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少林寺拳法の経験が足趾把持力,接地足蹠形態,および前後足圧荷重割合に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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1)滋賀大学 〒520-0865 滋賀県大津市平津2-5-1 2)株式会社公文教育研究会 〒532-8511 大阪府大阪市淀川区西中島 5-6-6 公文教育会館 1)Shiga University

  2-5-1 Hiratsu Otsu, Shiga, Japan (520-0865) 2)Kumon Institute of Education Co., Ltd.

  Kumon Kyoiku Kaikan 5-6-6 Nishinakajima Yodogawa-ku, Osaka, Japan (532-8511)

少林寺拳法の経験が足趾把持力,接地足蹠形態,

および前後足圧荷重割合に及ぼす影響

松田繁樹1),小西啓之2)

Effects of Shorinji Kempo Experience on Toe Grip Strength,

Sole Shape, and Anterior-posterior Foot Pressure Ratio

Shigeki MATSUDA1) and Hiroyuki KONISHI2)

Abstract

 The purpose of this study was to examine the effects of Shorinji Kempo experience on toe grip strength, sole shape, and anterior-posterior foot pressure ratio. The participants were 39 healthy male university students (13 Shorinji Kempo athletes, 13 athletes (volleyball and handball athletes), and 13 non-athletes). All Shorinji Kempo athletes and athletes had more than three years of experience in each athletic event. Shorinji Kempo athletes had significantly lower rates and numbers of floating-toes than those of athletes and non-athletes. Toe grip strength, foot angle and anterior foot pressure ratio were significantly higher in Shorinji Kempo athletes than in non-athletes. It was inferred that Shorinji Kempo experience affects the toe grip strength, the foot shape (floating-toe and foot angle) and the anterior-posterior foot pressure ratio. Future studies, such as those using longitudinal data, are needed to further this research.

キーワード:裸足,少林寺拳法,足趾把持力,接地足蹠形態,足圧荷重 Keywords :barefoot, Shorinji Kempo, toe grip strength, sole shape, foot pressure

原著 特に,近年では高齢者の転倒が社会的に大き な問題となっており,転倒と関連する体力要 因の一つに姿勢保持能力があるため2 ),足趾 および足底の形態や機能が注目されることが 多い30) 足趾および足底の機能の中で注目されてい るものの一つに足趾把持力がある.成人およ び高齢者の足趾把持力はバランス能力と関連 し32, 35, 40),高齢者の足趾把持力は成人のそれ

Ⅰ.序  論

ヒトの身体において立位姿勢時に唯一地面 に接するのは接地足蹠面であり,足趾および 足底の形態や機能は立位姿勢の安定性や移動 能力に関与する5, 12, 55).立位姿勢の安定性や移 動能力が低下すれば,活動性および生活の質 が低下するため,足趾および足底の形態や機 能は健康的な生活を送るうえで重要である.

