは視覚 と比べれば現実的事実 との関係が弱い と思 われ る」 と述べる。従 つて、ファンタジーの世界を語 る物語では、音の感覚が強調 され るのは当然 であろ う。 A Tr′υ `JJι rれ T滋

`の Thackersでは、Aunt Tissieの

wooden workbox′の なか に入 つていたbobbinもOy″

(糸巻 き人形

)一

〃It was a wooden figure of a little man′ carved with ruff and curling hair/butthe body was covered with a lveb of blue′ green′ and scarlet silkら lvound in a

COC00n.″ (49)一はPene10peを過 去の世 界 に繋 ぎ、片 隅 に置 かれ ていた古 い″oak chest″ は

16世

紀 で も衣裳箱 と して使 われ てい た。16世紀 で農 夫や 羊飼 いが奏 で る音 楽 は20世紀 で も歌 われ 、 彼 らの食 事 も変 わ らない。 そ して、「Penelopeが過 去 の世界 にか らめ取 られ てい くにつれ て、 古 い品物 ひ とつ か らも、物 音 か らも、匂 いか らも、言葉 か らも、た ちま ち過 去 の情景 が出現す るよ うにな つて」(脇 101)く るので あ る。 この よ うに、これ らの館 は時 を行 き来す る物語 を作 り出す要素 を多分 に持 つてい る。我 々が 感 覚 を研 ぎ澄 ませ て館 を仔 細 に観 察すれ ば、時の流れ が感 じられ るに違 い な く、館 は別 の時代 とコンタク トを とる接 点 で あ る。

Roseは

Boston夫

人の作 品 は 日常の世 界 と魔法 の世界 を非 常 に近 づ けて作 り上 げ られ てい るので、二つ の世 界 が互い に触 れ あい、美化 しあい、それ ぞれ がお互 い の本 質 的 な要素 となってい る と述べ (51)、 さ らに、この作 品で繰 り返 され るモ チー フ は失 つた過 去 の遺物 の発 見 だ とい う(56)。 館 は人 々が時 を超 えて 出会 い、関係 を保 つ手段 で あ り、過 去 を体現す る と同時 に現在 に影響 を与 える存在 となつてい る。 20

(21)

Cameron(1984′ 160)は、

Green KnOweの

館 は、す べ て の 時が 同 時 に存 在 してい る とい う

Bostonの信 念 を示す 、日に見 え、触れ るこ とがで き、人 を包 み込 む メタフ ァー で ある と指摘 す

る。Bostonは

Creen Knowe物

語 の なかで時 の永遠性 を強調す るが 、 この シ リー ズの完 結編 と

もいえる 動ι Sfθ 4ιsヴGr``"K“θッ

`では、各時代の主要な登場人物が勢揃い し、3ostonの 願い

である・O my house′live forever!"(110)と い うメッセージが至るところに込められている。また、

「ある時代の Rogerの 経験のみならず、Rogerの 骨の髄までしみこんだこのすばらしい石の館

へ の情熱 的 な愛」(CamerOn(1984)160)か らも、「す べ ての時 は一つ で あ り、永遠 の一瞬 なのだ」

とい うBostonの思 いが伝 わ る。 そ の一方 で 、Bostonは時の推移 を もまた認識 してお り、物語

の最後 の場面 において取 り去 られ て しま う対 の石 の椅子は、永遠 の時のなか に含 まれ た変化 を 表 してい る。 連続す る時 の流れ に伴 う変化 は、時 の一要素 なので あ る。

