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自閉児の認知特性 : 感覚入力調節不全の視点からの試論

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(1)Title. 自閉児の認知特性 : 感覚入力調節不全の視点からの試論. Author(s). 森, 範行. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 34(2): 99-112. Issue Date. 1984-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4938. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 目閉児の認知特性 -- 感覚入力調節不全の視点からの試論 --. 森. 目. 範. 次. は じめ に. 99. 目 閉 児の 覚 醒 水 準. 100. 冗 長 度 の 利 用 と 情 報削 減. 102 103. m 目 閉 児の 感覚 -運動 特 性 WV W. W. 行. 感覚 入力 調 節 機構. 106. 感覚入力調節機構としての眼球運動. 10 8. 要約 と 展望 引 用 文献. … …… … …… … … … …… …… …… …… …… …… … …109 … … … …… … …… …… ……… …… … … … …… … …110. 1。 は じめ に. 他者との情緒的な接触を持たずに生き続けている一 群の子ども達がいる. Kanne 1943 )がこ r ,( ,L. の種の子ども達の症例を最初に報告してから既に4 0年余りを経過しているが,いわゆる自閉症の概 念と本態は未だ明確 ではない。 山崎( 197 )は, 目閉概念の歴史的変遷を表にまとめている. それによると, アメリカの Kanner と 6. オ ー ス ト リ ア の As l i l 1944 ) rge rが 時 を 同 じく し て( e pe ea r yinfant , 前 者 は 早 期 幼 児 自 閉 症(. i i i i t t aut sm), 後者は目閉性精神病質( th )と各々 診断概念を公表した. しかしなが au s chePsychopa e. ら, 両者は共に 「目閉」 を中核としながらも, 前者の概念が児童精神病 のカテ ゴリーに属 し, 予後 不良 であったのに対し, 後者の「目閉」は単に性格の偏奇として把えられ, 予後も比較的良好 であっ たというように, 両者の概念の含むところは同じではなく, その後の疾病概念に混乱をもたらした. ようである。 初期の研究では自閉症の原因を母親の養育 態度やパーソナリティ に求めたり, 子どもが直面する ある種 の社会的ストレスに求める傾向が強か ったが, 近年, 自閉症に内在する認知障害が種々の自. 閉症状 を形成する基本障害であるとする 学説が有力になってきた.. ter こ の 見 解 は, Rut ng ,M. ,Wi ,L,な どの 研 究 者 を リ ー ダー と す る「ロ ン ドン 学 派」に 代 表 さ れ る。. Rut M ter l b 1967a ( )は1950年代にモーズレー病院に入院していた目閉児63名の追跡研究 , .eta . , を5年から15年にわたって行っ た. 結果は, 統制群に比べて対人関係と言語の障害が顕著 であるこ. と, 教育や雇用に関する社会的予後が悪いことを示した。 ter ta こ れ ら の 結 果 を ふ ま え て, Rut l ( 1971 )は自閉症の原因 に つ い て心因論を含め て検討 , M.e . ive/languaged i t した。 そ の 中 で, 彼 ら の 仮 定 す る 認 知・言 語 障 害(cogni )説 に 有 利 な 証 拠 と sorder 99.

(3) . 森. 範. 行. して, 目閉児の大部分に言語遅滞がみられること, 音に反応しないことが最初に 気づかれること, 発語を要しないテストでも 失敗しやすいことをあ げ, 発語しないのは単に 話す意欲が乏しいことを 意味するものでは なく, 言語機能が基本的に 損われていることに由来すると 結論している。 la lopmenta i aと類似していると しても, 身振りの使い方, 代名 s しか も 発 語 の 面 では deve pha ,. l l i 詞逆転やecho a aの有無によっ て両者は 区別可能であるとしている。 しかしながら, 認知。言語障害の原 因は不明 である。 知能の低い目閉児に高い割合で脳器質障 害 (そのタイ プは一様ではない)が疑われることが知られているが, 知能の高い目閉児ではその可能性. は少ないし, 成熟の障害によると思われる症例 もみられる。 M t l Rutter )は, まだ証明さ れていないと しながらも, 状況証拠から認知と言語の障 ( 1971 . , .e a 害は自閉症の1次的障害であり, コミニケーショ ンや 行動の異常は2次的にもたらされるものと考. えており, 著者もこの見解に 同意する。 しかしながら, 目閉児の全てが認知 o 言語の障害に由来するとは断言できず, 性格特性や 生育環 境などの交互作用も 無視 でき ない局面もあり得る。 著者は, 「自閉症」の中核として認知障害を基本障害とする一群を想定しながらも, 周辺群の自閉 的障害をも含めて 「目閉児」 と記述することにする。 自閉症の本態が不明な段階 では, 狭義の 「自 閉症」 よりは, むしろ状態像論的に 「目閉児」 と称する方が妥当と考えるからである。. 1 1 。 目閉児の覚醒水準 目閉児にお ける感受性や活動性の 障害は, 脳の覚醒水準に起因する可能性がある。 r型の自閉症は, 脳幹網 様体の活動が低下 Riml 198 0 )は, 周到な文献研究により, Kanne ( and ,B. しており, そのために 覚醒状態が通常より低く, これが自 閉症の基本障害(本態)であると主張した。 彼の推論の根拠は, 文献上, 目閉児には未熟児がまれでなく, 出生直後から保育器に入れられ, 酸 素の吸入を受けていること, この場 合, 過 酸素による網膜症に催患する 危険性が高いが, 同様の障 害が脳幹部にも起こり得ることに 基づいている。 彼の推論によると, 網様体は入ってきたメ ッセー ジを解読し, 意味を与えるもので, その結果, 関連した記憶を喚起する機能を持つ が, 網様体の活動水準が低いため(低覚醒) , この通路を通過す ることができない。 したがっ て, 残さ れた通路は視 床から直接皮質へ向う感覚伝導路であるが, 網 様体を経由しないこの伝導路では, メ ッセージを解読した形ではなく, そのまま 意味のないイン パ ルスとして皮質に伝導されるにすぎないと考 えた。 さらに, 目閉児の行動のレ パー トリーが狭いこ とは, 非常に狭い範囲のニ ュ ーロンだけが賦活されるために, ごく 限られた種 類の反応のみが起こ る こ と に な る と 説 明 し て い る。. l 1965 ta )は, 目 閉 児 の 示 す ひ き こ も り や 常 同 行 動 が, 動 ( l t ta ) t ( 1964 他 方, Hut . . ,SJ.e ,Hut ,C.e. 物実験にも示されるように, むしろ網様体の活動が高すぎること(高覚醒)に起因するという仮説を 提唱した。 目閉児が慢性的に 高い覚醒水準にあると主張する根拠として, 彼らが第1に あげているものは脳. 波所見である。 すなわち, 目閉児の脳 波は, 安静時において も同年令の普通児に比べて低電圧で速 i de )波形を示した。 また, 自由場面における行動観察を行いながら, zed い脱同期化した( synchron テレメ ーター方式により脳 波を測定したところ, 家具などが置いてない部屋にいる 場合の方が, よ - s ynchro り複雑 な環境にいる場 合よりも常同行 動が少なく, 脳 波により 電位の高 い同期化 した( 100.