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より50%程度低い36).足趾把持力は転倒の危 険因子に挙げられ54),足趾把持力を強化する ことで立位姿勢の安定性が向上し,転倒予防 効果があると報告されている38).立位姿勢の 安定,円滑な移動,および転倒予防に対して 足趾把持力は重要な役割を果たしている. 足趾および足底の形態としては,土踏まず, 浮き趾,および外反母趾(母趾角度)が研究 対象となることが多い.土踏まずは衝撃を吸 収する働きがあり,立位姿勢維持や歩行・走 行時に重要な役割を担っている.土踏まずの 形成がない扁平足は足部に疼痛を引き起こ し,また,その疼痛を回避するために,筋活 動が増加するため,扁平足を有する人は疲労 しやすい44).加えて,扁平足は運動能力の低 下19),足趾筋力の低下52),および肥満46, 47) 関連すると報告されている.土踏まずは様々 な要因と関連し,足底の中でも特に重要な部 位である. 近年では,浮き趾に関する報告も多い11, 26, 29) 浮き趾とは立位姿勢時に地面に接地しない足 趾のことである1 ).成年を対象とした研究で は,両足のうちいずれかの足趾の接地が十分 でない者は男子で約65%,女子で約75%であ ると報告されている53).幼児の浮き趾の実態 も多く報告され,両足において浮き趾を 1 本 でも有する幼児は男女とも約70∼80%存在す ると報告されている24).浮き趾については近 年研究が進んでいるが,未だ不明な点が多い. しかし,浮き趾と全身倦怠感との関係1 ),あ るいは,浮き趾と腰痛との関係が報告され59) 浮き趾と関連する要因が徐々に明らかになっ ている. 外反母趾は母趾中足趾節間(MTP)関節 で母趾が外反した変形のことであり41),疼痛 を伴うことが多い4 ).我が国でも若年者に外 反母趾傾向者が増加していると報告されてい る49, 50).外反母趾は遺伝などの様々な要因が 原因であるが17),靴の影響が大きい16, 33).外反 母趾が顕著になると疼痛が大きくなり,身体 動作および日常の活動にも悪影響を及ぼす34) 前述の浮き趾および足趾把持力に関連する 要因として足圧荷重割合(重心位置)が挙げ られる23).幼児を対象とした研究では,浮き 趾と前後足圧荷重割合との間に関係があると 報告されている23).また,足趾把持力は胸椎 後彎角と関係があり39),胸椎後彎を伴うこと により足圧中心位置が後方へ変位すると指摘 されている39).幼少期において,立位姿勢時 の足圧荷重は加齢とともに前部の割合が増加 することも踏まえると21, 56),極端な踵荷重は 適切な荷重バランスとは言えず,姿勢の悪化 や不必要な筋活動を引き起こし10),健康およ び生活の質にも悪影響を及ぼすであろう.足 趾および足部の形態や機能に関する研究の今 後の発展のために,足圧荷重割合を検討する ことは意義あることと考えられる. 足趾および足底の形態や機能を変化させる ものの一つに裸足活動が挙げられる.土踏ま ずについては,長年,習慣的に裸足で生活す る者は靴着用で生活する者より土踏まずが形 成されていると報告されている7, 45, 47).浮き趾 については,裸足保育の園に通う幼児は裸足 保育でない園に通う幼児より浮き趾が少ない ことが報告されている26, 29).外反母趾は靴の 影響が大きく16, 33),裸足保育の園に通う幼児 は裸足保育でない園に通う幼児より母趾外反 角度が小さいと報告されている27).足趾把持 力と裸足活動の関係を検討した研究はほとん どないが,裸足活動時は靴着用時と異なり, 前足部から接地し,前足部の荷重を増加させ ることが報告され18, 58),また,裸足時は靴によ る前足部への圧迫がなく,足趾を自由に動か すことができるため,裸足活動の多寡が足趾 把持力に影響を及ぼす可能性がある.我が国 では幼少期に裸足保育を実施している園があ るため,裸足生活が足部の形態や機能に及ぼ す影響は幼児を対象とした検討が多い3, 26, 29, 42) しかし,適切な足部の形態や機能の維持は生 涯に渡り重要であることを考慮すると,幼児 期以降の裸足生活の多寡が足部の形態や機能 に及ぼす影響も検討する必要があるであろ う.その一つの視点として,裸足で行う運動 の経験が足部の形態や機能に及ぼす影響を検 討することが挙げられる.これまでに,裸足 で競技を行う柔道選手に着目し,靴を着用し