以上 の よ うに、Lucy Bostonと Alison Uttleyの 作 品の一部分 を取 り上げただ けで も、イ ギ リス

児童 文学 にお け る 「館 」 の物 語 が 、「石 」 とい う材 質 の持つ堅 固 さや 安 定感 とい うイ メー ジ、 暖炉 、暖 炉 のあ る台所 、香 り、音 、光、家 の内部 に置かれ てい る鏡 、 ろ うそ く、家具等、別 の 時代 との接 点 とな るた めの要素 を備 えた存在 で あ る こ とが示 され た。 けれ ども、「館 」 の物語 に関 して は、そ こに住 む人 々 との関わ りが最 も注 目すべ き点で あ り、その ことについては、第 二章で詳 しく述べたい と思 う。 ここでは も う少 し、建物 としての 「家」の存在 について、その 意 味す る ところや象徴 され てい る点 につ いて考 える こ ととす る。

2.家

の 力 の 源 と し て の 自 然 一Beatrix POtter、 A.A.Milne、 Kenneth Grahameの 動 物 フ ァ ン タ

ジー作 品

Green Knowe物

語 シ リー ズやスTr″フ

`JJ`′

れ 動解 で は 、人 間 の住 む館 につ い て 述 べ た が 、児 童

文 学 にお け る 「家 」 は 、 当然 な が ら動 物 の住 処 と して も多 々描 か れ る。 こ こで は 、Kenneth

Grahame(1859-1932)、 Beatrix Potter(1866-1943)、 A.A.Milne(1882-1956)ら の作 品 を取 り上 げ 、 動 物 の住 処 の有 り様 と、 そ こに見 られ る人 間 的要 素 につ い て探 りた い。

(22)

(1)Peter Rabbit booksの 場合

は じめ に 、Beatrix Potterに よっ て書 かれ た 、 主 に動物 を主 人公 と した物 語″Peter Rabbit

B。。ks〃5を取 り上げ 、登場 人物 で あ る ウサ ギの住 処 につ いて考察す る。 なお 、本 論 文 で は 、物 語 に登場す る動物 が擬 人化 され てい る場合 、動物 で あ つて も、登場 「人物 」 と明記す る こ と と す る。 ウサ ギ た ちの 実 際 の住 ま い は 、「大 きなモ ミの本 の根 元 にあ る砂 の 穴(sand―bank)」 (動 ι勁 ルor Pι `″ RαbbJ′、1902(以下 P`ナιγ ttbbitと す る)9)(図 1)、や「草 地 の 下 の 土 の 穴 」(動 `物ι` OfFI"Sy B夕″ “ :`s′ 1909(以 下 Fιο′sノ B"“ガ “ と す る)11)で あ り 、

そこで家族と共に暮らしている。

ι

γ

Rαbbjナ

及び

T77`物

o/

B"ル

励 B“ “り (1904、以 下 B“ル解Jη B"“り とす る)にお いて 、

Peterは、 母 ウサ ギ

Mrs.Rabbitと

姉妹 の Flopsy、 Mopsy、

Cotton―taleと 共 に暮 ら して い るが 、 この 家 は

Mrs.Rabbitの

統 治 の 下 、 森 の 中 で″neatest sandiest hOle″ と形 容 され る ほ どに整 え られ て い る。

Peterや

Beniaminは 、家 か ら外 の世 界へ と出て行 き、また家 に戻 る とい う、典型 的 な 冒険物語 、「行 きて

帰 りし」物 語6のパ ター ンを取 るわ けだが、 ここで彼 らの行動 を詳 しく見てみたい。

まず 、Pιォιr ttbbirに お い て、

Mrs.Rabbitは

姉妹 た ちに赤 いマ ン トを着せ 、Peterの青い上着

のボ タンを一番 上まで しっか り留 め る と、″….you may go into the fields or dOwn the lane′ but

don′tgointo Mr.McGregor′ s garden.… ″(10)と命 ず る。Potterの 作 品にお いて 、登場人物 の服

装 の解釈 に関 しては様 々 に述べ られ てい るが7、 この作品で も同様 に多様 な解 釈 が可能 で あ る。 Peterが洋服 を着 るこ とか らは、い くつ かの二項対 立 が読み とれ る。 ウサ ギが服 を着 る こ とは、 「人間の子 どもにな る

