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公立小学校の児童はCEFR A1 に到達できるか: 4技能テストによる学力調査と動機づけ調査から

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公立小学校の児童は CEFR A1 に到達できるか:

4技能テストによる学力調査と動機づけ調査から

Can Japanese Public Elementary School Pupils Achieve CEFR A1?

A Study Using Four-Skill Proficiency Tests and a Motivational Survey

キーワード: CEFR 準拠4技能テスト、外国語活動と移行期の教育成果、 英語学習動機づけと英語コミュニケーションへの懸念

米田 佐紀子、西村 洋一 YONEDA Sakiko & NISHIMURA Yoichi 1.はじめに:背景と研究の目的 2020 年度から全面実施される学習指導要領では、中学年に外国語活動が、高学年では「習得が求めら れる教科」(文部科学省(以下「文科省」),2017)が新設された。今後、小学校卒業時には CEFR A1 の半分 程度に到達することが期待されている(文科省,2015)。しかし、これまで「慣れ親しむこと」を目標にし、英語 力の到達目標も言語材料も明確にされてこなかった中で、実態と目標の乖離はどの程度あるのか、テストを 実施してこなかったのに突然できるのか、どの様なテストをすれば良いのか、テストによって児童が英語を嫌 いになるのではないか等、不安や疑問で現場は混乱している。この不安を払拭するためには、実態を明ら かにし、そのうえで対策を講じていくことであろう。 新学習指導要領は CEFR を土台として作られている(村野井,2018)。そこで CEFR に準拠したケンブ リッジ国際児童英検を用いて検証することで、同じ基準と理念に基づいたテストで実態を把握することにつ ながると筆者らは考えた。ケンブリッジ国際児童英検には 3 つのテスト(Pre A1 Starters、 A1 Movers、 A2 Flyers)があり、いずれも明確なねらい(Can Do)と言語材料をレベルごとに設定し、4技能で測定する。アンケ ート調査や見取りだけでは分からなかった児童の学力を技能ごとに検証することができる。一方で、テストを することに対する児童への負荷や英語嫌いを作るという懸念もある。テストの実施や教科化(習得をねらいと した指導)の影響についても検証することが必要であろう。 上記を受けて設定した本研究の目的は、以下のとおりである: (1)2017 年度までの外国語活動の成果を検証する。もし1年間外国語活動を体験した6年生の得点が、 5年生よりも高ければ、成果があったと言える。 (2)CEFR に準拠した標準テストを用いて英語力を検証する。 (3)4技能テスト受験による影響を把握する。 ①児童は英語が教科になったことやテストを導入することで英語嫌いが増えるのか。 ②教員にはどのような影響があったのか。 2. 先行研究 言語習得には語彙や文型の習得が基本となる。本田・星加・田所(2018)は、中国、韓国、台湾の初等外 国語(英語)指導要領の教育語彙を参照しつつ、小学校英語デジタル教材 We Can!で使用されている語彙 を検証した。同時に、実際の活動(受容活動・産出活動)との関連性も検証した。その結果、日本の小学校 英語デジタル教材には、①名詞と前置詞を一緒に出現させる傾向がある(チャンクとして指導)、②名詞が 多く、海外の語彙リストより動詞が少ない、③シンタグマティックな語彙知識を深めることが課題、④指導書に は多様な表現があることから、教員による偏りを補う工夫が必要であると述べている。

森本(2018)は、基本動詞のうち多義語であり,意味的に類似している視覚動詞(see、 look、 watch)に着 目し、『Let’s Try! 』と『We Can!』の児童用及び指導書の語彙分析を行った。その結果、使用場面や構文の 偏りがあることをつかんだ。「見る」という日本語を安易に与えることで、意味的に類似した語の使い分けにつ いて児童がかえって混乱する可能性もあり、教員には指導上の工夫が求められるとともに、明示的な指導の 可能性を含めた言語活動のデザインが必要であると結論づけている。

