大阪南港事件最高裁決定批判
清
水
晴
生
一 大阪南港事件とは 二 本決定の意義と矛盾 三 本決定の問題点 四 大阪南港事件の解決 五 主たる原因でなくてよい 六 結語一
大阪南港事件とは
大阪南港事
件
は、被告人が致命的ともいえる暴行を被害者に加えたあと放置し、被害者が死に至るまでの間に何者か
により死期を若干数分程度早める暴行が加えられたのち、被害者は被告人の暴行に主に起因する傷害によって死に至っ
たというケースである。
︵ 1︶ 最 三 小 決 平 成 二 年 一 一 月 二 〇 日 刑 集 四 四 巻 八 号 八 三 七 頁。 次 の よ う な 判 示 が 示 さ れ た︵ 最 高 裁 判 所 ホ ー ム ペ ー ジ の P D F フ ァ イ ル に よ る。 以 下 同 じ ︶。 ﹁ な お、 原 判 決 及 び そ の 是 認 す る 第 一 審 判 決 の 認 定 に よ る と、 本 件 の 事 実 関 係 は、 以 下 の と お り で あ る。 す な わ ち、 被 告人 は、 昭 和 五 六 年 一 月 一 五 日 午 後 八 時 こ ろ か ら 午 後 九 時 こ ろ ま で の 間、 自 己 の 営 む 三 重 県 阿 山 郡 a 町 大 字 b 町 所 在 の 飯 場 に お い て、 洗 面 器 の 底 や 皮 バ ン ド で 本 件 被 害 者 の 頭 部 等 を 多 数 回 殴 打 す る な ど の 暴 行 を 加 え た 結 果、 恐 怖 心 に よ る 心 理 的 圧 迫 等 に よ っ て、 被 害 者 の 血 圧 を 上 昇 さ せ、 内 因 性 高 血 圧 性 橋 脳 出 血 を 発 生 さ せ て 意 識 消 失 状 態 に 陥 ら せ た 後、 同 人 を 大 阪 市 c 区 d 所 在 の 建 材 会 社 の 資 材 置 場 ま で 自 動 車 で 運 搬 し、 右 同 日 午 後 一 〇 時 四 〇 分 こ ろ、 同 所 に 放 置 し て 立 ち 去 っ た と こ ろ、 被 害 者 は、 翌 一 六 日 未 明、 内 因 性 高 血 圧 性 橋 脳 出 血 に よ り 死 亡 す る に 至 っ た。 と こ ろ で、 右 の 資 材 置 場 に お い て う つ 伏 せ の 状 態 で 倒 れ て い た 被 害 者 は、 そ の 生 存 中、 何 者 か に よ っ て 角 材 で そ の 頭 頂 部 を 数 回 殴 打 さ れ て い る が、 そ の 暴 行 は、 既 に 発 生 し て い た 内 因 性 高 血 圧 性 橋 脳 出 血 を 拡 大 さ せ、 幾 分 か 死 期 を 早 め る 影 響 を 与 え る ものであった、というのである。 こ の よ う に、 犯 人 の 暴 行 に よ り 被 害 者 の 死 因 と な っ た 傷 害 が 形 成 さ れ た 場 合 に は、 仮 に そ の 後 第 三 者 に よ り 加 え ら れ た 暴 行 に よ っ て 死 期 が 早 め ら れ た と し て も、 犯 人 の 暴 行 と 被 害 者 の 死 亡 と の 間 の 因 果 関 係 を 肯 定 す る こ と が で き、 本 件 に お い て 傷 害 致 死 罪 の 成 立 を 認 め た 原判断は、正当である。 ﹂と。
二
本決定の意義と矛盾
従来であれば早められた﹁死期﹂を基準として、発見されなかった介在暴行犯人の暴行こそが被害者の早められた具
体的な時点での死の結果を引き起こしたと評価されてきた。
なぜならば死とはまさに死期を早めることにほかならないからである。
大阪南港事件決定は、この介在暴行犯人が発見されなかったという事情を踏まえた上で、主たる死因を形成する暴行
を加えた被告人に死の結果を帰責する結論を認めた。この決定が示す直感的な妥当性は広く受け入れられたといってよ
いし、筆者もまた同様であった。
仮にこの介在暴行犯人が後に発見された場合、この犯人にも死の結果が重畳的に帰責されるのか、それともすでに死
の既遂結果は南港事件の被告人に帰された以上、もはや介在犯人に帰される余地はないのか、逆にこの介在犯人が先に
見つかっていた場合は既遂結果の帰責先に関する結論は反対となるのか、といったことはなんら明らかではない。
おそらく死を引き起こしたのは被告人の行為だという立論であるから、介在暴行者の暴行は死を引き起こしたもので
はないと反対解釈され、死の結果は帰責されないという方が理に適うだろう。
しかし思い出してもらいたいのだが、判例はこれまで因果関係を判断するに際して、原因は必ずしも主たるまたは唯
一の原因でなくてよいとしてきたはずである。そのような判断を示してきたこれまでの多くの判例とぜひ比較してみて
ほしい。そこでは主たる原因行為も従たる原因行為もどちらも起訴されうる、帰責されうるとされてきたはずである。
そ
う
だ
と
す
れ
ば
本
件
で
も、
主
た
る
原
因
だ
か
ら
で
は
な
く、
原
因
の
一
つ
だ
か
ら
因
果
関
係
が
あ
る
と
い
え
ば
済
ん
だ
は
ず
で
あ
