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費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係

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(1)費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. 研究ノート. 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係 丸田 浩 はじめに 多国籍企業が無形資産の共同開発等を行う際に、研究開発に要する費用を関 連企業間で分担するために、費用分担契約(Cost Sharing Arrangement, Cost Sharing Agreement)又は費用分担取極(Cost Contribution Arrangement)と 呼ばれる契約 1)を締結することがあるが、この費用分担契約の取扱いが移転 価格税制において問題とされる場合がある。 費用分担契約に関しては、これを締結することにより、関連企業間で無形資 産の譲渡や使用許諾を行う際に不可避的に生じる無形資産評価の困難性の問題 を回避することができるというメリットが指摘されており、契約の内容が適 切であれば移転価格税制の適用を回避しうるという意味で、いわゆるセーフ・ ハーバーであるともいわれることがある 2)。しかし、多国籍企業が価値の高い 無形資産を高税率国から低税率国へと移転させるための手段として費用分担契 約が用いられているという指摘も存在し 3)、特に米国では、この問題意識から、 費用分担契約に係る財務省規則の大幅な改定が進行中である 4)。 費用分担契約において最も重要なのは、各契約当事者(参加者)5)の費用の 分担割合と、合理的に予測される便益の享受割合が一致していることであり、 この要件(以下、 「費用便益均衡要件」という。 )が満たされている場合に限り 257.

(2) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 費用分担契約が独立企業原則 6)に適合していることになる、という考え方が 一般的である 7)。この考え方に対して、各参加者は、独立企業間で締結された 費用分担契約であれば分担されるであろう費用のみを分担することが独立企業 原則から要請され、全ての費用を分担の対象としなければならないという要件 を課すことは独立企業原則に反するという主張も存在する。米国の Xilinx 事 件では、この点が、費用分担契約の対象となる研究開発業務に従事する従業員 に対して付与したストックオプション費用が当該費用分担契約における分担の 対象とすべき費用にあたるかどうか、という形で争われた。また、我が国では、 費用分担契約を、 「一定の要件を充足した適格費用分担取決めについて、移転 価格税制の適用が除外される(関連当事者間の取引であっても、独立当事者間 基準に基づいて所得を算定されない)制度」8)と捉える見解までもが存在する。 このような状況を踏まえ、費用分担契約に適用される課税ルールは、独立企 業原則から当然に要請されるものなのか、それとも、独立企業原則とは別個の 規準に基づく要件によって費用分担契約の適格性を判定し、その要件を満たす 費用分担契約に関しては独立企業原則も満たしているとみなして移転価格課税 を行わないという一種の特例と考えるべきものなのか、検討の余地があると思 われる。そこで、本稿では、これら 2 つの考え方のうちのどちらが費用分担契 約について妥当するといえるかを考察することとしたい。 まず、第 1 章では、米国の財務省規則の変遷を概観し、米国で費用分担契約 がどのように取り扱われ、関連する財務省規則がどのように発展してきたかを 検討する。次に、第 2 章では、Xilinx 事件判決を題材として、同事件では、表 面上は従業員ストックオプションを分担の対象とすべきか否かが争われたが、 そのもとにある考え方として、費用分担契約と独立当事者間基準との関係に 関して異なる見解が存在していることを明らかにする。そして、第 3 章では、 OECD が公表した各種の報告書や移転価格ガイドライン、EU が公表した報告 書の検討により、OECD 等の費用分担契約についての立ち位置を考察する 9)。. 258.

(3) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. 第 1 章 米国における財務省規則の変遷 本章では、米国において費用分担契約に係る財務省規則が初めて提案された 1966 年規則案から、1995 年規則までの変遷を考察の対象とする。結論を先取 りするならば、かつての財務省規則では、費用便益均衡要件の充足が、独立当 事者間基準から当然に要請されるものであるとは捉えられていなかったこと等 を本章で明らかにする。また、1986 年の税制改正により内国歳入法 482 条第 2 文の所得相応性基準が導入されたことによって、費用分担契約の取扱いにどの ような変化が生じたかについても検討する。. 第 1 節 1966 年規則案 (1)規則案制定の背景 米国財務省の規則(及び規則案)の中で初めて費用分担契約に関する言及がな されたのは、1966 年規則案 10)においてである。同規則案の立案の中心となっ た Surrey は、以下のように、費用分担契約に関する規定の趣旨が、無形資産 の評価の困難性を回避するための安全な避難所(safe haven)を設けることに あったと述べている。 「セーフヘイブンは、如何なる分野においても納税者を拘束しない。 (中略) 納税者は、セーフヘイブンに閉じ込められることはなく、料金の額を裏付ける ために、いつでも独立当事者間基準を使用することができる。 我々は、無形資産の評価及び無形資産の使用にかかる適切な料金の算定が、 極めて困難な問題であることを認識している。このため、本規則案は、そうで なければ必要とされたであろう多くの評価を省略するために、 『セーフヘイブ ン』である費用分担契約を開発した。 」11) この Surrey の説明では、費用分担契約を、無形資産の評価作業を大幅に省 略できるという意味でのセーフヘイブンと位置付けているが、特に注目すべき なのは、セーフヘイブンである費用分担契約関連規定は、納税者を拘束するも 259.

(4) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). のではなく、納税者は独立当事者間基準を使用した方法を用いることも選択で きるとしている点である。この記述からは、66 年規則案の趣旨が、従来から ある独立当事者間基準に基づいた移転価格算定方法とは別に、費用分担契約に よって費用の分担額を調整する方法を財務省規則によって創設する、というも のだったと読み取ることができよう。 (2)規則案の概要 まず、66 年規則案では、一定の要件を充足する真正な(bona fide)費用分 担契約については、 「税務署長は、当該資産の開発の費用及びリスクの完全な 分担を反映するために適切である場合を除き、当該取得に関して配分を行わな い」12)と規定していた。 費用及びリスクの完全な分担(full share)とは、同一の状況で、同一の資産 に対する同一の持分を取得するために、非関連当事者であれば負担するであろ う費用及びリスクの分担と等しいとされていた 13)。そして、ある参加者によ る費用及びリスクの完全な分担額は、全参加者が分担すべき費用及びリスクに 占める当該参加者の費用及びリスクの分担額の割合と、生み出された無形資産 から生じた全参加者の予測便益の総額に占める当該参加者の予測便益の割合と が、同一の割合であるような分担額と等しいことが一般的であるとされていた 14). 。また、費用分担契約が、この規定(§1.482-2(d) (4) (iv) )の原則並びに. 当該費用分担契約が締結された時点で存在する事実及び状況と一致する何らか の合理的な基準に基づいて費用及びリスクを分担することを規定している場合 には、当該費用分担契約の下での分担は、完全な分担であるとみなす、として いた 15)。しかし、規則案の中に、完全な分担の要件が独立当事者間基準から 導き出されるとする明文規定は存在しなかった。 以上の規定を総合すると、66 年規則案では、各当事者の費用負担割合と便 ・ ・ ・ ・ ・. 益享受割合が等しくなるような費用の分担額が、一般的には独立当事者間基準 ・ ・. に適合する費用の分担額と等しくなるとみていたことが分かる。しかし、一般 260.

