第6回群馬臨床ウイルス研究会
日 時:平成 18年 11月 9 日 (木) 19 : 00∼ 場 所:マーキュリーホテル 代表世話人:石川 治(群馬大院・医・皮膚病態学) 当番世話人:古屋 信彦(群馬大院・医・聴平衡覚外科学) 1.インターフェロン療法後に悪化した糖尿病網膜症 吉田 三紀,田村 真理,木村 有美 岸 章治 (群馬大院・医・視覚病態学) 【目 的】 慢性 C 型肝炎, 悪性腫瘍術後の再発予防のた めインターフェロン療法が用いられるようになり, それ に伴う眼合併症が報告されるようになった. 今回我々は インターフェロン開始後に糖尿病網膜症が悪化したと思 われる 5症例を経験したので報告する. 【対象と方法】 インターフェロン (IFN)後に糖尿病網膜症が悪化した 5 例 10眼 (男性 5例). 初診時の糖尿病網膜症の状態は前 増殖期 8眼, 増殖期 2眼, 用理由は慢 性 C 型 肝 炎 (HCV) 4例, 腎癌 1例. 平 年齢 37∼62歳 (平 51歳), 経過観察期間は 3∼27ヵ月 (平 14ヵ月). 糖尿病網膜症 の変化を視力, フルオレセイン蛍光眼底造影 (FAG), 網 膜光干渉断層計 (OCT)を用いて観察した.全身状態につ いては HbA1C, 糖尿病罹病期間, 全身合併症について検 討した. 【結 果】 OCT で初診時 7眼に漿液性網膜剥 離 (SRD) があった. FAG では網膜静脈の拡張, 蛇行,後 極部から周辺部網膜に広範な血管閉塞, 後極部の蛍光漏 出が特徴的であった. 当科で全例に汎網膜光凝固術を施 行し た. 4例 6眼 で 硝 子 体 手 術 を 施 行 し た. 初 診 時 HbA1C は 4.7∼8.4% (平 7.1%)DM 罹病期間は 5∼15 年 (平 8.4年) 既往歴は HCV4例, 腎癌 1例, 高血圧 3 例だった. IFN を 用していた症例は内科と相談の上中 止した. 【 案】 IFN で網膜血管壁の破綻, 鬱血によ る網膜血管細胞壁からの漏出, 血管透過性が亢進すると されているが, 糖尿病網膜症患者で IFN は網膜の血管閉 塞をさらに促進させると えられる. 【結 論】 イン ターフェロン投与後, 糖尿病網膜症が悪化したと思われ る症例を経験した. 糖尿病網膜症合併症例には投与中の みならず投与終了後も厳重な眼科的フォローが必要であ る. 2.母子感染によって NICUで発症したコクサッキー B2ウイルス性心筋炎の新生児例 塩谷 亜矢 ( 立藤岡 合病院・小児科) 小林 徹,大木 康 ,井上 佳也 森川 昭廣 (群馬大院・医・小児生体防御学) 鈴木 尊裕 (済生会前橋病院・小児科) 吉澤 幸弘 (群馬県立小児医療センター・新生児科) 小林 富男 (群馬県立小児医療センター・循環器科) 名古 靖 (Neoこどもクリニック) 在胎 38週 3日, 出生体重 2856g の女児. 2歳の兄が患 児の 3日前にヘルパンギーナに罹患. 母は 当日 に発熱した. 母がてんかんでゾニサミド内服中のため, 新生児薬物離脱症候群疑いで入院. 日齢 2, 38.5℃の発 熱・活動性の軽度低下を認めた. 日齢 5, 髄液所見よりウ イルス性髄膜炎と診断. 後日, コクサッキ-B 2ウィルス が髄液より同定された. 日齢 7, 190/ の頻脈が出現. AST, CPK,トロポニン T,ミオシン軽鎖など心筋逸脱酵 素の上昇を認めた. 胸部 X 線にて心拡大あり, 心エコー では心室中隔の肥厚を認めたが収縮能は保たれていた. 心電図は心拍数 200/ , p波は認めず, Wide QRS ta-chycardiaの状態であった. 当初, 上室性頻拍症と診断し ATPを投与したが無効, 心室性頻拍と診断した. ジソピ ラミドの投与により頻脈の状態を離脱したが, 心拍数は 80/ から 150/ と不安定な状態が続いた. 日齢 8, 心電 図では心拍数 100/ , P波を認めず, 心室調律の状態で あった. 循環動態不安定のため同日, 群馬県立小児医療 センターに転院. 転院直後の心電図ではさらに徐拍化し, 心室性期外収縮の出現も認めた. 心エコー上の心収縮能 はさらに低下していた. プロタノールの投与による改善 が認められなかったため一時的ペーシングを開始. 4Fr の電極カテーテルを右大 静脈から挿入, 先端は右室心 尖部に留置し, ペーシングモードは VVI モード, ペーシ ングレートは 120/ に設定した. 一時的ペーシング導入 217 Kitakanto Med J 2007;57:217∼218後, 心拍数は上昇, 心機能は改善した. 日齢 10にペーシ ングより離脱, その後の経過は良好であり現在は無投薬 で正常の成長・発達を遂げている. 3.最近当科で経験した伝染性単核症 内山 通宏,宮下 元明,工藤 毅 坂倉 浩一,鎌田 英男,古屋 信彦 (群馬大院・医・聴平衡覚外科学) 【はじめに】 伝染性単核球症は, EBウイルスの初感染 による一過性のリンパ球増殖性の全身感染症である. こ の EBウイルス初感染は, 小児期の場合には軽症あるい は不顕性感染に終わることが多いが, 思春期以降では発 熱, 咽頭痛, 頸部リンパ節腫脹の 3主徴以外にも多彩な 全身症状を呈するとされる. 従来本症は自然寛解するた め, 治療は補液や消炎鎮痛剤投与などの対症療法のみで よいとされてきた. 当科で入院加療を要した伝染性単核 球症は 2001年は 1例, 2002年から 2005年までは 0例で あったが, 本年当科では 1から 9 月で既に 4例の伝染性 単核球症を経験している. この中には扁桃周囲炎を合併 した症例, 肝機能がかなり高くなり全身状態の回復に時 間を要した症例がある. これら症例を呈示し, 最近報告 されている本症と扁桃周囲の炎症との合併例についても 察する. 【 察】 扁桃周囲炎の合併について, Jon-sen (1964) は 0.9%としていたが, 近年本症に扁桃周囲炎 や扁桃周囲膿瘍の合併した例が報告されている. 合併す る頻度について Arkkila(1997)は 23.4% (15/64),畑中ら (2004) は 30% (3/10) と報告している.さらに,畑中らは これら全例で扁桃の白苔, 後頸部リンパ節腫脹, 異形リ ンパ球の本症に特徴的な所見はみられなかったとし, 細 菌感染を伴う伝染性単核球症は, 特徴的な所見に乏しく, 伝染性単核球症と診断されず扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍 として治療されている症例が多いと えられるとのべて いる. また, 最近では森島により慢性活動性 EBV感染症 が存在することもしられている. 以上から, 伝染性単核 球症は, 従来予後が良好で無治療で経過をみている例が 多いと えられるが, 致命的な呼吸困難を呈する症例や 慢性的に回復再燃を反復する形での発症も報告されてい るので, 十 な注意が必要である疾患だと える.