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および運動群が各運動部活動に所属し,活動 した経験年数を示す.非運動経験年数は非運 動群が運動部活動あるいは専門的な運動クラ ブチームに入っていない年数を示す)は 3 年 以上であった.少林寺群および運動群の大学 における部活動の活動時間は,おおよそ週 3 ∼ 4 回, 1 回 2 時間であった.被験者特性と その群間差の検討結果を表 1 に示した.対応 のない一要因分散分析の結果,年齢に有意な 群間差が認められ,多重比較検定の結果,運 動群が非運動群より有意に高値であった.身 長,体重,BMI,および運動経験/非運動経 験年数に有意な群間差は認められなかった. 被験者には口頭で研究の趣旨,実験内容, 危険性,データの取り扱い等を説明し,測定 実施に対する同意を得た.本研究はヘルシン キ宣言の趣旨に準拠して倫理的配慮のもとに 実施した. 2 .測定方法および評価変数 1 )足趾把持力 足趾把持力の測定には足趾把持力測定器 (T.K.K 3362, 竹井機器工業株式会社製 ) を用いた.足趾把持力の測定は,被験者が 股関節90度,膝関節90度屈曲位で椅子に 座った姿勢で行われた.被験者が足趾で 引っ張るバーの位置は,検者が被験者に筋 力発揮が行いやすいバーの位置を確認し, 設定した.被験者の測定足の足首は固定ベ ルトで固定され,測定中,手は膝の上に置 て競技を行うハンドボール選手および専門的 な運動を行っていない非運動選手と接地足蹠 形態を比較した研究がある25).しかし,この ような研究は少なく,前述の先行研究25)でも 接地足蹠形態のみの検討にとどまっている. 裸足活動が足部の形態や機能に及ぼす影響を 総合的に明らかにしていくためには,更なる 研究の蓄積が必要である.そこで,本研究で は裸足で競技を行う少林寺拳法選手に着目し た.少林寺拳法選手は柔道選手同様,裸足で 競技を行うため,少林寺拳法の経験が足部の 形態や機能に良い影響を及ぼす可能性がある が,その影響は検討されていない. 本研究の目的は,少林寺拳法の経験が足趾 把持力,接地足蹠形態,および前後足圧荷重 割合に及ぼす影響を検討することであった.

Ⅱ.方  法

1 .被験者 被験者は健常な男子大学生39名であった. 内訳は少林寺拳法選手13名,運動選手13名, 非運動選手13名であった(以下,それぞれ少 林寺群,運動群,非運動群とする).裸足で 競技を行う少林寺群の比較対照群として,靴 を着用して競技を行う運動群および専門的な 運動を行っていない非運動群を設定した.運 動群の選手はバレーボール選手とハンドボー ル選手であった.被験者の運動経験年数およ び非運動経験年数(運動経験年数は少林寺群 表 1  被験者特性およびその群間差の検討結果 少林寺群 運動群 非運動群 分散分析 多重比較 (n=13) (n=13) (n=13) F p 年齢 Mean 20.5 21.0 20.1 3.81 0.03* 運動群 > 非運動群 (歳) S.D. 0.9 0.7 1.0 (ES: 1.04) 身長 Mean 171.9 174.9 168.8 2.95 0.07 (cm) S.D. 8.4 5.3 5.2 体重 Mean 61.5 67.5 61.8 2.62 0.09 (kg) S.D. 10.5 6.8 4.1 BMI Mean 20.7 22.0 21.7 1.78 0.18 S.D. 2.5 1.6 1.2 運動経験 / 非運動経験 Mean 3.4 5.5 5.1 1.75 0.19 (年) S.D. 1.0 3.0 4.3

