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これからの人権行政・同和行政の視点と課題--人権相談・人権救済のあり方と一般施策の活用を中心に

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Academic year: 2021

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(1)こ れ か ら の人 権 行 政 ・同 和 行 政 の視 点 と 課 題 人 権 相 談 ・人 権 救 済 のあ り 方 と 一般 施 策 の 活 用 を 中 心 に. 一、 一般 施 策 を 活 用 し た 同 和 行 政 の創 造. ①部落差 別は現在社会 の矛盾 が集中的 に表出 したもの. 北. 口. 末. 広. 社 会 に は、 い つの時 代 であ っても様 々 な 課 題 や 矛 盾 が存 在 す る。 そ う し た社 会 矛 盾 か ら 個 別 問 題 が 発 生 し 、 社 会 に. 様 々 な課 題 を提 起 す る。 部 落 差 別 も 一九 六 五 年 の内 閣 同 和対 策 審 議 会 答 申 が指 摘 し て いる よ う に ﹁同 和 問 題 も ま た 、. す べ て の社 会 事 象 が そ う であ る よ う に、 人 間社 会 の歴史 的 発 展 の 一定 の段 階 にお い て発 生 し 、 成 長 し 、 消 滅 す る 歴 史 的 現 象 にほ か な ら な い﹂問 題 であ り 、 社 会 的 矛 盾 の 一つであ る。. 部 落 差 別 は 現 在社 会 の矛 盾 が 集中 的 に表 出 し た も の であ り 、今 日 の社 会 問 題 の縮 図 でも あ る 。 昨 年 (二 〇 〇 一年 ). 一1一.

(2) 九 月 の大 阪 府 同 和対 策 審 議 会答 申 に お い ても ﹁同 和地 区 に現 れ る 課 題 は 、 現 代 社 会 が 抱 え る さ ま ざ ま な 課 題 と 共 通 し てお り、 そ れ ら が 同 和地 区 に集 中 的 に 現 れ て いる と み る こと が でき る 。. こ のた め、 同 和地 区 に対 す る 新 た な 差 別 意 識 、 社 会 的 排 除 を 再 生 産 さ せ な いた め にも 、 現 在 社 会 の抱 え る諸 問 題 に. 対 す る よ り 有 機 的 ・効 果 的 な 施 策 の取 組 が重 要 であ る 。﹂ と指 摘 さ れ 、 同 和 地 区 の特 異 な 問 題 で は な く、 現 在 社 会 の. 矛 盾 と 同 様 であ る こと を 述 べ て いる 。 大 き な 違 いは 、 そ れ が 集 中 的 に現 れ て い るか ど う か と いう こと であ るが 、 矛 盾. が 集 中 し て いる と いう こと は 、 単 な る量 の問 題 で はな く 、 質 的 にも 変 化 し て い る場 合 が 少 な か ら ず 存 在 し て い ると い う こと でも あ る 。. ②集中する こと による質的変化. 例 え ば 太 陽 光 が 新 聞 紙 に自 然 に照 らし て い るだ け な ら、 紙 面 を 読 む た め に便 利 なも の であ る が、 そ の太 陽 光 と新 聞. 紙 の問 に虫 眼 鏡 を 置 けば 、 太 陽 光 が 一カ所 に集 中 的 に 照射 さ れ、 光 が集 中 す る焦 点 が燃 え出 す 。 光 が集 中 化 す る こと に よ って、 新 聞 紙 と の関 係 では質 的 に変 化 し てい る の であ る。. こ の太 陽 光 の例 のよ う に現 代 社 会 の矛 盾 が集 中 す る こと に よ って、 単 な る格 差 では な く、 差 別 を存 続 し強 化 す る役 割 を 担 う こと に な る場 合 も 存 在 す る。. ま た、 こ れ ら の集 中 し た社 会 的 課 題 を 解 決 す る政 策 や手 法 を確 立 す る こと は、 一般 的 な社 会 的 課題 を解 決 す る の に. 大 き く貢 献 す る。 社 会 的 矛 盾 は個 別 の相 談 を 通 し て明 ら か に な る こと が多 く、 これ ら の相 談 を解 決 し て いく こと を 通. 一2一.

(3) これ か らの人 権 行 政 ・同 和 行 政 の視 点 と課 題. じ て、 先 に紹 介 し た 大 阪 府 同 和 対 策 審 議 会 答 申 にお い ても ﹁現 代 社 会 が 抱 え る さ まざ ま な課 題 と共 通 し て お り﹂ と述 べら れ て い るよ う に社 会的 な 課題 を解 決 す る政 策 を 確 立 す る こと にも 繋 が って いく 。. ③失業 問題に代 表される矛盾 の集中. そ の端 的 な 今 日的 事 例 と し て、 失 業 問 題 が あ る。 大 阪 府 と 府 内 の市 町 村 で行 わ れ た 二〇 〇 〇 年 部 落 問 題 実 態 調査 結 果 は そ の こと 顕 著 に示 し て い る。. 同 和 地 区 の失 業 率 は、 男 性 九 ・七 %、 女 性 八 ・二 % で あ り、 府 平 均 の六 ・六 %、 五 ・六 % に比 較 し て男女 と も高 く. な って い る。 特 に四 〇 歳 代 男 性 の失 業 率 が 高 く 、 四〇 歳 ∼ 四 四 歳 で 一〇 ・○ % ( 府 平均 四 ・二 %)、 四五 歳 ∼ 四九 歳. で八 ・○ % (府 平 均 四 ・二% ) にな ってお り、 大 阪 府 の約 二倍 と な って い る。 さ ら に、 若 年 者 の失 業 率 は、 府 平均 に. 比 較 し て非 常 に高 く 、 一五 歳 ∼ 一九 歳 で男 性 三 一 ・三 % ( 府 平 均 一五 ・六 %)、 女 性 二 〇 ・六 % (府 平 均 一二 ・ 一% )、. 二〇 歳 ∼ 二 四歳 で男 性 一五 ・○ % ( 府 平 均 九 ・九 %)、 女 性 一六 ・九 % (府 平 均 八 ・九 % ) に達 し て い る。. ま た、 現 在 の社 会 の基 盤 に な り つ つあ る パ ソ コ ン の普 及率 は、 ﹁消 費 動 向 調 査 (二 〇 〇 〇 年 実 施 調 査 結 果 )﹂ で全 国. の パ ソ コン世 帯 普 及 率 三 八 ・六 %、 近畿 地 方 が 三 八 ・四% と な ってお り、 同 和地 区 の普 及 率 は そ れ より も低 く、 二 二 ・. 三 %と な って い る。 イ ンタ ー ネ ット の利 用 率 に至 っては、 ﹁二 〇 〇 〇年 度 版 通 信 白 書 ﹂ によ る と、 全 国 の イ ンタ ーネ ッ. ト の個 人 利 用率 が 二八 ・九 % に対 し、 同 和地 区 の利 用率 は 一四 ・四 % で、 そ の半 分 と な って いる 。. 一3一.

(4) ④ 多 様 化 し た ニーズ や 問 題点 に対 応. こ のよ う な事 例 か らも 現 代 の社 会 的 矛 盾 が同 和 地 区 に集 中 的 に現 れ てい る と いう こと が でき る 。 こ のよ う に同 和 地. 区 に集 中 的 に現 れ てい る課 題 は、 い う ま でも な く社 会 的 な課 題 でも あ る と いう こと を 理 解 し て いた だ き た いた め であ る。. 一方 で同 和 地 区 内 に お い ても生 活 水 準 等 の格 差 が広 が り多 様 化 し てき てお り、 一律 に特 別 措 置 を 展 開 す る こと が 現 状 と 合 わ な く な ってき てい る。. そ う し た現 状 を ふ ま え つ つ、 多 様 化 し た ニーズ や問 題 点 を克 服 す る た あ には 、 同 和 地 区 や 部 落 出 身 者 だ け に 一律 に. 網 を か ぶ せ る特 別措 置 では な く、 部 落 出 身 者 を は じ め と す る地 域 住 民 の個 々 の相 談 に真 摯 に応 じ 、 解 決 へ導 い て いく. 活動 が特 に重 要 に な ってく る。 これ は 今 後 の同 和 行 政 の主 要 な 課 題 が 、 部落 出 身 者 の自 立 や 自 己 実 現 の達 成 と いう こ と と も 関 わ って いる 。. 大 阪府 同 和 対 策 審 議 会 にお い ても ﹁今 後 の同 和 問 題 解 決 の ため の施 策 の基 本 目 標 ﹂ を 達 成 す る ため に は ﹁① 府 民 の. 差 別 意 識 の解 消 ・人 権 意 識 の高 揚 を 図 る た め の諸 条 件 の整 備 、 ② 同 和 地 区 出 身 者 の自 立 と自 己実 現 を達 成 す る た あ の. 人 権 相 談 を 含 め た諸 条 件 の整 備 、 ③ 同 和地 区 内 外 の住 民 の交 流 を促 進 す る た め の諸 条 件 の整 備 を図 る こと が必 要 ﹂ と. 指 摘 さ れ 、 自 立 と 自 己 現 実 を 達 成 す る た め の人 権 相 談 を 含 め た諸 条 件 の整 備 の重 要 性 を 明 確 に し てい る。 そ し て、 こ. れ ら の課 題 を 推 進 し て いく ため にも 現 在 の 一般 施 策 で不 十 分 であ れ ば 、 現 行 の 一般 施 策 を 改 革 し た り、 新 た な 一般 施 策 を 創 設 す る必 要 が あ る の であ る。. 一4一.