=フ

ァンタジー の世界 」で あ り、子 どもに とつて、窮 屈 な洋服 を着せ られ る こ とは 「行儀 の よ さを求 め る教 育

=大

人 か らの束縛 」 を意 味 し、また、「文 明化 され た生活J までを も表す。逆 に、洋服 を脱 ぐこ とは 「動物 に戻 る

=現

実世界」を、「束縛 か らの解放

=自

由」 を、「文明化 」に対 して 「自然 の様相 」を示す。 ここに、Peterの二面性及び 子 どもの二面性 が映 図 1 22

(23)

し出 され てい る。 さらにい えば、 これ は

Londonの

Bolton Gardensの館 での、Potter自 身 の窮 屈 な子 ども時代 を示 す ので あろ うし、洋服 を脱 ぐこ とは、休 暇 で訪 れ たScotlandの 田舎 や Hill

ToPで

の 自由で 自立 した生活 を象徴 してい るともい えるだろ う。実際に、Potterは P`f″ RンbみJ′ を書 くこ とに よつて、生活 の 自立 を果 たす こ とになった。 しか しなが ら、家 での束縛 は親 の保護 なので あ り、それ に よつて安全 が確保 され てい る とも考 え られ る。 さて、安全 な 「家」か ら、守 りの鎧 で あ るかの よ うに外 出着 を着せ られ 、外 の世 界へ 出か けて ゆ く子 ウサ ギた ちだ が、行儀 の良い姉妹 た ちで さえ、ブ ラ ックベ リー を摘 む場 面 では、マ ン トを 脱 ぎ捨 てて い る。Peterはひ と り、″straight away〃 (18)に禁 じられ た菜 園 を 目指 し、冒険 が始 ま る。 木 戸 の下 か ら潜 り込 み 、野菜 を食べ てい る時 には、既 に上着のボタンは全部外 され てい る。

そ して、

Mr.McCregorと

遭遇 し、追跡 され て逃 げ る うちに、靴 をな くし、 グー ズベ リー の藪 に

か けて あつた網 に上着 の大 きなボ タンが 引 っかか り、絡 まつて しま う。

Kutzerは

、母 の守 りが

却 ってPeterを危険 に陥れ るこ とにな つた と、以下 の よ うに述べ る。

Peter′s iacket represents not only his social self but also his lnaternally donlinated′

domesticated selt which is suffOcating hiln and threatens to″kill〃 hiln as inuch as NIIr.

ヽ4cGregor threatens hiln.If his IInOther、 vere not so insistent upon domesticating and

tanling her wild son′ he wOuld not bein so rnuch dangerin the garden。 (2003′ 44)

Peterは必 死 に上着 を脱 ぎ捨 てて逃 げ出す が、上記 の よ うに身 につ けてい るものを一つずつ な く

し、つ ま り 「家」での東縛 /保 護 を外 しなが ら、 冒険世界の奥へ と進 んでい く。 そ して、 さ らに 危 険な 目に遭 い なが ら、Peterは四苦 人苦 して

McGregorの

敷 地 か ら出 る と、今度 は″Peter never stopped running orlooked behind him.″ (P`′θr ttbbブ′541とい う様子 で、家へ と戻 る。

このPeterの冒険 の 目的 は、大好物 の獲 得 、す なわ ち子 どもに とっての基本 的欲求 であ る食 欲

を満 たす こ とで あるが、同時 に、

Mro McCregorに

見つ か るか も しれ ない危 険 とス リル を味 わ う

こ とで もあろ う。

Mr.McGregorか

らの逃 走 は、いつ もはそ の支配 下 にあって頭 の上 が らない大

(24)

