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──タイの障がい児とその家族を中心に──
寺 田 恭 子
Dissemination and Continuation of Wheelchair Dance for Children in Asia
—For Children with Disabilities and their Families in Thailand—
Kyoko T
ERADAᴮᴫɂȫɔȾ
世界における身体障がい児の置かれている状況は、国々の歴史的背景や現在の政治、経済状 況等により異なる。しかし、障がいの有無に関わらず、子どもたち一人ひとりが安全で健康的 に日常生活を送ることができる環境をつくることは現代社会の使命であるといえよう。 筆者は、2010年から認定 NPO 法人 アジア車いす交流センター(WAFCA: Wheelchairs and Friendship Center of Asia)の活動に理事として参加している。WAFCA は、1999年に株式会社 デンソーの創立50周年を記念する社会貢献事業として設立された非営利団体(Non-Profit Organization)である。活動は日本の他にもタイ、中国、インドネシアで行っており、障がい児・ 者が社会で自立できる環境作りを軸として、スポーツ・教育分野における支援・交流も行い、 バリアフリー社会の実現に寄与することを目的としている。近年では、障がいのある子どもた ちが社会で活躍できる機会を得られるよう、教育支援基金や学校環境のバリアフリー化をサ ポートする教育支援事業を行うことと、特に重度障がいの子どもたちとその家族の QOL の向 上にも力を注いでいる。 今回は、タイにおける重度障がい児の現状を鑑み、重度障がいの子どもたちと家族の日常活 動に車いすダンスの導入を試みた。車いすダンスの実践が彼らの生活に与える影響について、 キャンプ活動を通して観察した内容を報告するとともに、これらの活動が定着していくために はどのような支援が必要なのかについても考察する。 ᴯᴫ×ÁÆÃÁ Ɂ๊ӦȻȗȬʊʽʃ WAFCA は、株式会社デンソーの創立50周年を記念する社会貢献事業として設立した際、同
時にタイにも WAFCAT(Wheelchairs and Friendship Center of Asia Thailand)を設立した。さらに、 2007年から中国における活動を展開させ、2014年にはインドネシアに WAFCAI(Wheelchairs and Friendship Center of Asia Indonesia)を設立している。これらの国々は、近年急激な経済成 長を遂げている一方で、社会的課題が山積していることが大きな問題となっている諸国である。 多くの課題の中で、国の政策の中における優先順位の低いものに、社会福祉への取り組みが挙 げられる。その中でも、障がいがあるということを理由に十分な教育を受けられず、自立の機 会を逃している子どもたちへの対応はさらに遅れていると言わざるを得ない。 WAFCA は、そのような子どもたちが学校に通い、教育を受けて自立した生活ができるよう な支援をすることを目的としている。具体的には、①移動手段としての車いすを送る、②車い すを修理する、③自立した子どもたちが働ける場としての車いす製造の場も支援する、という 活動と教育支援基金による支援を行っている。この「車いすをつくる」「車いすを送る」「車い すを修理する」という㧟つの活動は循環し、障がいのある子どもたちの自立を支える基盤となっ ており、車いすは、東南アジアではインドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ラオス、 東アジアは中国、中央アジアはアフガニスタンにも送っている。