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2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告

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(1)Title. 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告. Author(s) Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第40号: 79-110. Issue Date. 2008-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1072. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集▼北海道教育大学釧路校研究紀要一第40号(平成20年) Kushiro Ronshu,−JournaIofHokkaido University ofEducation at Kushiro−No.40(2008):79−110. 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告. あゆみ・小 野. 牧 子・荒 川 浩 一・森. 雅 樹・室 山. 俊 美・横 山 裕 充・比. 大 木 文 雄. 輝. 朗 子・大 西 康 史・佐. 克. 大 輔・亀 岡. 貴. 渕濱. 孝 喜・水 上 俊 司・辻 智 之・土 居 慎 也・照. 智. 花. 清 史・大 野 敬 祥・森 下. 司 宏 幸 司 久 夫. 勝 己■大 月 さゆり・斉. 敦. 諭・吉光寺. 藤 川 井 藤 島 良. 村柴. 田 瀬 田 輪 本 渕. 太. 中 田 絵理奈・造 寺 嶋 倫 子・田. 子 也 久. 久保田 浩 文・工. 孝 博 史. 小 林 香 織・野. 哲 晋 哲 博. 麻 生 克 彦・小. 政一. 毅・林. 林 田 藤 田 崎. 佐 藤. 北海道教育大学附属釧路小学校 北海道教育大学附属釧路中学校 北海道教育大学釧路校. ReportoncooperativeresearchwithHokkaidoUniversityof EducationKushirocampusanditsattached ElementaryandJuniorin2007 TakeshiSATO,MasatakaHAYASHI,SatoshiOHTA,KatukiKIKKOUJI,SayuriOHTSUKI AtsushiSAITO,KatsuhikoAso,KazuhiroKoBAYASHI,KiyofumiMuRASE,KohkiOHNO, ShunjiMIZUEAMI,TomohiroTsuJIKAWA,KaoriKoBAYASHI,Tetushi,NoDA, YukiyoshiSHIBATA,TomoyukiMoRISHITA,ShinyaDoI,TakayukiTERUl, HirofumiKuBOTA,ShinkoKuDO,DaisukeHANAWA,AkikoKAMEOKA,YasushiOHNISHI, TukasaSATO,ErinaNAKATA,TetsuyaZoHODA,AyumiFucHIMOTO,MakikoONO, KohoichiARAEAWA,KatsuhisaMoRISHIMA,TomokoTERASHIMA,HirohisaTASAK[ MasakiHAMABUCHI,ToshimiMuROYAMA,HiromituYoxoYAMA,TeruoHIRA,FumioOHXI KushiroElementarySchoolattachedt.oHokkaidoUniversit,yOfEducation. KushiroJuniorHighSchoolattachedtoHokkaidoUniversityofEducation HokkaidoUniversityofEd.ucationKushirocampus. 要 旨 本学では,2004年度より附属小・中学校と大学による協同研究委員会を組織し,教育研究の推進に着手し,今年で4 年目を迎える。2007年度も昨年度に引き続き,附属小・中学校合同研究会において全教科で研究発表を行った。本稿で はそれらを中心に,2007年度におけるその活動の概略を記した。 Ⅰ 目 的. 同じく中期目標・中期計画では,附属学校園が小・中連携 や異校種連携を内容とした研究推進を行い,新しい授業や. 中期目標・中期計画にも示されているように大学と附属 カリキュラムなどの開発といった成果を教育現場に広く還 学校園の連携による研究推進の実現と活性化が求められて 元させるという役割を担うことが示されている。 いる。本学においては,附属小・中学校と大学との共同研. そこで,本学においても2004年度より大学数貞を共. 究委員会を組織し,それらの活動に取り組んできた。一方, 同研究者に加え,附属小・中学校の連携研究を推進する括. −79−.

(3) 佐 藤. 毅 他. 動をスタートさせた。本稿では,4カ年計画の3年目にあ. 2 研究主題について. たる2007年度の附属小・中共同研究大会での研究発表 生きる力をはぐくむ義務教育のあり方. を中心にその活動を報告する。. ∼「健廉なからだ」にささえられた囁かな学力い「豊かな心」を求めて∼. Ⅱ 総 論 1 はじめに. 『生きる力』を構成する「確かな学力」「豊かな人間性」. 今日の学校教育では,子どもたちが生涯にわたってJL、身. 「健康・体力」のそれぞれの要素を高めていくためには,. ともに健康で豊かな人生を送るための『生きる力』の基礎. 学校教育全体で行っていくことが必要であり,本来小学校. 的な資質や能力をはぐくむことが求められている。. と中学校はそれぞれの立場で,それぞれの役割を果たすこ. すなわち『生きる力』を構成する要素である「健康・. とが求められてきた。. 体力」「確かな学力」「豊かな人間性」をバランス良く育て. 附属小中両校においても,それぞれがより高い教育効. ていくことが重要なのである。. 果を求めてその手立てを改善するための教育研究を推進し てきた。. これまで附小中における教育研究は,「確かな学力」や 「豊かな人間性」を育成するための授業方法の改善を中心. しかし,小中学校における 9年間を「義務教育」とい. に進められてきた。. う1つのまとまりとして捉えて教育活動を行うことで,小. しかし,授業方法の工夫だけでは教育効果が思い通り. 学校は中学校を見据え,中学校は小学校をふまえて行う教. に上がらない場面に直面することも多く,その原因となる. 育方法の実践が可能となり,その結果,今まで以上の教育. ことを解決する必要性を我々は経験的に感じてきた。そこ. 効果が期待できるのではないかという考え方が連携研究の. で我々は望ましい生活習慣によって保たれた身体や心が良. 発端となっている。. 好な状態に着目した。何故なら,学習意欲や運動意欲は体 の調子と関係していることは自らの経験からも感じられる. ′ヽ. ことだからである。また,心の調子と体の調子も密接に関 ′ノ学び掛ナる力(意欲r、、. 係している。すなわち,「健康な身体や心」は「確かな学 力」や「豊かな人間性」,「体力」を培う上で大切な条件と. なっている。 とりわけ,小,中学校9年間の義務教育期は児童生徒 の発育急進期,さらには思春期を含んでおり,体と心の成 長が著しく,しかも不安定な状態になることが多い時期で ある。 この時期に正しい生活習慣を身につけることによって, 身休や心を良好な状態に保ち,それを基盤として「確かな 学力」「豊かな人間性」を育てていくための教育を行って いくことが責要なのである。 つまり,本研究は大学附属学校であるという共通した 立場や,同じ敷地内に隣接する立地条件を有効に活用しな がら,今まで以上の教育効果を高めるために小中学校が連 携して授業改善を推進する教育研究である。 具体的には,子どもの発達をふまえ発達段階に応じた 図1 研究の全体構造. ものの見方や考え方を大切に考え,共通した「目指す児草 生徒の姿」を明らかにし,その実現のために小・中学校が9. 「義務教育のあり方」とは「小中9年間を見通して行う教. 年間の見通しを持って,児童生徒の健康なからだを育て,. 育方法」のことを意味している。具体的には「健康なから. 多様な資質や能力を伸ばす系統的・継続的な教科や道徳の. だ」を育成する取り組みの方法と,「確かな学力」を培う教. 授業のあり方を求めていくものである。. 科の授業,「豊かな心」を培う道徳の授業における有効な手. そして,アクションリサーチの手法により,健康なから. 立てを確立することである。. だを育むための小中学校での取り組み方や,児童生徒の『生. 本研究においては『生きる力』を構成する「健康・体力」. きる力』を培う教科,道徳の授業方法の改善を図り,その. 「確かな学力」「豊かな人間性」の基盤となるのは「望ましい. 結果を検証していく実証的研究の立場を取るものである。. 生活習慣の定着」により培われた「健康なからだ」である. ー80−.