(5) これ か らの人 権 行 政 ・同 和 行 政 の 視 点 と課 題. ⑤ 剛般施策 の創造 で就労支援. 例 えば 、 先 に示 し た大 阪 の 二〇 〇 〇 年 部 落 問 題 実 態 調 査 結 果 に現 れ て いる失 業 率 の高 さ の問 題 を 克 服 す るた め に は、. 失 業 し て い る個 々 の人 々 への相 談 を 受 け、 そ れ ぞ れ のケ ー ス に応 じ た就 労 メ ニ ューを 提 示 し 、 支 援 し て いく 必 要 が あ. る。 ま た、 就 労 支 援 策 を 実 現 す る に は ど のよ う な 一般 施 策 を 活 用 す る 必 要 が あ る のか と いう こと も 相 談 対 応 者 は熟 知. し てい く必 要 が あ る。 そ れ だ け では な く、 一般 施 策 が な け れ ば先 にも指 摘 し た よ う な 新 た な 一般 施 策 を 求 め る運 動 を 展 開 す る こと も重 要 にな ってく る。. 大 阪 では、 こう し た 問題 を解 決 す る た め に部 落 出 身 労 働 者 に再 教 育 の機 会 を 提 供 す A (Aダ ッシ ュ) ワー ク創 造 館 を 一般 施 策 を 活 用 し て 一九 九 一年 七 月 にオ ープ ンし た 経 験 を 持 つ。. 元 々、 同 和 対 策 の転 離 職 者 (中高 年 ) の訓 練 校 であ った 大 阪 府 立 芦 原 職 業 訓 練 校 の改 革 か ら 始 ま った取 り組 み が、 κ. ワー ク創 造 館 に結 実 し た の であ る 。 各 国 の職 業 訓 練 を はじ め と す る国 際 的 水 準 や国 内 の職 業 訓 練 の実 態 、 大 阪 府 下 の. 中 小 企 業 の訓練 ニーズ の調 査 や 同 和 地 区 の訓 練 要 望 等 を 検 討 し た 結 果 、 これ ま で の公 共 訓 練 の持 って い た技 能 編 重 、. 期 間 の固定 化 、 失 業 者 中 心 と いう 限 界 を 克 服 し 、 労 働 者 の生 涯 にわ た る柔 軟 で効 果 的 な教 育 訓 練 の保 障 を 打 ち 出 し た の であ る。. これ ら の考 え 方 を ふ ま え 、 雇 用 促 進 事 業 団 立 地 域 職 業 訓 練 セ ンタ ー の誘 致 を大 阪 府 は国 に求 め る と と も に、 大 阪 市. にも 働 き か け ﹁大 阪 市 域 コミ ュニテ ィ ・カ レ ッジ 構 想 推 進 連 絡 調 整 会 議 ﹂ を設 置 し、 労 働 行 政 だ け では な く、 教 育 行. 政 、 民 生 行 政 、 商 工 行 政 を ま き こ んだ プ ロジ ェク ト に な り、 今 日 の爾 大 阪 生 涯職 業 教 育 振 興協 会 (A ワー ク 創造 館 ). 一5一.

(6) に な った の であ る。 こ の施 設 で行 わ れ て いる カ リ キ ュラ ムも 時 代 に柔 軟 に マ ッチし た も の で、 多 く の成 果 を 上 げ て い. る。 現 実 にも 部 落 出 身 者 が 地 域 の就 労 相 談 か ら A ワ ー ク創 造 館 で の学 び に結 び つく 例 も 多 く 、 失 業 率 の格 差 拡 大 に 一 定 の歯 止 め を か け る こと に繋 が ってい る。. ま た 、 こ の施 設 は部 落 出 身 労 働 者 のみ な ら ず、 職 業 教 育 機 会 が 奪 わ れ てき た 障 害 者 や多 く の マイ ノリ テ ィー、 そ の. 他 中 小 企 業 で働 く 労 働 者 や失 業 中 の労 働 者 な ど の安 定 就 労 の ため の再 教 育 機 会 を 提 供 す る上 で大 き く役 立 ってい る。. ⑥多 くの市 民が活 用 できる生涯職業教育施設. つま り A ワ ーク創 造 館 は 部 落 出 身 者 や部 落 出 身 者 が 経 営 す る中 小 企 業 の職 業 教 育 ニー ズ に応 え る だ け でな く、 一般 施 策 と し て多 く の市 民 の職 業 教 育 ニーズ にも 応 え て い る。. そ のよ う な 意 味 で、 こ の施 設 は、 同 和 地 区 出 身 者 の自 立 と 自 己 現 実 を 達 成 す る た め に役 立 ってお り、 一般 施 策 を 活 用. し た 同 和 行 政 の 一つであ ると いえ る。 さ ら に、 一般 施 策 であ る た め に、 同 和 地 区 や部 落 出 身 者 に 限定 し た 施 策 では な. く 、 多 く の市 民 が 活 用 でき る生 涯 職 業 教 育 施 設 でも あ り、 多 く の人 々 か ら高 い 評価 を 受 け て いる 。 同 和 対 策 で ニーズ. に合 わ な く な って いた 職 業 訓 練 校 を 改 革 す る こと か ら始 ま った取 り組 み が発 展 し、 一般 施 策 と し て、 す ば ら し い施 設. にな った 経 験 は、 これ か ら の同 和 行 政 を 創 造 し て い く上 で大 き な示 唆 を与 え てい る 。 こ の取 り 組 み は か な り 大 規 模 な. も の であ った が 、 も っと 小 さ な事 業 や政 策 で あ って も 通 じ る も の であ り、 今 後 こ のよ う な 視 点 が 同 和 行 政 の推 進 に求 あ ら れ る。. 一6一. 第16号 人権問題研究資料.

(7) これ か らの人 権 行 政 ・同 和 行 政 の視 点 と課 題. 二、 関係 性を 変 え る政 策創 造. ① 差別は人と人と の関係性. と こ ろ で、差 別 は人 と 人 と の関 係 の中 で起 こる。 も のは 人 を差 別 し な いし、 人 間 以 外 の動 物 も 人 を 差 別 し な い。 よ っ て人 が人 を 差 別 し な く な れ ば 差 別 は な く な る。 極 め て単 純 な 真 実 であ る。. ま た、 こ の真 実 によ って、 人 と 人 と の関 係 に差 別 問 題 を 倭 小 化 し よ う と し、 人 の心 ( 意 識 ) の問 題 と し て のみ 差 別. 問 題 を捉 え よ う と す る 。 今 日 、 部 落 問 題 や同 和 行 政 にお い て こ の傾 向 が強 ま ってい る。 確 か に人 と人 の関 係 性 や意 識. の問題 は 差 別 問 題 を 考 え て いく 上 で重 要 な 柱 の 一つであ る。 し か し、 そ れ が表 層 的 に捉 え ら れ る こと に危 惧 の念 を 抱 く。. な ぜ な ら 人 と 人 と の関 係 性 を 改 善 す るた め に交 流 の みが 強 調 され 、 意 識 の問 題 を 改 善 す る た あ に人 権 教 育 ・啓 発 の. 必 要 性 のみ が 語 ら れ る か ら であ る。 差 別 ・被 差 別 の立 場 の人 々 の交 流 も 大 切 であ り、 人 権 教 育 ・啓 発 も 重 要 であ る 。. そ れ ら を 促 進 す る こと は これ か ら 益 々重 要 に な ってく る が、 表 層 的 な捉 え方 を す る こと によ って、 具体 的 施 策 も表 層. 的 な も の にな ら ざ るを 得 な い。 そし て、 表 層 的 な施 策 に よ って問 題 の本 質 を深 め る こと が でき ず、 問 題 の根 本的 解 決 を 遠 ざ け てし ま う か ら であ る。. 一7一.

(8) ② 社 会 シ ステ ム と 関係 性. 人 と 人 と の関 係 は 社 会 の種 々 の シ ス テ ムと 密 接 に 関 わ って い る し 、 人 の心 の問 題 も 同 様 で あ る 。 差 別 ・被 差 別 の. ﹁関 係 性 ﹂ と ﹁社 会 の シ ス テ ム﹂ と ﹁意 識 ・感 覚 ﹂ は連 動 し て い る。 人 と人 と の関 係 を 改 善 す る と き、 交 流 だ け で は. 解 決 し な い。 関 係 を 歪 め てい る、 あ る いは 断絶 さ せ て い る状 態 が な ぜ 存 続 し て い る のか と いう こと を 究 明 し、 原 因 を. 解 明 し な い 限 り 人 と 人 と の関 係 、 差 別 ・被 差 別 の関 係 を 改 善 す る こ と は で き な い。 ﹁意 識 ・感 覚 ﹂ の問 題 も 、 拙 著. ﹁人 権 の時 代 を ひら く 1改 革 への ヒ ント﹂ (解 放 出 版 社 ) の中 で論 じ た が 、 社 会 シ ステ ムと 切 っても 切 れ な い関 係 に あ る。. そ の社 会 シ ス テ ムと ﹁関 係 性 ﹂ の深 い繋 が り を 示 す 事 例 が 一九 世 紀 の ア メ リ カ合 衆 国 にあ った。 アメ リ カ合 衆 国 の. 北 東 部 に コ ッド岬 が あ り 、 そ の先 に マー サ スヴ ァイ ン ヤ ー ドと いう 島 が あ る。 そ の島 で は 一九 世 紀 ま で ﹁ろ う者 ﹂ が 多 か った。. な ぜ そ の島 で ﹁ろ う 者 ﹂ が 多 い のか を 人 類 学 の視 点 で調 査 に入 った ハー バ ー ド大 学 の エ レ ン ・グ ロー スが アメ リ カ. 大 陸 では考 え ら れ な い事 態 に遭 遇 す る の であ る。 これ は ア メ リ カ大 陸 に限 った こと で は な く、 マー サ スヴ ァイ ンヤ ー. ド島 以 外 の地 球 上 に住 む ほ と ん ど の人 々 も 同 様 であ るが 、 ﹁ろう 者 ﹂ に対 し て ﹁障 害 ﹂ を 持 って い ると 見 なす 。 私 自. 身 も ﹁障 害 ﹂ 者 差 別 を 克 服 す る た め に 努 力 し て い る つも り であ る が 、 ﹁ろ う 者 ﹂ の人 々を 言 葉 が 不 自 由 、 耳 が 不自 由 だ と 捉 え て い る。. し か し 、 マー サ スヴ ァイ ンヤ ー ド島 のす べ て の島 民 は ﹁ろ う者 ﹂ を ﹁障 害 ﹂ を 持 って い る と見 な し てい な か った の. 一8一. 第16号 人権問題研究 資料.

