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現代福祉社会の不満要因について

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(1)Title. 現代福祉社会の不満要因について. Author(s). 亀畑, 義彦; 大嶋, 謙一. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 42(1): 13-27. Issue Date. 1991-07. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4511. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 2巻 第1号 北海道教育大学紀要 (第1部B) 第4 l i i i ty of Educat lof Hokkaido Univers on (Sect on I B) Vo Jouma ‐42 ‐I , No. 平成 3年7月 l Ju y ,1991. 現代福祉社会の不満要因に ついて About Discontented Factors of conte l l-be ing Society ・ エ ・Porary ▽Ve. 亀. 畑. 義. 彦 ◎ 大. 嶋. 謙. はじめに 197 3年2月13日閣議決定) 97 3年, 「活力ある福祉社会」 形成の構想 は 『経済社会基本計画』 ( 1 か ら 始 ま っ た.. 「活力ある福祉社会」 とは 「公害はなく 自然環境が豊かに保たれ また教育や社会保障も充実 , , , し, 国民の生活に安定とゆとりを約束するとともに, 国際社会と協調しつつ長期的発に展を続ける 経済社会」 であると定義された. その実現のためには, ①生活の場においてゆとりをもちたいとい う欲求の充足, ②生活の安定と社会的公正の欲求の充足, ③安全の欲求, な どの課題を解決してい く必要があるとされた. これらの国民生活の課題把握は 『くらしの環境調査』 ( 1 972年) に起因している. 『経済社会基本 計画』はこの調査結果に基づいている. 同計画では当時の国民生活について調査結果から, 「これま での経済成長により, 所得が増加し生活水準も向上したことを反映して, 国民の過半数が現在の生 活を一応評価している. しかし, 社会資本, 社会保障の現状について は不満足とするものが多く, とくに, 老後の不安, 税負担の不公平感, 医療サー ビスの不足な どは国民の不満を強めているが, 1 )と分析して さらに仕事のやりがい, 教育機会の拡充などにつ いても国民の関心が高まっ ている.」( い る.. 確かに, 国民の生活意識で自分の生活の程度が他者と比較して 「中の中」 と感ずるものが全体の 64年のことであり,池田内閣の提唱した所得倍増という経済成長政策を継承し 50%を越えたのは19 た佐藤内閣の誕生の年である. その後,197 3年の田中内閣誕生の年には「中の中」意識 は国民の60% を越えている. この傾向は197 9年まで続くが, 1980年, 鈴木内閣の時代になると「中の中」意識は 60%を割ることになる. その後, 新保守主義とされる中曽根内閣の時代を通じて国民の生活意識で 「中 の 中」 は50% 台 に 落ち 着 く こ と に な る ( 2 ) .. 197 3年といえば,日本の一人当り国民所得がイ ギリスを上回り,世界第二位の自動車生産国になっ 3 )しかし この年の1 た年である.( 0月には世界を震憾させる石油危機が勃発した年でもある. それ , と同時に 『経済社会基本計画』 にある 「豊かな環境の創造」 「ゆとりある安定した生活の確保」 「物 価の安定」 「国際協調の推進」 などの目標が修正を余儀なくされ, 「福祉元年」 と称された社会福祉 4 }によっ 政策が見直しされるという事態になっ たのである. また, 国民の経済は「新しい価格革命」( て物価の騰貴になやまされ続けることになっ た. それから1 5年を経て, 赤字国債の増発によるイ ンフレ経済政策のつけは, 「何よりもまず歳出の 5 )そこでは 「民間に対 徹底的削減」 による 「増税なき財政再建」 政策へと転化されることになる.( , 13.

(3) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. する指導o規制o保護に重点を置いていた行政から, 民間の活力を基本とし, その方向付けo調整o 6 )が主張されるとともに 国民の「選択と負担」 の仕組みが明確に 補完に重点を置く行政への移行」( , 位置 づけられるような行政政策の理念の変革が求められたのである. 989 ) は, 「より本質的な観点を指摘するならば, 工業社会から脱工業社会 この変化を内田健三 ( 1 への産業構造の転換に始まり, 21世紀社会のキーワードとされる国際化・情報化・高齢化など社会 ( 7 )の追求の結果であると促 構造の変革の潮流に, 行財政システムがいかに対応すべきかという課題」 え て い る.. このような変化の激しい社会における国民の生活意識の変化要因を 「生活に対する不満」 という. 観点から考察しようとするのが本論の目的である.. 1 工 分析資料について 2年経済企画庁が行なっ た『くらしの環境調査』と, 1987年経済企画庁国民生活局が 本論では1 97 2年度国民生活選好度調査』 を分析資料とした. 行なっ た 『昭和6 8 ) 武藤忠義・丸尾直美らが編集した 『改訂福祉経済学』( む こ 『くらしの環境調査』 の結果が掲載され ている. ここでは 「生活環境要素に対する不満度 (%)」 を尺度として, 埼玉県富士見市 (人口急増. 地域) , 長野県松本市(地方中核地域) , 佐賀県鹿島市(農漁村地域) の , 広島県福山市 (工業地域) 11項目)」 「活動の 比較がなされている. 全調査項目数は47である. それらを「生活の安全と健康( 「 「 「 しやすさ (8項目)」 11項目)」 , 教育o福祉 (7項目)」 , 余暇o社会活動 , 住みやすさ・快適さ ( 8歳以上の住民10 00人を対象に各項目ごと ( 1 0項目)」の5つの領域に整理している. この調査は1 に, 「満 足」, 「どち ら か と い え ば満 足」, 「どち ら か と い え ば不 満」, 「不 満」の 4 ポイ ン ト 評 価 方 式 に. よっ て解答を求めている. この結果から同書に掲載された資料は 「どちらかといえば不満」 および 「不満」 の合計を 「不満度」 として比率集計されたものである . 地域間比較を採用することについて同書では,「生活環境 は全国一律ではない. また, 全国一律の 生活環境を求める必要性もない. むしろ, 地域によっ て生活環境を構成する要素に差異があり, そ れがよい意味での地域特性を形成する要素となっ たほうがよい. そして総和として健康で文化的な 9 )と説明している 生活を営める一定の水準が確保されればよいのである」{ . 確かに4地域での1 8歳以上1 000名の調査結果から地域間比較をする ことの妥当性 は十分考えら れることである. しかし, 年齢に焦点を当てて分析することも考えられる. それは各地域に生活す る人々 のライ フステー ジを問題とすることである. 他方, 4つの地域を取り出したことを考えるな らば,これらの地域が選択されたことについての論理性 はどこにあるのだろうかという疑問がある. 2年当時の国民の生活意識として考 すなわち,調査の結果は地域環境や年齢に制限されている197 えるものでなければならないだろう. これはどのような調査を行おうとも, 国民全数調査以外は, その結果 は必ずいくつかの要因に制限されてしまっ ているということを意味する. しかし, そこに 2年度国民 表られた結果は国民の生活意識の反映である. このことについて は以下に述べる『昭和6 生活選好度調査』 の場合も同様である. 「国民生活選好度調査」 は1973年の『国民選好度調査』 の実施 が最初である これは先に見た『く . らしの環境調査』 を土台として整備され, 継続実施の考えから導入されたものである. 1975年から 984年からは3年を1周 は『国民生活選好度調査』として, その後, 197 8年, 1981年に実施され, 1 期として毎年実施されている. 14.

