173
最近の信州女性の労働と家族をめぐるライフスタイル
坂 井
博 通
Recent Changes in Family and Working Lifestyles of Women in Nagano
Hiromichi Sakai
要約 1 長野市で働 く女性 の 「生涯労働志向」は強 まってい る。 しか し、「家庭本位 に考 える」志向 も増加 してい る。 それは、週休2日制度 の急速 な普及が影響 を与 えてい るため と思 われ る0 2 最近の長野市の女性問題関連報告書が指摘す る家族や労働 に関す る女性全般 の意識の保守 的変化は、詳細 に見 ると見 られ ない。指摘 された変化 は もっぱ ら設問の微妙 な変化 に起 因す ると思われ る。今後は、完全 に同一の質問 を用 いた調査や働 く女性 と働 いていない女性 の行 動や意識の相違 を検討す る調査 が望 まれ る。 3 週休 2日制度、育 児休業制度、年上や 同 じ年齢の妻 の増加 は、女性の家族生活 を実際に変 化 させ て、家族本位 に考 える意識 を強化 してい る と思 われ る。4
家族構成、特 に末子の年齢が女性労働 に大 きな影響 を与 えてい るが、今後は高齢者の介護 の有無 と女性労働 の関係 も検討 を要す る。1. ThedesiretoworkamongwomeninNaganoCityhasbecomestronger.However,the numberofwomenwhoplacefamilyresponsibilitiesaboveworkisincreasing. The reasonforthisappearstobethespreadofthefive-dayworkweek.
2. TheresultsofasurveyonworkingwomeninNaganoCitywhichindicateashiftto amoreconservativelifestyleareincorrect. Itisthoughtthatthisapparentshiftis mainlycausedbyanalterationinthewordingofthequestionnaire.
3. Changesinthestatusofwomeninthefamilyandwomen'sconsciousnessingeneral havebeencausedbychangesinthefollowing:thefive-dayworkweek,maternityleave, andanincreaseinthenumberofcouplesinwhichthewifeisthesameageasherhusband orolder
.
Itisprobablyimpossibletoradicallychangetheconsciousnessofwomen withoutchangesintherelevantsocialsystems.4. Theproportionofworkingwomenin thepopulation isinfluencedbythefamily structure,especiallytheageoftheyoungestchild,andfrom now on,itwillalsobe influencedbycareofagedfamilymembers.
174 清泉女学院短期大学研究紀要 (第15号) は じめ に 最近 の女性 をめ ぐる制度の変化 は著 しい。 た とえば、画期的 な法律 「男女雇用機会均等 法」が1986年 に施行 され、 よ り男女平等に向 けての動 きが活発化 した。 ただ、法律施行 の 常 として、実質的 な改善が見 られない とす る 批判 もあるが、徐 々に法内容が普及 している の は事 実 であ る と思 われ る。育 児休 業 法 は 1992年 に施行 され、 多 くの事業主 は導入実施 し始めている。 また、結婚 して も姓 を変 えな い とい う夫婦別姓 も慣習的には職場 内で施行 されてい るところ も少 な くないが、確 固た る 夫婦別姓 の立法化 も近 い将来行 われ る。 よっ て、以前 と比べ る と女性が家庭 の外 の職場 に 永続的に就 くこ とがで きる条件 は整 い始めた が、変動 のただ中にあ ると言える。 ところで、労働 省婦人局 では1948年以来政 府関係機関が公表 した統計資料 を使 用 して女 性 労働 者 に関す る動 向 を ま とめ て きたが、 1993年 にその タイ トル を 『婦 人労働 の実情
』