(5) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係 ・. 的でない状況、すなわち費用負担割合と便益享受割合が均衡していても、独立 当事者間基準を充足しない場合もあり得ると想定されていたように思われる。 また、§1.482-2(d) (4) (iv)に規定する原則と一致する基準による分担を、 ・ ・ ・. 独立当事者間基準を充足する完全な分担とみなす 16)というみなし規定を置い ていた点からは、66 年規則案に定める要件を満たしている費用分担契約につ いては、仮にその契約条件が独立当事者間基準に反するものであったとしても、 独立当事者間基準を充足しているとみなした上で、移転価格課税を差し控える という趣旨であったとも考えらえる。このような捉え方は、前述した Surrey のセーフ・ハーバーと捉える見解とも整合的であろう。17). 第 2 節 1968 年規則 66 年規則案には費用分担契約に関する詳細な規定が置かれていたが、それ らの規定のほとんどが 68 年規則 18)では削除され、わずかに 1 パラグラフの規 定のみが残された 19)。 この大幅な規定の削除の理由については規則の前文等では明らかにされてい ない 20)。しかし、66 年規則案の根幹部分であった、費用便益均衡要件を満た していれば費用分担額の調整以外には課税が行われない、とする箇所は 68 年 規則にも残されており 21)、66 年規則案の考え方が否定されたわけではないと 思われる。ただし、66 年規則案と比較すると、重要な相違点が一点存在する ことには注意が必要である。それは、66 年規則案に存在した、規則に定める ・. ・. 要件を充足する真正な費用分担契約は独立当事者間基準を満たすものとみ な ・. す、というみなし規定が、68 年規則では削除されている点である。68 年規則 は費用及びリスクの分担が独立当事者間基準に基づいていることも要請してい るため、このみなし規定の削除の結果として、68 年規則の文言上は、費用便 益均衡要件等の要件が独立当事者間基準から当然に要請される要件であると解 する方が自然である。したがって、68 年規則の費用分担契約関連規定は、も はや Surrey が想定していたようなセーフヘイブンではないと考えることもで 261.

(6) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). きるであろう 22)。. 第 3 節 1986 年内国歳入法 482 条改正 (1)両院協議会報告書 1986 年租税改革法によって内国歳入法 482 条が改正され、第 2 文のいわゆ る所得相応性基準が追加されたが、その際に、費用分担契約をどう取り扱うか についても検討がなされていることが、両院協議会報告書から伺える 23)。 同報告書の中で費用分担契約に言及する部分 24)をみると、費用分担契約が 所得相応性基準に適合していると認めるには、以下の 3 要件を満たしている必 要があると連邦議会が考えていたことが分かる 25)。まず、研究開発の成否を 問わず、一定の製品分野内の全ての研究開発費用を費用分担契約の対象に含め ることを要求している。次に、費用分担割合は、研究開発費用が生ずる前、す なわち、研究開発開始前に予想された便益享受割合と比例的であるべきとして いる。そして、第 3 に、いわゆるバイ・イン支払いが必要な場合のあることを 想定している 26)。. 第 4 節 1988 年移転価格白書 1986 年に内国歳入法 482 条を改正する際に、連邦議会は、内国歳入庁に対 して移転価格のルールについて包括的な研究を行うことを要請していた 27)。 この要請にこたえる形で、連邦財務省と内国歳入庁は 1988 年に報告書を公表 した 28)。この報告書は、一般に「移転価格白書」と呼ばれており、その中に は費用分担契約に触れている部分がある。 (1)1986 年税制改革法の後の費用分担契約 次に、移転価格白書は、1986 年の内国歳入法 482 条の改正後の費用分担契 約の取扱いを検討しているが、その中でも最も重要と思われるのは、以下の部 分である。 262.

(7) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. 「費用分担契約が真正な費用分担契約でない場合には、当該費用分担契約の下 での支払いは、その無形資産について支払われるべきである独立企業間価格を 相殺するものとして取り扱われる。 (中略)財務省規則 §1.482-2(d) (4)は、 費用分担契約の場面において内国歳入庁が行う調整を、支払われた分担金の調 整に限定しているが、この規定は当該契約が真正であることを前提とする。当 該契約が真正なものでない場合には、所得相応性基準を含む通常の独立当事者 間基準が適用されるであろう。 」29) この記述からは、費用分担契約を真正な費用分担契約と真正でない費用分担 契約に明確に区分した上で、異なる課税ルールを適用すべきと考えていること が分かる。その上で、費用分担契約に特有の課税ルール(費用便益均衡要件等) が適用されるのは、真正な費用分担契約のみであり、真正でない費用分担契約 については通常の独立当事者間基準が適用され、無形資産の対価として独立企 業間価格が支払われなければならないとしている 30)。 (2)真正な費用分担契約に関する議論 移転価格白書は、真正な費用分担契約の要件についても検討しているが、そ の際に議論の根底にあったものが費用便益均衡要件であることが、以下の記述 で明らかにされている。 「1986 年法の立法経緯において、費用分担契約に関連して議論された全ての 問題の根底にあったのは、各参加者が負担する費用は、費用分担契約の下で開 発された無形資産を利用することによって、各参加者が将来的に得るであろう 合理的予測便益と比例するべきである、という基本原則である。 」31). 第 5 節 1995 年規則 移転価格白書が公表された後に、財務省規則の改訂作業が開始され、1992 年の規則案を経て、1995 年に新たな規則が確定した 32)。 まず、95 年規則 33)は、 「納税者は、 本条(b)の要件に合致する場合に限り (only 263.

(8) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). if) 、費用分担契約が適格費用分担契約であると主張できる(may claim) 。 」34) という原則を掲げていた。68 年規則の 「真正な (bona fide) 」という文言が、 「適 格(qualified) 」という文言に変更されたが、従来の規則の考え方は、基本的 に受け継がれている 35)。特に、費用分担契約は、所定の要件を満たしていれ ば自動的に適格費用分担契約に該当するのではなく、納税者が適格費用分担契 約に当たると主張した場合にのみ適格費用分担契約として扱われるという位置 づけになっている点が特徴的である 36)。 適格費用分担契約に該当する場合には、 「税務署長は、本条の規定に基づき、 無形資産の開発により享受する合理的に予測される便益のそれぞれの持分を、 適格費用分担契約の下での各関連企業である参加者の無形資産の開発費用の分 担(§1.482-7(b)により決定される。 )と等しくするための決定が必要な場合 を除き、適格費用分担契約に関しては配分を行わない。 」37)という取扱いがな されるので、費用便益均衡要件に基づいた費用の調整のみが行われることにな る。. 第 6 節 1966 年規則案と 1995 年規則の比較 66 年規則案と 95 年規則の各条項を比較すると、95 年規則の要件のうちのか なりの部分が、全く同一ではないにしても、66 年規則案の段階で既に要件と して挙げられていたことが分かる。特に、費用分担契約のうち、一定の要件を 満たすものについてのみ真正な費用分担契約又は適格な費用分担契約として取 り扱い、費用の分担割合を調整する方法での調整のみを行うとしている点は同 一である。一定の要件の中には、費用便益均衡要件が含まれている。 他方、66 年規則案にはなかった考え方に基づいて 95 年規則に新たに盛り込 まれたと思われる要件(書面への記載の義務化等)も存在する。66 年規則案 では、真正な費用分担契約に該当すれば、独立当事者間基準を充足するとみな すとする明文規定が存在したが 38)、95 年規則では、税務署長は適格費用分担 契約に関しては費用の調整を除き配分を行わない 39)とするのみである。95 年 264.