(9) これか らの人権行政 ・同和行政 の視点 と課題. であ る 。 直 ぐ に は信 じ が た いと 思 う が、 私 た ち の感 覚 と は全 く違 って、 ﹁障 害 ﹂ を 持 って い ると 見 な し ては いけ な い. と か 、 あ え て そ のよ う に思 わ な く ては な ら な いと い った よ う な も の では な く 、 自 然 体 で ﹁障 害 ﹂ を 持 って い ると 思 っ. て いな か った の であ る 。 私 た ち の感 覚 を 援 用 し て表 現 す るな ら 髪 の毛 の色 が 黒 いか 茶 色 いか 、 目 の色 が 青 いか 黒 いか ぐ ら い の違 いし か感 じ て いな か った の であ る。. ③差別 ・被差別 の関係性を改善. ア メリ カ 大 陸 か ら 渡 った エ レ ン ・グ ロー スにと って は当 初 は不 思 議 であ った が 、 し ば ら く し て アメ リ カ大 陸 と の決. 定 的 な 違 い に気 づ いた の であ る。 つま り、 マー サ スヴ ァイ ンヤ ー ド の人 々 は、 ﹁ろ う者 ﹂ だ け でな く、 ﹁ろ う者 ﹂ で な. い人 々も ほぼ す べ て の島 民 が 手 話 が でき た の であ る。 こ の こと に よ って、 ほぼ す べ て の島 民 が 島 内 で は コミ ュ ニケ ー シ ョン に不 自 由 し な か った の であ る。. 当 時 の島 の主 要 な産 業 は農 業 と漁 業 であ り、仕 事 上 にお い ても 確 実 に コミ ュニケ ー シ ョンが取 れ 、何 の支 障 も な か っ. た の であ る。 時 に は 口語 よ りも 手 話 の方 が便 利 な場 合 す ら あ る。 こ の島 では 口語 の でき る人 も 手 話 を 学 ぶ シ ステ ム が. 日常 生 活 の中 で出 来 上 が って い た の であ る。 す べ て の人 が 日常 生 活 の中 で手 話 を 学 ぶ社 会 シ ステ ム が成 立 し てい な け. れ ば 、 口語 を 話 せ る人 々 の ﹁ろ う者 ﹂ に対 す る感 覚 は、 全 く違 った も のに な った と い え る。 こ のよ う な社 会 の シ ス テ. ム が存 在 し て い た か ら こ そ ﹁ろ う者 ﹂ でな い人 々 と ﹁ろ う者 ﹂ と の関 係 が、 差 別 ・被 差 別 の関 係 では な か った の であ. る。 こ の よ う な両 者 の関 係 性 は意 識 の問 題 だ け では な く、 そ の前 提 であ る社 会 シ ス テ ムも大 き く 関係 し て いる こと を. 一9一.

(10) 示 し て いる 。. そ し て、 こ の社 会 シ ス テ ムも長 い年 月 を か け て作 ら れ る文 化 や 慣 習 と い った も のか ら そ の時 々 の政 治 や経 済 の政 策. と い った短 期 間 で構 築 さ れ る も のま であ り、 国 際 レ ベ ル の政 策 か ら 国 ・地 方 自 治 体 や個 々 の組 織 、 家 庭 の よう な 小 さ な単 位 のも のま で存 在 す る。 これ ら の政 策 も人 々 の意 識 や 関 係 性 に大 き く 影 響 す る。. ど のよ う な政 策 が差 別撤 廃 ・人 権 確 立 に結 び つき 、 差 別 ・被 差 別 の関 係 性 を 改 善 す る こと に繋 が る のか を 考 察 す る. こと が重 要 な の であ る。 一つの政 策 が 人 々 の意 識 や 関 係 性 を 大 き く 変 え る こと も あ り 得 る。 あ る政 策 に よ って人 々 の. 関 係 が悪 化 し、 差 別 が強 化 さ れ る場 合 も 存 在 す るし 、 一つの政 策 によ って人 々 の関 係 が 改 善 さ れ 、 差 別 撤 廃 に繋 が っ て いく こと も あ る。. 先 の マー サ スヴ ァイ ンヤ ー ド の場 合 は長 い年 月 を か け て出 来 上 が った 手 話 学 習 シ ス テ ム であ るが 、 こ の シ ステ ムを 参 考 にし な が ら 地方 自 治 体 にお け る政 策 を 考 え てみ る こと も でき る。. ④ 多様な政策 の創造を. 政 策 と は 、 立 法 ・制 度 であ り 、 人 と 財 源 を ど の よう に活 用 す るか と いう こと であ る。 課 題 と 政 策 は違 う 。 国 や地 方. 自 治 体 、 個 々 の組 織 にお い ても 課 題 を 示 す だ け で は そ の課 題 を 克 服 す る こと は でき な い。 そ の課 題 を 解 決 す る ため の 政 策 を 立 案 し 、 それ を 実 行 に移 さ な け れ ば 課 題 を 克 服 す る こと は でき な い の であ る。. 例 え ば マー サ スヴ ァイ ン ヤ ー ド に近 づ け るた め に、 あ る地 方 自 治 体 で手 話 を でき る人 を 養 成 し 、 手 話 が でき る市 民. 一10一. 第16号 人権問題研究資料.

(11) これ か らの 人 権 行 政 ・同 和 行 政 の 視点 と課 題. や 町 民 の割 合 を 全 国 ト ップ に す る と い う 課 題 を 設 定 し た場 合、 ど のよ う な 政 策 が 可 能 か 。 市 民 に手 話 講 習 の参 加 を 呼. び か け る のも政 策 の 一つであ る が、 そ のた め に も誰 (ど の部 署) が、 ど れ く ら い の財 源 で、 ど のよ う な 内 容 でと い っ. た よ う な こ とを 決 定 す る こ と が必 要 に な ってく る。 これ が政 策 であ り、 立 法 ・制 度 、 人 、 財 源 の問 題 に集 約 さ れ てく. る。 参 加 を 呼 び か け る た あ の広 報 ・宣 伝 費 や広 報 の内容 を作 り上 げ る た め に必 要 な 人 材 と 財 源 を ど のよ う に活 用 す る. か と い う こ と であ る。 よ り少 な い 予算 でよ り効 果 を 上 げ る た め には ど のよ う な 政 策 が 必 要 な のか を 考 え て いく こと が 益 々重 要 に な ってく る。. こ の地 方 自 治 体 の場 合 も、 も っと 多様 な政 策 が 考 え ら れ る 。 既 存 の手話 サ ーク ルが 存 在 す る 場 合 、 そ の手 話 サ ー ク. ル の手 話 講 習活 動 を 活発 にす め た め に手 話 講 習 支 援 事 業 と いう 政 策 を 創 造 し 、 場 所 の無 償 提 供 や 講 習 時 の財 政 的 支 援. 等 を 展開 す る こと によ って、 行 政 機 関 が 行 う 手 話 講 習 と そ のた あ の広 報 宣 伝 費 よ り も 少 な い財 源 でよ り 効 果 を 上 げ る. こと も考 え ら れ る 。 安 易 に行 政 責 任 を 免 罪 す る こと にな っては いけ な いが 、 限 ら れ た 予 算 と 限 ら れ た 人 材 を よ り 有 効 に 活 用 す る た あ には 、 政 策 創 造 能 力 を よ り 高 め る こと が 求 め ら れ て いる 。. ま た、 手 話 講 習 を 修 了 し 、 一定 の実 力 が あ る人 には 公 的 な 資 格 制 度 を 作 る こと も 政 策 選 択 の 一つであ り 、 そ の よう. な有 資格 者 を 有 償 ボ ラ ン テ ィ アと し て公 私 を 問 わ ず 活 用 す る こと は 手 話 を 学 ぶ 動 機 付 け にも な る。. 一11一.

(12) ⑤政策立案能力 が必 要. これ ら の政 策 は ﹁障 害 ﹂ 者 のみを 政 策 対 象 に な る特 別措 置 では な く、 す べ て の人 を 政 策 対 象 にす る 一般 施 策 であ り 、. 差 別 ・被 差 別 の関 係 性 を 改 善 す る こと に役 立 つ。 同 和 行 政 の場 合 も、 同和 地 区 や部 落 出 身 者 のみ を 対 象 と す る特 別 措. 置 を 中 心 と し た同 和 行 政 か ら、 一般 施 策 を活 用 し た 同 和行 政 に移 行 し よ う と し て いる 時、 こう し た 政 策 発 想 が 求 め ら. れ て い る。 こ の よ う な政 策 発 想 を 発 展 さ せ て いけ ば、 特 別措 置 を中 心 と し た 同 和 行政 よ り も よ り 一層 差 別 の原 因 に迫. る多 様 な差 別 撤 廃 政 策 を 創 造 す る こと にも な ってい く。 そ のた め にも部 落 差 別 が 現 存 す る か ぎ り 同 和 行 政 が 展 開 さ れ な け れ ば なら な いと い った強 い決 意 と、 多 様 な政 策 創 造 能 力 が必 要 な の であ る。. 手 話 講 習 支 援 事 業 の場 合 も こ の事 業 だ け では な く、 こ の事 業 を サ ポ ート す る種 々 の政 策 を 組 み 合 わ せ る こと によ っ. て、 政 策 効 果 を さ ら に上 げ る こと が でき る。 も し当 該 地 方 自 治 体 の採 用試 験 や教 員 採 用試 験 科 目 に手 話 が 入 れ ば 、 こ. の地 方 自 治 体 を 受 験 す る受 験 者 は合 格 す る た め に手話 を 必死 で学 ぶ こと にな る。 そ れ だ け では な く 、 試 験 の採 点 者 の. 確 保 や養 成 等 にも 広 が ってい き、 そ の地 方 自 治 体 の窓 口 の人 は ほ と ん ど の職 員 が 手 話 が でき る と いう こと にも な って. いく 。 これ が大 学 受 験 や高 校 受 験 に取 り入 れ ら れ れ ば中 学 や高 校 の授 業 も 変 化 し ていき 、 波状 的 な社 会 変革 に も繋 が っ. て い く可 能 性 が あ る。 こう し た政 策 創 造 を 同 和 行 政 の分 野 にお い ても 展 開 でき れ ば、 部 落 差 別撤 廃 が よ り 早 く 実 現 で. き 、 人 権 行政 の発 展 にも寄 与 でき ると 思 う。 これ ま では特 別 措 置 の活 用 を 中 心 に展 開 し てき た こ と によ って、 本 来 も っ. と 深 め る こと が でき た 一般 施 策 の活 用手 法 や改 革 ・創 造 と い った政 策 立 案 能 力 を 発 展 さ せ る こと が でき な か った と い え る。 こ れ か ら は そ れ ら の能 力 を 高 め な け れ ば な ら な い。. 一12一. 第16号 人権問題研究資料.