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くように指示した.検者の合図の後,被験 者は最大努力で足趾を使用してバーを引っ 張った.左右交互に 2 回ずつ測定した.試 行間には十分な休息を入れた. 2 試行の 試行間信頼性を検討するため,級内相関係 数 ( I C C : I n t r a c l a s s C o r r e l a t i o n Coefficient)を算出した結果,ICCは左足 0.95,右足0.94であった.ICCが0.70以上の 場合に信頼性が良好と判断されるため14) 本測定値も信頼性が良好と判断される. 2 試行の平均値を算出した後,その値を用 いて対応のあるt検定により左右差を検討 した結果,左右差は認められなかった(t= -0.90, p=0.37).この結果より,左右の平均 値をその後の分析に用いた.足趾把持力に 影響を及ぼす因子を検討した研究にて37) 体重が足趾把持力に影響すると報告されて いるため,測定で得られた数値を体重で除 し,足趾把持力とした. 2 )接地足蹠形態 接地足蹠面の記録には,足蹠投影機(ピ ドスコープVTS-151,サカモト社製)を用 いた.被験者は測定器上に裸足で両足の内 側線を 5 ∼10cm離して立ち,前方の目の 高さにある指標を注視しながら両手を体側 に自然に垂らした直立姿勢を保持した.被 験者が両足均等に体重をかけた状態になっ たことを検者が確認した後,接地足蹠面の 画像を 1 回撮影した.撮影した画像はパソ コンに保存され,その後,足蹠データ分析 ソフト(アミシステムズ社製)により分析 された.接地足蹠形態の評価変数には浮き 趾の有無,浮き趾本数,土踏まず比,足蹠 角度,および母趾角度を用いた. ( 1 )浮き趾 浮き趾については,完全に接地していな い趾を浮き趾とし,両足に 1 本以上浮き趾 があれば「浮き趾有り」とした.浮き趾を 有する者を浮き趾者とした.この浮き趾判 定の検者内および検者間の一致度は,それ ぞれ一致率99.1%,κ係数0.96および一致 率98.9%,κ係数0.95と高いことが確認さ れている24).左右足それぞれの浮き趾の本 数を算出した.対応のあるt検定により左 右差を検討した結果,左右差は認められな かったため(t=1.56, p=0.12),左右の平均 値をその後の分析に用いた. ( 2 )土踏まず 土踏まずの評価には,その評価法として 従来から提案されている土踏まず比を利用 した方法(以下,土踏まず比法)を用いた (図 1 ).土踏まずの評価にはHラインを利 用する方法(以下,Hライン法)もあるが, Hライン法と土踏まず比法の関係は高いと 報告されている15).また,本研究においても, 両評価方法間の相関係数を確認した結果, 左足がr=0.83, 右足がr=0.75( どちらも p<0.00)であった.両評価方法は土踏まず を同様に評価すると考えられるため,本研 究では土踏まず比法を用いた.土踏まず比 は,図 1 に示された土踏まず面積(A)お よび接地足蹠面積(B)を利用し,下式の ように算出される.対応のあるt検定によ り左右差を検討した結果,左右差は認めら れなかったため(t=-0.41, p=0.69),左右の 平均値をその後の分析に用いた. ( 3 )足蹠角度 足蹠全体の形状を評価するために「足蹠 角度」を用いた(図 1 ).足蹠角度は内側 線と外側線の交点における角度とした.こ の数値が大きければ前足部が大きい傾向に あると判断される.本研究で使用している 他の評価変数を考察する際にも重要になる と考え,評価変数に採用した.対応のあるt 検定により左右差を検討した結果,左右差 は認められなかったため(t=0.21, p=0.83), 左右の平均値をその後の分析に用いた. ( 4 )母趾角度 母趾の外反の評価には,先行研究16, 43) 参考に「母趾角度」を用いた(図 1 ).母 趾角度は母趾接線と内側線の交点における 土踏まず比(%)= 土踏まず面積(A) ×100 土踏まず面積(A)+ 接地足蹠面積(B)