り、また十分そのようにいえたであろう。先行行為もまた早められた具体的結果に対しても大いに寄与したように思わ
れるからである。おそらくただ﹁若干死期を早めた﹂という認定こそが頸木となって、従来の枠組をはみ出す結果を招
いたのではなかろうか。本来、判例の因果関係論においても、原因は主たるものである必要も唯一のものである必要も
なかったはずなのである。
ただ間違いなくいえることは、いずれにしてもこの南港事件の﹁死因﹂を基準にする判断がこれまでの﹁死期﹂を基
準
に
す
る
判
断
を
否
定
す
る
も
の
と
は
考
え
ら
れ
な
い
以
上、
い
わ
ば
異
な
る
基
準、
し
か
も
全
く
正
反
対
の
結
論
を
導
く
異
な
る
基
準
を、何らそれらを整合させる基準も場合分けの基準も示さないままに用いたのであるから、そこには明らかに矛盾が残
り、率直に言えば本決定は他の場合と矛盾する判断を行なったということである。
三
本決定の問題点
本
決
定
が
抱
え
る
問
題
点
は、
他
の
場
合
と
異
な
る
基
準
を
妥
当
さ
せ
た
点
で
矛
盾
が
あ
る、
と
い
う
ば
か
り
で
は
な
い。
そ
の﹁
死
因﹂を基準にした評価方法そのものが持つ問題点を指摘しなければならない。
本決定は結論の一見したところでの妥当性が広く受け入れられ、積極的な評価さえ与えられてきた。
しかしその結論の妥当性さえ疑わしい。
例えば不治の病により今夜には息を引き取ろうとしている患者の苦しむ姿にいたたまれなくなって、看護士が呼吸を
維持するためのチューブを外したというような場合、患者の主たる死因は病気によって引き起こされたものであり、看
護士の関与は病気による影響をわずかに拡大させ、死期を若干早めたに過ぎないものといわざるをえない。
南港事件決定の基準をあてはめれば看護士の行為はせいぜい暴行か傷害にとどまるということになるが、妥当である
とは思われない。
このように結論の妥当性さえ疑わしい南港事件決定の基準、人によっては行為が結果に実現したかといったような、
いずれにしても﹁死期﹂ではなく﹁死因﹂に主眼を置いた基準がどのような場合に利用可能なのか、そしてそれはどの
ような理由からかがまったく明らかでない状態のまま、最高裁判所が理由も示さず︵珍しいことではないが︶そのよう
な状態を作り出したのち何らの手当てもできないまま放置している状況︵無論最高裁は同種事案が上がってこないこと
には答えようがないのだが︶においては、検察官は並存する基準の便利な方を自由に使って訴因を形成し起訴すること
が可能であり、被告人・弁護人は並存する基準の両方に対応できるように防御を図りそのための準備を進めなければな
らない。
四
大阪南港事件の解決
では再び大阪南港事件の事案に立ち戻って考えてみよう。はたしてどのような結論こそが妥当なものだったのか。
被害者に発生した具体的な死はあくまで早められたその時点での死だったというほかない。死という構成要件該当結
果を抽象化することは決して許されないはずである。この抽象化を許した最高裁決定はこの点についても明確に理由を
説明する必要があった。
検視によってもはっきりと死期が特定できないが、訴因として十分なほど他の可能性や他の行為との関わりが排除さ
れているという状況であれば一定の曖昧な認定も許される余地があるだろう。
しかしここでは介在した角材による頭部殴打という暴行が引き起こす死の時点とそれがない場合の死の時点とは証拠
上もはっきりと区別され、異なる時点として事実認定されているのであり、全く抽象的・曖昧な認定を許すことのでき
る場合ではないのである。
この意味では南港事件決定は証拠に基づかずに、あるいは証拠と矛盾する判断をしたという違法をも犯しているとい
わざるをえない。
そ
し
て
こ
の
具
体
的
な
時
点
の
死
を
引
き
起
こ
し
た
の
は
間
違
い
な
く
介
在
暴
行
犯
人
だ
っ
た
の
で
あ
る
か
ら、
被
告
人
の
行
為
は
未
必
故
意
に
よ
る
殺
人
未
遂
が
立
証
さ
れ
え
な
い
と
い
う
の
で
あ
れ
ば、
︵
も
ち
ろ
ん
大
変
に
重
大
な
︶
傷
害
に
と
ど
ま
る
と
せ
ざ
る
を
え
な
かったのである。
五
主たる原因でなくてよい
先にも少し触れたが、判例はこれまでむしろ、因果関係を認めるのに、直接の原因でなくてよい、唯一の原因でなく
て
よ
い、
さ
ら
に
は
主
た
る
原
因
で
さ
え
な
く
て
よ
い、
間
接
の
あ
る
い
は
劣
勢
の
原
因
で
あ
っ
て
も
構
わ
な
い
と
し
て
き
た
の
で
は
な
かったか。
本決定のこの点に関する矛盾は決定的なものである。
被告人の暴行により全治三週間の加療を要するとして入院していた被害者が暴れたり勝手に外出するなどしたために
死亡したといったようなケー
ス
や、指導に従わずに海中ではぐれて死亡した潜水指導のケー
ス
なども、被害者自身に決
定的な落ち度があった場合には、もはや被告人らの行為は死期を早めるどころか、些細なきっかけを与えたに過ぎず、
何ら主たる死因を形成するものではないのであるから、既遂結果を帰責することは許されないはずである。そして一見