か ら 『働 く女性 の実情』 と変更 した。 これは、 「婦人」 を 「女性」に変 えた とい うことだけ でな く注 目す る点が労働 その ものか ら労働 を 行 う女性 に移行 した とい うこ とを も意味す る。 つ ま り、女性労働 のみな らず女性 自身の状態 や とりま く状況に も目配 りをしよ うとい う意 図が感 じられ るが、女性の労働 はす でに当た り前になってい る との意識が さ らに背後にあ る と想像 され る。 この よ うに女性 に とって結婚す るこ と以上 に働 くこ とが 自然 になった時代 の中、女性 の 意識 は どの ように変化 したか を長野県の女性 に施 された調査 か ら検討す るこ ととしよう。 筆者は まず県内の市女性室 (に相 当す る部 普)に女性 に関す るア ンケー ト調査 の有無 を 問い合 わせ たO 回答があ り、最近調査 を行 っ た と答えた 自治体 は長野市、松本市、岡谷市、 中野市、飯 田市 であ る。 特 に長野市 は3つの定期的調査 を行 ってい る。1つ は 「働 く女 性 の意 識 と実 態調査」 (87,90,95年)、 もう 1つは「女性問題意識調 査」 (89,91,94年)、 3つめは 「女子パー トタ イマー労働条件等実態調査」 (86,89,93年)で あ る。定期 的調査 か らは、意識や行動の変化 をさ ぐるこ とがで きる。 しか し、 3つめの調 査 は事業所 に対す るア ンケー トなのでここで は省略 し、前2着 に関 して特 に家族 と労働 の 関係 に関す る問題 を検討 していこ う。1
長 野市 「働 く女性 の意 識 と実 態調査」か ら
95年調査 の回答者 (-働 く女性) の年齢構 成 を見 る と、20代 が最 も多 く、続 いて40代、 そ して30代 の順番 である。 これは、 出産、育 児 を機 に仕事 をやめ る日本の女子労働 の特徴 が現れている (いわゆ る労働 力曲線の「
M
字 型」)Oそ して、近年、第 1次ベ ビー ブーム(1947 -49年生 まれ)の世代 が40代 に入っていてその 重み を増 している と考 えられ る。配偶関係 に つ いては、未婚 と有配偶 は45%程度 でほぼ等 しい。子 どもの有無 もほぼ半数 であ る。年次 に よるば らつ きは見 られ るが、学歴構成は高 専短大以上が25% を超 える程度 で変化 は少 な い。 職業につ いては80%が正社月 で10%がパー トタイムであ る。 この構造は87年か ら95年に かけて変 わっていない。事務職 は60%台であ るが低下 してお り、10%台の技術職 が増加 し ている。勤務年数 も5年末満が50%弱でそれ坂 井:最近の信州女性の労働 と家族をめ ぐるライフスタイル 175 ほ ど変化 していない。 たいへ ん大 きな労働 条件 の変化 は
1
週 間の 勤務 日数 で図1の よ うに週休2日制度 の定着 が見 られ、働 く女性 が家庭 に い る時間 を長 く してい る と思 われ る。女性 の意識が家庭 に回 帰す る環境 設定 は整 って きた。 また、 この制 度 は 「仕事 も家事 も」 とい う意識が 当た り前 にな る助 け を して きた とも考 え られ る。 次 に意識 に関 して見 てみ よ う。まず、「あ な たは女性 が職業 を持つ こ とにつ いて どう思 い ますか」 とい う問に対 しては、 3か年次 とも 最 も多い回答が 「子供 が大 き くなった ら再就 職 」 であ るこ とは変 わ らず、4
5.
0
% (
8
7
年 ) か ら4
4.
2
% (
9
0
年)、4
5.
2
% (
9
5
年) であ る。 とこ ろが、 「生 涯職 業 を もつべ き」が8
7
年 の2
5.
6
%
か ら9
5
年 の3
7.
1
%
まで増加 してい る。 年齢別 に見 て もこの項 目に対 す る増加 が見 ら れ る (図2
)。 そ して、年齢別 の特徴 は3
0
代 に 図1 長野市で働 く女性の 1週間の勤務 日数 資料)長野市 (1995)(
%
)
ED 50
4
0
A) 201
0
図2 「生涯職半 をもつべき」 と答 えた者の割合 注)「あなたは女性が職業を持つことについてどう思いますか」に対する回答割合。 資料)長野市、「働 く女性の意識と実態調査」176 清泉女学院短期大学研 究紀要 (第15号) 最 もその意見が強 く20代 は弱 い とい うこ とに あ る。 ただ これ は、調査 で把握 され る20代 は まだ未婚 や無子の者が 多いこ とと
3
0
代 は仕事 をやめ たい者 は既 に抜 け落 ちて、働 く意思が 強 い者 が 多いか らで、 これ を一概 に年齢 や世 代 に よる相違 と解釈 す るわけにはいか ない。 「あなたは、仕事 と家庭生活 につ いて どう 思 い ますか」との間に関 しては、「仕事本位 に 考 え る」 と言 うものはほ とん どな く、最 も多 いのが 「あ くまで仕事 と家庭生活 を両立 させ たい」 とい うもので8
7
年6
2.
9
%、9
0
年6
5.
4
%
、9
5
年6
4.