(4) 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告 「新たな見方や考え方を発見し創造できる」とは思考力. という考えの上に立っている(図1)。. 「食事,運動,睡眠など,いわゆる基本的な生活習慣が. ・判断力,技能・表現,知識・理解が身に付いた状態であ. しっかり行えている児童生徒は,1日の生活に活力がみな. り,「自らの生活を積極的に高めようとする」とは,関心. ぎり,全てのことが風を受けた風車のようにスムーズに回. ・意欲・態度が身に付いた状態である。 研究を始めるにあたり1年次では,児童生徒の実態を明. 転する(『風車理論』(2003小澤・酉嶋))」ことや,「心の. 健康度が高い児童生徒は生活習慣がよく,逆に心の健康度. らかにするために「生活に関するアンケート」を実施した。. が低い児童生徒は生活習慣が悪い」(平成14年4月文部科. その結果,附小中の児童生徒の生活習慣,特に睡眠に関す. 学省『児童生徒の心の健康と生活習慣に関する調査」】)こ. る習慣に乱れが顕著であった。また,継続的に行っている. とからも,望ましい生活習慣の定着が,児童生徒の「健康. 「新体カテスト」の結果から附/ト中の児童生徒の体力は近. なからだ」を培うための重要な要因であることは明らかで. 年大きく低下してきており,ほとんどの種目において全国. ある。. 平均を下回っていることが明らかになった。. この基盤となる「健康なからだ」つくりを小中学校が連. また,各校の教師の意識の違いを明らかにするために. 携し,義務教育9年間を通して行っていき,その上で,各. 附小中学校合同研修において,小中学校それぞれの立場や. 教科においては「確かな学力」,道徳の時間においては「豊. 考え方を交流すること行った。そして,お互いの立場や考. かな心」の伸長を図るための授業方法の改善を進めていく。. え方を尊重しつつ,共通して行える指導はどんなことがあ. 「確かな学力」については各教科における授業レベルでの. るのかを探り,義務教育の入口である小学校から出口であ. 目標の達成度,「豊かな心」は道徳の時間の目標の達成度. る中学校までの9年間を見通した教育について教師全員で. で検証し,新たな授業の手法を確立していく。. 確認した。その中では,従来の「小学校の概念」「中学校 の概念」を取り外し,9年間を義務教育という1つのスパ. なお,昨年度までは「健康な身体」と表現していたが, 「健康なからだ=心と体の調子が良好な状態」と修正した。. ンとして捉え,その上で「小学校の役割」「中学校の役割」. を果たすべきであるということの共通理解が図られた。. さらに,『生きる力』の1つの要素である「健康・体力」. の「体力」は(保健)体育科で身につけるべき「確かな学. 同時に,各教科においては「培いたい力」を明らかにし,. 力」の1つとして捉え,(保健)体育科の教科研究の中で. 9年間のカリキュラムの系統性や発達段階に応じた指導計. 検証していく。. 画の作成に着手し,それに基づき各教科での実践を重ねた。. なお,本研究における理想的な風車は図2のようになる。. 具体的には,各教科の研究仮説を設定するために,培いた い力とそれらを高めるための手立て,高まりを見取る手立 てを明らかにし実践を行ったのである。この研究を通して 小学校,中学校の教科担当者が教科についての議論をした ことは大変意義のあるものであった。また,小学校,中学 校の区別がなく,担当教科の本質,今日的な課題,教科で. /{・!. 培わなければならない力などがある程度明らかになった。. 隋t心−㌶ト・\ノL′曳好捕■・/. しかし,児童生徒にも共通して,さらに全ての教科にお いて,協同体的な学びとしての「物事や人との出会いやか かわり」の中で,自分の思いや考えを言葉で表現したり, それを的確に理解したりする力が十分ではないということ が明らかになった。このことは児童生徒へのアンケート調 査の結果からも確認された。 具体的には,ペーパーテストでは十分な点数が取れても,. 3 日指す児童生徒の姿と研究の経過. 自分の考えを周囲にわかるように説明するのが極端に苦手. 附属小中両校が目指す『生きる力』を身につけた児童. であったり,消極的な態度であったり,真剣に教師の指示. 生徒の姿とは,. を聞いているように見えても説明を終えた途端に「何をす. 心身ともに健康で、物事や人とのかかわりから新たな見方や. るのですか?」と聞き返したりするという児童生徒の姿で. 考え方を発見し、創造し、自らの生活を積極的に高めようと. 見ることが多かったのである。. することができる児童生徒. 2年次には,以上のような児童生徒の実態をふまえ,各 である。. 教科における系統的,継続的な授業方法に加えて「言葉で. 「心身ともに健康」とは理想的な生活習慣が身に付い. 伝え合う場」を数多く設定することを手立てとした。. ている状態をいう。. 「言葉」は協同的な学びの中で,他者を理解し,自分を. すなわち,子どもの発達段階に応じて十分な睡眠,休養,. 表現し,社会と対話するための手段であり,家族・友だち. 食事,運軌家庭学習の習慣が定着しており,体調や心の 調子が良好であることを意味している0. ・学校・社会と自分とをつなぐ役割を担っている。また, −81−.

(5) 佐 藤. 毅 他. それらのつながり方が最も表出しやすいものである。さら. 児童生徒の生活改善を図る保健指導や啓発活動、(保健). に「言葉」は思考力や感受性を支え,知的活動,感性・情. 体育科の学習を行う。 道徳の時間の改善、充実を図る。. 緒,コミュニケーション能力の基礎となる。だからこそ,. 9年間を見通した系統をもとに、発達特性及び教科特性に. 学習活動の中に「言葉で伝え合う場」を数多く設定し,児. 応じた適切な手だてを講じる。 「言葉で伝え合う場」を意図的に設定した授業を行う。. 童生徒が自分の思いや考え・感覚などを論理的に表現しよ うとしたり,他者の言葉を理解するための活動を授業の中. 以上の手だてを講じることで「確かな学力」「豊かな心」. に取り入れてきたのである。. がはぐくまれると考えた。. この研究の結果,思考力や判断力を高め,知識や技能が 定着することを成果としてあげる教科が多く見られた。 しかし,各教科において「言葉で伝え合う場」の押さえ. 5 平成19年度(第3年次)の研究. が不十分であり,成果が確かなものであるかどうかを精緻. 研究副主題. に検証するまでには至っていない。. 「健康なからだ」にささえられた「確かな学力」・「豊かな心」. さらには,本研究においては2年次から推進する計画で あった「豊かな心」を培う道徳の時間の授業の研究に取り かかることができなかった。また,「健康なからだ」を培. 昨年度までの研究に加えて,今年度は「豊かな心」を育. う取り組みについては(保健)体育科の学習を中心として. 成する道徳の授業改善を行う。 また,附属中学校で継続して行われてきた「アクション. いたが,それだけでは不十分であるという反省がなされた。. リサーチ」(資料参照)の手法を用いて,各教科と道徳の. 以上のような研究の経過や反省をふまえて,今年度,「健. 康部会」「道徳部会」を設置し,より機能的に研究を推進. 授業における研究成果を実証的に検証する。. するために組織を修正した(図3)。. (1)「健康なからだ」を育成する〔健康部会〕. 児童生徒が心や体の調子を良好な状態に保つためには, 望ましい生活習慣に改善していくことが重要となる。その 確かな学力. ためには自らの生活をふり返り,絶えず自己評価し,望ま. 健康・体力. しい生活習慣の実践力を育成する。具体的には昨年度から 行っている「元気アップノート」と「QCシート」の取り 組みを今年度も継続し,その結果を基に児童生徒一人一人 の実態を把握し,個別の指導を行っていく。 また,「保健学習」や学級活動での「保健指導」,「保健. だより」「学年・学級だより」等を通して,各種調査結果 を児童生徒に対し,科学的に理解できるような指導を行っ ていく。 保護者や家庭に対しては,参観日等を利用した「保護者 説明会」や「保健だより」「学年・学級だより」等を通し て,各種調査結果の説明を行うと共に,啓発活動をくり返 し行うことで,望ましい生活習慣の定着に対する意識を高 める。. 図3 研究推進の組織. 「生活習慣アンケート調査」「体力テスト」を春と秋の2. 回行い,その変容や相関について分析を行い,取り組みの. 4 研究仮説. これらの研究の経過をふまえて,研究仮説を下記のよう. 成果を検証する。. に設定した。. さらに「保健室来室状況調査」を行い,総括的な状況の 把握や,抽出児童生徒の変容などから取り組みの成果を検. 義務教育9年間を通して、生活改善の指導、児童生徒の. 証する。. 多様な資質や能力を伸ばす系統的、継続的な学習、心の教. (2)「確かな学力」を育成する〔各教科部会〕. 育を行うことによって、児童生徒の「生きる力」がはぐく. これまでの研究で,各教科部会において小中学校それぞ. まれるであろう。. れにおける発達特性をお互いに理解するとともに,各教科 が持つ特性を確認してきた。それらをふまえ,各教科にお いて明確にされた「確かな力」を高めるための授業実践を. さらに,研究の成果を具体的に検証するために,研究の. 行っていく。. 内容を次のように設定した。. また,全ての教科において「言葉で伝え合う場」を意図 一82−.