したところの妥当性という意味ではむしろそのような結論の方が常識に照らして妥当であり、これまで因果関係がほと
んど否定されえないと批判されてきたことからすれば、むしろ南港事件の﹁死因﹂基準を積極的にさらに拡大して適用
すべきものとして評価する余地さえあるかもしれない。
しかしそれは明確な基準や類型化などが精密になされた上でなければ、公平な裁判がなされているものとはいいえな
い。
また例えば、宿泊客のタバコの不始末が原因で出火したが、ホテルの側の防火設備、避難誘導等が不十分、未整備で
あったがために大きな被害が出たり、あるいは被害が拡大したというような場合︵ホテルニュー・ジャパン事件等︶で
は、主たる原因とははたしてどのようなものをいうのか、どのような基準で判断するのか、何をもって主たるものとい
うのかという難しい問題が残り、この曖昧さこそが﹁死因﹂基準をむしろこれまで積極評価してこなかったことの理由
だと考えられるのである。
無謀運転による交通事故で怪我を負わせたドライバーと、その後に介在した医師や看護士による医療ミスのどちらが
はたして主たるものであるのか、重大な医療ミスとそうでない場合とを分ける基準はいかなるものであるか、一般人な
ら通常予見できるような介在事情の場合でも因果関係は切れるのかどうか、こういった様々な場面や要素に関して、南
港事件が示した基準は何も説明していないのであり、単に﹁行為が結果に実現したかどうか﹂といった直感的な判断を
示したに過ぎないと批判せざるをえないのである。
︵ 2︶ 最 二 小 決 平 成 一 六 年 二 月 一 七 日 刑 集 五 八 巻 二 号 一 六 九 頁。 次 の よ う な 判 示 が な さ れ て い る。 す な わ ち﹁ 1 原 判 決 の 認 定 及 び 記 録 に よ る と、 本 件 傷 害 致 死 事 件 の 事 実 関 係 等 は、 次 の と お り で あ る。 ︵ 一 ︶ 被 告 人 は、 外 数 名 と 共 謀 の 上、 深 夜、 飲 食 店 街 の 路 上 で、 被 害 者 に 対 し、 そ の 頭 部 を ビ ー ル 瓶 で 殴 打 し た り、 足 蹴 に し た り す る な ど の 暴 行 を 加 え た 上、 共 犯 者 の 一 名 が 底 の 割 れ た ビ ー ル 瓶 で 被 害 者 の 後 頸 部 等 を 突 き 刺 す な ど し、 同 人 に 左 後 頸 部 刺 創 に よ る 左 後 頸 部 血 管 損 傷 等 の 傷 害 を 負 わ せ た。 被 害 者 の 負 っ た 左 後 頸 部 刺 創 は、 頸 椎 左 後 方 に 達 し、 深 頸 静 脈、 外 椎 骨 静 脈 沿 叢 な ど を 損 傷 し、 多 量 の 出 血 を 来 す も の で あ っ た。 ︵ 二 ︶ 被 害 者 は、 受 傷 後 直 ち に 知 人 の 運 転 す る 車 で 病 院 に 赴 い て 受 診 し、 翌 日 未 明 ま で に 止 血 の た め の 緊 急 手 術 を 受 け、 術 後、 い っ た ん は 容 体 が 安 定 し、 担 当 医 は、 加 療 期 間 に つ い て、 良 好 に 経 過 す れ ば、 約 3 週 間 と の 見 通 し を 持 っ た。 ︵ 三 ︶ し か し、 そ の 日 の う ち に、 被 害 者 の 容 体 が 急 変 し、 他 の 病 院 に 転 院 し た が、 事 件 の 5 日 後 に 上 記 左 後 頸 部 刺 創 に 基 づ く 頭 部 循 環 障 害 に よ る 脳 機 能 障 害 に よ り 死 亡 し た。 ︵ 四 ︶ 被 告 人 は、 原 審 公 判 廷 に お い て、 上 記 容 体 急 変 の 直前、 被 害 者 が 無 断 退 院 し よ う と し て、 体 か ら 治 療 用 の 管 を 抜 く な ど し て 暴 れ、 そ れ が 原 因 で 容 体 が 悪 化 し た と 聞 い て い る 旨 述 べ て い る と こ ろ、 被 害 者 が 医 師 の 指 示 に 従 わ ず 安 静 に 努 め な か っ た こ と が 治 療 の 効 果 を 減 殺 し た 可 能 性 が あ る こ と は、 記 録 上 否 定 す る こ と が で き な い。 2 ︻ 要 旨 ︼ 以 上 の よ う な 事 実 関 係 等 に よ れ ば、 被 告 人 ら の 行 為 に よ り 被 害 者 の 受 け た 前 記 の 傷 害 は、 そ れ 自 体 死 亡 の 結 果 を も た ら し 得 る 身 体 の 損 傷 で あ っ て、 仮 に 被 害 者 の 死 亡 の 結 果 発 生 ま で の 間 に、 上 記 の よ う に 被 害 者 が 医 師 の 指 示 に 従 わ ず 安 静 に 努 め な か っ た た め に 治 療 の 効 果 が 上 が ら な か っ た と い う 事 情 が 介 在 し て い た と し て も、 被 告 人 ら の 暴 行 に よ る 傷 害 と 被 害 者 の 死 亡 と の 間 に は 因 果 関 係 が あ るというべきであり、本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。 ﹂と。 ︵ 3︶ 最 一 小 決 平 成 四 年 一 二 月 一 七 日 刑 集 四 六 巻 九 号 六 八 三 頁。 次 の よ う に 判 示 さ れ た。 ﹁ な お、 所 論 に か ん が み、 被 告 人 の 過 失 行 為 と 被 害 者 の死亡という結果との間の因果関係につき、職権により判断する。 一 本 件 の 事 実 関 係 は、 原 判 決 及 び そ の 是 認 す る 第 一 審 判 決 の 認 定 に よ る と、 次 の と お り で あ る。 1 被 告 人 は、 ス キ ュ ー バ ダ イ ビ ン グ の 資 格 認 定 団 体 か ら 認 定 を 受 け た 潜 水 指 導 者 と し て、 潜 水 講 習 の 受 講 生 に 対 す る 潜 水 技 術 の 指 導 業 務 に 従 事 し て い た 者 で あ る が、 昭 和 六 三 年 五 月 四 日 午 後 九 時 こ ろ、 和 歌 山 県 a 町 の 海 岸 近 く の 海 中 に お い て、 指 導 補 助 者 三 名 を 指 揮 し な が ら、 本 件 被 害 者 を 含 む 六 名 の 受 講 生 に 対 し て 圧 縮 空 気 タ ン ク な ど の ア ク ア ラ ン グ 機 材 を 使 用 し て 行 う 夜 間 潜 水 の 講 習 指 導 を 実 施 し た。 当 時 海 中 は 夜 間 で あ る こ と や そ れ ま で の 降 雨 の た め 視 界 が 悪 く、 海 上 で は 風 速 四 メ ー ト ル 前 後 の 風 が 吹 き 続 け て い た。 被 告 人 は、 受 講 生 二 名 ご と に 指 導 補 助 者 一 名 を 配 し て 各 担 当 の 受 講 生 を 監 視 す る よ う に 指 示 し た 上、 一 団 と な っ て 潜 水 を 開 始 し、 一 〇 〇 メ ー ト ル 余 り 前 進 し た 地 点 で 魚 を 捕 え て 受 講 生 ら に 見 せ た 後、 再 び 移 動 を 開 始 し た が、 そ の 際、 受 講 生 ら が そ の ま ま 自 分 に つ い て く る も の と 考 え、 指 導 補 助 者 ら に も 特 別 の 指 示 を 与 え る こ と な く、 後 方 を 確 認 し な い ま ま 前 進 し、 後 ろ を 振 り 返 っ た と こ ろ、 指 導 補 助 者 二 名 し か 追 従 し て い な い こ と に 気 付 き、 移 動 開 始 地 点 に 戻 っ た。 こ の 間、 他 の 指 導 補 助 者 一 名 と 受 講 生 六 名 は、 逃 げ た 魚 に 気 を と ら れ て い た た め 被 告 人 の 移 動 に 気 付 か ず に そ の 場 に 取 り 残 さ れ、 海 中 の う ね り の よ う な 流 れ に よ り 沖 の 方 に 流 さ れ た 上、 右 指 導 補 助 者 が 被 告 人 を 探 し 求 め て 沖 に 向 か っ て 水 中 移 動 を 行 い、 受 講 生 ら も こ れ に 追 随 し た こ と か ら、 移 動 開 始 地 点 に 引 き 返 し た 被 告 人 は、 受 講 生 ら の 姿 を 発 見 で き ず、 こ れ を 見 失 う に 至 っ た。 右 指 導 補 助 者 は、 受 講 生 ら と 共 に 沖 へ 数 十 メ ー ト ル 水 中 移 動 を 行 い、 被 害 者 の 圧 縮 空 気 タ ン ク 内 の 空 気 残 圧 量 が 少 な く な っ て い る こ と を 確 認 し て、 い っ た ん 海 上 に 浮 上 し た も の の、 風 波 の た め 水 面 移 動 が 困 難 で あ る と し て、 受 講 生 ら に 再 び 水 中 移 動 を 指 示 し、 こ れ に 従 っ た 被 害 者 は、 水 中 移 動 中 に 空 気 を 使 い 果 た し て 恐 慌 状 態 に 陥 り、 自 ら 適 切 な 措 置 を 採 る こ と が で き な い ま ま に、 で き 死 す る に 至 っ た。 2 右 受 講 生 六 名 は、 い ず れ も 前 記 資 格 認 定 団 体 に お け る 四 回 程 度 の 潜 水 訓 練 と 講 義 を 受 け る こ と に よ っ て 取 得 で き る 資 格 を 有 し て い て、 潜 水 中 圧 縮 空 気 タ ン ク 内 の 空 気 残 圧 量 を 頻 繁 に 確 認 し、 空 気 残 圧 量 が 少 な く な っ た と き は 海 上 に 浮 上 す べ き こ と 等 の 注 意 事 項 は 一 応 教 え ら れ て は い た が、 ま だ 初 心 者 の 域 に あ っ て、 潜 水 の 知 識、 技 術 を 常 に 生 か せ る と は 限 ら ず、 こ と に 夜 間 潜 水 は、 視 界 が 悪 く、 不 安 感 や 恐 怖 感 が 助 長 さ れ る た め、
