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MOBプロジェクト研究の目的と構成 : 修了研究としてのMOB(My Original Book)研究の実践理論化の意義と本プロジェクトの構成

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Academic year: 2021

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(1)Title. MOBプロジェクト研究の目的と構成 : 修了研究としてのMOB(My Origina l Book)研究の実践理論化の意義と本プロジェクトの構成. Author(s). 玉井, 康之; 藤森, 宏明; 前田, 輪音. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 2: 1-4. Issue Date. 2012-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2920. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第2号. MOBプロジェクト研究の目的と構成 修了研究としてのMOB(MyOriginalBook)研究の実践理論化の意義と 本プロジェクトの構成. 教職大学院紀要編集委員会 玉井 康之*・藤森 宏明*1・前田 輪音*2. 1.教師教育研究における「修7研究」の実践理論化の意義と研究目的 教職大学院は、既存の大学院と異なり、いわゆる個別科学の方法論に依拠した研究的な修士論文が. 必須でなく、より学校現場に即した実践的な研究と実践力の養成が目的となる専門職大学院である。 その目的の違いが修士論文の有無の違いに典型的に現れている。この修士論文の有無は、修了研究ま での学び方の違いであり、逆に修士論文がないということは、楽になるということではない。むしろ. 実践や現象に適合する多様な理論と方法を選択的に抽出してその検証を図るという、現実から実践理 論を最適化するもので、理論を創るという別の学び方が代わりの役割を果たしているものである。 各個別科学においては、研究方法がある程度確立されていて、その論理を現実に適応していく場合 が多い。実践の理論化の場合には、その現象の解決に最もふさわしい理論と方法を組み合わせて適合 させる場合が多く、個別の研究方法だけに限定されない場合が多い。例えば一つの教育課題を、経営. 学的にも社会学的にも臨床教育学的にも様々な分析方法を使いながら、解決法を展開していくなどで ある。その際には、現実に応じた新しい研究手法と最適理論を創りあげていかかナればならない。福. 井雅英氏が指摘するように、実践には理論がないのではなく、既存の理論だけでは納まらない実践理 論を実証的に作りあげていくことが不可欠なのである。. 一般的に教職大学院は、学校経営・学級経営・生徒指導・学習指導などの網羅的な分野の実践課題 と課題実習と事例研究がカリキュラムに組み込まれており、カリキュラム自体が既存の大学院と異 なっている。さらに修了研究として課している内容も、大学によって異なり多様な内容を課している。 この修了研究が2年間の学びの軌跡を集大成しているとしたら、教職大学院の修了研究の意義をとら えることが、2年間の学びの特徴と違いをとらえることにもなる。すなわち修了研究を研究対象とし. て位置づけること自体が、教師教育実践の教育効果を測る研究対象となる。 北海道教育大学教職大学院の修了研究は、MOB(My OriginalBook)を修了成果の課題として発 表・公開することを課している。北海道教育大学独自の呼称としてのMOBは、未着手の研究課題で あり、MOBの実態と特色・成果を研究しかナれば、北海道教育大学がMOBの意義を打ち出すこと もできない。その分析課題の内容は膨大であり、実践研究をすでに展開している教師教育系学会等の 実践研究分析の多様な方法論など、教師教育研究の動向も含めて、MOBの到達点と発展方法を検討 することが重要になる。. *北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)釧路 *1北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)旭川 *2北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)札幌.