また、スタディツアーやフレ ンドシップツアーを通して face to face の活動も展開してきた。 しかし、車いすを送ることから始まる活動を通して徐々に明らかになったことは、WAFCA が提供する車いすが身体の変形や湾曲によって使うことのできない、重い障がいのある子ども たちが多く存在するということである。また、彼らは想像以上に厳しい状況に置かれていると いう現実であった。WAFCA としては、重い障がいのある、寝たきりの子どもたちにも支援を 広げるため、一人ひとりの子どもにフィットした車いすの製造と共に、車いすを使用して楽し める活動を考え、その活動を通して彼らと家族を支援する試みを模索した。その結果、試みの 㧝つとして車いすダンスが浮上したのである。 車いすダンスは、障がいのある人とない人が共に楽しめるダンスであり、競技スタイルもあ るがレクリエーションあるいはリハビリテーションとしても、その応用範囲は広い。特に重度 の身体障がい児・者は、ペアで踊る立位者(スタンディングパートナー)の積極的なアシスト によって、車いすダンスを楽しむことが可能である。寺田ら[1]は、最重度の脳性麻痺者で寝た きり状態の人たちに対して車いすダンスを実践し、その運動強度を測定した。結果、ジャイブ(1) のようなリズミカルなテンポの運動強度は約1.7メッツであった。この強度は、健常者の立位 に相当する。さらに、このような最重度脳性麻痺者に半年にわたって週㧟回程度、㧝回㧢分∼ 15分程度の車いすダンスを継続した場合トレーニング効果は得られないが、半年後には㧝回 の車いすダンスの運動強度に有意差があることが確認されている[2]。それは、最重度脳性麻痺 者の身体が、トレーニングによって、より強い強度の運動に耐えうる身体に変化していること を示すものである。さらに、このプログラムに参加した人たちからは、①車いすダンス後に口 角周辺の筋緊張が和らぎ、食事がとりやすくなった、②肩こりが軽減した、③車いすダンスの 時間が楽しみであるなど、自身の心身の変化についての報告が寄せられた。スタンディングパー トナー(看護師、保育士、福祉職員等)からは、④表情が明るくなった、⑤車いすダンスへの
意欲が伝わってくる、⑥人前に出て踊ることに積極的になった、⑦日常生活にメリハリができ たなどの報告があった。また初期の頃に、ダンス後に排尿、排便、放屁が増え、腸への刺激が あるのではないかとの連絡が看護師からあり、イレウス(2)の予防効果への期待も高まった。な お、このプログラムは2013年から始まり、実験後も実験協力施設の主体的な取り組みで、現 在も車いすダンス活動は日常の身体活動として取り入れられている。 これらの取り組みの継続や、最重度脳性麻痺者の心身の変化を考えると、車いすダンスは重 い障がいのある人たちが参加できる数少ない運動・スポーツの一つになり得ると考えられる。 身体活動は、健常者のみならず障がいのある人にとっても必要であり[3][4][5][6]、その継続が高血 圧や呼吸循環器系疾患、Ⅱ型糖尿病、その他の生活習慣病と呼ばれる疾患への罹患率を低下さ せることは周知の通りである[7]。さらに、脳性麻痺者のⅡ型糖尿病、高血圧および心臓疾患の 発症率は健常者の約1.5倍という報告もあることから[8]、障がい者の QOL の向上には、身体活 動が必須であるといっても過言ではないだろう。また、タイやインドネシアなどの現状を考慮 すると、障がいのある子どもたちの世話の殆どを母親が背負っている。親子で健康な心身を育 むためには、親子が共に楽しめるアクティビティの存在とその継続が必要である。 このような背景から、タイの重度の障がいのある子どもたちへの WAFCA からの支援の一つ に、車いすダンスを取り入れることが始まった。車いすダンスという、モノではなく人がつな がる実践を通して、WAFCA はタイの子どもたちやその家族のより身近な頼れる存在として活 動の輪を広げていくための新しい形にチャレンジした。 