3
%
とほ とん ど変化 していない。家庭 も仕事 もこなす いわゆ る「スーパー ウーマ ン」 が常識 になってい るこ とを物語 る。次 に 多い 反応が 「家庭生 活本位 に考 え る」で8
7
年が2
3.
3
%.、9
0
年 が2
5.
7
%、9
5
年 が2
9.
9
%
と上昇傾 向 を示 している。 この上昇傾 向は年齢別 にお い て も見 られ る(図3)。つ ま り、働 く女性 の家 庭生 活- の傾斜 と言 え よ う。 もっ ともこれ を(
A)
50
4
0
刀 201
0
0
働 く女性 の家庭 回帰 とだけ判 断 してはな らな いだ ろ う。女性 の労働 条件 が改善 したため に、 従 来 な らば家庭 にいて育 児に専 念 していた女 性 が働 きだ した とい うこ ともあ るだ ろ う。 ま た、週休2日制度の普及 で、単 に週 に 1日は 家事 が で きる と判断 を下 し始め た女性 も少 く ないため と思 われ る。 ただ経済的不況 が原 因 で女性 が、週休2日制の名の もとに体 よ く家 庭 に追 いや られてい る とい うこ ともあ るか も 知 れ ない。 「あなたは、女性 が働 き続け るため には ど ん な制度が必要 だ と思 い ますか」 の間に対す る反応 は最近非常 に大 き く変化 してい る。9
0
年 では 「育 児休 業制度」 が5
0.
4
%
で最 も多 く、 次が 「介護 ・看護休業制 度」が3
0.
8
%
であ っ たが、9
5
年 には順番が逆転 し、「介 護 ・看護休 業制 度」 が4
5.
4
%
で 「育 児休業制度」が2
2.
3
% となった。年齢別 に見 て もこの変化 は顕著 であ る(デー タ略)09
2
年 に女性 に念願 の育 児 図 3 「家庭生活本位 に考 える」女性の割合1
p
i
三)「あなたは、仕事 と家庭生活についてどう思いますか」に対する回答割合O 資料)長野市、「働 く女性の意識と実態調査」坂井 :最近の信州女性の労働 と家族 をめ ぐるライフ スタイル 177 休業法が成立 したためだろ うか。 ただ、長野 県が
1
9
9
5
年 に全県に行 った調査 ではずいぶん 異 なる回答が得 られている。「育 児のために休 め る制度」 は6
1.
8
%
で最 も多 く、次が 「介護 のために休 め る制度」 で41.
8
%
であ る。 これ は男女 あわせ た結果 であるが、必ず しも育 児 休業法が女性 の意識上 に広 く普及 している と は言いがたい。 「子 どもの面倒 を誰がみたか」 とい う調査 では9
0
年か ら9
5
年にかけて 「自分」が3
9.
5
%
か ら5
3.
2
%
へ と増加 し、「同居 の親」が4
0.
6
%
か ら2
3.
9
%
へ と減少 した とい う大 きな変化が 表れている。 これは、質問の仕 方に よるアー ティファク トでなければ きわめて大 きな変化 と言わ ざるを得 ないだろ う。残念 なが ら年齢 別 のデー タはわか らないが、家庭本位へ の傾 向が うかが える意識の変化 であ る。 この変化 は、週休 2日制の定着が子育 ての仕方に現在 大 きな影響 を与 えているため とも考 えられ る。 「保育園等」の割合 も1
3.
6
%
か ら1
7.
1
%
と増 加 している。 本調査 は、質問の仕方が粗 く解釈がなか な か困難な側面 もあるが、本間 も含めて全体的 に働 く女性 の間での家庭 回帰の方向性 は見 て とれ るよ うである。2
長野市 「
女性問題意識調査」か ら
1
9
9
4
年の調査 は男女 に対 して行 われたが、 回答があった女子は7
3
2
名。基本的 な属性 に関 しては男女別 に示 されてお らず参考 に しか な らないが、家族形態は 「親 と子の2世代」が4
9.
4
%
、「親 と子 と孫の3
世代」が1
9.
4
%
、「夫 婦 のみ」が2
1.
0
%
である。未婚 は1
4.
2
%
、既 婚 は7
7.
9
%
である。小学校 入学前の子 どもが い るのは1
4.
8
%
、農 山村地域 に住 んでい るの が1
6.
9
%
、市街地が8
2.
5
%
であ る。年齢別 に は6
0
歳代が2
7.