(3) 玉井 康之・藤森 宏明・前田 輪音. 2.ポートフォリオの延長としてのMOBの意義と発展的特色 この北海道教育大学の独創的な取り組みとしてのMOBは、内容がどのように斬新なのか、その意 義と実態は具体的には、どのようなものなのであろうか。独創的な取り組みであるとされるMOBは、. 従来のポートフォリオと違って、特殊な内容をもっているのだろうか。 一般的にポートフォリオそのものも、個々の実践者が様々な記録を束にしたものを振り返りながら、 まとめていくというプロセスをとる。ポートフォリオは、各自の学習履歴が前提なので、すでにMy Originalなものである。さらにそれをあえて、「MyOriginalBook」と称するのは、MyOriginal性が 前提となっているポートフォリオと、質量的に区別されるものである。このポートフォリオが、単な る記録から仮説一実践一評価一改善を伴う記録として発展条件を示すことができれば、発展的なポート. フォリオとなる。院生のポートフォリオは、院生自らの実践の改善につながる教育実習や実践的意義 をとらえる事例研究と結びついているために、My Original性が強くなるのであろうか。これらは、 今後の継続的な課題となる。 北海道教育大学の学部の教育実習・教育フィールド研究では、キャンパスによって大小の違いはあ. るが、すでに毎日実践記録や振り返り票を作成し、多様な相互評価(同校異観点、異校同観点)を展開 している。その内容は、1)自己目標と自己実践を対比した振り返り、2)同現象に遭遇した者どうし の多面的評価交換の振り返り、3)他校実践者同士の異経験者間の振り返り、をともなった自己評価. と相互評価の振り返りである。このような振り返りとMOBのプロセスとの関連性も、全く質的に別 のものか、同じ内容の時系列的な発展なのか、もとらえておかなければならない。実践記録の評価が. 計画的になされているとしたら、これは新たな発展的な特色を持つものと言える。 北海道教育大学の教職大学院では、学部の振り返りと質量的な発展も含めているということも、ポー トフォリオをMOBと称している所以と言える。そうだとすると、学部の振り返りに比して、教職大 学院のMOBは、明確な課題と仮説に基づく振り返りが、より鮮明化されて求められることも意義づ けておかなければならない。. このようなMOBの定義も実態も正確に展開していくことが、改めてトータルな実践力を総合する 教師教育研究として不可欠となる。あらためてMOBにどのような意味があるのか、あるいはポート フォリオや振り返りに比べて、どのような飛躍が求められ、また到達点がどのようになっているかを とらえることは、今後の教師教育研究の重要なステップとなる。今回のMOBプロジェクト研究は、 それらを全部実証的にとらえているものではなく、今後の研究の展望として考えながら、修了研究の 既存の研究から位置づけるという端緒的な分析から開始したものである。. 教師の実践力は学校現場で育つといわれるが、大学院までを含めた大学での教師教育の意義も独自 に存在することが、実践家の修了研究を研究することによって明らかとなる。この新しい教師教育の 意味が付加されていないとしたら、これらの実態と意義および可能性を今後とも明らかにしていくこ とが、今回のMOBプロジェクト研究の役割である。. 3.本研究プロジ工クトの構成 このような修了研究に関する研究課題を意識しながらも、今回我々は、北海道教育大学のMOBに. 最初から対象を限定するというよりも、そもそも大学院の修了研究の背景からとらえ直すことが重要 であると考えた。したがって、教職大学院が設立される当初の意図と目的、および院生の求める研究.

(4) MOBプロジェクト研究の目的と構成. 内容から、教育実践研究の意味をとらえる必要があると考えた。全体的な教職大学院設立当初からの 指導理念と具体的な院生の修了研究指導の中から、教職大学院の修了研究の特徴も見えてくる。 そのため、まず藤森宏明氏の「教職大学院における教育課程の在り方についての考察」では、教職 大学院の設立理念から教育課程の在り方及び特徴を捉えた。また全国的に先進的ないくつかの事例を もとに、既存の大学院の修士論文指導に代わる研究指導の特徴と課題を提示した。このことは北海道 教育大学の修了研究の今後の位置づけを明確にするための手がかりになるだろう。. 瀬戸健一氏の「院生から見た指導体制のあり方とMOBのあり方」では、教職大学院生の修了研究 を指導される側の意見と、指導する側の指導実践の中からの指導課題をとらえた。単純に院生が求め るものだけで成長するわけでもなく、また大学教員が一方的に提供するものだけでも、成長できない。 これらの相互的な関係を踏まえながら、北海道教育大学のMOB指導のプロセスの中から、成果と特 徴をとらえている。 以上の全体的な動向を踏まえて、教育学分野の主な分野として、3つの分野をとらえた。一つは、 教育学・教育実践研究分野である。二つ目は、教科教育・授業研究分野である。三つ目は、臨床教育・ 臨床心理などの教育の質的研究分野である。 玉井康之氏の「教育学分野における実践研究の実証化と教育実践力との統一化の課題一修了研究の. 位置づけのあり方をめぐる基盤研究として」では、戦後の教育学が教育哲学・教育史から始まった必 然性から、さらに教育実践研究が求められてきた経過をとらえた。さらに教育学分野の中でも、教育. 経営学と臨床教育では、立場と視点が異なるために、成果検証の指標が全く異なったりしていること をとらえている。そのため、教育実践をとらえる評価と方向性も極めて多様であることをとらえてい る。 前田輪音氏の「教職大学院の実践的研究における『洗練』について」では、「事例研究」を含め様々. な場面を通してMOB作成に向かっている現2年生を対象に、プロセスや苦労している点などを調査 したものである。課題の選定(設定)、教育実践の意味づけ(分析)・言語化、自身の大学院での歩み、 改善のための分析およびこれらの言語化の方法についての悩みなどを通して、実践的研究が「洗練」 されていくことをとらえている。. 川島大輔・竹本克己両氏の「質的研究の方法論と学びの質を高めるMOB」では、両氏の往復書簡 の中で、質的研究から見た教育実践の特性をとらえた。質的研究は、子どもの場合でも特に個々の子. どものあらゆる環境・条件・集団の中から様々な因果関係を捉え、多面的・複合的な現象や情報を結 びつけながらその発達課題や成長をとらえていく。これを教師に当てはめた場合にも、教師の成長を 個々の環境や条件の中から教師教育の成長と課題をとらえることができる。. そして最後に各教育学領域から見た修了研究とともに、学校現場■教師から見た修了研究も重安な 課題となる。学校現場が長期的にも期待できない教育学研究であるとしたら、やはり教育実践研究の 意義も低下せざるを得ない。常に大学の研究と教育現場が求める教育実践研究の共有化が課題となる。. 山瀬一史氏の「教職大学院のMOB研究テーマ策定過程における課題について」では、学校現場に おける教師が求める実践研究・研修の実態を捉えた。その特性は、単に理論や実践の追究だけではな く、様々な教育現象を普遍的に捉えることができる実践的な理論を求めている。その点からすると、. 大学においては、MOB研究テーマ策定にかかわり事前に実習関係の各学校の実情を十分把握し、そ れらを生かしていくことが重要である。併せて、大学で重視される理論も実践をとらえられる理論で なければならないことが理解できる。 これらの全国的な教職大学院の動向を捉えたマクロの修了研究、院生指導の試行錯誤の状況から捉.