(6) 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告 的に取り入れた授業づくりを進めていく。その中で「(∋何 附小 NRT(標準学力検査)の結果(全校平均). を」「②どのように(スキル・形態)言葉で伝え合えば」,. 「確かな学力」が高まるのかを検討し実践していく。 さらには各教科においてアクションリサーチの手法を中 心に「確かな学力」の高まりを見取る方法を検討し,多く の実践からその成果を評価していく。そして,各教科の授 業における取り組みが有効なものであったかどうかを検証 していく。 (3)「豊かな心」を育成する〔道徳部会〕 平成14年度 平成15年康 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度. 道徳部会が中心となり,道徳研究や道徳の時間の今日的 な課題,研究動向に関する理論研究に着手する。また,児. 図4 小学校NRT結果の経年変化. 童生徒の道徳性の実態調査(アンケート HtmN)や道 徳の時間についての意識調査,教師へのアンケートや保護. 附中 NRT(標準学力検査)の結果(全校平均). 者からの評価をもとに,小中学校共通の重点内容項目を設 定した上で年間指導計画の再編成を行う。その年間指導計 只V. 0. 画に基づき,教科との共通の手立てである「言葉で伝え合. 0U 6. 5. ︵SS︶煙瑚墜. う場」を取り入れた授業実践を行う。また,友達の多様な 考え方にふれながら,ねらいとする価値を自分ごととして せまり,それまでの自分を見つめ直し,今後の自分の生き. 4. 5. 方に意欲が持てるような授業実践を行い,それらの授業レ ベルでの効果を検証していく。. 平成†4年度 平成15年庄 平成16年度 平成17年度 平成柑年度 平成柑年度 5. (4)研究成果(『生きる力』の高まり)を確かめるために. 図5 中学校NRT結果の経年変化. 本研究における成果は『生きる力』を構成する「健康・ 体力」「確かな学力」「豊かな人間性」の変容として見取る ことができる。 そこで,健康部会が実施する「生活習慣アンケート調査」. や(保健)体育科が実施する「体力テスト」,研究部が実 施する「NRT・CRT学力検査」「HUMAN(道徳性検査)」 「AAI(学習適応性検査)」「心の健康に関する調査」「言 葉で伝え合うことの意識調査」などのデータから分析を行 い,研究成果を総合的に考察する。. また,各教科部会や道徳の授業の取り組みから「言葉で 伝え合う場」を数多く設定することの有効性を主観的な評 価を含めて総合的に考察することで,研究の成果を確認す. 図6 附属/ト学校 学習意欲の経年変化と全国との比較. る。 5 これまでの研究の成果と課題 (1)「NRT(標準学力検査)」,「AAl(学習適応性検査)」. の結果から 附属小・中両校で継続的に行っている NRT(全国標準 学力検査)の結果を,全教科の全校平均偏差値で年度ごと のグラフにまとめた。(図4,5). 小学校では研究2年目である昨年度には大きな伸びを見 せたが,今年度は低下した。また,中学校においては平成15 年度より低下を続けていたが,研究2年目に上昇を見せ, 今年度もわずかながらのびを見せた。. 図7 附属中学校 学習意欲の全国との比較. 図6,図7はAAI(学習適性検査)における学習意欲 の結果を示している。 ー83−.

(7) 毅 他. 佐 藤 小学校では学年差は見られるが,ほぼ全学年で全国平均 を上回っており,高い数値を示している。さらに4∼6年 生においては平成18年度から19年度にかけてののびが大 きくなっている。 中学校においては学習意欲の指数を見ると全学年ともに 全国平均を上回っており,比較的高いといえる。しかし,. 全国平均と同様に38期,37期ともに学年が上がるにつれ て低下しており,本研究が学習意欲に大きく影響している とはいえない状況である。. 図10 附小低学年児童の自己効力感. 図8 附属小学校 道徳性の経年変化. 附中 HUMAN(道徳性検査)の結果 5. 8 8. 5 4. 5. 2 0U. ■﹂J. 0. ︵のの︶≠州瞳. 図11附小中学年児童の自己効力感. 6. ︻J ヰ. 始期生. 38期生. 37期生. 38期生. 4. 図9 附属中学校 道徳性の経年変化. 図8,9は,研究を開始した平成17年から行っている HUMAN(道徳性検査)による児童生徒の全質問項目の 結果をまとめた数値(道徳性)を偏差値で示し,年度ごと のグラフにしたものである。 附小児童においては学年の特質による差が大きく,変化 の傾向を考察することは容易ではないが,研究2年次目に は大きく伸びている学年が多い。 附中生徒においては学年が進むにつれて道徳性が低下し 図12 附小高学年児童の自己効力感. ていることが明らかになった。しかし,全国平均において も同様な傾向が見られ,附中生だけに見られる特徴ではな. また,附中生徒においても「私は自分に価値がないか他. いことが明らかになった。 また,本年度実施した「心の健康に関する調査」(資料. 人より劣っていると思う」という質問項目で「よくあては. 参照)結果を全国平均と比較して見ると,児童,生徒とも. まる」生徒が非常に少なく,自己効力感が高い状況である. に「全国平均と同様な状態である」,若しくは「全国平均. といえる(図13,14)。 さらに,附属′ト中学校両校に共通して「学校は楽しい」. より良好な状況にある」といえる。. と感じている児童生徒の率が全国を上回っていることが明. 附小児童においては特に「自分はやればできる」という自. らかになった(図15,16,17,柑,19)。. 己効力感に関して全国より高い結果を示した(図10,11,12)。. −84−.

(8) 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告. 私は自分に価値がないか他人より劣っていると思う ツ:学校は楽しいと思う(高学年〉 O1. 20ヽ. 4汎. 80%. 6()ヽ. 108%. ロあては子らな1. ■ややあてはま し■メくあては奉. 1宜男子. 2年男子. 3年男子. 全国2年男子. 図13 附中生男子の自己効力感. 皿あてはまらない 図17 附小高学年「心の健康に関する調査」『学校は楽しいと思う』. 学校は楽しいと思う. ロあてはまらない ■ややあてはまる ■よくあてはまる. 」. 1年女子. 2年女子. 3年女子. 全国2年女子. 図14 附中生女子の自己効力感 図18 附中男子「心の健康に関する調査」『学校は楽しいと思う』. 図15 附小低学年「心の健康に関する調査」『学校は楽しいと思う』 図19 附中女子「心の健康に関する調査」『学校は楽しいと思う』. 研究3年次目を迎え,児童生徒の生活習慣は少しずつ改 善がはかられてきており,わずかではあるが,体調面や体 力においても向上の傾向にある。 また,「やればできる」,「自分には価値がある」という. 自己効力感を持ち,「学校は楽しい」と感じながら学習を 行っていく児童生徒の割合が高いことは望ましい状況にあ るといえ,研究の成果の1つであると考えている。. しかし,「NRT」や「HUMAN」,さらには「心の健康 に関する調査」全ての結果において,全国平均値と附属小 中学校両校の児童生徒の結果には有意な差は認められてい. 図16 附小中学年「心の健康に関する調査」『学校は楽しいと思う』. ない。さらに,生活習慣や体力の変化と各種の検査結果と の相関を明らかにすることはできなかった。 今後は,本研究における実践と各種調査結果との関係を −85−.