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た姿勢を保持し,測定中,目線は前方の目 の高さにある指標を注視するように指示さ れた.一人 1 回測定された.サンプリング 周波数は20Hzであった.測定後,前後足 圧荷重割合を算出した.評価変数として前 部足圧荷重割合を用い,10秒間の平均値を 利用した.対応のあるt検定により左右差 を検討した結果,左右差は認められなかっ たため(t=-2.25, p=0.52),左右の平均値を その後の分析に用いた. 3 .統計解析 被験者特性の群間差を検討するため,対応 のない一要因分散分析を行った.有意差が認 められた場合,TukeyのHSD法による多重比 較検定を行った.足趾把持力の試行間信頼性 を 検 討 す る た め, 級 内 相 関 係 数(ICC: Intraclass Correlation Coefficient)を算出し た.各評価変数の左右差を検討するため,対 応のあるt検定を行った.浮き趾者の割合の 群間差の検討には独立性の検定を用い,有意 差が認められた場合,多重比較検定を行った. その他の評価変数の群間差を検討するため, 対応のない一要因分散分析を行った.有意差 が認められた場合,TukeyのHSD法による多 重比較検定を行った.また,有意差が認めら れた場合,平均値間の差の大きさを検討する ため,効果量(ES:Effect Size,Cohen s d) 角度である.対応のあるt検定により左右 差を検討した結果,左右差が認められたた め(t=3.67, p<0.00),左右別に分析を行っ た. 3 )前後足圧荷重割合 前後足圧荷重割合の測定には,フット ビュークリニック(ニッタ株式会社製)を 用いた.同測定器は,測定器上に立位した 被験者の接地足蹠面の足圧から各足の前後 の足圧荷重割合を算出する(図 2 ).前後足 圧荷重割合とは,各足の前後それぞれが占 める割合のことである.図 2 の左足の場合, 前部26% ,後部74%である.前後を分割す る線は足長(踵から足趾の先端)を前後に 均等に 2 分する線とした.前後足圧荷重割 合の測定方法は,先行研究に倣った21, 22).被 験者は,測定器上に裸足で両足間の幅は 5 cm離し,両手を体側に自然に垂らした 直立姿勢で起立した.測定前に,被験者の 足長を得るため,接地足蹠面の静止画像を 撮影した.その後,被験者の姿勢が安定し たことを確認後,10秒間の足圧荷重割合の 測定に移った.被験者はできるだけ安定し 内側線 外側線 A B 母趾角度 足蹠角度 母趾接線 図 1  接地足蹠形態の評価変数 図 2  前後足圧荷重割合

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を算出した.浮き趾本数と前部足圧荷重割合 の関係を検討するため,ピアソンの積率相関 係数を算出した(Ⅳ考察に記載).本研究に おける統計的有意水準は 5 %とした.

Ⅲ.結  果

表 2 は各評価変数(浮き趾者の割合以外) の平均値,標準偏差,一要因分散分析および 多重比較検定の結果を示している.足趾把持 力に有意差が認められ,少林寺群が非運動群 より有意に高値であった(ES=1.05). 接地 足蹠形態については,浮き趾本数に有意差が 認められ,運動群および非運動群が少林寺群 より有意に高値であった(ES=1.41, 1.00). 足蹠角度に有意差が認められ,少林寺群が非 運動群より有意に高値であった(ES=1.06). 土踏まず比,母趾角度(右足),および母趾 角度(左足)に有意差は認められなかった. 前部足圧荷重割合に有意差が認められ,少林 寺群が非運動群より有意に高値であった (ES=0.93). 表 3 は浮き趾者の人数,割合,およびその 群間差の検討結果を示している.浮き趾者の 割合は少林寺群が 3 人(23.1%),運動群が 12人(92.3%),非運動群が 9 人(69.2%)で あった.有意な群間差が認められ,運動群お よび非運動群が少林寺群より高値であった. 表 2  各評価変数の群間差の検討結果 少林寺群 運動群 非運動群 分散分析 多重比較 (n=13) (n=13) (n=13) F p 足趾把持力 Mean 0.43 0.40 0.32 3.59 0.04* 少林寺群>非運動群 S.D. 0.11 0.11 0.10 (ES: 1.05) 浮き趾本数 Mean 0.19 0.77 0.77 5.00 0.01* 運動群,非運動群>少林寺群 S.D. 0.38 0.44 0.73 (ES: 1.41, 1.00) 土踏まず比 Mean 24.4 26.4 24.1 0.32 0.73 S.D. 7.1 4.0 6.0 足蹠角度 Mean 19.8 18.4 17.4 3.60 0.04* 少林寺群>非運動群 (°) S.D. 2.3 2.3 2.1 (ES: 1.06) 拇趾角度(左足) Mean 10.6 8.1 9.3 0.49 0.62 (°) S.D. 5.3 5.8 7.8 拇趾角度(右足) Mean 4.3 6.9 4.9 0.57 0.57 (°) S.D. 4.9 5.5 8.3 前部足圧荷重割合 Mean 52.9 45.5 39.9 3.40 0.04* 少林寺群>非運動群 S.D. 10.8 10.0 16.6 (ES: 0.93) 注)*: p<0.05, ES: Effect size