(9) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. 規則が適格費用分担契約に費用の調整以外の配分を行わないとする根拠が、適 格費用分担契約であれば当然に独立当事者間基準を充足するとみているからな のか、それとも、独立当事者間基準については考慮せず、費用便益均衡要件を 含む適格費用分担契約の要件さえ充足すればよいとみているからなのかについ ては、規則の中で特に言及されていない 40)。 このように、66 年規則案と 95 年規則に多くの類似点があり、95 年規則の費 用分担契約関連規定中で独立当事者間基準との関係や、所得相応性基準の創 設による影響に言及していないことからすると、95 年規則は、内国歳入法 482 条が所得相応性基準を採用したことに伴う財務省規則の改定作業によって制定 されたものであるが、だからといって、95 年規則の下では費用分担契約には もはや従来の(比較対象取引に依拠する)独立当事者間基準は適用されず、費 用便益均衡要件を含む適格費用分担契約の要件だけが問題となる、と断定する ことは困難であるように思われる。. 小括 本章では、95 年規則以前の財務省規則における費用分担契約の取扱いを検 討したが、そこからは、次の結論が導き出せるように思われる。まず、当初の 66 年規則案は、費用分担契約のような形態の関連当事者間の取極に関して本 来適用されるべき移転価格課税の方式が、無形資産の譲渡又は使用許諾である ことを前提にした上で、その代替案として、一定の要件を満たす真正な費用分 担契約に対してのみ、納税者に有利な取扱い(又は無形資産の評価の負担を軽 減できる取扱い)も併せて認めることとした、すなわち、真正な費用分担契約 の課税ルールである “ 費用便益均衡要件 ” は、通常の移転価格税制に代えて、 (納税者が一定の要件を満たした取極を締結することによって)選択可能な別 個の課税方式であるとみることができるのではないだろうか。 しかし、このような位置づけは、68 年規則において 66 年規則案の規定の大 部分が削除されたことによって早くも明文上の根拠を失っており、1986 年税 265.

(10) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 制改革法以降の財務省規則改定作業を経た後の 95 年規則にも妥当するとは、 必ずしもいえない。95 年規則では、一定の要件を満たす適格費用分担契約に ついて、費用便益均衡要件をはじめとする特別な課税ルールを適用することを 認めており、その意味では、通常の移転価格税制に代えて納税者が選択可能な 別個の課税方式という位置づけは変わっていないとみることも可能であろう。 現に、次章で検討する Xilinx 事件において課税庁側はそのような趣旨の主張 を行っている。しかし、同事件の納税者側の主張は、逆に、費用分担契約の課 税制度についても独立当事者間基準が適用されるというものであり、95 年規 則の前年に確定した 94 年規則 41)の中には、そのように読める箇所があるので ある 42)。さらに、4 章で検討するように、95 年規則とほぼ同時期に公表され た OECD 移転価格ガイドライン第 8 章は、費用分担契約に適用される特別な 課税ルールが独立企業原則と整合的であるという前提に立っている。 そ こ で、次章 で は Xilinx 事件 の 一連 の 経緯及 び 同事件 が 係争中 で あった 2003 年に行われた財務省規則一部改正の内容を検討することとする。. 第 2 章 Xilinx 事件 米国でも、費用分担契約に対する移転価格税制の適用の是非が争われた事案 は多くない 43)が、2010 年に確定した Xilinx 事件 44)は、費用便益均衡要件と 独立当事者間基準の関係が正面から争われた事案である。また、Xilinx 事件判 決が、2003 年に改正された財務省規則に与える影響の有無についても本章で 検討することとする。. 第 1 節 Xilinx 事件の経緯 (1)事案の概要 Xilinx 社(以下、X)は、集積回路等の研究開発、製造、販売業等を営む米 国法人である。Xilinx Ireland 社(以下、XI)は、アイルランド法を準拠法 266.

(11) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. として 1994 年に設立された、原告の子会社 45)であり、主にヨーロッパの顧客 に対して集積回路を製造、マーケティング及び販売し、研究開発を行っていた。 X と XI は、1995 年 4 月 に「技術費用及 び リ ス ク 分担契約(以下、本件 CSA) 」を締結した。その内容は、本件 CSA 締結日以後にX、XI又はXの 連結子会社が開発する全ての新技術を、XとXIとの共同所有とする旨を規定 するものであった。 分担を要する費用は、直接原価、間接原価及び知的財産権取得費用であり、 中でも直接原価については、 「新技術の研究開発に直接関連する原価で、給与、 賞与その他の人件費及び給付金を含むが、これらに限定されない」と定義され ていた。 本件 CSA に従って費用の配分を決定する際に、Xは従業員ストックオプ ション(以下、 「ESO」という。 )の発行に関連する費用 46)を、費用配分の対 象となる研究開発費に一切含めていなかった。なお、X は、ESO 費用を財務 会計上は費用計上していなかったが 47)、その一方で、内国歳入法 83 条に基づ く ESO 費用の所得控除を行っていた 48)。 内国歳入庁長官(以下、Y)は、本件 CSA で分担の対象とすべき研究開発 費に ESO 費用を含めて計算した金額により費用の配分を行ったので 49)、Xは これを不服として出訴した。 (2)争点 争点は複数あったが、独立当事者間規準に関わるものとしては、独立当事者 間基準を「全ての場合」に適用すべきとする財務省規則 §1.482-1(b) (1)と、 費用分担契約において「全ての費用」を分担すべきとする財務省規則 §1.482-7 (d) (2)の関係をどのように捉えるかが争われた。 (3)当事者の主張 X は、独立当事者間基準を規定する §1.482-1(b) (1)は、全ての場合に適 267.

(12) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 用すべき基準であり、費用分担契約に関連する規則である §1.482-7 に優先し て適用される、と主張した。それに対して、Y は、独立当事者間基準を規定す る §1.482-1(b) (1)は、 「一般的な」原則を定めるものであり、§1.482-7 に いう適格費用分担契約はその例外に当たるので、費用の配分額を決定する際に 非関連当事者間の取引を考慮する必要はない、と主張した。 (4)租税裁判所の判決(X 勝訴、Y 上訴) 租税裁判所は、 「独立当事者間基準は、§1.482-7 に従って費用の適切な配分 額を算定する際に適用される。 」50)と判示し、費用分担契約についても独立当 事者間基準が適用されるという見解に立った。そして、1986 年の 482 条改正 によって導入された所得相応性基準については、 「独立当事者間基準を補足及 び支援することが意図されたものであり、独立当事者間基準に取って代わるこ とが意図されたものではない」51)ため、 「内国歳入法 482 条の 1986 年の修正 は、関連当事者である納税者の所得を決定する際に比較対象取引を用いること を排除するものではない。 (中略)したがって、非関連当事者間でスプレッド 又は付与日の価額が分担されないのであれば、被告の不足税額の決定は恣意的 かつ専断的 52)なものとなる。 」53)と結論付けた。 (5)第 9 巡回区控訴裁判所の当初判決 54) 第 9 巡回区控訴裁判所の審理では、両訴訟当事者が租税裁判所の事実認定に ついて争わなかったため、主要な争点は、費用分担契約の関連参加者間で「全 ての費用」を分担すべきという §1.482-7(d) (1)の要件と、関連当事者間の 全ての取引は独立当事者間の行動を反映すべきとする §1.482-1(b) (1)の要 件のいずれが支配(control)するかの 1 点に絞られた 55)。 多数意見は、前述した X と Y のどちらの主張も採用せず、 「この 2 つの規定 は、特に無形資産開発に関連する費用分担契約において、どの費用を関連当事 者間で分担しなければならないかを決定するための基準として、相異なった両 268.