(4) . 現代福祉社会の不満要因について. 1987年の調査は,「国民生活政策の立案あるいは政策実施の 際の判断材料とするため, 国民がどの ような事柄を重要と考え, それがどれだけ充足されているか, どの程度政策を期待している かなど 0に とを目的として実施された. 1 を調査する」( 87年の調査内容は, 人々 の主観的意識と しての満足度, 幸福度, 階層帰属意識等, および重要 19 2問と, 度, 充足度, 政策優先度等である. 調査項目は満足度, 幸福度等を調査するフェー ズ1の1 1の12問とに分かれている. ライ フステー ジ別標本作成のためのフェー ズ1 50 0サンプルを抽出し, 回答者数 は2857であっ 人を対象に3 4歳までの男女個 全国の15歳から7 ? た .. 『 本論では以上2つの調 査, 『くらしの環境調 査』 , および 昭和62年度国民生活選好度調査』 を分 析資料とした. これらの比較を通して, 人々 の15年間の生活意識変化を考察する. 比較項目の選択 87年調査から項目を照合採用するという方法 をとっ 2年調査を基本としな がら19 にあたって は,197 た. 表1は1972年調査と1987年調査から選択した分析項目の一覧である. 便宜的に各項目をま と 2年調査は尺度 として 「不満度」 がとられている. 従っ て, 1987 め5つの領域に整理してある. 197 年調査の 「充足度」 尺度を変換し 「不満度」 として整合させた.. 表1 分析項目の比較 ) 19 87 国民生活選好度 (. ) 197 3 くらしの環境調査 (. 安全 と健康. 領域. 1 2 3 4. 付近の道路の安全性 付近の防犯 自然災害に対する安全性 医療施設までの距離. 1 交通安全 2 犯罪防止 3 災害対策 4 必要な診断・治療. 易活 動 性. 5 医療機関の技術水準. 5 病気の予防・健康診断. 6 交通機関の便利さ. 6 交通の便 7 商品の安全性. 7 情報の内容や種類・早さ 8 就職や副業の機会. 居住 環境 教育福 祉. 9 人が集まるとき利用する施設. 8 職業紹介・訓練 9 市民センター・集会場. 1 0 住宅 1 1 し尿やゴミの収集処理 1 2 騒音や振動 13 悪臭. 1 0 持ち家 11 ゴミ・下水処理 1 2 公害防止 13 危険施設の管理. 14 保育所・託児所 15 小学校・中学校 16 高等学校. 14 幼稚園・保育所 15 小中学校の教育内容. 17 福祉施設. 余 暇 と活 動. 18 余暇やゆとりの時間 19 ス ポー ツ ・ レク な ど. 20 散策環境 2 1 趣味や稽古 2 2 文化的な施設や機会. 1 6 高校の教育内容 17 福祉サー ビス 1 8 休暇 19 運動施設・グランド 20 自然環境 21 趣味・教養 2 2 文化遺産・史跡. 比較. 地域住民間比較. ライフステージ別比較. 調査. 不満度調査. 充足度調査 15.

