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無限離散群の幾何学的研究

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(1)

無限離散群の幾何学的研究

著者

藤原 耕二

(2)

無限離散群の幾何学的研究

(課題番号14540055)

平成14年度∼平成16年度

科学研究費補助金

基盤研究(C)(2)

研究成果報告書

平成17年3月

研究代表者藤原耕二

(東北大学大学院理学研究科助参凍)

(3)

無限離散群の幾何学的研究

(課題番号14540055)

平成14年度∼平成16年度

科学研究費補助金

基盤研究(C)(2)

研究成果報告書

平成17年3月

研究代表者藤原耕二

(東北大学大学院理学研究科)

(4)

1 はしがき

これは、 「無限離散群の幾何学的研究」 (科学研究費神助金 基盤研究 (C)(2),平成14年度∼平成16年度,課題番号14540055)の研究成果報告 書である。 本研究は、 「幾何学的群論」と呼ばれる分野における諸問題に取り組む ことを目的とした、総合的な研究である。 幾何学的群論は、 Gromovの先駆的な仕事をきっかけに、最近15年く らい、アメリカ、ヨーロッパで活発な研究が行われている。古典的な級 み合わせ群論、双曲幾何学、 3次元多様体論、写像類群の理論など様々な 分野のテクニック、結果が交錯するダイナミックな分野でもある。 しかしながら、日本においては幾何学的群論の研究は活発とは言えな い。この3年間の研究で、日本における幾何学的群論の研究活動のスター トになることも目的とし、一定の成果が出たと考える。 2005.3.7. 研究代表者 藤原耕二

(5)

2 研究組織

研究代表者:藤原 耕二(東北大学 大学院理学研究科) 研究分担者:塩谷 隆 (東北大学 大学院理学研究科)

3 交付決定額

(単位:千円) 平成14年度: 1700 平成15年度: 1200 平成16年度: 1200 総計: 4100

(6)

4 研究発表

4.1 論文 藤原 耕二

1. K. Fbjiwara, K. Ohshika, The second bounded cohomology of

3-manifold groups, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 38 (2002), no. 2,

347-354.

2. K.Fbjiwara, T.Soma, Bounded classes in the cohomology of mani-folds, Geon. Dedicata. 92, 73-85, 2002.

3. M.Bestvina, K.Fujiwara, Bounded cohomology of subgroups of

map-ping class groups. Geometryand Topology, Volume 6 (2002) 69-89.

4. K.Fhjiwara, On the outer automorphism group of a. hyperbolic group.

Israel I of Math.131, (2002) 277-284.

5. K.Fhjiwara, T.Shioya, S.Yamagata. Parabolic isometries of CAT(0) spacesand CAT(0)-dimensions. Algebraic and geometric topology・

4.(2004) 861-891.

塩谷 隆

1. K. Fhjiwara, T. Shioya,and K. Nagano, Fixed point sets of para,bolic isonetries of CAT (0)-spaces, preprint・

2. T. Yamaguchiand T. Shioya, Volume collapsed three-mamifolds with

a lower curvature bound, preprint..

3. K. Fbjiwara, T. Shioya,and S. Yamagata・, Parabolic isometries of

CAT(0) spacesand CAT(0)-dimensions・AlgebraiCand geometric topology. 4 (2004) 861-891.

4. T. Shioya, Behavior of distant maximalgeodesics infimitely con-nected complete two-dimensionalRiemanniannanifolds. II. Geom. Dedicata 103 (2004), 1-32.

5・ K. Kuwaeand T. Shioya, Sobolevand Dirichlet spaces over maps

between metric spaces, J・ Reine AngeW・ Math・ 555 (2003), 39-751

6・ K・ Kuwaeand T. Shioya, Convergence of SpeCtralStructures: a functionalanalytic theory and its applications to spectralgeometry,

(7)

4.2 口頭発表

藤原 耕二

1. 2002/8/13. "Qua鮎i-homomorphisms on groups acting on CAT(0)

spaces" ・ Geometric Topology, Satenite conference of ICM 2002, Aug 12-16, Shaanxi NormalUniv, Xian, China. Specialsession on ge0-metric group theory and related topics・

2. 2002/10/19.双曲幾何と幾何学的群論。中央大。 Encou血er with Math

「双曲幾何」。

3. 2002/10/28-ll/1.北大。集中講義「幾何学的群論入門」0

4. 2002/12/15・ lst JAMS meeting "Discrete Analysis and related

top-ics" Quasi-homomorphisms on grollpS acting on CAT(0) spaces・ 5. 2003/1/14-17.東工大、大学院情報科学。集中講義「幾何学的群論の

入門」。

6. 2003/2/20.筑波大、 「空間収束と特異空間」 、 "Rmk-1 isometry of

CAT(0) spaces''.