(4) . 目閉児の認知特性 ni zed)波 形 がみ ら れた. 第2の証拠として, 目閉児の置かれている環境の複雑度と目閉 児の行動特性に関するものがあげ. られる. 複雑度は, イ 何も置いていな p い待合室 から, カラーの積み木が置いてある場合, 積み木の他 に子どもには顔 みしり でない成人が受動的にすわっ ている場合 成人が子どもに積み木で模様をつ , くるように積 極的にはたらきかけている場合 の4段階に高められ 各々の場における視線の固定 , , や物をいじっている時間を計測 したところ, 普通児は場の変化に応じて視線の固定も物を操作する 活動も増加 しているが, 目閉児は場の変化との 対応がほとんどみられず 一 貫して持続時間 が短か ,. 力1つ た. これらの結果をふまえて, 彼らは常同行動や 同一性への固執(行動上の引きこもり)は 新しい感 , 覚刺激を受け入れることにより覚醒水 準を一層高めてしまう ことがないよう に防止する工 夫であ. り, 破局的反応に陥らないように感覚入力を防ぐための安定メカニズムであると考えている また 。 , 目閉児にしばしば観察さ れる音や痛みに対する反応 の乏しさについて 彼らは慢性的な過剰覚醒に , より引き起こされる感覚伝導路の遮 断の結果であると推論 している 。 し か しな が ら, Herme l in ta l ( 196 8 )による刺激条件がコ ントロー ルされた脳波実験では , B.e . , 目閉児の覚醒水準が特に高いという結果は得られなかった 彼らは目閉 児 ダウン症児 普通 児の , 。 , 3群間で後頭部α波の出現量を比較した が, Hu t t夫妻の実験条件と 同じと考えられる暗室内にお ける脳波の振舞いには3群に差はみられなかった 。 DesLaur iers A M et a l t ( 196 9 )は, Hu t夫妻の覚醒の測度としての脳波所見には疑問を持ちな , . . . がらも, 常同行動と行動上の引きこもりが高い覚醒状態 を示す行動上の現象であるという見解に基 本的には同意している。 i しか しな が ら,DesLaur ers らは,目閉児の行動上の活動性の面から少なくとも2つの型を区別し. ていないことに疑問を呈し,多動性( hype i t hypoac )の目閉児と寡動性( rac i ve t )の目閉児を区別 し ve た上で, 両者を共に説明できるよう な理論を提 出した 。 彼 ら の 理 論 の 根 拠 に な っ て い る 神 経 生 理 学 的 モ デ ルは Rout tenberg 1968)の「2 つ の 覚 醒 系 , ,A.(. (網様体と辺縁系)」 である.. こ の モ デ ル に よ る と, 網 様 体 が担 う の は 「覚 醒 系 1」 であ る こ れ は Magoun H.W,(1963 )の「上 。 ,. 行性網様系」であり, 新皮質の賦活水準を高め, 皮質脳波を脱同期化させる 「覚醒系1 1」は, 辺縁 。 系によって担われ, 覚醒系1と同様, 新皮質の活動を高める ただし, 覚醒系1のような新皮質と 。. の間の正のフィ ー ドバック回路が存在しないためにその効果は比較的弱い 他方 基本的な植物神 , , 経機能を維持する上 では覚醒系1より決定的な影響力を持つ 覚醒系1と1 1は, 海馬を介して互い 。 に他の活動を抑制 し合うようにはたらく。 この相互抑制 の結果, 2つの系には ある種の動的な平 , 衡状態が維持されるというの である。 DesLauriers A. M et a l 1969)に よ る と, 目 閉 児の 種々 の 問 題 行動 は, こ の 2 つ の 覚 醒 系 の 生 . , .(. 来的な不均衡に由来する。 すなわち, 目閉児の場合は, ma ra smusの子どもとは逆に, 覚醒系1の 活動が覚醒系1 1の活動よりも 常に優位にあり, 覚醒系1 1は持続的に抑制されている. 覚醒系1 1の担. い 手 は 辺 縁 系 であ る か ら, こ の理 論 は, Kanner fec ive dis t , L,(1943)の 「情 緒 的 接 触 の 障 害(af. t )」 と直接関連し, 認知論的には学習や意味ある連合を確立する能力の極度の制限 およ u rbance s , びその 結果として生じる反復 的, 常同的行動をも説明し得る 。 しかし, 先に述べ たように目閉児には行動的に 多動性と寡動性の2つの型があることに注意 しな i け れ ば な ら な い。 DesLaur l ta 1969 ers )は, い ず れ の 型 も 覚 醒 系 1 が 覚 醒 系1 1を 抑 え る と .( ,A.M.e. いう力動関係を前提にしながらも, 各々の行動上の差異を次のように説明 する すなわち 図1に , 。 101.

