フィンランドにおける中学校物理教育の特徴 -学習指導要領と教科書の分析より-
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第58巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.58,No.2. 平成20年2月 February,2008. フィンランドにおける中学校物理教育の特徴 一学習指導要領と教科書の分析より−. 古 屋 光 一 北海道教育大学旭川枚理科教育研究室. TheFeatureofPhysicsEducationatLowerSecondarySchoolinFinland. −ThroughtheAnalysisoftheNationalCoreCurriculum2004− FURUYA Koichi. DepartmentofEducation,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 フィンランドの中学校における物理教育の特徴を理解するために,学習指導要領と教科書を調べた。その 結果,物理の授業時数は日本の1.5倍,学習指導要領における内容の説明は日本の約半分,教科書の厚さは 6倍であり,基礎的な内容から高度な内容が記載されていることがわかった。教師は,教科書全てを教える のではなく選んで教えている。また,学習指導要領に記載される日常生活という言葉が指す意味も日本とは 異なるものが含まれていることがわかったので報告する。. そこで,本稿では,次の2点を研究の目的とす 1.はじめに る。. PISA2000,2003の結果から,フィンランドの 子ども達の学力が高いことはよく知られている (国立教育政策研究所,2002a,2004)。また既に. (1)フィンランドの学習指導要領(中学校の物理 分野)を日本の学習指導要領と比較・検討する。 (2)フィンランドの中学校で使用されている物理. その教育についてもたくさんの報告がある(庄. 教科書(1社)を取り上げ,日本の中学校理科. 井・中嶋,2004,教育科学研究会,2005など)。. の物理分野と比較する。. しかし,実際の授業時数,学習指導要領,教科書 についての報告と分析はあまり多くはない。特に 中学校レベルで,どのような物理教育がされてい るかについて,学習指導要領と,教科書の分析は 見あたらない。. 2.フィンランドの学習指導要領 フィンランドの学習指導要領は,国家教育委員 会が作成しており,2004年秋に改訂された. 33.
(3) 古 屋 光 一. (FinnishNationalBoardofEducation,2004)。. ①科学者がするように考えること,②知識の獲得. 中学校における単位数や実際の授業時数について. とそれを使うこと,(動学習した科学概念を使いな. は,既に報告がある(古屋,2006)ので,ここで. がら,現象について議論・表現できること,これ. はその記述について分析する。. らを目指す事を明示している。その上でこれらの. 科学教育に関する2004年の学習指導要領の特色 は次の5点である。 (1)小学校6年,中学校3年という区切りがなく なり,この9年間を一括して基礎教育と呼ぶ。 (2)初等理科(科目名「自然と環境」)は1年生. から4年生を対象とする。. 知識の現実社会での重要性を理解させようという ものである。 《目的≫は,科学の内容ではなく,科学的な思考 力を定義し,その習得を目指している。いわば,. 問題解決のスキルあるいは探究の方法が示されて いる(表1)。. (3)5年生と6年生は,初等理科ではなく2分野 に分かれて学習する(科目名「物理と化学」,「生 物と地学」)。学習指導要領もこの2分野につい て記述している。. (4)7年生から9年生(中学校)では,単位を示 す表には,「物理と化学」,「生物と地学」と書 いてある(フィンランドの学習指導要領,単位 数の一覧表)。しかし,実際に使用される教科 書は「物理」,「化学」,「生物」,「地学」と4科. 目に分かれている。学習指導要領の記述も4科 目に分かれている。 (5)「保健教育」が体育ではなく,科学教育に位 置づけられている。1年生∼6年生までは,「保 健教育」という科目はなく,それぞれ「自然と 環境」,「物理と化学」,「生物と地学」にこれを. 表1:学習指導要領の≪目的≫(一部抜粋). 科学的スキル,∼疑問を明らかにしたり,何が 問題かを把握できること∼,を身につけること。 観察したことや測定したことを比較し分類する こと。まとめること。仮説を設定し,検証するこ と。また結果を処理し,まとめて解釈すること。. 同時に情報をやりとりする技術を上手に使用する こと。 実験計画を作り,実験を実施する。この場合自 然現象に影響を与えるような,変数を一定にして 変えないような状況下ではどうなるか。