7, 2003/6/9. "Parabolic isometries on CAT(0) spaces" ・ ParkCity, Utah・"The

Cannon Fest. The WaBatCh Tbpology conference''・

8. 2003/7/1. "Parabohc isometries on CAT(0) spaces" ・ Geometry Sem-inar, Tohoku University.

9. 2003/7/20.幾何の群論への応用「群のCAT(0)次元」 ・トポロジー

シンポジウム。松本。

10. 2003/9/14.例でみるCAT(0)空間への群作用。九重幾何学集会o

ll. 2003.10.29.双曲幾何と離散群. Surveys in Geometry, special edition

(落合卓四郎先生還暦記念).東大.

12.2003.ll.14. 「例で見る非正曲率空間への群作用」.集会「リーマン

面と不連続群」 ,山形大.

13. 2003.12.ll."CAT(0)空間-の群作用".双曲空間に関連する研究とそ

の展望ⅠⅠ、京大数理研。

14・ 2004・1・6. "CAT(0) dimension of groups"・ Brooks memorialconfer-ence. Technion, Haifa, Israel.

15・ 2004・1・14・ "CAT(0) dimension of grollpS" COE workshop on coarse geometry and geometric group theory, Kyoto.

16. 2004.1.18-20. "Topics in geometric group theory 1,2,3". COE school on coarse geometry and geometric group theory, Kyoto.

(8)

A Conference on Geometric Group Theory Bedlewo conference

cen-ter, Poland.

18. 2004.6.4. "CAT(0)空間の等長変換"九大幾何セミナー。

19. 2004.9.30. "Parabolic isometries of CAT(0) spaces" I Geometry sem-inar, Univ of Lille.

20・ 2004.10.5. "CAT(0) dimension of discrete groups" ・Algebra seminar,

Univ of Caen.

21. 2004.10.26.カープ複体の写像類群への応用、東工大、位相幾何セ

ミナー。

22. 2004.12.面積の話、宮城第-女子高、理数科講演会。

23. 2005.3. 18. ProdllCing quasi-homomorphisms using hyperbolicity. Con-ference " Bouhded Cohomology, Harmomic Ma.psand Higgs Bundles" , U of StraBbourgand U of Basel.

24・ 2005.3・21. CAT(0) dimension of groups. Topology seminar, U of StraBb otlrg.

塩谷 隆

1. Geometry and analysis on Alexan血ov spaces, `Geometric Analysis and Singular Spaces', Oberwolfach, Germany, 2002年6月7日.

2・ VariahionalConvergence over Hadanard spaces, 'Russian-German

Geometry Meeting 2002', Ruler hstitute, Russia, 2002年6月21日.

3.アダマール空間上の幾何と解析,集中講義,茨城大学,2002年7月2 日∼5日.

4.アダマール空間上の変分収束,筑波大学幾何セミナー, 2002年10月8

日.

5. VariationalConvergence over Hadamard spaces,九州大学幾何セミ ナー,2002年10月11日.

6・ Conapslng Of warped product spacesand one-dimensionaldiffusion proceSSeS,東京確率論セミナー,東京工業大学, 2002年11月25日. 7. Collapsing with a lower curvature bound, `Ricci Flowand

Geometri2;a-tion of3-manifolds', MSRI, 2003年12月17日,招待講演.

8. CAT(0)空間上の放物的等長変換, 「測地線及び関連する諸問題」 ,岡

山大学, 2004年1月9日.

9. Collapsing of warped product spacesand one-dimensionaldiffusion processes, 「大域解析学とその周辺(Global Analysis and Related lbp-ics)」 ,東北大学情報学研究科, 2004年1月31日.

(9)

10.曲率積分が有界な二次元リーマン多様体の極限空間, 「Hodge理論, 退化複素曲面の代数幾何とトポロジー」 ,東北学院大学工学部(多 賀城キャンパス) ,2004年3月18日・ ll. CAT(0)空間上の放物的等長変換,筑波大学幾何セミナー, 2004年4 月27日. 12. CAT(0)空間上の放物的等長変換の固定点集合,東北大学幾何セミ ナー, 2004年5月11日.

13. Collapsing three-manifolds with a lower curvattue bound, `Collapsing

and metric geometry', M也ster, Germany, 2004年8月5日・

14. Ge.metric variationalConvergence over metric spaces, 「東工大微分

幾何研究集会」 ,東京工業大学, 2004年12月5日・

15. Geometric v打iationalconvergence over metric spaces, 「GlobalAnal-ysis and Global Geometry in Sendai, 2005」 ,東北大学情報学研究科,

2005年2月7日.