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て、国公私立の5~6年生の追跡調査を行った結果、外国語活動で英語に慣れ親しむという目標で指導さ れていてもリスニング力の正答率は 80%に達したことが示されている。ケンブリッジ国際児童英検の公式テス トでは4技能の合計 15 点のうち、7 割の 10 点を超えると当該学力があるとされ、9 割の 13 点を超えると 1 つ 上のレベルの力があると判断されるため、9 割以上の得点率に達した児童は A1 に到達する可能性をつか んだ。一方で、1 技能のみのテストであったことから明確な結論づけをすることはできなかった。 以上から、慣れ親しむことが目標の外国語活動であってもリスニング力は A1 に到達する可能性があるも のの、4技能を測定した上での検討が不十分であるという課題があることが分かった。同時に、教材の言語 材料には偏りがあり、それを補うためには教員の指導に負うところが大きいという課題も明らかになった。 3. 学習指導要領と CEFR:目標・言語材料

前述したように、新学習指導要領は CEFR を参考に作成されている。小学校レベルに該当する Pre A1、 A1 の Can Do(文科省,2015)について、以下のように示されている(表1)。ケンブリッジ国際児童英検の Can Do については紙面の関係上ここでは割愛し、Cambridge Assessment English (2018a)に詳細に出ているので そちらを参照されたい。 表1 次期学習指導要領「外国語」における国の指標形式の主な目標(イメージ)案 (文科省, 2015) CEFR レベル 聞くこと 読むこと 話すこと (やり取り) 話すこと (発表) 書くこと A1 ・ ゆ っ く り は っ き り と、馴染みのある発 音で話されれば、 身の回りの事柄(自 分 、学校 、地 域な ど)に関するごく短 い会話や説明を理 解することができる ようにする。 ・興味のある話題に 関して平易な英語 で書かれたごく短 い説明を読み、イラ ス トや 写真を参考 にしながら、概要を 理解することができ るようにする。 ・ごく身近な話題で あれば、基本的な 表現を用いて簡単 な質疑応答をする ことができるように する。 ・身近な話題につ いて、発表内容を 準備した上で 、簡 単な語句を用いて 複数の文で意見を 述べることができる ようにする。 ・自分に関するごく 限 ら れた情 報 ( 名 前、年齢、趣味、好 き嫌いなど)を、簡 単な語句や文で書 くことができるように する。 (Pre-A1) ゆ っく りと はっ き り と、繰り返し話され れば、 ・短い簡単な指示 や挨拶を理解する ことができるように する。 ・身近で具体的な 事物を表す単語を 聞き取ることができ るようにする。 ・身近で具体的な 事物を表す単語の 意味を理解すること が で き る よ う に す る。 ・アルファベットを見 て識別し、発音でき るようにする。 ・相手のサポートが あれば、個人的な 関 心 事 ( 趣 味 、学 校など)についての 質問に答えることが できるようにする。 ・日常の挨拶をした り、挨拶に応答した りすることができるよ うにする。 ・自分に関するごく 限 ら れた情 報 ( 名 前、年齢、好き嫌い など)を、簡単な語 句を用いて伝える ことができるように する。 ・定型表現を用い て、簡単な挨拶が できるようにする。 ・例文を参考にしな がら、慣れ親しんだ 語句や文を書くこと が で き る よ う に す る。 ・アルファベットの 大文字と小文字を ブロック体で書くこ とができるようにす る。 表1から分かるように、児童自身や身の回りの事柄をテーマに4技能、つまり聞いたり話したり、読んだり書 いたりすることができるように指導することが期待されていることが分かる。 上記の Can Do 形式で示された目標に到達するために必要な言語材料についてみていく。本研究では、 学習指導要領と Cambridge Assessment English (2018a: 27-28, 53-54)、「第 3 学年外国語活動年間指導計 画例」「第4学年外国語活動年間指導計画例」「第5学年外国語年間指導計画例」「第6学年外国語年間指 導計画例」の表現例および新出語彙・語句例(H30.3.31 版) (文科省,2018)を用いて比較分析を行った。