あるいは 同じ変数を変えるとどうなるか。また複数の変数 間の相関が見いだされるような場合にはどうなる か。 簡単なモデルをつくり,それによって現象を説 明する/一般化する/そして実験の過程や結果を 調べその信頼性を評価する。その方法を学ぶ。. 含める。7年生∼9年生では,これを1つの科 目として学習する。. ≪学習内容≫は,科学の内容である。5つの領域,. 本稿では,上記(4)の「物理」の記述を研究の対. 「運動と力」,「振動と波動」,「熟」,「電気」,「自. 象とする。. 然の構造」が説明されている。 ≪評価基準≫では「第8年生における評定〔A〕. 2.1 学習指導要領の構造. のための評価基準」が示されている。9年生(最. フィンランドの学習指導要領の構造は,≪前. 終学年)における到達目標ではなく,8年生のそ. 文≫・≪目的≫・≪学習内容≫・≪評価基準≫の. れが記載されている。また,上記の学習内容の5. 4つからなる。これは国語,数学など全ての科目,. つの領域に加えて,前文と目的で述べてあること. 全ての学年で共通である。. を1つの領域として「科学的な活動」として設定. 物理に関する記述は次のようになっている。 ≪前文≫は,7年生から9年生の間に物理を通し. している。したがって6領域についての到達目標 が示されている。これは,「科学的な活動」だけ. て身につけることの枠組みが示してある。それは,. を取り出して指導するものではなく,5つの領域. 科学とは何か,協同的に学んでいくことの必要性,. を通して学ぶ∩. 物理学習への動機付け,これらに配慮しながら,. 34.
(4) フィンランドにおける中学蔵物理教育の特徴. 2.2 日本とフィンランドの学習指導要領の比. 物理については表5の通りである。ただし,物理 の単位数は示されていない。かわりに物理・化学. 較. 2.2.1 内容. (7単位)が示されている。そこで,フィンラン. ここでは,フィンランドの学習指導要領の物理. ドの中学校における物理は7単位の半分,3.5単. 分野と日本の学習指導要領(平成10年版)の第1. 位であるとした。. 分野のうち物理に相当する部分を比較した(表 2)。その結果,日本には,「科学的な活動」,「熱」,. 「自然の構造」に相当する部分がない。一方,フィ. 表4:理科の全授業時数 (ただし,時間:1単位時間50分を用いた). (7∼9年生). 分がない。. 表2:学習領域(単元)の比較(*は相違点) フィンランド. 物 理. 本. 日. 日 本. フィンランド. ンランドには,「科学技術と人間」に相当する部 物理・化学. 7単位. 牛物・地学. 7単位. 保 健. 3単位. 小 計. 17単位. (中学校). 科学的な活動* 身近な物理現象. 小計(授業時数). 振動と波動. 中学校1年 理科. 105時間. 中学校2年 理科. 105時間. 中学校3年 理科. 80時間. (光と音/力と圧力). 電流とその利用. 熟*. 運動と力. (電流/電流の利用). 電気. 運動の規則性. 小 計. 自然の構造*. 290時間. 比 較. 1分野. 536時間(注1). 290時間. 536時間. 科学技術と人間*. 共通. 表5:中学校3年間の物理の授業時数. 2.2.2 学習指導要領の文字数 学習指導要領の文字数を比較する(表3)。た. 110時間(注1). 72.5時間(注2). (3.5単位) フィンランド 日. だし,フィンランドの学習指導要領の文字数は,. 本. (注1)1単位を45分,35回の授業とする。日本で は50分を1単位時間としているため,. 翻訳した日本文の文字数である。また,日本の学. 習指導要領では,1分野という設定になっている. 17×35回×45分÷50分=535.5時間. ために,物理分野だけを取り出すことができない。 そのため,日本の1分野とフィンランドの学習指 導要領の「物理」,「化学」を比較する。. r注2)日本では1分野・2分野と分かれている。 これは,物理,化学,生物,地学の各領域 に対応しているので,合計標準時数(290 時間)を4で割った数値を用いた。. 2.2.4 フィンランドの学習指導要領の特徴. 表3:学習指導要領の文字数 フィンランド 日 (7年生∼9年生) (中学校1分野). 本. ここでは,2.2.1内容,2.2.2文字数, 2.2.3授業時数で得られたデータをもとに,. 「物理」. 3556. その特徴を日本のものと比較する。2.1の学習. 「化学」. 2253. 指導要領の構造とあわせて,その違いをまとめる 5126. 1分野 合 計. 5809. と次のようになる。. 5126. 日本の現行の学習指導要領が主として内容を記. 2.2.3 授業時教 授業時数を比較する。理科全体については表4,. 述しているのに対して,フィンランドの学習指導 要領は,次の点が異なる。. 35.