ᴰᴫȗȬʊʽʃɷʭʽʡɁڨ֖ ḻǽȗȬʊʽʃɷʭʽʡɁးȾտȤȹ 先にも記述した通り、WAFCA の活動から、自宅で寝たきりの子どもたちが多いという現状 が浮かび上がった。そこで、その現状を改善するために、寝たきりの子どもたちも車いすを使 用して楽しめる活動を提供しようという試みが本活動の第一歩であった。そこで、筆者は 2017年にバンコク周辺の様々な学校、施設、民間団体を訪問し、タイにおける障がい児教育 の現状の一端を見学した。その中からタイの障害児財団の親子を対象グループに選び、パイロッ ト事業として2017年㧥月にナコンナヨック県で車いすダンス宿泊キャンプを実施した。その 半年後に WAFCA の現地活動拠点である WAFCAT のメンバーが参加のフォローアップ調査を 実施した。 その結果、多くの親子が車いすダンスを可能な範囲で継続し、子どもの機嫌がよくなった、 車いすの介助を怖がらずに行えるようになったなどのポジティブな回答を得ることができた。 しかし、自宅で一人(親子)でやっても楽しくない、みんなで集まってやりたい、誰かが声を かけてくれたら参加したい等の意見が挙がった。そこで、車いすダンスの継続、定着には、保 護者グループのリーダーの育成が必要であるという結論に達し、リーダー育成を念頭に置いて、 車いすダンスのキャンプの実践を再計画する運びとなった。
Ḽǽᄻᄑ 本キャンプは、重度の子どもたちに、日常的に楽しめる活動としての車いすダンスを経験さ せることはもちろん、その活動が定着・継続するように、保護者リーダーを育成して日常的に 親子でダンスを楽しめることを目的とする。 ḽǽஓሌ 2018年12月15日(土)・16日(日) Ḿǽ͢ک
Forum Park Hotel
Soi Chan 2 Road,Thungwatdon, Sathorn, Bangkok 10120 Thailand Tel: +66 2 678 7800 http://www.forum-park.com/ ḿǽȗȬʊʽʃផ࢙ 寺田恭子(桜花学園大学教授) 豊田優(車いすダンス名古屋ビバーチェ代表) 活動のフォロー:桜花学園大学 寺田泰人教授、小柳津和博助教 ṀǽՎӏᐐ 保護者グループ(自助グループ)10組 サムットプラカーン県特殊教育センター㧞組 ラヨーン県特殊教育センター㧝組 トラート県特殊教育センター㧝組 チャンタブリー県特殊教育センター㧝組 脳性麻痺児19名、保護者20名、同伴者11名 計 50名 【保護者グループについて】 保護者グループとは、バンコクで活動している NGO 団体(障害児財団)で動作法、タイマッ サージなどの訓練を受けた保護者の一部が、障害児財団から独立する形で地域に集まり、自助 グループとして活動している組織である。特にバンコクにあるノンケーム(Nong Kham)地区 の代表者(サン君(30歳)の母親ルンさん)は、月15,000バーツ(約㧡万円)で家を借り、ラー ニングセンターを運営している。現在のメンバーは、約70名の脳性麻痺児とその家族である。 彼らは、月曜日と火曜日にセンターに集まり、メンバーと共にリハビリ訓練を実施している。 寄付金や助成金はセンターの運営資金に充てていると言う。母親代表のルンさんは、毎週月曜 日・火曜日にセンターに集まったときの活動に車いすダンスを取り入れたいと考えている。地 域で車いすダンスを披露するチャンスがあれば、それを目標にして継続的に練習ができるので はないかと期待している。
