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牧野久美子・佐藤千鶴子 編「南アフリカの経済社会変容」 (新刊紹介)

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Academic year: 2021

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牧野久美子・佐藤千鶴子 編「南アフリカの経済社

会変容」 (新刊紹介)

著者

牧野 久美子

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

213

ページ

42-42

発行年

2013-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003699

(2)

  南 ア フ リ カ で ア パ ル ト ヘ イ ト 体 制 が 終 焉 し て か ら、 か れ こ れ 二 〇 年 近 く に な る。 来 年 に 予 定 さ れ て い る 総 選 挙 で 初 め て 投 票 す る 若 者 た ち は、 す で に ア パ ル ト ヘ イ ト を 直 接 経 験 し て い な い 世 代 で あ る。   この間、かつて解放闘争を中心的に 担ったアフリカ民族会議 (ANC) が、 一貫して政権与党の座にある。汚職や 権力闘争の話題が絶えず、当初のよう な 国 民 の 熱 狂 的 支 持 は な く な っ た が、 マンデラからムベキ、そしてズマへと 二度の指導者交代を経てもなお、AN Cの一党優位状況は継続している。本 書は、民主化後の南アフリカが直面す るさまざまな課題に対して、ANC政 権のもとでどのような政策的取り組み が 行 わ れ て き た の か、 そ し て そ れ に よって南アフリカの経済や社会がどの よ う に 変 容 し つ つ あ る の か に つ い て、 多面的な検討を試みたものである。   かつて制裁を受けて国際的に孤立し ていた南アフリカは、国際社会への完 全 復 帰 を 果 た し、 「 新 興 国 」 の ひ と つ に数えられるようになった。 分析にあ た っ て わ れ わ れ は、 ア パ ル ト ヘ イ ト 体 制 の も と で の 国 際 的 な 孤 立 状 況 か ら 抜 け 出 し た 南 ア フ リ カ が、 急 速 に グ ロ ー バ ル 経 済 に 再 統 合 さ れ た こ と が、 民 主 化 後 の 南 ア フ リカの政策やそれによる経済や社会の 変容(あるいは無変容)に大きな影響 を及ぼしている、との基本的認識を出 発 点 に お い た。 本 書 の 各 章 は、 貿 易、 投資、農業、保健、移民、都市、地方 政府改革といった特定分野の政策の変 遷とその意義を検討しているが、その 際に政策の内容や変化を国内要因のみ ならず、グローバルな文脈のなかで理 解することを心がけた。   以下、 本書の内容を簡単に紹介する。   まず第一章(牧野久美子「民主化後 の 南 ア フ リ カ の 経 済 社 会 変 容 ― 序 論 ―」 ) に お い て、 新 自 由 主 義 の 興 隆 と 退 潮、 「 新 興 国 」 と し て 存 在 感 を 増 す ようになった南アフリカの国際社会に おける地位の変化に留意して、民主化 後の政策変化と経済社会変容を分析す るという本書の視角を提示している。   第二章以降 には、個別テーマを扱っ た八本の論文が収録されている。 前半、 第二〜五章の四本の論文では、民主化 後の南アフリカがグローバル経済へ再 統合されていくなかで、対外経済関係 や産業政策・構造にどのような変容が 観察されるのかを、 政策レベルと企業 ・ 生 産 者 レ ベ ル の 両 面 か ら 検 討 し て い る 。   第二章(箭内彰子「貿易政策策定に おける国内的・国際的要因―国際経済 体 制 へ の 再 統 合 と 国 内 産 業 育 成 ―」 ) は貿易政策の変遷を追い、急激な貿易 自由化から国内産業重視へと政府の貿 易交渉スタンスを変化させた要因を分 析している。第三章(西浦昭雄「南ア フリカ企業の対外投資―為替管理政策 の 変 化 と 企 業 の 対 応 ―」 ) は、 為 替 管 理の緩和によって南アフリカ企業の対 外進出が促進されたこと、そしてその ことが南アフリカ国内の経済や雇用状 況 に 与 え た 影 響 に つ い て 論 じ て い る。 第四章(佐藤千鶴子「農業部門におけ る黒人の経済力強化―ワイン産業の事 例 ―」 ) は、 経 済 的 な 人 種 格 差 の 是 正 を目的とする 「黒人の経済力強化」 (B EE)について、ワイン産業を事例と して、具体的にどのような参入形態が みられるか、今後の課題は何かを分析 している。南アフリカに進出してきた 中国家電企業と南アフリカ企業との複 雑な相互依存関係を描き出した第五章 ( 木 村 公 一 朗「 中 国 企 業 の 南 ア フ リ カ 進出―家電産業の事例―」 )は、 「アフ リカを食い荒らす」といった一面的な 中国像の修正を迫るものである。   第六章と第七章は、移民の流入とそ れによる都市の変化の問題を扱ってい る。 モザンビーク現代史が専門の著者 による第六章(網中昭世「移民政策の 変遷―民主化後の国家における包摂と 排 除 ―」 ) は、 南 部 ア フ リ カ 地 域 の 視 点から南アフリカの移民政策の排他的 性質を論じている。第七章(吉田栄一 「 ヨ ハ ネ ス ブ ル グ の 都 市 政 策 と チ ャ イ ナタウン形成―南アフリカの中国人移 民―」 )は、 ヨハネスブルグの新旧チャ イナタウンを舞台に、都市の景観を形 づくる存在としての移民に着目した論 考である。   最後に、第八章と第九章は、民主化 後の南アフリカが社会開発上の重要課 題 に ど う 対 応 し て き た か を 扱 っ て い る。 第八章(藤本義彦「地方政府改革 の 動 向 と 課 題 ― 民 主 化 の『 第 二 段 階 』 に向けて―」は、人種的分断を特徴と していた地方政府の再編や、住民への 行政サービス向上を目指してきた地方 政府改革の動向をまとめている。第九 章(牧野久美子「HIV/エイズ政策 とグローバル ・ ガバナンス」 )は、 グロー バルなエイズ対策潮流や援助動向の変 化と重ね合わせながら、南アフリカの エイズ政策の軌跡を追っている。   本書は二〇一〇/一一年度のアジア 経済研究所「ポスト移行期南アフリカ の社会変容」 研究会の最終成果である。 関連企画である本誌二〇一二年一一月 号 の「 南 ア フ リ カ の 経 済・ 社 会 変 容 」 特集もあわせて参照していただければ 幸いである。 ( ま き の   く み こ / ア ジ ア 経 済 研 究 所   アフリカ研究グループ)

新刊

紹介

牧野久美子・佐藤千鶴子

経済社会変容

研究双書№六〇四、二〇一三年三月刊 ■

牧野久美子

42

アジ研ワールド・トレンド No.213 (2013. 6)

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