(5) 古 屋 光 一. (1)問題解決能力(探究能力)を定義している(表 1)。 (2)「科学とは何か(物理学とは何か)」,これを. 7年生(中学1年生)のはじめに学習する。 (3)評価基準が学習指導要領に記載されている。 日本では学習指導要領に評価基準は記載されて. いない。しかし,国立教育政策研究所が作成し た評価規準がある(国立教育政策研究所, 2002b)。 (4)内容の説明は少なく,大綱的に概要が記載さ. 図1:教科書の3分冊 (左から教科書,ワークブック,探究のノート). れている。日本に比べて特に高度な内容が記載 されているわけではない。. 表6:フィンランドの教科書と日本の教科書のペー ジ数比較(単位のない数字はページを表す). (5)文字数はほぼ同じである(表3)。しかし,. フィンランド. 評価基準が記述の約半分を占めるので,内容の 記述は少ない。 (6)扱う内容の領域(単元)が多い(表2)。 (7)授業時数は日本の1.5倍である(表5)。. 3.中学校物理の教科書 内容の検討のため,本稿ではWSOY社の中学 校用の物理教科書(SuviAspholmetal.,2004). 日 本. 教科書 297. 127. 探究の ノート. 305(101+92+112). ワーク ブック. 412(144+132+136). 合 計 1014. 127. 変形A4版. サイズ. (210×233). サイズ 比. A4版 (210×297). 0.78倍 (233/297). 1.0倍. を用いた。なお,比較のために日本の理科の教科 書は中学校理科1分野上・下(大日本図書,2005). 換算 合計. 800≒1014×0.78倍. 127. を用いた。. 3年間で1冊だが,探究のノートとワークブック 3.1教科書の特徴と量的な比較(実験と説明 の分離とページ数). 日本の教科書には,質問(単元の内容にかかわ る問い),実験(方法,場合によっては作品例), まとめ(科学的な知識などの説明)が全て記載さ れている。. それに対して,WSOYは,3分冊になっている。 教科書(FYSIIKANTIETOKIRJA),ワークブッ ク(Fysiikantutkimusvihko),探究のノート (Fysiikantyokirja)である。教科書は学習内容. は3つのコースに分かれていて,1冊ずつ用意さ れている。. したがって,3年間で探究のノート3冊,ワー クブック3冊がある。. 表6は,教科書のページ比較である。教科書と 探究のノート,ワークブックを合わせると,日本 の6倍の資料が碇供されている。 なお,表6の日本の教科書の数字は,1分野上・. 下のうち,物理分野と1分野の共通単元「科学技 術と人間」のページを半分を合計した。. についての説明と練習問題が載っているが,実験 の方法などは載っていない。探究のノートに生徒. 3.2 単元と教科書の目次. 実験が記載されている。また,それをまとめるた. WSOY社の教科書は,7つの単元を設定して. めにワークブックがある。なお,物理の教科書は. いる。学習指導要領の領域と,この単元との関係. 36.