4.3 出版物など

藤原 耕ニ

「現代幾何学の流れ」グロモ7、数学セミナー 2004年3月o

塩谷 隆

shiohama, Katsuhiro; Shioyal TakaBhi; Tanaka, Minoru・ The geome-try of totalcurvature on complete open surfaces・ Cambridge nactsin Mathematics, 159・ Cambridge Umiversity Press, Cambridge, 2003・

(10)

5 研究成果の概要

本研究で取り組んだ課題の一つに離散群のCAT(0)空間への等長作用 がある。 CAT(0)空間とは、 Gromovが測地距離空間に定義した概念で、 リーマン多様体で言えば、完備、単連結で、断面曲率が0以下のもの(ア ダマール多様体と呼ばれる)を、測地距離空間に拡張したものである。

離散群Gが与えられたとき、それが等長的、かつ離散的に作用する

CAT(0)空間Xを見つけることは、離散群Gの代数的構造を研究する上 で、大きな手がかりになる。古典的には、リー群の離散部分群に対して、 それに対応する対称空間-の等長作用などが、例である。 さらに、次元を最小にするようなCAT(0)空間Xは、 G=こついて、特 別の意味を持つと考えられる。これにまつわる研究として、 Brady-Crisp による次の先駆的な研究がある:

Brady, Noel; Crisp, Jolm・ Two-dimensional Artin groups with CAT(0)

dimension three・ Geom・ Dedicata 94 (2002), 185-214,

本研究では、この論文で提出された問題に肯定的な解決をあたえ、吹 の論文として発表した:

FbjiwaJa, Koji; Shioya, TakaBhi; Yamagata, Saeko. Parabolic

isome-tries of CAT(0) spaces弧d CAT(0) dimensions. Algebr. Geom. Tbpol.

4 (2004), 861-892.

5.1 参考資料

1・ 「幾何の離散群への応用一群のCAT(0)次元」 ,藤原耕二.第50回ト

ポロジーシンポジウム(2003年7月、松本市中央公民館)における講演

原稿.

2・論文別刷・ ''Parabolic isometries of CAT(0) spaces and CAT(0)

dimensions" ・ Fhjiwara, Koji; Shioya, TikaBhi; Yamagata, Saeko. Algebr. Geom・ Tbpol・ 4 (2004), 861-892.

(11)

幾何の離散群への応用

一群のCAT(0)次元-藤原耕二(東北大学数学)

fuj iwara◎math. tohoku. ac.jp

http : / /www・ math・tohoku. ac・jp/ ∼fuj iwara/

トポロジーシンポジウム(松本)

2003年7月19日∼22日

(講演後、 2003年8月に一部修正した)

1 イントロダクション

離散群(ここでは有限生成とする)の研究課題、方法、動機付けは色々 あるが、ここでは"幾何学的"に考えたい.具体的には群Gがある距離空

間Xに等長的に作用する状況を考える。例を挙げると

●多様体Mの基本群Gの普遍被覆空間Xへの作用。多様体に計量を 与えれば作用は等長的になる。 ・我々はSingul打な空間も許容するo有限生成群(=こある生成元集合 を定めると、 「Cayleyグラフ」と呼ばれる局所有限なグラフが定ま り、その上の自然な距離(「語距離」)についてGは等長的に作用 する。 一方、位相的な観点からの古典的な問題意識として、離散群Gが与え られたとき、それを基本群に持つ空間Xを考える(または探す)のは自 然である。さらにXがaBphericalであること(すなわち普遍被覆が可縮) を要請するのもリーズナブルである。実際、そのような空間はCW複体 として常に存在しホモトピーを除いて一意であることが古くから知られ ている.従って群Gの(コ)ホモロジーをXの(コ)ホモロジーと定義 することができる。 Xは「K(a,1)空間」と呼ばれるが、群Gの不変量と

(12)

してK(a,1)複体の最小次元を考え、それを「geometric dimension」と 呼びg。。mdim(a)とかく。明かに群Gのコホモロジーはgeomdim(a)を 越えると消えるが、 geomdimは有限とは限らない(【Br】)o