(13) これ か らの人 権 行 政 ・同 和 行 政 の視 点 と課 題. 三 、 特 別 措 置 か ら 一般 施 策 の活 用 ・改 革 ・創 設. ① 同和行 政 の出 発点は人権相談. 以上 のよ う な 関 係 性 を 変 え る 政 策 創 造 も 人 権 相 談 か ら 始 ま る。 人 権 相 談 は社 会 変 革 の原 点 であ ると とも に、 二 一世 紀 の同和 行 政 や 人 権 行 政 のキ ー ワー ドだ と 言 っても 過 言 で はな い。. 部 落 解 放 運 動 が 一つの課 題 に取 り 組 む 出 発 点 は、 部 落 出 身 者 を はじ め と す る多 く の被 差 別 者 や社 会 的 に困 難 な問 題. を抱 え た市 民 か ら の相 談 や 訴 え であ る。 差 別 事 件 も 同 様 であ る。 差 別 を 受 け た人 々が 相 談 に来 ると こ ろ か ら ほ と ん ど の差 別事 件 に対 す る 取 り 組 み が 始 ま る。. 差 別 を 受 け て相 談 に来 た 部 落 出 身 者 を はじ め と す る市 民 か ら 差 別 事 件 の内 容 を 聞 き 、 加 害 者 と い わ れ てい る市 民 か. ら も事 情 を 聞 いた 上 で、 当 該 差 別 事 件 の内 容 を 確 定 し 、 そ の差 別 性 や背 景 を 分 析 し 、 課 題 を 明 確 にす る の であ る。 そ. う し た 中 で、 差 別 事 件 発 生 の背 景 であ る社 会 シ ステ ム の問 題 点 を 是 正 し つ つ、 相 談 に来 た部 落 出 身 者 や市 民 の人 権 救 済 を 行 って いく の であ る。. 一13一.

(14) ② ﹁特 別 措 置 ﹂ だ け が 同 和 行 政 で はな い. そ の時 、 私 た ち は差 別 を 受 け た 人 の人 権 救 済 を 行 う た め に多 く の法 や制 度 を 活 用 し 、 行 政 機 関 、 N G O や N P O等. の協 力 を 得 る。 そし て、 活 用 す る多 く の制 度 に は、 特 別 措 置 も あ った が、 一般 施 策 も あ った 。 私 た ち は 一般 の制 度 を. 駆 使 し ても 解 決 でき な いよ う な 課 題 に関 し て、 特 別 措 置 の必 要 性 を 訴 え てき た の であ る 。 そ の場 合 にも 、 特 別 措 置 の. 必 要 性 の根 拠 を 明 確 に示 し て、 何 故 それ ら の制 度 が必 要 な のか と いう こと を説 明 し てき た の であ る 。. し か し 、 特 別措 置 の時 代 が 長 く続 いた こと によ って、 同 和 行 政 と い え ば、 ﹁特 別 措 置 ﹂ の こと を 指 す のだ と考 え る. 人 々が 多 く な ってし ま った 。 行 政 機 関 で働 く 多 く の職 員 の中 にも 、 ﹁特 別 措 置 ﹂ だ け が 同 和 行 政 であ る と考 え て い る 職 員 が 少 な か ら ず い る。. こ のよ う に考 え る人 々 は、 同 和 行 政 に関 わ る ﹁特 別 法 ﹂ が期 限 切 れ を迎 え る と 同和 行 政 も終 結 す る と 考 え て い る。 こ れ は 大 き な 間 違 い であ る。. ﹁特 別 法 ﹂ が 期 限 切 れ を 迎 え ると い う こと は、 特 別 措 置 が原 則 と し てな く な る と いう こと だ け であ り 、 同 和 行 政 が. 終 わ る の で はな い。 特 別 措 置 と し て の同 和 行 政 が終 わ る だ け であ って、 一般 施 策 を 活 用 し、 改 革 し 、 創 設 す る中 で同 和 行 政 を 展 開 す る こと は、 これ か ら の重 要 課 題 であ る。. 特 別 措 置 と し て の同 和 対 策 事 業 は、 厳 し い差 別 の実 態 と 早 急 な改 善 の必要 性 、 お よ び これ に対 す る 一般 施 策 の限 界. か ら 導 か れ た 過 渡 的 措 置 であ る こと を 忘 れ ては な ら な い。 こう し た状 況 の中 で、 特 別措 置 が これ ま で の同 和 行 政 の主. 要 な 部 分 を 構 成 し てき た こと も 現 実 であ る が、 特 別 措 置 は同 和 行 政 の全 て では な く、 あ く ま でそ の構 成 部 分 に過 ぎ な. 一14一. 第16号 人権問題研究 資料.

(15) これ か らの人 権 行 政 ・同和 行 政 の視 点 と課 題. い ことを 改 め て認識 す る必 要 が あ る。. 本 来 、 一般 施 策 が 充 実 し て いれ ば 、 特 別 措 置 を 求 あ る必 要 は な か った の であ る 。求 め てき た のは 、 あ く ま でも 部 落 差 別 の撤 廃 であ り 、 差 別 を 受 け た 人 々 や差 別 的 状 態 の救 済 ・是 正 な の であ る。. 部 落 差 別 は 部 落 と 部 落 外 と の関 係 にお い て現 象 す るが 、 そ れを 支 え る社 会 の状 況 が 存在 し て い る こと を 見 逃 し ては. な ら な い。 部 落 差 別 の撤 廃 を め ざ す 同 和 行 政 は こう し た社 会 状 況 の変 革 を め ざ す も の であ り 、 同 和 行 政 を 特 別 措 置 を 中 心 と し た 部 落 対 策 に媛 小 化 さ せ ては な ら な い の であ る。. ③ 一般施策を駆使した 同和行政. 一九 六 五 年 の内 閣 同 和 対 策 審 議 会 答 申 は ﹁同 和行 政 は、 過渡 的 な特 殊 行政 でも な け れ ば 、 行 政 外 の行 政 でも な い。. 部 落 差 別 が現 存 す るか ぎ り こ の行 政 は 積 極 的 に推 進 さ れ な け れ ば な ら な い 。﹂ と 明 記 さ れ てお り 、 一九 九 六 年 の地 域. 改 善 対 策 協 議 会 意 見 具 申 でも 、 こ の答 申 を 再 確 認 し た上 で、 ﹁教 育 、 就 労 、 産 業 等 のな お 残 さ れ た課 題 に つい て は、. そ の解 決 のた め 、 工夫 を 一般 対 策 に加 え つ つ対 応 す る と いう基 本 姿勢 に立 つべき であ る﹂ と し ﹁特 別 対 策 の終 了 、 す. な わ ち 一般 対 策 へ の移 行 が同 和 問題 の早 期 解 決 を 目指 す 取組 の放 棄 を 意 味 す るも の で はな い﹂ と 明 確 に書 か れ て い る。. ﹁同 対 審 答 申 ﹂ で上 記 のよ う な内 容 を 明 記 し な け れ ば な ら な か った のは 、 当 時 にお い て、 現 在 より 根 強 く ﹁同 和 行. 政 は過 渡 的 な 特 殊 行 政 ﹂ であ り 、 ﹁行 政 外 の行 政 ﹂ と い う 認識 が あ ったか ら だ と いえ る 。 こ の認 識 が形 を 変 え て根 強 く 存 続 し てい る の であ る。. 一15一.

(16) これ か ら は 特 別 措 置 と いう 限 ら れ た 範 囲 の施 策 だ け で同 和 行 政 を 展 開 し てき た時 代 か ら、 多 く の 一般施 策 を 駆 使 し. た 同 和 行 政 の時 代 に入 ろう と し て い る。 特 別 措 置 に慣 れ てき たも のに と っては、 当 面 困難 を伴 う か も し れ な いが 、 部. 落 差 別 撤 廃 の視 点 、 人 権 確 立 の視 点 で 一般 施 策 を 活 用、 改 革 、 創 設 す る と いう視 点 を持 ち つ つ、 これ か ら の同 和 行 政. を 展 開 す る必 要 が あ る。 それ ら の原 点 が 人 権 ﹁相 談 ﹂ な の であ る。 一つの相 談 か ら そ の相 談 を 解 決 し つ つ、 広 く 深 く. 問 題 提 起 が でき 、 政 策 化 し 具 体 化 す る部 落 解 放 運 動 の シ ス テ ムが求 あ ら れ て いる の であ る。. ④ 一般 施 策 の改 革 ・創 設. と こ ろ で、 先 に も述 べた よ う に これ ま で の部 落 解放 運動 も 個 々 の相 談 が 原 点 であ り 、 それ ら の相 談 を 原 点 にし て解. 決 のた め の施 策 を 要求 し てき た の であ る 。 そ の施 策 が 、 行 政 側 の財 政 的 事 情 と 運 動 側 の早 期 実 現 方 針 に よ って、 特 別 措 置 と いう形 態 にな った の であ る 。. これ か ら は特 別 措 置 では な く 、 一般 施 策 を 組 み 合 わ せ 、 改 革 、 創 設 す る こと に よ って、 ﹁相 談 ﹂ に対 応 す ると い う. こと であ り 、 有 効 な 一般 施 策 が な け れ ば 必 要 な 一般 施 策 を 創 設 す るた め に部 落 解 放 運 動 を 推 進 す る と い う こ と であ る。. 違 いは 部 落 に限 定 し た 特 別 施 策 が 中 心 か 、 部 落 に限 定 し な い 一般 施 策 が 中 心 か と い う こと であ る。 当 然 、 部 落 に 限定. し た 特 別 措 置 の方 が 行 財 政 も 少 な く て済 み、 ﹁特 別 法 ﹂ が あ るも と では 実 現 も し やす か った が、 一般 施 策 の場 合 は そ のよ う な わ け に は いか な い。. し か し 、 一般 施 策 を 改 革 ・創 設 す ると い う目 標 に は、 こ れ ま で 以上 に多 く の人 の共 感 も得 る。 そ う し た こと を 遂 行. 一16一. 第16号 人権問題研究資料.