表 3  浮き趾者の人数,割合,およびその群間差 少林寺群 運動群 非運動群 χ2 p 多重比較 (n=13) (n=13) (n=13) 浮き趾有り 人数 3 12 9 13.65 0.00* 運動群,非運動群>少林寺群 % 23.1 92.3 69.2 浮き趾無し 人数 10 1 4 % 76.9 7.7 30.8 注)*: p<0.05

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Ⅳ.考  察

足趾把持力は少林寺群が非運動群より有意 に大きかった.裸足で競技を行う少林寺拳法 選手は,競技中,足趾を自由に動かすことが でき,足趾を屈曲する頻度が多くなると推測 される.また,競技中は片脚立位しながら, もう一方の脚で蹴りを行う場面があるなど, 不安定な立位姿勢も多くある.このような動 作の際は足趾の働きが重要となるため,足趾 の筋力発揮も大きくなっていると推測され る.このような競技特性により少林寺拳法選 手の足趾把持力が高くなっていたと考えられ る. 浮き趾者の割合および浮き趾本数は少林寺 群が運動群および非運動群より有意に低値で あった.先行研究において,裸足で競技を行 う柔道選手はハンドボール選手および非運動 選手より浮き趾者の割合および浮き趾本数が 少ないと報告されている25).少林寺拳法選手 も柔道選手同様,裸足で競技を行うため,競 技中は靴による足趾への圧迫がなく,足趾を 自由に動かすことができる.少林寺拳法選手 の競技中の足趾使用の多さが浮き趾の減少に 繋がっている可能性が高い.幼児を対象とし た研究において,裸足保育を行っている園に 通う男児は裸足保育を行っていない園に通う 男児より浮き趾を有する者が少ないと報告さ れている26, 29).本結果も踏まえると,裸足活 動の多寡が浮き趾の出現に影響すると考えら れる.運動選手(ハンドボール選手およびバ レーボール選手)は足趾把持力が高かったも のの,浮き趾者の割合および浮き趾本数は少 なくなかった.ハンドボール選手あるいはバ レーボール選手は競技中,動作を行いやすい ように靴と足部ができるだけ密着するよう に,靴ひもをしっかり縛ると考えられる.そ のことにより,選手の足趾部は靴により圧迫 され,浮き趾が多くなっている可能性がある. 先行研究ではハンドボール選手は非運動選手 より浮き趾が多かったが25),本研究では運動 選手と非運動選手間で有意な差はなかった. 本研究の運動選手はハンドボール選手とバ レーボール選手で構成されていたため,先行 研究と異なる傾向になったのであろう.浮き 趾については,浮き趾と全身倦怠感との関係1 ) および浮き趾と腰痛との関係が報告され59) 身体の不調と関連するとの報告もある.少林 寺拳法の経験は足趾の接地状態を良好にする ため,身体の健康状態に良い影響を与えるか もしれない.裸足活動が身体の健康状態に及 ぼす影響については今後更なる検討が必要で あろう. 土踏まず比に有意な群間差は認められな かった.土踏まずは生後歩行が可能となって から,足底の脂肪組織の減少とともに形成が 進み57),幼少期において形成が急激に進む8, 57) この土踏まず形成期における裸足活動の多寡 が土踏まず形成に影響を及ぼすと報告されて いる.Rao and Joseph45)は, 4 歳から13歳ま

での子どもを対象に扁平足の割合を報告し, 裸足で活動している子どもは習慣的に靴を履 いている子どもより扁平足の割合が低いと報 告している.Sachithanandam and Joseph47)