ところで一般的な問題として、単連結な空間Xが可縮であるかを判定

するのは容易ではない.すなわち、空間Xがある仕方で与えられて、そ の全体の形が一目で見て取れない状況であるoそのような問題に対する 一般的で強力な道具(の1つ)はMorse理論だろう0 1つの例として、曲面(2次元コンパクト多様体)のTeichmuller空間 を考えようo Teiclmuller空間Tは、あるモジュライ空間の普遍被覆とし て与えられるので単連結である。丁には曲面の写像類群(有限表示群)が 作用するので我々の設定に当てはまる.実際、 Tは有限次元のユークリッ ド空間に位相同型であることが知られていて特に可縮であるo LかLT が可縮であることを直接示すのは容易ではない。 そもそもユークリッド空間は、なぜ可縮なのだろうか? Morse理論の 立場に立てば、ユークリッド空間のある基点からの距離関数才には特異 点がないからと言うことが出きる。すなわち、 Jのグラジュントベクトル に沿って空間を基点につぶせばよい。本質的に同じ例として次のCartan-Hadama,d定理がある. 「完備なn次元リーマン多様体Mの断面曲率が <_ oなら、その普遍被覆はn次元ユークリッド空間に微分同型であり特 に可縮」。この場合、明かにMの基本群のgeomdimは≦nである。 以上のことから次のような問題を考えたい。 群Gに対して、 K(a,1)空間Xで"曲率が<_0''であるものを見つけよo またその最小次元(不変圭)は何か? 我々はsingularな空間も許容するから、 Xはリーマン多様体とは限ら ない。よって曲率≦0を一般化した概念、 「CAT(0)」を次章で導入し、そ れに対して上のように決まる不変量を「CAT(0)次元」と呼ぶ。定義より geom dim ≦CAT(0)次元であるo

2 CAT(k)空間

この章ではCAT(k)空間の定義と例、基本的な性質を【Ba],【BriH]から 述べる.このノートでは距離空間における2点間の距離を匝-ylと表す 事がある。

(13)

2.1 定義と例 距離空間Xの任意の2点間の距離が2点を結ぶX内のある道の長さで 実現されるとき、 Xを「測地空間」という。距離を実現する道を「測地 線」という。たとえばリーマン多様体は測地空間である。 リーマン多様体にはリーマン計量から定まる(断面)曲率があるが、一 般の測地空間に「モデル空間」との比熱こよっで'曲率"を定義する。こ こでは、モデル空間M(k)として2次元の完備、単連結なリーマン多様体 で、その断面曲率がk-0,1,-1であるものを考える.すなわち、ユーク リッド平面E2、 2次元球面S2、双曲平面H2である。 測地空間Xの測地三角形(すなわち三辺が全て測地線) △に対して、 モデル空間内の測地三角形で、その三辺の長さが△の三辺と同じものを 「比較三角形」と呼びÅと書く。ただし、モデルがS2の時は△の三辺の長 さの合計が2打未満の場合だけ比較三角形を考えるo △の3頂点をp,q,r とし、対応するÅの頂点をp-,q-,r-と書く。 △の辺上の点Xに対応するÅ の点を盃と書くoここで対応する点とは、 Xを含む辺が頂点p,qを結ぶ測 地線払,q]であるとき、モデル空間の免q-を結ぶ測地線炉,q-] (これはÅの 辺である)上の点で、 Ip一可-Lp-15Lを満たす点盃のことであるo 定数kをI固定してXについて次が成り立つときXは「CAT(k)空間」 と言う. CATはCartan,Alexandrov,Toponogovの頭文字である。 Xの任意の測地三角形△の周上の任意の2点X,yと、 M(k)内の比較 三角形上の対応する2点豆,9について 匝-yI≦L5-gI. 明らかにCAT(-1)空間はCAT(0)空間であり、 CAT(0)空間はCAT(1) 空間である。 例. (i) CAT(1)空間:Sn,(n>0). Snの中の凸集合.二つのS2を赤道 で貼り合わせたもの。

(ii) CAT(0)空間:En.断面曲率≦ oの完備、単連結なリーマン多様 体. Euclideanビルディング.次の2つの操作で得られる空間(1) 2つの CAT(0)空間のプロダクト. (2) 2つのCAT(0)空間X,Yの完備凸集合 A⊂X,B⊂Yが等長的であるとき、 X,YをA,Bで貼り合わせたもの. 特に、 4月が無限測地線の場合など。 (iii) CAT(ll)空間:Hn,(n>0).断面曲率≦ llの完備、単連結なリー マン多様体。単体的、またはRツリー。 次の結果はイントロで述べた問題設定を裏付ける意味でも重要である。 3

(14)

定理2.1 XをCAT(0)空間とする.任意の2点X,y∈Xを結ぶ測地線は ただ1つで(lx,y]とかく)、端点X,yに連続に依存するo特にXは可縮o 比較空間E2において測地線の一意性と連続性は自明だが、比較三角形