人 か ら うま く逃 げおおせ る こ とへ の、子 どもの喜 び と興奮、優越 を感 じさせ る。また、楽 しみ と 隣 り合 わせ にあ る危 険 が死 に至 る もので あ るこ とを、頭 では理解 して いて も実感 で きてい ない点 は、子 どもの特徴 で あ る。 この よ うに、Peterの冒険 は典型 的 な子 どもの 冒険 だ とい え るが、 さ らに これ は 「子 ども部屋 」で の、安全 で守 られ た遊 び の世界 の延 長 で もあ る。その要素 のひ とつ と して、 冒険 に出か けて いた時間の短 さが挙 げ られ る。Peterが冒険 に出発 した のは朝 で あ り、 帰宅 したの は夕食 の時間 よ りも前 で あ る。 この 「一 日の冒険」 は、Edith Nesbitの Fゴυθ C力frグr`“ ″〃″Iチ (1902)にお いて、砂 の妖精

Psammeadが

子 どもた ちの願 い事 をか なえ る時、願 い事 は一 日 ひ とつ だ け、そ して そ の魔 法 の効力 は 日没 までだ とい う期 限付 きで ある ことを思い 出 させ る。 Ff77`(勁燿 ″ “ ″ “′Irの四人 の子 どもた ちは、毎 日の遊 び の なかで

Psammeadと

出会 った わ けだ が、 Peterの冒険 も一 日限 りの もの であ り、それ はPeterの 日常 の遊 び空 間の なか での冒険 で あ つた と考 え られ る。 ま た 、Peterの 冒険 を地 図 上 で追 つて み る と、 そ の 冒険範 囲 の狭 さが特 徴 的 で あ る。Mr.

McGregorの

畑 は、Peterが家 か ら走 って行 ける程度 の距離 に あ る。そ して、Peterが野菜 を食 べ 、

追 いか け られ 、彿径 う冒険 は、

Mr.McGregorの

敷 地 内の出来事 で あつた。 客観 的に眺 めれ ば非 常 に狭 い範 囲内で の出来事 だが、Peter(=子 ども)の 目か ら見れ ば、苦 労 して進入 し、た くさんの 障害 を くぐ り抜 け、迷 って 出 られ な くな るほ ど心理 的 に広 い場所 なのであ り、そ のギ ャ ップが ま た、子 どもの遊 び空間で あ ることを示 してい る。 そ して この菜 園は、Kutzer(2003′ 42)も述 べ て い るよ うに、危険 もた くさん潜 んでい るが、同時に守 られ た空間であ るとも考 え られ る。つ ま り、 実 際の場所 と して、

Mr.Mccregorの

家 と菜 園 は塀 で 囲まれ た敷 地 であ るた め、

Mr.McGregor

とい うPeterに とって警 戒済み の敵 は存在す るが、それ以外 の何 かに襲われ る心配は出て こない のであ る。 さらに、冒険 を見守 り、時 に応援す るこ ともあるが、直接の助 け とはな らない コマ ド リや スズ メや ネ ズ ミは、常 に子 どもた ちの空 間 に共 にい る「子 ども部屋」の玩具であ り、遊び仲 間 であ る とも考 え られ る。

Peterは家 に戻 つて来 るや否や 、″the nice soft sand on the■ oor″ (P`′″ 勁bbjォ54)にどさ りと倒

(25)

出 した子 どもが 「帰 つて くる」 とい う点 で あ る。結 局 の ところ、子 どもは大 人 の保護 が な けれ ば 生 きて い けないのだ とい う現実、また、窮屈 ではあ るが子 どもを包む 母の愛情 がある家 、居心地 の良い場所 、危険 な 目にあって消耗 した体 を休 める避難場所 であ る家 に必ず戻 る とい う、「子 ど も部屋 」 での 冒険の あ り方 が示 され てい る。