(13) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. 立しえない基準(distinct and irreconcilable standard)を打ち立てている」56) と判示した。そして、費用分担契約についての規定である「§1.482-7 は、前の 規定(§1.482-1 乃至 §1.482-6:引用者注)において確立された一般的な方法 論に対する例外を創出する、自己充足的な規定であるように思われる」57)と いう位置づけを行った上で、特別法は一般法を破るという解釈原則(canon of construction)を適用して、 「2 つの規定(§1.482-1(b) (1)と §1.482-7(d) (1) : 引用者注)のうち、より特別な規定である §1.482-7(d) (1)が支配(control) する」58)と判断した。 結論としては、 「本件 ESO は、 『無形資産開発分野に関連する費用』であり、 費用分担契約における関連当事者間で分担されなければならない」59)として 原審を破棄した 60)。 (6)第 9 巡回区控訴裁判所の再判決 第 9 巡回区控訴裁判所の当初判決に対して、X は再審理の申立て(Petitions for Rehearing)を 行った。し か し、本判決 は 各方面 か ら の 批判 に さ ら さ れ た た め、2009 年 5 月 27 日 に 第 9 巡回区控訴裁判所自身 が 同判決 を 撤回 (withdraw)し 61)、再審理を行うことなく、2010 年 3 月 22 日に、納税者側を 全面的に勝訴させる判決(以下、再判決という)を下した 62。 まず、再判決は §1.482-1(b) (1)と §1.482-7(d) (1)について、 「この 2 つの規定は、無形資産開発に特に関連して費用分担契約の関連当事者間で分担 しなければならない費用を決定するための基準として、 曖昧な基準(ambiguous standard)を打ち立てている。 」63)として、 当初判決とは異なる解釈を採用した。 次に、この曖昧さを前提にすると、 「1.特別法は一般法を破るという経験則を 適用する。2.当該財務省規則の主たる目的に基づいて曖昧さを解決する。 」64) という 2 つの選択肢があるとした。しかし、 「財務省規則の目的は独立取引を 行う納税者と関連当事者間取引を行う納税者とを同等(parity)にすることで ある」こと等を理由に、第一の選択肢は誤りであり、§1.482-7(d) (1)の要 269.

(14) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 件が独立当事者間基準に優先することはないとした 65。結論としては、費用分 担契約に独立当事者間基準を適用した租税裁判所の判決を支持し、再び X を 勝訴させた。. 第 2 節 2003 年改正規則 Xilinx 事件が訴訟提起された後に、株式報酬に関する財務省規則の一部改正 案 66)が 2002 年に公表され、翌 2003 年に確定した 67)。改正箇所のうち、費用 分担契約に関する部分を要約すると以下のとおりである。 まず、費用分担契約に関する規定である §1.482-7 の位置づけについては、 「§1.482-7 は、適格費用分担契約が独立当事者間実績値と一貫した結果を生み 出すかどうか、を評価するために用いるべき特別の方法を規定している」68) としている。この位置付けによれば、§1.482-7 の要件は、適格費用分担契約 に限って適用されるという意味では特別な方法であるが、あくまで独立当事者 間基準に基づく費用配分方法の一つであって、独立当事者間基準の適用を排除 するものではない、ということになるであろう。 次に、 「適格費用分担契約は、当該適格費用分担契約の下で無形資産開発費 用を各関連参加者が分担する割合が、そのような開発に帰属する合理的な予測 便益の享受割合と等しく、かつ、本項の他の全ての要件を満たす場合に限り、 §1.482-1(b) (1)の意味における独立当事者間実績値と一貫する結果を生じ させる」69)ことが明記された。この要件によれば、適格費用分担契約に該当 する費用分担契約が独立当事者間基準を満たすためには、必ず §1.482-7 の要 件を満たさなければならないことになる。言い換えれば、この一文は、適格 費用分担契約に適用される独立当事者間基準に基づく方法としては、§1.482-7 に規定する方法が唯一の方法であり、他の方法(例えば比較対象取引を用いる 方法)の適用を認めないことを明らかにしたものといえよう 70)。. 270.

(15) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. 第 3 節 Xilinx 事件判決と 2003 年改正規則に関する諸説 Xilinx 事件は、非常に注目を集めていた事件であり、多くの学説や見解が表 明されているが、中でも、第 9 巡回区控訴裁判所の当初判決が、 「特別法は一 般法を破る」という解釈原則を用いて独立当事者間基準の適用を排除した点に ついては、批判する学説が多い。 例えば、Greenwald は、68 年規則から 95 年規則までの改正の経緯を検討し た上で、財務省規則は常に費用分担契約に対して独立当事者間基準を適用する という意図を有していたと結論付け、連邦第 9 巡回区控訴裁判所の当初判決に は得心がいかないと述べている 71)。そして、Xilinx 事件のいずれの段階におい ても、費用分担契約に独立当事者間基準が適用されないという主張を連邦政府 側がしなかったことも、上述した結論の証拠であるとしている 72)。 また、Kohl は、所得の明確な反映という原則は、もう一つの濫用防止ルー ルである内国歳入法 446 条(b)の領域の原則であるので 73)、482 条の中心的 な目的は、関連当事者間取引が非関連当事者間の取引と比較可能なものである ように要請することであるとの立場に立ち 74)、独立当事者間基準の適用を排 除することは誤りであるとしている。 このように、当初判決に対する批判的見解が多くある一方で、当初判決は単 に機械的に「特別法は一般法を破る」という解釈原則を適用したのではなく、 その背後には独立当事者間基準に関して 2 つの捉え方が存在するという指摘も 存在する。 Patton は、関連当事者間で行われる通常の商取引において課税所得を確定 するための基準としての、比較対象取引又は比較対象利益に依拠する伝統的 な独立当事者間基準が存在するが、他方、特殊な状況において行われる関連 当事者間の取引に適用される、より自由度の高い独立当事者間基準も存在す る 75)、と主張する。そして、連邦財務省には費用分担契約についての特別な 課税制度を作り出す権限があり、その特別な制度は、非関連当事者間が実際 にストックオプション費用を分担するという証拠がなくとも所得を明確に反 271.

(16) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 映する実績値を定義することが可能であると第 9 巡回区控訴裁判所の当初判 決はみていた 76)、というのである。 ここで紹介した見解は、着眼点は様々であるが、それぞれ一定の説得力があ るように思われる。結局のところ、Xilinx 事件の決め手となったのは、 「非関 連当事者間では ESO 費用を分担の対象としない」という租税裁判所の事実認 定について訴訟当事者が争わなかったことではないかと思われる。その事実認 定を前提に判断する以上は、独立当事者間基準と費用便益均衡要件が両立しえ ないため、どちらかの適用を否定せざるをえないが、前者を否定したのが当初 判決、後者を否定したのが再判決と租税裁判所の判決といえよう。. 第 4 節 連邦財務省及び内国歳入庁の対応 連邦財務省と内国歳入庁は、2010 年に連名により Xilinx 事件に対する見解 (Action on Decision;以下、AOD という。 )を表明した 77)。その大枠は、 「内 国歳入庁は、当初の第 9 巡回区控訴裁判所の法廷意見の結果を支持するが、独 立当事者間基準についての納税者の解釈又は第 9 巡回区控訴裁判所の解釈には 同意しない。しかし、内国歳入庁は、本件に独立当事者間基準が適用されるこ とには同意する。 」78)というものであった。 AOD は、 「財務省規則の独立当事者間基準は、関連納税者が現実に行ったの と同一の取引を非関連納税者が締結するとしたならば、当該非関連納税者が採 用するであろう価格を求めている」79)という立場に立ち、第 9 巡回区控訴裁 判所が、 「関連納税者の行為又は関連納税者が締結し得る取引を、非関連納税 者が当該行為又は取引を行い得るか否かに基づいて限定している」80)のは誤っ た解釈であると述べている。 ただし、AOD は、2003 年改正規則によって、 「各関連納税者が全ての無形 資産開発費用のうち合理的予測便益割合に相当する割合を負担する場合にの み、費用分担契約が §1.482-1(b) (1)の意味における独立当事者間実績値を 生み出すこと、及び、費用分担契約が独立当事者間実績値と一貫した結果を生 272.