を使っての簡単な考察からXにおいても成立することが分かる.可縮性

は基点Xを決めて、任意の点y∈Xは測地線lx,y】に沿って縮めてくれば よい。

2.2 CAT(0)空間の等長変換の分類

cAT(0)空間について考えるとき、その代表的かつ極端な例であるユー クリッド平面、双曲平面、ツリーを頭に置いておくのは助けになる。 完備なCAT(0)空間Xの等長変換f : X →Xの分類について述べる0 . Jが固定点を持つとき、 「エリブティック」という。固定点の集合は

凸である(すなわち任意の2点が内部で測地線により結ばれる)

. Jがエリブティックでなく、不変な無限測地線7を持つとき、 「ハイ パポリック」という.ryをfの「軸」という。軸は唯1つとは限ら ないが軸の集合は凸集合でAx7に等長的。各ax小ま軸である0 時に2つの軸は互いに"平行"である。 。才がエリブティックでもハイパポリックでもないとき、 「パラポリッ ク」と呼ぶ。 fについて、その「移動距離」 i(I)を次で定義するo

t(I) - Dienfxlx - I(I)l・

上の分類は次のように言い換えられる。 ・ i(I)-0で、ある点Xで移動距離(-0)が実現される(すなわち固 定点)ときエリブティック ・ i(I) >0で、ある点Xで移動距離t(I)が実現されるときハイパポ リック ・ i(I)を実現する点が存在しないときパラポリックであるoさらに、 i(I)-0のとき、 strictlyパラポリックと言うときがある. 4

(15)

さらに、ハイパポリックの時、移動距離を実現する∬は軸上にあり、そ れに限る。すなわちAxT-(X∈X:匝-I(I)l-i(I)). もちろん、この分類はCAT(-1)空間にも適用できる。この場合、さら にハイパポリックな等長変換の軸は唯1つであるoこれは双曲空間Hnの 等長変換の通常の分類の拡張になっている。 エリブティックまたはハイパポリックな等長変換を、 「セミシンプル」と 呼ぶ。ユークリッド平面、ツリーの等長変換は全てセミシンプルである。 一般に距離空間Xに群Gが等長的に作用しているとき、任意のX∈X と任意のr>0について、集合(9∈G: l3-9(I)l≦r)⊂Gが有限集合 のとき、作用は「不連続的」という。次の事実は基本的である。 定理2.2 CAT(0)空間Xに群Gが等長的に作用しているとする。作用は 不連続的とする.このとき、9∈Gがト-ジョンであることと、エリプ テックであることは同値.さらに、商空間X/GがコンパクトならGの各 元はセミシンプル。 従って、 X/GがコンパクトでC=こト-ジョンがなければ、単位元以外 はハイパポリックである。

定理2.3 (Flat tortlS theorem) CAT(0)空間Xに階数nの自由ア-ベ ル群Gが等長的、不連続的に作用しているとする.各元はセミシンプル とするo このとき、 n次ユークリッド空間と等長的、 G一不変で凸な部分 空間En⊂Xが存在し、 En/Gはn次元トーラスである。 この結果はXがリーマン多様体で断面曲率が≦ 0のとき、 Lawson-Yau の定理として古くから知られているが、それは次のように述べることち 出きる。 「断面曲率≦oの閉じたリーマン多様体〟において、その基本 群がZnを含むことと、 Mが測地的なn次元且atトーラスを含むことは 同値」。

3 群のCAT(0)次元

以下、断らない限り、簡単のため群Gにト-ジョンはないとするoイン トロダクションで述べたように、群GとCAT(0)幾何との関連を考えよ う.まず、 Gが等長変換で不連続的に作用する完備CAT(0)空間Xの最小

次元を「CAT(0)次元」と呼び、 CAT(0)-dim(a)と書く. X/GはK(a,1)

(16)

空間である(G=こト-ジョンがないので、作用の不連続性より、作用は 自由)0 上でGのXへの作用はセミシンプルとは限らない.一般にセミシンプ ルな変換は軸や固定点の存在、 Flat torus定理など手がかりが多い。とい うことで上のCAT(0)次元の定義に更に作用がセミシンプルという条件 も加えて、そのようなGの作用を許すXの最小次元をCAT(0)-dimes(a) と書くことにする.空間Xの次元はtopologiCal次元、 Hausdorff次元な ど適当に考える。

Gにト-ジョンがないので、 geomdim ≦ CAT(0)-dim ≦ CAT(0)-dimes である。例えば、 Znでは、どれもnで等号が成立している.自由群につ いては全て1である。我々は、むしろ等号が成立しないようなG=こ興味 がある。まず、次のような例を考えよう。 G-< a,blaむa 1 -b2 >. これはSolvableな群で、 Baumslag-Solitau群と呼ばれる群の一例であるo このG=こついてgeom dim -2は容易に確かめられる.一方、 (=ま完備 なCAT(0)空間にセミシンプルな等長変換では作用しない。このような 場合CAT(0)-dimsS -・∞とする.実際、セミシンプルな作用があったと しよう.一般にXがセミシンプルなら、

t(yxyll) - i(X),i(xn) - n ・ i(a)