(17) これ か らの人 権 行 政 ・同和 行 政 の視 点 と課 題. でき る部 落 解 放 運 動 のシ ステ ムが 必 要 であ り 、 総 合 的 な 人 権 相 談 に柔 軟 に対 応 し 、 解 決 へ導 け る行 政 シ ステ ムと ネ ッ ト ワー ク が必 要 な の であ る。. く り返 し にな るが 人 権 相 談 だ け でな く あ ら ゆ る相 談 に真 摯 に応 じ た 場 合 、 個 々 の相 談 を 解 決 し よ うと す る中 で現 行 制 度 の問 題 点 や 矛 盾 が 明 ら か にな り 、 ど の よう な 制 度 が 必 要 な のか も 明 ら か に な ってく る。. そ のた め にも 多 く の相 談 に対 応 し 、 それ ら 一つ 一つに対 し てど れ だ け 根 元 的 な背 景 分 析 を 行 い、 問 題 提 起 が でき る か と いう こと であ る。. 例 え て いう な ら 、 部 落 の水 田 だ け に水 を 引 っ張 ってく る の では なく 、 水 のか れ てい る水 田全 体 に水 を引 っ張 ってく. る発 想 と 取 り組 み が求 め ら れ てい る の であ る。 そ うす れば 部 落 の水 田 にも 必 ず 水 は く る。 過 去 の施 策 にお い ては、 こ. の水 が部 落 の水 田を 素 通 り し た の であ り、 私 た ち は そ れを 差 別 行 政 と定 義 し た。 今 日 そ のよ う にな ら な いよ う にす る こと が大 切 な の であ る。 そ の シ ス テ ムや施 策 の構 築 が求 め ら れ てい る。. 過 去 に お い ても そ う であ った が、 現 在 にお い ても部 落 に現 れ る様 々 な 課題 は 現代 社 会 の様 々 な 課題 と共 通 し てお り 、. そ の集 中 的 な現 れ と見 る こと が でき る 。 そ の集 中 的 に現 れ て いる諸 課題 を抱 え た人 々 の人権 相 談 に対 応 し 、 解 決 方 策. を確 立 す る こと は 現 代 社 会 の諸 課 題 を 解 決 す る こと にも つな が る 。 ま た 、 逆 に人 権 の視 点 を 持 って現 代 社 会 の課 題 を. 解決 す る こと は 、 部 落 に現 れ る諸 課 題 を 解 決 す る こと にも つな が る。 先 にも 示 し た よ う に今 日、 日本 社 会 が 抱 え る失 業 問 題 は そ の典 型 であ る。. 一17一.

(18) 四、 人 権 相 談 シ ス テ ムが 持 つ機 能. これ ま で、 部 落 解 放 運動 や 同 和 行 政 に関 わ って人 権 相 談 シ ス テ ムを 構 築 す る こと の重 要 性 に つい て繰 り 返 し 述 べ て. き た が、 な ぜ人 権 相 談 が 重要 な のか と いう こと に関 し て、 改 め て そ の機 能 を 整 理 し てお き た い。. ①実態把握機能. ま ず人 権 相 談 シ ス テ ム のも つ機 能 の中 で、 実態 把 握 機 能 を 上 げ る こと が でき る。 差 別 や人 権 侵 害 の現 状 を 把 握 す る. 場 合 、 実 態 調査 や意 識 調査 を実 施 し 、 差 別 事 件 や 人権 侵 害 を集 約 し て、 そ れ ぞ れ の結 果 分 析 を 行 ってき た 。 これ か ら. も こう し た手 法 が 有効 であ る こと は いう ま でも な いが 、 よ り 現 実 感 を も って実 態 を 提 示 し てく れ る の は、 個 々 の人 々. か ら も た ら さ れ る 具体 的 な相 談 であ る 。 一人 の人 の人 権 相 談 か ら 差 別 や 人 権 侵 害 の現 実 が 鮮 明 に描 き 出 さ れ る こと は. 少 な く な い。 統 計 数 字 には表 れ な いが 、 具 体 的 な 相 談 か ら 差 別 事 件 の真 相 や 社 会 の矛 盾 が 投 影 さ れ 、 それ ら の内 容 か ら実 態 調 査 や意 識 調査 の項 目 や結 果 の分析 視 点 も 提 供 さ れ る場 合 が非 常 に多 く あ る。. 近年 、 家 庭 内 暴力 いわ ゆ る D V が 、 大 き な社 会 問 題 にな って いる が 、 これ ら が 社 会 的 に問 題 と し て認 識 さ れ るよ う. にな った のは N P O や行 政機 関 が受 け てき た個 々 の相談 か ら であ る。相 談 を 受 け てい る人 々や相 談 に来 る人 々 は、 個 々. であ っても ほ と ん ど の場 合 、 社 会 的 な事 柄 と 密接 に結 び つい て いる 。 そ れ ら の相 談 が 集約 さ れ る こと によ って、 個 々 の相 談 では な く、 社 会 的 な傾 向 と し て把 握 さ れ る 。. 一18一. 第16号 人権問題研究資料.

(19) これ か らの 人権 行政 ・同 和 行 政 の 視 点 と課 題. さ ら に人 権 相 談 は最 も 新 し い現 実 であ り 、 生 の デ ータ であ る 。 実 態 調 査 や 意識 調 査 で は把 握 す る こと が でき な い現 実 が 提 示 さ れ る こと も決 し て少 な く な い。. これ か ら の部 落 解 放 運動 や 同 和 行 政 を 推 進 し て いく 場 合 、 ﹁あ るが ま ま ﹂ の現 実 や 多 様 化 し た部 落 の現実 を 正 確 に. 把 握 す る こと が、 これ ま で にも 増 し て重 要 であ り 、 人 権 相 談 は 実 態 把 握 の最 前 線 であ り 、 最 あ 有 効 な 手 毅 と い え る。. ② 解決方 策提 示機能とデータ集積機能. し か し 、 人 権 相 談 は実 態 把 握 が 当 面 の目 的 で は な い。 目 の前 に は具 体 的 な問 題 を 抱 え た相 談 者 がお り、 そ の問 題 を. 解 決 す るた め に来 て い る の であ る。 相 談 者 は実 態 を 把 握 し ても ら う ため に来 て い る の で は な い。 相 談 者 は ど の よ う な 解 決 方 法 が あ る のか と いう ア ド バ イ ス等 を 期 待 し て来 て い る の であ る。. 私 自 身 も これ ま で の部 落 解 放 運 動 の中 で たく さ ん の人 権 相 談 に対 応 し てき た が、 そ う し た具 体 的 実 践 の中 で、 多 く. の人 権 相 談 に対 し て解 決 方 策 を 考 え、 提 示 し てき た。 お そ らく そ の よ う な人 権 相 談 が な け れば 考 え る こ とも な か った よう な問 題 も 考 え てき たと 思 う。. つま り、 人 権 相 談 がも た ら さ れ る こ と に よ って、 そ の解 決 方 策 を提 示 し てい く と い う機 能 を担 ってき た の であ る。. ま た、 人 権 相 談 シ ステ ム は解 決 方 策 を提 示 す る だ け で は な く、 相 談 内 容 や相 談 内 容 に対 す る解 決 方 策 を蓄 積 す る機 能 も 併 せ持 つ。. 個 々人 が個 々 の人 権 相 談 に乗 ってい る段 階 では、 解決 方 策 は相 談 に 乗 っても ら った 相談 者 と そ の解 決方 策 を 考 え た. 一19一.

(20) 被 相 談 者 のも の にし か な ら な いが 、 それ が よ り 幅 広 い シ ステ ム にな る こと に よ って、 多 く の人 々 の相 談 内 容 と解 決 方 策が蓄積される。. それ ら の デ ータ が 集 積 さ れ る こと によ って、 先 に示 し た 実 態 把 握 機 能 が よ り高 ま り、 解 決 方 策 提 示 機 能 も よ り高 ま. る。 過 去 の相 談 内 容 と 解 決 方 策 を 活 用 でき ると いう こと は、 現 実 の人 権 相 談 に よ り的 確 に対 応 す る こ と が でき、 人 権. 相 談 シ ス テ ム の強 化 にも 繋 が る。 こ の よう な 好 循 環 が デ ー タ集 積 機 能 を さら に高 め ると い え る。. ③ ネ ット ワー ク 創 造 機 能 と コー デ ィネ ー ト機 能. デ ー タ集 積 機 能 は、 以 上 の よう に相 談 内 容 と解 決 方 策 を 蓄 積 し てい く こと であ る が、 デ ー タ の蓄 積 だ け では な く、. 具 体 的 な 人 権 相 談 に対 応 す ると い う こと は、 多 様 な相 談 者 が数 多 く アク セ スし てく る と いう こと でも あ り、 そ れ ら の 相 談 者 の ネ ット ワー ク の構 築 に繋 が って いく。. 人 権 相 談 の内 容 に は差 別 を 受 け た相 談 や人 権 侵 害 を受 け た相 談 だ け では な く、 教 育 相 談 、 生 活相 談 、 医 療 相 談 、 法. 律 相 談 な ども 含 む。 そ う し た多 様 な問 題 を抱 え る人 によ って自 身 の問題 解 決 を 通 じ た、 人 権 相 談 シ ス テ ムを 中 心 と し た ネ ット ワー ク が構 築 さ れ てい く。. そ れ だ け では な い。 相 談 者 の問 題 を解 決 す る た あ にも ネ ット ワ ーク が 創 ら れ て いく 。 多 種 多 様 な 人 権 相 談 に対 応 す. る た め に は 一つの機 関 だ け では 不 可能 であ り 、 行 政機 関 や 多 く のN P O を は じ め 、 多 く の専 門 機 関 のネ ット ワー クが. 必 要 にな ってく る。 現実 にも これ ま で の相 談 によ って、 事 実 上 のネ ット ワ ー クが でき て い る。. 一20一. 第16号 人権問題研究 資料.