(9) 佐 藤. 毅 他. さらに精緻に調べていくことが課題となる。. の手立てとして「言葉で伝え合う場」を意図的に学習活動に. また,「心の健康に関する調査」は今年度初めての取り. 組み入れ,実践を重ねてきた。各教科において,何を伝え. 組みであり,今後も継続的に調査を行い児童生徒の変容を. 合うことで,どういった力が高まると考えたかを一覧にす. 見ていくことが重要である。. ると次のようになる。. (4)各教科の授業実践から. 全ての教科において,「確かな学力」をより高める共通 表1各教科における「言葉で伝え合う場」と「高めたい力」 何を伝え合うのか 教科等 国 語 科 書く(作成・推敲)過程における,自分の工夫や相 手のよさ・改善点 社会的事象を比較したり,関連を考えたり,様々な 社 会 科 文章や資料・テキストを読んだりしながら得た自分 の思いや考え 問題解決における自分の疑問や考え 算数・数学科 ∼算数・数学の様々な表現(文章,式・表・グラフ,. どういった力が高まると考えたか. 数理的に考察する. 図形,モデル等)を用いる. 理. 科 事前事象とのかかわりにおいて得た自分なりの事実 自然のすばらしさを実感する心 やきまり,法則,楽しさや感動 科学的な見方や考え方 生 活 科 活動を通して見つけたこと,感じたこと,考えたこと 「思い」を広げるきっかけ 「見つける」「感じる」「考える」値からの補強 音 楽 科 音楽に対する自分のもつ感覚的な感じ方や捉え方・ 考え方 る基礎力 みる・感じる力・考える・工夫する力・かく 図画工作・美術科 表現媒材や題材についての良さ お互いのアイディアを広げる視点 ・つくる力 作品を向上させるためのキーワード (技術)家庭科 実習における正確な作業のポイントや児童生徒の気 付き (保健)体育科 どうすればできるのか,どこに注目すればよいのか という動き,技能・技術のポイント. 英語活動・英語科 英語を使った言語活動そのもの. 積極的にコミュニケーションを図ろうとする 態度・習熟度の差を埋め合わせすること. (相談,教え合い,相互評価). 各教科における具体的な成果は後述の各教科論の中で述べ るが,総括的なこれらの成果としては,児童生徒が,自ら の思いや気付き,学習事項のキーワードを言葉で伝え合う ことによって,多様な考えに触れたり気付いたりし,自分. □あてはまらない ■ややあてはまる ■よくあてはまる. の考えに自信や確信をもったり,自分の学び方を決めたり,. 科学的な理解を深め,技能を高めることにつながったとい える。つまり,「言葉で伝え合う」ことは,確かな学力を高. めるうえで有効であったということである。. 1年男子. 課題としては,より「言葉で伝え合う場」が有効に作用. 2年男子. 3年男子 全国2年男子. 図20 附中男子「心の健康に関する調査」結果. するように,協同的な学びの質を高めていくことが必要で あると考える。 なお,中学校における「心の健康に関する調査」の『自 分の意見を言うのは怖いと思う』という項目で,附中生男 女ともに3年生では「あてはまらない」と答えている生徒 の割合が高い。この結果は,各教科における学習の中で「青. 葉で伝え合う場」を数多く設定して継続的に取り組んでい る成果であると考える。. 図21附中女子「心の健康に関する調査」結果. ー86−.

(10) 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告 Ⅲ 各教科における共同研究内容. ったものを感得することにより高まるものである。また, それは国語科の学習過程においても学習意欲・関心となっ. 【国語科】. てフィードバックされるはずである。. 1 はじめに. 以上のことから,附属釧路小中学校では研究主題として. 国語科は,日本人にとっての母国語である「日本語」を. 「言葉への関心を高め,論理的に考えることのできる児童. 扱う教科である。その重要性はいまさら言及する享でもな. 生徒の育成」を設定した。左下は,本研究における学力構. いが,近年特にその重要性が声高に叫ばれている。. 造図である。. 平成15年度に実施された「小中学校教育課程実施状況. 2 研究の経過. 調査」の中で,国語科の課題として「場面に応じて立場を. 研究1年次となる平成17年度は,コミュニケーション. 明らかにし自分の考えを書くこと」,「筆者の表現の方法や. 手段の中核となる「話すこと・聞くこと」の領域において,. 工夫を評価すること」,「条件や目的に応じ,自分の考えを. 小学校・中学校互いの授業を見合うことから研究を開始し. 相手に伝えること」の3点があげられている。これらは領. た。次いで児童生徒の発達特性に応じて単元における指導. 域の違いはあれ,いずれも「自分の考えを適切に表現する. 事項を重点化し,実践を行った。. 力」の定着に課題があることを示しており,近年の国語教. 2年次となる昨年度は,「読むこと」領域,特に「論理. 育の課題そのものと言えるであろう。. 的思考力」の基盤となる説明的文章において研究を行った。 説明的文章の学習においては,発達特性に応じて指導事項 を重点化した上で,その定着を図ることがそのまま「段階 的な論理性の獲得」につながる。また,獲得した論理性を. 仁 ÷ こ 十. 用いる場を授業の中に意図的に設定することが,「論理的 思考力」を高めることにつながると考えた。. 訝廿1㍉㌧√空樟. 2年次の研究における成果として,「論理的思考力」を ㌧訝廿■聞く酎. 冨、二F六. 育成することの重要性が小中共通に認識され,説明的文章. ご ̄ ̄. \. 言葉への関心・論理的思. 教材における指導事項の精査がなされた。しかし,授業効 考 __._亨. 」. 果を測定する検証の方法に課題が残った。 ノ. 3 手立て 本研究では,「言葉への関JL、」および「論理的思考力」. を高めるために,以下の手立てを用いて実践にあたった。 言葉への関心を高めるための手立て. 論理的思考力を高めるための手立て. 小学校 (l)言語活動例の効果的な活用 小学校(4) (2)単元構成のT夫. L監への同心. を高める手だて. 中学校(3). (3)ワークシートの」二大. 給坪的に言奏で伝え合う場・方法の工夫. 中学校 (1)身につけるペき技能の明確化. 「自分の考えを適切に表現する」ためには,まず「考え. (2)生徒が必婁感・有用感を. るべき課題を正確に掴むこと」,次いで「課題に対する自. 持って取り組める学習活動 の工夫. 分の考えを持つこと」,さらに「課題に対する自分の考え を順序立てて他者にわかるように説明すること」が求めら れる。. なお,今年度は研究の領域を「書くこと」とした。. 私たちは,それらを結ぶ力としての「論理的思考力」に. 国語科における「言葉で伝え合う場」とは,言語活動,. 着目した。ここでいう「論理的思考力」は,「物事を筋道. いわば授業そのものであるが,本研究における「言葉で伝. 立てて考える力」と押さえる。この「論理的思考力」は「自. え合う場」を「児童生徒同士の音声言語による交流活動」. 分の考えを適切に表現する力」だけでなく,「話す・聞く」. と押さえた。. 「書く」「読む」といったあらゆる言語能力と密接に関連. 次に,「書くこと」の領域における「言葉で伝え合う場」. しており,それらを支える力としても欠くことのできない. を次のように規定した。. ものであると考える。. (場1) 同一汲題における作成過程の交流の場. また,獲得した言語能力を日常生活に生かそうとしたり,. (内容) 白分の工夫を相手が理解できるようにする。. 相手の良さや改酋点を相手が理解できるようにする⊂. さらなる言語能力を獲得しようとする意欲や態度の原動力. (場2) 初稀完成後の交流 〈推敲)の場. となるのが「言葉への関心」であると考えた。「言葉への. (内容) 作品の良さや作品が更によくなるポイントを相手が納得するようにする. 関心」は,「言葉の面白さ,不思議さ,素晴らしさ」とい 一−8了l.