(5) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一 園1973年口1987年. . . . . . . 図1 1973年度 で不満度 の高い項 目. ID. . 圏1973年□1987年. 図2 1987年度 で不 満度の高い項 目. 分 析結果. 図1は1 97 2年調査で不満度の顕著な項 目を図示したものである. 「付近の道路の安全性 (交通安 「 「 「 全)」 , 交通機関の便利さ (交通機関)」 , し尿や ゴミの収集処理 (し尿 ゴミ)」 , 騒音や振動 (公害 「 「 「 「 防止)」 , 高等学校(高校教育)」 , 福祉施設」 , 趣味や稽古(趣味教育)」 , 文化的な施設や機会(文 「 化遺産)」 な どについて不満が大きくなっ ている. 特に 交通安全」 および 「交通機関」 に対する不 満の顕著さが目立っ ている. 図2 は1 9 87年調査で不満の顕著な項目を図示したも のである. 「病気の予防と健康診断 (医療技 「 「 「 ) 術」 , 商品の安全性 (商品情報)」 , 職業紹介訓練 (就職副業)」 , 市民センターと集会場 (集会施 「 「 「 「 設)」 , 持ち家 (住宅)」 , 危険施設の管理 (悪臭危険)」 , 幼稚園・保育所 (保育施設)」 小中学校 「 の教育内容 (義務教育)」 , 自然環境」 などに対する不満が顕著である. 両調査項目を主成分分析 ( i i lcomponent ana ) した結果によれば, 197 l i 2年調査から nc s pr pa ys は3つの主成分が, また, 1987年調査からは4つの主成分が抽出された. 「 「 1 97 2年調査の第一主成分は, 「人が集まるときに利用する施設」 , 幼稚園・保育所」 , 小学校・中 「 「 学校」 , 高等学校」 , スポーツやレクリ ェーショ ンの施設や機会」 な どの項目を構成要素とするも のである. これを本論では 『教育活動の因子』 と呼ぶこととする. 「 「 「 第二主成分は, 「付近の道路の安全性」 , 自然災害に対する安全性」 , 騒音や振動」 , 悪臭」など 『 の項目を構成要素とするものである. これを本論では 環境と安全の因子』 と呼ぶこととする. 第三主成分は, 「(老人・心身障害者・特教育等のための) 施策や施設」 を構成要素とするもので ある. 本論ではこれを 『福祉施策の因子』 と呼ぶこととする. 「 1987年調査の第一主成分 は, 「趣味・教養」 , 文化遺産・史蹟」 などの項目を構成要素とするもの である. 本論ではこれを 『文化活動の因子』 と呼ぶこととする. 「 「 第二主成分は, 「病気の予防o健康診断」 , 休暇」 , 運動施設・グランド」 な どの項目を構成要素 とするものである. 本論ではこれを 『勤労生活の因子』 と呼ぶこととする. 「 第三主成分は, 「職業紹介・訓練」 , 幼稚園・保育所」 などの項目を構成要素とするものである. 本論ではこれを 『経済的安定の因子』 と呼ぶこととする. 「 第四主成分 は,「交通安全」 2 , 災害対策」などの項目を構成要素とするものである.この成分は197 『 年調査で抽出された 環境と安全の因子』と重複するのでひとつの因子として1 97 2年調査および19 87 16.

(6) . 現代福祉社会の不満要因について. 年調査の要素をまとめることとする. 図3から図9 は, 以上の6つの因子に有意味的に対応していると考えられる要素を, 主として『国 1 2 1 ) ( 3 ) 1 1 ( )を参考に選択して 1 3年度を100として時系的変化を図示 したものである.( 民生活指標』 , 97 各図に197 2年と19 87年との不満傾向の差異を検討するために各因子変化を合成して示してある. 各因子に対応すると思われる要素 は以下の通りである. 『環境と安全の因子』 ………o公害苦情件数 o 自動車事故による死者数 1 4 ) o不慮の事故による死者数( 『勤労生活の因子』 …………o完全週休2日制適用労働者の割合 o余暇を重視している人の割合 o家計に占める自由時間関連消費支出の割合 『福祉施策の因子』{ 1 5 ) ……o福祉施設数 o老人施設数. o精神薄弱者施設数 o身体障害者施設数 o 児童施設数. 『文化活動の因子』 …………o住宅用電話普及率 1 6 ) o家計に占める月謝支出( 1 7 ) o家計に占める交際費{ 『教育活動の因子』 …………o小学校o中学生長期欠席者数( 1 8 ) 1 9 ( ) o少年犯罪発生率. o小学生o中学生の塾通い者数 『経済的安定の因子』 ………o実質実収入対前年伸び率 o貯蓄残高 ・負債残高 2 0 ) o家計に占める住宅関係費( 2 1 ) o教育関係費{ 2 2 ) o女性のパートタイム労働率( なお, この 『経済的安定の因子』 は家計の全体傾向を示すものと, 家計収支出の重要性との2つ に分類した.. IV 考. 察. 現代福祉社会の不満傾向は15年程以前と比較して, 『福祉施策』 および 『文化活動』 な どの因子 について低下しているが, 『教育活動』 および 『経済的安定』 などの因子について増加している. ま た, 『環境と安全』 および 『勤労生活』 の因子について は以前と比較してその不満傾向に大差が見ら れないというのが本論の分析結果である. それぞれの因子について個別に考察する.. 17.

(7) . 亀畑 義彦・大嶋 謙÷. 1. 『福祉施策』 図 3 を参考にすると, 確かに各福祉施 観設. 数は1 973年に比較して1 987年には30%以 上の増加をみている.. 特に老人施設, 精神薄弱者施設, 身体障 害者施設の増加が顕著である. このことは 施設数の増加もさることながら, そこで働. く職員数の増加および運営費等諸費の増加 にも相関する. もともと狭義の社会福祉は生活保護, 児. 福祉施設数. 童福祉, 母子健康, 母子福祉, 身体障害者 福祉, 老人福祉および老人保健, その他を 総括する政策概念であり, このことからす. ・.. .・ ... 児童施設敢 - . . ・ ・ ・ . . ・ ・ . ・ . . ・ ・ - ・ . . ・ ー . ・ . . ・ . ・ ・ ‐ . . . . ・ . ◆ ▼ ・・ 6 0. \. 福祉施策の因子. れば図3 は生活保護,母子健康,母子福祉, 老人保健などの情報を除いたもので, きわ. めて限られた範囲での福祉施策の時系的変 化のみを伝えるものである. 狭義の社会福. 5 0. 祉概念に所得保障, 医療保障, 公衆衛生お よび医療制度を含めて広義の福祉施策を考. 5 5. 0 6. 6 2. 図3 福 祉 施 策. えるならば, 図3の各施設数の時系的変化をもっ て福祉施策に対する不満傾向の多寡を判断す ることは安易のそしりをまぬがれない. このことを補足する意味で図10を掲 げる. この図は社 会保障をGNPおよび租税負担との関係でみたものである.社会保障費は1973年から逓増傾向 に あ り,特 に 1979 年 に お い 一GNP. ‐租税負担 -社会保障 ‐. て はGNPを上まわる増加 となっ ている. 社会保障費. の増加は精神薄弱者施設, 老人施設および身体障害者 福ネ 止施設の増加傾向と相間 するものと考えること がで きる. また, 社会保障費 は GNPの増加とは相関せず 租税負担と相関しているこ とが理解される. このようにきわめて限定 された範囲での福祉施策, 7 1. 7 2. 7 3. 7 4. 7 5. 7 6. 7 7. 7 8. 7 9. 1. 図1 0 国民所得, 租税負担と社会保障費の時系的変化. としての社会保障費はこの. Y=8-5 216X,十0. 294X。 94-0‐. 1 5年間にかなりの改善対策. )( 92 ) R =0. 86 9 ( 4. 310 )( 0 5 0-0 ‐04. が講ぜられたとみるべきで. (Y:社会保障費, X,:国民所得, X2:租税負担) 2 18. および広義の社会福祉施策.