(5) . 範. 行. 示すように, 寡動型の場合は, 覚醒系1 が優位にあるとはいえ, 両系共平 均よりも低い活動水準に 1に対し優位の状態に あるばかりでなく, 覚醒系1が覚 醒系1 ) ある(図1のa .他方,多動型の場合は, 両系の不均衡は一層大きく,典型的な場 合では覚醒系1の活動水準は過剰覚醒の状態にある(図1の. b )という. 1は低 水準に あ 目閉 児の2つの型 とも覚 醒系1 り, 情 動 活 動 の 乏 し さ と 経 験 の 蓄 積 の 乏 しさ を 説 明 し 得 る. 中 でも 覚 醒 系1 が過 剰 活 動 に あ る 型に. おいては, 外来刺激への 反応性の高さ と抑制の欠 如からその 型の注意の 被転導性と多動性を説明し. 自閉症児についての仮説的図式 (a) 寡動で, 鈍感な自閉症児 (b) 多動で過敏な自閉症児. 高ぃ覚醒 多動. 得 る.. 目閉児の基本障害が認知系の特異性に 由来する と仮定すると, 覚醒系の病 理に注目するこれらの 学 説は, あ る 程 度 妥 当 な も の と い え よ う し, 確 か. に 覚醒水準の 逸脱がありそう である. しかしなが ら, これらの 理論では外来刺 激と覚醒系に関する 対応関係 の説明が十分 で な い し, 実 験 的 検 証 に も 乏 し い こ と が 難 点 と い え よ う.. 覚醒系は 外来刺激への 感受性を高め たり, 低め. た り す る が, 逆 に, 外 来刺 激 の 方 が 覚 醒 水 準 を 高. 過敏. 正常な バランスと. 水準の領域. 低い覚醒 寡動. 鈍感. も ・\ (a). 一 (b). めたり 低め たり す る 局面 を 有する(Hebb , ,D.○.. )も 指 摘 す る よ 1972 ). した が っ て, Wing ,L.(1976. 1 1969 )より ta ( i e rs 図I DesLaur . ,A. M.e. うに, 目閉児における覚醒水準の慢性的逸脱は2 次的障害であり得るだろう. 著者は, 感覚入力の調節という 観点からこ の問題 を検討する.. m← 目閉 その感覚-運動特性 l 1 ))は, 目閉児と普通児を被験児として視覚刺 激(光)と聴覚刺激(白色雑 ta 1( Lovaa ( 1 97 a s . .e ,0. 音)の弁別訓練を行っ た後, どの 感覚モダリティ に反応するかをテス トし, 両群で比較した. テスト して, は, 視覚刺激のみ の提示, 聴覚刺 激のみの提示, 両刺激の同時提示の3種類であっ た. 結果と 普通児が2つの 手がかり刺 激に対して同 じように反応したのに対 して, 目閉児は大部分刺激要素の 1つだけに頻繁に反応した. b 1 l ))は, 視覚と聴覚刺激の他に触覚刺激を加 えて, 同様の実験 ( 1971( さ ら に, Lovaas .eta . ,0. を行っ た. 彼らは, 目閉児, 精神遅滞児, 普通児に3種の刺激要素からなる弁別刺 激を用いて訓練 した後, 各々の刺 激を単独もしくは 組み合せて提示し, 反応を比較した. その結果, 普通児が3つ の刺激要素に平等に 反応したのに対 し, 目閉児はそのうちの1つ にだけ反応する傾向がみられた. 精神遅滞児は, 両群の中間 的な結果 を示した. 先の2つ の実験は,いずれも感覚モ ダリティ の異なった2つ 以上の刺 激要素を複合させているが, l )は, 同 一 モ ダリ テ ィ (視 覚)内 での 2 つ の 刺 激 要 素 を 用 い て 実 験 を 行 っ た. tal Koege .(1973 ,R.L.e. 訓 目閉児と普通児に1枚のカ ー ドに手 がかりと なる2つの絵が描いてあるもの を2枚提示し, 弁別 102.