ṁǽʡʷɺʳʪ 㧝日目:12月15日(土) 時間 プログラム 09:00‒10:00 参加者受付、朝のおやつ 10:00‒10:30 開会式 議長サムットプラカーン県特殊教育センター チャナンポーン所長 10:30‒11:30 車いすダンスの目的、効果について(講演) 風船と布を使ったグループダンス(導入) 11:30‒13:00 昼食休憩 13:00‒15:00 車いすダンスの講習 基本ステップ、振り付け 15:00‒15:30 午後のおやつ 15:30‒16:30 車いすダンスの講習(続き) 寺田・豊田ペアの車いすダンスパフォーマンス鑑賞会 㧞日目:12月16日(日) 時間 プログラム 09:00‒10:00 動作法講習会(小柳津先生) 10:00‒10:30 午前のおやつ 10:30‒11:30 車いすダンスの講習(続き) 風船と布を使ったグループダンス(㧞回目) 振り付けの確認、発表会の練習 11:30‒13:00 昼食 13:00‒14:00 発表会 14:00‒15:00 閉会式 Ṃǽʡʷɺʳʪю߁Ɂᝊጯ ǽḧȗȬʊʽʃɁᄻᄑˁӛȾȷȗȹ 車いすダンスは、重度障がい児・者でもスタンディングパートナーの適切なアシストによっ て楽しめる身体活動であること。また重度重複障がいのある子どもたちにとっては、多くの仲 間と同じ空間で一斉に活動できることや、ダンスを通して保護者や共に活動する人たちとのス キンシップが増えることを指導者は説明した。さらに、大人の事例ではあるが、電動車いす使 用者(重度脳性麻痺者)が車いすダンス競技にチャレンジし、高いフィットネス効果を得たこ とを報告した[9]。その他、音楽はもちろん、カラフルな布や風船を使用することにより、五感 をフルに刺激するような環境が、日常生活の変化に乏しい子どもたちにとってはよい刺激にな ることを伝えた。
ǽḨᎃᴮǽ᭛ᓗȻࢎɥΈႊȪȲɺʵ˂ʡʊʽʃᴥ߳оᴦ ǽᴥਖ਼ᬲȻศᴦ 6m のカラフルな柔らかい布の両端を持って上下し、その下を車いす使用の子どもたちが通 過していく。布の上には風船を置き、布を上下した時に風船がランダムに下に落ちるように工 夫した。 車いす使用の子どもたちは母親以外の大人とペアになり、布から離れたところ(直線的に離 れたところ)で、音楽に合わせて数回回転をする。回転は、大人が車いすのグリップを握り、 音楽に合わせて行った。今回はウインナーワルツの軽快なリズムをバックミュージックとした。 回転が終わったら布のある方向を目指して車いすを押し、ペアの大人は車いすから手を離す。 勢いのついた車いすの子どもはそのまま布をくぐるが、布の向こう側では母親が待機しており、 自分の子どもをキャッチする。今回は、㧞組ずつ実践した。 ǽᴥᡇɥᣮȪȹᴦ 母親からは、子どもたちが車いすで走る(早く移動する)ことが好きかどうかを事前に聞き、 一人ひとりの子どもに合わせた速度で車いすを押した。しかし、㧝、㧞名は車いすのスピード に緊張し、しばらく緊張が取れない者もいた。その他の子どもたちは、緊張と興奮の中、布の 向こう側の母親が自分を迎え入れ抱きしめてくれて活動が終わることに、満足げな表情を見せ ていた。活動中は、日頃笑顔が見られない子どもからも笑顔が見られ、保護者が驚くという場 面も多々あった。多くの子どもたちにとって、まさにこの遊びは非日常的であり、日頃あまり 見られない笑顔を引き出すことができた活動と言える。 ǽḩȗȬʊʽʃɁᎃᴥژటʃʐʍʡɁीȝɛɆળ͇ᴦ ǽᴥਖ਼ᬲȻศᴦ 最初に、車いすダンスは最重度障がい児・者が、スタンディングパートナーのアクティブな アシストによって行われることを説明した。その後、車いす使用児とスタンディングパートナー (母親等)の立ち位置の基本、手の繋ぎ方、前後の移動方法、回転の基礎、車いすを左右にス イングさせるチャックの方法などを順番に説明し、カウントに合わせて動くという方法で実践 した。次に、基礎のステップのいくつかをつなげて、シンガーソングライター清貴氏の「無限 大」(TBS 系リオ・パラリンピックテーマ曲)に合わせて振付をした。今回は親子で踊ること を目的としたので、親子ペアのままで車いすダンスを実践した。 ǽᴥᡇɥᣮȪȹᴦ 会場に全ての親子が入ると車いすダンスを行うには若干狭かったが、お互いに教え合ったり する場面も多々見られ、良い雰囲気をつくることができた。一連の振付をカウントで動き、途 中から音楽に合わせて踊ると、踊り終わった後に大歓声が巻き起こった。タイの文化的背景が 影響しているのか、車いすダンスを習得したいという気持ちで本キャンプに参加したメンバー だからか理由は定かでないが、とにかく母親たちが元気で車いすダンスを心から楽しんでいる 様子が見られた。さらにその笑顔や歓声と共に子どもたちにも良い笑顔が多くみられた。