(11) 佐 藤. 毅 他. 4 研究仮説. 獲得すべき「書くこと」における技能を明確に示し,単元. 本年度の研究仮説を以下のように設定した。. として配置することができた点である。今後も「継続的に 指導すべき事項」と「段階的に指導すべき事項」を明確に. 仮説1 「書くこと」の領域において,児童生徒の発達特. し,教師が押さえるばかりではなく,発達段階によっては. 性に応じた手立てを講じれば,児童生徒の言葉へ. 児童生徒に提示することにより,さらなる技能の定着を図. の関心が高まるであろう。. ることが可能になると考える。 また,魅力的な題材の提示や,明確な目的意識・相手意. 仮説2 「書くこと」の領域において,児童生徒が作品の. 識を持たせることにより,児童生徒の情意面を大きく高め ることができた点も成果といえる。. 作成過程や初稿完成後に,「論理的に伝え合う場」. 検証には至らなかったが,「書くこと」の領域において. を適切に設定すれば,論理的思考力が高まり,さ らに高まった論理的思考力は作品の質に反映され. も「論理的に言葉で伝え合う場」が有効に作用する手応え. るであろう。. を感じている。 (2)課題. 5 検証の計画. まず,成果において述べた題材についてであるが,より 児童生徒にとって必要感・有用感のある題材を開発するこ. (1)言葉への関心. ①動因効果の測定. とであろう。「何を・何のために・誰に対して・どのよう. 関心・意欲・態度等情意面の効果を測定するために. に」書くのかを明確にするだけでなく,より「書きたい」 という意欲を高めるための題材を工夫していく必要がある. は,動因効果の測定を行うこととする。. ②自己評価. であろう。そのためには,日常生活における書く活動に直. 授業における児童生徒の取組状況を見取るには,自己. 結する題材や,できあがった作品の活用といった方途を探. 評価活動も有効な手段となる。. っていかなければならない。また,題材と獲得すべき技能. (2)論理的思考力の定着. との関連性を今後更に考えていく必要があると感じてい. ①目標効果の測定,t検定. る。. 言葉で伝え合う場・方法の工夫による授業効果を測. 次に,「書くこと」は,「言語事項」や「読むこと」と密. 定するためには,目標効果(EQ)指数を測定する。. 接に関連していることから,単元における他領域との結び. 具体的には,単元前後にプレテスト・ポストテスト. つきを考慮しなければならない。単元を考える上で,更に. を実施する。また,中学校においては,異なる「言. この有機的な関連を求めていく必要があるだろう。. 葉で伝え合う場・方法の工夫」を講じた集団の目標. 最後に,「論理的に言葉で伝え合う場」については,今. 効果についてt検定を行い,有意差の有無を検討す. 回残念ながら明確な効果の検証に至らなかった。どの段階. ることとする。. でどのように設定していくことが効果的であるのかを今後. ②作品・ノート・ワークシート. も十分考えていかねばならないと感じている。. 「書くこと」における作品は,プレ・ポストテスト では明確に判定できない場合も考えられる。また,. ノートやワークシートの記述からも,児童生徒がど. 【社会科】. のように思考し作品の完成に至ったかというプロセ. 1 はじめに. スを見取ることが可能となる。. 平成年12月に「生徒の学習達成度調査」(PISA2003) の結果が公表され,読解力の低下,学ぶ意欲や学習習慣の. (3)長期的な視点. (DcRT検査による検証. あり方に警鐘が鳴らされた。. 昨年度のCRT検査と今年度のCRT検査における. PISAの読解力では,テキストの内容,形式や表現,信. 関心・意欲・態度及び論理的思考にあたる観点の数. 頼性や客観性,引用や数値の正確性,論理的な思考の確か. 値の差を検証する。. さなどを理解・評価したり,自分の知識や経験と結びつけ. ②スクールサーベイ. て建設的に批判したりするような読み(クリティカル・リ. 本校において毎年行われているスクールサーベイの. ーディング)を求めている。本来,そうした力は,国語科. 結呆から関心・意欲・態度の高まりを測定し,検証. のみだけではなく,本教科が育成すべき資料活用能力,社. する。. 会的思考力や判断力,表現力などと重なる部分が大きいと. 6 成果と課題. いえる。 今年度は,自分の意見を表現する場を意図的に設定し,. (1)成果. 小中学校の連携も3年目を迎えた。今年度の実践におけ. 概念を覆すような手法を用いることで,より児童生徒の思. る成果としてはまず,児童生徒が義務教育9年間を通して. 考の変容や判断力・表現力が,高められることを明らかに −88−.

(12) 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告 する研究である。. の過程を「学びの道筋」と表した。(表1)これは,発達. 2 研究経過. 段階を踏まえながらも,′ト学校中学年から高学年,さらに. 一昨年度は,小申達携の研究の初年度にあたり,連携の. は中学校への発達の過程とともに目指す児童生徒像を具体. 糸口として「学び方」の系統的な指導のあり方や方法につ. 的に表したものである。このように,本教科では4観点を. いて共通理解を図り,双方の授業を公開し合うなどの授業. 基にして,小中7カ年の目指す姿を明らかし授業実践を進. 実践を重ねた。. めた。. 昨年度は,教科で目指す学力の観点を4つに絞り,習得 (表1) 学びの道筋 力 段 階. 調べる力. 見つめる力. 知 識. 考える力. 小 身近な地域の事象について、 探検・見学調査やインタビュー 主に一つの事象から一つ 主に一つの事実罷職から 中 何?なぜ?知りたいと思い、 など、直接体験をもとに調べ の事実認識ができる。 自己判断して、社会的事 学 象に対する意見を持つこ 年 とができる。. 目. 指 す 高 事象などに対して、意味や価値 インターネットなどの間接的 の事実認識ができる。 姿 学 をまとめて伝えることができ 年. 自己判断して、社会的事 象に対する意見を持つこ とができる。. る。. 中 あらゆる事象に対して、意味 何を調べるのか見通しを持っ 複数の事象から一つの事 複数の事実認識を結びつ 学 や価値を考えようとすることが て、自ら調べる方法を選択し、 実認識ができる。 け、多面的・多角的に考 様々な表現方法で調べたこと 生 できる。 察し、意見を持つことが を伝えることができる。 できる。 観 占 ハ\ヽ. 社会的事象への 関心・意欲・態度. 観察・資料活用の 技能・表現. 社会的事象についての 社会的な 知識・理解. 思考・判断. 具体的には. 3 手立て. 本研究では,「社会的事象を鋭く見つめ,調べ・考える. ア 自分の考えを,根拠に基づいて簡潔に発表したり記. ことができる児童生徒」の育成を目指している。その実現. 述する場面を意図的に位置づける。 イ ペア・トリオ・小グループなどの学習形態で,互い. のために,今年度は,特に以下に挙げる2点の手立てを講. の思いや考えを練り合わせる場面を設定する。. じ,研究を進めることとした。. ウ まとめやワークシートなどの学習物を蓄積し,児童. (1)手立て① 「学びの道筋」の焦点化,系統化. 生徒自身の振り返りを図る。. 今年度は,4観点の中で,特に「考える力」の伸長に 重点を置いた手立てを講ずる。. 4 研究仮説 そこで,今年度の研究仮説を以下のように設定した。. 小中各学年における「考える力」の目標や系統性に対応した、 教材や課題を精選し、課題追究や解決方法を工夫させることでそ. 単元において、「学びの道筋」を焦点化し、「言葉で伝え合う場」. の定着を図る。. を効果的に設定・活用した学習を展開すれば、社会的事象の意味 を考える能力や態度が育成されるであろう。. 具体的には. 5 検証計画. ア 概念葛藤や多様な価値判断が可能な教材,課題を選. 児童生徒の情意面や思考力・判断力の変容について,3. 定する。 イ 社会的事象を「比較して考える」または「相互の関. つの視点から検証を進めることとする。. 連を考える」ような場面を設定する。. (1)プレ・ポストテスト(事前・事後の学習意識調査)の. ウ 様々な文章や資料を読む機会や,テキストを理解・. 実施. 評価しながら読む場面を設定する。. ・社会的な事象に対する見方や考え方の態度・意識の 変容を分析。. (2)手立て② 「言葉で伝え合う場」の工夫. (2)ペア・トリオ・小グループにおける話し合い・討論. 児童生徒が、必要感や有用感を持って「調べ、考え、表現す. 活動での相互評価・事後評価. る」学習活動が展開できるために、言葉で伝えあう活動を取り. ・プロトコルによる客観的な分析。. 入れる。. ・デブリーフィング(振り返り)による価値判断にお ける記述の変容の分析。 −S9l.