2
%
、続 いて4
0
歳代2
2.
8
%、5
0
歳代1
8.
9
%、3
0
歳代1
7.
5
%
、最 も少 ないのが2
0
歳代 の1
3.
5
%
である。 次に意識に関 して見てみ よ う。 「あなたは、 『男性 は仕事 、女性 は家事 ・育 児』とい う考 え方 につ いて どう思 い ますか ?」
とい う質問に対 して最新 の報告書は、「女性 は 前回、前々回の調査 と比べ て少 しずつ 『賛成』 が増 えてい る(p18)。
」と説明 してい る。傾 向 的には男女の役割分業がむ しろ否定 されて き ているのに (NHK放送文化研究所、1
9
9
4
)
、 長野市女性 はむ しろ保 守 回帰の様子が うかが える。 しか し、 3回の報告書か ら質 問 をよ く見 る と言い回 しが微妙 に異 なって きてい るこ とが わか る。8
9
年 の調査 は 「男 は仕事 ・女 は家 庭」、9
1
年 は 「男は仕事 、女 は家事 ・育 児」 で ある。前者が男は家の外 に出、女が家 の中に いるとい う男女 の居場所 を示唆す るのに対 し て、後者は男は世帯 を担 う仕事 を女 は家事育 児を分担す る とい う男女 の仕事 の役割分担の ニュア ンスが出 るので意見の差 がでた とも考 え られ る。少 な くとも賛成が増 えてい る とは 言い切れ ないだろ う。 「あなたは、家事 の分担 につ いて、次の う ちどれがいい と思 い ますか。」の問の後 に 「で は、実際にあなたの家庭 では次の うち どれに 近 いですか。(結婚 していないか たは、両親の 様子 でお答 え くだ さい)」とい う設問の結果か らは、「男性、女性 とも 「妻 だけがす る」割合 は減少 しているが、 「妻がほ とん どして - ・」 の割合 は逆 にわずかに増 えてい る。
」 (p22)と 指摘 している。 報告書 を見 る と、9
1
年 は 「妻だけ」が2
6.
5
%であるのに対 して、9
4
年 は1
6.
5
%
と低下 し178 清泉女学院短期 大学研 究紀要 (第15号) ている
(
p
2
2
)
。確 かに夫や家族の家事参加が 増加 したような印象 を受け る。 ところが、 こ れ も次 に示す よ うに設問が若干変化 している。 現在 の男女役割分 業の縮小 の流れか らみて低 下の方 向は正 しい と思 われ るが これほ ど急激 かはわか らない。 94年調査 (丑 妻 だけがす る ② ほ とん ど妻が して夫が手伝 う ③ ほ とん ど妻が して家族が手伝 う ④ 夫 と妻 でほぼ半 々に分担す る ⑤ 家族全月で分 担す る ⑥ ほ とん ど夫がす る ⑦ ひ とり暮 らしなのですべ てひ とりでや っ てい る 91年調査 (注、91年の設問は理想 と実際 を 分けずに現実のみの設問か らなる。) あなたの家庭 では、家事分担 をどの よ うに し てい ますか 7 1 妻のみがす る2
ほ とん ど妻 で夫が手伝 う 3 夫 と妻 でほぼ半々に分担す る 4 ほ とん ど妻で家族が手伝 う 5 家族全員で分 担 して 6 ほ とん ど夫がす る 7 その他 「あなたは女性が仕事 で外に出るこ とをど う思 い ますか ?」 の問に対 しては 「男女 とも 前 回調査 よ り 「賛成」 と答えた人が減少 して い る。
」 (p35) と述べ ている。94年は 「賛成」 52.7%、「どち らか とい えば賛 成」が33.7% で、91年 は 「賛成」が58.0%、「どちらか とい えば賛成」が29.4%であ る。 しか し、 これ も設問が微妙 に異なる。91年 の調査 は 「あなたは女性 が仕事や社会活動 で 外 に出 るこ とをどう思 い ますか ?」 と尋 ねて、 「仕事 」の他 に 「社会活動」が加 わ っている のであ る。94年 の設問の ように 「仕事」の他 に 「社会活動」が加 われば、外 に出 る可能性 は高 くな るだろ う。賛成割合が低下 してい る が、外 に出る理 由が1つ減少 したのだか ら論 理的に も減少 して当然 である。 子 どもとの同居志向に関 しては、結論 とし て「男女 とも前回調査 と比較す ると、 『常に行 き来 で きるところなら別 々に暮 らしたい』が 増加 し、 『別 々 に暮 ら したい』が減 少 して い る。