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語彙数については、表2、 表3に示したとおり、ケンブリッジ国際児童英検のほうが 165 語多い。両者の語 彙を照合させたところ、約 40%の語が一致した。一方で、使用した資料は、児童が触れる語彙全てを網羅し たリストではない点や、チャンツやアクティビティで、より多くの語・句に触れ、学んでいる可能性があることか ら、今後、より精査する必要がある。 表2 語彙数比較:ケンブリッジ国際児童英検の CEFR レベル 表3 語彙数比較:文科省教材 ケンブリッジ国際児童英検 CEFR レベル 語数 教材 語数 Pre A1 Starters 506 Let’s Try! 1 226

A1 Movers 400 Let’s Try! 2 167

合計 906 We Can! 1 238 We Can! 2 110 合計 741 文型や文構造を比較したところ、約 45%が一致した。顕著な違いは、①3 人称単数現在、②There is/are 構文、③現在進行形が文科省教材には無かったことである。ここから、児童の身近なことを伝えたり知ったり するために必要な言語材料が欠けていることが示された。一方、本文型・文構造の比較は前述の語彙の比 較と同様、完全なものではないため、今後、精査する必要がある。 4. 調査 参加者は神奈川県の公立小学校高学年児童5年生 45 名、6年生 41 名、合計 86 名(108 名中、全デー タが揃った児童)である。加えて、同校小学校教員 1 名、学習支援学生 8 名が聞き取り調査に参加した。 当該小学校では、2018 年度は移行期カリキュラムを実施しており、4技能の指導を小学校教員と ALT が 指導していた。時間数は5,6年生とも 50 時間、教材は5年生が『We Can! 1』、6 年生が『We Can! 2』であっ た。6年生は前年度に外国語活動を年間 35 時間受けていたが、英語表現や語彙の定着ではなく、児童の 対話等、活動させることに焦点を当てた内容であった。

研究に使用した材料であるが、学力調査については Cambridge Assessment が公開しているケンブリッジ 国際児童英検 Pre A1 Starters のサンプル・ペーパーを模試として用いた(Cambridge Assessment English, 2018b, 2018c)。本レベル選択の理由は、筆者らのこれまでの調査経験と現状を踏まえ、最初からレベルの 高い A1 に挑戦するよりも Pre A1 を使用することが適切であると判断したためである。本英検は CEFR に準 拠した4技能テストであり、対象年齢はおよそ6歳~12 歳とされている。①Listening テスト (20 問 20 分)、 ②Reading & Writing テスト(以下必要に応じて「RW」を使用) 25 問 20 分、③Speaking テスト(一人約5分。 面接官とのやりとり(「発表」は無し))の構成になっている。また、動機づけ調査では米田・西村(2015)によ る英語に関する質問紙を使用した。使用したテストのタスクと、タスクを解くために必要な知識・技能は表4 のとおりである。 実施時期は 2018 年9月、2019 年2月である。実施方法であるが、1時間テストの傾向を指導した後、45 分 ずつ 2 日間に分けて実施した。面接は英語教育学科の4年生が5名加わった。英語力は IELTS 5.5~6.0、 留学経験を持つ小(全科)・中・高(英語)の免許課程在籍者であった。米田が認定試験官なので、対面でト レーニングし、その様子をビデオに撮影して個人でもトレーニングをした。当日はグループに分かれて実施 した。動機づけ質問紙は面接の間に小学校教員が実施した。聞き取り調査については、小学校教員には 調査結果を報告した際に、対面で実施した。ゼミ生についてはゼミの中で気付いたことを述べてもらった。

分析方法であるが、Listening テスト、 RW テストは Cambridge Assessment English(2018)の基準に従い採 点後、エクセルに入力し、算出した。Speaking テストはビデオ撮影し、米田が後日ビデオを確認して評価後 入力し、エクセルで算出した。評価基準は Listening テスト、 RW テストでは 1 問 1 点。途中点なし(綴り間 違いは 0 点)とした。Speaking テストはケンブリッジの評価基準を参考に 1 語解答(例 dog)なら5点中3点、a dog など句・文なら5点とした。CEFR レベルについては、3 つのテストの合計が 7 割に達すると Pre A1、9 割