(6) フィンランドにおける中学蔵物理教育の特徴 表7:7つの単元と6領域(単元),コース別配分 WSOY社の単元 2 披と光. 3 熟エネルギー. コース3. 6 電気 7 自然の構造. 電気 自然の構造. 1. 波と光 振動と波動. 1. 2. 光の性質. 3. 光の反射と鏡 光の屈折 レンズを通した光の屈折. 4 5 6. は表7の通りである。なお7つの内容を3つの コースに分けているが,各コースは必ずしも学年 に対応しているわけではない。. 光学機材・機器 色. 7 8. 復 習 熱エネルギー 温度と物質の膨張 熱エネルギー 状態変化 エネルギー保存と拡散 熱エネルギーの移動. 1. 2. 教科書の目次は次の通りである(表8)。. 3 4 5. 1. 復 習. 3.3 教科書の記述(単元『光と波』,小単元. 1 1 2 2. 電流計・電圧計と回路 抵抗とその合成 電流とエネルギー 永久磁石 電磁石 電流と磁界 発電 電気回路に用いる色々な素子 オートメーションとコントロール 復 習. 1. 復 習 付 録 索 引. U 5 2 ご 0U 0 7 3 7 0 4 4 54 ご5. 自然の構造 素材・物質の構造 2 放射能を持つ物質とその影響 3 星座学. 2 2 2 2 2. 11. 静電気の特徴と原子の構造 回路は電流の流れる道. 0 70 81 21 72 32 83 23 74 2. 直接触れさせるようにする。…などの日常生活に. 2 2. 9. また,日本の学習指導要領の解説(1999)には, 「身近な事物・現象に対する不思議さや面白さに. 2 2. る。. 2. 5. 10. る。その表現の共通点をまとめたものが表13であ. 2. 3 4. 8. life:フィンランド)という言葉が記載されてい. 1. 1. 7. 最後に学習指導要領には日常生活(everyday. 1. 電 気. 6. 4.まとめ. 1. 復 習. 1. 5. 作業の什事率 簡単な道具:てこと滑車 重心と物体の安定. 1. 全て教えるわけではない。. 1. 4. 2. ンタビューでは,教科書に記載されている内容を. 1. ただし,フィンランドで行った教師に対するイ. 1. な内容である。. 1. これは日本の中学校,高等学校でも扱わない高度. 1. 3. :教科書39ページ(原図略))では,凸面鏡が続く。. 1. 運動とエネルギー 運動現象に見られるエネルギー 2 仕事とエネルギー変換 1. う点は日本とは異なる。さらに次のページ(表12. 1. 表11(教科書38ページ(原図略))で,凹面鏡扱. 1. 復 習. は,日本と大きな差はない。しかし,これに続く,. 1 0 20 000 ごU9 39 70 4 7. 7. 1. 10(図3:原文の教科書37ページの訳)について. 1. 5 6. 1. た表9(図2:原文の教科書36ページの訳)と表. 7. 3 4. 平均的な運動(等速直線運動) 激しい運動(加速度運動) 相互作用と力(作用・反作用) 慣性と重力 密度は素材・物質のもつ性質 ゴム摩擦とブレーキの力 圧力と浮力. 1. も同じ内容を学習するからである。ここに掲載し. 2. 1. 運動と力 1. この内容を取り上げたのは,日本の中学1年生. 1. 4「光の反射と鏡」). 9 2 0 3 5 3 0 4 ごU4 35 9ごじ 5 ご 1U 00 2. 運動と力. 物理学の方法 物理の世界 2 計測・測定の基礎. 1. 4運動と力 5運動とエネルギー. 次. 4. コース2. 目. ∩l 凸. コース1. 科学的な活動 振動と波動 熟. 7. 1 物禅学の方法. 学習指導要領. 表8:教科書の目次. 7 7.