」(
p4
6
)
としている。 しか し、 この間 も94 年 と91年 の調査 では、質問文 な らびに回答選 択肢が異 なっている。特 に選択肢が大 き く変 化 した と考 えられ る。 これは、意識の実際の 変化 と言 うよ りも設問の変化 に よる差異 と考 えた方が よい と思われ るOまた、「で きる限 り 別居」 と 「別々に暮 らしたい」 では意味がず いぶん異 なるO用い られ た質問は次の通 りで あ る0 1 94年調査 「あなたは老後、お子 さん と一緒に暮 らした い と思 い ますか」 1 で きる限 り一緒に暮 らしたい 2 別々に暮 らしたい 3 か らだが弱 くなった ら一緒 に暮 らしたい 4 常 に行 き来 で きる距離 なら別居 したい 91年調査 「老後、子供 と一緒に暮 らしたい と思 い ます か」 1 で きる限 り別居 2 で きる限 り同居 3 体 が弱 くなった ら同居 したい坂井 .最近の信州女性の労働 と家族 をめ ぐるライフ スタイル 179 4 常 に行 き来で きる距離 な ら別居 したい 5 わか らない その他 したが って
、9
4
年度の長野市の報告書 を読 む限 りにおいては女性 の家庭- の回帰が読 み 取れ る結論が導 き出 されそ うであ るが、以上 とりあげた質問の検討か ら、 いずれの結論 も 断言で きない ことがわか り、一般女性の保守 化傾 向は導けないこ とがわか った。結論 と検討
①長野市で働 く女性 には若干家庭 回帰の方向 が示唆 されたが、長野市居住 の女子全体 では その方向は見 られなか った。 それは、質問項 目の問題か、 あ るいは働 いていない女性が外 での仕事志向に転 じたためか さらに検討す る 必要が あ る。 そのために も次 回の調査 には是 非比較が可能になるよ うな完全 に同一の質 問 項 目に よる調査 を行 うべ きである。 また、働 く女性 と働 いていない女性の意識 の差 とその要 因に注 目してい く必要があ る。 今後育 児休業制度が整 い、介護休業制度 も一 般的に普及 してい くと、労働 に有利 な条件が あるに もかかわ らずなぜ働 かないか とい うこ とが問題 になるだろ うか らであ る。 ②労働 をめ ぐる制度的 な変化に対 しては、大 きな意識の変化が見て とれた。 しか し、家族 や女性労働 に関す る意識は必ず しも大 きな変 化が見 られなか った。 ただ、全体 の変化が見 られ る場合 で も、年 齢別 に見た意識の変化が なか った r)、全体 の 変化が見 られない場合 に も、年齢別 に見 る と 変化がある場合があ るので注意 を要す る。 また、回答者の年齢構成の違 いが全体 の変 化 をもた らしてい るだけ とい う可能性 も考 え られ る。つ ま り、全体 の 中に 占め る割合が大 きい第1
次ベ ビー ブー ム コウホ- ト(
1
9
4
7
-
4
9
年生 まれ)が高齢化 してい るだけで、全体 が 変化 してい るように見 えるだけ とい う可能性 も考慮 してい くべ きであ る。 ③家庭 内の夫婦 の意識 は、 た とえば同年齢や 夫年下の夫婦の割合の増加 とい うこ とか ら全 体 として変化が見 られ る可能性があ る。 そ こ には、男女差の力関係 と年齢差の力関係 の微 妙 なバ ランスの変化が あ るの であるD ④次に家族 と女子労働 の関係 をデー タで見て み よう。 図4
は、坂井、高津、岩下(
1
9
9
4
)
の須坂市調査 か ら年齢別 に見 た労働 力率 を示 した ものであ る。厳密 な比較 がで きないが そ の年齢別の差異は全 国値 と同様 の傾 向 を示 し てい ることがわか る。 20代後半か ら30代前半 にかけて無職 の割合 が高 くなって40代後半か ら50代前半 にかけて 労働 力率 が最 も高 くなっている。 これは女子 の出産子育 てが大 きな影響 を与 えているため である。 また、須坂 市の女性 の労働 力率 がか な り高 いこ とが見て とれ るが、興味深 いのは、20代 後半 で全 国値 よ りも低 い労働 力率 になってい ることであ る。 これは、長野県の女性 は非常 に晩婚 であ るが、特定 の年齢幅 に集 中 して結 婚す る確率 が高 く、特定 の年齢幅 で出産 をす るこ とが反映 してい るため と思われ る (坂井1