(8) . 現代福祉社会の不満要因について. あり, それとともに人々 の福祉施策に対する不満傾向は減少してきていると考えてもよいので はな か ろう か.. 2 3 ) しかし,最近のノーマライ ゼイ ショ ン理念の普及およ びリハ ビリテーショ ンの再考の傾向{ , また, 臨時行政調査会の答申な どは新たな福祉施策の充実を求めている. 特に 「増税なき再建」 をスローガンとする臨時行政調査会の最終答申では, 「国民の福祉のた 2 4 )する福祉行政の めに真に必要な施策 は確保 しつつ, 同時に民間の自由な活動を十分に保障」( 役割を強調するとともに, 「活力ある福祉社会は, 自立o自助を原則とする国民の活力と創意を 2 5 )として 国民の選択と負担を強調することとなっ た 基礎にしてこそ存立し得る」( , . この具体的施策として19 86年度の 『厚生白書』 では社会保障に対する国の負担には限界のあ ることを指摘し, 例えば198 0億円の削減, 更に19 86年の同措置費 5年の障害者施設措置費250 『 2 6 ( ) 230 0億円の削減な どが実施されている. さらに1 987年の 厚生白書』ではなお一層の受益者 負担が強調されるとともに, ボランティ ア活動の重視や民間活力の導入を強く訴えている。. 2 『文化活動』. 次に図4を参考にすると「 家計に占 める交際費」 支出の割合は, 197 3年に 比較して1 987年まで横這いであるが, 「住宅用電話普及率」 および 「家計に. o o 3 1 1. 亡. 占める月謝」 の割合はかなりの増加が み ら れ る. 確 か に I987 年 の 時 点 で「教. 養o趣味oス ポーツ」 に充実感を感じ 2 7 ) ている人が47‐1%もおり( ’ 特に女性 の場合は 「友人や知人との会合o雑談. 2 0 Q. 住宅用電話普及率. 月謝支払い ;/ ( 〆 ′ //. を して い る 時」 に 充 実 感 を 感 じ, 男 性. の場合は 「趣味やス ポーツに熱中して. J. 寮計の交隙賢. l o o. いる時」 に充実感を感じている人が多 く な っ て い る.. 志向に支えられた画一的な消 費が多く み ら れ た. し か し, 最 近 の 消 費 は, よ. 図4. 文化 活動. り豊かな時間を過ごしたいという自分志向に支えられたものが中心となっ ている. 消費者の求 める豊かな時間の内容は, 各人の価値感, ライ フスタイ ルにより極めて多様である. したがっ て, 健康志向に支えられたアス レチ ックoクラブ, より美しく時間を過すためのエステティッ ク o サロン, 生涯学習意欲に支えられたカルチ ャー o センター等 様々 なニュ ーサー ビスが , , 消費者の新たなニーズに対応 し, 近年急上昇している. また, 小売店も単なる購買の場ではな く, より豊かな時間を過すため の場として, 従来 はリ ゾートに求められていたようなサー ビス 2 8 )と 指 摘 し て い る が 求 め ら れ て い る」{ . 19.

(9) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. このような状況は過去1 5年の間に,いわゆる文化活動に対する人々 の意識が変化してきたこ とを証明するものであろう. 文化活動に対する機会の選択の多様さと, それを提供する場所の 増加はなお一層の支出を増加させるものと考えることができるとともに, 人々の生活意識のこ の方面に対する志向性 が高まるものと予想される. しかし, このことは人々 の余暇時間の増加 と相関し, 余暇の有効活用との関連で再度考察されね ばならない課題を含んでいる.. 3 『環境と安全』 次に図5については, 「公害苦情件数」 「自動車事故死者数」 「不慮の事故による死者数」等が ともに1973年の時点に比較して1 987年ではほぼ2 0%の減少傾向にある. このことは, 人々の 生活上の安全対策が効果的に行なわれてきたことを証明するものと考えることができる. 確か 2 9 ) 5年の間に道路舗装率, 都市公園面積, 図書館蔵書数などは増加している.{ に, ほぼ1 また, 環境整備の面では「し尿処理衛生処理率」および「ごみ処理率」 「水道普及率」等は1985 3 0 }従っ て,環境衛生面ではこの15年の間にかなり 0%の整備率となっ ている.( 年の時点でほぼ9 ・ の政策的配慮がなされていることが考えられるとともに, 人々 の生活に対する環境面 の整備 が 進んだことを証明している. また安全対策についても, 「自動車事故」 による死者数の低減現象は 「道路舗装率」 の上昇と 相関しているものと考えることができる. 「公害苦情件数」 および 「不慮の事故」 による死者数の減少についても環境整備の充実と相 関するものが多いと想像される. ただし, 「下水道人口普及率」 の地域間格差が大きいことは, 人々 の環境衛生および生活に対する安 全性に対して, 政策的にもうひとつの 配慮が必要であることを示している. この こ と につ い て, 特 に 中 o 小 都 市. および町村地域の生活者に対する健康. 3 00. 環境ラ 安全性に対する大都市生活者と の間に大きな格差 が見られる ことから も指摘し得る. 2 00. lo. 5 3▼. 図5 環境と安全 20. 6 8.