Mrs.Rabbitは

、疲れ切 つて帰 って きたPeterを寝 かせ て カ モ ミール テ ィを飲 ませ 、マ ン トも羽 織 って行 儀 よ く 早 々 と戻 つて きて いた姉妹 た ちは、パ ン と ミル ク とブ ラ ックベ リーの夕食 を食 べ、物語 は閉 じられ る (図 2)。 この最 後の場 面 は、 あたか も Peterへの罰 であ るかの よ うに も論 じられ るが、 Peterに とって、 冒険 は食欲 を満 たす探求 で もあ つたので あ り、 上記 の よ うな子 ども部屋 の 冒険 を堪能 して帰宅 した Peterが食 事 をせず 、 冒険 で疲 れ た心 と体 を休 ませ るた め に、 母親 の用 意 し た整 胃 。鎮 静効果 の あ るカモ ミール テ ィ8のみ で眠 りにつ くのは 当然 の こ ととい え る。 母 のい る 「家」が、帰 って きた子 どもを回復 させ る力 をもつ ことが示 され ている。 PιセγR′bι:オ の続編 であ るB`″ “J“ B"““ノにお いて も、物 語 の構 成 は ほぼ同様 で あ る。Peter と従 兄 弟 の

Beniaminは

、 母 で あ り叔 母 で あ る

Mrs.Rabbitの

支 配 か ら逃 れ るか の よ うに (Beniaminから見れ ばMrs.Rabbitは叔母 で あ り、それ ほ どの抑圧 は感 じられ ないはず だが逃 げ 出す)、

McCregor家

の菜園に侵入 し、窮地 に陥 り、Beniaminの父の助 けを借 りて無事 に帰還 す る。

Beniaminに

とっては、前 回の Peterと同 じく、食べ物 と刺激 を求 めての 冒険で あったが、 Peterは、″red co■ on pocket― handkerchief″(17)にくるまった元気 の ない状態 で あ り、 冒険 を望 んではいない。図 らず も、な く した服 を取 り戻す旅 とな ったが、これ は、かか しに着せ られ 、雨 で縮 ん で しま った上着 と靴 を取 り戻す ことであ り、母親 の力の 下にある窮屈 な生活 を取 り戻す こ とに他 な らない。 この点 が、 この物 語にP`rθ r Rαbbirほ どの魅 力が感 じられ ないひ とつ の理 由で もある。 しか しなが ら、Peterと

Beniaminの

冒険 自体 は、数 時 間 内の狭 い範 囲 にお け る限 られ た 冒険 で あ り、二人 の遊 び の延 長で あることは、P`′ιγ Rαbbブ′での 冒険 と同様 で あ る。 さ らに、 最後 に大人 の介入 が あつて 冒険 が強制 的 に終 了 とな り、罰 を受 ける とい う構成 は、「子 ども部屋 」 図2 25

(26)

での子 どもの姿 その もの であ ろ う。Fb′sソ B夕稚4燃 お よび 動 `Stθ7 o/A Fiιrc`B″′R″ bb′ `(1906) におい て も、基本 的 に物 語構成や登場 人物 の行 動範 囲は前二作 と同様 だ と考 え られ る。 この よ うに、ここで描 かれ る 「冒険」 とは、すべて子 どものテ リ トリー のなかで起 こった出来 事 であ り、その なか に逃れ うる危 険 と心惹 かれ る宝物 とが共存 して い る。Peterたち子 ウサ ギに とって、物語 の始 点 と終 点 は母 ウサ ギの い る 「家 」で あ る。そ こは、母 の統治 の下、居 心地良 く 整 え られ 、食 べ物 も確保 された 、保 護 と安全 、回復 が約 束 され た場所 であ る。母親 は 冒険 に出て 行 く Peter(=子 ども)に、父親 が

Mr.Mccregorの

畑 で殺 され た こ とを話 し、そ の冒険 は死 に も繋 が るものだ と警 告 を与 え、それ で も子 どもは行 つて しま うこ とは承知 の上で、守 りの鎧