圧 縮 空 気 タ ン ク 内 の 空 気 を 通 常 よ り 多 量 に 消 費 し、 指 導 者 か ら の 適 切 な 指 示、 誘 導 が な け れ ば、 漫 然 と 空 気 を 消 費 し て し ま い、 空 気 残 圧 が な く な っ た 際 に、 単 独 で は 適 切 な 措 置 を 講 ぜ ら れ な い お そ れ が あ っ た。 特 に 被 害 者 は、 受 講 生 ら の 中 で も、 潜 水 経 験 に 乏 し く 技 術 が 未 熟 で あ っ て、 夜 間 潜 水 も 初 め て で あ る 上、 潜 水 中 の 空 気 消 費 量 が 他 の 受 講 生 よ り 多 く、 こ の こ と は、 被 告 人 も そ れ ま で の 講 習 指 導 を 通 じ て 認 識 し て い た。 ま た、 指 導 補 助 者 ら も、 い ず れ も ス キ ュ ー バ ダ イ ビ ン グ に お け る 上 級 者 の 資 格 を 有 す る も の の、 更 に 上 位 の 資 格 を 取 得 す る た め に 本 件 講 習 に 参 加 し て い た も の で、 指 導 補 助 者 と し て の 経 験 は 極 め て 浅 く、 潜 水 指 導 の 技 能 を 十 分 習 得 し て お ら ず、 夜 間 潜 水 の 経 験 も 二、 三 回 し か な い 上、 被 告 人 か ら は、 受 講 生 と 共 に、 海 中 で は ぐ れ た 場 合 に は 海 上 に 浮 上 し て 待 機 す る よ う に と の 一 般 的 注 意 を 受 け ていた以外には、各担当の受講生二名を監視することを指示されていたのみで、それ以上に具体的な指示は与えられていなかった。 二 右 事 実 関 係 の 下 に お い て は、 被 告 人 が、 夜 間 潜 水 の 講 習 指 導 中、 受 講 生 ら の 動 向 に 注 意 す る こ と な く 不 用 意 に 移 動 し て 受 講 生 ら の そ ば か ら 離 れ、 同 人 ら を 見 失 う に 至 っ た 行 為 は、 そ れ 自 体 が、 指 導 者 か ら の 適 切 な 指 示、 誘 導 が な け れ ば 事 態 に 適 応 し た 措 置 を 講 ず る こ と が で き な い お そ れ が あ っ た 被 害 者 を し て、 海 中 で 空 気 を 使 い 果 た し、 ひ い て は 適 切 な 措 置 を 講 ず る こ と も で き な い ま ま に、 で き 死 さ せ る 結 果 を 引 き 起 こ し か ね な い 危 険 性 を 持 つ も の で あ り、 被 告 人 を 見 失 っ た 後 の 指 導 補 助 者 及 び 被 害 者 に 適 切 を 欠 く 行 動 が あ っ た こ と は 否 定 で き な い が、 そ れ は 被 告 人 の 右 行 為 か ら 誘 発 さ れ た も の で あ っ て、 被 告 人 の 行 為 と 被 害 者 の 死 亡 と の 間 の 因 果 関 係 を 肯 定 す る に 妨 げ な い と い う べ き で あ る。 右 因 果 関 係 を 肯 定 し、 被 告 人 に つ き 業 務 上 過 失 致 死 罪 の 成 立 を 認 め た 原 判 断 は、 正 当 と し て 是 認 す る こ と が で き る。 ﹂と。
六
結語
相当因果関係説は先にも述べたとおり、因果関係が否定されることは実際上ほとんどないと批判されてきた。
そうであると同時に、因果関係をある程度広く認めるという実践上、実務上の意義が積極的に評価される余地もあっ
た。
そ
れ
は
特
に
偶
然
的
な
介
在
事
情
の
介
入
に
よ
り、
先
行
す
る
行
為
へ
の
帰
責
を
否
定
し
な
い
た
め
に
は
比
較
的
広
く
認
め
る
必
要
が
あったのではないかと思われる。
しかし実際のところ、この点に関しては従来の相当説によっても南港事件の基準によっても違いは生じていないもの
と思われる。というのも、行為が結果に実現したかどうかという基準もまた必ずしも主たる原因性を要求するものでは
なかったからである。相俟って結果に実現していれば足りると捉えれば、この基準もまた広汎性を獲得する。よって因
果関係の限定作用は認められず、認められたとすればそれは恣意的な感覚的な判断でしかない。
高速道路に駐車させた
り
、車のトランクに人を閉じ込めた
り
、高速道路に逃げ込まざるをえなくなるまで暴行を加え
た
り
した先行行為者たちへの十分な帰責のために、間接的ないし並存的な原因に対して既遂結果を帰することは、南港
事件決定の基準によっても容易に行なえるのである。
無論、一般人ならば予見可能かどうかという判断基底の判断基準も経験的な基準に過ぎず、決して明確でも客観的で
もない、ともいえよう。
しかし主たる原因はなにかという基準の曖昧さと比較したときには、なお相当説に分があるように思われる。そして
相当説は原因説を克服して登場した説ではなかったか。