であるから、 i(a)-i(b2)-2t(a).よってt(a) -0.よってbはエリブ ティック。しかし、 bはト-ジョンでないことが知られている.これは作 用の不連続性に矛盾。 3.1 Artin群についてのBrady-Crispの定理 CAT(0)-dimsaがgeomdimより1だけ大きくなる群Gの例を2つ挙げ る.まずBrady-CriSPの論文【Bqからの結果を紹介する. A(m,n,p)は次 の表示で与えられる有限表示群で、 「Artin群」と呼ばれる群の例である。

A(m,n,p) -< a,a,cl(a,a)m - (a,a).," (b,C)n - (C,b)n, (a,C)p - (C,a)p >

ここで(a,a).nは、 aで始まりa,bが交互に現れる長さmの語とする・例

えば(a,b)3-aha. 1/m+1/n+1/p≦ 1が成り立つなら、 A(m,n,p)は

2次元の有限な∬(4 1)-complexを持つ事が知られていて(【CD】)、 geom dim(A)-2である。

(17)

定理3.1 (Brady-Crisp) m,n≧ 3を奇数整数とし、 A-A(m,n,2)と する。 (1)Aは完備な2次元のCAT(0)空間にセミシンプルな等長変換によっ て不連続的に作用できない。 (2)有限個の例外を除いて、任意のAに、ある3次元のプロパーなCAT(0) 空間Xが存在し、 Aはセミシンプルな等長変換によって不連続的に作用 し、 X/Aはコンパクトo

つまり無限個のAについて、 CAT(0)-dimes-3で、 geomdim-2と1の

差がある。 CAT(0)-dimについては不明である。すなわち上の定理(1)で

「セミシンプル」の仮定を除いて結論が成り立つかはわからない。

証明の概略は次のようである. A(m,n,p)がセミシンプルに2次元CAT(0)

空間Xに作用するとして矛盾を導く.まず、

A(m) -< a,bI(a,a),n - (a,a)m >

と定義する. A(m)はA(m,n,p)の部分群になることが知られている. A(2)-Z2である。m>2のときは、中心Zを考える。△-(a,b)m と置く。このとき ● mが奇数なら、 Z=<△2>. ●mが偶数なら、 Z=<△>. 以下、 za,bをA(m)の中心Zの生成元とする.すなわち、 △2または△ である。二つの部分群<a,za,b>,<b,za,b>は、 Z2に同型になる. 次にA(m,n,2)の中に次の5つの部分群を考えるo

<a,za,a >,<b,za,A >,< a,zb,C>,<C,Zb,C >,< a,C> ・

これらは全てZ2に同型であり、よってFlattorus定理により空間Xの中 に、 5つの部分群に対応する不変な平面が5つ存在する。これらは、あ る特定の仕方で配置している。すなわち、 1番目の平面と2番目の平面 はza,bの軸、 2番目と3番目はbの軸というように、隣同士の2つの平面 (5番目と1番目も)は、あるハイパポリック変換の軸の直線を共有し、 全体としてチェインのようになっている.一方Xは2次元で単連結であ ることと合わせて矛盾が導かれる。 7

(18)

3.2 Bridsonの例

次にBridsonの論文[Bri】からの結果を紹介する。次のような有限表示 群を考える。

G - (a,b,7,8,tlTa711 - all,7bT 1 - all,sas-1 - 【a,b] - tbt-ll.

定理3.2 (Bridson) (1) geOm dim (G)-a.