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に達すると A1 の力があるというケンブリッジ国際児童英検の基準に基づいて判定した(米田・西村,2015)。 学力調査、英語学習への動機づけの得点を算出したのち、統計分析を行った。各テスト・質問紙の得点を 従属変数として、学年ごとに 2 時点の差について対応のあるt検定を行った。

表4 Pre A1 Starters 各テストのパートごとのタスクと必要とされる主な知識・技能

(Cambridge Assessment English, 2018a) Part Listening テスト Reading & Writing テスト Speaking テスト

1 ・タスク:会話を聞いて、その行動を している人物と人物の名前を線で結 ぶ ・知識・技能:動詞・名詞・前置詞が 用いられた描写を正しく聞き取ると 同時にアルファベットで書かれた人 名を読み取る ・タスク:T-F 問題。This is a dog.な どの文を読んで、隣にある絵と合致 したら✔、しない時は×を書く ・知識・技能:文を読んで、正しいか 否か判別する ・タスク:ある場面を描いた絵(例:公 園で釣りをする子どもたち)を見て、 言われたものを指で示したり小物カ ードを指示されたところに置いたり する ・知識・技能:話している内容や指示 を理解し、動作で反応する 2 ・タスク:会話を聞いて、住所や人数 など数字と人の名前を聞いて、書き とる ・知識・技能:アルファベット・数字を 聞き取り、正しく書く ・タスク:1 枚の絵を見て、絵につい て描写した文を読み、正しいか否か を yes/no で答える ・知識・技能:文を読んで、正しいか 否かが判別し、yes/no で答えを書く ・タスク:場面の絵についての質問 (What’s this?/What is he doing?等) や Tell me about…に答える。 ・知識・技能:質問を理解し、単語や 句、文(It’s a cup.等)で応答する 3 ・タスク:会話を聞いて、3つの絵の 中から正しい絵を選択する ・知識・技能:色や形、好きなものな どあらゆる情報から必要なものを選 び取る ・タスク:絵を見て、与えられた文字 を並べ替えて単語を作る ・知識・技能:アルファベットの識別、 綴り、物の名前が分かる ・タスク:小物カード(ミルク等)につ いての質問から児童自身に関する 質問(What do you drink for lunch? 等)に答える ・知識・技能:質問を理解し、自分に ついて答える 4 ・タスク:会話を聞いて、正しいもの を選び、指定された色で塗る ・知識・技能:前置詞・名詞・動詞を 正しく使う ・タスク:穴埋め問題。絵について描 写しているパラグラフ内の穴埋め文 に、選択肢から正しい答えを選んで 書き写す ・知識・技能:文章を読み、完成させ る ・タスク:児童自身についての質問 (What’s the name of your school? 等)に答える ・知識・技能:質問を理解し、自分に ついて答える 5 なし ・タスク:絵を見てその絵について尋 ねている問いにたいして、一語で答 える ・知識・技能:質問文を読み、正しい 単語と形(-ing 等)で答える なし 5. 結果 5.1 学力調査と動機づけ調査 まず学力テストについて述べていく。4技能テスト全体の分析結果は表5に示したとおりである。4技能とも 2回のテストの得点差は有意であった。A1 に到達した割合は 1.2%、Pre A1 は 11.6%であった。4技能の総合 点で CEFR の力と照合させた各レベルの人数は以下のとおりである。 ①A1 があると判断される 90%以上の得点を取った児童数:1 名(1.2%) ②A1 予備群と想定できる 80%以上 90%未満の得点を取った児童数:3名(3.5%) ③Pre A1 の力があると判断される 70%以上 80%未満の得点を取った児童数:7名(8.1%)

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④Pre A1 予備群と考えられる 60%以上 70%未満の得点を取った児童数:24 名(27.9%)