タイでは、対麻痺で上半身が自由に動く子どもたちによるアクロバット的なダンスが TV で 取り上げられることもある。よって母親たちはそのイメージを強く持っていたようだが、自分 たちの子どもと母親が、子どもたちの身体の状況に合わせて共に楽しむことができるものだと 知り、新しいことの習得に大変意欲的であった。また、ダンスの最後に親子でオリジナルのポー ズを考えるという内容を設定した。日本では、指導者にポーズを決めて欲しいという保護者が 少なくない。しかし、ここでは母親等がとても積極的に考え、オリジナルポーズを披露してく れた。子どもと共に車いすダンスを楽しみたいという主体的な姿勢が感じられた(写真㧝・㧞・ 㧟・㧠)。 (写真㧝)基本動作を子どもと一緒に行う (写真㧞)基本動作の見本(ホールド)
(写真㧟)練習風景(基本動作) (写真㧠)創作活動:オリジナルポーズを考える ǽḪʑʬʽʃʒʶ˂ʁʱʽ ペアで踊る車いすダンスの実際を、デモンストレーションとして豊田・寺田ペアが披露した。 ラテンアメリカン種目(3)ではチャチャチャとルンバを、スタンダード種目ではタンゴを踊った。 重度障がい者のための車いすダンスではなかったが、アトラクションとして十分に受け入れて くれたように感じた(写真㧡)。
(写真㧡)デモンストレーションの様子 ǽḫȗȬʊʽʃɁɺʵ˂ʡᄉ᚜ ǽᴥਖ਼ᬲȻศᴦ 全体を㧞つのグループにランダムに分けた。その後、各グループで車いすダンスのフォーメー ションおよび決めポーズを考えること、さらに布や風船など発表に必要な小道具を使う場合は、 その使い方も含めて作品を完成させることを課題として提供した。 ǽᴥᡇɥᣮȪȹᴦ 基本的な車いすダンスは、母親たちのアイデアによって集団で踊る 披露するダンス とし て再構成された。このプロセスには、車いすダンスそのものの基本的ステップの理解の他に、 集団の中でお互いに意見を出し合いながら、より良いものを創作していくという楽しさがある。 母親たちは、そのプロセスを十分に楽しみつつ作品が出来上がることに喜びを感じていた。各 グループの発表はどちらも大いに盛り上がり、披露する側と観る側に一体感が生まれていた。 発表の後は、発表に対するグループごとの感想を述べあった。主たる感想としては、①子ど もと一緒に参加できるところが良い、②車いすダンスを初めて知り、これからも続けたい、③ 基本のダンスを習得して、次に発表できるような形にできたことが嬉しい、④発表はとても素 晴らしかったなどである(写真㧢・㧣・㧤)。
(写真㧢)グループ発表の様子(1)
(写真㧣)グループ発表の様子(2)
ṃǽɷʭʽʡȾՎӏȪȹᴥί឴ᐐȞɜɁᴦ 保護者からの感想は以下に列記した通りである。 ・短い時間ダンスをしただけなのに、子どもの筋肉が緩んでリラックスしたことがわかり、と てもびっくりした。 ・車いすダンスは子どもの身体に(何かしらの)効果があると思う。 ・音楽をかけて一緒に踊ると自然と笑顔になる。 ・子どもたちが笑顔になれる活動なので続けたい。 ・私たち(保護者)が一緒に楽しめるのがよい。 ・私たち(保護者)のよい運動になった。 ・簡単そうに見えても、実際にやってみると難しかった。 ・初めての経験でとても興奮している。 ・このキャンプに参加したいという母親がいたのに、パートナー(夫)に参加するなと言われ て、今回参加できなかった人もいてとても残念だった。 ・イメージしていた車いすダンスと違い、重い障がいのある子どもも一緒にできるので楽し かった。 ・私たちで今後も続けていきたい。など ᴱᴫ᪩ȟȗɁȕɞзႆाȾߦȬɞଡ଼ᑎୈɁး 今回は、民間活動団体が障がい児とその母親の活動を支援した。