日本機械学会論文集(B 編) ノート No.2013-JBN-0663
Shinji EBARA
*1, Tatsuya KUBO and Hidetoshi HASHIZUME
*1 Tohoku Univ. Graduate School of Engineering, Dept. of Quantum Science and Energy Engineering, 6-6-01-2, Aramaki-aza aoba, Aoba-ku, Sendai, Miyagi, 980-8579 Japan
Flow visualization experiment and accelerated pipe wall thinning experiment were conducted by applying a swirling flow generated by a piping configuration, three-dimensionally connected dual elbow, to the inlet flow condition of a pipe orifice to investigate pipe wall thinning downstream of an orifice appearing due to the combination of swirling flow and orifice. The flow downstream of the orifice was curved by the action of the swirling flow, and the channel wall where the flow turned off toward underwent a large amount of wall thinning. Profiles of turbulent quantities, such as turbulent kinetic energy and Reynolds shear stress, were compared to those of amount of pipe wall thinning. It was found that the profiles of Reynolds shear stress showed good agreement with those of pipe wall thinning in the case for a large amount of that. However, relatively small amount of pipe wall thinning, any profile related to fluid motion could not explain the profiles of pipe wall thinning.
Key Words
1. 緒 言
発電プラントの系統配管で発生する減肉現象の中で,流れ加速型腐食(Flow-accelerated Corrosion, FAC)は配管 の広範囲にわたる領域が減肉され,重大事故につながる冷却材漏えい事故を引き起こすリスクが高いため,配管 管理上もっとも重要視すべき現象である.2004 年の美浜 3 号機 2 次系配管の破断事故はこの FAC が原因と考え られ,配管内で生じた旋回流がオリフィスを通過することで減肉箇所の偏りが生じたと報告されている.オリフ ィス下流の減肉,もしくは旋回流とオリフィスの組み合わせの減肉に対する影響については,これまでさまざま な研究が行われ(1)(2),FAC の流体力学的因子としては,乱流エネルギーや剪断応力,物質移動係数などが考えら れている(3)(4)が,上記美浜の減肉事象を完全に説明できるものはなく,現象の解明が待たれている. 本研究では,配管レイアウトにより生じる旋回流を入口条件とし,オリフィス下流に安息香酸を配管壁として 用いた減肉加速実験を行うことで,旋回流とオリフィスの組み合わせによる配管減肉の現象解明を試みる.実プ ラントにおける配管壁の腐食(鉄の水中への溶出)では,現象はシュミット(Sc)数が 102オーダーのいわゆる 高 Sc 数流れになっており,安息香酸と水の組み合わせにより同レベルの Sc 数を実現することができる.筆者ら はこれまで配管内で生じる旋回流について実験を行ってきており,配管レイアウトとして二つの 90°エルボを三 次元的に組み合わせたもの(三次元接続二段エルボ)に着目し,エルボ間距離やエルボの曲率半径比(中心軸の 曲率と管半径の比),入口条件などにより,二段エルボ下流で生じる非軸対称な旋回流がどのように変化するかを 可視化実験により明らかにしてきた(5).本実験では三次元接続二段エルボ下流にオリフィスを設置し,流れの可
立体曲り配管内で発生する非対称旋回流を流入条件とするオリフィス下流配管
減肉特性の実験的評価
*Experimental Evaluation of Pipe Wall Thinning Characteristics Downstream of an Orifice for an
Asymmetric Swirling Flow Generated in a Three-Dimensionally-Connected Elbow Piping as the
Inflow Condition
: Pipe Wall Thinning, Flow-Accelerated Corrosion, Swirling Flow, Flow Visualization, Pipe Flow
江原 真司
*1,久保 達也
*2,橋爪 秀利
*1* 原稿受付 2013 年 8 月 29 日
*1 正員,東北大学(〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-01-2) *2 東北大学
視化および減肉実験を行うことで減肉を引き起こす流体力学的要因について考察を行った. 2. 実験手法および条件 実験に用いた流動試験装置を図 1 に示す.配管の内径は D =56 mm である.試験部は図 2 に示すように曲率半 径比 1.0 のアクリル製 90°エルボを連続接続した三次元接続二段エルボの下流に美浜と同じ絞り比 0.6 のオリフ ィス(厚さ 5 mm)を設置している.エルボ出口とオリフィス間には長さ 2D の直管を設け,可視化実験の際は流 路およびオリフィスをアクリル製とし,減肉実験の際はオリフィス下流を図 3 に示すようなアルミ製流路の内壁 に厚さ 2 mm の安息香酸を鋳込んだものを用いた.流れの可視化には波長 808 nm のダイオードレーザー(Oxford Lasers)および 1,024×1,024 ピクセルの高速度カメラ(フォトロン FASTCAM),解析ソフト VidPIV から成る 2D-PIV システムを用いた.可視化位置は図 4 に示す管軸を含む二つの断面および図には示さないが管軸に垂直な断面で, 1 回の撮影において 2,048 枚の粒子像を取得し,1,024 個の速度ベクトルの時系列データ(フレームレート 30 fps) を取得し解析を行った.流体にはヨウ化ナトリウム水溶液を用い,アクリル流路との組み合わせにより屈折率を 合わせることで撮影により得られる粒子像の歪みを低減し,壁近傍の流体挙動を詳細に解析できるようにしてい る.トレーサーには直径 10 m の銀コーティングガラス粒子を用いた.