(21) ﹁. これか らの人権行政 ・同和行政の視点 と課題. 具 体 的 な人 権 相 談 に対 応 す る た め に は ネ ット ワ ーク と と も に、 コー デ ィネ ー ト機 能 が 必 要 にな ってく る。 個 々 の相. 談 に的 確 な解 決 策 を 提 示 す る た あ に は、 一つの施 策 だ け では無 理 な場 合 が 多 い。 多 く の施 策 を 組 み合 わ せ て解 決 策 を 提 示 し な けれ ば 具 体 的 な相 談 に的 確 に対 応 でき な い こと は 多 々 あ る 。. 一つの施 策 では効 果 を 発 揮 し な いも の でも、 複 数 の施 策 を講 じ る こと によ って相 乗 効 果 を 生 み出 す も のも あ る。 そ. れ は施 策 だ け では な く、 例 え ば人 権 相 談 にも カ ウ ン セリ ング 型 相 談 と ケ ー ス ワ ー ク型 相 談 の よう な も のが 存 在 す る。. 解 決 策 を パ ッケ ージ のよ う に提 示 でき る ケ ー ス ワー ク型 のも のも あ れ ば、 相 談 者 に寄 り添 って解決 を考 え て いく と い っ. た カ ウ ン セリ ング型 のも のも 存 在 す る。 それ ら の相 談 方 法 を う ま く 組 み合 わ せ て いく コー デ ィネ ー ト機 能 も 求 あ ら れ る。. ④政策提 言機 能と運動課題設定機能. さ ら に、 個 々 の人 権 相 談 に対 応 し て い ると 現 行 施 策 や シ ス テ ムだ け で は相 談 内 容 を 解 決 でき な い こ とも た く さ ん あ. る こと に気 づ く 。 相 談 者 に表 れ た 社 会 矛 盾 を 解 決 す るた め に は、 現 行 の施 策 や シ ステ ムを 改 革 し な け れば でき な い と. いう こと や 新 た な 施 策 や シ ス テ ムを 創 ら な いと 解 決 し な いと いう こと も 数 多 く あ る。 こ の よ う に具 体 的 な人 権 相 談 を. 通 じ て人 権 実 現 のた め に必 要 な 政 策 と はど の よう なも のか と いう こと が 浮 か び 上 が って く る。. つま り 、 人 権 の総 合 相 談 シ ス テ ム に は、 そ の本 来 の役 割 を 通 じ て政 策 提 言 機 能 が必 要 に な り、 相 談 を 通 じ て具 体 的. な 現 実 を 把 握 し て いる こと によ って、 的 確 で強 力 な 政 策 提 言 機 関 にな り 得 る。 ﹁人 権 相 談 は社 会 変 革 の原 点 ﹂ であ る. 一21一.

(22) と 言 わ れ る が 、 こ の政策 提 言 機 能 は そ の最 た る も の であ る 。. こ れ ら の人 権 相 談 シ ステ ムか ら発 せ ら れ た 政策 提 言 の多 く は 部 落 解 放 運 動 の課 題 にも な る。 運 動 体 自 身 が人 権 相 談. シ ステ ム の 一翼 を 担 う こと は い う ま でも な いが 、 そ のよ う な 相 談 シ ステ ムか ら 提 起 され る課 題 は、 こ れ ま でにも 部 落. 解 放 運 動 の課 題 に な ってき た が、 これ か ら の部 落 解 放 運 動 にと って は現 実 の多 様 化 と も 相 ま って、 人 権 相 談 を 踏 ま え た運 動 課 題 設 定 機 能 は よ り 重 要 だ と いえ る 。. 個 々 の相 談 を 通 じ て部落 差 別 に関 わ る社 会 矛 盾 を 明 ら か にし 、 それ ら の矛 盾 を 克 服 す る た め に部 落 解 放 運動 が 展 開. さ れ てき た の であ る 。 よ って相 談 機 能 が 弱 ま れ ば 、 課 題 設 定 機 能 も 弱 体 化 す る と い う こと であ り、 当 然 の こと であ る が、 運動 の社 会 変 革 の エネ ルギ ーも 弱 ま る。. 特 に、 実 態 調 査 や 意 識 調 査 が 行 わ れ な い よ う な状 況 のと こ ろ では、 人 権 相 談 シ ス テ ム の運動 課 題 設 定機 能 は ま す ま す 重 要 にな ってく る。. ⑤人材育成機能と自 己実現支援機能. ま た、 個 々 の相 談 を 解 決 し て いく営 み は 、 人 材 育 成 にも 繋 が って行 く 。 相 談 者 は自 身 の問 題 を 解 決 し て いく こ とを. 通 じ て、 そ の経 験 が同 様 の問 題 で悩 む 新 た な 相 談 者 の ア ド バイ ザ ーと し て生 き る。 こ の よ う に自 身 の問 題 克 服 への経. 験 を い か し てカ ウ ン セリ ング す る こと を ピ ア カ ウ ン セ リ ング と いう が 、 人 権 相 談 シ ステ ム は こ の よ う な機 能 を も 持 つ こと にな る。. 一22一. 第16号 人権問題研究資料.

(23) これ か らの人 権 行 政 ・同 和 行 政 の 視 点 と課 題. それ だ け で はな く 、 個 々 の相 談 を 受 け る人 々も 、 そ の経 験 を 通 じ て相 談 を 受 け る力 量 や そ れ ら の相 談 内 容 を解 決 し. て いく 力 量 も ア ップ す る こと にな る 。相 談 内 容 は 千 差 万 別 であ り 、 同 じ よう な内 容 で あ っても条 件 等 が少 し ず つ異 な. り、 相 談 を受 け る側 にと っては、 日 々 の相 談 内 容 が ケ ー ス ・スタ デ ィ ー であ り、 相 談 の力 量 ア ップ を図 る 研修 と いう 側 面 を 持 って いる。. こ のよ う にピ アカ ウ ン セリ ング を 担 え る よう にな ら な く ても 、 個 々 の相 談 を 解 決 し てい く こと は相 談 者 の自 己実 現. を支 援 し て いる こと にも な って い る。 これ ま で の特 別 措 置 を 中 心 と し た同 和 行 政 は、 一律 に特 別措 置 を適 用 す る と い. う も の であ った が 、 これ では す べ て の人 に よ って異 な る自 己 実 現 の達 成 に は な ら な い こと が多 い 。. 個 々 の願 いや 欲 求 は 、 個 々 の相 談 内 容 に表 れ るも の であ り、 そ の支 援 策 も個 々 に合 わ せ た オ ー ダ ー メイ ド でな け れ ば な ら な い。. 自 己実 現 と は 、 自 己 認 識 、 自 己 決 定 、 自 己 変 革 、 社 会 参 加 、 社 会 変 革 と い った プ ロセ ス全 般 であ り 、 相 談 内 容 も こ. れ ら のど の時 点 のも のか に よ って、 そ の対 応 も 異 な る。 人 権 相 談 シ ステ ム は、 これ ら の相 談 内 容 に対 応 し て いく こと によ って、 自 己 実 現 支 援 機 能 を 担 って い る。. ⑥立法事実提 示機能. 以 上 の よ う な機 能 と と も に、 立 法 事 実 を提 示 す る と いう 重 要 な機 能 を 持 つ。 立 法 事 実 と は 、 法 律 の必 要 性 を 根 拠 づ. け る社 会 的 、 経 済 的 な事 実 であ る が、 具体 的 な相 談 が 集積 さ れ 、 そ れ ら の分 析 を 通 じ て社 会 に政 策 発 信 を す る こと は、. 一23一.

(24) 人 権 確立 社 会 を実 現 し てい く上 で大 き な力 にな る 。 こ のよ う に人 権 相 談 シ ス テ ム は立 法 事 実 提 示 機 能 を 持 つこ と に な る。. そ し て、 これ ら の機 能 を備 え て いる と いう こと は 、 事 実 上 の人 権 政 策 セ ンタ ーと し て の役 割 も 果 たす こ と に な り、. これ から の部 落 解 放 運動 や同 和 行 政 を考 え て いく と き な く て はな ら な い機 能 であ る。 だ か ら こ そ ﹁人 権 相 談 ﹂ が、 こ れ か ら の同 和 行 政 のキ ー ワ ー ド にな る の であ る。. 五、 電子 空間 上 の人権 救済 ・相 談機 関 の必要 性. ① 加 速 す る情 報 化 社 会 を チ ャ ン ス に. そ こ で これ か ら の人 権相 談 シ ス テ ムを 考 え て いく 場 合 、 情 報 化 社 会 を 十 分 に ふ ま え て考 え る必 要 が あ る。. 電 子 工 学 ・情報 工学 の急 速 な進 歩 と と も に情報 化 社 会 が加 速 し、 一〇 年前 に は語 ら れ る こ とも な か った イ ンタ ーネ ッ. ト が連 日 マス メ デ ィ アを 賑 わ し て い る。 コ ンピ ュー タと 通 信 、 テ レビ の融 合 メ デ ィ ア であ る マ ルチ メ デ ィ ア の可能 性 も様 々 な と こ ろ で論 議 さ れ て い る。. 情 報 に関 連 す る テ ク ノ ロジ ー は、 過 去 にお い て予 想 も つか な い よ う な変 革 の 口火 を 切 ってき た。 情 報 化 に と も な う. 社 会 の急 速 な 変 化 に よ って世 界 観 が 変 わ り、 世 界 観 の変 化 が さ ら に情 報 環境 を 変 え、 ま す ま す世 界観 も変 わ る と いう こと が 起 こ って い る。. 一24一. 第16号 人権問題 研究資料.

(25) これ か らの人 権 行 政 ・同 和 行 政 の 視 点 と課 題. これ ま で の技 術 革 新 が 人 間 の肉体 的 な力 を 限 り な く 増 幅 し てき た よ う に電 子 工学 ・情 報 工 学 を 中 心 と す る飛 躍 的 な. 技 術 革 新 が 情 報革 命 を も た ら し、 人 間 の差 別意 識 を も含 め た意 識 を 限 り な く増 幅 し よ う と し て い る。. イ ンタ ーネ ット を は じ め と す る情 報 の社 会 的 基 盤 が 整 備 さ れ る こと によ って、 多 方 面 で コス トと 時 間 が 驚 異 的 な ま. で に圧 縮 さ れ る よ う と し て いる中 で、 そ の功 罪 が 社 会 に大 き な イ ン パ クト を 与 え て い る。 そ の ﹁罪 ﹂ の重 要 な 一つが. 部 落 差 別 を はじ あ とす る差 別 や 人 権 侵 害 扇 動 な ど であ る。 これ ら の ﹁罪﹂ を 克 服 し 、 ﹁功 ﹂ の面 を 推 進 す る た あ にも. 電 子 空 間 内 で起 こる人 権 侵 害 に対 し て、 電 子 空 間 で の人 権 擁 護 の取 り 組 み が 求 あ ら れ て い る。 にも か か わ ら ず 、 現 実 の取 り組 み は大 幅 に遅 れ て いる 。 これ で は時 代 の変 化 を 活 か す こと が でき な い。. ② 電 子 空 間 上 の様 々な ビ ジ ネ ス モデ ル. そ れ で は情 報 化 を ど のよ う に活 用 す れ ば よ い のだ ろう か 。. 例 え ば 電 子 空 問 上 の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ が あ る。 そ の会 員 にな る場 合 、 自 宅 の パ ソ コ ンで必 要 な こと を 書 き 込 ん で送 信. す るだ け であ り 、 入 会 金 も 会 費 も いら な い会 員 であ る。 現 在 で 一五 〇 万 人 を 越 え て い る。 飛 躍 的 な増 加 であ り、 平 均. す ると 一日 で約 二〇 〇 〇 人 増 加 し て い る計 算 に な る。 こ の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ に は会 員 を 勧 誘 す る人 も い な けれ ば ツ アー. に添 乗 す る人 も いな い。 何 人 で こ の サイ ト ( ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ の ホ ー ム ペー ジ ) が 運 営 さ れ て い る のか知 ら な いが 、 登 録 さ れ て い る国 内 外 の宿 泊 施 設 も 一万 件 を 越 え てい る。. こ の サ イ トを 通 じ て予 約 す れ ば か な り安 価 で あ り、 平 均 し て 一割 引 ぐ ら い の値 段 であ るが 、 ホ テ ル に よ って は半 額. 一25一.