(17) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. み出しているかどうかを評価するために用いるべき唯一の方法を §1.482-7 が 規定していること」81)が明らかになったため、本判決の効力は限定的である とも述べている 82)。 この AOD に関しては、費用分担契約にも独立当事者間基準が適用されるこ とを内国歳入庁も認めている点、及び、独立当事者間基準の解釈について内国 歳入庁と裁判所の間で見解の相違があることが明らかにされている点が重要と 思われる。. 小括 本章では、Xilinx 事件の一連の経緯と学説、判決確定後の課税当局の対応、 及び、同事件の係争中である 2003 年に行われた財務省規則一部改正の内容を 検討してきた。その結果として、次の点が明らかになったといえよう。 まず、Xilinx 事件の争点のうち、本稿の検討の対象とする費用分担契約と独 立当事者間基準の関係に関連するものは、結局のところ、① 95 年規則の費用 分担契約に関連する各規定(§1.482-7)についても独立当事者間基準が適用さ れるか否か、及び、②独立当事者間基準が適用されるとするならば当該各規定 の内容が修正される可能性があるか否か、という論点であるといえよう。租税 裁判所は、①及び②を両方とも肯定し、独立当事者間基準を適用した結果とし て費用便益均衡要件の例外が生じることを認めた。第 9 巡回区控訴裁判所は当 初判決において①を否定したため、費用分担契約に独立当事者間基準が適用さ れること自体を否定するものとして批判に晒されることとなった。再判決は、 ①及び②につき財務省規則の規定は曖昧であるとした上で、納税者に有利な解 釈(すなわち①及び②を肯定する解釈)を取った。 次に、2003 年改正規則は、費用分担契約関連規定についても独立当事者間 基準が適用されることを前提にした上で、費用分担契約関連規定の諸要件は、 適格費用分担契約に独立当事者間基準を適用した結果として導き出されたもの である、という関係に両者があることを明確に規定した。すなわち、上述の論 273.

(18) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 点のうち①は肯定するが、費用便益均衡要件は独立当事者間基準から当然に要 請されるものであると捉えるため、②の可能性については否定する、という立 場に立っているといえよう。したがって、2003 年改正規則後の米国の移転価 格税制では、“ 費用便益均衡要件 ” に基づく費用分担額の調整は、移転価格算 定方法のうちの一つであり、適格費用分担契約について適用すべき最適な移転 価格算定方法である、ということができるであろう。. 第 3 章 OECD と EU における議論 本章 で は、米国財務省規則 の 変遷 と 同時並行的 に 順次公表 さ れ て き た、 OECD の各種報告書及び移転価格ガイドライン第 8 章の内容を検討し、費用 分担契約において、費用便益均衡要件と独立企業原則とがどのような関係に あると OECD が考えてきたかについて確認する 83)。また、費用分担契約にお ける独立企業原則についての EU における直近の議論についても併せて検討す る。. 第 1 節 1979 年報告書 OECD 租税委員会は、1979 年に「移転価格と多国籍企業」と題する報告 書 84) (以下、 「79 年報告書」という)を公表した。この 79 年報告書の第 3 章(技 術及び商標の移転)には、関連企業における研究開発費用に係る費用分担契 約についての記述が存在する 85)。 (1)共同研究開発の手段 79 年報告書は、独立企業間で行われる共同研究開発について、 「研究開発で の協力は、関連企業に限定されず、独立企業間においても行われるという証拠 が存在する。共同出資に係る研究企業が、民間企業間及び民間企業と国家間で 設立されている。そのような企業は、ジョイント・ストック・カンパニ―又は 274.

(19) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. パートナーシップの形態をとっている。 」86)とする一方で、 「独立当事者間で の費用分担契約は、特別なプロジェクトの場合を除いて、稀である」87)とも 述べており、独立企業間でも共同研究開発は行われているが、そのための手 段として費用分担契約が選択されることはあまりないと考えていることが分か る。 (2)分担金の額に通常の利潤の額を加算すべきか否か 79 年報告書の記述の中でも特徴的なのは、分担金の額に関する部分である。 まず、 「委託研究の場合であれば、研究を行う企業は、利益の稼得を意図して 当該研究を実施するのであり、したがって費用の額に通常の利潤の額を加算し て請求する、ということが前提となる」88)として、委託されて研究を行う企 業が、委託企業に対して請求する金額には通常の利潤が上乗せされるであろう ・ ・. ことを引き合いに出している。その上で、費用配賦契約においても、 「真正な 費用配賦契約が独立企業間においてしばしば締結される、ということを受入れ ることは困難であると思われる。したがって、費用分担契約の場合に利潤の上 乗せを求めることは、通常は正当である。 」89)という理由から、費用分担契約 においても、研究開発を実際に行った企業は、研究開発の便益を享受する企業 に対して通常の利潤を上乗せした金額を請求すべきであるという考え方を取っ ている。 思うに、この考え方は、関連当事者間で費用分担契約を締結して行う共同研 究に対して、独立企業間で行われている研究法人を設立して研究を委託する形 態と同様の取扱いをしようとするものである。委託研究の場合に研究法人が委 託法人に対して請求するであろう金額が、費用に通常の利潤を上乗せした金額 なのだから、費用分担契約においても便益を享受する企業が支払うべき金額は、 費用に通常の利潤を上乗せした金額であるという理由付けをしているようであ る。. 275.

(20) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). (3)研究開発費の割り当て方法について ただし、研究開発費を各参加者に割り当てる方法に関しては、以下のような 記述が存在する。 「研究開発費は、費用分担契約の参加者に対して公正かつ衡平な方法で割り 当てられなければならない。 (中略)多国籍企業の中には、各参加者の予測便 益に比例的に費用を割り当てている企業もあるが、これは合理的な方法である と思われる。 」90) ここで合理的な方法として取り上げているのは、費用便益均衡要件に基づく 費用配分そのものであるといえよう。 以上のように、79 年報告書では、費用分担契約における費用便益均衡要件 に基づいた費用分担を合理的であると評価する一方で、独立企業原則の観点か らは、単に費用を分担するだけでは足らず、研究開発を実施した企業が通常の 利潤を上乗せした金額を他のグループ企業に請求すべきとしている。費用便益 均衡要件にも合理性があるが、独立企業原則とは必ずしも合致しない、という 立ち位置であったとみることができるであろう。. 第 2 節 移転価格ガイドライン 1995 年には、OECD 移転価格ガイドライン 91) (以下、 「移転価格ガイドライ ン」という。 )が公表されたが、これに追加する形で、1997 年に理事会で承認 された費用分担契約に関する報告書が OECD 移転価格ガイドラインの第 8 章 となった。移転価格ガイドライン第 8 章の目的は、関連者により設定された費 用分担契約の条件が独立企業原則に適合しているかを決定するに当たっての一 般的な指針を規定することにあるとされている 92)。 (1)独立企業原則との関係 まず、移転価格ガイドラインは、 「費用分担契約においては、 (中略)当該契約 276.

