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近赤外線法による女性の体脂肪測定に関する検討

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Academic year: 2021

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(1)

近赤外線法による女性の体脂肪測定に関する検討

智一,小西すず,後藤和久子

田 村 京 子 , 小 林 秀 佳

(武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科)

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1=1 近年我が国では高齢化が進むにつれ,人々の健康に 対する関心が高まり,また健康面での自己管理が強く 求められるようになってきた.とりわけ我が国は飽食 の時代に入ったため食生活や,栄養に関する情報は質 的,量的に多様化を極めている状況である. こうした状況の中で適切な食の在り方を考え実行し て体重をコントロールすることはなかなか難しくなっ てきている.その結果,早くから肥満の問題が大きく クローズアップされ,各方面で様々の試行錯誤が繰り 返されてきた. 肥満の度合いの尺度としては身長と体重から算出す る肥満度や各種の体型指数があるが,理論的には体脂 肪の量を把握することが最適と考えられる.しかし 脂肪の量を直接測定することは難しいため,間接的か っ簡便に測定し得る方法の開発が望まれている.その 一つの方法として,最近になり近赤外光を利用した体 脂肪計が開発された1)2)中でも先にケット科学研究所 が開発し,次第に広く用いられるようになっている BFT-3000は,被検者に苦痛を与えずに,簡便に, 誰でも体脂肪を測定し得るという利点をもっている.

(2)

そこで我々は,とりあえず安定した測定値を得るため の諸条件を検討した後,体脂肪率の測定を行い,さら にその結果と BMIとの相関関係を求めることとした. また,当研究室では,家庭における食事内容を左右 する役割を担っている太めの主婦の方々を対象に平成 2年度より食生活講座を開設し食生活に関する正し し、知識の伝達と実践を通じて食生活の改善,過剰体重 の減量を実現せるよう栄養指導を行っている 3)そこ で,本講座に参加した 7 期生 (BMI~23) を対象にし て体重, BMI,体脂肪率の変動の相互関係についても 検討した.

BFT-3000

について

1987年 Conwayら1)は近赤外線による体脂肪測 定の研究を行い,その結果をもとに開発された体脂肪 測定装置 (FITNESS ANAL YZER BFT -3000)は特 定の波長の近赤外線が人体の指肪によって散乱するこ とを利用しこの散乱量により体脂肪率を推定するも のである.実際には,衣服を着たままで座位の状態に ある被検者の上腕二頭筋にセンサーを当て,マニュア ルに従ってキーを押し本体に示される数字を順次読 み取るとし、う簡単な操作で計測可能である.

検討項目と対象および方法

1) 測定条件に関する基礎的検討 本学食物学科の学生を中心とする 20歳代の女性 50名 を対象とした.その身長,体重および BodyMass Index(BMI)の平均値はそれぞれ 159.1::t4. 5cm, 51. 2 ::t5. 5kg, 20. 2::t1. 8であった. ①被検者の腕の角度と測定値の関係 マニュアルで、は腕を水平にして測定するように規定 されているが,採血時と同様に腕を前に伸ばした状態 で測定したほうが測定しやすいため,測定時の被検者 の腕の角度が測定値に及ぼす影響について調べてみる ことにした.すなわち,利き腕,非利き腕の両方につ いて自然、垂下位,胴体との角度が約 45度,胴体に対 して垂直の 3つの位置で体脂肪を測定した. ②測定値に影響を及ぼす可能性のある条件についての 検討 a.食事の影響 インピーダンス法においては食事によって体脂肪 率が多少影響する(食後の方が少し高くなる)ことが 知られている.そこで, BFT-3000についても食 事の前後において測定値に差があるか否かについて 調べてみることにした.この測定は 24回繰り返し 行った. b. センサーを当てる部位への圧迫の影響 測定する際にはセンサーを上腕二頭筋の中点に当 てるのだが,長袖を着ている時には袖をまくり上げ た状態,すなわち圧迫された状態で なる.そこで,そのことが体脂肪率の測定値に影響 を与えるかどうかを見るために採血時に用いられる 駆血帯をつけて比較検討を行った. c. 測定時刻の影響 同ーの日であり,同じ体重であっても測定値は時 刻によって変化するか否かを調べてみることにし た.この測定は 10時, 13時, 16時の 1日に 3回, 6日間行った.