(26) のと こ ろも あ る。 ち な み に 一ヶ月 だ け で こ の サ イ トを 通 じ て ホ テ ルを 予 約 し た人 は延 べ 四〇 万 人 を 越 え る。 仮 に 一件. の予 約 で ホ テ ル側 か ら 五 〇 〇 円 の マージ ンが 入 れ ば 、 四〇 万 件 で 二億 円 に な る。 ホ テ ル側 に と っても 宣 伝 にも な り、 予 約 を 受 け る職 員 も いら な い。. ③政治的なカ にもなる莫大な会員数. ま た 、 こ の サイ トを 通 じ てそ れ だ け の予 約 が あ ると いう こと は、 会 員 を 中 心 にか な り の人 が こ の サ イ トを 見 て い る. と いう こと であ り 、 こ の サイ ト上 の バ ナ ー広 告 (サ イ ト上 に張 り付 け てあ る C M で、 それ を ク リ ックす れば 企 業 等 の. ホ ー ム ペ ージ に ア ク セ スさ れ る) 収 入 も 大 き なも の にな る。 そし て、 こ の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ か ら定 期 的 に新 し い情 報 を. 載 せ た 電 子 メ ー ルが 送 ら れ てく る。 ダ イ レク ト メ ー ル で郵 送 す る のと で は経 費 も か な り割 安 に な る。 イ ンタ ー ネ ット が な け れ ば 成 立 し な い ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ であ る。. こ の電 子 空 間 上 の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ は、 先 にも 述 べ た よう に現 在 でも 一五 〇 万 人 を 越 え て お り、 こ れ か ら ます ます 増. 加 す ると いえ る。 これ だ け の人 を 緩 やか であ っても 組 織 し て ると い う こと は多 面 的 に大 き な意 味 を 持 つ。 例 えば 、 政. 府 が 現 在 の消 費 税 率 を 五 % か ら 一〇 % に ア ップし よう と し て、 まず 試 行 的 に旅 行 関 係 の消 費 に関 し て 一〇 % の消 費 税. 率 にす ると いう 案 を 提 示 し た場 合 、 こ の電 子 空 間 上 の ﹁旅 行 代 理店 ﹂ が 会 員 に反 対 を 呼 び か け れば 、 一定 の政 治 的 な. 力 を 持 つと い え る。 それ も ほと んど 人 も 金 も 使 わず に でき る。 既 存 の会 員 に対 す る電 子 メ ー ル上 に載 せ れば よ い こ と. であ り、 それ を 見 た会 員 が 反 応 す る こと に よ って多 数 の反 対 勢 力 を 構 築 す る こ と が でき る。 そ れだ け では な い。 莫 大. 一26一. 第16号 人権問題研究 資料.

(27) これ か らの 人権 行 政 ・同和 行政 の視 点 と課 題. な会 員 数 を バ ック に新 し い旅 行 企 画 が でき る だ け でな く 、 政 府 や地 方 自 治 体 に政 策 提 案 も でき る。 ﹁障 害 ﹂ 者 ・児 が 旅 行 し や す い旅 行 企 画 の提 案 や 自 己 実 現 型 ツア ー の企 画 な ど も でき る。. ④電子空間上 の人権救済 ・相談機関. こ の シ ス テ ムを 部 落 差 別 撤 廃 や人 権 確 立 に活 用 す れ ば 、 電 子 空 間 上 の部 落 解 放 運 動 や人 権 運 動 も大 き く前 進 す る と. いえ る。 こ の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ の会 員 が 飛 躍 的 に増 加 し てい る のは、 会 員 に な れば ホ テ ル等 を 安 く 予約 す る こと が でき、. い ろ い ろな 情 報 が 簡 単 に迅 速 に入 手 す る こと が でき る か ら であ る。 人 権 の実 現 で こ のよ う な シ ス テ ムを創 造 す れ ば会. 員 も 飛 躍 的 に増 加 す ると い え る。 阪 神 淡 路 大 震 災 の時 に多 く のボ ラ ン テ ィ アが活 躍 し た状 況 を見 れ ば非 現 実 的 な こと. で は な い。 マズ ロー が人 間 の欲 求 に関 し て、 欲 求 階 層 説 の中 で、 第 一段 階 が生 理的 欲 求 、 第 二 段 階 が安 全 の欲 求 、 第. 三 段 階 が 所 属 と 愛 の欲 求 、 第 四段 階 が 承認 の欲 求 、 第 五 毅階 が自 己実 現 欲 求 と述 べ て いる が、 そ れ ぞ れ の欲 求 と 人 権 の実 現 を う ま く組 み合 わ せ る こと が でき れ ば成 功 に結 び つく。. 例 えば 、 自 動 車 損 害 保 険 が これ だ け伸 び た のは、 二 〇世 紀 に入 ってか ら の モ ータ リ ゼ ー シ ョン の流 れ と 人 々 の安 全. の欲 求 等 が結 び ついた か ら であ る 。 自 身 や 他 人 の体 や車 が傷 ついた 場 合 に備 え て保 険 に入 って い る の であ る。. も し自 身 の人 権 を 侵害 さ れ た り 、 他 人 の人 権 を 侵 害 し てし ま った 場 合 、 それ に的 確 な ア ド バイ スや サ ポ ー トが な さ. れ る よ う な人 権 救 済 ・相 談機 関 が 電 子 空 間 上 に存 在 す れ ば 、 多 く の人 々 の期 待 に応 え ら れ る。. こ の機 関 では 会 員 が ア ド バイ スや サポ ー トを し ても ら え る でけ で はな く 、 自 身 の人 権 侵 害 に対 す る経 験 を 踏 ま え て. 一27一.

(28) 他 の会 員 に アド バ イ スや サ ポ ー トを す る こ と も でき る よ う に な る だ ろ う。 な ぜ な ら 人権 相 談 には 解 決 方 法 を 提 示 す る. ケ ー スワ ーカ ー型 相 談 と寄 り添 って話 を聞 く カ ウ ン セリ ング 型 相 談 の二種 類 に大 別 でき 、 後 者 の場 合 、 自 身 の立 ち 直 っ. てい った経 験 が アド バ イ スに活 き る か ら であ る 。 こ のよ う な 段 階 に来 た 場 合 、 当 然 の こと な が ら 電 子 空 間 か ら 現 実 空 間 に移 行 し て い く。 こ れ は電 子 空 間 上 の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ も 同 様 であ る 。. 実 際 の旅 行 は電 子 空 間 では な く、 現実 空 聞 でな さ れ る こと と 同 じ であ る 。 こ の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ の ユ ニー クな シ ステ ム. の 一 つに会 員 が宿 泊 し た ホ テ ル の感 想 を そ のま ま 掲 載 し て いる のが あ る 。 そ の こと によ って ホ テ ル側 の宣 伝 だ け で は な く、 利 用者 側 の生 の声 を 聞 く こと が でき 、 ホ テ ルを 選 ぶ と き の参 考 にも な る 。. ⑤ 人権相 談は社 会変革 の原点. と ころ で、 こ のよ う な 人 権 救 済 ・相 談 機 関 を 構 築 す るた あ には 人 権 救 済 ・相 談 に応 え ら れ る多 く の専 門 家 のネ ット. ワー ク が 必 要 であ り 、 電 子 空 間 上 の人 権 救 済 ・相 談 機 関 に は人 権 救 済 ・相 談 の商 店 街 や百 貨 店 的 な 機 能 が 求 め ら れ る。. 電 子 空 間 上 の ﹁旅 行 代 理 店 ﹂ に会 員 の旅 行 の要 望 に応 え る国 内 外 の多 く の宿 泊 施 設 が 登 録 され て い る よう に、 多 種 多 様 な 人 権 相 談 に応 え ら れ る シ ステ ムと ネ ット ワー クが 必 要 であ る。. こ の シ ス テ ム によ って蓄 積 さ れ た 人 権 侵 害 ・救 済 事 例 や相 談 事 例 は、 先 述 し た よう に今 後 の部 落 解 放 運 動 や人 権 運. 動 の糧 にな り 、 立 法 や制 度 の創 設 を 目 指 す と き の立 法 事 実 ( 根 拠 ) にな る。 人 権 相 談 は社 会 変 革 の原 点 であ り、 た く. さ ん の相 談 が 集 ま る よう な 信 頼 でき る民 間 の現 実 空 間 と 電 子 空 間 上 の人 権 救 済 ・相 談 機 関 の早 急 な創 設 が求 め ら れ る。. 一28一. 第16号 人 権問題研究 資料.