(13) 佐 藤. 毅 他 教科の研究主題である. (3)ワークシートの工夫∼ポートフォリオの活用. ・児童生徒の変容を記述内容からの分析。. 『数理的に考察できる 児童生徒』では,「こ. ・児童生徒自らの,自己評価。. れまでの経験や既習内. 6 成果と課題. 今年度は,中学校の実践例を中心に「考える力」の育成. 容と照らして知識や技. に焦点化した実践を行った。特に,手立ての一つである「言. 能,数学的な見方や考. 葉で伝え合う場」の取り組みとして,「表現する」活動に. え方を駆使して現実の. も着目した。. 問題や数学の世界に関 係する問題を自ら解決. 具体的には,以下の活動の有用性が明確になった。. できる児童生徒」と規. ①自分の意見を表現する場を設定する。. 定している。算数・数. ②思考の変容の場を設定し、概念を覆すことで新しい考え方を表. 学科では,小申達携研究の機を得て,9年間の学習内容や. 現する必要性を促す。. 発達段階を考慮した授業改善を図り,数理的に考察する能. ③多様な考え方・意見交流の場の設定。. 力の育成を目指していく。 この実践を通して,生徒は,「直面する事態や状況に,. 2 研究の経過. どんな問題があるのか。」「なぜ,そのような問題が起きる. 4年研究の初年次は,児童生徒の実態調査の結果から算. のか。」「その原因に対してどのように対処したらよいの. 数・数学科の課題と,小中が連携して行う実践的研究の方. か。」「どの解決策を選ぶのが最もよいか。」「その方法を用. 向性を検討した。「共通して取り組めることを実践しよう」. いた場合のメリット・デメリットは何か。」「それに自分は. という方針で,1時間の授業の終末に自己評価を促す問題. どうかかわっていったらよいのか。」といった思考の道筋. (適用問題など)を設定する取組や,9年間の学習内容を精. を経て,よりよい解決策を自ら,または,協同で思考し決. 査した。しかし,両校における児童生徒の実態から,原理. 定していくことができた。. や諸概念への深い理解とともに,算数・数学の学習に対す. そして,小申達携を一層進めていき,学習内容の系統化. る意識などの態度的な側面における課題が浮き彫りになっ. をさらに図るとともに「調べ,考え・表現する」各発達段. た。. 階での具体的な姿を,乗り入れ授業やTT授業を通じて明. 2年次は,授業実践を通して「数学的コミュニケーショ. 確にしていきたい。. ン活動」が「数理的に考察する能力や態度」を獲得するた めに不可欠であるという知見を得た。同時に,数学的コミ. 今後一層の研鎮を重ねていく所存です。拙い実践研究で はありますが,ご指摘・ご助言をいただければ幸いです. ュニケーション活動のとらえの甘さが実践を通して明らか になったことも事実である。また,児童生徒の変容を見取 る検証方法や合同授業の実践などが課題となった。. 【算数・数学科】. 3 研究の視点. 1 はじめに. 今日,算数・. 現実の世界の事象を数学の目を通して捉え,数学の手法 によって解決し,求められた解を現実に照らして吟味する。. 数学科では「自. このような経験を数多く授業の中に取り入れることが,算. 分の考えをも. 数・数学教育の意義の1つと考えられる。また,「確かな. ち,それを自分. 学力」の育成は,次期学習指導要領の中心として重視され. の言葉で表現す. るであろう。そのため,技能や知識に偏ることなく,学ぶ. ることができる. 意欲や思考力・判断力の育成がこれからも一層求められる. ような力」,「自. ことはまちがいない。. 分の考えや思い を的確に表現で. 右図は,算数・数学科が目指す理想の授業をモデル化し たものである。私たちは数学における様々な知識や技能,. きる力」の育. 数学的な態度を学習の所産と捉え,それらをより高次なも. 成が求められ. のにするための原動力として「学ぶ意欲」や「思考・判断. ている。さら. ・表現」を位置付けた。そして,それぞれの要素をバラン. に,本校児童. スよく育成することが必要である。しかし,今年4月に行. 生徒の『算数. ったNRTや学習意識調査の結果から,他観点と比べて思. ・数学に関す. 考の到達率に低い傾向が見られた。そのため,今後も思考. る学習意識調 査』において,. 力の育成に重点を置いて研究を進めなければならない。. 右のグラフの −90一.

(14) 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告 ように「学年が上がるのに伴って,自分の考えや思いを発. 4 コミュニケーションを活発にするための手立て. 言する意識が低下する」という傾向が見られた。. (1)設定する問題の工夫■・・さまざまな解決方法を有するこ. そこで,算数・数学科では「言葉で伝え合う場」=「数. とや適度な難易度(解決方法が発達段階に応じて無理な. 学的コミュニケーション活動」を積極的に授業に取り入れ. く引き出せる)であることがコミュニケーションを成立. ることとした。しかし,算数・数学の授業でのコミュニケ. させる条件と考える。自力解決と考えを他者に伝える時. ーション活動では,わかった者がわからない者へ一方的に. 間を十分に保障したい。. 解決方法を伝達する場面が多く見られるが,これは私たち. (2)段階的な問題提示の工夫‥・条件不足や過多といった不. が期待するコミュニケーション活動ではない。子どもたち. 備の状態のままでの提示,段階を追って問題を設定する. 全員が問題を把握し,解決方法を有してこそ,コミュニケ. などの工夫が考えられる。例えば,本時の学習内容にか. ーション活動が成立すると考える。そのため,設定する問. かわる話題から授業を展開することで,導入場面での活. 題の内容や提示の工夫をしなければならない。. 発なコミュニケーション活動が期待できる。しかし,全. また,小中連携の視点に立ち,小学校教諭は中学校の特. 員が問題について理解し,解決方法を有しなければ,活. 性,中学校教諭は小学校の特性を踏まえて授業づくりを行. 発なコミュニケーション活動が期待できない。そのため. う。そして,昨年の研究で明らかになった『コミュニケー. に,理解を確実にし,解決方法を広げるための誘導体(オ. ションにおける望ましい態度」](下表)を基に,今年度は小. ーガナイザー)を配置する。. 5 研究仮説. 中の合同授業やTT授業の実践を積んでさらに共通理解を 図っていきたい。. (1)段階的な問題を提示し、. 決を図る音舌動を展開すれば、. 数学的コミュニケーション活動が活発になるであろう。. また,児童生徒の数理的に考察する能力を高めるには,. (2)活発化した数学的コミュニケーション活動を継続して行え. 自分自身でじっくりと多様な視点から考える活動が必要で. ば、児童生徒の数理的に考察する力が高まるであろう。. ある。多様な考えは他者から学ぶ側面もあり,他者の視点 を得ることによって,自らの視点が高まることで数理的に. 6 検証計画. 考察する能力が高まると考える。 以上より,今年度は数学的コミュニケーション活動を活. (1)数学的コミュニケーション活動が活発になった状態を. 発にさせる視点に重点をおいて研究を進め,実践を継続し. 見,取るには. 検証を行いたい。. ①コミュニケーションにかかわる意識調査‥・単元指導 前と指導後の比較から,意識の高まりを見取る。. ◆算数・数学の「伝え合う場」=「数学的コミュニケーション活動」とは. ②逐語録‥・抽出班の交流記録から,活発なコミュニケ. 問題解決において、算数・数学のさまざまな表現(文章、式. ーションが成立したかどうかを見取る。. ・表・グラフ、図形、モデル等)を用いて、自分の疑問や考えを. ③その他‥・ワークシートやノート,発表に使った資料,. 比較し討議したりする表現活動. 自己評価などからもコミュニケーションが成立した かどうかを見取る。. ◆各学校段階における望ましい児童生徒の態度 ′J、学 校. 中 学 校. (2)数理的に考察する力の高まりを見取るには. 高 等 学 校. ①逐語録‥・抽出児童生徒の発する言葉から,どのようJ. ◆自分の考えをわ ◆根拠を明らかに ◆自分の考えを段 話 かりやすく発表 して、自分の考 取りよく整理し す する。 えを発表する。 よりわかりやす く説明する。. な思考を展開したのかを見取る。 ②ワークシートやノートの記述・‥全児童生徒が自力解 決の場面でどのような思考を展開したのかを見取. ◆自分の考えと同 ◆自分の考えと比 ◆自他の考えを統 聞 じ点、違う点を 較して優れた点 合してよりよい く 意識して他の発 や不備な点を考 解決方法を考え 表を聞く。 えながら聞く。 ながら聞く。. る。(自力解決用と他者の考えを記述するスペース を設ける必要がある). ③プレテスト,ポストテスト・・単元指導前と指導後で,. 思考を観点とした同質異聞題の正答比較から高まり を見取る。. ◆活発な数学的コミュニケーション活動とは コミュニケーション活動を通して、児童生徒に次のよう な効果が表れる活動と考えている。 ・自分の考えが相手に正確に伝わり、その上でお互いの共 通点や相違点を知り、不足の部分を補ったり、互いの考 えを関連づけて広げたりする。〔思考の深化〕 ・算数・数学のよさを体得し、学ぶ意欲が高まる。 〔意欲の向上〕 ・互いに認め合うなどの協同の意識や態度が育成される。 〔学習意識の向上〕. 7 成果と課題. 小申達携研究が始まり,3年が経過する。昨年度の実践 を終え,今年度は「算数・数学の授業でコミュニケーショ ンを活発にさせたい。」という目標を達成することに重点 を置いた1年であった。この1年の取組の成果と課題につ いて記述する。 ・合同授業の実践を経るごとに,授業観や子どもの認識に. ついて共通理解が深まったことは成果である。また,検 91.