(10) . 現代福祉社会の不満要因について. 4 『勤労生活』 図6 について, 「完全週休2日制」 の適用を受けている労働者数は 1 3年から1976年の3 , 97. 年間にほぼ2倍以上になっ ている. また, 19 80年から19 87年にかけて はほぼ30%以上の増加 となっ ている‐ これを企業別にみると,従業員100 0人以上の企業では40%が完全週休2日制を 実施しているのに対して,10 0~999人の企業では1 0%強,30~99人の企業では1 0%以下となっ ている. また, 労働者割合についてみると,1000人以上の企業に勤める5 0%以上の労働者が完 全週休2日制の適用を受けているのに対して, 100~999人規模の企業に勤める労働者は15%, 30~99人規模の企業に勤める労働者ではほぼ5% だけが完全週休2日制 の適用を受けているに 3 1 ) す ぎな い. (. このような実態から, 勤労生活にゆとり のある労働者 は大企業に勤めているということが理 解される. ま た, こ の 週 休 2 日制の適用については,1 977年頃をさかいとした円ルートの上昇との関係を. 無視することができない.円高による企業の雇用調整が行なわれたからである 特に輸出依存度 . の高い加工製造業種 は1977年から19 86年までに68‐3%の企業が雇用調整を行なっており,71‐ 4%の企業が今後も雇用調整が必要であるとしている. 調整の内容は残業規制, パートの削減な 3 2 どがあ げられているが,それとともに完全週休2 日制の実施を導入した企業が増加している ( ) . これらの状況と期を同じくして人々 の生活意識に変化が表われる 1977年頃から人々 の生活 . に対する意識は「ものの豊かさ」 から「こころの豊かさ」 を重視するというよう に変化 し, 1 983 年頃から 「レジャーo余暇」 に力点を おく生活態度 へと変化する.. 勤労生活の因子. しかし,この余暇の活用 については, 「自由時間関連消費」がこの15年ほど ではほとん ど伸びていないことに注目 する必要があろう. わずかな伸びの主 な要因は運動用具類, スポーツ観覧, ゲーム代な どの 「スポーツ関連消費」. 完全週休2日適用労働者. と, テレ ビ, VTR などの「娯楽用耐久 財」への支出である. また, NHK の調. 余暇の重視 . 自由時間関連消費. 査によれば, 余暇の過し方で第一位 は 「好きなことをして楽しむ 第二位 は 」 , 「体をやすめて あすに備える 第三 」 , , 位は 「友人や家族との結びつきを深め る」 である. 第一位の理由は10歳台, 20歳台の年齢層 に多く, 第二位の理由. 8 4. 5 3. 図6. 5 8. 勤 労生 活. 2 6. は40歳台の男性に多い. また, 第三の 3 3 ) 理由は女性に多い.( こ れ ら の こ と か ら, 豊 か に な り つ つ. ある余暇時間 の活用について は, あま り金をかけないで家で休息したり, 自分の好きなことをして過すというのが実態 であろう こ . 21.

(11) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. 97 3年と1987年と比較して大差のない結果 として表れている. 先に見た『文化活動』 の傾向は1 との関連で考えるなら ば, 余暇消費の現在的傾向は 「友人o知人との談合」 や 「趣味oスポー ツ」 での消費が大勢であり, 平成元年度版 『国民生活白書』 が指摘したリ ゾート型の余暇消費 は大多数の人々 にとっ て は高嶺の花であろう. このような状況 は後に考察する 『経済的安定』 の現状によっ てもうか がい知ることができる.. 5 『教育活動』. 7 年 力 1 7 年 力 ら 1 9 8 に げび嗣 9 3. 加 した の は 『教 育 活 動』 と 『経 済 的 安. 定』 に関するものである. 977年頃から まず図7から見ると,1. 中学生の長期欠席生徒が増加し始める とともに, 少年犯罪率がそれに相関し て 上 昇 して い る.1982 年 頃 に な る と 小. ・●. 3 o o1 1 亡 ,. 閑. .. 〆. 〆 ;. 2 0 0. 学生の長期欠席児童が増加するととも に, 少 年 犯 罪 率 の 低 下 が 見 ら れ る よ う. 少年犯罪発生率. になる. また1976年を100とするdい 中 学 生 の塾 通 い は1985 年 には2 倍 程 の 上 昇 と な っ て い る.. loo. ‐. γ. 小学生長欠児童数. 少年の病理的現象として は, 家出少. 983年が 力事件を起こした少年の数は1. 図7 教 育 活 動. ピークで1 400人近いと報告されている. 19 85年には「いじめ」 に起因する認知事件が640件も記録されて いる. しかし, 5~19歳の 3年と1987年とを比較しても大差 がみられない. 自殺率は197 これらの病理的現象の原因として, 第一に考えられることは家族形態の変化である. その要. 因として, ①核家族の増加, ②離婚に伴う母子世帯および父子世帯の増加, ③有職母親の増加, な どをあげることができる. その結果は家庭における教育機能の喪失であり, 家庭における子 どもの教育に対する自信の喪失である. 第二の原因と してこれらに関連して, 家庭機能の変化を考えること ができる. その要因は, ①子 どもと両親との交流不足, ②ストレスの多い家庭環境, ③溺愛と愛情欠如, 厳格と放任な どのアン ビバレンツな家庭教育, などが指摘できる. この結果, 家庭における教育機能はも は や崩壊の危機に面している ということができよう. また, 第三の原因として, 人々 の学歴に対する意識の変化があげられる. 学歴に対する意識 調査の結果を参考にすれば, ほとん どの人が今日の日本社会には学歴社会が存在しており, 学 94.8%) 歴や出身校 が重視されていると考えており( , 学歴社会の中でも特に出身校が重視され 22.