表5 Pre A1 Starters 結果 (N=86) Grade Listening Speaking Reading & Writing

9月 2月 9月 2月 9月 2月 N 5年生 45 45 45 45 45 45 6年生 41 41 41 41 41 41 Mean 5年生 44.6 75.1 41.5 46.9 ― 35.7 6年生 42.3 81.8 47.2 50.1 34.1 46.0 Standard Deviation 5年生 21.3 22.0 9.1 12.5 ― 14.7 6年生 25.2 17.4 13.1 12.2 21.0 19.6 Minimum 5年生 0.0 0.0 20.8 16.1 ― 4.0 6年生 5.0 35.0 22.5 32.3 0.0 16.0 Maximum 5年生 80.0 100.0 64.2 71.5 ― 72.0 6年生 100.0 100.0 80.8 92.3 96.0 100.0 テストごとにみていく。まず、リスニングテストの結果は図1、図2に示したとおりである。 図1 リスニングテスト結果:得点推移 図2 リスニングテスト結果:パート別 9月の結果では両学年とも同水準とは言え、5年生が 44.6%と6年生の 42.3%を若干上回った。しかし、2月 には6年生の得点が5年生の得点を超えた。対応のあるt検定を行ったところ(結果はテストごとの分析に提 示)、両学年とも有意に上昇したことが示された(5年生:t(44) = 15.5, p < .001, d = 2.3; 6年生:t(40) = 12.0, p < .001, d = 1.9)。パート別にみると、どのパートも現在進行形、名詞、前置詞、形容詞を用いた描写表現が 多用されていたが、2月の正答率は9月に比べ、有意に高くなった。2月には Eva など馴染みの無い名前が 入った問題でも、5年生は 64%、6年生は 68%が正解した。 次にスピーキングの結果を図3、図4に示した。検定した結果、5生は、6年生ともに有意に伸びたことが示 された(5年生:t(44) = 4.1, p < .001, d = 0.6; 6年生:t(40) = 2.2, p < .05, d = 0.3)。しかし、得点は4~5割に とどまった。2月は流暢さやスピードで向上が見られたが、単語のみでの解答や聞き返されると黙ってしまう など、得点につながらなかった。自分の身の回りのこと(Part 4)であっても、話題によっては正答率が下がっ た。例を挙げると What animal do you want as a pet?と聞かれると I like dogs.と回答するなど、like と want の 違いが身に付いていない、身近なテーマでも「いつもお昼に何を食べる?(What do you eat for lunch?)」と聞 かれると対応できない、サポートをしても授業で行った定型会話でなければやり取りが続かなくなってしまう ケースが多くみられた。文型で見ると I want a …/It’s a…という構文は正答率が高いが、進行形や複数形 になると得点率が下がった。

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図3 スピーキングテスト結果:得点推移 図4 スピーキングテスト結果:パート別 次に Reading & Writing テスト(RW)の結果を図5、図6に示した。

図5 RW テスト結果:得点推移 図6 RW テスト結果:パート別

5年生は9月に受験できなかったため、データがない。RW テストは子どもには負荷が大きいと判断し、実施 しないことにしたからである。5年生の2月には受験し、その得点(35.7%)は6年生の9月の得点(34.1%)とほ ぼ同じ水準だった。一方、6年生は得点が有意に上昇した(t(40) = 9.0, p < .001, d = 1.4)。パートごとに見て いくと、Part 1 では This is …の文型、Part 2 は The dog has brown ears.や The girl in a blue jacket is talking. 等が出題され、得点が下がった。パート5に向かうにつれ、英文の量や質問の内容に複雑さが増す。後半に 向かうにつれ正答率も低下した。解答を見ると、問題は理解できていても、進行形を学んでいないため得点 につながらないケースが散見した。 次に、動機づけと英語コミュニケーションへの懸念について述べる。結果を図7、図8に示した。 図7 英語学習への動機づけ結果と推移 図8 英語コミュニケーションへの懸念結果と推移 動機づけも英語コミュニケーションへの懸念も2時点に有意な差はなかった。ここから、情意面では9月と2 月には変化がなかったことが示された。