(21) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. に対する貢献全体に占める各参加者の分担割合は、当該契約の下で受け取る ことが予定される予測便益全体に占める各参加者の享受割合と一致するであ ろう。 」93)として、費用分担契約において “ 費用便益均衡要件 ” が妥当するこ とに言及しながらも、 「費用分担契約の条件が独立企業原則を満たすためには、 参加者の貢献は、当該契約から生ずると合理的に予測される便益を前提として、 比較可能な状況において独立企業が貢献することを合意するであろう貢献と一 致しなければならない。 」94)として、独立企業原則に適合することも求めてい る。両者の関係については、 「独立企業は、当該契約に対する貢献全体に占め る各参加者のシェアが、当該契約の下で受け取ることが予定される予測便益全 体に占める各参加者のシェアと等しくなることを要求するであろう。 」95)とし ており、独立企業原則から費用便益均衡要件が要請されると考えていることが 分かる 96)。 (2)費用分担契約の特殊性 費用分担契約に、移転価格ガイドライン第 8 章が規定するような、グループ 内で行われる通常の財・サービスの移転とは異なる取扱いがなされる根拠は、 相互便益(mutual benefit)の存在であると考えられていることが、以下の記 述から読み取れる。 「費用分担契約への貢献とグループ内での通常の財産・サービスの移転を区 別するものは、参加者によって意図された報酬の全部又は一部が、資源や技術 の拠出からの各参加者に対する予測便益であるということである。相互に便益 を得られるような共通の必要性が存在するとき、独立企業は費用分担又はリス ク分担の取極を結ぶ。 」97) この記述から分かるのは、通常の財・サービスの移転であれば、その対価と して独立企業間価格が支払われるべきであるが、費用分担契約では、全参加者 に予測便益が存在し、研究開発等の役務を提供した参加者も便益が得られるこ とから、他の参加者から必ずしも独立企業間対価を収受しなくてもよく、便益 277.

(22) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 享受割合に応じた費用の分担のみで足りる(すなわち、マークアップは不要で ある) 、という理論構成で、OECD が “ 費用便益均衡要件 ” を正当化している ということである。他方、委託研究の場合には、研究を行う法人が研究の成果 物を利用せず、便益を享受しないため、費用分担では足りず、独立企業間価格 が研究法人に対する報酬として支払われる必要性があるということになるので あろう 98)。 全参加者が便益を享受する費用分担契約を委託契約と区別しているという点 で、79 年報告書における OECD の考え方とは、明らかに変化がみられる 99)。 (3)貢献の評価 移転価格ガイドラインでは、各参加者の貢献割合が便益享受割合と一致する ことを要求しているが、貢献の価値を評価する際には、 「参加者が費用分担契 約に対して行ったすべての貢献を認識することが重要である。 」100)とする一方 で、 「各参加者の貢献の価値は、比較可能な状況において独立企業であれば当 該貢献に対して割り当てたであろう価値と一致すべきである。 」101)として、独 立企業原則に則った価値評価を要求している。 以上のように、移転価格ガイドラインの第 8 章は、費用分担契約の契約条件 が独立企業原則に適合しているかどうかを判定するための規定という位置づけ であるが、そこで挙げられている実際の判断基準は、費用便益均衡要件そのも のであるといえよう。したがって、費用分担契約は独立企業原則に適合してい ることが必要なのは当然であるが、そのためには、通常は費用便益均衡要件を 満たさなければならないことになる。ただし、費用便益均衡要件を満たさなく ても独立企業原則に適合する費用分担契約が存在しうるかどうかについては、 移転価格ガイドラインでは言及されていない。. 278.

(23) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. 第 3 節 EU ジョイントフォーラムにおける議論 欧州委員会は、無形資産を創出しない費用分担契約の取扱いについての検討 作業を行っており 102)、2012 年 6 月に報告書の最終版 103)を公表した。 同報告書では、無形資産を生み出さない費用分担契約であって独立企業原則に 適合するものの特徴を列挙している。その特徴の一つとして、 「参加者の費用 分担割合が、当該参加者の期待便益の享受割合と一貫している」こと、すなわ ち費用便益均衡要件が挙げられているのである 104)。 費用便益均衡要件に関するその他の記述としては、 「独立企業原則に基づい て、参加者の貢献は、当該参加者の費用分担契約への参加から生じるであろう 予測便益と一貫したものでなければならない。 」105)として費用と便益の均衡を 重視しながらも、 「各参加者の貢献は、比較可能な状況において独立当事者で あれば提供するであろう貢献と、一貫したものでなければならない。 」106)とし て独立当事者の行動にも言及している。さらに、 「貢献には、取得、維持又は 当該取極から生じる便益確保のための全ての関連する費用が含まれるべきで ある。 」107)とも述べている。ただし、 本報告書中に、ESO 費用への言及はない。. 第 4 節 費用分担契約における独立企業原則の位置づけ 以上のように、OECD は、79 年報告書の段階から終始一貫して、費用分担 契約についての取扱いは、独立企業原則を満たすものでなければならないと考 えていた。ただし、独立企業原則を満たす費用分担契約とは何であるかについ て、年代を追うごとに若干の変化がみられる。 当初、79 年報告書では、独立企業間で共同研究のために用いられる手段(例 えば委託研究)が、関連企業間の費用分担契約の比較対象取引足りうると考え られていた。それに対して、移転価格ガイドラインでは、委託研究では、独立 企業間対価の支払いが必要であるが、費用分担契約では、原則として費用便益 均衡要件が妥当するとしており、両者を明確に区別している。更に、移転価格 ガイドラインは、費用分担契約が、費用便益均衡要件を充足する場合に独立企 279.

(24) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 業原則に則ったものと考えており、その際の貢献を評価する局面では、全ての 貢献を認識することが重要であるとも述べている。 EU の委員会報告書では、対象は無形資産を生み出さない費用分担契約に限 定されてはいるが、独立企業原則に適合する費用分担契約の特徴の一つとして 費用便益均衡要件が挙げられている。 これに対して、本稿の第 2 章で検討したように、米国の 2003 年以降の財務 省規則は、費用便益均衡要件を含む一定の要件を満たす場合にのみ、費用分担 契約が独立当事者間基準を満たすことになるとの規定を置いている。同規則は、 常に費用便益均衡要件を満たすことを要請しており、比較対象取引の存在を理 由とする反証を許さない、という点では、OECD の考え方と異なる結論を導 き出す可能性があろう。 ただし、現実問題として、関連企業間で締結される費用分担契約には非関連 当事者間の共同研究開発とは根本的な相違があることを根拠として、比較対象 取引が存在することがそもそも稀であるという前提に立つならば、財務省規則 の考え方と OECD の考え方に実際上は大きな差はないといってもよいのでは ないだろうか。. 小括 本章では、OECD が費用分担契約をどう取り扱うべきと考えてきたかを中 心に考察してきた。本章第 4 節でも述べたように、費用分担契約における独 立企業原則の位置づけについては、OECD の見解と米国財務省規則の見解は、 時代と共にかなり接近してきており、現在ではそれほど大きな違いがないよう にも思われる 108)。特に、費用分担契約が独立企業原則に適合したものである ことを最重要視している OECD が、原則として独立企業原則から費用便益均 衡要件が要請されることを認めているとみられる点が重要であろう。このこと は、移転価格税制上、費用分担契約に関する明文規定を置いていない我が国に おける取扱いを考える上でも、大いに参考になると思われる 109)。また、直近 280.