(6) . 目閉児の認知特性. 練を行った後, 手がかり刺激の組み合せを変えたカー ドを提示して両群の反応を比較した その結 。 果, 普通 児が2つの手がかり刺激の組み合せに関係なく平均的に反応したのに対し, 目閉児の反応 には組み合せの如何によっ てバラツキが顕著にみられた。. これらの実験結果は, 目閉児が複数の多岐的な刺激の弁別が可能で等価に反応し得るとしても, 反応様式は特定の刺激の局面に偏向しやすい内的傾向を示す。Lovaa sらは, 目閉児にみられる刺激 - 反 応 の 偏 り を刺 激 へ の「過 剰 選 択(overse l ivi t ty)」で 説 明 して い る し か しな が ら こ の 種 の 特 ec 。 ,. 定刺激への単なる固執 が反応に内在する「選択」なのか どうかには疑問が残る 著者は この種の自 , 。 動的も しくは受動的反応は, むしろ抑制 の欠如に 由来すると考えている 。. いずれにしても,この種の目閉 児が特定の感覚入力の直撃を受けていることは確かなよう であり , Koege l L taL( 197 )も指摘しているように, 過剰な感覚入力 が目閉児の覚醒水準の偏奇に影響 3 , .e ,R を与えていることを示唆す る. Hermel in B, et a L( 1964 )は, 目閉児と精神遅滞児に, 光, 音, 触刺激から2つずつ組み合せて , 3種類の対刺激をつくり,2刺激を同時に提示してどの感覚モダリティ に反応しやすいかを調べた 。 結果は, 両群共に視覚刺 激が含まれている場合には視覚刺激に優位に反応することを示すが, 音と 触刺激の同時提示の場合においては, 精神遅滞児が音に優位に反応したのに対し, 目閉児は触刺激 に優位に反応した。. Hermel in B. et a l ( 1 971 )は, , .. 目閉児, 盲児, 普通児に, 左右2本ずつの手の指を前後に 並べさ せ, 各々 の指と4つの語( 「走る」 )と対連合学習させた後, 左右の指の , 「すわる」 , 「歩く」 , 「立つ」 前後の位置を交代させて, その後の反応が空間的位置に基づくか, 指自身に基づくかを検討した 。 その結果, 目かく しをされた普通児は, 盲児と同様指に 基づいて反応した が, 目あきの目閉児と普 通児は, 空間的位置に基づいて反応 した。 l 他方,Schop ( 19 )の視覚刺激と触覚刺激のいずれを選択するかを調べ た実験において, 目 66 e r . ,E 閉児は普通 児に比べて視覚的に選 択することが著 しく少なかった 。. 目閉児の感覚特性として, 遠隔受容器の使用回避と近接受容器の優先使用が一般に認められてい るが, 実験結果は一義的 でない。 少なくとも, 感覚 モダリティ 間に接近と回避 の偏奇があることは 確かと思われるが, それが「優先選択( f )」に 基づくという見解には疑問が残る。 著者はむ r rence e e p しろ, 流入する 感覚量が感覚 モダリテ 間で異なることを示すのではないかと考えてい る。 ィ ,. l v。 冗長度の利用と情報削減 前章 では 比較的単純な感覚-運動水準に おける目閉児の反応特性を検討したが ここではより高 , 度な課題状況における目閉児の課題解決様式を検討す る. Hermel in B. et a l i th ( 1970)は, Fr )の 2 つ の 実 験 を紹 介 した. こ れ ら の 実 験 は, 視 覚 . , , U.(1969. 的手がかりの有無が, 目閉児の課題遂行の成績にどう影響するかを普通児との比較 の上で検討した も の で あ る.. 第1実験における課題は, 幅2 mm の溝を鉄筆でできるだけ早くた どること である(トラッキン グ課題) . 5種類の溝の長さは同じであるが, コースの方向変換によって複雑度が変えてある(1つ は練習用) . 手もとが見える場合と見えない場合の条件で行なわれ, トラッキン グに要 した時間が分 析された. 結果は, 両群の被験児共, 手もとを見た方 が, 見えない場合よりも所要時間 が短かったが 普通 , 103.

(7) . 森. 範 行. 児では特に短かっ た. 目閉児において視覚情報の利用 度が低かっ た. 第2の実験に おいて, 課題はジ グソーパズルに 類似してい た. すなわち, 分断した6枚のカー ド を規則的に連続するように 横に 並べかえることが求められた(ジ グソー パズル課題) . 課題は3種類 あり, 第1のものは, 各々のカー ドに線が描いてあり, それらの線が連続するように 並べさせる課 題である. 第2の課題のカー ドには 手がかりの線が描か れておらず, その代りカー ドの端が凸凹に 切られており, 手の運動により試行錯誤的に解決されるもの である. 第3のカー ドは, 線と凸凹の 両方の手がかりがある。 結果は, 第1実験の結果と類似している. すなわち, 両群共視覚的手がかり(線)がある方が誤り が少 ないが, フロスティ ッ グ視知覚発達検査の知覚年令(PA)の低い目閉児の場合は, 試行錯誤的に 遂行しており, 視覚的手がかりはかえって妨 害的にはたらいている. こ れ ら 2つの実験から,目閉児は視覚情報を有効に利用するこ とができず,試行錯誤的運動フィ ー ドバッ クに 限定されていることが示される. 目閉児は, 視覚情報 を抽出するのが困難であり, 課題 解決に附随する予測が立てられないものと考 えられる. l i He )は, フロスティッ グ視知覚発達検査の PA が同 じ目閉児, 精神遅滞児, 普通 ( 1976 n rme ,B.. l in t al 1970 )と 同 様, 3 種 類 の ジ グ ソ ー パ ズ ル 課 題 を 与 え た. 3 種 類 のカ ー ド 児に, Herme .( , B.e. はいずれも切り 口に凸凹があるが, 第1のものは高い冗長度を含む 線が描いてある. 第2のものに も線が描いてあるが, 冗長度はあまり高くなく, 第3のものには線が描かれていない. 結果は, 第1に, 視覚的手がかりのあるカー ド(線が描いて ある)において他の2群の 被験児はほ とんど誤りを示さなかったが, 目閉児では誤り が多かっ たこと, 第2に, 視覚的手がかりが与えら れているカ ー ドの連結では, 他の2群では視 覚的冗長度の高 い方の課題で誤りが小さくなるのに対 して, 目閉児の場合には, 視覚的冗長度の如何によ っ て差がなか った. 目閉児は視覚的冗長度を利 用 できず, もっ ぱら手の運動フィ ー ドバッ グによる課題解決に終始していた. b Fr i ) th )は, 赤と緑のおは じきを並べる課題で, 「交替」と「反復」の パター ンからさら ( 1970( ,U. に 規則性の程度を2つに分けて全部で4つ のパターンをつくり, 規則性の抽出過程を調べた. 結果 として, 普通児が規則性の高い方のパターンをより早く 学習したのに対 して, 目閉児の場合は規則 性に関係 なかっ た. 誤りの分析では, 普通児が規則の過 度な適用による誤り が多いのに対し, 目閉 児の誤りは規則とは無関係 であっ た. h Fr i a ) )は, 先と同様の パターンを聴覚的に与えた場合に おける規則の抽出過程を検討 t ( 19 70( ,U. した。 刺激は具体的な事物や動物であり, それが 「反復」 や 「交替」 の規則によ って提示され, 被 験児は規則にしたがって再生するように 求められた. その結果, 精神遅滞児や普通児は, 冗長度の 高いパター ンでは成績がよかっ たが, 目閉児の場合は, 冗長度とは 無関係 であった. 誤りの分析で は, 他の2群が優位な規則を誇張しすぎるのに対 し, 目閉児の場合は, 優位な規則が何 であっても 「反復」 を過度に用いる傾向があった. 目閉児は, 視覚的にも聴覚的にも規則の抽出が困難であり, 冗長度を利用することができないよ う である. N t l( O Connor )は, 目閉児, 聾児, 普通児に, 3つの数字を時間的順序と空間的順序 72 , .e a .19 が一致しないように視覚的に提 示し, 「中央」に提示された数字を答えさせ た. その結果, 3群の被 験児とも, 時間的順序を無視し, 空間的に 「中央」 の数字を選択した. しかしながら, これに記憶を負荷 して再生もしくは再認させると, 普通児が時間的順序で再生(も しくは再認)したのに対 し, 目閉児と聾児は空間的順序 で再 生(も しくは再認)する傾向が強かった l )。 1973 (0’Connor . , , N.eta 104.