(15) 佐 藤 証は行っていないが,共通な取組としてコミュニケーショ ンを効率的に機能させるための「話し合いのルール」を授 業で実践し,変容が見え始めた。 ・子どもたちの思考を広げる手立てとして,誤答を生かす. 荷導について検証を進めていきたい。 ・授業中の思考の広がりを見取る実践は行っているが,数. 理的に考察する能力の高まりの検証は,長いスパンでの 1分野. 御指摘をいただければ幸いに思います。. 主に均書 や硯t右. 肘瞳に追. 究し、そこ. に秘めら れたきまり. 【理科】. 自黙に対する随心を高め」∃助. 意識をもって鶴乳実験などを 行い,科学的に調べる能力と蔵. 轍⋮⋮⋮M. 中学校理封. 拙い実践ではありますが,諸先生の忌悼のない御指導,. 主や対究筒Ⅶ 胡M学的ぢ見. 取組が必要である。今後も実践を深めたい。. 屋を育てるとともに自然の事 物・規急についての理解を深. め.科学的な見方や考え方軍手 う。 多面的にとうえる dl孝棟蓼科白檀 自然に董目し蜃I.. 1 はじめに. 月通し呑もコて 組努.実臆なと. を行い周蚤解 条件を乳潤して漬ペる 決の能力と白魚 享受する心鰯を 育てるとともに 自然の書物・現 象についての頭 係づけなガら説明づける 脾をt到り,科学 的な見方や考え 同じ視点で比べる 方李轟う}. 小学載理科. 理科教育においては,自然と豊かにかかわり,自然と人 間とのよりよい関係を求めていこうとする力の育成が望ま れている。つまり,私たち人間がこの地球のあらゆる生命 と共に生きていくために,自然や環境とのかかわりを考え,. これらを意識して生活しようとする力の育成である。これ は,学んだことが実生活にかえり,自分の生き方に生かそ. 図1 理科教育構造匿l. うとする能力と態度の育成を根幹に据えた理科教育の推進 を意図していると解釈できる。児童生徒が自然の事象と豊. の一部であることを実感しつつ,自らの命を保持しながら,. かにかかわり,ここに潜むきまりや法則,関係を仲間とと. 自らの生活に生かしていくためである。そこで,科学的な. もに関わり合って見出し,お互いの見方や考え方を受け入. 素養(科学的リテラシーと同義語)を,科学的な問題解決の. れながら一般化して実生活に当てはめて見つめる。ここで,. 能力と科学的な態度に大別し,それぞれの力を培っていく. 自然のすばらしさを実感するのである。. ために適した素材分析と教材化,これを用いた実践を積み 重ねてきた。 1・−− ∵せ エ. 義務教育理科では,事象から得られる不思議さ,驚き, 感動などの情意的側面に支えられた科学的な思考,見通し. 科学的な素養を育むこ. のある追究方法とその技能,そして,導かれるきまりや法. とに重点を置く学習は,. 則,関係などの獲得状況を総合的にとらえた力(科学的な. 児童生徒の思考の流れに. 見方や考え方)の習得を目指している。この力は,高等教. 沿った学習活動の構想と. 育における「科学的な自然観」の基盤となる力として押さ. 展開を意味する。すなわ. えられる。. ち,児童生徒の見方や考. 私たちは,児童生徒が理科学習を通して,自然の事物・. ゴ. え方にずれが生じ,自らの内面にある解決意欲が高揚され,. 現象と豊かにかかわり,自然や仲間と共に学ぶ中で科学的. 問題解決をしていこうとする主体的な学習の構想と展開で. な見方や考え方を自ら構築できるようにし,「自然ってす. ある。. ばらしいね」というような,児童生徒の感性から生まれる. 私たちは,この主体的な学習によって児童生徒の自然認. 実感のこもった言葉を大切にした「生命観・自然観」を形. 識が深まっていく(自然認識のものさしを複数獲得してい. 成していく教育の充実,つまり「自然のすばらしさに感動. く)と考えた。白然認識の深まりは,児童生徒の発達特性. でき,自然と共生していく心を培う理科教育」を目指して. と,直接体験を軸足とし,時間と空間,純感覚的なものさ. いるのである。. しを獲得していくこと,つまり,ものの見方や考え方が主. これらを踏まえ,私たちは研究主題を「自然のすばらし. 観から客観へと移り変わ っていくこととして捉. さに感動でき,生活を科学的に見つめる児童生徒の育成」. と設定した。. え,実践を重ねてきた。. 2 研究の経過. その視点として私たち. な素養の習得を目指した学習指導として実践してきた。多. は,以下の 3つのの立 場で授業構築・実践・評. くの仕組みやきまりが存在する自然界において,人も自然. 価を行ってきている。. これまで私たちは,義務教育理科学習の重点を,科学的. lミ1〕l.