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5.2 聞き取り調査 2回目の調査後に小学校教員 1 名と学習支援およびテストの実施に携わった学部4年生8名に聞き取りを 行った。まず、小学校教員の聞き取り内容のポイントは次の7点であった:①最初は[テストに]太刀打ちでき ないのではないかと心配だった。②[テストを実施することについて]保護者および教員への理解が得られる よう努力をした。③児童の出来ること、出来ないことが明らかになった。④これまでの[表現や語彙の定着より、 児童の対話等、活動させることに焦点が当たっていた外国語活動での指導]がいかに曖昧だったかというこ とに気づいた。⑤授業で何をすべきかが明確になり、良かった。⑥テストの必要性や、英語指導の仕方が参 考になった。⑦小中連携している中学校教師から、他の小学校よりも英語力と積極性があると褒められた。 学生からは、次の3点が挙げられた:①テストを9月に実施して以来、指導教員の姿勢が変わった。②当 初はテスト対策をしているかのように感じ、心配した。しかし、児童が授業についていっているだけでなく、授 業への参加が活発になり、驚いた。③英語であっても漢字テストと同じように、出来ること出来ないことを明確 にしてあげることが必要なのだと思った。自分が小学校の教員になったら実践したい。 上記から分かるように、テストを実施したことで、指導に変化が生まれたことが示された。 6.考察 研究の目的に沿いながら、結果に対する考察を行う。まず、「2017 年度までの外国語活動の成果があっ たのか」という点であるが、1 回目のリスニング力に差異が見られなかった。両学年とも4月から 9 月まで移行 期の学習をしており、両者の違いは 2017 年度の「外国語活動」の有無と年齢である。これを踏まえると、今 回の結果から、明確な外国語活動の成果はなかったと考えられる。外国語活動で指導の焦点にしていない 読み書きのテストを6年生が受験できた理由については、今後検討する必要がある。 第2に、「CEFR に準拠した標準テストを用いて英語力を検証する」であるが、4技能のうち、どの得点も有 意に向上した。特に Listening テストと Reading & Writing テストで得点を伸ばしたことは、目標となる文型や 語彙をワークシートに書かせ、目視確認するなど、正誤を明確にしつつ定着を図った教育の成果だと考えら れる。一方、リスニング力の飛躍的な伸びに比べ、産出技能(Speaking テストと Reading & Writing テスト)の 得点は伸びなかった。産出技能のほうが習得に時間がかかることは当然ながら、Speaking テストで課題が明 らかになった。顕著だったのが、身近なテーマであっても、塊として指導されているものは良くできるが、応 用が利かなかったことである。外国語活動では元気にやり取りしていれば良かったが、教科ではそうはいか ない。今回の調査で精査したことによって、児童のやり取りが限られた範囲にとどまっており、融通性も欠如 していることが明らかになった。柔軟性のある運用力の育成には、言語材料と指導の両方の見直しが必要 であるという示唆が得られた。 最後に「児童は英語が教科になったことやテストを導入することで英語嫌いが増えるのか」について考察 する。英語学習に対する動機づけも、英語コミュニケーションへの懸念も変化が無かった。ここから、英語テ ストや教科化が、英語嫌いに繋がるとは言えない結果になった。次に教員に対しての影響であるが、肯定的 な影響が指導者にあった。特に、これまで曖昧で見えなかったことが明らかになったことで、テストの必要性 を感じ、また明示的に指導することで、英語指導の仕方に変化が生まれたという点は、今後習得を目指す 教科化にとっては重要なポイントになるだろう。また学生への聞き取りは教員の意見の裏付けになった。 上記から、児童はどのようなことに躓くのか、教員はどのような指導をすればよいのかが明らかになり、今 後の小学校英語教育取るべき対策への示唆が得られたと考える。 7.まとめ:本研究の成果と課題・限界・今後の展望 本研究では教科化が始まることを機に、現在の英語力の検証とその影響について検証した。まず、研究 の成果であるが、公立学校で4技能テストを実施し、これまで明らかにされなかった公立学校の児童の英語 力を4技能で検証できたことである。CEFR A1 に届くのか否かについては、86 名中 1 名(1.2%)、 Pre A1 が 10 名(11.6%)であり、A1 には上位一部のみが届いたことが示された。しかし、半年間での伸びを見ると、明 示的な指導が学力向上に繋がる可能性がつかめ、今後到達する児童の割合が増えると期待される。また、