Fig.1 Schematic of experimental apparatus Fig.2 Configuration of test section
Fig.3 Test section for pipe wall thinning test Fig.4 Visualization area parallel to the pipe axis downstream of dual elbow for 2D-PIV
減肉実験は流体として水を用いて行った.90 秒間の流動試験後に流路材料である安息香酸の減肉量を三次元座 標測定器(Carl Zeiss,UPMC550CARAT)で計測し,以下の式より物質移動係数 k [m/s]を算出して,シャーウッ ド数(Sh = k D/d)を評価する(6).
s w bdh
k C
C
dt
(1) ここで d [m/s] は安息香酸の水中における拡散係数,s [kg/m3] は固体の安息香酸の密度,dh/dt [m/s] は安息香酸 流路壁厚さの時間変化,Cw,Cb [kg/m3] は水中における安息香酸の流路壁近傍での濃度および流体中のバルク濃度である.下記で述べるように本実験条件では高 Sc 数壁面物質伝達となるため,水中に溶解した安息香酸は壁面 の極近傍留まっていると考えられ,従って Cwは飽和濃度,Cbは 0 と見做して物質移動係数を評価した. 可視化実験,減肉実験とも,流体の温度は 45 ℃とし,またレイノルズ数を 15 万で固定して二段エルボ入口に おける流入条件を発達乱流として実験を行った.この場合の減肉実験における Sc 数は 360 となる. 3. 実験結果および考察 3・1 可視化実験 本実験の PIV 計測により求めた,オリフィス上流 2D および 1D における流れ垂直断面の時間平均速度ベクト ル分布および速度コンターを図 5 に示す.オリフィス上流では A-D-B 側に旋回成分の大きい二次流れが形成され ていることが分かる.図 6 にエルボ下流 A-B,および C-D 断面における時間平均速度場の軸方向流速分布を示す. オリフィスから噴流状の流れ場が形成され,A-D 側に大きく偏っていることが分かる.それぞれの壁側に形成さ れる再循環領域の大きさは異なり,再付着点位置は A,B,C,D の壁に対しそれぞれ 0.7D,1.5D ,1.1D,0.9D となっている.発達乱流を入口条件とした場合のオリフィス下流の再付着点位置は 2.1D 程度であるため(7),エル ボ下流で生じる旋回流により,再付着点は大きく上流側に移動したことになる.
Fig.5 Time-averaged velocity vector field on the cross- Fig.6 Time-averaged velocity profiles in the axial sections normal to the pipe axis upstream of the orifice direction on the cross-sections parallel to the pipe axis
流れの乱流量について,管軸に平行な断面における速度変動成分から得られる乱流エネルギーとレイノルズ剪 断応力力の分布を軸方向平均速度で無次元化したものを,それぞれ図 7,8 に示す.両者とも,時間平均流れ場に おける噴流状流れと再循環領域の境界付近に形成される速度剪断層において大きな値を取り,壁近傍の値に着目 すると A および D 側でより大きくなっていることが図から分かる. 3・2 減肉実験 オリフィス下流における減肉の管周方向の偏りを見るために,可視化実験で示した A~D がそれぞれ中心とな るように流路を 4 分割し,その周方向平均した Sh 数の軸方向分布を取得した.図 9 に結果を示す.図から,全て の周方向位置において軸方向の減肉分布は一定ではなくピークを持ち,その最大減肉位置はオリフィス下流 0.9D 付近であることが分かる.また減肉量は周方向に依存し,Sh 数の最大値は A-D 側に現れ,最小値はその逆側の B-C 側に現れていると考えられる.可視化実験から,オリフィスによって形成された噴流状の流れが旋回流の作 用で A-D 側に曲げられるため,このことが減肉分布の偏りを生じさせたものと考えられる.しかし時間平均流れ
場と減肉分布との相関を考えた場合,再付着点位置は A~D で全て異なっているため(0.7~1.5D),減肉分布との 相関を見出すことは難しいと言える.