(25) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. の EU における議論でも、無形資産を伴わない費用分担契約に関してではある が、独立企業原則に適合する費用分担契約の特徴の一つとして、費用便益均衡 要件を満たすことが挙げられている。. 結語 本稿では、費用分担契約と独立企業原則の関係がどのような位置関係にある かを考察するために、米国の財務省規則及び近時の裁判例並びに OECD や EU における議論を分析し、その結果、現在では、費用分担契約に関しては、例外 的に比較対象取引が存在する場合を除き、費用便益均衡要件こそが、独立企業 原則から要請される費用分担契約が適正か否かを判定するための規準であると みてよいのではないだろうか、という結論が得られた。 関連当事者間で締結する費用分担契約をどう取り扱うかに関しては、歴史と 共に変化が生じている。例えば、米国では、制度が考案された当時は、移転価 格税制の原則である独立当事者間基準とは必ずしも一貫しない規定であると考 えられていた費用分担契約関連規定(特に費用便益均衡要件)が、内国歳入法 482 条の改正を経て、現在でも争いはあるが、少なくとも財務省規則上は、独 立当事者間基準から当然に要請される要件であることが明記されるようになっ た。一方 OECD は、当初は、共同で研究開発を行うための取極という大枠で 考え、独立当事者間で実際に締結されている委託契約等と、関連当事者間で締 結される費用分担契約を同等に取り扱うことを指向していたが、後に考え方を 変え、現在では、関連当事者間で締結される費用分担契約には比較対象取引が 存在せず、各参加者の貢献割合と便益享受割合が均衡していることこそが独立 企業原則から要請されると考えているようである。 このような変遷を踏まえると、本稿の結論の立場に立つならば、費用分担契 約といえども独立企業原則に則って移転価格税制の適用対象となるが、そこで は、比較対象取引に依拠する方法が用いられることは稀であり、むしろ費用便 益均衡要件等の充足が要求されることが通常であるといえよう。その一方で、 281.

(26) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 冒頭で述べたように、無形資産を低税率国に移転するための手段として費用分 担契約が使われているとしても、そのような契約に対して、各国が国内法令の 改正によって規制を加えようと試みるのであれば、その国内法令は独立企業原 則に則ったものでなければならない、ということもできるであろう。 最後に、移転価格税制関連規定の中に費用分担契約について明示的に言及す る法令が存在しない我が国において、上述した本稿の結論を前提とした場合に、 費用分担契約に係る国内法上の取り扱いに独立企業原則(及び独立企業原則か ら要請される費用便益均衡要件等の要件)がどのような形で関わってくると考 えられるか、について 3 点ほど付言しておきたい。 第 1 に、 「費用便益均衡要件」が独立企業原則から当然に要請される要件で あるとするならば、取引が独立企業間価格によって行われたものとみなす、 という取引価格を擬制する方式をとる我が国の現行の移転価格税制の下でも、 費用分担契約の参加者である内国法人の費用分担割合が予測便益割合に比し て多すぎるという場合には、独立企業間価格を超える費用の支払いがあった として租税特別措置法 66 条の 4 に基づいて移転価格課税を行うことが可能で あろう 110)。 第 2 に、独立企業原則に適合していると認められる費用分担契約に対しては、 たとえ当該契約を締結したことによって無形資産が低税率国に移転する結果と なる等の課税上の弊害が生じることとなったとしても、当該契約に基づく費用 分担額及び無形資産の移転について否認して課税処分を行うことは困難であろ う。一例として、合理的な予測便益の享受割合に基づいて決定されている費用 分担額について、実際便益に基づいて費用の調整を行うことは、OECD 移転 価格ガイドラインが後知恵(hindsight)による課税を認めていない現状 111)で は認められない、すなわち独立企業原則に反する課税にあたる可能性があろう。 第 3 に、租税条約締結国の居住者である参加者を契約当事者とする費用分担契 約について、費用分担額の調整その他の課税を我が国(あるいは条約相手国) が行う場合には、租税条約の特殊関連企業条項 112)の適用対象となり、もしか 282.

(27) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. りに独立企業原則に反するような形の課税処分が行われた場合には、相互協議 の対象となるとみるべきであろう。 1)‌本稿では、これらの契約を総称して「費用分担契約」と呼ぶこととする。本来であれば、 米国財務省規則及び OECD ガイドラインの費用分担契約については、 「費用分担取決め」 又は「費用分担取極」と呼ぶのがより正確であると思われるが、我が国の移転価格事務 運営要領が費用分担契約という文言を用いていることから、本稿では、統一的に費用分 担契約という名称を用いることとする。 2)‌I. Benshalom, Sourcing the “Unsourceable”: The Cost Sharing Regulations and the Sourcing of Affiliated Intangible-Related Transactions, 26 Va. Tax Rev. 631, at 701(2007). 3)‌Avi-Yonah は、費用分担契約が米国から低税率国に無形資産から生ずる利益を移転させ るための主の手法であることを理由として、費用分担契約を現行の移転価格に関する法 の鍵となる要素と位置付けている。See R. Avi-Yonah, Xilinx and the Arm’s-Length Standard, 123 Tax Notes 1231, at 1231(2009) . 4)‌米国では、2005 年に規則案(REG-144615-02, 70 F.R. 51116)が公表され、2009 年に暫定 規 則(T.D. 9441, 74 F.R. 340) 、2011 年 12 月 22 日 に 最 終 規則(T.D. 9568, 76 F.R. 80082) となったが、 その翌日に新たな暫定規則(T.D. 9569, 76 F.R. 80249)が公表されて現在に至っ ている。 5)‌費用分担契約の契約当事者のことを、英語では “participants” と呼んでいる。本稿でも、 以後は「参加者」と呼ぶこととする。 6)‌独立企業原則とは、移転価格税制において広く用いられている概念である。OECD は、 独立企業原則を、OECD 加盟国が同意した、課税上移転価格を決定するために使用すべ き国際的な基準と位置付けており、OECD モデル租税条約の第 9 条(特殊関連企業条項) にかかるコンメンタール・パラ 1.6 では、独立企業原則を、 「比較可能な状況下での比較 可能な取引において、独立企業であれば得られたであろう条件を参考として利益を調整 しようというものであり、多国籍企業グループの構成企業を、1 つの統合された事業体の 不可分な部分ではなく、別個に事業を営む主体として扱うというアプローチを採用した ものである」と説明している。 日本では租税特別措置法 66 条の 4 が移転価格税制の根拠規定であり、内国法人が国外関 連企業と独立企業間価格と異なる価格で行った取引の価格を、独立企業間価格で行われ たものとみなす形で、独立企業原則に基づいた課税を行う旨を規定している。 そして、米国では、内国歳入法 482 条に係る財務省規則 §1.482-1(b) (1)において、独 立企業原則を「全ての場合において採用されるべき基準」と位置付けている。 283.