ここでは、タイにおける教 育支援を簡単に紹介し、障がい児の現状を把握しておきたい。 タイの障がいのある児童および生徒が教育を受ける環境は㧠つに分類される[10]。㧝つ目は 特別支援学校であり、障がいのある児童生徒のみを対象としている(2012年現在、55校)。次 は支援教育学校と呼ばれる学校で、貧困や薬物問題、虐待など多くの問題を抱えている就学の 機会を得ることが難しい児童生徒が対象である。障がいのある児童生徒もインクルーシブ教育 の一環として支援教育学校が受け入れているという。㧟つ目は特殊教育センターである。ここ では、センター内に障がい児が学べる環境をつくると共に、家庭訪問なども取り入れている。 センターに所属する教員は、インクルーシブ教育を実践している一般学校や医療機関に出向き、 障がい児教育の助言も行う。特殊教育センターは教区ごとと県単位で設置されるものがある (2012年現在、教区設置13ヵ所、県設置64ヵ所)。最後は、一般学校におけるインクルーシブ 教育の取り組みである。障がいのある児童生徒の教育の場が限定されているために、そこに入 れない子どもたちの教育の場として取り組みが進められてきたが、世界的な流れであるインク ルーシブ教育の方向性と一致していることもあり、今後も広がる可能性が高い。 しかし、このような教育の場に通うことができない重度障がいの子どもたちも多く存在する。 またタイでは、都市部と農村部(地方)における格差が大きい。そのため所得や交通機関、家 族の在り方(障がい児教育に対する意識)にも差があり、障がい児者に対しては、地方に行く
ほど差別的な考え方も残っていると言わざるを得ない。保護者が障がい児を社会から隠蔽する ような現状もあるので、特殊教育センターでは、このような児童生徒を発見することも重要な 課題になっている。 ᴲᴫᐎߔȝɛɆ̾ऻɁᝥᭉ 今回、著者が1995年より継続しているダンスサークルトライアングル(4)の子どもたちに教 えてきたダンスと同様の基礎的なパターンを使って振付したダンスを提供した。音楽は、日本 人歌手「清貴」の「無限大㱣」であり、リオパラリンピック時の TBS 系応援歌であった。しか し、タイの親子は日本語で聴きなれない音楽であったにも関わらず、その音楽を楽しみ、積極 的に振付を習得した。また与えられたこと以外に、自分たちでポーズを考える、集団で踊ると きの構成を考えるというクリエイティブな活動にも積極的であった。著者は、主観的ではある が、車いすダンスの応用力をタイと日本の母親で比較すると、タイの母親の方がより積極的に 意見を出し合い全体をまとめる力が高いように感じた。今回の車いすダンス参加集団が自助グ ループであるため、元々自分たちで活動をしていくという意識が高く行動力があるからという 理由かもしれない。しかし、指導者に頼るというより、指導者から学び自らが楽しめるように 工夫するという実践力の高さを、少なくとも今回の活動に参加したサポートメンバー全員が感 じていたことは事実である。 これらより、タイの自助グループの今後における活動の継続は、自助グループ自体の今キャ ンプへの取り組み方も含めて、予定通りサポートするべきであるということを確認した。また、 その際には具体的な目標があるとよいと考え、母親グループに目標を持った活動の継続を提案 した。具体的には、今回の車いすダンス2018が本活動の母体である WAFCAT(アジア車いす 交流センタータイランド)の支援(人的・物的の両面)により実現していること、さらに翌年 は WAFCAT の20周年であるため、その記念イベント(2019年12月14日)に出演するための 実践練習と発表という形となった。 タイでは、障がいのある子どものいる家庭の保護者が中心となり、自助グループを結成して 活動をするという一つの形がある。そこでは、動作法(5)やガーデニングなどの活動を通し、子 どもの成長をサポートしているが、同時に母親の連携という重要な役割もある。今回キャンプ に参加した母親たちの自助グループは、リーダーである女性により、皆が集まれる場所を借り、 そこで同時に母親たちが何らかの収入を得らえるような活動を展開して会を運営するという方 法を取っている。このような実践力のある自助グループが中心となって車いすダンスを習得し ていけば、その輪がさらに広がるのではないかと考える。
