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運動ストレスが脳内のβ–エンドルフィンの発現に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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【背景と目的】 生体には様々な生体防御機構が備わっており, ストレスが加わると抗ストレス作用を示す.これ を担っている物質の 1 つに内因性オピオイドの β–エンドルフィンがある.現在までに運動が血 漿β–エンドルフィン濃度を上昇させ,高揚を高 める事が明らかとされている.これらの事から, 運動により脳内のβ–エンドルフィンも増加する 事が考えられる.しかし脳内の特定部位でのβ– エンドルフィンの発現に関する報告は少ない.一 方で,内因性オピオイドは下行性痛覚抑制系に関 与し,中脳水道周囲灰白質(PAG: periaqueduc-tal gray)がその主要部位である事が報告されて いる.そこで,運動による PAG と視床下部弓状 核に発現するβ–エンドルフィンの量を調べ,運 動ストレスとの関係を比較検討した. 【方法】 雄の Wistar ラットを,速度11m/min(高速運 動群)あるいは6.6m/min(低速運動群)に設定 したローターロッド装置に入れ, 1 回30分を 1 日 2 回 7 日間負荷した.走行させずに 1 日 2 回30分 間ずつ装置内に放置したラットをコントロール群 とし,各群 5 匹ずつを対象とした. 7 日目の条件負荷後,血液を心臓から採取し, コルチコステロン測定キット(ELISA)を用い て,血漿コルチコステロン濃度を測定した.血液 を採取した後,組織を還流固定し,脳を摘出して 20μm の切片を作製した.PAG の 4 部位(背内 側(DM: dorsomedial),背外側(DL: dorsolat-eral),外側(L: lateral),腹外側(VL: ventro-lateral))および視床下部弓状核部の切片( 1 匹 につき各部位 3 枚)を免疫染色した.それらの部 位を撮影し,画像をモノクロ二階調化した後, 100×100μm に染色された面積を計測してβ–エ ンドルフィンの発現状態を比較検討した.

〔学位論文要旨〕

松本歯学 46:123~124,2020

運動ストレスが脳内のβ–エンドルフィンの発現に

及ぼす影響

藤井 寿充

松本歯科大学 大学院歯学独立研究科 健康増進口腔科学講座 (主指導教員:富田美穂子教授) 松本歯科大学大学院歯学独立研究科博士(歯学)学位申請論文

The influence of exercise stress on β–endorphin expression in the brain

N

OBUMI

FUJII

Department of Oral Health Promotion, Graduate School of Oral Medicine, Matsumoto Dental University

(Chief Academic Advisor : Professor Mihoko Tomida)

The thesis submitted to the Graduate School of Oral Medicine, Matsumoto Dental University, for the degree Ph.D. (in Dentistry)

(2)

【結果】 高速運動群と低速運動群の血漿コルチコステロ ン濃度は,ともにコントロール群に比較して有意 に上昇した.高速運動群と低速運動群の間に有意 差は認められなかった. PAG 全体における条件別のβ–エンドルフィン の発現状態は,高速運動群が他群に比較して有意 に上昇した.低速運動群とコントロール群の間に は有意差は認められなかった.各群での部位別の 比較では,高速運動群の VL のβ–エンドルフィ ンの発現量は DM と DL より高かった.低速運 動 群 で は,VL が DM,DL,L よ り 高 く,L は DM と DL より高かった.コントロール群では, VL と L が DM と DL より高かった.各部位での 比較では,DM のβ–エンドルフィンの発現は, 高速運動群がコントロール群より有意に高く, DL では高速運動群が低速運動群より有意に高 かった.視床下部弓状核でのβ–エンドルフィン の発現には各群に有意差は認められなかった. 【考察】 運動により血漿コルチコステロン濃度が上昇し たことから,運動負荷を与えると,速度に関係な くストレスが発生している事が示唆された.しか し,PAG でのβ–エンドルフィンの発現は,高速 運動群が他群と比較して上昇していたことから, 脳内でのβ–エンドルフィンの発現には,ある一 定以上の負荷が必要である事が明らかとなった. また,部位別での発現状態から,β–エンドル フィンは,PAG の VL や L に多く発現する等の 部位特異性があることがわかった.さらに,運動 を負荷すると,DM や DL での発現も増加する事 から,これらは抗ストレス反応を示していること が推測された.視床下部弓状核での発現には各群 に有意差が認められなかったことから,PAG に 発現するβ–エンドルフィンは,扁桃体中心核か らの入力が関与していることが示唆された. 松本歯学 46⑵ 2020 124

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