9
9
5
)
。 末子の年齢別 に女子の労働 力率 を調べ て見 て も、 きわめ て ク リアな結果が得 られ る (図 5)。須坂市の率 は高 く推移 しているが傾 向は 全 国値 と同様 であ るこ とが うかが える。0-4 歳の子供がい る女子は過半数が働 いていない 状況にあ る。長野県は保育所就 園率が 日本1180 (%) 9] 故〕 70 60 50 40
清泉女学院短期大学研究紀要(
第1
5
号)
図4 女子の年齢別労働力率
女 子 の 年 齢 資料)坂井、高津、岩下、1995、 『女性 の ライフ ス タイル と意 識 に関す る調査』お よび総務庁統 計局、 1993、 『労働 力調査』 図5 末 子 の 年 齢 別 女 子 の 労働 力率榊
Ⅷ
Ⅶ 釦 70 餌 ER 伯 刃 E3 資料)坂井、高津、岩下、1995、『女性 の ライフ ス タイル と意識 に関す る調査』お よび総務庁統 計局、 1994、『労働 力調査特別調査』坂井 :最近の信州女性の労働 と家族をめ ぐるライフスタイル 181 であ るが
、0-2
歳 の それは全 国最低 であ る と い う子 ど もの年齢 に よって極端 な就 園率 の違 いが 見 られ る(坂井、1995)。 これが女子の年 齢別 の労働 力率 の極端 な差 を生 んでい る可能 性 が あ る。今 後長 野県の0-2
歳 の保育 園就 園 率 が変化 す るこ とで女性 の労働 力率 がか な り 変化す るだ ろ う。 また、高齢者 の介護 も女性労働 に影響 を与 え る。健康 な高齢 者 との同居 は幼 い子供 を持 つ女性 が働 く可能性 を増すが、介護 を要 す る 高齢者 との同居 はその可能性 を減 じるだ ろ う。 実 際に須坂市 で行 った調査 では、若干 その傾 向が見 られ る (図6)。 以上 の よ うに女子の労働参加 は、家族構 成 と非常 に密接 な関係 を持 ってい るこ とがわか り、今後 もその両者の関係 をフォロー、検討 して い く必要 が あ る。女子労働 が家族形態 に 影響 を受 け な くなった時が労働 に関 して男女 平等 にな った時 と言 え るか も知 れない。 ⑤ 意思決定 にかか わ る社会 の 「参画」へ とい うイデ オロギー の もとに、女性 は、社 会 の構 成員 の欠かせ ぬ存在へ 、 さらに社会 を形成 し てい く存在へ と舵 取 りが な され てい る。「信州 さわや か女性プ ラン」 (長野 県、1996)におい て もそのため に まず意識 の変 革 を と説かれ て い る。 しか し、本結果 も示す とお り、 意識 は 外か らの制度変革 の結果 であ るこ とが 多い。 い きな り意識の変 革 を説 くの は、個 人の側 に 相 当強 い変化欲求 が 内在 して い ない限 りほ と ん ど有効 でないだ ろ う。 む しろ制度 的改革 が 意識 を変 える と考 えた方 が よい。特 に家庭 に 関 しては 人は変革 の場 とは考 えないで、む し ろ変革 の必要 の無 い場 として考 えてい るため に、 なおの こ と意識変革 は起 きに くいであろ う。 む しろ、外の変化 に 自然 に対応す るのが 家族 に関す る意識 であ る と思 われ る。 ただ、 よ りよ き状 態へ の変 革志 向性 の意識 は強 く持 た ざるを得 ないのは言 うまで もない 図6 女子の介護経験別非労働力率182 清泉 女学院短期大学研究紀要 (第15号) が 、 女 性 をめ ぐる家 族 と労 働 の研 究 は 、 人 口 学 的 構 造 の変 化 や 法 律 、 制 度 の 変 化 との 関 連 で検 討 した方 が よい と思 わ れ る。 注) 育 児休 業法 は1992年4月 1日か ら施 行 され た が、規模 が小 さい事 業所 (常時30以下 の雇用者) では3年 間 その実施が猶予 され たo Lか し、1995 年4月 1日か ら全事 業所 に実施 され た。 参考文献 NH K放 送 文 化 研 究 所、1994、 「日本 人 の 意 識 1993