現在は、WAFCAT および日本の WAFCA(認定 NPO 法人 アジア車いす交流センター)が、 さらに学びを深められる機会を作っている。また、自助グループの母親たちがタイでの講師と なり、より多くの障がいのある子どもとその母親に車いすダンスを教えている。しかし、地域 が限られていることや、車いすダンスというより、障がいそのものへの理解を含めた認知度が
低いため、その広がりには時間を要すると思われる。重度の障がいのある子どもたちが個々人 に適した教育を受けられ、その中に健やかな心身の発達を促進する一つの方法として、車いす ダンスが教育現場にも受け入れられることを目指して活動することが重要である。また、今回 WAFCAT という現地に根差した NPO 法人との協力体制の構築が㧝つのロールモデルとなった ことが確認された。同様にして、多様な地域で暮らすタイの障がいのある子どもたちへの支援 体制をさらに広げていくことも今後の課題である。 ᴳᴫɑȻɔ 今回、タイに在住し、障がいのある子どもを持つ母親が中心となって自助グループ活動を展 開している親子に対し、キャンプ形式で車いすダンス講習を実施した。キャンプの運営は WAFCT(タイ車いす交流センター)であり、車いすダンスの講師は WAFCA(アジア車いす 交流センター)の理事である筆者が担当した。内容は、車いすダンスの基礎知識講習(レク チャー)、基礎技術の習得および音楽に合わせた車いすダンスの習得、応用とグループ発表で ある。その結果、車いすダンスに多くの母親が賛同し、タイで継続的に実施することが決まっ た。さらに車いすダンスの発表の場を目標とすることができた。 母親たちの自助グループは精力的であることから、母親たちの活動に車いすダンスを定着さ せるために、今後は WAFCAT のサポートのさらなる充実が課題となる。また教育の現場に車 いすダンスが導入され、多方面から車いすダンスが取り入れられる工夫を WAFCAT と共に考 えていく必要がある。教育における日本の障がい児とタイの障がい児の現状は、その仕組み自 体が異なるため、自助グループをフレキシブルにサポートできる活動団体からのアプローチは 今後もさらに求められてくると考えられる。 า ⑴ ジャイブは41pbm/min. ロックンロールのこと。 ⑵ 腸閉塞、腸の蠕動(ぜんどう)運動が障がいされた状態。 ⑶ 車いすダンス競技スタイルは、ボールルームダンスが基礎になっており、スタンダード種目と ラテンアメリカン種目がある。ラテンアメリカンはサンバ、チャチャチャ、ルンバ、パソドブ レ、ジャイブの五種目である。 ⑷ 著者が1995年から行っている障がい児・者とその家族、学生および本活動に賛同する社会人 で構成されているダンスサークル。障がい児は車いす使用の重度障がい児が多い。月㧝回の活 動の他に、㧝年に㧝回名古屋市内の劇場でライブパフォーマンスを開催している。2012年に は「人にやさしいまち作り賞」(愛知県)を受賞した。 ⑸ 「動作法」とは「心理リハビリテイション」とも呼ばれ、1960年代に九州大学を中心に開発さ れた日本国産の心理療法。初期は脳性麻痺者への動作の改善を目的とする支援技法であったが、 最近は様々な障がいのある人や高齢者およびアスリートにも活用されている。また日本の肢体 不自由特別支援学校では、動作法を活用した支援が多く適用されている。
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