機能する余地の少ないとされてきた相当説は、本件大阪南港事件ではむしろ強く、決定的に機能しえたはずだった。
どのように機能しえたのか。
一般人により通常予見できないような異常な介在的暴行が偶然に介入したことにより、特定時点の具体的に画定され
た本件の死について被告人の行為との間の因果関係は否定され、最終的な死の結果を帰属されるべき暴行の行為者は発
見に至らず、被告人は死を引き起こしたに等しい傷害行為について重い刑事責任に問われる、との結論が導かれたはず
であっただろう。
しかし本決定はそのような結論を見出さず、当該死の結果を引き起こしたものではない被告人の傷害行為との間に因
果関係が認められると理由を付さずに強弁し、既遂の結果を負わせたのである。
︵ 4︶ 最 三 小 決 平 成 一 六 年 一 〇 月 一 九 日 刑 集 五 八 巻 七 号 六 四 五 頁。 次 の よ う に 判 示 さ れ て い る。 す な わ ち﹁ 1 原 判 決 及 び そ の 是 認 す る 第 一 審判決によれば、本件の事実関係は、次のとおりである。 ︵ 一 ︶ 被 告 人 は、 平 成 一 四 年 一 月 一 二 日 午 前 六 時 少 し 前 こ ろ、 知 人 女 性 を 助 手 席 に 乗 せ、 普 通 乗 用 自 動 車︵ 以 下﹁ 被 告 人 車 ﹂ と い う。 ︶ を 運 転 し て、 高 速 自 動 車 国 道 a 自 動 車 道 下 り 線︵ 片 側 三 車 線 道 路 ︶ を b 方 面 か ら c 方 面 に 向 け て 走 行 し て い た が、 大 型 ト レ ー ラ ー︵ 以 下 ﹃ A 車 ﹄ と い う。 ︶ を 運 転 し、 同 方 向 に 進 行 し て い た A の 運 転 態 度 に 立 腹 し、 A 車 を 停 止 さ せ て A に 文 句 を 言 い、 自 分 や 同 乗 女 性 に 謝 罪 さ せ よ う と 考 え た。 ︵ 二 ︶ 被 告 人 は、 パ ッ シ ン グ を し た り、 ウ ィ ン カ ー を 点 滅 さ せ た り、 A 車 と 併 走 し な が ら 幅 寄 せ を し た り、 窓 か ら 右 手 を 出 し た り、 A 車 の 前 方 に 進 入 し て 速 度 を 落 と し た り し て、 A に 停 止 す る よ う 求 め た。 こ れ に 対 し、 A は、 当 初 は 車 線 変 更 を す る な ど し て 被 告 人 と 争 い に な る の を 避 け よ う と し て い た も の の、 被 告 人 が 執 よ う に 停 止 を 求 め て く る の で、 相 手 か ら 話 を 聞 こ う と 考 え る に 至 り、 被 告 人 車 の 減 速 に 合 わ せ て 減 速 し、 午 前 六 時 こ ろ、 被 告 人 が 同 道 路 d 起 点 二 八. 八 キ ロ ポ ス ト 付 近 の 第 三 通 行 帯 に 自 車 を 停 止 さ せ る と、 A も 被 告 人 車 の 後 方 約 五. 五 m の 地 点 に 自 車 を 停 止 さ せ た。 な お、 当 時 は 夜 明 け 前 で、 現 場 付 近 は 照 明 設 備 の な い 暗 い 場 所 で あ り、 相 応 の 交 通 量 が あ っ た。 ︵ 三 ︶ 被 告 人 は、 降 車 し て A 車 ま で 歩 い て 行 き、 同 車 の 運 転 席 ド ア 付 近 で、 ﹃ ト レ ー ラ ー の 運 転 手 の く せ に。 謝 れ。 ﹄ な ど と 怒 鳴 っ た。 A が、 運 転 席 ド ア を 少 し 開 け た と こ ろ、 被 告 人 は、 ド ア を 開 け て ス テ ッ プ に 上 が り、 エ ン ジ ン キ ー に 手 を 伸 ば し た り、 ド ア の 内 側 に 入 っ て A の 顔 面 を 手 け ん で 殴 打 し た り し た た め、 A は、 被 告 人 に エ ン ジ ン キ ー を 取 り 上 げ ら れ る こ と を 恐 れ、 こ れ を 自 車 の キ ー ボ ッ ク ス か ら 抜 い て、 ズ ボ ン の ポ ケ ッ ト に 入 れ た。 ︵ 四 ︶ そ れ か ら、 被 告 人 は、 ﹃ 女 に 謝 れ。 ﹄ と 言 っ て、 A を 運 転 席 か ら 路 上 に 引 き ず り 降 ろ し、 自 車 ま で 引 っ 張 っ て 行 っ た。 A が、 被 告 人 車 の 同 乗 女 性 に 謝 罪 の 言 葉 を 言 う と、 被 告 人 は、 A の 腰 部 等 を 足 げ り し、 更 に 殴 り か か っ て き た の で、 A は、 被 告 人 に 対 し、 顔 面 に 頭 突 き を し た り、 鼻 の 上 辺 り を 殴 打 し た り す る な ど の 反 撃 を 加 え た。 ︵ 五 ︶ 被 告 人 が 上 記 暴 行 を 加 え て い た 午 前 6 時 7 分 こ ろ、 本 件 現 場 付 近 道 路 の 第 三 通 行 帯 を 進 行 し て い た B 運 転 の 普 通 乗 用 自 動 車︵ 以 下﹃ B 車 ﹄ と い う。 ︶ 及 び C 運 転 の 普 通 乗 用 自 動 車︵ 以 下﹃ C 車 ﹄ と い う。 ︶ は、 A 車 を 避 け よ う と し て 第 二 通 行 帯 に 車 線 変 更 し た が、 C 車 が B 車 に 追 突 し た た め、 C 車 は 第 3 通 行 帯 上 の A 車 の 前 方 約 一 七. 四 m の 地 点 に、 B 車 は C 車 の 前 方 約 四. 九 m の 地 点 に、 そ れ ぞ れ 停 止 し た。 ︵ 六 ︶ C 車 か ら 同 乗 者 の D 及 び E︵ 以 下﹃ D ら ﹄ と い う。 ︶ が 降 車 し た の で、 被 告 人 は、 暴 行 を や め て 携 帯 電 話 で 友 人 に 電 話 を か け、 A は、 自 車 に 戻 っ て 携 帯電 話 で 被 告 人 に 殴 ら れ た こ と 等 を 1 1 0 番 通 報 し た。 ︵ 七 ︶ そ れ か ら、 被 告 人 は、 D ら に 近 づ い て 声 を 掛 け、 A 車 の 所 に 共 に 歩 い て 行 っ た が、 A は、 D ら を 被 告 人 の 仲 間 と 思 い、 D ら か ら 声 を 掛 け ら れ て も 無 言 で 運 転 席 に 座 っ て い た。 ︵ 八 ︶ 被 告 人 は、 午 前 六 時 一 七、 一 八 分 こ ろ、 同 乗 女 性 に 自 車 を 運 転 さ せ、 第 二 通 行 帯 に 車 線 変 更 し て、 本 件 現 場 か ら 走 り 去 っ た。 ︵ 九 ︶ A は、 自 車 を 発 車 さ せ よ う と し た も の の、 エ ン ジ ン キ ー が 見 付 か ら な か っ た た め、 暴 行 を 受 け た 際 に 被 告 人 に 投 棄 さ れ た も の と 勘 違 い し て、 再 び 一 一 〇 番 通 報 し た り、 再 度 近 付 い て き た D ら と 共 に 付 近 を 捜 し た り し た が、 結 局、 そ れ が 自 分 の ズ ボ ン の ポ ケ ッ ト に 入 っ て い た の を 発 見 し、 自 車 の エ ン ジ ン を 始 動 さ せ た。 ︵ 一 〇 ︶ と こ ろ が、 A は、 前 方 に C 車 と B 車 が 停 止 し て い た た め、 自 車 を 第 三 通 行 帯 で 十 分 に 加 速 し、 安 全 に 発 進 さ せ る こ と が で き な い と 判 断 し、 C 車 と B 車 に 進 路 を 空 け る よ う 依 頼 し よ う と し て、 再 び 自 車 か ら 降 車 し、 C 車 に 向 か っ て 歩 き 始 め た 午 前 六 時 二 五 分 こ ろ、 停 止 中 の A 車 後 部 に、 同 通 行 帯 を b 方 面 か ら c 方 面 に 向 け 進 行 し て き た 普 通 乗 用 自 動 車 が 衝 突 し、 同 車 の 運 転 者 及 び 同 乗 者 三 名 が 死 亡し、同乗者一名が全治約三か月の重傷を負うという本件事故が発生した。 2︻ 要 旨 ︼ 以 上 に よ れ ば、 A に 文 句 を 言 い 謝 罪 さ せ る た め、 夜 明 け 前 の 暗 い 高 速 道 路 の 第 三 通 行 帯 上 に 自 車 及 び A 車 を 停 止 さ せ た と い う 被 告 人 の 本 件 過 失 行 為 は、 そ れ 自 体 に お い て 後 続 車 の 追 突 等 に よ る 人 身 事 故 に つ な が る 重 大 な 危 険 性 を 有 し て い た と い う べ き で あ る。 そ し て、 本 件 事 故 は、 被 告 人 の 上 記 過 失 行 為 の 後、 A が、 自 ら エ ン ジ ン キ ー を ズ ボ ン の ポ ケ ッ ト に 入 れ た こ と を 失 念 し 周 囲 を 捜 す な ど し て、 被 告 人 車 が 本 件 現 場 を 走 り 去 っ て か ら 七、 八 分 後 ま で、 危 険 な 本 件 現 場 に 自 車 を 停 止 さ せ 続 け た こ と な ど、 少 な か ら ぬ 他 人 の 行 動 等 が 介 在 し て 発 生 し た も の で あ る が、 そ れ ら は 被 告 人 の 上 記 過 失 行 為 及 び こ れ と 密 接 に 関 連 し て さ れ た 一 連 の 暴 行 等 に 誘 発 さ れ た も の で あ っ た と い え る。 そ う す る と、 被 告 人 の 過 失 行 為 と 被 害 者 ら の 死 傷 と の 間 に は 因 果 関 係 が あ る と い う べ き で あ る か ら、 こ れ と 同 旨 の 原 判 断 は 正当である。 ﹂と。 ︵ 5︶ 最 一 小 決 平 成 一 八 年 三 月 二 七 日 刑 集 六 〇 巻 三 号 三 八 二 頁。 次 の よ う に 判 示 が な さ れ た。 ﹁ 1 原 判 決 及 び そ の 是 認 す る 第 1 審 判 決 の 認 定 に よ れ ば、 本 件 の 事 実 関 係 は、 次 の と お り で あ る。 ︵ 一 ︶ 被 告 人 は、 二 名 と 共 謀 の 上、 平 成 一 六 年 三 月 六 日 午 前 三 時 四 〇 分 こ ろ、 普 通 乗 用 自 動 車 後 部 の ト ラ ン ク 内 に 被 害 者 を 押 し 込 み、 ト ラ ン ク カ バ ー を 閉 め て 脱 出 不 能 に し 同 車 を 発 進 走 行 さ せ た 後、 呼 び 出 し た 知 人 ら と 合 流 す る た め、 大 阪 府 岸 和 田 市 内 の 路 上 で 停 車 し た。 そ の 停 車 し た 地 点 は、 車 道 の 幅 員 が 約 七. 五 m の 片 側 一 車 線 の ほ ぼ 直 線 の 見 通 し の よ い 道 路 上 で あ っ た。 ︵ 二 ︶ 上 記 車 両 が 停 車 し て 数 分 後 の 同 日 午 前 三 時 五 〇 分 こ ろ、 後 方 か ら 普 通 乗 用 自 動 車 が 走 行 し て き た が、 そ の 運 転 者 は 前 方 不 注 意 の た め に、 停 車 中 の 上 記 車 両 に 至 近 距 離 に 至 る ま で 気 付 か ず、 同 車 の ほ ぼ 真 後 ろ か ら 時 速 約 六 〇 ㎞ で そ の 後 部 に 追 突 し た。 こ れ に よ っ て 同 車 後 部 の ト ラ ン ク は、 そ の 中 央 部 が へ こ み、 ト ラ ン ク 内 に 押 し 込 ま れ て い た 被 害 者 は、 第 二・ 第 三 頸 髄 挫 傷 の 傷 害 を 負 っ て、間もなく同傷害により死亡した。 2 以 上 の 事 実 関 係 の 下 に お い て は、 被 害 者 の 死 亡 原 因 が 直 接 的 に は 追 突 事 故 を 起 こ し た 第 三 者 の 甚 だ し い 過 失 行 為 に あ る と し て も、
道 路 上 で 停 車 中 の 普 通 乗 用 自 動 車 後 部 の ト ラ ン ク 内 に 被 害 者 を 監 禁 し た 本 件 監 禁 行 為 と 被 害 者 の 死 亡 と の 間 の 因 果 関 係 を 肯 定 す る こ と が できる。したがって、本件において逮捕監禁致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。 ﹂と。 ︵ 6︶ 最 二 小 決 平 成 一 五 年 七 月 一 六 日 刑 集 五 七 巻 七 号 九 五 〇 頁。 次 の よ う な 判 示 が な さ れ た。 す な わ ち、 ﹁ な お、 所 論 に か ん が み、 職 権 に よ り 判断する。 1 原 判 決 の 認 定 に よ る と、 本 件 の 事 実 関 係 は、 次 の と お り で あ る。 ︵ 一 ︶ 被 告 人 四 名 は、 他 の 二 名 と 共 謀 の 上、 被 害 者 に 対 し、 公 園 に お い て、 深 夜 約 二 時 間 一 〇 分 に わ た り、 間 断 な く 極 め て 激 し い 暴 行 を 繰 り 返 し、 引 き 続 き、 マ ン シ ョ ン 居 室 に お い て、 約 四 五 分 間、 断 続 的 に 同 様 の 暴 行 を 加 え た。 ︵ 二 ︶ 被 害 者 は、 す き を み て、 上 記 マ ン シ ョ ン 居 室 か ら 靴 下 履 き の ま ま 逃 走 し た が、 被 告 人 ら に 対 し 極 度 の 恐 怖 感 を 抱 き、 逃 走 を 開 始 し て か ら 約 一 〇 分 後、 被 告 人 ら に よ る 追 跡 か ら 逃 れ る た め、 上 記 マ ン シ ョ ン か ら 約 七 六 三 m な い し 約 八 一 〇 m 離 れ た高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、後続の自動車にれき過されて、死亡した。 2 ︻ 要 旨 ︼ 以 上 の 事 実 関 係 の 下 に お い て は、 被 害 者 が 逃 走 し よ う と し て 高 速 道 路 に 進 入 し た こ と は、 そ れ 自 体 極 め て 危 険 な 行 為 で あ る と い う ほ か な い が、 被 害 者 は、 被 告 人 ら か ら 長 時 間 激 し く か つ 執 よ う な 暴 行 を 受 け、 被 告 人 ら に 対 し 極 度 の 恐 怖 感 を 抱 き、 必 死 に 逃 走 を 図 る 過 程 で、 と っ さ に そ の よ う な 行 動 を 選 択 し た も の と 認 め ら れ、 そ の 行 動 が、 被 告 人 ら の 暴 行 か ら 逃 れ る 方 法 と し て、 著 し く 不 自 然、 不 相 当 で あ っ た と は い え な い。 そ う す る と、 被 害 者 が 高 速 道 路 に 進 入 し て 死 亡 し た の は、 被 告 人 ら の 暴 行 に 起 因 す る も の と 評 価 す る こ と ができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。 ﹂と。