は 6 歳より前の時期に靴を履いている時間が 1 日に 8 時間以下の者はそれ以上の者より扁 平足の割合が少ないことを報告している. Matsuda et al.27)は,裸足保育の園に通う幼 児は裸足保育でない園に通う幼児より,土踏 まずの発達が良好であると報告している.一 方,成人を対象とし,裸足で行う競技の経験 (柔道経験)が土踏まずに及ぼす影響を検討 した研究では,柔道選手,ハンドボール選手, および非運動選手間に有意な差は認められて いない25).これらの先行研究と本結果を踏ま えると,幼少期の裸足活動の多寡は土踏まず 形成に影響を及ぼすが,幼少期以降の裸足で 行う競技の経験が土踏まずに及ぼす影響は少 ないと考えられる.幼少期以降は骨の成長速 度が減少し,土踏まずを形成する骨や関節の 構造も安定しているため,裸足で行う競技の 経験が影響しないのかもしれない. 足蹠角度は少林寺群が非運動群より有意に 高値であった.足蹠角度は前足部が大きい傾 向にあるか否かを評価している.裸足時と靴 着用時では歩行および走行のキネマティクス

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およびキネティクス面(接地の仕方,歩幅, ケーデンス( 1 分当たりの歩数),接地時の 足圧等)に多くの違いがある20).裸足走行時 は前足部による着地を頻繁に行い18),靴着用 時より踵や中足骨のピーク力積が小さく,前 足部の荷重の拡がりが大きいと報告されてい る58).そして,習慣的に裸足で過ごしている 人は靴着用で過ごしている人より前足部の足 幅が広いと報告されている6, 9 ).裸足で競技 を行う少林寺拳法選手も動作中,前足部の荷 重が大きくなり,その結果として,前足部が 大きくなっている可能性がある. 母趾角度に群間差は認められなかった.外 反母趾は履物と関係があり16, 33),裸足で日常 生活を送る人は外反母趾が少ないと報告され ている51).これらのことから,少林寺拳法選 手の母趾角度が小さいことも予想されたが, 結果は異なった.外反母趾は女性に多いと報 告され4 ),これはハイヒールなど,足先が細 い靴を履く機会が多いことと関連している31) 本研究の被験者は全員男性であったため,日 常において女性が履くような足先が細い靴を 履く機会は少なく,また,運動選手(ハンド ボール選手とバレーボール選手)が競技中に 履く靴も足先は細くない.このことが本結果 と関連しているかもしれない.外反母趾の発 生率は女性が男性より大きいと報告されてい るため48),女性を対象とすれば,少林寺拳法 の経験が母趾角度に及ぼす影響が明確に現れ る可能性もある.女性を対象とした研究が今 後必要であろう.一方,女性を対象に検討す る場合は,注意すべき点もある.前述の通り, 少林寺拳法選手は前足部が大きくなっている 可能性があるため,少林寺拳法選手が先端の 細い靴を履いた場合,母趾角度に及ぼす靴の 影響が大きくなる可能性もある.女性を対象 とする場合は普段履いている靴の種類も詳細 に調査する必要があるだろう.裸足で行う競 技(柔道)が母趾角度に及ぼす影響を検討し た先行研究25)では,左足のみであるが,柔道 選手の母趾角度はハンドボール選手より小さ いと報告されている.本研究とは先行研究25) と被験者の群設定が異なるため,結果の相違 があるのであろう.外反母趾には着用する靴 の種類に加え31),靴を着用している時間が影 響すると考えられる.本研究の被験者(少林 寺群および運動群)は 3 年以上の競技経験を 有する者であった.競技経験年数が長くなれ ば,競技経験の影響が顕著になる可能性があ る.今後は競技経験年数の長い被験者を対象 に検討する必要がある. なお,本研究では母趾角度に有意な左右差 が認められ,左足が右足より大きかった.先 行研究において,小学 1 年生の男児の母趾角 度において左足が右足より大きいと報告され ている13).一方,その先行研究13)において女 児には左右差が認められていない.また,平 均値からの推測となるが,母趾角度に左右差 がほとんどないと判断される研究も幾つかあ る25, 43).すなわち,母趾角度の左右差につい ては結果が一致していない.本結果では左右 差が現れたが,この原因に関する妥当な推測 が難しい.母趾角度の左右差については知見 も少ないため,知見の蓄積とともに今後検討 していかなければならない. 前部足圧荷重割合は少林寺群が非運動群よ り有意に高値であった.幼児を対象とした研 究において,浮き趾本数は前後足圧荷重割合 と関連すると報告されている23).足趾が接地 すれば,その分前部の荷重が増加すると考え られるため,前部の足圧荷重割合の増加の一 因には足趾接地の増加が関係していると考え られる.本研究においても浮き趾本数と前部 足圧荷重割合の関係を検討した結果,有意な 負の相関が認められた(r=-0.47, p<0.00).本 研究の少林寺拳法選手の前部足圧荷重割合が 大きかった要因の一つには,浮き趾が少な かったことが関わっている可能性がある.ま た,少林寺拳法選手は足蹠角度も大きかった ことから,前足部が大きいことが推測され, このことも前部の荷重割合の増加と関係して いると考えられる.幼児を対象とした研究に おいても,裸足保育の園に通う男児は裸足保 育でない園に通う男児より,前部の足圧荷重 割合が大きいことが報告されている28).前述 したように,裸足で活動する際には前足部が