(7) 古 屋 光 一. Valon he匝Stumin. JaP甜it ( 帽仙川M敵血涙再. :斑ご帥V血相∩父憾Ⅶ1. Valoh嘩a血uaineiden r叫al‖nれa別 Vab kulk亡e即0柑Ⅵhai賢!ポ.¶u地l父m kutkⅥ一 別unねYO弓mⅦtba ah亡は帥†毎a騨nnおSa,Osa Ⅶl脚p柚蜘加町帥憫囁い閤用腑加=帥‖. 0泊h柵廟伽m. Tul輔弼瀬川峨甜lル紺Ⅶbn感触甜u叩at 引moit地肌Ⅶlo¶山一血加卯帥蝕血棚 訂れ】tta. 図2:物理教科書「光の反射と鏡」(p36) 表9:物理教科書の訳(1):図2に対応. 図3:物理教科書「光の反射と鏡」(p37) 表10:物理教科書の訳(2):図3に対応. p36 4 光の反射と鏡. p37 鏡は光を反射する. 鏡に映った像を目でみることや,それがどこかに実際投 影されて見えるという現象は,光の反射によって説明す ることができます。. 平面鏡は,光を反射させるために作られた固体の物体(部 分)です。鏡の表面は,平らあるいは湾曲しています。 例えば,磨いた金属の表面は,鏡の表面と同じです。し かし金属は空気中で変化するので,少しずつ光を反射し なくなります。金属の表面はガラスで覆うことができま す。ガラスは鏡を硬くするので金属は厚く重い板である 必要はありません。よって一般に鏡はガラス鏡なのです。 鏡は光の方向をかえることにも,また像を映すために使 うこともできます。鏡に像を映すことは,光の反射の基 礎です。. 光は物質の境界面で反射します。 光は直進しますが,その光の進む方向は,物体の境界面 によってかえることができます。光線の一部は,その表 面で反射し,一部は屈折し一部は吸収されます。入射ま た反射する光線の方向は,それらの入射角と反射角に よって知ることができます。 入射角は,入射光とその光が反射する表面に垂直な線, すなわち物体の表面の法線との問の角度です。 反射角は,反射光とそれの反射する物体の表面の汀1 との問の角度です。 tuleva valosade tulokulma normaali heijastuskulma heijastunutvalons豆de aineidenraJapinta. 入射光 入射角 法線 反射角 反射光 物体の表面. 光が平表面で反射するとき,その進む方向は,常に同じ ように変わります(. 光の反射では,入射角は反射角度と同じです。. 平面鏡は虚像を作り上げる 平面鏡の表面は平らです。平面鏡の映しだす像は,いわ ゆる虚像なので平面鏡に映る写像は,例えば,紙面やス クリーン上に映して見ることはできません。光は鏡の中 の写像から目に入るのではなく,それは,実際の物体か ら発せられているのです。物体の発する光が鏡に反射し て目に入るのです。人は鏡に反射される光だけを認識す ることができます。例えばOHfIでスクリーンに投影さ れる画像は実物の画像です。光はスクリーン(画面)に 反射して目にはいるのです。 平面鏡が映し出す虚像は,物体の置かれている位置の 空間と同じ空間を映し出します。虚像の大きさは,鏡 と物体の距離とは関係なく,虚像の大きさは常に実物 の物体と同じ大きさです。 ▲鏡像では,鏡に映る物体の後方が実物のある位置と同 じくらいの奥行きで見えます。ロウソクの光は,鏡の表 面に反射して見る者の目にはいります。しかし見る者に は,鏡の中の像から光がでているように見えます。すな わち鏡の中の像は,虚像なのです。虚像は実物の物体と 同じ大きさです。. 38.
(8) フィンランドにおける中学蔵物理教育の特徴. 表14:フィンランドの学習指導要領の日常に. 表‖:物理教科書の訳(3). 関わる内容 p38 凹面鏡は,光を集中させる 凹面鏡や凸面鏡の表面は,平面でなく湾曲しています。 凹面鏡は,例えば化粧鏡のように拡大鏡として使われて います。また凹面鏡は望遠鏡にも使われています。凹面 鏡は球形の湾曲面を鏡面にしなければなりません。また 鏡の中心をとおる法線を主軸と呼びます。これは鏡の中 心を通る光線といえます。凹面鏡は,法線と平行な光を 入射させると反射した光は一箇所に集中させます。そ・の 集中する点を焦点といいます。焦点は鏡の表側にありま す。逆に焦点に光源を置くと,反射光線は平行光線にな ります。この性質は懐中電灯や車のヘッドライト等に利 用されています。 凹面題は題の主軸の方向の平行光凝を一焦点に遵窟辟に東 めます。焦点Fは,題の菱餅にあり,その威からの躇 すをわち焦点雌は,題の裸麦面半径Rの半分です。. 表12:物理教科書の訳(4) p39 ▼“大きな凹面鏡(太陽焦熱炉)”では,太陽光と熱を 反射させるため紙を反射鏡の焦点におきます。 