(=洋

服) を着せ て送 り出す。母親 のい る「家」は、子 どもに とつては、大人 に管理 された、遊び

(=冒

険) の禁 じられ た窮屈な場所 で もある。子 どもは、大人 か ら課 された禁忌 を破 ってみたい欲求 に駆 ら れ 、子 どもだ けで 冒険 に出て行 くのであ る。PeterやBeniaminは 、子 どもた ちだ けの独 立 した、 自由に遊べ る空 間で過 ごす。彼 らの遊び空 間 は 自由や逃 亡の象徴 であ り、好奇心 を くす ぐるもの や 冒険 、本領 発揮 で き る遊 び に溢れ てい る。 そ こは、子 どもた ちが 自由に想像力 を広 げて描 く、 心 のなかの地 図が広 が る世 界 となってい る。ここで、何度 も言及 している子 どもの遊び空間や「子 ども部屋 」 につ いて は、第 二章 で さ らに詳 しく述べ る こととす る。 (2)Wi“ “:β ―ル,Pθοみ

Booksの

場合 次 に、

A.A.Milneの

Wi“ “ J`―ιみ,Pοοた(1926)及び T″θ Htts`α′Pθ OたCογ “ θァ(1928)を取 り上 げ、

登場人物 の家 につ いて分析 す る。 これ らの作 品は、父親 であ るMilneが息子ChristOpher Robin

に、息子 の クマ のぬ い ぐるみ を登場 させ た物語 を語 り聞かせ る、 とい う枠組 みが用い られ てい る。第 二章 の子 ども部屋 について言及 す る際 に (1-(2)(c)「

A.A.Milneの

描 く子 ども部屋 」)、 この作 品独 特 の物語構造 につ いて述べ るが、ここでは中心 となるPoohの世界 の全体像 のみ を考 察す る。 この世界 では、それ ぞれ の登場 人物 の住む家 があ り、彼 らはそ こを各 自の拠点 として 活動す る。最初 に登場人物 の配置 を概観 し、その後 で各 々の住 処 につ いて、

E.H.ShePardの

描 く地 図 も参 考 に しなが ら分析 してみ た い。「ファンタ ジー作品 には地図がつ け られ るこ とが多

(27)

くなつたの も、地 図 をつ ける こ とで作 品の 世界 が一つ の世界 と して見 え るよ うにな る とい う効 果 が高 い とい う理 由に よ る

J(二

宅 270-71)と 説 明 され る よ うに、物 語 を読 み解 くときに 「地 図」 は手がか りとな る。 後 で述べ るよ うに、Wi″″J″力ι―Pθθ力の世界 にお いて も、物語 を明確 に 地 図化す る こ とがで きる こ とか ら、舞台 とな ってい る現実 の場所や ファンタジーの世 界 との比 較 が容 易 にな り、物語 の枠組 み ともな る外 の 性界 と内な る世界 との境や 、物 語 にお け る登場人 物 の位 置 な どが明 らか に され る。 また 、「地 図

Jと

い うの は子 どもの心 の なか の地図 とも重 な つてお り、物語 の地 図 を辿 ることは 子どもの本質 を探 ることに もな りうる し、地図上 に記 され た 「家

Jの

位 置 は物 語分析 にお いて、非 常 に有効 に働 く。 上 に載せ た

Shepardの

地 図 (図

3)で

は 、森 や 草原 を斜 め に横 断 す る よ うに川 が流れ 、中央 に

OwIの

住 む〃the Hundred Acre Wood″ とよばれ る森 が配 置 され て い る。 地 図 の両 端 に 、 この

世 界 の 番 人 で あ るか の よ うに

Poohと

ChristOpher Robinの 家 が あ り、

Poohの

家 のす ぐ下 に 、

Pigletの家 が 彼 の パ ー トナ ー の 地 位 を 示 す か の よ うに位 置 す る。 外 界 との 境 は 、 上 部 に″

TO

NORTH POLE″

と され る石や 岩 だ らけ の川 と、ハ チ の た くさん い る木 が 、下部 に大 水 の 出 る川 と 27

(28)