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頻繁に利用されるため18, 58),裸足での活動が 前部足圧荷重割合の増加を導く可能性が高い. 立位時の前後足圧荷重割合について,過度な 後方荷重の場合,下肢の筋活動が増加し10) 筋疲労が大きくなると考えられる.また,過 度な後方荷重は不適切な姿勢にも影響すると 推測される.この点を考えると,後方荷重傾 向の者にとっては少林寺拳法のように裸足で 行う競技の経験が有効になる可能性がある. 本研究では,各群13名と被験者数が少な かったため,本結果には統計的な第二種の過 誤が存在している可能性がある.今後は被験 者数を増やし,検討を行う必要があるだろう. また,運動群の被験者はバレーボール選手と ハンドボール選手であったこと,各群の被験 者は運動経験/非運動経験が 3 年以上の者で あったこと,運動群と非運動群に有意な年齢 差があったことについては,被験者に関する 研究の限界である.これらの研究の限界によ り結果の一般化は制限される.加えて,本研 究は横断データを用いた分析であった.少林 寺拳法の経験と足部機能および形態との因果 関係を明確にするために,今後は縦断データ を用いた検討や介入研究が必要となるであろ う.幾つかの研究の限界は存在するが,本研 究結果は裸足活動が足部機能および形態に及 ぼす影響を総合的に明らかにする際に重要な 知見となる.

Ⅴ.まとめ

 健常な男子大学生39名(少林寺拳法選手13 名,運動選手13名,非運動選手13名)を対象 に,少林寺拳法の経験が足趾把持力,接地足 蹠形態,および前後足圧荷重割合に及ぼす影 響を検討した.少林寺拳法選手は非運動選手 より足趾把持力,足蹠角度,および前部足圧 荷重割合が有意に高く,運動選手および非運 動選手より浮き趾を有する者の割合および浮 き趾本数が有意に少なかった.少林寺拳法の 経験が足趾把持力,接地足蹠形態(浮き趾お よび足蹠角度)および前後足圧荷重割合に影 響を及ぼすことが示唆された.今後は縦断 データを用いた検討を行うなど,本研究テー マについては更なる検討が必要である.

謝  辞

 本研究にご協力いただいた関係各位に心よ り感謝申し上げます.なお,本研究はJSPS 科研費(課題番号「17K01894」,「20H01656」) の助成を受けたものです.

利益相反

 本研究における開示すべき利益相反はない. 文  献

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