(2) Gは完備な2次元のCAT(0)空間にセミシンプルな等長変換によっ て不連続的に作用できない。

(3)ある3次元のプロパーなCAT(0)空間Xが存在し、 (=まセミシン プルな等長変換によって不連続的に作用し、 X/(=まコンパクト。

従ってCAT(0)-dimS8-3、 geom dim-2である.この例もCAT(0)-dimに

ついては不明であるo (2)の証明はt(72)に着Elする背理法でBaunslag-Solitar群についての議論とやや似ている。

4 CAT(0)空間の理想境界

我々はCAT(0)-dimseとgeom dimのギャップについて見たが、作用の セミシンプル性はgeomdimの定義に現れない「余分な仮定」であり、で きればCAT(0)-dimとgeom dimの関係について考えたい。そのためには CAT(0)空間Xのパラポリックな変換を扱う必要がある.ハイパポリッ クな作用を見るとき、その手がかりは軸の集合であった。一方、パラポ リックな変換に関してはX内に自然な不変集合は見当たらないo よって Xの「境界」を見る事にしようoこの章ではCAT(0)空間の境界につい ての基本的な性質を再び【BaHBriH】から述べる。 4.1 理想境界、角度、 Tits距離 距離空間Xの二つの測地線py(i),T'(i),i >_ 0が「asymptotic」とは、あ る定数Kが存在して、すべてのt≧0に対して、 IT(i)-71(i)l ≦Kが成 り立つこと。 (このノートでは測地線のパラメータは弧長とする)。二つ の測地線がaBymptOticのとき同値とし、その同値類をXの「理想境界 点」と呼び7(∞)と書く.それらの集合をX(∞)、集合XuX(∞)をX と書く。ここでは定義は述べないが、 Xには自然なトポロジーが存在し、 完備なCAT(0)空間Xの等長変換は測地線を測地線に移し同値関係を保 つからXの変換に自然に拡張するが、これは同相写像になる. 8

(19)

命題4・l Xを完備なCAT(0)空間とする。任意の測地線7(i),l≧0と任 意の点Xについて、 Xを始点とする7と同値な測地線がただ一つ存在する. この命題で存在が保証される測地線を。と7(∞)を結ぶ測地線という。 例. (i) Enの測地線は直線だが、 2つの測地線が同値とは平行であるこ と。よって上の命題も明らか。 (ii) EnとHnの理想境界はSn-1に同相. ここで測地空間Xに「角度」を導入する. C(i),C'(i)を測地線とし、 C(0) -C'(0)-Xとするo c,C'の(Xにおける)角度∠(C,C′)を次で定義するo ∠(C, C′) - t,?,慧Zc(o)(C(i), C'(l'))・ ただしここで、 Zc(o)(C(i),C'(t'))は、 Xの測地三角形(C(o),C(i),C,(i,))のE2

における比較三角形(布,布,珂)の頂点布における内角である。

次に、点X ∈ X,p,q ∈ X(∞)について、 。とp,qを結ぶ測地線をそ れぞれ7(i),6(i)とし、 「角度」 ∠I(p,q)を∠C(7,6)で定義する.ただし、 7(0)-6(0)-Xであるoさらに、 p,qの角度を ∠(p,q) - sup ∠I(p,q) c∈X と定義する。これは距離になる。

例o (i) Enの理想境界の2点p,qの角度弛,q)は内部の点Xとp,qを

「結ぶ」直線の才における角度。 (ii) Hnの理想境界の異なる2点p,qの角度は常に打.理由は、 p,qを結 ぶ測地線7が存在するという事実によるo (7上の点Xで角度を実現して いる)0 定理4・1 (1)完備CAT(0)空間Xの理想境界X(∞)は、角度距離∠に関 して完備CAT(1)空間になる. (2)Xの等長変換fがX(∞)に定める変換は、 ∠に関して等長変換で ある。 X(∞)は角度距離∠に関して一般に測地空間にはならない。 ∠が定め る測地距離を「Tits距離」といい、 dTで表す.ただし、 dT(p,q)-∞も 許容するoたとえば、 p,qがX(∞)の中の道(角度距離について連続と いうこと)で結べないときは∞と考えるoもちろんXの等長変換fは (X(∞),dT)の等長変換を与える. 9

(20)

例o (i)En(n> 1)において、 ∠-dT・よって(En(∞),dT)はSn11に 等長的.一方、 n= 1の場合(すなわち直線)理想境界は2点あるが、 ∠-打,dT-∞である. (ii) Hn(n> 1)において、理想境界の任意の異なる2点の∠ -7Tである ことは述べたが、これよりdT-∞である.これは任意のCAT(-1)空間 で正しい.特に(Hn(∞),dT)は位相空間としてもSnllと異なるo 定理4.2 Xを完備CAT(0)空間とすると、 (X(∞),dT)は完備なCAT(1) 空間であるoさらに、もしXがプロパーならdTb,q)<∞を満たす任意 のp,q ∈ X(∞)は(X(∞),dT)の中の測地線で結ばれるo Xがプロパーでも理想境界はプロパーとは限らない。 4.2 Busemann関数とホロ球面 XをCAT(0)空間とLT(i),t>_0を測地線とするo関数bT:X一Rを 次で定義し、.再こついての「BuSemann関数」と呼ぶ。 bT(X) -忠(恒7(i)トt)・ 命題4.2上の定義で極限は存在する. γ′をTと同値な測地線とすると、 ある定数Cが存在して任意のXについてbT(I) -bTl(a) -C・ 上の命題より、 Xの理想境界の点p-7(∞)についてのBusemann関 数bpが定数差を除いて定まる.よってbpのレベルセットの族Ht-(X∈ XIbp(X)-tlはpyのとり方のよらず定まるとそれらをpについての(ま たはpを中心とする) 「ホロ球面」という.ホロ球面のパラメータtは BuSemann関数を定義するときの測地線′再こよる。 例. (i)Enにおいて、測地線(すなわち直線) Tが定める理想境界の点 p-7(∞)についてのホロ球面は、 Tに直行する(n-1)次元ユークリッ ド空間の族である。 (ii) H2の上半平面モデルを考えるとき、 y軸に平行は直線は同値な測 地線だが、その理想境界点についてのホロ球面は∬軸に平行な直線の族 である。 10