(28) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). なお、 「独立企業原則」の他に「独立当事者間基準」という文言が使われる場合があるが、 両者は基本的に同じ内容を示す概念である。独立企業原則という文言は、租税条約の特 殊関連企業条項(OECD モデル租税条約では第 9 条)及び我が国の租税特別措置法 66 条の 4 の課税原則をいう場合に用いられる。一方、独立当事者間基準とは、米国の移転 価格税制である内国歳入法 482 条の規定の課税原則を指して用いられることが多い。こ れは、482 条が、金子宏「アメリカ合衆国の所得課税における独立当事者間取引(arm’s length transaction)の法理(上) 」ジュリスト 724 号 104 頁(1980)において、 「関連企業 の間で、相互に特殊関係のない独立の当事者間の正常な取引と異なる条件で取引が行わ れた場合に、独立当事者間の正常な取引の基準に即して所得を計算しなおす権限を内国 歳入庁に与えるもの」として紹介されたためである。 本稿でも、米国の移転価格税制の下で採用されている課税原則を意味する場合にのみ独 立当事者間基準という語を用い、そのほかの場合には独立企業原則という語を用いるこ ととする。 7)OECD(1995) , infra note 91, ¶8.3. 8)神山弘行「無形資産の国際取引と課税」ジュリスト 1447 号 39 頁、43 頁(2012) 。 9)‌なお、米国財務省規則と OECD 移転価格ガイドラインとでは、費用分担契約に該当する 契約の対象範囲が異なるが、本稿では、両者に共通した、研究開発の成果である無形資 産の共同利用、という文脈での費用分担契約を検討の対象とする。 10)31 F.R. 10394(1966). 11)‌S. Surrey, Treasury’s Need to Curb Tax Avoidance in Foreign Business through Use of 482, 28 J. Tax’n 75, at 78(1968). 12)Treas. Reg. §1.482-2(d) (4) (i) , 31 F.R. 10394 at 10399(1966) . 13)Treas. Reg. §1.482-2(d) (4) (iv) , 31 F.R. 10394 at 10400(1966) . 14)Id. 15)Id. 16)‌原文では、“shall be deemed to be full shares” である。なお、“Black’s Law Dictionary 9th edition” によれば、“deem” という語の意義は、 「 (あるものを)あたかも本当は何か別の ものであるかのように取り扱うこと、又は(あるものを)それが有していない属性を 有しているかのように取り扱うこと」 (原文は、“To treat(something)as if(1)it were really something else, or(2)it has qualities that it does not have” で あ る。 )で あ る と さ れている。これに対して、日本語の「みなす」は、 「Aということとは元来性質のちが うBということを、ある法律関係では、同一にみる」ものであるといわれている(林修 三『法令用語の常識 第三版』 (1975)29 頁) 。したがって、 英語の “deem” は、 日本語の「み 284.

(29) 費用分担契約による費用分担と独立企業原則との関係. なす」と同義であるといってよいであろう。 17)‌なお、Xilinx 事件以降、費用分担契約についての議論が米国内で盛んであるが、66 年規 則案について、本稿のような指摘をしているものは見当たらない。 18)T.D. 6952, 33 F.R. 5848(1968). 19)Treas. Reg. §1.482-2(d) (4), 33 F.R. 5848 at 5854(1968). 20)‌なお、66 年規則案が研究開発開始前に契約条件を確定することを要求している点等が、 柔軟性に欠けているとして批判されたためであろう、とする見解が存在する。 ‌See, H. Krom, The Application of Section 482 to the Transfer or Use of Intangible Property, 17 UCLA L. Rev. 202, at 230(1969). 21)Treas. Reg. §1.482-2(d) (4). ‌真正な費用分担契約の参加者としての無形資産持分の取得について、 「税務署長は、当 該資産の開発の費用及びリスクにかかる各参加者の独立当事者としての分担額を反映す るために適切である場合を除き、当該取得に関して配分を行わないものとする。 」と規 定されている。 22)‌なお、移転価格白書は、特定の契約が 482 条の要件を満たし、真正な費用分担契約に当 たるか否かは、 事実認定の問題であるとしている。See White Paper, infra note 28, at 110 n. 218. 23)H.R. Rep. No. 99-841(1986)[hereinafter cited as Conf. Rep.]. 24)Id. at Ⅱ -638. 25)‌移転価格白書も、本報告書について同様に捉えており、 「本報告書が財務省規則を改定す る際に取り組むべき 3 つの潜在的問題を強調している」と述べている。See White Paper, infra note 28, at 114. 26)‌ただし、これらの要件が、所得相応性基準が規定されたことによって初めて要請される ことになったとみるべきなのか、それとも、これらの要件の全部又は一部は改正前の 482 条の下でも当然に要請されていたもので、本報告書は所得相応性基準導入後も依然 としてそのような要件を満たす必要があることを確認的に述べたにとどまるとみるべき なのか、については明記されていない。 27)‌両院協議会報告書には、 「本協議会出席者は、482 条の下での多くの重要かつ困難な問題 が、本立法によって解決されずに残されている、ということにも気づいている。本協議 会出席者は、内国歳入庁によって会社間の価格決定ルールに係る包括的な研究が遂行さ れるべきであり、現行の財務省規則を何らかの点で修正できるかどうかを注意深く考慮 すべきであると信じている。 」という記述が存在する。 See, Conf. Rep., supra note 23, at Ⅱ -638. 285.

(30) 横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月). 28)‌Treasury and IRS, A Study of Intercompany Pricing, Notice 88-123, 1988-2 C.B. 458(1988) [hereinafter cited as White Paper]. なお、邦訳(抄訳)として、日本租税研究協会編『内 国歳入法第 482 条に関する白書(移転価格の研究)の概要』 (1988)が存在する。 29)White Paper, supra note 28 at 115. 30)‌各参加者が費用分担額に応じて開発された無形資産の所有権を取得するのではなく、各 参加者のうちのいずれか一人だけが無形資産の所有者となるため、他の参加者が当該所 有者に対して無形資産の譲渡対価又は使用料を支払わなければならない、という意味合 いであろう。 31)White Paper, supra note 28 at 116. 32)‌92 年規則案と 95 年規則とでは、大きな変更は行われていないため、本節では 95 年規則 の内容のみを検討の対象とする。 33)‌T.D. 8632, 60 F.R. 65553(1995) . なお、1995 年規則の邦訳(仮訳)として、羽床正秀『平 成 11 年全訂版 移転価格税制詳解』439 頁以下(1999)が存在する。 34)Treas. Reg. §1.482-7(a) (1). 35)§1.482-7(b)に掲げられている適格費用分担契約の要件は、以下のとおりである。 「① 2 以上の参加者を含まなければならない。 ‌②‌ 参加者の予測便益の享受割合を反映させることが合理的に期待できる要素に基づ き、各関連参加者の無形資産開発費用に対する負担割合を計算する方法を提供しな ければならない。 ‌③‌ 経済状況、事業活動、参加者の活動及び当該契約に基づく進行中の無形資産の開 発における変化を考慮して、関連参加者の無形資産開発費用に対する負担割合の調 整を行わなければならない。 ‌④‌ 費用分担契約の締結及び改定と同時に書面に記載されなければならない。 (以下、 書面に記載を要する事項については省略) 」 36)‌納税者が適格費用分担契約であることを主張しない場合には、無形資産の使用許諾又は 譲渡が行われたものとして取り扱われ、無形資産についての課税ルールが適用されるこ とになるであろう。 37)Treas. Reg. §1.482-7(a) (2) . 38)Treas. Reg. §1.482-2(d) (4) (iv). 39)Treas. Reg. §1.482-7(a) (2) . 40)‌適格費用分担契約と独立当事者間基準との関係について、95 年規則が一切言及していな い理由は、明らかにされていないが、独立当事者間基準についての言及がないことを理 由として、適格費用分担契約にはもはや独立当事者間基準が適用されないとする見解が 286.

参照

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