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自己決定感が課題成績を向上させる効果の神経基盤

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Academic year: 2021

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研究論文紹介【A】 本号pp.38-48

自己決定感が課題成績を向上させる効果の神経基盤

Murayama K, Matsumoto M, Izuma K, Sugiura A, Ryan RM, Deci EL & Matsumoto K How Self-Determined Choice Facilitates Performance:

A Key Role of the Ventromedial Prefrontal Cortex. Cereb Cortex 2013 一般に「他人任せでなく、自分のことを自分で決める」 こと(自己決定)は重要だと言われているが、自己決定 が脳にどのような作用を及ぼすかについては分かってい なかった。本研究では、良いことがあると活動が高まる 前頭前野腹内側部と腹側線条体に着目し、自分がこれか ら遊ぶゲームのデザインを、自分で選んだときと強制的 に選ばされたときとで脳活動がどう異なるか、脳機能イ メージング法を用いて調べた。 大学生男女の実験参加者が、0.05 秒以下の誤差でス トップウォッチを 5 秒で止めることができると成功、 そうでなければ失敗となるストップウォッチゲーム(図 1)に取り組んだ。このゲーム課題を行う際に使うスト ップウォッチのデザインを、自分で選んだとき(自己選 択条件)と、強制的に選ばされたとき(強制選択条件) とで、脳活動がどう異なるかを、磁気共鳴画像撮影装置 (MRI)を用いた脳機能イメージング法によって調べた。 実験参加者のうち 90%以上の方が、自己選択条件の 方が強制選択条件よりもポジティブな気分になったと答 えた。そして、実際の難易度はまったく同じであるにも 関わらず、自己選択条件の方が、強制選択条件よりも課 題の成績が統計的に有意に高かった。 また、脳活動において、悪いことがあると活動が低下 することが知られている前頭前野腹内側部において、自 己選択条件でのみ、失敗に対する活動低下が見られなく なった(図 2)。すなわち、自己選択条件では、前頭前 野腹内側部が失敗をただ悪いこととして捉えているので はないことが示唆された。同じように悪いことがあると 活動が低下することが知られている腹側線条体において は、失敗に対する活動低下は自己選択条件と強制選択条 件の両方で同じように認められた(図 2)。 ゲームのデザインを自分で選んだ場合(自己決定)、 たとえゲームで失敗しても、前頭前野腹内側部がそれを 「成功のもと」とポジティブに捉え、その結果、やる気 と課題の成績が向上することが示唆された。この研究成 果は、自分で選んだ感覚、自己決定感が伴うときには、 失敗は必ずしも悪いことではなく、いわば「成功のもと」 となる積極的な意味を持つ情報として処理される脳内メ カニズムが前頭前野腹内側部に存在することを強く示唆 するものである。 本研究は、失敗を「成功のもと」とプラスに捉え、高 い学習効果を維持する、学習者中心の教育方法の開発と 普及、ひいてはやる気に満ちた社会の実現に貢献すると 期待される。 (脳科学研究所 松元健二) 【図 1】実験に用いた課題の模式図 自分で選んだストップウォッチ、またはコンピュータに強制的に指定さ れたストップウォッチを使用して、ストップウォッチを 4.95∼5.05 秒の 間で止めるゲーム課題を行なった。 【図 2】成功 / 失敗した時の脳活動への自己決定感の影響 使うストップウォッチを自分で選ぶことができた時は、腹側線条体の活 動は失敗時に低下したが、前頭前野腹内側部にはそのような活動低下が 見られなかった(矢印)。

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