(8) . 目閉児の認知特性. 記憶が介在すると, 記憶負荷を減らすために, 通常情報は言語化されて保持される 普通 児の課 。 題処理の方略はこの型であり, 結果として時間的順序 が優位になったものと思われる 。 しかるに, 聴覚障害のないはずの目閉児が, なぜ聾児と同様空間的処理に偏り 時間的処理が損 , われるのか。 その理由は, 第 動こ, 空間が直接知覚 できるのに対し, 時間は推論されねばならない からであり, 第2に, 推論を要する分だけ時間的課題の処理には冗長度への依存が高まるから であ ろう。 言語が本来時間的に 処理されるものであることを考えると 目閉児の言語障害はこの種の認 , 知特性に 由来すると考えることができる。 0’Connor N. et a l ( 1965 )は, 5つの異なった大きさの正方形を大きい方から順に小さい方へ 並 , ,. べる系列化の課題を, 目閉 児 精神遅滞児, 普通児にやらせたところ, 目閉児は他の2群の被験児 よりも有意に低い得 点を示したという。 しかるに, このような任意的系列 ではなく ローソクが燃 , えて 次第 に 短く なって いく よう な 必然的系列 では順 序正 しく 系列 化 できる という 報 告 も あ る l i l ta (He rme n 197 ) 0 . ,B.e , 。 そう であれば, 目閉児にとって自然法則は理解可能だが, 言語や対人 関係のような任意的, 人工的な規則の理解は困難ということになろう 。 さて, それでは目閉 児に系列のパターンを自発的につくらせたらどうなるであろうか 。 Fr i h t ( 1972 )は, 目閉児, 精神遅滞児, 普通 児に2つの系列を自由につくらせた 第1の系列 ,U. 。 は,2色もしくは4色の中から自由に色を選んでスタンプを押して16個の色彩系列をつくる課題で あ り, 第 2 の 系 列 は, シ ロ ホ ン を た た い て 2 音 も しく は 4音で1 6個の音形をつくる課題であっ た. 結果として, 目閉児は単純な規則 への固執が顕著であり また有用な要素を制限したり まれなパ , , ターンを避ける傾向がみられた . 注目すべきことは, 音形系列 で色彩系列よりも複雑な パターンを構成する傾向 がみられたこと で ある。 なぜならば, 目閉児の課題処理の様式は 空間的 であり 時間的処理は苦手と考えられるから , であ る(0’Connor l ) . , N.et a ,1973 。 このような発散的思考を要する課題において, 視覚的パター. ンの構成が単調になることは, 色彩効果によるかく 乱を推定す ることができる( Schach l t e . G。 ,E , 感覚入力 1 966 ) の直撃は 反応の多様性を制限すると 考えられるからである。 , 。 冗長度を利用 して次を予測したり, 規則性を発見したり, 新しいパターンを構成したりするため には, 課題に応じて余分 な感覚入力 を排除して, 情報を削減することが心要 である なぜならば, 。. 人間 の 情 報 処 理 能 力 に は 限 界 があ る か ら であ る Kahneman D.(1973 )は, 注意 の 容 量モ デ ルに よ っ , 。. て課題の性質と注意の配分方針について述べ, Mi l l ( 195 6 )は, 短期記憶 の容量に限界がある r e ,G.A. ことを示した。 容量限界説については, 発達する人間に 一定の限界を設定することは不適当だとす i るNe ( 1976 )の批判もあるが, 少なく とも特定の時点において 課題を効率的 に 処理する s s e r ,U. , ためには一定の限界を想定する方が適切であろう .. このような限りある容量を効率的に配分するための第1の方法は, 情報に含まれている冗長度を 利用すること である。 我々は人の話を聞いたり本を読むときに ひとつひとつの発音や文字に細か , な注意を払う必要はない。 むしろ全体の文脈の中に含まれる冗長度を利用 して 先を予測しながら ,. 次 の 語 を待 ち 受 け て い る と い う こ と が でき る(Ne i )。 sser , Uり1967 2 短 第 の節約 法は, 期 記 憶 に お け る 容 量 の 限 界 を 補 う た め の chunking で あ る Mi l l er , G.A. 。. ( 19 56 )によると, 人間の短期記憶 の容量は5~9 chunk だと いう。 した が っ て, こ の 限 界 内 で 全 体 の記憶量を増や すためには,情報に内在す る構造を把握し 特定の規則の利用や概念化によ っ てより , 大きな記憶単位へと chunk i ng する必要がある。 この方法は, 一般に 記憶術として, 日常応用されて い る も の であ る。. 目閉児の認知障害は, 一連の情報に含まれる規則性や冗長度を抽出して情報を構造化 できないこ 105.