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連続数日間の変動の有無 数日間体重の変化がほとんどなし、と考えた時,体 脂肪率は数日の聞に変化するのかどうかについて調 べてみることにした.連続した 3日間を選び, 1日 に1回測定を行い,このパターンを2回実施した. これらa...,d4項目の測定は,食物学科の学生 5名 (身長 161.4::t3. Ocm,体重 57.5::t6. 2kg, BMI22.1 ::t2.3)を対象に,イスに軽く腰掛けた状態で行っ た. 2)BFT-3000による体脂肪率と BMIとの関係 20歳代の女性 50名(身長 157.8::t4. 7cm,体重 50. 9::t6.1kg, BMI 20. 4::t1. 8)を対象とし BFT-3000 による体脂肪率と,近年体型指数として広く用いられ ている BMI4)との相関を回帰分析法により検討した. また,同じ対象について,インピーダンス装置による 体脂肪率と, BMIとの相関を求め,上記の BFT-3000による結果と対比した. 3)体操部員と一般学生との比較 運動を日常的に行っている体操部員 15名(身長 155. 6::t4. 4cm,体重 49.7::t4. 2kg, BMI 20. 5::t1. 3) と,運動習慣のほとんどない食物学科の一般学生 40 名(身長 158.5::t4. 8cm,体重 51.5 ::t6. 2kg, BMI 20. 4::t1. 9)について,運動の有無による体脂肪率の 比較を行った. 4)太り気味の主婦の減量経過と体脂肪率との関係 本学生活環境学部食物栄養学科食発育学研究室で行 われているヘ、きいき栄養学講座"を受講した 7期生 26名(年齢 49.0::t8.3歳,身長 154.8::t4. 2cm,体重 66.0::t7.4kg, BMI27.5::t2.6)を対象に,減量による 体脂肪率の変化について比較検討した.

(3)

Table 1. Effect of arm angle on measurement results spont. arm angle horizontal drooping 450 to trunk right arm 25.2:1:::0.4 25.8:1:::0.4 25.9:1:::0.4 Body Fat Rate (明) non -right arm 25.4:1:::0.4 26.0:1:::0.4 26.0:1:::0.4 (n=50) Mean:1:::S. E. Table 2. Effect of measurement conditions on body fat rates by BFT -3000 examination no.of case.

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結果,および考察

1) 測定条件に関する基礎的検討 ①被検者の腕の角度と測定値の関係 case. B 30.2 30.4 30.2 30.3 30.7 31.2 30.6 29.9 30.5 30.3 case. C case.D case. E average 29.5 27.3 24.3 28. 7

N.S. 29.6 27.2 24.4 28. 7 29.2 27.2 24.0 28.4

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N. S. 29.7 27.4 24.2 28.7 30.1 27.4 24.1 29.8 26. 7 25.3 28.9 ---l N. S. 29.1 27.4 24.6 28.5 (unit:明) ②測定値に影響を及ぼす可能性のある条件について の検討 さきに述べた体脂肪の測定値に影響を及ぼす可能性 利き腕,非利き腕の両方において自然、垂下位,胴体 のある“a.食事,

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センサーを当てる部位への圧 との角度が約45度,胴体に対して垂直の3つの位置 迫, c.測定時刻, d.連続数日間の変動の有無"の4 で体脂肪率を測定したところ,腕を上へ挙げるほど測 因子について,条件を変えて検討を試みたが 5人の 定値が高くなるとし寸傾向がみられた.しかし 3つ 被験者 (A. B. C. D. E例)のいずれかの場合も各 の位置の各値について分散分析を行ったところ有意な 因子の影響は認められなかった.(Table. 2)ゆえに, 差は見られなかった.また,利き腕と非利き腕とを比 BFT-3000は多少測定環境が異なった場合でも,比 べると非利き腕の方が少しではあるが測定値が高い傾 較的安定した測定値を得ることができると考えられた. 向を示したが,有意差は認められなかった.ゆえに 2)BFT-3

0による体脂肪率とBMIとの関係 実際の測定にあたっては,利き腕で,最も測定しやす 近赤外分光法から得られた体脂肪率とBMIとの聞 い胴体との角度,すなわち約何度で測定することに には回帰分析を行った結果y =1. 074X:1:::4. 570, した. (Table.l) r=0.690の正の相関を示した. (P<O.Ol)

(4)