(12) . 現代福祉社会の不満要因について. るとするものは36‐6%にのぼり,今後もこの傾向は変らないと答えたものが30‐7%にのぼっ て いる. また, d\o中学生をもつ母親の50% は自分の子 どもを大学o大学院まで進学させたいと いう希望を抱いている。 これらの結果として塾通いが増加すること になる. それも限られた有 名大学を目指すために子 どもに必要以上の競争を強いているのが現状である. また, 学生に対する調査でも,「今の社会 は学歴が低いと高い地位についたり, 高収入を得る ことができない社会」 と考えているものは, 高校生で6 6‐7%, 大学o短大生で6 4‐5%にのぼっ ている. 大学への進学率がピークであっ たのは197 6年である. 学歴社会の問題 は企業における労働生産性の問題と不可分の関係にある. 我が国においては 教育の普及と高学歴化, 企業内外での養成訓練から始まる各種の職業訓練によって労働資質は 高い水準に達し, これが直接的に生産レベルをあげて高度の経済成長を促進させる要因であっ たと指摘することができよう. 3 5 )は低下傾向にあるといわれている しかし, 現在では大学教育を受けたものの所得収益率{ . 特に1 00人規模以上の企業では197 6年以降, この所得収益率は顕著な低 下を見ている. 金森o 香西 ( 1 98 6 ) はこの傾向を, 「くしくも, 戦後一貫して上昇を続けてきた大学進学率 (含短期大 学)が昭和51年の39%をピークに横這いからむしろ低下傾向で推移している状況と符号した結 3 6ま たこの時期 は 先に考察した 『勤労生活』 に対する意 果となっ ている」 と指摘している.( , 「 識変化として, ノもの豊かさ」 を重視する生活意識の表われとも符号している. このような所得状況を考えれば, 現代の 『教育活動』 に対する人々の不満の増加傾向は, そ の問題の多くが家庭の形態的変化, または, 家庭の教育的機能の変化に起因するものと想像さ れる. 各家庭の教育機能の崩壊を自己 回復できず, それを他に転化しようとし, また, 特に義 務教育を担う各学校では親の多様な教育ニ ーズに応えきれない硬直的構造があり, 各家庭およ び各学校との間に構造的摩擦が生じている. 結局 は, 家庭も教育当事者も学歴社会という幻想 に振り回されて, その幻想を子 どもに押しつけるがために教育の病理的現象を引き起こしてい るというのが現状なのではなかろうか. この現象が顕著に表われるのが1 97 3年から1976年に かけてであり, 人々 の大学進学に対する期待の大きかっ た時期に符号している‐1 976年以降は 後にみるように, 『経済的安定』との関連において教 育に対する不満の増大という, その質的構 造の変化を考えることができよう. すなわち, 教育に対する現代の不満 の本質は教育の体制お よびそこでなされる教育内容そのも のに向けられているが, その深層には家庭o家族環境 の変 化, および家計の問題に環元されるものが多く含まれているといえる‐. 6 『経済的安定』 『経済的安定』 の問題は1 97 3年と1987年とを比較して, 不満の高低差が最も顕著であり, 19 87年に不満が増大している. ここでは 『経済的安定』 の問題を家計全体に影響している要因と, 特に家計支出に関係して いる要因とに分 けて図示した. 図 8 は家計が1 97 7年をさかいにして負債残高が貯蓄残高を上回るという事態になったことを 示している。 負債残高の拡大 は197 9年から1980年にかけて第一次のピークがあり,1 982年以 降, また急激な負債残高の上昇を記録している. 「実質実収入対前年比」 と負債残高は1982年 以降大幅な垂離が生じている. 23.

(13) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. 負債残高. / 貯謎残高 ′〆 ノ′′′ ′′ … 済的安定の因子. 実質実収入対前年伸び率 1973年. 「987年 住宅関係費の割合. 経済的安定の因子. 教習関係費の割合 女性のパートタイム労働率 973年 「987年. 5 3. 1 ) 図8 経済的安定(. 8 5. 6 2. 2 ) 図9 経済的安定(. 図 9 は家計支出の要因について, 「住宅関係費」 および 「教育関係費」 を掲げた. また, 家計. 収入に対する主婦のパ ートタイム労働も併せて図示した. これら3つの要因はほぼ相関しなが ら 上 昇 し て い る.. 4%の世帯が,また, 現代の国民多数の家計収入の実態では,年収300万円以下のところに47‐ 6.1%の世帯が所属している. 年収500万円以下のところに, 実に7 「 「 「 家計支出の増加 は 「家賃・地代」 , 教養・娯楽用耐久財」 など , 自動車関係費」 補習教育」 の項目に顕著である. この中で, 「家賃・地代」 に関しては全世帯の36‐7%が住宅ローンを利用 し て い る・. 1989 ) は, 「その平均ローン残高をみる と, ローン残高 が723万円もあり, 貯蓄残 嘩峻淑子( 2%もある. この一年でローン残高 が最も増えたのは四十 高よりもローン残高の多い世帯 が19. 3 7 ) 代の世帯で, この年代の住宅ローンと教育費は家計を大きく圧迫している」と指摘している.( 2年度 『国民生活白書』 でも, 「住宅ローン返済世帯の土地家屋借金返済は可処分 また, 昭和6 所得の17‐7%を占めている. これに保険純増や借金純減を加えた契約的資金支出等の割合 は 25‐6%に達し, このため資金繰りの余裕度をみると, 住宅ローン返済世帯 はかなり低くなっ て いる」 と指摘している. このように, 住宅関係費がいかに家計を圧迫しているか, また, それ が家計の負債残高のいかに大きな要因となっ ているかが理解される. 平成元年度版 『国民生活白書』 ではモ デル世帯の生涯収支を試している. それによれば, 夫 婦と子 ども2人のモデル世帯で,夫のみが働いでいる場合の生涯収支モ デルが例示されている‐ 3歳で第二 男性は22歳で就職し, 男性28歳で26歳の女性と結婚する. 夫30歳で第一 子, 夫3 子が誕生し, 夫38歳で2285万円の中古住宅をローンで取得する. この家族が住んでいるのは 24.