(29) これ か らの 人 権 行 政 ・同 和行 政 の視 点 と課 題. す で に電 子 空 間 上 では 様 々な 動 き が あ る。. イ ンタ ーネ ット上 の有 名 電 子 モ ー ルと 組 ん で破 格 の安 さ の法 律 相 談 を 展 開 し 、 個 人 破 産 の申 し立 てに関 し て通常 四. 〇 万 円 を 十 五 万 円 で受 け 、 大 量 受 注 で裁 判 所 等 に提 出 す る書 類 を 効 率 よく 作 る専 用 ソ フト ま で開 発 し て いる 。 こ のよ う に ネ ット法 律 相 談 も 行 わ れ てき て い る。. 山 一フ ァイ ナ ン ス事 件 では 抵 当 証 券 を 購 入 し て い た九 千 数 百 の人 々 の約 半 数 が ネ ット で集 結 し、 二六 人 の弁 護 団 を. 採 用 し て、 二 〇 〇 〇 年 三 月 二三 日 に被 害 額 の約 八 五 % であ る 四五 億 円 を 取 り戻 し てい る。 弁 護 士 への着 手 金 を 一律 一. 万 五 千 円 か ら 七 万 五 千 円 の低 額 にし ても 、 約 四千 五 百 人 か ら集 め た着 手 金 の総 額 は 一億 円 に な った と いう 。. ま た 、 こ のよ う な 動 き を 踏 ま え つ つ、 電 子 空 間 上 の人 権 救 済 ・相 談 機 関 に アク セ スし た く ても でき な い人 々 の問 題. も 念頭 に入 れ てお く 必要 が あ る。 デ ジ タ ル デ バイ ド ( 情 報 技術 格 差 ) の問題 も 電 子 空 間 上 の人 権 救 済 ・相談 機 関 にと っ て最 重 要 問 題 であ る こと を 忘 れ て は なら な い。. 六 、 人 権 救 済 シ ス テ ム の充 実 に向 け て. ①政府か ら独立 した人権救済機 関 の創 設. と こ ろ で、 人 権 相 談 とも 密 接 に関 連 す る人 権 救 済機 関 に関 わ って、 国 の人 権 擁 護 推 進 審 議 会 の答 申 が 二〇 〇 一年 五 月 二五 日 に出 さ れ た。 本 稿 の最 後 にそ の答 申 に関 す る 批 判 的 検 討 を 付 け 加 え てお き た い。. 一29一.

(30) と り わ け、 人 権 救 済 を 担 う組 織 を ど のよ う な も の にす る か が 論 点 の 一つであ った が 、 政 府 機 関 にな か った人 権 委 員. 会 が国 の レベ ル で創 設 さ れ る こと は確 認 さ れ た 。 そ れ が 国 家 行 政 組 織 法 の三 条 に基 づ く 機 関 と な る の か、 八 条 に基 づ. く機 関 と な る のか 定 か では な か った が 、 ﹁積 極 的 救 済 を 含 む 救 済 を 行 う 人 権 救 済 機 関 は、 政 府 か ら の独 立 性 が 不 可 欠. であ り、 そ の よ う な独 立 性 を有 す る 委 員会 組 織 と す る 必 要 が あ る。﹂ と 明 記 さ れ た こと によ って、 コニ条 ﹂ 委 員 会 に な る こ と が明 確 に な った。. 国 家 行 政 組 織 法 第 三条 ( 行 政 機 関 の設 置 、 廃 止 、 所 掌 事 務 等 ) は ﹁国 の行 政 機 関 の組 織 は、 こ の法 律 で これ を定 め. るも のと す る。﹂ であ り 、 第 八 条 (審 議 会等 ) は ﹁第 三 条 の各 行 政 機 関 には 、法 律 の定 め る所 掌 事 務 の範 囲 内 で、 ⋮ ⋮. (中 略 ) ⋮ ⋮合 議 制 の機 関 を 置 く こと が でき る。﹂ であ る。 ﹁政 府 か ら の独 立 性 ﹂ が 明 記 さ れ た こと によ って、 明 確 に 八 条 に基 づ く委 員 会 でな く な った こと は 大 き な 前 進 であ る。. ② 強力な事務局体制が必要. 国家 レ ベ ル で重 大 な 不 祥 事 が 発 覚 し ても 、 それ が 教 訓 化 さ れ る こと な く 、 同 様 の こと が再 発 す る事 が し ば し ば見 ら. れ る 。 ま た 、 再 発 防 止 のた あ の機 関 が 設 置 さ れ ても 、 そ の機 関 の権 限 や体 制 が 不 十 分 で、 十 分 な機 能 を 果 た し て いな い のも 多 く 見 ら れ る 。. 一九 九 一年 に証 券 不 祥 事 が 起 こ った 後 、 米 国 の証 券 取 引 委 員 会 を モ デ ル に し て、 日本 にも 証券 取 引 等 監 視 委員 会 が. 設 立 さ れ 、 大 蔵 省 が 担 ってき た 監 督 ・監 視 機 能 が 独 立 し た。 し か し、 国 家 行 政 組 織 法 八条 に基 づ く機 関 と さ れ、 政 策. 一so一. 第16号 人権問題研究資料.

(31) これか らの人権行政 ・同和行政 の視点 と課題. の企 画 ・立 案 機 能 が なく 、 証 券 市 場 への監 督 ・監 視 が不 十 分 で、 市 場 の審 判 役 と し て の機 能 を十 分 に果 た し て いる と は言 い難 い。 セ ン セ ー シ ョナ ル に報 道 さ れ た 証 券 不 祥 事 の再 発 防 止 で さ え、 こ の よ う な 現状 であ る 。. 委 員 会 の職 員 も 米 国 の証 券 取 引 委 員 会 の約 三 千 人 に比 較 し て百 六 十 人 程度 であ る 。 これ か ら 設 立 さ れ る 人 権 委 員 会 が 同 様 のも の にな って は、 期 待 され て い る人 権 救 済 機 関 に は な ら な い。. 人 権 救 済 の前 提 は、 差 別 事 件 への取 り組 み と同 様 、 正 確 な事 実 の認定 であ る 。 正 確 な 事 実 の認 定 のた め には 、 そ の た め の権 限 と 体 制 が 必 要 であ り、 それ な し に効 果 的 な人 権 救 済 は でき な い。. 現 行 の法 務 省 人 権 擁 護 局 を 中 心 とす る人 権 救 済 シ ステ ム が、 ほ と ん ど そ の機 能 を 果 た し て いな い のも 権 限 と 体 制 等 が 整 備 さ れ て いな いか ら であ る。. 現 行 の法 務 省 人 権 擁 護 体 制 を 担 って い る全 国 の職 員 数 は 二百 名 を超 え る程 度 であ る 。 これ ら の法 務 省 職 員 が そ のま. ま人 権 委 員 会 の事 務 局 に横 滑 りす るだ け では、 実 質的 な人 権 救 済 は でき な い。 事実 上 、 日常 的 な人 権 相 談 ・救 済 を 担 っ. て い る地 方 自 治 体 職 員 や N G O ・N P O等 で活躍 し てき た専 門 的 な知 識 を も つ人 々 を 採 用 し 、 強 力 な 事 務 局 体 制 を 構 築 し な いと 救 済 措 置 を 取 る たあ の前 提 であ る 調査 権 も充 分 に行 使 でき な い。. これ は行 政 の無 駄 を 無 くす と い う観 点 か ら も 重要 であ る 。 法務 省 の出 先 機 関 であ る法 務 局 ・地 方 法 務 局 の人 権 擁 護 部 ・課 と 地 方 自 治 体 の職 員 が同 じ 課題 を担 って いる な ら 一元化 し た 方 が 効 率 的 であ る。. 一31一.

(32) ③広範な人権侵害事案と地方人権委員会 の必要性. 新 た に創 設 さ れ る人 権 救 済 機 関 の取 り扱 う 人権 侵 害 事 案 は広 範 であ る。 答申 でも ﹁差 別 の関係 で は、 女性 ・高 齢 者 ・. 障 害 者 ・同 和 関 係 者 ・ア イ ヌ の人 々 ・外 国 人 ・H I V感 染 者 ・同 性 愛 者 等 に対 す る雇 用 にお け る差 別 的 取 扱 い、 ハン. セ ン病 患 者 ・外 国 人 等 に対 す る商 品 ・サ ー ビ ス ・施 設 の提 供 等 に お け る差 別 的 取 扱 い、 同 和 関 係者 ・アイ ヌ の人 々等. に対 す る 結 婚 ・交 際 にお け る差 別 、 セ ク シ ャ ル ハラ スメ ント、 アイ ヌ の人 々 ・外 国人 ・同性 愛者 等 に対 す る嫌 が ら せ 、. 同 和 関 係 者 ・外 国 人 ・同 性 愛 者 等 に関 す る差 別 表 現 等 の問 題 が あ る。﹂ ﹁虐 待 の関係 では、 ⋮ ⋮ (中 略 ) 深 刻 化 し て い. るも のが 少 な く な い﹂ ﹁公 権 力 に よ る人 権 侵 害 に つい て み ると ⋮ ⋮ ( 後 略 )﹂ ﹁マ スメ デ ィ ア によ る ⋮ ⋮ ( 中略 )侵害. 等 の問 題 ﹂ ﹁イ ンタ ー ネ ット を 悪 用 し た 差 別 表 現 の流 布 ⋮ ⋮ ( 後 略 )﹂ と述 べら れ て いる よ う に膨 大 な 量 にな る。. これ ら の人 権 侵 害 を 救 済 す る た め に は、 そ の スタ ー ト であ る事 実 認定 だ け でも相 当 な 量 の専 門 職 員 が 求 め ら れ ると と も に、 答 申 でも 触 れ ら れ てい る よ う に民 間組 織 と の連 携 ・協 力 な し に でき な い。. ま た、 答 申 では ﹁日 々各 地 で生 起 す る人 権 侵 害 事 案 に適 切 に対 処 す る た め には 、 委 員 会 事 務 局 の地 方 にお け る組 織. を 充 実 ・整 備 す ると と も に 、 専 門 性 を 有 す る職 員 や 人 権 擁 護 委 員 の確 保 によ り 、 そ の体 制 を整 備 す る 必 要 が あ る。﹂. と い う表 現 に と ど め てお り、 中 央 のよ う な人 権 委員 会 を地 方 には 設 置 せ ず 、 地 方 事 務 局 を 置 く だ け と な って い る。. 特 に気 にな る の は、 ﹁法 務 局 ・地 方 法 務 局 の人 権 擁 護 部 門 を 改 組 す る こ と に よ り ﹂ と な って い る点 であ る 。 先 にも. 指 摘 し てい る よ う に、 現在 の法 務省 の人 権 擁 護 体 制 を 担 って い る職 員 を 横 滑 り さ せ る よう な 事 務 局 で は ほと ん ど機 能. し な い。 なぜ な ら、 専 門性 を 有 す る 職 員 な ど ほと ん ど いな いか ら であ る。 端 的 に言 え ば 、 昨 日ま で人 権 と は全 く無 縁. 一32一. 第16号 人権問題研究資料.

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