(9) . 森. 範. 行. とに基づくものと考えられる. 目閉児の中にはす ぐれた短期 記憶を持つ者がいるが, このことは, chunking を利用 でき ないために,短期記憶が拡大した容量に耐え得るよう特 殊化していることを示 唆する. 特定の課題を遂行していくためには, 流入する雑多な情報群の中から当該情報のみをとり入れ, 他は排除 しなければならない, 課題処理が進行して冗長度が高まるにつ れて, 必要な情報量は減少 し続ける感覚入力は次第に進行中の 課題処理を妨害するようにな ) する(北島, 1978 . ひき 続き流入 ) るので, 余分な感覚 入力は抑制されねばならない(森, 1980 . 規則性を抽出したり 一連 報群の中から の情 目閉児は, 流入する , その 冗長度を利用することが障 害さ れている. このことは, 恐らく情報削 減の失敗に関連している. 過剰な入力情報は, 有用な情 報の高次段 階への処理 を妨害するとい えよう.. V. 感覚入力調節機 構 課題処理には当該感覚入力と課題の性質に応じた覚醒水準が必要である. Hebb )は, 課題遂行における最 適覚醒水準を逆U字型曲線 で示した. それによると, ( 1972 ,D.○. 課題達成度は 「中程度」 の覚醒水準のもとで最も 高まる. すなわち, 覚醒水準が低過ぎると必要な. 情報が脳に 十分伝達されず, 逆に高過 ぎる場合には同時に 多くの反応が準備され, 抗争する結果, 適切な反応の生起が妨害されてしまうことに なる. 課題処理の 基調となる覚醒水準の調節と維持は, 少なくとも2つの経路で制御されることが知ら れている. 1つ は感覚入力が網 様体を通過する ことによっ て, 直接覚醒水準を高める場合であり, 覚醒水準は通過 する感覚 量に対 応すると 想定される. もう1つは, 既に興奮状態にある皮質活動が 覚醒水準を下行 的に高めたり, 維持する場合である. 著者の考えによれば, 第1の経路は覚醒水準のよりこまかな調節にかかわっており, 第2の経路 は主に覚醒水準の安 定化と維持にかかわる ものである. そう仮定すると, 目閉児の認知や行動にみ られる安定性の欠如は, 主に第1の経路の機能障 害に由来するものと推定し得る. )は, 「相 互 作用 モ デ ル」 に よ っ て 感 覚 入力 に 3 つ の 経 路 を 想 定 し て い 1976 ndra と こ ろ で, Bi ,D.(. る. 第1のものは, 感覚入力を皮質の 感覚野に投射する弁別 系(分析器系)である. 第2は, 感覚入 力に対応する皮質の中で当該部分を促通 したり抑制したり する変調系(賦活系)である. これは先の 第1の経路に 当たり, 目閉児の認知障害にかかわっ ていると推定されるものである. 第3の経路は, 情動 をつくり出す感覚 入力を視床下部と辺縁系に投射する情動系である. この系は目閉児の情動表. J )の「辺縁系はどの 感覚入力を登録し, 注意す ( 1979 re s 出のあり方との関連を示唆 し, また Ay . ,A. るかを 決定する」 という 認知論的見解もあるが, ここではとりあげない. さて, 主題を元に 戻そう. 最適覚醒水準は 「中程度」 の 範囲内を課題 の性質に応じて変動する 感覚入力を要求 したり, 削減したりする. ) (Hebb ,1972 ,D.0, . また, 課題はその性質に応じて Norman 1976)は, 課 題 の 処 理 様 式 に お い て, 2 つ の 型 を 区別 して い る. 第 1 の も の は, デー ,D.A.(. タへの依存 度が高い 「データ推進型 処理(上昇型)」 であり, もう1つ の処理様式は, 過去経験や文 脈に基づく予期図式への依存度が高い 「概念推進型処理(下降型)」 である. どのような課題におい ても両方の 処理様式が同時進行する が, 依存度は課題の性質により異なるというのである. 森( )は, 課題を収束的課題と発散的課題に二分し, 課題遂行時における脳 波を導出して,α波 1980 活動の分析から感覚入力への依存度を検討した. 結果として, 収束的課題は 一貫して多量の感覚入 106.