(14) . 現代福祉社会の不満要因について. 東京方面である. このモデルでは, 第一子 が大学に入学する, 夫49歳から家計が赤字に転落し, 第二子 が大学 に入学する 頃から負債残高 が目に見えて増大することになる.そのつけは夫59歳でピークに達 0歳で定年し, その退職金で一息つく が, まだ家計赤字 は存続し, 夫が死亡する76歳 する. 夫6 の時点でもま だ242万円の借金 が残っ ている. 5歳にかけて家計の収支 が赤字となる. こ 同白書では,「おおよそ世帯主の年齢が49歳から5 れは, 2人の子 どもが共に大学に通うために教育費 (大学4年間で一人331万円かかる) が多 くなっ ているためである」 と分析している が, これに加えて住宅ローンに係る 要因もはなはだ 大きいと指摘できる. 現代の中年世代において, いかに住宅ローンと大学教育に係る教育費 が家計を圧迫している かの例示として上記のモ デルを考える必要 があろう. また, 子 どもの大学入学までに関連する 補習教育費の増加も最近の家計圧迫の原因と考えることができよう. 最近の家計支出におけるロー ンに対する依存状況をみると, 「昭和60年における消費者信用 4‐9万円と, 昭和50年の3‐5倍 の新規供与 額は34.8兆円で, 一世 帯あたりの信用供 与残高 は7 に増大 した. 耐久消費財の購入に際 して消費者信用を利用しているか どうかをみると, 乗用車, 3 8 ) .ピ ア ノ VTR で の ロ ー ン利 用 率 が 30% 以 上 と な っ て い る」と 指 摘 さ れて お り ( ス テ レオ, , ロー ,. ン依存度がきわめて高くなっ ていることがうか がわれる. 結局, 最近の家計における負債残高の増加傾向は, 住宅ローン, 教育ローン, 教養・娯楽用 耐久財ローン, 自動車等関連支出ローンという消費者信用の増加に深く相関 しているものと想 像される. この家計負債残高を幾らかでも埋め合わせるために母親 がパートで働くという実態 と,また,その母親 は『文化活動』で考察したように,「より美しく時間を過すためのエステティッ クoサロン」 や 「生涯学習意欲に支えられたカルチャー o センター」 などに魅力を感じて多少 の支出をしている という実態が浮き彫りにさ れるのではなかろうか. そこには, 長期的負債残 ( 3 9 )を求めて余暇を消費しようとする剰那 的生活態度 高に対応する家計の苦悩と, 「即時的価値」 をみること ができよう. 3 ) は経済福祉シンポジウム へのコメ ントとして, 大学の教育費用無 197 かつて, 飯田経夫 ( 「 償化論議に関連して, いまや大学 は, 必ずしも学問研究o教育の場ではなく, かなりの程度ま している. いわ ば人々 は, クーラーや乗用車を購入し でレジャーの場所, 若者の生活の場と化, たり, 海外旅行に出かけたりするの とおなじよう に, 大学教育を消費しようとする‐ それでは, いっ たいなぜク ーラ」o乗用車o海外旅行は無償ではないのに, 大学の教育は無償でなけれ ば な ら な い の か」「人々 が い ま よ り はる か に 貧 し か っ た こ ろ に は, 彼 ら は, 文 句 も い わ ず に 黙 っ て. 水道料金・交通料金o電気料金等々 を支払っ ていた. それよりもはるかに豊かな現在, いっ た いな ぜ彼らは,それらの料金のわずかな値上 げがあたかも福祉の死命を制するかにさわ ぎたて, 「 さらには, それらを無料化することが福祉の不可欠の条件であるかに唱えるか」 , それは まず 4 0 )と述べたことがある 第一に, 伝統的な価値観か らいえば, 単に鷲沢というものだろう」( . 1987年の時点で人々 の生活意識に何らかの変化がみられただろうか. 大差がないように感ず るのが本論の考察結果である. ただ, 『経済的安定』を求めて苦悩する家庭の実態と, それに起 5年以前と比較して鮮明に描き出すことがで 因する多くの不満 が存在しているという現状を,1 きたと考える.. 25.

(15) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. まとめにかえて 1 97 3年に提唱された「活力ある福祉社会」を形成するという構想 は, 15年を経た今日の時点では, 『経済的安定』 に対する不満と 『教育活動』 に対する不満の増加という現象として具現化された , . 国民生活にとっ てこの構想実現の15年間にプラスの要因であっ たものは, 「福そ 止施設数一の増加と, 「道路舗装率」 の増加と そして都市公園の若干の 「公園面積 の拡大だけであろう 」 , . 『文化活動』 に対する選択機会の拡大は 過大な宣伝による供給サイ ドの過剰現象を生 み出して , はいるが, 実質需要との間に大きな爺離が生じている. また, 生産構造調整 による労働者の余暇時間の増大は当事者にとっ て当惑的現象であり, それは せいぜいスポーツか, 家でテレビを観ながらの ゴロ寝で消費されてしまう. 主婦は住宅ローンと子 どもの教育費の増加のためにパートに出るが, 家計の長期的負債解消の手 段としては寄与率が低く, しかたなく 「即時的価値」 を求めてカルチャー o セ ンタ ー に 殺 到 す る こ と に な る.. 家庭 に残された子 どもは, 小学生の時から学習塾 に通わされ, 有名大学に入学することが周囲か らの至上命令として育てられる. そして, とにもかくにも大学まではと子 どもも頑張るが, 入学し た大学 はもはやレジャー施設の感を呈し, 学業はそこそこに, せっ せとアルバイ トに汗を流してツ アーの海外旅行を楽しむ. または独身生活のうちに海外旅行を体験しようと海外へ出かける. そこ で円高による利益を実感するが, それは実は中年世代がせっ せと働いた結果であることを理解しな . 現代の生活に対する不満現象は, 豊富な消費財を目前にして, どう, したら賓沢できるかという, その手段獲得に最大の関心を示しながら日々 の生活を苦慮している人々 の姿にその存在理由を求め ることができる. 本論の考察を整理するとこのような結論が導き出される. そして, このような人々 の生活に対する意識が変化するのは1977年をさかいにしてである. 変化 の動向は, ①人々 の欲求の高次化, ②自由時間の増加に対する余暇利用の方法のとま どい, ③都市 1 4 ) 化の進展と潤いのない生活空間, などによる生活のアンバランスとして指摘される.{ このような生活意識の変化は高度経済成長による産業化 (イ ンダス トリゼーショ ン) と抗産業化 (カウンターイ ンダストリゼーショ ン)の桔抗関係として捉えることも可能である. その実証が「も のの豊かさ」 重視傾向から 「こころの豊かさ」 の重視への意識変化であり, レジャーと余暇に重き を置く生活志向傾向の増加である. しかし, その深層にある最大の問題は家計における 『経済的安定』 ということであり, 表層不満 はこのことに関連したものが圧倒的に多い. この意味で, 今後の課題は人々 の消費傾向の変化を歴史的に再検討することであり, それととも に, 人々 の勤労意識の変化を歴史的に再検討することが必要である. 勤勉と節約に支えられた勤労 意識が現代福祉社会で失なわれつつある. このことが福祉社会の形成を阻む最大の要因であろう.. 26.