(5) 玉井 康之・藤森 宏明・前田 輪音. えたミクロの修了研究、を前提にして、教職大学院の求められる大きな課題を捉えた。さらに各領域 から捉えた修了研究、すなわち、教育学・教育実践科学の分野、授業研究の分野、臨床的・質的研究. の分野から捉えた修了研究のあり方と研究の課題を捉えている。さらに大学だけでなく、学校現場か ら見た修了研究の意義を捉え、そこから教職大学院のあり方と課題をとらえている。. 本来的に教育実践の研究は、学級経営・生徒指導・授業づくりなどどの分野をとっても、固定的な ものではなく、様々な働きかけの要素を通じて、改善の要素が積み上がっていくものである。また授 業研究の場合は、教科専門との結びつきも強いが、その専門も子どもとの関係の中で、内容・方法が 再編される。そのため、子どもを前にした教育実践研究は、専門が固定しているものではなく、常に 変動していくことの重要性も踏まえておかなければならない。. このような修了研究としてのMOBのプロジェクト研究の方向性は、実践や現象解明のために、仮 説を立て、それに適合する様々な理論を複合的に採用しながら、. その仮説を実践的・実証的に解明し. ていくという新たな産みの苦しみを伴っている。このような実践理論は、最初に理論があるのではな く、実践に適合するような理論を作りだしていかなければならない。本プロジェクト研究は、実践理. 論を生み出すための壮大な試みに着手し始めている。その端緒的な研究を教師教育研究の中から生み 山そうとしている。以下各論稿において各論的に展開していきたい。 MOBプロジェクト研究の構成 「教職大学院における教育課程の在り方についての考察 −とくに修了研究に着目して−」. 藤森 宏明. 「院生から見た指導体制のあり方とMOBのあり方」. 瀬戸 健一. 「教育学分野における実践研究の実証化と教育実践力との統一化の課題 一修了研究の位置づけのあり方をめぐる基盤研究として−」. 玉井 康之. 「教職大学院の実践的研究における「洗練」について. 一北海道教育大学MOB作成過程の事例を通して−」. 前田 輪音. 「質的研究の方法論と学びの質を高めるMOB一往復書簡を通じた対話/実践」. 川島 大輔・竹本 克己 「教職大学院のMOB研究テーマ策定過程における課題について 一学校現場における研究・研修への取り組みの概要を通して−」. ○参考文献 福井雅英「教師の生涯成長と教職大学院一北海道教育大学教職大学院の現状と課題を踏まえて」、北海道教育大学教 職大学院『北海道教育大学教職大学院研究紀要』創刊号、2011年 相野彰秀「北海道教育大学教職大学院におけるカリキュラム改善と特徴」、北海道教育大学教職大学院『北海道教育 大学教職大学院研究紀要』創刊号、2011年. 山瀬 一史.

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