(16) 2007年度北海道教育大学附属釧路小・中学校・大学共同研究報告 科学的な見方や考え方を. (D4観点のバランスのよい獲得が,自然のすばらしさに 感動できる素養となること ②この獲得は,自然を見つめていくときのものさし(基. 育むためには,特に,観察 ・実験後の指導について,. 準)の獲得であること. 結果を文章や表として整理. ③この獲得行為は,科学的な自然観の確立へつながる初 歩的な科学的な態度であること. したり,他の人と検討した りするなどして考察を深め. このような立場に立ち昨年度まで授業実践してきた成果. る場の設定を工夫することが大切である。 このことは,児童生徒一人一人が,自然事象から自分な. として,次の2点をあげることができた。. りの結呆を導き出し,整理し,まとめるという活動に,他. (1)自然に潜むきまりや法則・関係に感動できる場を大 切にすること (2)自然の事象を自ら獲得した科学言語を用いて説明づ けていくこと. の人と伝え合うことによる,科学的(客観性,再現性,実 証性)なものの見方や考え方が育まれる活動が加わる大切 な場となるからである。 私たちは,身近な自然事象との出会いを導入に位置づけ,. 児童生徒の科学的な見方や考え方を培っていくために. 実社会,実生活との関連づけを図るが,この場の工夫とし. は,義務教育理科は6年生で終了するのではないという. ても,児童生徒が観察・実験の結果の考察において,実社. 認識,中学校理科は中学校1年生からはじまるものでは. 会,実生活との関連を強く意識付けられるようにすること. ないことを,小学校と中学校が共通の認識に立つ必要があ. が大切であると考えている。. る。そこで,義務教育理科は,. 4 研究仮説 知的好奇心が喚起される事象との出会いにより問題解 決意欲が高まった児童生徒は,言葉を使った自発的な かかわりを通して,自然のすばらしさを実感し,生活 を科学的に見つめるであろう。. 小学校3年生からはじまり,中学校3年生までの7年 間であること 義務教育理科の目標は,科学的な見方や考え方を育て ること を大前提とし,小学校教師は児童がこの先で学ぶ中学校理. 5 検証計画. 科の学習内容を見通し,中学校教師はこれまで生徒が学ん. 理科部会では,考察を深める場の工夫として,「言葉を. できた小学校理科を踏まえるといった,お互いの校種にお. 使った自発的なかかわり」の有効性を,「自然のすばらし. ける理科学習の展開について,積極的に理解し合いながら. さを実感する」,「生活を科学的に見つめる」の2点に沿. 授業実践を進めてきた。. って検証する。前者では情意面を,後者では能力面(見方. 3 手立て. や考え方)の習得状況として検証する。. O「自然のすばらしさを実感する」∼学習進行中もしく. (1)児童生徒が自然へはたらきかける場の設定∼知的好奇. 心を喚起する課題・教材の工夫. は最終段階,学習終了後に具体的に見られる児童生徒. 理科学習において自然との豊かな関わりは不可欠であ. の姿で検証する。. る。この豊かな関わりとは,児童生徒の直接体験活動であ. ・Q・分類簡便法(関心・意欲・態度). って,繰り返し事象と関わり,体験に裏付けられる事実を. ・事実やきまり,法則,美しさや感動などを言葉で相. 数多く認識する過程を意味する。この事実の積み重ねによ. 手に伝えている具体な姿をもって. り,児童生徒の見方や考え方がつくりあげられていく。こ. O「生活を科学的に見つめる」∼学習したことをもとに. の見方や考え方は,体験に裏付けられているので,実感を. 活用していったり,実生活において学んだことを見出し. 伴った自然認識となっていると考える。. たりする見方や考え方の広がりを意味する。つまり,「活. 私たちは,児童生徒の内面から追究意欲を生み出すこと. 用する・解釈する力」として捉える。この力の構成を科. によって,問題解決への意欲はさらに高揚されることを,. 学的な思考力,技能・表現力,知識・理解として捉えこ. 外見に表れる動きや行動,言葉,記録,ふりかえりなどに. れらの力の高まり(変容)を検定し客観的な測定とする。. よって確認してきた。中でも,児童生徒の知的好奇心をゆ. ・(自作)テストの点数による検定結果の分析(科学的. さぶる課題の設定や,教材との出会いは義務教育理科にお. な思考,技能・表現,知識・理解). ける学習展開において重要であった。この成果を踏まえ,. ・児童生徒の記録(ノート,ふりかえり,ワークシート. 児童生徒の発達特性を考慮した実態に合った知的好奇心を. など). 喚起する課題の選定や,素材分析を十分に吟味した教材開. 5 小学校の成果と課題. 発を行う。. (1)自然のすばらしさを実感することのできる教材開発 ∼実生活とのつながりを意識できる. (2)考察を深める場の設定∼科学的な見方や考え方を育む. 総合的な学習で「自分でもチャレンジしてみたい」とい. 工夫 193.

(17) 佐 藤. 毅 他. う課題が生まれてき. 6 中学校における成果と課題. たことは,「学んだ. 【成果】. ことを生かしてチャ. ・与えられた課題だけではなく生徒自らが課題を見いだせ. レンジする」姿であ. るような自然事象との出会いや指導者側の授業展開の工夫. り,生活を科学的に. は,生徒の意欲・関心を高めることが認められた。さらに,. 見つめようとする態. これまで行ってきた手立てである思考を揺さぶる課題,そ. 度の表れの一つであ. して生徒の感心・意欲を高める教材の開発・提示は,学力. ると捉えることがで. 層にかかわらず,学習意欲を喚起することを認めることが. 焼きあがった様子を見て歓声をあける児章 きる。このような態. できた。. 度は,自然に潜むきまりや法則の存在に対して,この後も. ・言葉で伝え合う場の設定は相互に思考を深め,広げあう. すばらしさを実感していく素地として捉えることができ. だけでなく,学習の成就感や達成感を与えられるという点. る。. に関しても効果があることが認.められた。. 児童が学んだことをもとに生活でみられる事象を解釈し. ・上記2点の手立ては,情意面だけでなく,知識・理解の. たり,活用していこうとする意欲を高めていくためには,. 習得,思考力の向上にも効果があることが認められた。. 提示される教材で具体的な事象を感じ,考え,実感できる. 【課題】. ものが有効である。学習した事柄が見抜きやすく,飛躍し. 言葉で伝えあう場の設定ほ,その効果が認められた反面,. すぎない教材である。併せて,事例として捉えやすさとい. 依然として発表等の活動に負担に感じる生徒が少なくな. う視点も大切である。素材選定から教材化を図る時には,. い。とりわけ,L層の生徒にその傾向が顕著に見られた(表. 複数の目で必ず予備実験を行い,どのような見方や考え方. 1)。本研究において得られたデータは1学年のものであ. が生まれるのかを吟味することも大切である。. り,今後の手立ての工夫にかかってくる。さらに表現力の. このような観点から考えると,今回活用したソーラーク. 向上,基本的な知識の習得のための指導,手立てをよりい. ッカーの教材性は高いものだと評価できる。しかし,現象. っそう綿密に図る必要がある。また,今年度の研究におい. だけを見せてしまうと,それだけで終わってしまう可能性. て1つのテーマになっていた「言葉で伝え合う場」が生徒. がある。確かにものを焼くことができたという記憶は残る. の中から欲求としてうまれるような学習展開や授業形態の. であろうが,それが何の力によるところなのか,どのよう. 工夫は今後も研究の余地を残す。今回とりあげた実践にお. なきまりや仕組みでそうなるのかが説明付けられないまま. いても,コミュニケーション活動を求めている生徒とそう. で収束してしまう恐れも含んでいる。. でない生徒の間に如実に活動量に差を生じてしまった場面 があった。また,授業形態次第では,生徒の活動量のみな. (2)図や絵,言葉で伝え合うことは,問題解決の能力を育. らず情報の質的・量的な差をつくる可能性があることが示. てること. 唆された。これまで本校ではジグソー形態やペア学習など,. 個々の見方や考え方を類型化する行為は,すなわち「比. 積極的にコミュニケーション活動を取り入れ,実践を重ね. 較」である。自分の考えを相手に伝えたり,相手から伝え. てきた。指導者側があらかじめ必要な情報を用意し,活動. られることを自分の見方や考え方に取り入れて再構成して. を指示してきたこれらの授業形態は,我々が目指す生徒か. いくための思考である。このような行為を障壁なく進めて. らコミュニケーション活動が欲求として生まれるものを否. いく力は,小学校3年生で重点化されている科学的な問. 定するものではない。しかし,より自然に欲求がうまれる. 題解決の能力「くらべる」に該当する。同時にこの活動は,. 授業展開を試みた今回の実践の結果から,やはりある程度,. 多くの見方や考え方に触れ,違いに気づいたり,共通性を. 交流活動における基本的なルールの設定や全員がコミュニ. 見出そうとする初歩的な科学的態度でもある。このような. ケーション活動に参加できる課題設定等が必要であること. 能力と態度を育てていくためには,多くの表現方法に触れ. が確認された。. ながら仲間分けしていく換作を,仲間と共に行っていくこ とのできる場の設定が大切であることがわかった。この実. 【生活科】. 践をふりかえると手立てと場の設定は十分とは言えない。. 1 はじめに. 言葉を使って表現する行為,つまり,客観性を求められ. 生活科の目標(学習指導要領より). る理科学習では,事実やきまりなどを言葉で表現し,それ. 具体的な活動や休験を遺して.自分と身近な人々.社会及び自然. を共有することが求められる。一人よがりの表現ではなく,. とのかかわりに関心をもち,自分自身や自分の生活について考えさ. 客観的に認知される表現である。ここでは表現する行為だ. せるとともに.その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付. けでなく,表現されたものを受け入れる態度も大切である。. けさせ.自立への基礎を養う。. この客観性が,この後の学習で活用されていく科学言語の. 上に示したように「自立への基礎」を養うことが,生活. 存在に直結するものとして捉えることができる。 −94一.

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