(21)

4.3 パラポリックな変換

パラポリックな変換を扱うとき、次は手がかりとなる結果である。た だし、 Xがプロパーでないと結果が成立しない例があるo 定理4.3 XをプロパーなCAT(0)空間とし、 fをそのパラポリックな等 長変換とする.このとき理想境界X(∞)にfの固定点が存在する. パラポリックな元fの固定点全体をF(I)⊂X(∞)と書く. fと可換な 任意の等長変換9はF(I)を不変にする。一般にはCAT(0)空間のパラポ リックな等長変換の固定点は1点とは限らないが、 CAT(-1)空間、特に 双曲空間では1点に限る.これは理想境界の任意の2点がXの無限測地 線で結ばれるという性質による。このような性質を「visibility条件」と 呼ぶ。これから次の性質が従う。 命題4.3 CAT(0)空間Xがthsibility条件を満たすとする.自由ア-ベ ル群AがXに等長変換で作用しているとし、パラポリックな変換を含む とする.このとき、 X(∞)のある点はAで固定される. 実際、パラポリックな元a∈Aの固定点をp∈X(∞)とする.これは ただ一つの固定点だからAの任意の元はpを固定する. 命題4.4 CAT(0)空間Xの等長変換fが点p ∈ X(∞)を固定するとす る. pについてのホロ球面の集合を(HtIはRとする。このとき、 fは集合 (Ht)結Rに作用する。さらにt(I)-0なら作用は自明である(各ホロ球 面への作用は自明ではない)0 以上より、群のCAT(0)次元を考えるときパラポリックな作用を許すな ら、 CAT(0)空間Xにプロパーという仮定を置くのは手始めとして適当 だろう0 -万、 Xにvisibilityを仮定するのは強すぎると考える.なぜな ら、それは空間をCAT(-1)と仮定するのに近く別の問題意識になってし まうからである。従って、リーズナブルな設定として次の間題を考え、講 演では解決に向けたアプローチについて話す。

Question: Brady-Crisp, Bridsonの群は、プロパーな2次元CAT(0)

空間Xに等長的、不連続的に作用するか?

答えが否定的なら、 geom dimとCAT(0)-dimの(有限の)ギャップが、

空間Xへの群作用がセミシンプルという仮定なしに存在し興味深い.た だし空間Xがプロパーという仮定の下にである。ゆくゆくは、プロパー

(22)

の仮定なしにCAT(0)-dimとgeom dimとのギャップの有無を確かめたいo それにはプロパーとは限らないCAT(0)空間のパラポリック変換に関す る新たな結果が必要そうである。 補足(2003年8月)実は次が正しい。 命題4.5 XをプロパーなCAT(0)空間とする.ア-ベル群AがXに等 長的に作用していて、パラポリックな元を含むとする.このとき、 X(∞) のある点はAで固定され、その点を中心とする全てのホロスフェアはA で不変。 また上のQuestionの答えはNoであることが分かった(論文を準備中)0 しかし空間がプロパーでない場合の答えは不明である。

参考文献

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DMV Seminar, 25. Birkhauser, 1995

lBq Noel Brady, JolmCrisp・ TwoIDimensionalArtin Groups with

CAT(0) Dirqension Three Geometriae Dedicata 94, Nol (2002),

185-214.

lBri] Martin R. Bridson, Length functions, curvature'and the dimension

of discrete groups. Math. Res. Lett. 8 (2001), no・ 4, 557-567・

lBriH】 Martin R. Bridson, Andre Hae且iger, "Metric spaces of

non-positive curvature". Grumdlehren der MathematiSden

Wis-senscha氏en 319. Springer, 1999・

lBr] Kenneth S. Brown, "Cohomology of groups"・ Gradua・te Texts in Mathematics, 87. Springer, 1982.

lCD] Ruth Charney, Michael W. Davis. Finite K(7T, 1)s for Artin groups・

in "Prospects in topology", 110-124, Ann. of Math・ Stud・ 138,

Princeton Univ. Press, 1995.

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