Fig.7 Turbulent kinetic energy profiles calculated from Fig.8 Reynolds shear stress profiles on the cross-sections two fluctuating velocity components on the observed cross- parallel to the pipe axis
sections parallel to the pipe axis
Fig.9 Comparison between Sherwood number profiles Fig.10 Turbulent kinetic energy profiles about 1 mm obtained downstream of the orifice above the channel wall
そこで乱流量との相関を以下に考える.図 10 は可視化実験から得られた,流路壁から 1 mm 離れた位置での 乱流エネルギーの軸方向分布で,値は軸方向平均速度で無次元化してある.減肉量の多い D 側,少ない C 側の両 方において,オリフィス下流 1.5D 程度の位置で乱流エネルギーは最大値を取るが,減肉分布は図 9 に示すように そのようにはなっていない.また,D 側と C 側の相対値についても,乱流エネルギーは最大値で 2 倍程度差があ るが,減肉量の方は 1.5 倍程度となっており,この点でも大きく異なっている. 次にレイノルズ剪断応力の分布と減肉の比較を考えてみる.図 11 および 12 に,A~D 側の流路壁から 1 mm 付 近におけるレイノルズ剪断応力の軸方向分布を示す.A,D 側については,最大値を示す位置は 0.9D 程度になっ
ており,これは最大減肉位置と一致する結果となっている.また分布の形状も減肉分布と類似している.しかし B,C 側ではレイノルズ剪断応力の最大位置はそれぞれ 1.5,0.4D となっており,最大減肉位置とは大きく異なる. さらに A-D,B-C 側の相対的な大きさの違いについても,両者では大きく異なることも分かる.
Fig.11 Reynolds shear stress profiles about 1 mm Fig.12 Reynolds shear stress profiles about 1 mm above the channel wall: A, B sides above the channel wall: C, D sides
4. 結 言 旋回流とオリフィスの組み合わせによるオリフィス下流における配管減肉を明らかにするために,配管レイア ウト(三次元接続二段エルボ)により生じる旋回流を流入条件とし可視化実験および減肉実験を行った.オリフ ィス下流の流れは旋回流により大きく曲げられ,曲げられた側で減肉量が大きくなる結果を得た.乱流量との比 較で,減肉量が大きい側でのみレイノルズ剪断応力と減肉量に良い相関が見られた.乱流エネルギー,レイノル ズ剪断応力とも,二次元速度場計測から得られたものであるため,計測されてないもう一方向の速度変動も考慮 する必要がある可能性はあるが,今回の結果からは減肉の流体力学的因子を特定するまでは至っていない. 文 献 (1) 米田公俊, 森田良, “配管減肉現象に関わる流動特性の解明(その1)-単相流中のオリフィス下流域の乱流特性-”, 電力中央研究所報告 (2006), L05007.
(2) 辻義之, 近藤昌也, “FAC 評価における流動場および物質移動の影響と課題”, 日本機械学会論文集 B 編,Vol. 78, No. 787 (2012), pp. 83-87.
(3) 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会美浜発電所3号機二次系配管破損事故調査委員会(第7回)配付 資料-配付資料, http://www.meti.go.jp/committee/materials/g41213aj.html(参照日 2013 年 5 月 1 日).
(4) 中村晶, 村瀬道雄, 歌野原陽一, 長屋行則, “流れ加速型腐食に及ぼす局所的流況の影響 -研究の背景とオリフィ ス下流の腐食速度の計測-”, INSS Journal, Vol. 15 (2008), pp. 78-87.
(5) Kubo, T., Yanai, H., Ebara, S., and Hashizume, H., “Experimental Estimation in Characteristics of Swirling Flow Appearing in a Three-Dimensionally Connected Dual Elbow Layout by Means of Matched Refractive-index PIV Measurement”,
Proceedings of The 11th Asian Symposium on Visualization (2011), ASV11-po-30.
(6) Yamagata, T., Sato, Y., Ito, A., Takano, T., and Fujisawa, N., “Experimental and Numerical Simulation of Asymmetric Pipe Wall Thinning Behind an Orifice by Combined Effect of Swirling Flow and Orifice Bias”, Proceedings of the 20th
International Conference on Nuclear Engineering (2012), ICONE20POWER2012-54681.
(7) 江原真司, 矢内宏樹, 橋爪秀利, “オリフィス下流における配管減肉への乱流速度変動周波数の影響”, 第 17 回動 力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 (2012), pp. 371-374.