(10) . 目閉児の認知特性. 力を要求したことから, 主に 「データ推進型処理」 を要する課題 であったと思われる 他方 発散 。 , 的課題においては, 課題解決過程 の前半では比較的多く の感覚入力を要求したが 後半 課題解決 , , が進行していくに つれて感覚入力が削減されてきており, 主に(特に後半 では) 「概念推進型処理」 を要する課題 であったといい得る 。 ところで, 感覚入力の調節は, 中枢神経系の興奮と抑制のメカ ニズムによっ て成立する 個体発 。 生的, 系統発生 的に低い段階の生活体においては主に興 奮機能が優位 であるが 発達もしく は進化 , の度合が進むにしたがっ て抑制機能が優位を占めるようになる このこと .は, 乳児にみられる種々 . の反射が脳の成熟と共に消失することや, 高等動物に移 行するにしたがって 反射や本能的行動か , ら解放されて適応様式が多様化していくことに示さ れる したがっ て 人間の脳にとって抑制は重 。 , 要な機能 であり, もし脳 のある部分が損傷を受けた場合には抑制機能 が低下することになり その , 結果, 興奮と抑制のバランスが崩壊することになる この例として 臨床的には脳血管障害に起因 。 , する不随意運動があり, 実験的には除脳ネコの反応冗進に示される 。 刺激に応じて生体内にはたらく抑制因 子は 狩野( 1982 )が指摘す る如く, 末梢から中枢にかけて , 多岐にわたる。 例えば, 視知覚においては, まだたき サッケー ド抑制 瞳孔縮小 マスキング現 , , , 象, 側方抑制から, 脳内シナプス 結合による加重の不足 抑制性 シナプス後電位( I P SP) , , 反回抑制. ( bi ion) recurrenti t nhi. , ニ ュ ー ロ ン の 不 応期 に ま でわ た る。. 次に, 感覚入力抑制を支える神経生理学的メ カニ ズムを orn i t z説を中心に述べる. , orn i E M t l t z ( 1 9 e 6 9 )は 目閉児と普通 a 児の睡眠時におけ る脳波と眼球運動を分析 した。 その . ,.. , 結果, 目閉児では REM 睡眠時における10 ~ 5 1 l / した波の量 c s e cの同期 は普通児よりも多いにも . かかわらず, 急速眼球運動との 関連は弱く, 普通児よりも 急速 眼球運動の 群発は少ないことが見い 出された. 彼らは, 目閉児の急速眼球運動の乏しさを中枢性前庭機 能の不全を表示するものと仮定 して い る。. orn i tz i s cな興奮と抑制 を支える機 構に中枢性前庭機 , E.M.(1971)は, REM 睡 眠 時 に お け る pha 構 を仮 定 した 根 拠 と して, Pompe iano 0 ( 1 9 6 )が 示 7 したネ コ の 前 庭 核 に お け る ニ ュ ー ロ ン のイ ン , .. パ ルスの発射が急速眼球運動に 同期すること ネコの前庭核の一部を損 傷すると急速眼球運動な ど , 全ての運動 出力に対する phasic な抑制が消失する こ と を あ げ 臨 床 的 な 証 拠 と して は Appenzel l er. , , ○. et aL( i 196 8 )が示 した 訳r f f病 (前 庭 核 の 損 傷 がしばしばみられる)の 患者に rn e cke ‐Ko r sako. REM 睡眠中の急速眼球運動が欠如 することをあげている . t また omi ( 1971 z )は, 普通児に比べて回転後眼振の持続時間が著しく短いことから 目閉 .M. ,E , 児は覚醒時においても前庭系の機能 障害の徴候を示すという 。 REM 睡眠時において同期波と急速眼球運動 の群発とが量的に関連しないことは(orn i t t z e .M, ,E l 1 9 6 9 ) 目閉児の皮質と a, 眼球運動との結合関係に障害があることを示唆し 眼球運動出力の過度の , , , 減弱は, 感覚入力の調節不全をもたらすものと思わ れる . 目閉児における感覚入力抑制の不全もしくは発達の遅れは 聴覚誘発電位の後期成分にも示され , た, すなわち,REM 睡眠中における急速眼球運動が群発する時期 での音刺激に 対する聴覚誘発電位 i の振幅値が, 普 通 児 に 比べ て 高 く, こ れ は phas i c な 抑 制 の 欠 如 を 示 唆 して お り(orn tz E,M eta l. . . , , 1968 ), こ の よ う な高 振 幅 の 波 形 は 正 常 乳 児の も の に 類 似 して い た(orn i tz tal , . ,E.M.e ,1969) .. 前庭系の興奮は, 眼球運動を賦活し, 視覚入力を抑制する また 前庭系の活動は 外側膝状体 , 。 ,. の レ ベ ル でも 視 覚 入力 を抑 制 す る こ と が知 ら れ て い る(Pompe iano 1969; orni tz 1971 よ , 0. , ,E.M. ,. り) . 感覚入力抑制のレベ ルはさらに上位にもあり得るが, 少なくともこの 範囲における感覚入力抑 制の直接の担い手として, 前庭系を推定し得る したがって 前庭系に障害を持つ目閉児は 感覚 . , , 107.