凸面鏡は,光を分散させる 凸面鏡はデパートや交差点の監視鏡やカーブミラーや自 動車のバックミラーやサイドミラーなどに使われていま す。凸面鏡は,湾曲面の外表面を鏡面にします。凸面鏡 は,入射する平行光線を分散させます。すなわち凸面鏡 の後側にある焦点に一度,光が集中して,そこから光を 分散させるのです。. 見られる現象と結びつけて考察させるようにす る」とある。これは学習する内容と,生徒の日常 体験することとの関係を重視するものである。. 一方フィンランドの学習指導要領では,つぎの 凸面題は,題の垂直勧銀の方向の一光を分散させ,その焦 点を適して光凝は反対側に農蔚されます。 凸面題の焦点は,焦点F(本当の焦点ではをいノであり, 題の俊樹にあります。題との焦点雌は,題の表面光源 からの半分です。. ような表現がある(表14)。. 表13は,身近にある現象と学習内容とのつなが りについて日本とフィンランドの共通部分を述べ ている。それに対して,表14は日本にはなくフィ. ンランドには記載されている部分である。これは. 表13:日常生活の共通点 フィンランド. 日. 本. 生徒が日常生活とそ れを取り巻く社会の 巾で用いられてい. 物質やエネルギーに関する 事物・現象を調べる活動を. る,物理学と科学技. けて科学的に考える態度を 養うとともに,自然を総合 的に見ることができるよう にする。. 術の重要性を理解す ることができるよう に支援する。. 通して,日常生活と関連付. 身近な事物・現象について の観察,実験を通して,光 や昔の規則性,力の性質に. フィンランドの科学教育に位置づける「日常生活」 というもののとらえ方の特徴を示している部分で. ある。内容としては現在から将来をも含んだもの であると同時に,より具体的な内容を記載してい る。また,一人の人間として物理学で学んだこと. をもとにして,日常生活での色々な場面で意志決 定できる能力を育てるとしている。これは, PISA調査が測定しようとする学力,すなわち「学 習内容の定着度を示す基礎学力やいわゆる応用問. ついて理解させるととも. 題を解く力といった従来の学力のとらえ方を超え. に,これらの事象を日常生. た,これからの社会生活を送る上で必要な力がど. 活と関連付けて科学的にみ る見方や考え方を養う。. の程度身に付いているのか」(国立教育政策研究 所,2004,ii)という点に近いものである。. つまり学習者が大人になったとき,生活者とし. 39.
(9) 古 屋 光 一. て,あるいは消費者として物事を判断する基礎に なるものを学習に取り入れている。. このことは,私たちが物理教育についてフィン ランドから学ぶことの一つである。. 引用文献 大日本図書:新版中学校理科1分野上・下,2005. Finnish NationalBoard ofEducation:NATIONAL CORE CURRICULUM FOR BASIC EDUCATION. 2004,188−191VammalanKirjapainoOy,Vammala, 2004 古屋光一:フィンランドの新学習指導要領(2004年版) と中学校における授業実施についての調査−バンタ市 マルティンラークソ中学校の実例分析を通して−,北 海道教育大学紀要,教育科学編,57(1),97−105,2006. 国立教育政策研究所:生きるための知識と技能OEDC生 徒の学習到達度調査(PISA)2000年調査国際結果報告. 書,2−9,125−144,2002a 国立教育政策研究所:生きるための知識と技能20EDC 生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査国際結果報 告書,iv−ⅩⅤ,179−203,2004 国立教育政策研究所:評価基準の作成,評価方法の工夫 改善のための参考資料(中学校)一評価基準,評価方 法などの研究開発(報告)−,2002b 教育科学研究会:なぜフィンランドの子どもたちは「学 力」が高いか,国土社,2005 文部省:中学校学習指導要領(平成10年12月)解説一理. 科編−,19,1999 庄井良信,中嶋博:フィンランドに学ぶ教育と学力,明 石書店,2005. SuviSspholm,HeikkiHirvonen,JukkaHongtisto,Jari Lavonen,AnuPenttila,HeikkiSaari,JouniViiri:Aine ja energia−FYSIIKAN TIETOKIRIA2001,36−39,. WASOY,2004. (旭川校准教授). 40.
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