(16) . 現代福祉社会の不満要因について. ( 1 ) ( 2 ) ) ( 3 ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) { 7 ) ) ( 8 ) ( 9 ( 1 の 側 ( 1 2 ) ( 1 3 ) 回 ) Q 5 ( 1 6 ) ( 1 7 ) ( 1 8 ) ( 1 9 ) ( 2 ) 0 ( D 2. 3 ) 経済社会基本計画に関する件 (閣議決定) 197 経済審議会答申 ( 2月号 19 89 ) 『月刊世論調査』 平成元年1 総理府公報室 ( ) 『戦後史』 ①ちくま文庫 p.414 1 0 正村公宏 ( 99 975 ) 『新しい価格革命 -- 試練に立つ現代資本主義--』 岩波新書 1 宮崎義一 ( 8 2 ) 行政改革に関する第三次答申 (基本答申) 19 臨時行政調査会 ( 同上 19 ) 『現代日本の保守政治』 岩波新書 p‐132 内田健三 ( 89 97 9 ) 『改訂福祉経済学』 青林双書 p‐p.222‐223 1 武藤忠義・丸尾直美他編 ( 同上 p‐211 2年度国民生活選好度調査)』 7 ) 『国民の意識とニーズ (昭和6 19 8 経済企画庁国民生活局編 ( 9 1 98 ) 『国民生活指標~平成元年NSI試算』 経済企画庁国民生活局編 ( 4号 6巻第1 89 ) 『国民の福祉の動向』 厚生の指標 第3 19 厚生統計協会 ( 『 19 88 ) 昭和63年わが国の文教政策』 文部省 ( 「不慮の事故による死者数」 とは, 中毒, 自然および環境要因による事故, 火災, 溺水, 窒息, 医薬品による有 害作用などが原因で死亡したものの数である. 8 0年までの各年間における変化は表示されていない‐ 5年から19 ここに掲げた各施設数は197 家計に占める月謝支出とは, 教育的月謝, 教養的月謝, スポーツ月謝, 自動車教習費, 家事月謝などである.. 交際費とは, 贈与金, 交際に係る食料費などである‐ 長期欠席とは, 年度間に通算で50日以上欠席したものである‐ 00人当りの刑法犯犯罪である‐ 少年犯罪とは, 14歳から19歳の未成年者で人口10 住宅関係費とは, 家賃地代, 設備修繕維持費, 土地家屋借金返済などである‐ 教育関係費とは, 授業料等, 教科書, 学習参考書, 学校給食, 学生服等に係る費用, 通学定期代, 学習用机・椅 子, ランドセル, 文房具, 辞書, 遊学仕送りなどである‐ 5時間未満の労働である‐ ( 2 2 ) パートタイム労働とは, 週間就業時間3 ) 福祉社会学の構築北海道教育大学紀要 第41巻第1号 19 90 ( 2 3 ) 亀畑義彦・大嶋謙一 ( ) 行政改革に関する第五次答申 (最終答申) 19 83 ( 2 の 臨時行政調査会 ( ( 2 5 ) 同上 9 88 ) 『障害者は, いま』 岩波新書 p.203 ( 2 6 ) 大野智也 ( 1 2年度国民生活白書』 19 87 ) 『昭和6 ( 2 7 ) 経済企画庁編 ( 9 0 ) 『平成元年度国民生活白書』 ( 19 2 8 ) 経済企画庁編 ( 2 ( 9 ) 同上 鯛 ) 同上 D 同上 ( 3 987 ) 前掲書 鰯 ) 経済企画庁編 ( 1 87 ) 『現代日本人の意識構造第二版』 日本放送協会 19 ( 3 の NHK 世論調査部 ( ( ) 所得収益率とは, 大学進学に係る費用および大学期間中に放棄した所得と, 大学を卒業することで得る利益を大 3 5 学卒業者と高校卒業後に就職した者とで, その所得間格差を比較して割り出したものである. 0版』 東洋経済新報社 p.187 1 9 86 ) 『日本経済読本第1 ( 3 6 ) 金森久雄他編 ( 『 19 9 ) 豊かさとは何か』 岩波新書 p.171 ( 3 7 ) 陣峻淑子 ( 8 87 ) 前掲書 3 19 ( 8 ) 経済企画庁編 ( ) で指摘された, 行為それ自体の中に意味を見 6‐8 9 ( ) 即時的価値とは, 『NIR 3 9 LA 政策研究』 (VOL p ‐ .8 ‐1 .No .1 .p 生き方として定義される つける . ‐ 157 ◎ 飯田経夫 ( 197 3 ) 近代経済学の福祉論議 『季刊現代経済』 VOL p ‐10 .p . .144 21世紀の国民生活像~人間味あふれる社会へ~』 9 )『 197 楓 総合政策部会企画委員会長期展望小委員会報告 ( (本 学教 授. 旭川 分校). 27.

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参照

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