インピーダンス法(BI法)から得られた体脂肪率と Table 3. Comparison of body fat rates between BMIと の 間 に は 回 帰 分 析 を 行 っ た 結 果 Y= 0 . gymnasticc1ub members and ordinary students 677X土12.217,r=0.315の正の相闘を示したが, (P<0.05)今回は予想以上に低値であった. 以上より, BFT-3000を用いてより高い相闘が得 られたので,今後体脂肪の動態を追跡するにあたり, 有用であると考えられた. (Fig.l) BFT-3000 40 ( 、¥v、,《、~ ro ど5

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園 田 N=50 T=2.146 ロ a- Y=O.577+12.217 (X=xY=y) ロ 19 21 23 25 BMI Fig.1. Correlation between B恥11and body fat rate 3) 体操部員と一般学生との比較 日常的に運動を行っている体操部員15名と運動習 慣のほとんどない食物学科の学生40名において,体 指肪率を比較したところ, BMIは体操部員20.5,食 物科生20.4で両者間にはほとんど差が見られなかっ たが,体脂肪率は体操部員の方が有意に低く運動習慣 の有無によりかなりの差が生じると考えられた. (Table.3) gymnastics (n=15) o(n=40) rdinary B恥11 20.5:t1.3 20.4:t1. 9

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すなわち上記の結果は,身長,体重のパランスが同 程度であっても体操部員の方が一般学生より非脂肪組 織(おそらくは筋肉)に富んでいることを示したものと 思われる.

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Fig. 2. Changes of B恥11and body fat rate under dietary guidances 4) 太り気味の主婦の減量経過と体脂肪率との関係 ヘ、きいき栄養学講座"を受講した 7期生26名を対象 に検討した結果, BMI は27.5から25.0へ,これと ともに体脂肪率も 34.1怖から31.60/0へ低下した. ( Fig.2) このことから,本講座の指導により体重が減少する につれて身体に占める脂肪の割合も明らかに低下して いることが実証された.しかし, BMIと体脂肪率の 動きについては個人差が認められた. 以上,今回の検討結果を通じて,概ね次のような結 果が明らかになったと思われる

(5)

-28-①近赤外分光法にもとずく BFT-3000を用いた体指 肪測定は,操作が簡単なうえに被検者に苦痛や煩わし さを感じさせない.②マニュアルどおり実施すれば多 くの生理的,物理的諸条件にかかわりなく安定した値 が得られる.③体脂肪のみをどの程度特異的に測定し ているかについては確定し得ないが,少なくともイン ピーダンス法や CT( コンビューター・トモグラ フィー)法に匹敵する精度を期待することは可能であ ろう. いずれにせよ,上記の諸点から,本法は体重コント ロールのための食事指導には極めて適していると思わ れる.今後は対象例ごとに,先に述べたBMIと体脂 肪率との関係を経過を追って観察するとともに,その 動向パターンと食事内容,食生活との関連性を追跡し たいと思う.

総 括

近赤外分光法をもとに開発された体脂肪測定装置 (BFT -3000)を用いて種々検討を行い,次の結果を 得た. 1.被検者の測定時の腕の角度は,約45度が適当で あった.

2

.

食事,腕への圧迫,繰り返しての測定などの諸条件 には全く影響されず,再現性のよい値が得られた. 3.女子学生 50例を対象とした本法による体脂肪率の 測定値はBMIとよく相関し,その相関係数はイ ン ピーダンス法による結果よりも高いレベルを示した. 4.BMIの平均値が等しいにもかかわらず,体操部員 群の体脂肪率は,一般学生群のそれよりも有意に低 値を示した. 5.肥満傾向にある主婦 26名の体脂肪率の平均値は食 事指導によって低下した.しかし BMIの動きと は必ずしも平行せず,個人差が認められた.

参考文献

1) Conway, J. 恥1.and Norris, K. H. :in In vivo Body Composition Studies, ed. by Ellis K.J. et al., Inst. Phys. Sci. in Med., New York, pp. 163 -170(1987) 2) 沢井史穂他:体力科掌 39. 155 -162(1990) 3) 後藤和久子,馬場絹恵,鈴木秋子,小西すず, 楠智一:武庫川女子大学紀要, 39. 9-15(1991) 4) 中塘二三生,田中喜代次,羽間鋭男,前田如矢: 体力科学, 39. 164-172(1990)

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