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テストの実施をとおして指導者の考え方が変わったことが児童の英語力の把握と同様に意義深い。得点に 振り回されるのではなく、何をすべきかを指導者が見定められたと感じたことは重要である。 本研究のもう一つの成果は、指導および言語材料(語彙・文型等)の課題を明らかにすることができたこと である。特にコミュニケーションできていると感じていた Speaking 力について、語彙・文型の偏りやチャンク指 導に応用性がなく、Pre A1 レベルの内容であっても、テーマや表現が授業での学びからずれると、対応でき なくなることが課題として浮かび上がった。早急な対応を講じる必要性をつかんだ。 一方、本研究には課題や限界もある。まず、テストの妥当性である。レベルは適切であっても語彙・文型 に大きな乖離がある。また、単元テストなど英語のテストに慣れていない児童が 20~25 分のテストを2回受 験することは負荷になる可能性もある。日常からそのような指導・指導体制があれば問題は無いと考えるが、 テストによる日々の学びの確認といった指導が現場で実現可能なのか、現段階では見通しが立たない。ま た、今回の結果は公式テストでの検証ではないため、傾向をつかんだという参考に留まる。公式テスト実施 の検討が必要である。 今後、調査結果の信頼性の担保および向上に向けて、今回の課題を改善し、調査を継続していく。 (玉川大学・聖学院大学) 謝辞 研究協力校の教職員の皆様、本調査遂行協力学生には心から感謝を申し上げる。 引用文献

Cambridge Assessment English (2018a). Pre A1 Starters, A1 Movers and A2 Flyers, Handbook for teachers, for exams from 2018. https://www.cambridgeenglish.org/Images/357180-starters-movers-and-flyers-handbook-for-teachers-2018.pdf

Cambridge Assessment English (2018b). Pre A1 Starters, A1 Movers and A2 Flyers Sample papers, vol.1 for exams from 2018. https://www.cambridgeenglish.org/Images/young-learners-sample-papers-2018- vol1.pdf

Cambridge Assessment English (2018c) .Pre A1 Starters, A1 Movers and A2 Flyers Sample papers, vol. 2 for exams from 2018. https://www.cambridgeenglish.org/Images/young-learners-sample-papers-2018- vol2.pdf 本田勝久・星加真実・田所貴大(2018). 「小学校英語デジタル新教材 We Can!の語彙分析」『日本児童英 語教育学会(JASTEC)研究紀要』第 37 号,169-185. 森本俊(2018). 「小学校外国語活動及び外国語における基本語の指導―視覚動詞の使い分けに焦点を 当てて―」 関東甲信越英語教育学会第 42 回栃木研究大会 発表資料 文部科学省(2015). 「次期学習指導要領「外国語」における国の指標形式の主な目標(イメージ)案」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/056/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/10/29/13 63262_10.pdf 文部科学省(2017).『小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック』 http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1387503.htm 文部科学省(2018).「第 3 学年外国語活動年間指導計画例」「第 4 学年外国語活動年間指導計画例」「第5 学年外国語年間指導計画例」「第 6 学年外国語年間指導計画例」(H30.3.31 版) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/123/houkoku/1382162.htm 村野井仁(2018).『コア・カリキュラム準拠 小学校英語教育の基礎知識』東京:大修館書店 米田佐紀子・西村洋一(2015).「ポートフォリオに基づく一貫した目標設定による日本人学習者の英語力に 関する研究―3 年間の追跡調査から―」『平成 23~25(2011~2013)年度科学研究費助成事業(学術 研究助成基金助成金)(基盤研究(C))課題番号 23520765 研究成果報告書』1-50.

参照

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