(11) . 森. 範. 行. 入力を抑制することができず, 結果として多動と注意の 被転導性を示すことに なると考えられる。 Ayr ( 19 )も前 庭系の活動 が低いと 多動や 注意の散漫 をもた らすと述 べて いる(た だし, 79 e s ,AJ. i t zとは見解を異にし Ayre sは前庭機能を覚醒 水準の調節という観点 でこの 問題を扱っ ており, orn て い る).. しかしながら, 全ての目閉児が 多動や注意の被転導性を示す わけではない。 De l to )は, 目閉児の問題行動に内在する感覚 入力調節不全を3つの型に分類 した。 ( 1974 aca ,H. ,C i t zらの研究の被験児はこの型の目閉 第1の型は, 脳への感覚 入力 が過多の 「過敏型」 であり, orn 児であっ たことが推測さ れる. しかしながら, 脳への感覚 入力 が過少な 「過鈍型」 と生体内から発 i t z 説で統一的に説明するの i 生するno s eが感覚系内に混入して いるといわれる 「混乱型」 をも orn は困難であり, 別の神経生理学的モデルを想定しなければならないのかもしれない。 さらに, 課題解決過程における抑制が, 刺激を物理的に遮断した結 果として起こるの ではなく, 課題を適切に 処理することの結果として起こることを考 えると, 適切な課題処理に必要な情報の質 )は動機づけ 19 78 と量を判断する担い手は何か という問題が提起される. このことに関して, 北島(. )も 情 動 系 に 求 め て い る。 あ る い は, こ の 種 の 複 雑 な 判 断 は, の シ ス テ ム を 想 定 し, Ayres ,AJ.(1979. 脳の特定の部位という よりは, 連合野を含めたある種の合議で行われるのかもしれない. 感 覚入力調節機構の神経生理学的メカニズムは十分に解明さ れていない段 階であるが, 眼球運動 は視覚入力の調節に 一定の役割を果しており, 提示される課題状況との関 連 で解明されるべき点は 多いと思われる.. I V . 感覚入力調節機構と しての眼球運動 眼球運動は, 通常随意的操作が可能なものとして知 られている。 すなわち, 人間は自由に見たい 所を見て, そこから情報を得るのである. この 立場に基づく研究では眼球の走査過程と停留点を分 析の対象にする.. ’ ta l )の研究が知られ ( 1967 こ の 種 の 研 究 は 多く, 目 閉 児 を 対 象 と し た も の では, 0 Connor . , N.e. ている. 刺激として, 大きさ, 色, 明るさ, 複雑度, 有意味性などに 差のある一対の絵を被験児に 提示し, 停留の状況を調べたものであるが, 結果として, 目閉児は普通児と比べて眼球 運動の回数 が少ないのみ ならず, 精神遅滞児と比べてもどちらの絵にも停留しない時間が著しく長いことが示 さ れ た.. )の実験がある(若林, 1983より) 1 979 眼球の追跡過程に関 しては本城, 若林ら( 。 被験児は十字 型 G E O で表示された。 そ 威を目で追うように 求められ, 眼球運動は に配置さ れた5個の豆ラン プの点キ の結果, 目閉児においては 点滅刺激に対応したサッケー ド眼球運動の割合が普通児に 比べて著しく 低く, 特に 点滅の持続時間が短くなると十分に対応でき ないこと, また波形においても「階段状」の 不規則な波形が特徴的にみ られた. これらの 追跡性の眼球運動に関する研究は, 目閉児の情報収集の方 略やそれに内在する注視のメ. カニ ズムを解明する 上で, 重要なものと考え られる. しかしながら, 眼球運動は不随意的にも惹起されるものであり, 必ずしも視覚的探索活動に対応 するわけでは ない. その端的な例 が睡眠時における 急速眼球運動であり, 夢との関連が指摘されて l insky ta 1953 ). ま た, 視 覚イ メ ー ジ の 形 成 も しく は 走 査 と 眼球 運 動 と の 関 係 に つ き た(Aser . , ,E.e. 1981 )のレビュ ーがある. 彼女は眼球運 動なしに視覚イメージを持つことは可能であ いては, 竹田( 108.

(12) . 目閉児の認知特性. るが, イメージ想起時にはサッケー ド眼球運動が生起しやすいと要約している . 千原( 1974 )は, 聴覚的に提示された課題に 対する課題遂行時における眼球運動を分析 した 開眼 . と閉眼の条件でEOG 測定を行い, 速い眼球運動(運動速度:1 0度/秒以上)を分析の対象とした 結 . 果は, 成人においても幼 児においても課題遂行 時の眼球運動が増加し 特に開眼条件での眼球運動 , が 多か っ た.. ところで, サッケー ド眼球運動は, 注視点 の移動のみならず 視 覚入力 を抑制する機能 を果す , , 課題処理が妨害さ れ ないよう(開眼条件においては特に) サッ ケー ド眼球運動が視覚入力 を抑制したと考えること がで ,. l l (Bahi ta l ) 9 , A.e . ,197 . したがっ て, 視覚入力 が不要な聴覚課題において き る.. 注視活動にかかわらないサッケー ド眼球運動は精神発達に伴っ て増加すると考えられる 野村ら . ( 1 )は, 6個のランプがZ 字型に 点滅するのを追視させ 眼球運動を角 膜反射法にて測定した 973 , . その結果, 過剰なサッケー ド眼球運動は, 精神遅滞児では 全般に少なく 幼 児では3歳児より5 , , 6歳児に有意に増加した. このことは, 発達に応じて眼球運動レベ ルでの感覚入力抑制機能 が高まることを示唆す る. V I I . 要約と展望 1) 認知機能の障害が目閉児の問題行動やコミュニケーショ ン障害の基礎にあるとの見地から 目 , 閉児の課題処理の特徴を低次の 課題から比較的高次のものま で 文献的に検討した , . 2) 著者は, 認知活動を効率化する基礎に感覚入力調節機構を措 定した その中心となっているも . のは抑制機能 である. 3) 目閉児の中 でも過敏型の者は, 流入する感覚入力を抑制 できず あらゆる入力情報に受動的に , 反応さ せられてしまう それ故に, 当面する課題に適切に対処 できないのであろう . . 4) 目閉児は, 入力情報から規則を抽出 したり 冗長度 を利用して課題を処理することができない , . このことは処理容量を越える情報が一度に流入することによるものと思われ 基本的には感覚入 , 力抑制機能の不全に起因するといえる 。 5) 感覚入力調節機構(その中枢性の要として前庭 系が推定さ れている)は 末梢から中枢にかけて , 何段階か想定されるが, 比較的末梢 レベ ルにあって測定可能なものは眼球運動である . 6) ただし, 眼球運動の心理 学的意味は多義的 である 一方では視覚 情報の収集にかかわり(停留) . , 他方では視覚情報の削減にかかわる(サッケー ド抑制) . 著者は, 後者の観点から目閉児の認知 特性を解明したいと考えている 中心となる のは 課題 . , 状況に 応じた視覚入力調節機能を, サツケー ド眼球運動から推論する ことである .. 109.

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参照

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