じめ じめ して い て寂 しい 場 所 で あ る″

EEYORES GLOOMY PLACE″

が配 され 、い ず れ も簡 単 に は

入 り込 め な い よ うな場所 に な っ て い る。 入 り日は 、Christopher Robinか

Poohか

Pigletの 家 、

あ るい は″NICE FOR PIKNICKS″ と記 され た 丘 とな り、読 者 を含 めた この地 へ の訪 問者 は 、 この

世 界 の イ ベ ン トや 住 人 た ち に突 然 巻 き込 まれ る。 ま た 、そ の ピクニ ック地 のす ぐ下 に

Kangaと

Rooの

居 場 所 が 、 そ の 隣 に Rabbit一族 の場 所 が あ り、 これ らは い ず れ も外 界 に比較 的 近 い 場 所

だ と考 え られ る。 これ は

Kangaと

Rooが

外 か らや つ て きた者 で あ る こ と、 ま た Rabbitが他 者

を あま り受 け入 れ た くな い こ とか ら外 を見 張 つて い るの だ とも考 え られ る。

Poohの

世 界 に深 く

入 り込 ん で い く と、Six Pine Treesがあ り、

Heffalumpの

落 と し穴 が あ り、

Woozleを

探 した場

所 が あ り、 と

Poohの

世 界 の 冒険 が待 ち受 け る。 中央 に広 く配 され た′′the Hundred Acre Wood′′

は 、森 の持 つ 「隠れ 場 所 」「妖 精や 聖 霊 が住 む 場 所 」「魔 法 と関連 した場 所 」「無 意 識 」 とい つ た

イ メー ジ (フ リー ス

260)か

らも、 この世 界 の 中央 深 い ところ に置 かれ て い るの は大 変 意 味 深 い。

ま た 、 こ こに住 む

Owlは

、学 校 の先 生 で あ った

Milneの

父 親 と重 ね 合 わせ る こ ともで き、父 親

を思 わせ る存 在 が この世 界 の 中心 近 くに い る こ とは 、父親 の語 る物 語 で あ る こ とを暗示 して い る。

そ の点 か ら考 え る と、中心 部 に位 置 す る

Owlと

、端 の ほ うに追 いや られ て い る

Rooの

母 親

Kanga

とは対 照 的 で あ ろ う。 最 後 にEeyoreの居 場所 は外 界 と接 して お り、 人 を寄 せ つ けな い よ うな陰 鬱 さを備 え た 場 所 とな っ て い る が 、

Eeyoreは

父 親 像 と重 な る

Owlと

、 この 世 界 を統 治 す る ChristoPher Robinに 守 られ て い る と も思 え る し、 ま た 、大 人 と して外 界 に近 い場所 に い るの は 適 当だ と も考 え られ る。 以 上 の よ うに シ ンプル な構 図 なが ら、 よ く考 え られ た配 置 で あ る こ とが わ か る。

Poohの

世 界

(=フ

ァ ン タ ジー の世 界

)と

、そ の外側

(=現

実 世 界

)と

の境 も明確 な もの で は な い。 この 曖 味 さは 、子 どもの遊 び 、想 像 力 か ら生 まれ て く る フ ァ ン タ ジー の世 界 が現 実 世 界 の延 長 で あ り、子 ど もた ちの 心 の 中で は 両者 の 区別 が 明確 で は な い こ とを示 唆 して い る。 日常生 活 の遊 び と冒険 と両親 ・ ナ ニー の存 在 、友 達 で あ り子 分 で あ る子 ど も部 屋 の玩 具 が 、子 ど もの心 の 中 に い る様 子 が そ の ま ま描 き 出 され て い るた め、 この地 図 は子 どもの心 の地 図 だ と考 え る こ ともで き る。 つ ま りこの地 図 は、「子 ど も部屋 」 が 主 た る生 活 空 間 で あ る子 どもの 心 、「子 ども部 屋 」

参照

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